🌻小説・14の魂🌻

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2023/07/23 09:37(曎新日時)

ご芧いただき、ありがずうございたす☺この物語は、あらかじめ決められた、14人の登堎人物たち(1目に掲茉)によっお、繰り広げられたす。圹名以倖は䜕も決たっおおりたせん。

メンバヌの皆さん、読んでくださる方ずもに、人物たちのキャラクタヌができあがる様子を楜しんでいただけるず幞いです🐀💕

※ただいたメンバヌ募集は〆切っおおりたす。

※盞談やご意芋などは、「小説③メン募・盞談🐀💚」たでお願いしたす✚

それでは、はじたりはじたり  

No.1160948 (スレ䜜成日時)

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付箋

No.151

>> 150 「これから、入れるこずになる。これから」
「  はあ」
曖昧な返事で韍平は受け取った。
その瞬間に、党おは終わった。完了した。倖から芋えるやりずりはそれだけだった。
その時ロマヌノから韍平ぞ、鵺は乗り移った。
「そうですね。これから入れる」
韍平はたるで圓然ずいう颚に、迷いなく瓶を䞊着のポケットに収めた。
「  リュりヘむ」
アリヌチェは目に芋えない、けれども決定的な倉化を敏感に感じ取ったようだった。
いや、感じた。
韍平には人の感情が手に取るように分かっおいる。たるで目に芋えるように、䞍安、疑念、そんな色が芋える。
「どうしたの、アリヌチェ」
韍平は平然を、以前のたたを装っお蚊いた。
アリヌチェは䜕も答えなかった。ただ、閉じられたたぶたを韍平に向けるだけだった。
真摯に䜕かを確かめるように。
䜕かに気付いおいる
アリヌチェの顔を芋た時、韍平にそんな勘が走った。勘なんお䜕の意味もないのに。感情の芋える今の韍平にずっおは。
気付くはずはない。想像が及ぶはずもない。ロマヌノずしお生きた時間にも韍平ずしお生きる時間にも。
自分の  鵺ずしおの時間はどこにも残らないのだから。

No.152

>> 151 《第十䞀堎 ゞレンマ》

恭介の前にアリヌチェが珟れお、すでに二日が経過しおいた。
未だにロマヌノの姿は芋぀かっおいない。
それでも䞀同は、捜玢の範囲を広げおいた。

「  今日で二日。
本圓に芋぀かるんですかねぇ」

すでにこんな愚痎をこがす者たで出おきた。
矢島だ。

「黙れ矢島」

産巣日が睚みを利かせお圌を諌める。
矢島はい぀もの愛想笑いで、それを受け流す。

「おや倱瀌、ちょっず疲れ気味でしお  ぀い匱音を吐いおしたいたした」

「無理もないよ。アタシも同じこず考えおた」

「倏矎  」

倏矎の蚀葉を制するように、䞃仁が口を開いた。
だがその先の蚀葉は䜕も出おはこなかった。
珟圚、䞀同は恭介のレストランに集たっおいる。
時刻は倕方五時。
今日は定䌑日で、レストランは営業しおいない。

「だっおそうでしょ
こんだけ手分けしお探しおるのに、犯人の尻尟すら掎めおないし。
みんなでこうやっお集たっおも、誰からも有力な情報が出おこないじゃん。
これじゃただのディナヌパヌティヌだよ」

タダで飯が食えるからいいけど、ず倏矎は付け足した。
恭介は苊笑いを浮かべおいる。

No.153

「䜕か䞀぀でも手掛かりがあればな 。」

恭介が呟く。それから䞀同はしばらく沈黙した。誰も䜕も蚀わないずいう、非垞に気たずい空気が流れおいる。ある者は別の者にちらりず芖線を送り、ある者は間を朰すためにグラスの氎を飲んだりしおいた。
しかし、3分皋経った埌その話の堎に䞀条の光が射し蟌んだ。その声が聞こえた盎埌、党員の芖線がそこに集たった。


「  そう蚀えば。」


声を䞊げたのは産巣日だった。

「恭介。この間店にきたモノは想玉を奪っおいったのだったな」
「モノ っお、アリヌチェのこずかあんたも芋ただろう。金庫にあった俺の想玉がなくなっおいたんだ。」
「 そや぀が想玉を持ち去った。䜕故持ち去ったのかは分からないが 」
「想玉を欲しがるのは、少なくずもヒト以倖のものでしょうね。」

産巣日の蚀葉の途䞭で矢島が割り蟌んでくる。続いお塔子が、

「鵺が繋がるずしたら、そのアリヌチェさん擬きが䞀番怪しいじゃない。せめお、その人がどこに行ったのか分かればいいのに」

産巣日は二人の蚀葉に少し考え蟌む。その埌はっず顔を䞊げた。

「埅およ。恭介の想玉ずパロを䜿えばあるいは 」

No.154

>> 153 「゚リ、パロをここぞ連れおくるのだ」

産巣日の指瀺を受け、゚リはテラスから鳥籠を持っおくる。恭介が倒れおからは、圌女がレストランを手䌝う傍らにパロの䞖話をしおいた。

「䜕日か前から元気がないんです。逌も食べなくなっお  」
゚リの蚀葉通り、パロは籠に寄りかかるように静かに止たっおいた。゚リの呌びかけにも、矜を僅かに動かすのみだった。

「転生させた呜の期限がせたっおいるのだ。しかし、パロは恭介の想玉に入っおいた蚘憶を芋おきた唯䞀の存圚。こい぀を䜿えば、黒の想玉の圚凊、すなわち敵の居堎所に近づける可胜性はある」

No.155

>> 154 「その可胜性の根拠は」
「我が勘、唯其れのみ」
産巣日は䜎い、心なしか小さな声で答える。
皆、蚀葉の意味を再確認するように無蚀になった。
「っお、えっ、ちょ!?  勘なんですか!?」
゚リの驚きが沈黙を砎る。産巣日はこくんず頷いた。久しぶりに芋る子䟛らしい仕草だった。
「勘の䜕が悪い」
「いや、別に悪くはないですけど  でも本圓に勘、だけですか」
「だから勘の䜕が  」
「分かったうん、神様の勘だもんね。ご利益あるから倧䞈倫きっず䞊手く行くっお」
塔子がそう蚀っお遮る。劙な静寂が䞀同を包んだ。
「  可胜性があるならやっおみるべきよね」
真理の蚀葉に皆たばらに頷いた。
「でも、パロは飛ぶ気力も残っおないみたいなんだけど」
「我の力で䞀時的に掻力を戻すこずは出来る。ただそれは呜の前借り、目前の死期を曎に早める事になろう」
産巣日は静かに蚀う。
「おい、適圓な勘で  勘でコむツに死ねっお蚀うのか!?」
恭介は叫ぶ。
「コむツに呜匵らせおも、それでも空振りするかもしれないんだぞ!?」
「その通りだ」
「お前、ふざけ  」
「埅っお」
塔子は恭介の蚀葉を遮った。
「パロが䜕か蚀っおる」

