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サクラ( mR7jnb )
11/01/19 23:38(更新日時)

もしも…
もしも神様が本当に居るなら、聞いてみたい。 2人が出逢った事に 意味はあるのですか。 いつかは、この苦しさから解放されますか。 この苦しみしみから 抜け出せるなら 今までの29年間の記憶なんて全部無くしてもイイです。


※初めての小説です。 ド素人なので誤字脱字、文章もメチャクチャかも知れないですが、 宜しくお願いします。

No.1263709 10/03/04 21:10(スレ作成日時)

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No.201 10/05/16 22:13
サクラ ( mR7jnb )

「元気にしてたのか…?」

サヨナラしてから3ヶ月。
久しぶりの彼の声は
前と変わらず、優しく私の胸に響いた。


「元気だよ…。トシ君…会って話したいよ…」


会いたくて会いたくて
今まで我慢してきた気持ちも、今はもう押さえる必要はない…


「俺も会いたいよ。ずっとサクラの事ばっかり考えてたんだ…」


その言葉を聞いて
さっきまでのモヤモヤが嘘の様に消えた。


私達は、明日会う約束をして電話を切った。


本当は今すぐにでも
会いたいけど
私には優樹が居る。


もう昔みたいに
優樹を預けて家を空ける事は出来ない。


私は携帯をテーブルの上に置き、隣室で眠る優樹を見に行った。



スヤスヤと寝息を立てて
幸せそうに眠る優樹。
優樹の髪をそっと撫でながら、私は喜びを噛み締めていた。

No.202 10/05/16 22:26
サクラ ( mR7jnb )

次の日、いつもの様に
優樹を保育所まで送り
再び、私は家に帰った。


シャワーを浴びて
お気に入りの服に着替えた。化粧もいつもより念入りにした。


身支度が整うと、全身を鏡に映し、おかしな所は無いか最終チェックした。


【初デートを迎えた中学生かぃ。】

自分に突っ込みを入れながらも浮き足だった自分を止める事が出来ない。




時間より早く、私はトシ君の家に着いてしまった。


今日はトシ君の家で会う。
私が、それを強く望んだ。

私が最後に彼の家に行ったのは、まだトシ君は友達の旦那だった。

離婚後は千春と同棲していて一度も部屋には入れなかったから。


やっと…トシ君の家に入れる様になったんだ…


私にはその事が何よりも嬉しかった。

No.203 10/05/17 19:11
サクラ ( mR7jnb )

彼の住んでる団地の階段を登る。


一段登る度に胸の高鳴りが大きくなる…



もう少しで会えるんだ…


寂しかった想いも
恋しくて挫けそうになった事もあるけど…


無駄じゃ無かった。


今ようやく、私達は始まるんだ…



彼の家の前に着き、深呼吸をした。深く息を吸い込むと、懐かしいトシ君の匂いがした。
たったそれだけの事で
胸が苦しくなって
目頭が熱くなった。

No.204 10/05/17 19:20
サクラ ( mR7jnb )

インターホンを鳴らし
彼の返事を待った。


室内から聞こえる足音が
近づくのが分かる。


【どんな顔して会えばいいのかな…】

【最初に何て言えばいいのかな…】

【どぅしよぅ…凄い汗かいて来たけど…汗臭くないかな…】


胸のドキドキもピークに達し、頭の中ではグルグルと答えの出ない疑問が浮かんでは消えた。


「はぁ~~い。」


緊張感の欠片も感じさせない、やけに間延びした返事と共にドアが開かれた。

No.205 10/05/17 19:39
サクラ ( mR7jnb )

玄関を開けた彼は
前と変わらず、優しい笑顔で私を出迎えてくれた。


「お帰り。」


「た、ただいま…っ」

貴方の隣に、ようやく帰って来れたよ。


差し出された手のひらを
そっと握り返す。


ずっと、この手のひらが欲しいと望んでた。
ようやく、掴む事が出来たんだ。



涙が溢れて来て
トシ君の顔が見れないよ。

もっと、ちゃんと、しっかり見つめて居たいのに。


私はぐちゃぐちゃの顔のままトシ君の胸に飛び込んだ

深く深く息を吸い込む。


トシ君の匂いが
身体中に染み渡る様に。

No.206 10/05/18 18:32
サクラ ( mR7jnb )

私達に余計な言葉は必要無かった。
ただ、こうして会えた事がお互いの『答え』だと。


離れて居た距離を埋めるように、きつく抱き締め、優しく激しいキスをした。


私の体が彼への愛で支配されて行く…
何も考えられなくて
ただ目の前のトシ君を見つめる事しか出来ない。


「好きだよ。」


「愛してる。」


どんなに言葉に出しても
伝え切れない。
この気持ちを伝える言葉はなんだろう。


いつか…2人で、その言葉を探せたら良い。
愛してるよりも深い言葉を。

No.207 10/05/20 21:56
サクラ ( mR7jnb )

