冬の花

レス11 HIT数 2370 あ+ あ-


2009/12/16 23:22(更新日時)

『あ~寒っ…』


人恋しさがピークを迎える12月
夜道にヒールの音が悲しく響く…




カツッ カツッ カツッ カツッ…




残業したって送ってくれる男もいない
心配してくれる男も、いない



悲しいかな、社会人三年目、25歳の冬
あたし、加藤都美は今日も1人。





会社を出れば街は
うざいくらいキラキラしてる

そぅ…
いちいちキラキラ…キラキラしてる…


冷たい張り詰めた冬の空気が
よりいっそうキラキラを輝いて見せつけてくる



通りすぎるカップルの女は
『わぁ~☆綺麗☆☆☆』
とお決まりのセリフに、手を繋いで幸せそう

そして何より暖かそうだ…



そんな別世界の景色を抜けて、帰宅する
だんだん人もなく、明かりといえば、街灯くらいしかない景色が今日もあたしを迎えてくれる


『あ~今日も鍋食べよ。ビールっビールっ』



真っ暗な部屋へと少し急いだ

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No.1162769 (スレ作成日時)

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No.1

急いだ…が…




ん??
後ろの人も急いでるんだ…




何となく人の気配は感じるもので
かといって、嬉しいような悲しいような痴漢経験は一度もなく…



田舎のお母さんに
『痴漢は顔で選ばないんだから!!気をつけなさい!!』
って言われたけど


お母さん…
最近は痴漢も相手を選ぶんだよ…



と余計なこと考えてた次の瞬間っ…




ガバッ…




(こ、声が出ない…あたし死んだんだ…)



アスファルトが冷たい…


えっ??
えっっ???
えっっっ????

ち、痴漢??



後ろから大きな男に抱きつかれて
その勢いで倒れてちゃったんだ…



(あたし刺されたんだ…背中刺されたんだ…だから声出ないんだ…)




いろんなことが頭を駆け巡った





何となく男が私を抱きかかえるのがわかった
駐輪場に入ってく…


(あたしここで発見されるんだ…)


こんなときにも余計なこと考えてしまうのはあたしの癖だ

No.2

まさか自分が痴漢にあうなんて思ってもないあたしは
刺されたとまだ思っていた




駐輪場に入り

さっき打った頭がだんだん痛くなってきた



うっすら暖かい気がする


人生初のお姫様抱っこを記憶に焼き付けなきゃ…

痛みに耐えながら必死だった



あたしはバカだ。



そこから多分意識が何分か飛んだ…


ん…?

大きな男が覆い被さって動いてる




(ぅわ…有り得ない…)



…いつもの冷静な自分が居た



(最初で最後の男よ…顔くらい見せてくれ)






そう思ったら涙が出た

冷たい顔に暖かい涙…




(あぁ…あたしまだ生きてる…)




急に泣き声が出た

てゆうか泣き声しか出せなかった

(あたしも意外とか弱いんだ…)




  ガシャンッ




男は自転車達にぶつかりながら


消えた





頭…痛い…………

倒れた自転車治さなきゃ…


起き上がろうとするだけでズキズキ痛い…

No.3

―――――ウィーン―――――

駐輪場の自動ドアが開いた



さっきの男だと思ったあたしは
泣き声も止まり、ただただ涙が溢れた





BMXを押しながら男の子が入ってくる





あたしに気づく様子もなく
あたしも気づかないでと心底願った




が…

自転車の異様な倒れ具合を見て
男の子は直しはじめた



ヤバイ…
見つかる…!!




    バチッ




目が合った。







男の子が
『どうしたんですかっ??大丈夫ですかっ??』

と凄い凄い形相で駆け寄ってきた



あたしは涙が止まらないものの
『はいっ!!!
全然大丈夫です!!!
すみませんっ
転んでしまって…
私が直しますから!!』


といった勢いで起き上がったが
力が入らなくて座り込んでしまった…

No.4

ふっと目に写る自分の脚…
タイツは破れ…
スカートはまくれあがり…
ヒールもバッグもない…



神様…
あたし何かしましたか…



さっき見た幸せそうなカップルが目に浮かんだ





余計涙が止まんなくて


男の子はアタフタしてる



『すみませんっ
変なとこ見せちゃって
あたしバッグ探してきますね!!
ありがとうございました!!』




と言いフラフラと駐輪場を出た




『すみませんっ』




男の子があたしを追いかけてきた




『バッグとヒールって…さっきそこに落ちてたの僕交番に届けちゃいました…』

『酔っ払いが置いてったのかと思ったんで…』




『わぁ~!ありがとうございます!
交番ってローソンの裏の?』




『はい…』




『ありがとう。とっても助かります』

今できる精一杯の笑顔で言った



だって…



ほんとに神様に見えたよ…
鍵がなきゃ家に入れないんだもん

No.5

急に男の子がマフラーを外しだした




(まさか…絞め殺されるんだ…)
体が動かなくなってまた涙が流れる



(何ビビってんの!あたし!!)