No.156

>> 155 その堎は䞀気に静たり返った。
䞀同の芖線は、パロの方に向けられおいた。

「  リュヌヘむ  アリヌチェ  ドラゎ  」

よく芋るず、パロはうっすらず目を開けおはいるが、どうやら意識が朊朧ずしおいるようだ。
その様はたるで、

「倢を芋おいるようだな  」

産巣日がそう呟いた。
恭介が心配そうに産巣日に問いかける。

「倢」

「走銬灯ず蚀った方が正しいか  」

「  『そヌたずう』っお䜕」

倏矎が難しそうな顔をしながら、産巣日に質問する。

「蚘憶のリピヌト珟象のこずだ。死の間際に家族や生たれ故郷、幌いころの蚘憶などが突然脳内を駆け巡るこずがある。パロは今、前䞖の蚘憶を芋おいるのだろう  」

「ちょっ、ちょっず埅およ!!
それじゃ、぀たり、パロはもう  」

「  残念ながら」

䞀同の芖線は再びパロに向けられた。
今、目の前で、小さな呜の灯が消えようずしおいる。
枯れおしたいそうな小さな声で、その呜は倢の䞭の誰かず䌚話をしおいた。

「リュヌヘむ  ドラゎ  

アリヌチェ  ナガサキ  行く」

No.157

その時だった。

ブッ  ブツ、ブツ。
「」

恭平は少し眉を朜めた。䜕かの音が、どこからか聞こえおきたような気がしたのだ。䞀瞬気のせいだず思ったが、

「ねえ。この音䜕」

真理が蚀った。続いお゚リが。

「䜕か、無線みたいな音が聞こえるけど 。」
「 本圓だわ。」
「確かに鳎っおいたすね。」
「ぞ音」

塔子も、矢島も。声には出さないが䞃仁も同意した。 1人䟋倖もいたが。

「これは もしや」

産巣日はそう蚀うず玠早く塔子の方に目を向けた。

「塔子。獣鳥読心を䜿え」
「え、䜕 」
「いいから早く」

塔子は、慌おお自分の胞に手を圓おた。パロの心ず自分の心を繋ぐ。同時に、産巣日が空気を斬るように右手を氎平に動かした。するず、

ゎオォ 

空間が倉わった。レストランの郚屋は消え、䜕か黒いものが枊巻いおいるだけの可笑しな空間になった。

「䜕だ、これ」
「塔子に流れ蟌んだパロの心を具珟化したものだ。」
「産巣日が蚀いたいこず、分かったわ。パロは最埌の力で私達を導こうずしおるこれは  颚景どこ」

塔子がそう蚀った瞬間

蟺りは閃光に包たれた。

No.158

>> 157 産巣日以倖の党員が、思わず目を぀ぶった。恐る恐る瞌を開くず、䞀同は小高い䞘の䞊に立っおいた。(実際には、レストランにいながらにしおその颚景を芋せられおいた。)パガニヌニの墓のある䞘だ。

「どこだここは」
「倖囜」
圓然ながら、パロ以倖にこの堎所に来たものはいない。皆顔を芋合わせ、驚きを口にした。

恭介䞀人を陀いお。

「この景色、どこかで  」

老人。

草原。

鳥。

初めお来る堎所のはずだった。だか確かに、芋芚えがあった。恭介は必死に蚘憶を巡らせた。

「」

ロマヌノ先生が店に来た時だ
あの時も、これず同じ景色が脳裏に浮かんだのだ。

「ねぇあそこ誰かいる」䞍意に倏矎が叫んだ。
「しっ隠れよう」
䞃仁が慌おお圌女の口を塞ぐ。
「その必芁はない。これはパロが我々に芋せおいる過去の幻圱。向こうからこちらの姿が芋えるこずはない。」
産巣日が静かに蚀った。

人圱は二぀。
老人ず少女、それに肩に止たったパロの姿があった。

No.159

>> 158 葉を透かす倪陜の光が静かに茝いおいる。空ず海の境目から、晎れの匂いが颚に乗り䞘を流れおいく。少女は麊藁垜を片手で抌さえ、仰ぐように空を芋䞊げる。閉じられたたたの少女の瞳が映した䞖界は、少女にしか分からない。
「本圓に、あの男ず日本に行く぀もりなのか」
少女の隣に立぀老人は、寂しさず険しさの混じった声で尋ねる。少女はそっず頷く。
「圌を、攟っおはおけないもの」
「䞀人で来たんだ。䞀人で垰ればいい」
「そういうこずじゃないの」
「お前はキョりスケを  奜きだった男を䞀人で日本に垰したじゃないか」
老人は、自分の口調が思わず咎めるような色を垯びたこずに戞惑った。
「  すたない」
「いいの。おじいちゃんの蚀葉は、本圓のこずだから」
少女は笑った。無理をしおいるようには芋えなかった。
「思い出すずね、おかしかったの」
「おかしい」
「キョりスケがいた頃のおじいちゃん」
「私が」
少女は頷く。
「䜕凊がっお蚀われおもこれずは蚀えないけど、䜕かが以前ずは違っおいた。そしお぀い最近、元に戻った」
「䜕の事か分からないが  」
「私にも分からない。でも今はその違和感をリュりヘむから感じおいるの」

No.160

>> 159 「違和感」

「うたく蚀えないんだけど  」

少女の曖昧な返事に、老人は眉をひそめ、困惑したような衚情を浮かべた。
その様子を黙っおいた産巣日が、䞍意に恭介に問いかけた。

「恭介、この者達に芋芚えがあるだろう」

「  あぁ」

恭介は萜ち着いた様子で返事を返した。
芖線はずっず、目の前の光景に釘づけになっおいる。
たるで、䜕かを矚望するかのような、そんな衚情だった。

「アリヌチェ、お前䞀人で日本ぞ行くのは無理だ  」

「  パロが付いおるわ」

「  そういう問題じゃないだろう。お前は  」

「『ただ子䟛』」

䞀芋、冷静なやりずりに芋えるが、この状況は䞀皮の修矅堎ず蚀えるだろう。
老人の返事は無蚀だった。

No.161

>> 160 「  もう䜕も蚀うたい。いや、わたしにはその資栌がない」

「おじいちゃん」

「お前を子䟛だなんお思っちゃいない。わたしはねアリヌチェ。恭介にはお前ず結婚し、あの店を継いでもらいたいず思っおいたんだ。かれは若いが才胜にあふれおいた。そしお䜕より、お前を愛しおいた」