私達はそのまま
お互いを求め合っていた。

彼の指先を
彼の腕を
髪の毛を
そして、彼の瞳を。


全てが愛しくて

彼の全てが欲しくて

私は何度も何度も

彼を求め手を差し出す。



彼は全身で私に答えてくれる。


温もりと優しさが
彼の体を伝って
私の体に注ぎこまれる。



沢山の愛を感じ満たされると、私達はそのまま
ベッドの中で
手を繋いだまま瞼を閉じた。

No.208 10/05/21 19:59
サクラ ( mR7jnb )

私の髪を撫でる
優しくて温かい手のひらの感触で目が覚めた。


目が合うと
にっこり微笑んで
「今、凄い幸せだよ。ありがとな。」

とキスをしてくれた。


私も彼の首元に腕を回し
「私も幸せだよ。ありがと。」と言った。


本当に…
本当に幸せだと思った。


このまま、
きっとずっと一緒に居られると思ってたんだ。





「今日、仕事行きたくないなぁ~。せっかく会えたのに。時間経つの早いよなぁ」


そんな事を言って
子供みたいに不貞腐れた顔をした。


「そうだよね~…本当に時間経つの早いよ…」


でも、これからは
いつでも会える。

会いたい時は
会いたいって言えるんだ。

No.209 10/05/21 23:30
サクラ ( mR7jnb )

私は、ようやく堂々とトシ君の隣に並んで歩ける事が何よりも嬉しかった。


もうすぐ二歳になる優樹も幼いからなのか
トシ君と3人で過ごす時間にもすんなりと馴染めた。

私の仕事もトシ君の休みに合わせてシフトを組み直した。
トシ君の家にも私や優樹の荷物が増え始め、
私の家にもトシ君の荷物が増えつつあった。


段々と彼色に染まる私。
脳内も生活も
全てが彼で埋まって行く。

そんな事が
私にとって、大きな喜びとなった。


優樹を間に挟んで
3人で手を繋ぎ歩ける事が



何よりも幸せだったよ…

No.210 10/05/21 23:47
サクラ ( mR7jnb )

だけど…


そんな幸せな時間は
そう長くは続かなかった。


トシ君が泊まりに来た日、直接仕事へと行った彼は、携帯電話を置いたまま行ってしまった。



「ヤダ…トシ君の…」


私はテーブルの上にポツンと置いてある携帯を見て
深い溜め息をつく。


「何で忘れるかなぁ…」


誘惑に負けそうな自分が確かに居る。


携帯電話の前で
目を剃らす事すら出来ない。


私は携帯に手を伸ばした。

指先が触れる直前で
隣の部屋にある私の携帯電話が鳴り響いた。

No.211 10/05/21 23:55
サクラ ( mR7jnb )

「ビックリしたぁ。」


1人呟くと
優樹が私の携帯を片手に持ちニコニコしながら
「はい。ママの。電話だよ~。」
と小さな手には大きすぎる電話を私に差し出した。


「ユウ~ありがとね~」


携帯を受け取り
もう片方の手で頭を撫でると優樹は満足そうな、得意気な顔をして見せた。



着信を見ると
トシ君の働くバーからだった。

No.212 10/05/23 21:32
サクラ ( mR7jnb )

「もしもし…?」


「サクラ?俺~…携帯忘れたっぽいんだけど…」


「うん。置きっぱなしになってたよ~。もぅ、止めてよね~!携帯忘れる何て。」


見てしまいそうな自分が怖くて、わざと明るい声を出してみた。
先に言っておけば
見る気も無くなるような気がしたから…


「ハハッ。電話とか鳴ってもシカトして良いから。
それに、携帯見たら一発で分かる様になってるからなぁ。てか、悪いけど店まで持って来てくれない?」


声は明るいながらも
携帯をいじるなよ。と、こちらに向けた無言のメッセージは感じ取れた。



私は何か引っ掛かる物を感じながらも、届ける約束をして電話を切った。


「優樹~、お出掛けだよ~。おいでぇ。」

1人遊びをしていた優樹を呼んで、身支度を始めようとした、その時…



~♪~♪

テーブルの上の
トシ君の携帯が鳴る。

No.213 10/05/23 21:47
サクラ ( mR7jnb )

私はテーブルに手を伸ばしトシ君の携帯を覗き込む。


【メール受信完了】


携帯を開いてみると
メール一件の表示。


彼の言葉を思い出す。


【携帯見たら一発で分かる様になってるから。】


そぅか…


この状態で携帯をいじれば待ち受けに表示される【メール一件】が消えちゃうんだ…


だから。
見たらバレるって事!?