男の子はアタフタしながら外したマフラーを
あたしのおでこに当てた






…??
最近はマフラーを頭にするのが流行ってんの??







ききたかったけど声が出せなかった







『結構流血っす』






『へ??』

思わず声が出た





『救急車とか呼んだほうが…
どこで転んだんですか??』







スッゴい純粋な目で聞かれた




『駐輪場で転んだんです寒かったから…』





意味不明なこと言っちゃった





―――ピリリリリッ🎵ピリリリリッ🎵―――





男の子の携帯が鳴った





『あ?うん ついてるよ
うん …………』





あたしはぺこりとお辞儀をして交番へ急いだ







何の予定もないけど
バッグの中の携帯もきっと着信ゼロだけど




無意味に急いでみた

No.6

そういえばあたし急ぐの好きぢゃないんだよね…


昔っから。




田舎人間だからマイペースなの。






でも冬の街はあたしを急がせる要素満載なわけで…







交番につくなりお巡りさんに
『ヒールとカバン落としちゃって…』


とゆった途端

暖かい交番の匂いと安心感に



ブワッ



涙がでて泣きぢゃくった
泣きながらさっきの体験を話し、
ブスがそんなことされるわけないだろって内心思ってるんでしょっ!
ってお巡りさんに当たった…



お巡りさんは
救急車を呼んでくれた



暖かいお茶もくれた









あたし何でここにいるんだろう

No.7

また冷静な自分が居た







救急車…乗れるんだ…









また意味不明なことを考えていた



泣いたせいか頭が余計に痛かった




救急車は来たものの
良い年こいてビビってしまった…










何が怖いのかわからないけど
怖くて震えながら眠ってしまった―――――









救急車の中、全然見れなかった…










『加藤さん…』




看護婦…?さん…?





だんだん意識が戻ってくる







明るい天井、右上には点滴…









いったい今何時なんだろ…








先生と看護婦さんが戻ってきた



『加藤さんはじめまして。担当医の川瀬です。
頭痛みますか?』



『はい…』




『検査の結果異常はなかったんだけど、念のため様子見で今日は泊まってもらいますね』



『先生…嫌です…』



先生は笑った




『看護婦がずっとついてますから大丈夫』




また笑って歩いてった

No.8

明日土曜日か…

会社休みでよかった………





また眠くなって目をとじる









夢? 今日が全部夢なのかな…









また目が覚める





どのくらい眠って 今何時なのか何もわからない





せわしい病院の音だけが聞こえる










あ~ やっぱ夢ぢゃない……………








体中が重くなる









家に帰りたい………………










『加藤さん』



さっきの看護婦さんだ



『大丈夫なはずはないんだけど…
今話していい?』





『はい』






『ご家族はいる?』







『はい…』







『連絡しようか?』








『いえ…』








『そうね…警察の方にあなたが回復したら連絡をするようになってるの
あなたがよければなんだけど…』








『はい…』








『でも気が変わったらまた教えて
それから夜食あるんだけどいる?』




急にお腹減ってきた





『はい』





看護婦さんはニコッと笑って駆け足で行った

No.9

いつの間にか また寝ちゃってた…




体中がさっきより全然痛い




はぁ………… 何なんだ この状況 このあたし 泣けてくる


気も張ってたのか 何かいろいろ押し寄せて 涙がいっぱいでた




枕元にはサンドイッチとコーヒー





現実か… 夢か… 未だに曖昧な感じがする




やっぱ食欲ないや
何もない



目を閉じる



本当なら 家に帰って、お風呂で歌うたいながら温まって、お風呂出たらまずビールだったはず…


そんなこと考えてたら
朝が来てた。

No.10

担当の看護婦さんは入れ替わり
違う看護婦さんが先生と来た。



それから警察の人と話をして、マンションの周りを見回り強化してもらうように頼んだ




午後には帰宅できる



ただ、帰りたかった



何があるわけでもない。
帰ることしか頭になかった

No.11

帰っていつもみたく、熱いお風呂で歌いまくって
裸でビールをシュポッ🎵といきたかった





自分でもわかってる






とにかく考えたくなかった
思いだしたくもない
現実逃避なんて好きぢゃないけど

思いっきり爆走して逃避したい自分がいる




そんな現実がまた夢みたいで、明るい病室は嘘みたいに賑やかだ

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