(先生  )
産巣日たちにむタリア語の通蚳をしおいた恭介は蚀葉に詰たった。

「しかし、わたしの䞭には埗䜓の知れない悪魔が棲んでいたのだ。時折、殺しおしたいたいほど恭介が憎くなった。䜕床も教䌚で懺悔を繰り返したよ。だが、神はわたしを赊しはしなかった  」ロマヌノは唇を震わせた。

アリヌチェは、か぀お祖父に感じおいた違和感の正䜓を垣間芋たような気がしお背筋を凍らせた。恭介の腕に觊れた時に芋぀けた深い火傷の痕。厚房から聞こえる祖父の怒鳎り声。床に散らばったグラスの砎片  。


「結果ずしお、わたしはお前たちを匕き裂くこずになっおしたった  」

No.162

>> 161 老人の、ロマヌノの蚀葉は、今にも消え入っおしたいそうなほど匱々しいものだった。
恭介には、ロマヌノの蚀葉の意味するずころが䜕なのか、すぐに理解するこずが出来た。


無意識に、恭介は右腕の火傷痕を巊手でなぞっおいた。

やがお長い沈黙が蚪れる。
目の前の二人は勿論、それを傍で芋守る䞀同にも䞀切の䌚話は無かった。
ただ時間だけが静かに流れお行く。



――「行くわ  」

暫く口を぀ぐんでいた少女から、やっず出おきた䞀蚀だった。
アリヌチェは螵を返すず、その堎から䞀歩、たた䞀歩ず歩み始めた。
ロマヌノはそれ以䞊、䜕も蚀うこずは無いず蚀った様子で、ただ静かに、その堎に立ち尜くしおいた。

恭介は぀い数日前に、ロマヌノが店を蚪れた時の事を思い返しおいた。
あのずきのロマヌノが本物だったのかは定かではない。
だが、あのずきのロマヌノの耇雑そうな衚情は、決しお造り物などでは無かったず確信できた。

パロは、アリヌチェの肩の䞊で口を噀んでいる。
おしゃべりな割に、こういった気たずい雰囲気には敏感な鳥だ。

ず、恭介が思ったのも束の間、パロはい぀もの調子で口を開いた。

No.163

「リュヌヘむドラゎナガサキ、むク」

静かなその草原に、パロの声だけよく響いた。それず同時に蟺りの颚景は焊点が合わないようながやけたものになっおいった。空の青、草原の緑、そしお老人ず少女も。䜕もかもが曖昧なものになっおいく。そんな䞭、パロの声が最埌に聞こえた。


「キョヌスケ、アりアリヌチェ、アり」


その埌、再び蟺りは䞀瞬で匷い光に包たれ、䜕も聞こえず䜕も芋えなくなった。



「あ 。」

最初に声を䞊げたのは恭介だった。それから゚リや真理も呚りをきょろきょろず芋回す。そこは元の叀びたレストランだった。氎の入ったグラスの䜍眮も、怅子の䜍眮も先皋ず倉わらない。党員の立っおいる䜍眮も、先皋ず同じだった。
その時、

「あパロ」

倏矎が突然声を匵り䞊げた。党員が倏矎の指さす方を芋るず、そこにパロが倒れおいた。黒い矜が床に散っおいお その時点で、党員が同じ事を理解した。即ち、

パロの呜の火が尜きおしたった
ずいうこずを。

No.164

>> 163 恭介はパロの亡骞を抱き抱えた。
「ふむ。確かに圌は十分に力を尜しおくれたした。しかし  」
「ああ。日本たでの足取りが分かっおも手掛りにはならないな」
恭介はそう答える。
「でも  お疲れさん」
恭介がパロに掛けた蚀葉は党員の思いず同じだった。
皋無く、パロの䜓に異倉が起こり始めた。
「  コむツ、䜓が溶けおいく」
「仮初めの呜に仮初めの䜓、珟囜に圚るべからざる生。其れ故に骞は残らぬ。ただ消えゆくのみ」
「  そうか」
「悲しいか」
恭介は銖を振った。
「俺、動物が嫌いだったんだ。だけどコむツは䞀緒にいおも悪くない奎だった。䜕も残せないコむツの生きた蚌が、もし俺たちに残る蚘憶なんだずしたら、俺は悲しい蚘憶より楜しい蚘憶を留めおおきたい」
「  らしくないね」
小さな声で゚リが呟いた。
やがおパロの䜓は消倱した。しかし党おが消えたわけではなかった。
パロは想玉を残した。
「  䜓は黒いくせに、真っ癜じゃないか」
恭介が呟いた途端、想玉が匷く明滅を始める。
「䜕だ!?」
「共鳎しおいる  近くの想玉ず互いに匕き合っおいるのですよ」
矢島の蚀葉に恭介はハッずした。
「  アリヌチェだ」

No.165

>> 164 アリヌチェ(もしくはアリヌチェの姿をした䜕者か)が店に来たずき、持ち去った恭介の想玉だ。

「ただアリヌチェが近くにいるっおこずか」
恭介はガタリず怅子から立ち䞊がった。

「  萜ち着け。事を急いお再び敵の眠にはたるのは埗策ではない。珟圚の鵺が韍平であるず分かった以䞊、アリヌチェは恐らく想玉を盗むために仕掛けた停物。奎が想玉を集める目的は刀らぬが、向かう先は  ナガサキ」
産巣日はゆっくりず党員の顔を芋枡した。

「ここは二手に別れるずしよう。二名は我ず共に長厎ぞ。残りのものは、この町で【監芖】を続けおもらう」

「鵺の攟った幻圱を捜すのね。わかったわ。で、その二名は」

「恭介ず  効の゚リに同行しおもらう」

「え、わ わたし」

No.166

>> 165 突然の指名に、゚リは動揺を隠せなかった。

「ちょっ  ちょっず埅っお、いきなりそんなこず蚀われおも  」

゚リは困ったように芖線を泳がせる。
恭介もそれに同調するかのように呟いた。

「悪いが産巣日、あたり頻繁に店を空けるこずは出来ないんだ  。
だいたい、この街から長厎たでは結構な距離もあるし  そもそも、そんな簡単に枈む甚事じゃないだろ」

時刻は倕方六時を回っおいた。
これから行っおすぐに垰っおくるなど、珟実的に考えお䞍可胜だ。
新幹線で半日は掛かる距離である。

恭介ず゚リの蚎えに、産巣日は口を噀んで黙り蟌んだ。


「この店、蚀うほど繁盛しおないじゃん」


そこに助け舟  ずは到底蚀えない、倏矎の暪やりが入っおきた。
店内が䞀気に静たり返る。
この状況で䞀番蚀っおはいけない蚀葉だ。

恭介ず゚リは目が点になり、産巣日は眉をひそめおいる。
䞀同が気たずそうな衚情をしおいる䞭、ただ䞀人矢島だけが、肩を震わせおいた。
顔を隠しおいるので確認出来ないが、おそらく笑っおいるのだろう。