そこまでして…
そんなに見られたく無い事があるの!?


自分の動悸が早まるのを感じた。携帯を持つ手が
小刻みに震えだし
頭がクラクラする…

No.214 10/05/25 17:24
サクラ ( mR7jnb )

携帯のメールボタンにそっと指をあてる。


心臓が壊れそう程
大きな音を立てる…

クラクラする…

震えが止まらない…


【見たらダメ…
でも…
安心したいんだ…】



私は指先にグッと力を込めて携帯のメールボックスを開いた。



受信ボックス

メールはフォルダわけされていた。


【家族】
【仕事】
【友達】
【地元】


新着メールのマークは【仕事】からだった。
きっと職場の誰かに頼んでメールを入れたんだろう。

No.215 10/05/25 17:44
サクラ ( mR7jnb )

【仕事】のフォルダを開く

ソコには、やはり職場の子からのメール。


【お前…最低だな。】

たった一行のメール。

もしもメールを開いたら見れる様にと
トシ君から私へのメール。

胸がズキズキ痛い…
でも…止められない…


職場関係には
怪しいメールは無かった。

お店の従業員や常連客。


私の知って居る名前から
知らない名前もいくつかあった。



…こんな事して…
私は…何やってんだろう。

そう感じながら
携帯をいじる手を止める事が出来ない。

  • << 217 優樹にとって パパはトシ君で・・ パパが大好きで。 トシ君に会えない日は 「何で来ないの?」と 泣き出す事もある。 ・・トシ君も 優樹の事を とても大切にしてくれている 。 休みの日には必ず私たちを連れて 優樹が楽しめる場所へと足を運ぶ。 私の仕事が遅くなる時なんかは 二人で食事してお風呂まで済ませてくれる。 この半年近く とても、幸せで 上手く行っていると そぅ思っていたのに。 そう思っていたのは私だけだったのかな・・ なんで・・・ ・・・ なんで・・ 私じゃダメなの?

No.216 10/05/30 17:09
サクラ ( mR7jnb )

>> 215 「ママァ?お出かけはぁ?」
小さな優樹の温かい手の温もりを
背中に感じる。
「ママ、電話終わりして?」
私の首に回せれた小さな手を
そっと握りしめて
「はぁい。おっしまい。」
にっこり笑って携帯電話を閉じて優樹を見た。
「はい。いい子ねぇ」
そぅ言って優樹は私の頭を 撫でてくれた。


・・・それは
よく、トシ君がしてくれることだね?


「上手にお返事出来たな、優樹。いい子~。」


そう言って優樹の柔らかな髪を
ワシワシと大きな手で撫る。
優樹は、いつもそれが嬉しくって
ニコニコ笑顔になるんだよね。

No.217 10/05/30 17:12
サクラ ( mR7jnb )

>> 215 【仕事】のフォルダを開く ソコには、やはり職場の子からのメール。 【お前…最低だな。】 たった一行のメール。 もしもメールを開いた… 優樹にとって
パパはトシ君で・・
パパが大好きで。
トシ君に会えない日は
「何で来ないの?」と
泣き出す事もある。



・・トシ君も
優樹の事を
とても大切にしてくれている
。 休みの日には必ず私たちを連れて
優樹が楽しめる場所へと足を運ぶ。


私の仕事が遅くなる時なんかは
二人で食事してお風呂まで済ませてくれる。


この半年近く
とても、幸せで
上手く行っていると
そぅ思っていたのに。
そう思っていたのは私だけだったのかな・・





なんで・・・


・・・


なんで・・



私じゃダメなの?

No.218 10/05/30 17:24
サクラ ( mR7jnb )

優樹を抱きしめて
私はそっと涙を拭いた。

携帯電話の中身は
ほとんど見てしまった。

私達と一緒に過ごしているいる時間でも
彼は他の子とメールをしていた。

『大好きだよ。』
『今度、いつ飲みに来る?会いたいよ。』

『今日は妹の子供と一緒に居るから会えないんだ。』

そんな送信メールが沢山残されていた。

それは、決まった子に送られたモノでは無く
複数の子に送られていた。


私はいつから妹になったの・・?
優樹は貴方の子供じゃない・・!!

怒りよりも
こんな事になってるって
全く気づかなかった自分が
何だかひどく惨めで
悲しくて


哀れで・・
涙が出るよ。

No.219 10/05/30 17:37
サクラ ( mR7jnb )

>> 218 「よし・・行こうか。」

優樹のお気に入りの
帽子をそっと頭に乗せた。

「行こう!いこう!」

私の手をひっぱて
玄関の方へと歩きだす優樹。



「お出かけ・・どこ行くぅ?」
靴を履きながら
私の方へ振り向き上目遣いに
訊ねて来た。


「ん~・・優樹の好きな公園か・・パパの働くお店か・・どっちがいい・・?」


私は迷っていた。
今、トシ君に会っても
上手く誤魔化す事出来るかな。


私は、こんな状況でも
『別れ』には気持ちが
踏み出せずに居る。

でも
携帯を届け無ければ
私が見た事にきっと気付くはず・・

見たことがバレたら・・
きっともぅ・・
許してはくれないよね。

No.220 10/06/02 12:30
サクラ ( mR7jnb )

彼のお店の前に車を停めた。
入り口付近にある大きな窓から
店内を確かめた。
まだ時間が早いこともあって
お客さんの姿は無い。
カウンターの中に
トシ君とオーナーの姿がある。


私は意を決して
お店の扉を開いた。


___カラン・カラン__


入り口に下げられたカウベルが
大きな音を出して
私たちの訪問を知らせた。


「いらっしゃ・・おっ!珍し~い。元気だったの?二人共。」


私達に気づいたオーナーが
声を掛けてくれた。

その後ろでトシ君は
にっこりと・・


いつもと同じ笑顔で立っていた。

No.221 10/06/02 12:47
サクラ ( mR7jnb )

「ご無沙汰しています。」

私はオーナーに頭を下げて
促されるままカウンターに座った。

「優樹~大きくなったなぁ。何歳になったんだぁ?」

オーナーは細い目をさらに細めて
優樹に声を掛けた。

優樹は恥かしそうに
隣に座る私の腕に抱きつきながら
消え入りそうな声で
「ゆうき・・2歳よ・・。」
と自分の指でVサインをしてみせた。


そこでようやく
優樹はトシ君の姿に気づいた。

「あっ!!パァパ!!」


「優樹~今頃気づいたのかよ。」

トシ君は優樹の頭を優しく撫でた。

「・・・パパ?」

傍に居たオーナーが私達3人を見た。


【そっか・・何も知らないんだ。】

私が離婚してから
この店に来たのは今日が始めてだった。

「あ~・・オーナー、実は私、離婚したんですよ。」

順を追って説明をしようとすると
トシ君が口を開いた。

No.222 10/06/02 12:58
サクラ ( mR7jnb )

「そぅそぅ。離婚してから何かと会う機会多かったから優樹、俺の事、パパだと思っちゃってるんですよ~。」


そぅ言って再び優樹の髪を撫でた。

【えっ・・】

何で、本当の事言わないの?
何で隠すの・・?

「なっ?!」
と、私に同意を求めて笑顔を向けた。

「・・はい。男の人はみんなパパだと思っちゃうみたいで・・」
あはは・・と乾いた笑いが出た。

「なんだぁ。てっきり2人、付き合い始めたのかと思った。」

「あはは。恋人ってより、兄妹みたいな関係ですからね。」

トシ君のトドメの一言だった。


痛いよ。


トシ君。

何でだろう。

携帯の中身よりも

こうして隠されたこと

・・私と優樹の存在を否定された事が

すごくすごく

胸に突き刺さるんだ。

No.223 10/06/02 13:09
サクラ ( mR7jnb )

それでも何も言えない私。

全部言ってしまえばいいのに。

言えないのは、それでも彼を失いたくないから。


「優樹、あっちにお菓子あるよ。取りに行こうか。」

オーナーが優樹の手を取って
裏口を指差した。

オーナーの家は
お店のすぐ裏にあるマンションだった。
「トシ。店も暇だし、ちょっと家に戻って来るな。」
「優樹連れて行っていい?」

「行ってらっしゃい」
と手を振って二人を見送った。

人見知りしてた優樹も
お菓子と聞いてニコニコしながら
オーナーの手を握っていた。


__カラン・カラン__

お店のドアが閉まる音を聞きながら
私は体をトシ君の方にむけた。

No.224 10/06/02 13:27
サクラ ( mR7jnb )

「何で・・私と優樹の事誤魔化したの?」

恐る恐る・・本当は怒鳴り散らしてしまいたい気持ちを抑えながら
それでも、真っ直ぐに彼の目を見据えて尋ねた。
 
「何でって・・だってお前も俺も相方と別れてまだ半年じゃん。」

「だから・・何?」

「半年しか経って無いのに、付き合うとか、世間体良くないだろ?」


嘘。
そんな理由じゃ無いくせに。


でも、あまりに正論だったから
言い返す言葉が見つからない。

言いたい事はいくらでもある。

だったら、付き合わなきゃいい。
胸張って言えない様な事はしないで。

彼に浴びせたい罵倒の数々は
頭の中で広がって
そのまま消える・・

「それに・・千春もオーナーと仲いいから。もし俺たちが付き合ってるのバレたら面倒じゃん。」


トシ君は、まだ知らないんだね。
千春はもぅ、誠さんと付き合ってるのに・・
もし、その事知ったら
今度は、千春を奪い返そうとするのかな。

No.225 10/06/02 13:42
サクラ ( mR7jnb )