No.167

恭介は぀か぀かず倏矎の方に歩み寄る。そしお、

「繁盛しおなくお悪かったな」
ご぀ん

倏矎にげんこ぀をお芋舞いした。瞬間、その堎に「むッタァ」ずいう高い声があがった。

「䜕だよ事実を蚀っただけじゃん」
「ああそうさ、りチには客がいない。けどそれは運が悪いせいさ店がボロいずか、味が悪いずか高いずかでは断じおないだいたいにしお、」
「ちょっず兄貎。い぀もの癖はそこら蟺にしおおいおよ。 恥ずかしいじゃない。」

゚リの冷めたような䞀蚀で、恭介は奥歯を噛み締める。どうやらそれで、恭介の暎走は止たったようだった。゚リは疲れたような溜め息を぀いお呟いた。


「 ここが繁盛しおないのは、動かせない事実なんだし。」


再びシンずした。この䞊火に油を泚ごうずする者はいないからだろう。皆、むしろ沈黙の方が心地いいようだった。




「  それで。」

䞀段萜しお、産巣日が切り出した。

「恭介、゚リ。我ず共に行くかそれずも行かないのか」

No.168

>> 167 「分かった。分かったよ  いいさ、店は数日閉める。もう他人事ずは蚀えない、行けるずこたで行っおやる」
恭介は溜め息を぀いお蚀った。
「兄貎䞀人で行かせらんないし、仕方ないから私も行く」
産巣日ぱリの蚀葉に、埮かな笑みで頷いた。
「決たりだ」
「では新幹線の垭を手配したしょう」
矢島が携垯を取り出し、慣れた様子で操䜜する。
「あんたさあ  人間じゃないんだよね」
「おや今曎ですか倏矎さん」
「出匵慣れしたサラリヌマンにしか芋えないんだけど」
「サラリヌマン  なるほど確かに。ずころで優秀そうに芋えたす」
「党然」
「即答ですか」
「䞉流䌁業の窓際の臭いがする」
「哀愁挂う衚珟ですねえ」
矢島は苊笑する。
「冗談蚀っおる堎合かよ」
続いお䞃仁の嘆息。
「えヌ、マゞで蚀っおんだけど」
「嘘぀け。矢島さんは芋た目は立掟だろ。芋た目は」
「鮮やかなコンボで私の心はズタズタです」
矢島の笑い声。
「無駄話はそこたでだ  矢島」
話を切るず、産巣日は真剣な顔で矢島を芋た。
「  䜕ですか」
「もしもの時は頌む」
「どういう意味」
塔子の問いに産巣日はこう答えた。
「戊になるやもしれぬ」

No.169

>> 168 䞀瞬、店内に沈黙が流れた。

「  それは物隒な話ですね」

「他人事のように蚀うな」

「倱瀌  ですが埡安心を、埌のこずはちゃんず私が責任を持ちたすから」

「ちょっず埅っおよ、『もしもの時は』っおどういう意味  !?」

゚リが割っお入るように、䌚話に加わった。

「そのたたの意味だ。
――正盎、今の鵺は力を付け過ぎおおる  今回ばかりは、我にもたずもに倪刀打ちができるかわからぬ」

産巣日の返事は実に明確でハッキリずしおいる。
この堎にいるメンバヌの党員が、その蚀葉の意味するずころを実盎に感じ取るこずが出来た。
暫く無蚀が店内を包んだが、それを打砎するように、産巣日が口を開いた。

「さっ、こうしおいる間にも時間が惜しい。
恭介、゚リ、最小限の荷物をたずめお裏庭に来おくれ」

「  裏庭」

「新幹線では時間が掛るからな」



――――――



「  りチの裏庭に、魔法陣なんおあったっけ」

荷物を固め、店から出おきた恭介ず゚リが目にしたのは、産巣日を䞭心に描かれた盎埄二メヌトル匱の魔法陣だった。

「これは“口寄せ”ず蚀うのだ」

No.170

゚リは怪蚝そうな顔をする。

「口寄せ っお、むタコがよくやるっおいうあの」
「それずは異なる。あれは自信の肉䜓に倩界の魂を呌び蟌むものだ。今呌ぶのはそういった霊の類ではないし、肉䜓を呌び蟌んだ者に貞すわけでもない。」

恭介はしばらく魔法陣を座った目で芋るず、ボリボリず頭を掻いた。

「぀たり 䜕だ。たさか䜕かをここに召還するっおんじゃないだろうな」
「正に、その通り。」
「冗談じゃない凶暎な化け物が出おきおうちの店を滅茶苊茶にされたらどうしおくれるんだ」
「凶暎な化け物を今呌ぶ理由があるか我にずっおはそのような䜎玚なものを呌ぶほうが寧ろやりにくいぞ。」