「千春・・?あの子なら平気じゃん?」


考えるよりも先に
言葉が口にでた。

「はっ?なんで?」
トシ君の声色が変わる。
「だって、あの子・・彼氏居るよ?」

トシ君の顔から笑顔が消えた。

「何でお前がソレ知ってるんだよ?」


「何でって?相手・・誠さんだよ?」

「何言ってんだよ?そんな訳・・」

この人は、千春に何を求めていたの?
今でも自分の事を好きでいて欲しかったの?


「だって、あいつ。別れる時、すごい泣いて大変だったんだ。
俺じゃなきゃ駄目だって・・だから・・はっ?てか・・嘘だろ?」


女なんてそんなモンでしょ。

寂しい時ほど・・
弱ってる時ほど
支えてくれる人が居れば
甘えて頼ってしまうんだよ。


いつまでも
帰ってくるか分からない人を
愛し待ち続けられる人なんて
ごく僅かしか居ないんじゃない?


・・馬鹿な男・・

No.226 10/06/02 14:31
サクラ ( mR7jnb )

ふと、ドアの方に目をやると
窓から、優樹とオーナーが戻って来るのが見えた


私はバッグからトシ君の携帯電話を取り
彼の前に置いた。

「コレ・・」

彼が携帯を手に持ったのを見て
私は再び口を開く。

「シャワー浴びてる間に優樹が弄ってたから、電源落としちゃった。どっかに電話とか掛けてたらゴメンね。」

トシ君は携帯の電源を入れながら
「あぁ。ありがとう。」
と言って調べるでも無く、そのままポケットにしまった。

そこへ優樹とオーナーが店に入ってきた。
優樹は両手に沢山の玩具とお菓子を抱えていた。

「わぁ、オーナー・・こんなに、いいんですか?」


「ウチのが優樹見たら喜んじゃってさぁ。玩具はコーヒーのオマケとかだし。貰ってくれたら助かるよ。」

そう言うと優樹と繋いだ手を離し
優樹は嬉しそうにニコニコ笑いながら
私の元に駆けてきた。

「まま、おばちゃんね、くれたぁ。」

手に持った袋を私に手渡し
誇らしげに中身を見せてくれた。

「優樹、ありがとう言えた?」

「うん。おじちゃん。ありがとう!!」

優樹と私はお礼を言い
トシ君に背を向けたまま
お店を後にした。

No.227 10/06/02 15:02
サクラ ( mR7jnb )

私は当ても無く車を走らせた。


もしも、世界で
私と優樹とトシ君の3人だけで過ごせて行けたなら
きっと・・ずっと幸せに生きていける。


彼は私だけをずっと見てくれる。

私と優樹だけをずっと大切にしてくれる。


そしたら・・
私はもぅ、何もいらないよ。


本当に欲しいモノは
そんなに多くないんだよ。
トシ君と優樹と3人で笑い合っていければ
それだけでいいのに。


でも、このままじゃ駄目。
この世界では、私は幸せになれない。


トシ君の愛はすぐにフラフラと

何処かに向かってしまうもの。


もぅ、誰にも触れて欲しくないの。

トシ君の事独り占めにしたい。
もぅ誰も彼の瞳に映って欲しくない。
・・・嫌いになりたい。
一緒に居てもこんなに苦しいなら
一層の事、嫌いになれたらいい・・


彼の嫌な所、沢山知ってる。
弱さもズルさも 格好悪い所も・・
なのに、なんで嫌いになれないの・・?

No.228 10/06/02 15:12
サクラ ( mR7jnb )

暫く車を走らせると
静まり返った車内に
携帯の着信音が鳴り響いた。


車を路肩に停め 携帯を開くと
トシ君からメールが入っていた。
『今日は、わざわざゴメンな。
気を付けて帰れよ。
ありがとう。』

いつもと何も変わらない内容に
強張っていた頬が少し緩む。


携帯の中身を見た事に気づいていないのか
・・それとも、千春の事がショックで
それ所では無かったのか・・


どちらにしても・・

【良かった・・】




トシ君を嫌いになりたい。

その思いの反面

彼に嫌われたくない。
離れたくない・・

その思いは強かった。


だから彼の嫌がる事はしちゃいけない。

我慢しなくちゃいけない。

私が、もぅ我慢出来なくなるまで・・

失う覚悟が出来るまで。

ただ黙って耐えればイイんだ・・

No.229 10/06/16 14:10
サクラ ( mR7jnb )

「ただいまぁ。」

深夜2時過ぎ

いつもと何も変わらない様子で
仕事を終えたトシ君が
私の家に戻ってきた。

ベットに入っても
なかなか寝付けなかった私は
その声を聞き
リビングのドアを開けた。

「おかえり・・」

「あっ、悪い。起こしちゃった?」


そぅ言うと
手に持った携帯電話を閉じた。


---今、何してたの?
私が居たら都合悪かった?
誰にメールしてたの?


普段なら気にならなかった
そんな些細な行動が
私を
大きく不安にさせる。

No.230 10/06/16 14:29
サクラ ( mR7jnb )

>> 229 「ん?どうかしたか?」

「えっ?ううん。何でもないよ。」

いいの。
何にも聞かないの。

大丈夫・・

彼が寝るのを待って・・
そしたら、チェックしなくちゃ。


「早く、一緒に寝よう?」

私はトシ君の隣に座って
彼の肩にもたれ掛かった。


---それからトシ君が
寝るまでに2時間近く掛かってしまった。
隣をチラリと見ると
トシ君の微かな寝息が聞こえる。


明日は7時に起きなきゃいけないのに・・
寝坊したらどうしよぅ。


もっとも・・
今から眠れたらの話だけど。


一緒にベットに入ってからも
目は瞑ってても
眠気は不思議なほど
遠のいていく。


ただ頭にあるのは
彼の枕元に置いてある
携帯電話だけ・・


そっと体を起こし
携帯電話に手を伸ばした。

No.231 10/06/16 14:44
サクラ ( mR7jnb )

>> 230 そのまま、そっとベットから降りて
トイレに入った。

手に持った携帯を開くと
また心臓がバクバクと大きく波打つのが分かった。
呼吸が荒くなる。

手にはじっとりした汗をかき始めた。

震える指でメールボタンを開く。

相変わらず無防備に
メールボックスの画面が表示された。

【送信BOX】

最新順に並ぶその画面を
私はただ、じっと見つめた。


加奈
加奈
加奈
加奈

千春
千春
加奈
千春
加奈


やたらと並ぶ加奈の文字。
千春にメールは想定内。

早まる気持ちを抑えて
まだ見ていない一番古いメールから
開いてみた。

No.232 10/06/16 17:18
サクラ ( mR7jnb )

>> 231 _____________
[千春]
元気か?
久し振りだな。

最近連絡来ないから
何か気になってさ。

俺は相変わらず
一人寂しく過ごしてる(笑)
_____________

私は次のメールを開く。

______________
[加奈]
今日はバイト休みだっけ?
______________

【加奈って新しいバイトの子か・・】
・・次のメールを開く。

_______________
[千春]
そっか。元気そうで安心した。
千春は最近どうなの?
新しい男出来たのか?

_______________

[千春]
そっか~。
お前可愛いから
すぐ新しい男出来ると思ってた。

でも、やっぱショックかな。
忘れられなかったのって
俺だけだったんだな(笑)
バカみて~だな。
_______________

いつの間にか
胸の痛みも罪悪感も
色んな感情が麻痺していた。
ただ・・
次へ、次へ、と
メールを読み進める自分が居た。

No.233 10/06/16 17:33
サクラ ( mR7jnb )

____________
[加奈]
今日、学校かぁ。
お前居ないと寂しいなぁ。
_____________

[千春]
いやぁ~、バカみたいだろ?
お前を幸せに出来るようになったら
その時に、お前にプロポーズしようって
そう思って、俺は今まで
仕事も頑張って来たんだしな。

目標見失っちったよ。
_______________

[加奈]
俺は、毎日でも
加奈に会いたいけどな。
お前が店に居るだけで
頑張ろうって思えるんだ。
________________


この人・・
ホント凄いな。

よくもまぁ・・
同時にこんな良い顔できる。

外ではこんな。
私の元に来れば
私だけって顔して
隣に居れる。


怒りも呆れも超えて
ある意味尊敬しちゃうよ。

No.234 10/07/29 21:46
サクラ ( mR7jnb )

不思議と涙は出てこない。

ただ、酷く胸が痛い。


部屋に戻りトシ君に気付かれ無いように、そっと携帯電話を戻した。


いつもと同じ様に
私は彼の隣へと潜りこんだ

眠るトシ君を
ただずっと見ていた。


どうして…


私じゃ駄目…?
私だけじゃ物足りない?


あんなに笑い合ったのに。
沢山笑ってたじゃない?