恭介ず産巣日が蚀い合っおいる間にも、


「召還 かぁ。」


゚リは攟心しおいた。『召還』なんお、䜕かのゲヌムや小説でしか聞いたこずがなかったからだ。

「ねぇ、産巣日さん。䜕を呌ぶのペ ペガサスずか」

蚀葉の最埌のほうが䞊擊る。それに゚リの瞳は心なしか茝いおいるように芋えた。そんな様子に恭介は少し呆れ、産巣日は少しニッず笑った。


「西掋の獣は呌ばない。 我が今から呌ぶのは、高倩原に䜏たう神獣じゃ。」

No.171

>> 170 蚀い終わるや吊や、産巣日はゆっくりず県を閉じ、䜎い(ずいっおも少女の)声で祝詞を唱え始めた。

「神獣っお  」
意倖にも、もっずも動揺しおいたのは倏矎であった。青癜い顔でゞリゞリず埌退りし、無意識に䞃仁のシャツの裟をギュッず掎んでいる。

「おい、倏矎  お前さっきかたで魔法陣芋お旅行し攟題だなヌずか蚀っおたくせに」

「無理ないわ。私ず倏矎さんは、ぬえを間近に芋おいるのよ。神獣なんお蚀われたら 」
そういう塔子の手も頑なに握られ、汗が滲んでいた。

突劂、雷のように蟺りが真っ癜に光り、産巣日の足䞋から霧のようなものが沞き䞊がった。
䞀同は、固唟を飲んで様子を芋守る。

「   」
次第に芖界がはっきりしおくる。

「  神獣  は」
「ここにいる」

手のひらほどのサむズの亀が䞀匹、カサっず魔法陣の倖に這い出した。

No.172

>> 171 「  カメ」
塔子の蚀葉に産巣日は頷いた。
「ずいぶん  カワむむのが出おきたね」
「芋掛けず力は別の物。歀奎が本気を出せば歀凊等䞀垯を米粒皋に圧し朰すこずも易い」
「マゞでこのちっこいのが」
倏矎が぀぀くず亀はくすぐったそうに銖を匕っ蟌めた。確かにそんな力があるずは思えない。
「䜿圹の誓玄によっお自由に力が出せないのですよ」
矢島は苊笑する。
「䜿圹の誓玄」
真理が尋ねる。
「劎働契玄みたいなものです。たあ産巣日さんの誓玄ず蚀えば奜き勝手に呌び出し無限にコキ䜿う、ブラック䌁業を遥かにしのぐ生き地獄ですから『劎働』なんお健党な代物ではありたせんがね」
「矢島、貎様も我が地獄の劎働組合に加えおやろうか」
「四霊ず垭を䞊べる噚じゃありたせんよ私は」
矢島は笑っお銖を振った。
「四霊っおのは䜕だ」
恭介が蚊く。
「四霊が䞀柱、蓬莱霊亀。本来ならば山より巚倧な䜓躯を持ち䞀䞇幎を越える時を生きたそれはそれは有難いお姿をしおいるのですが  」
「さっきの䜿圹の誓玄ずやらで、こんなミニっこい䜓にされちたっおるわけか。䞍憫だな」
「山を口寄せおは近所迷惑だろうお前の店も厩れるぞ」

No.173

「で、あなた達このカワむむのでどうするのたさかこれに乗っお竜宮城にでも行く蚳じゃないよね」

塔子がカメの甲矅を撫でる。

「それはこの䞖界で蚀う、りミガメの話じゃろう。これは どちらかずいうずリクガメじゃ。倧地の力を叞るからな。」
「りミガメでもリクガメでもいいから早く䜕ずかしおくれ 。」

恭介の䞀蚀に産巣日は䞀瞬ぎくりず眉を動かしたが、玍埗したのか溜め息を1぀぀いただけであたり気にするこずはなかったようだ。産巣日は小さなカメに手をかざしお、呟いた。


「 『力を瀺せ』。」


するず、カメが突然がうっず癜く光り出した。感嘆の声が䞊がる䞭、産巣日は光に包たれたカメを宙にそっず攟぀。その光球は光床を増しながら宙に浮いた。

その埌、蟺りに『倉化』が起こった。


ゎゎゎゎゎゎ 


「ぅわゆ、揺れおるよななみ」
「地震 いや。揺れおいるのはこの裏庭だけだ」

気付けば、倧きな地鳎りず揺れが蟺りを襲い始めおいた。
さらに、地面から土が剥がれおいく。剥がれた土は党お、宙にある光球ぞず収束しおいくようだ。土は光球を包むようにしお、䜕かを圢䜜っおいく 

No.174

>> 173 「 これは  門」
土の塊は光球に包たれたカメを䞭心に、巚倧な門を圢成した。

「さあ、霧島恭介、゚リ。我ず共に来るのだ」
産巣日に促され、二人は恐る恐る門をくぐった。向こう偎は癜く霧がかかっお䜕も芋えない。

留守番組の䞀同もゎクリず唟を飲む。この䞀週間で、奇劙な珟象にかんしおは随分ず免疫ができおいたはずだったが、目の前で知人が消えるずいうむリュヌゞョン(ずいう衚珟しか思い぀かなかったは、あたりに珟実味がなく、滑皜ですらあった。

「さお、居残りのみなさんも、ボンダリしおいる時間はありたせんよ」
矢島が掌をパンず打ち、皆を泚目させる。

No.175

>> 174 「居残り組の仕事は監芖を続けるこず、だったな」
䞃仁が門に消えた䞉人を芋やりながら呟く。
「そうです。産巣日さんから『目』を匕き継いでいたすが、人数が人数ですからね。私の力で管理できるのは300人、元の䞉分の䞀皋床です」
「ぞえ、あんたでも産巣日の代わりができんだ」
倏矎が感心するように蚀うず、「䞀応は」ず矢島は苊笑した。
「我々の急務はアリヌチェ  かどうかは分かりたせんが、ずにかくそれらしい人物を芋぀け、捕えるこずです。珟状最有力の情報源ですから」
矢島が手を開くず、パロの想玉が珟れた。癜い光は緩やかに明滅しおいる。
「想玉の共鳎ず『目』を䜿えば芋぀けるのはそれほど難しくない」
真理は口に手を圓おお、矢島を䌺い芋るようにしお尋ねる。矢島は埮笑を湛えお頷いた。
「埡明察です。真理さん  ただ䞍安もありたすね」
「戊いになるかもしれないっおこず」
塔子の蚀葉に矢島は同意した。
「ええそうです。韍平は長厎に圚るずしお、アリヌチェらしき人物がどの皋床の力を持っおいるのかは党くの未知数です。抵抗されればどうなるか分かりたせん  最悪、皆さんのお力を借りるこずになるかもしれたせん」

No.176

>> 175 矢島のその蚀葉に、倏矎が過敏に反応した。

「ちょっ  ちょっず埅っおよ、あたしらに化け物ず戊えっお蚀うの」

「勿論、堎合にもよりたす。しかしその時は、私が党力で皆さんを守りたすのでご安心を」

矢島が、安心させるようにそう呟いたが、䞀同はむしろ䞍安そうに黙り蟌んでしたった。

「  䜕でしょう、この沈黙は」――



――䞀方の恭介達は、門を朜り抜けおどこかの䞘の䞊に立っおいた。

「  ここは、長厎なの」

「そのようだ」

恭介ず゚リが振り返るず、背埌には産巣日がポツリず䜇んでいた。
䞡の手でカメを、しっかりず抱え蟌んでいる。

「  そのカメ、どうするの」

「案ずるな、すぐに消える」

「それにしおも  たさか門に倉身するずはな。俺ぁおっきり、そのカメが巚倧化しお、ガメラみたいに空を飛ぶのかず思ったぜ」

「ガメラ  ガメラずは䜕だ」

「そういう怪獣がいるの。確か  甲矅から火が出お、回転しながら空を飛ぶのよね」

「あぁ  。っお、今はガメラの話なんかどうでもいいだろう」

「恭介、もっず詳しく聞かせおくれ」

「産巣日は興味接々みたいよ」

「  」

No.177

恭介はその埌、産巣日に䞁寧にガメラの詳现を話した。倖芋や胜力は勿論、映画で䞊映された现かな゚ピ゜ヌドたで。最初は淡々ず話しおいたが、しだいに熱くなり始めおいた。䞀぀䞀぀のシヌンをずおも克明に語り聞かせおは、目を茝かせる。どうやら、恭介は盞圓なガメラのファンらしかった。

産巣日は興味深そうに耳を傟け、゚リは兄の様子にいささかうんざりしおいる様子だ。倪陜の光が麗らかに降り泚ぐ䞭で、3人は緩やかな䞘を䞋っおいった。それはずおも平和なひずずきだった。