『大好き』って言ってくれたじゃん…


寂しさが込み上げて来て
私は、眠るトシ君の腕に抱きついた。

No.235 10/07/29 22:03
サクラ ( mR7jnb )

「…ん?…どした?」


いつの間にか私の瞳から
涙がこぼれ落ちていた。


胸の中に広がる
冷たい暗い霧が
少しずつ、吐き出されて行く…


「ごめ…起こした?…」


私はさっきよりも強くトシ君の腕にしがみつく。


「どうしたの?」


心配そうに私を覗き込む。

「嫌な…嫌な夢…見た…」

…そう…これは全部悪い夢だったら良い。


しがみついた私から腕を外し、トシ君はギュウっと私を抱き締めてくれた。


体中に広がる彼の温もりが、夢なんかじゃないと教えてくれる。




その温もりを
私は今でもずっと
忘れられない…
寂しさを纏った温もりを…

No.236 10/08/08 15:32
サクラ ( mR7jnb )

>> 235 一緒に居たいと思った。

二人で居れば、幸せになれると

そう思った。

トシ君の傍に居るために

沢山の人を傷つけてきた。

そして、

自分も沢山の傷を負ってきた。


因果応報。

誰かに付けた傷は

必ずもっと深く大きな傷になって帰ってくる。

No.237 10/08/08 15:43
サクラ ( mR7jnb )

眠れぬまま朝が来た。

私は再び、トシ君の携帯を持って
トイレに入った。

そして、私の携帯とトシ君の携帯を向かい合わせる。

_赤外線受信完了。


自分の携帯はポケットにしまい
トシ君の携帯を再度、操作を始める。

いくつかの画面が切り替わり

自分のメールアドレスを入力する。

___自動転送サービス設定。


私はもう中途半端な位置から抜ける。

堕ちる所まで堕ちて行く。

No.238 10/08/08 15:54
サクラ ( mR7jnb )

まだ眠るトシ君の隣に座った。

「ねぇ・・起きて」

自分でも驚く程、低く、冷たい声が出た。

「ねぇっ」
肩を揺さぶると
少し驚いたように
布団から起きた。
「えっ?どした?」


「これ・・どうゆう事?」

携帯を思い切り投げつけた。

「俺の携帯・・?」

まだ寝惚けた頭で状況がうまく掴めない。

「加奈って・・誰?」

ハッとした顔になり自分の携帯を拾う。

「お前、見たの?」

まるで汚い物でも見るかのように
私に冷たい視線を浴びせる。

・・・汚いのは・・
私じゃない・・!

No.239 10/08/08 16:05
サクラ ( mR7jnb )

「加奈って誰よ・・?」

私も負けじとトシ君を睨む。

しばらく沈黙した後
トシ君は徐に立ち上がり
洋服に着替え
寝室から出て行った。

私も黙ってその後に続いた。

彼はそんな私にチラッと視線を向けると
「お前とはもう一緒には居られないわ」
と呟きながら
手当たり次第に自分の荷物を袋に
投げ込んでいく。

その光景を黙って見ていたら
悔しさが込み上げて来た。

「何なの?逃げる訳?」

泣き喚きながら、私はトシ君の腕を掴んだ。

No.240 10/08/08 16:14
サクラ ( mR7jnb )

「ちゃんと・・話してよ・・!!」
ずっと願ってた。
私だけを愛してくれる事。
「私じゃダメなの?」
トシ君は何が欲しいの?
私じゃ、叶えられないの?
「こっち・・見てよ・・なんか言ってよ・・」

私を見て
私だけを見てよ・・

「離せよ・・!」

掴んだ腕を振り払われた拍子に
私の体は冷たいリビングに倒れこんだ。

「お前さぁ、人の携帯見るなんて、人として最低だろ
そんな女だと思わなかった。減滅したわ。」

倒れた私を見下ろしながら
冷たく言い放った。

No.241 11/01/10 22:00
サクラ ( mR7jnb )

>> 240 どうして私は
こんな男に振り回され
何度も失望をして
それでも・・嫌いになれないの・・?

もう、好きなんて言葉じゃ
伝えきれないよ・・

最低な男だって分かってる。

それでも一緒に居たいと願ってる。

「愚かな女だね・・」

鏡に映る女に笑い掛けた。

酷く自嘲的な笑みになった。

もぅ、私の心は壊れてしまったのかな。

No.242 11/01/10 22:24
サクラ ( mR7jnb )

>> 241 体の震えが止まらない。
心の痛みが消えない。

流れる涙は溢れ続ける。

感傷に浸って居る間もなく
携帯電話からメールの受信を知らせる着信音が鳴り響く。

淡い期待を抱きながら
急いで携帯電話を開く。


もしもトシ君が私の元に戻って来てくれるなら
一言「ゴメンね」と言ってくれたなら

私はきっと全てを許す・・

メールを開くと見慣れないアドレス・・


「・・フフ・・あは・・あはは」


________________

急にどうしたの?
トシと会えるなら学校サボるよ~

________________

加奈からのメールかな?