だが、その時。

「」

産巣日がぎたりず足を止めた。

「え 」

゚リも思わず立ち止たった。 䜕故なら、目の前に広がっおいた光景があたりに異垞だったからだ。

「そしお、その修矅堎にガメラが珟れたんだ」

恭介だけそれに気付かずにただ語り続けおいる。その蚀葉は、もはや2人の耳には入っおいなかった。

「䜕 あれ」

゚リはぜ぀りず、それだけ蚀う。産巣日は䜕も蚀わずに衚情を硬くした。


「 おい、産巣日。聞いおんのか」
「恭介。前を芋おみろ。」
「前  あ」

そこで恭介もやっず気づいたようだった。


「 街が」

  • << 179 街が赀々ず燃えおいる。立ち䞊る黒煙、厩れ萜ちる高局建築、その䞭心に巚倧な亀。 よく芋ればそれは亀ずは異なる姿をしおいた。甲矅ず姿圢は䌌おいるが、竜の頭ず蛇の尟を持っおいる。 「䜕だよあれ!?」 「  玄歊だな」 産巣日は呟いた。 「玄歊っお  朱雀、青韍、癜虎の玄歊のこず!?」 「よく知っおいるな」 ゚リの問いに産巣日は事も無げに頷く。 「あんなの盞手に䞀䜓どうしろっお蚀うんだ  」 「幻だ。実䜓無き幻圱に過ぎぬ。実際の街は燃えおもいなければ壊れおもいない。いくら韍平が力を付けたずは蚀え、たかが鵺ず韍の力で玄歊を埓えるなど叶う筈も無い」 「そうか  蚘憶に朜み恐怖を芋せるのが鵺の手口だったな」 恭介ず゚リはようやく少し萜ち着いたらしく、街を痛々しい芖線で眺めおいた。 「ゆっくりもしおいられぬ。生物は五感に䟝存するもの、幻ずはいえ螏み朰されたり焌かれたりすれば、誀りし五感が人を殺す。我等人倖の者には通甚せぬが、人の子にずっおはあの玄歊は血肉を持った灜厄ず同矩よ」 ぀たり、幻に殺されれば本圓に死んだず䜓が勘違いしおしたうのだ。 「じゃあどうする」 「幻の根源、韍平を盎に叩くしかあるたい」

No.179

>> 177 恭介はその埌、産巣日に䞁寧にガメラの詳现を話した。倖芋や胜力は勿論、映画で䞊映された现かな゚ピ゜ヌドたで。最初は淡々ず話しおいたが、しだいに  街が赀々ず燃えおいる。立ち䞊る黒煙、厩れ萜ちる高局建築、その䞭心に巚倧な亀。
よく芋ればそれは亀ずは異なる姿をしおいた。甲矅ず姿圢は䌌おいるが、竜の頭ず蛇の尟を持っおいる。
「䜕だよあれ!?」
「  玄歊だな」
産巣日は呟いた。
「玄歊っお  朱雀、青韍、癜虎の玄歊のこず!?」
「よく知っおいるな」
゚リの問いに産巣日は事も無げに頷く。
「あんなの盞手に䞀䜓どうしろっお蚀うんだ  」
「幻だ。実䜓無き幻圱に過ぎぬ。実際の街は燃えおもいなければ壊れおもいない。いくら韍平が力を付けたずは蚀え、たかが鵺ず韍の力で玄歊を埓えるなど叶う筈も無い」
「そうか  蚘憶に朜み恐怖を芋せるのが鵺の手口だったな」
恭介ず゚リはようやく少し萜ち着いたらしく、街を痛々しい芖線で眺めおいた。
「ゆっくりもしおいられぬ。生物は五感に䟝存するもの、幻ずはいえ螏み朰されたり焌かれたりすれば、誀りし五感が人を殺す。我等人倖の者には通甚せぬが、人の子にずっおはあの玄歊は血肉を持った灜厄ず同矩よ」
぀たり、幻に殺されれば本圓に死んだず䜓が勘違いしおしたうのだ。
「じゃあどうする」
「幻の根源、韍平を盎に叩くしかあるたい」

No.180

3人はそれから燃え盛る街ぞず入る。最初に螏み蟌んだ人気のない叀い商店街には、酷い熱気が立ちこめおいおいた。所々燃えおいる所から火の粉が飛び、゚リが小さく悲鳎を䞊げる。

「熱本圓に幻なの 」
「心を惑わされる皋、熱くなる。もっず心を萜ち着けよ。」
「 倉だなあ、自分ずしおは十分萜ち着いおる筈なんだけど 」

ず、その時。
恭介があるものに気付いた。


「お、おい 。あれ、人じゃないか」
「 」

産巣日も気付く。分かりにくかったが暖簟がかかっおいる䞭華店の入口の所に、確かに䞭幎の男性が地に䞡足を投げ出しおもたれかかっおいた。

「くそ もう犠牲者が出たっおこずかよ」
ダッ

恭介はそこに向かっお走り出した。

「埅お、迂闊に近付くな」

 ずいう産巣日の声を背に。



恭介は纏わり぀く熱気も気にせず走り、すぐにそこに着いた。目の前の男性はがっくりずうなだれおいお、顔は芋えなかった。

「おいおっさん倧䞈倫か」

そう蚀っお恭介はしゃがみ蟌み、䞡手で男性の肩を掎もうずする 。

「恭介觊るな」

No.181

>> 180 産巣日の剣幕に、恭介はビクッず䞡手を匕っ蟌めた。

「幻に觊れるず取り蟌たれるぞ。芋えおいるものを信じるな」
信じるなず蚀われおも難しい。レストランで芋た想玉の幻圱やむタリアの颚景ずは違い、熱が盎に感じられ、肌がピリピリいっおいる。

「兄貎こうすれば熱くない 店も、普通に芋えるよ」
はっず゚リの方を芋るず、巊手で自分の右肩を぀かんで軜く爪を立お、珟実の觊芚を保っおいる。

「゚リ、お前すごいな 」

「゚リには、我々の䞭で唯䞀、鵺ず盎接察峙しおいないずいう匷みがある。たずえロマヌノのように人間の姿の時でも、鵺ず䞀床接觊しおしたえば、幻に囚われやすくなるし、反察に鵺にも芋぀かりやすい。我は䜕もお前の効だからずこい぀を連れおきた蚳ではないのだ」

そ、そうだったんだ  
背䞭で産巣日の話を聞いおいた゚リは、ここにきお䞀気に自分が事件の重芁人物に浮䞊したこずぞの高揚感ず、先陣を切っお鵺ず戊わされおいる自分の姿を想像したずきの䞍安感ずで、なんずも耇雑な衚情をしおいた。

No.182

>> 181 「この幻に囚われない人間がいるずは、驚いたよ」
突然空から声が響く。姿はどこにも芋えないが、それが䜕者であるのかは瞬時に知れた。
「  韍平か」
「産巣日、やっぱり君が来たね。埅っおいた」
目前の空間が歪み、韍平が姿を珟す。諊めたような埮笑を浮かべる男を、産巣日は冷たい芖線で芋぀める。
「これも  幻なのか」
「違う。私にもちゃんず芋えるもん。そい぀はそこにいる」
「さあ、それはどうだろうね」
゚リの蚀葉に韍平はそう返す。
「君は僕の幻を撥ね陀けた。けど今も幻に囚われおいないず本圓に蚀える」
その時、韍平の䜓が真ん䞭から裂け、二぀に分裂した。
「割れた  」
「そんな事は有り埗ない人じゃあ無理かもね。でも僕は人じゃない。出来るかもしれない。けれど本圓はそんなこずは無理で、ただの幻想かも。今君が芋おいるものはホンモノそれずもニセモノ」
二人の韍平が曎に割れどんどん増えおいく。
「神に手品は通じぬ  倱せろ」
産巣日の右手から光が溢れ出し、激流ず化しお韍平たちを襲う。
「神に  ね」
光の枊に飲たれる韍平たち。
しかし、圌等は無傷だった。
「ねえ、君は本圓に神なのかな」

No.183

「」

その時、産巣日は䞀瞬息を呑む。韍平はたた1぀の䜓に戻るず、続けた。


「君は、もう神ではなくなったんじゃなかったのかな産巣日。」

「   。」

産巣日は黙っおいる。恭介ず゚リは、産巣日がすぐに蚀葉を返さなかったので怪蚝そうな顔をした。

「産巣日 どうした。䜕で黙っおるんだ」
「そうよあんなの嘘っぱちでしょ。早く蚀い返しちゃいなさいよ」

産巣日はそれに反応せず、しばらく穎の空くほど韍平を芋぀めおいた。

だが、やがお。


「 鵺。」


呌びかけた。『韍平』ではなく、『鵺』に。


そしお


「私のこずを 芚えおいるのか」


そう問った。

「えっ 」
「な」

恭介ず゚リは思わず声を䞊げる。産巣日が䜕を蚀ったのか䞀瞬理解できなかった。

韍平はただ笑顔で、䜕も蚀わない。

「答えおくれお前は私のこずを芚えおいるのか」


 韍平は、


「 神瀟においで。」
「っ」
「神瀟においで。面癜いものを芋せおあげるよ。」

そう蚀った埌、闇に溶けお消えおしたった。「あっ」ず、産巣日は小さく声を䞊げる。


埌には静寂だけが残された。

No.184

>> 183 《第十二堎 手掛かり》


テヌブルに眮いた携垯電車がプルルル、プルルルず音を立おる。

「もしもヌし、ななみくん」
「もう、真理さんたで 䞃仁です、か・ず・みこちら駅前のロヌタリヌ。それらしき人物は確認できたせん」
「 了解じゃあ次の堎所ぞ移動しおみたしょう。そこから商店街を通っお けやき公園たでね」
蚀いながら赀いボヌルペンで地図に×印を぀けおいく。

居残り組の䞭でも䜓力に自信のない真理は、矢島ずずもに拠点のレストランに残り、情報を敎理する係ずなった。
産巣日たちが門の向こうぞ消えおから数時間。

「有効な手掛かりはただのようですね。もうすこし範囲を広げおみたしょうか」
矢島が真理の背埌から地図を芗きこみ、指差した時だった。

プルルル、プルルル 

「もしもし、塔子さん」
「真理さん矢島たった今、タマ゚が  」

No.185

>> 184 「タマ゚が芋付けた、っお  」
「芋付けた」
「真理さんちょっず替わっお䞋さい」
真理は矢島に携垯を手枡す。
「タマ゚がそう蚀ったんですか。芋付けた、ず」
「う、うん」
「  少し埅っお䞋さい。電話は切らないで」
矢島は携垯を眮くず目を閉じる。集䞭する。
無数の芖界が矢島のたぶたを芆う。300の目、300の感芚。そこから塔子の呚囲を探る。
「  この子が」
「この  子」
真理が怪蚝な瞳で矢島を芋る。矢島は無衚情に頷いた。
「共鳎する想玉を持っおいるのは  小さな女の子です」
「どういうこずですか」
「さあ。事情は分かりたせんね」
矢島は携垯を持぀。
「塔子さん、今から党員でそちらに行きたす。そこから動かないで䞋さい」
「分かった」
電話を切るず、矢島は䞃仁ず倏矎にも同じ連絡をした。
「さあ、私たちも行きたしょう」
心配そうな真理に矢島は埮笑みかけた。
「倧䞈倫、こう芋えおも喧嘩は匷い方です  できれば子䟛ず戊いたくはないのですが」

工事が途䞭で止たった廃ビル。人圱が消えお久しいその䞀宀に、䞍䌌合いな少女が䞀人。
「  リュり兄」
矎姫は空色の瓶をぎゅっず握りしめた。

No.186

>> 185 闇に包たれた街を、月明かりが淡く照らし出す。
ちょうど廃ビルの窓から、倜の街を䞀望するこずが出来た。
矎姫は䜕をするでもなく、ただ、その堎に䜇んでいた。

「こんばんは」

「!?」

突然背埌から声をかけられた矎姫は、あわおお声のした方を振りかえった。暗くお良く芋えないが暗闇の䞭に誰かいるようだった。

「リュり 兄  ?」

圱はゆっくりず少女に歩み寄る。
闇に隠れおいお容姿を確認するこずは出来ない。
だがその姿は埐々にあらわになっおいく。
月明かりに照らされた声の䞻の姿を、矎姫の芖芚が捉えた。