さすがに行動早いんだね。
もう・・笑うしかないじゃん。



トシ君の携帯に送られて来たメールは
自動転送で私の携帯にも送られてくる。

最低でもなんでもいい。

こんな事してでも私はトシ君を嫌いになりたい。
トシ君から嫌われたい。

もう2度と元に戻れない位に
メチャクチャにしなくちゃ・・

No.243 11/01/18 23:34
サクラ ( mR7jnb )

>> 242 毎日がただ長くて
一日が・・一分が・・
早く、過ぎればいいのに。

目が覚めたら、一年・・二年って
経ってたらいいのに。
それが出来ないなら、

・・・神様・・
お願いします。

私の記憶を全部、消して下さい。
トシ君との思い出と引き換えに
大切な思い出も全部消えたっていい。
家族の事も友人の事も
全部忘れたっていい・・

No.244 11/01/18 23:45
サクラ ( mR7jnb )

涙は何日経っても乾く事なんてなくて
まるで昨日の出来事の様に
去っていくトシ君の後ろ姿が
思い浮かんでは泣いていた。

その度に、小さな勇樹は
心配そうに暖かい手のひらで
涙を拭ってくれた。

こんな私なのに・・

私は・・母親なのに・・

何で、母親としての自分じゃ満足できないの・・
こんなに、勇樹は私を求めてくれるのに・・

No.245 11/01/18 23:59
サクラ ( mR7jnb )

私の携帯電話は相変わらず
転送メールが送られて来ている。

加奈との関係の深さも
メールが全部教えてくれる。

もぅ、本当にこの場所から抜け出したい。

自分の力で、
壊さなければいけない。
前に進むために・・

決心が着くまでに
2週間近くの時間を費やしていた。

久しぶりに部屋のカーテンを開けた。

窓からは
澄み切った青空が見えた。

物音がして後ろを振り返ると
寝癖だらけの髪の毛で
あくびをしながら立っている勇樹が居た。

「ママ、おはよう。」

勇樹を抱き上げたら
その重みに一瞬、よろめいた。

勇樹の重みが、その成長を教えてくれる。

『いつまでも、同じじゃいられない』

No.246 11/01/19 00:18
サクラ ( mR7jnb )

勇樹を保育所に送った後に
私はトシ君の家へと向かった。

携帯電話を開いてトシ君に電話した。

この時間は一人で居るはず・・

何度目かのコール音の後
懐かしい声が聞こえてきた。

「はい?」

たった一言で、胸にジンと来た・・

「サクラだよ。」

いつもより控えめな声で
トシ君を刺激しないように

「うん。何?」

「この間はゴメンなさい。」
反省している事が伝わる様に

「いや・・てか、俺、もぅ無理だから。」

「でも私、別れたくない・・」
まだ私たちは、別れて居ないの。
私がそれを認めていないから。

No.247 11/01/19 00:39
サクラ ( mR7jnb )

「嫌、無理だって。」

「トシ君の嫌がる事、もぅしないから・・」
懸命に縋りつく・・

「もぅ、無理だってば。」

「何で?他に好きな人・・出来たの?」
最後くらい、本当の事、聞かせて・・

「は?何でそぅなるの?そんな簡単に他の奴好きになれない。お前の事好きだけど、もう信じられない。だから別れたいの。」
・・やっぱり、嘘つくんだね。
別れたいって言ったって事は、
今はまだ、付き合ってるんだ、私たち・・

「私は別れたくない。」
まだ、引く訳には行かないんだ。
「お前がした事で俺はこんなに苦しんでるんだよ!俺だってずっと一緒に居たかった・・でも、もう、お前の事は忘れたい。」

「やだよ・・」
もぅ、涙は出なかった。

「嫌だって言うけど、全部自分が悪いんだろ?」

「ごめんなさい・・」
ごめんなさい・
嫌だ・別れたくない・・の3つの言葉だけで
20分以上電話は続いた。

No.248 11/01/19 00:55
サクラ ( mR7jnb )

さすがに、喋り疲れたのか
トシ君も観念したように
「分かった・・取り合えず、少し考える時間くれよ。」
ため息交じりにそうつぶやいた。

「うん・・ありがとう。」

でも・・ごめんね。
考える時間なんてあげれないの。


あと数時間後には、修羅場見せてあげる。

「愛してる・・。」
私は最後につぶやいて電話を切った。

愛してる。

愛してるよ。

誰よりも。

今まで出逢った誰よりも・・

トシ君の事愛してる。

苦しくって、傷だらけで
沢山の涙を流したけど・・
それでもね、
全然嫌いになれなかった。

今も・・

嘘ばかりで、自分を悪者には絶対しない人だけど
「バカだな。」って思うけどね。

でも、気持ちは変わらないんだ。

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