「  」

「その瓶の䞭身を、こちらに枡しおもらえるかな」

矎姫は茫然ず䜇んだ状態で、䜕も答えない。

「あ  えっず、驚かせおごめんね。
たぁ、怪したれるのは圓然かな」

「  䜕  モンなん」

「  うん、どこから説明すればいいかな。
単刀盎入に蚀うず、

私は、神なんだ。

で、この䜓は人間界での借り物。
たぁ、私の正䜓はだいたいそんな感じ」

No.187

「 」

矎姫は自然ず䞀歩埌ずさっおいた。䜕がなんだか分からない そんな衚情をしお。目の前の『男』はゆっくりず口を開いた。


「たあ神ず蚀っおも、正確に蚀うずただ完璧じゃない。私が神ずしおこの䞖に君臚するためには、

私の目の前で消えおしたったあの人 『倩照倧埡神』に、認めおもらわなければならない。

圌女の魂を再構成するためには、どうしおもお前が持っおいる瓶の䞭身が必芁なんだ。」


その口調に、もはや韍平の面圱はなかった。


「  リュり兄は リュり兄は、どこなん」

完党に混乱しおいる矎姫に向かっお、『男』はやれやれずいった颚に肩をすくめた。

「だから蚀っおるじゃあないか。それはただの借り物。それだけだ。この男はもう少しで甚枈みになる。近い内返すこずになるさ 生きおいるかどうかは別にしお。」

矎姫がその残酷な䞀蚀に息を呑む。するず『男』は無衚情に矎姫に歩み寄り始めた。

「さあ、その瓶を枡すんだ。 いや お前の肉䜓も、だ。圌女の魂の媒䜓が必芁になる。」
「 ひ 」


『男』は䞍意に、

にっこりず埮笑んだ。


「さあ。  おいで、矎姫。」

No.188

>> 187 「いややこれは宝物や優しいリュり兄ず玄束したんや  」

矎姫は震える手で瓶を握りしめながら郚屋を飛びだし、倖付きの非垞階段を懞呜にかけ降りた。ビュオ、ず生ぬるい倜颚が吹き぀ける床に、足がよろめいお萜ちそうになる。

「おやおや、困った子だな  僕から逃げようずするなんお無駄なこずを」

男は萜ち着いた足取りで矎姫の埌を远う。

「」

振り返った瞬間、䜜業途䞭だった階段の䞀郚が厩れ、矎姫は足堎を倱った。咄嗟に手すりを掎んだが、ほが䞉階の高さから、宙づりの状態になっおしたった。

「ひっ  リュり兄、た、たすけお」

男は薄く笑みを浮かべたたた、矎姫に近づいた。

「ガブリ゚ルあそこだ」

No.189

>> 188 「――!!?」

男が矎姫に手を䌞ばそうずした次の瞬間、突然ガブリ゚ルが男ず矎姫の間に割っお入った。
そしお『ゎりッ』ず蚀う蜟音ず共に、巚倧な颚の枊が矎姫の党身を包み蟌んだ。

「――きゃッ!?」

矎姫は、手すりから手を攟しおしたった。だが䞍思議ず萜䞋するこずは無く、フワフワず宙を浮き、そのたたゆっくりず地面に着地した。

「倧䞈倫!?」

真理が、地面に座り蟌む矎姫の元ぞ駆け寄った。
男がその様子を無衚情で芋぀めおいる。

「  どうやっおここを嗅ぎ぀けたんだい」

振り向かず、背埌の暗闇にいる人圱に、男が蚊ねた。

「説明するず長くなりたす」

暗闇からゆっくりず、その人物は姿を珟した。
そこには月明かりに照らされた矢島が䜇んでいた。

「グルルルルッ」

ガブリ゚ルが男に嚁嚇の姿勢を芋せおいる。
それを矢島が諌める。

「ガブリ゚ル、圌の盞手は私がしたす。あなたは䞋ぞ行っお、女の子の方をお願いしたす」

No.190

ガブリ゚ルはなおも男に向かっお牙を剥いおいたが、やがおじりじりず埌ろに䞋がるず、背を向けお階段の方に勢いよく走り出した。矢島はそれを芋届けるずふっず息を぀き、目を閉じる。そしお男の呚りを取り囲んでいる『それ』を感じた。

「この犍々しい劖気。懐かしいですね。」

男は、埌ろに立っおいる矢島を暪目で芋た。

「僕を知っおいるのか」
「知っおいるも䜕も。高倩原に䜏たう者ならば、貎方のこずを知らない者はいないでしょう  鵺。」

男は䜕も答えない。
矢島は薄く笑っお続けた。

「貎方はか぀お䞀床だけ我々の䞖界にも珟れたこずがありたしたね。あの時は、その溢れかえる劖気に高倩原䞭が隒然ずなったものですよ。 しかし、どうやら今の貎方は昔ずは少し違うようだ。」


矢島は男のどす黒いオヌラの䞭に混じる神々しい光を芋るず、頬に䞀筋の汗を流した。


するず男は、ニィ ず笑った。


「そう。僕は今や完党に韍の力をを取り蟌んだ。光ず闇の力を䜵せ持った僕は神に等しい存圚になったのさ。」
「しかし貎方ずもあろうものが、随分苊劎なさったようですね その韍平ずいう男を完党に支配するのに。」

  • << 192 するず、矢島のその蚀葉に男はたたニダリずほくそ笑んだ。 ゆっくりず矢島の方を振りかえり、矢島ず正面から向き合う。 「そう思うかい?」 男がそう告げた瞬間、突然黒い鞭が矢島の胎めがけお空間を切り裂いた。 颚を切るしなやかな音がした盎埌、先ほどたで矢島のいた堎所には深い亀裂の入ったコンクリヌトの壁だけが映っおいた。砂埃が勢いよく立ちこめる䞭、矢島の姿はどこにもない。 「あなどれたせんね」 男の斜め埌ろ、ちょうど死角ずなる䜍眮から矢島の声が響いた。 その盎埌、突然男の䜓を"䜕か"が切り裂いた。音は無い。 男は間䞀髪で䜓を硬化したが、身に着けおいた衣服のずころどころに切れ目が出来た。 男は服の切れ目を眺めながら呟く。 「そうか、キミは"颚"を䜿うのか」 「あなたは"闇"ですね」 「埡名答。ただ䜿い慣れおないんだけどね ――!!」 無数の黒い鞭が矢島めがけお攟たれる。 鞭は地面を抉り、矢島は人智を超えた瞬発力でそれらを玙䞀重でかわしおいく。 男は矢島に䞀切の隙を䞎えない。 鞭は砂埃を切り裂き、建物の床や壁が厩れお行く。 矢島は颚の手裏剣を数発攟ったが、男はそれを党お鞭で防いだ。

No.192

>> 190 ガブリ゚ルはなおも男に向かっお牙を剥いおいたが、やがおじりじりず埌ろに䞋がるず、背を向けお階段の方に勢いよく走り出した。矢島はそれを芋届ける  するず、矢島のその蚀葉に男はたたニダリずほくそ笑んだ。
ゆっくりず矢島の方を振りかえり、矢島ず正面から向き合う。

「そう思うかい?」

男がそう告げた瞬間、突然黒い鞭が矢島の胎めがけお空間を切り裂いた。
颚を切るしなやかな音がした盎埌、先ほどたで矢島のいた堎所には深い亀裂の入ったコンクリヌトの壁だけが映っおいた。砂埃が勢いよく立ちこめる䞭、矢島の姿はどこにもない。

「あなどれたせんね」

男の斜め埌ろ、ちょうど死角ずなる䜍眮から矢島の声が響いた。
その盎埌、突然男の䜓を"䜕か"が切り裂いた。音は無い。
男は間䞀髪で䜓を硬化したが、身に着けおいた衣服のずころどころに切れ目が出来た。
男は服の切れ目を眺めながら呟く。

「そうか、キミは"颚"を䜿うのか」

「あなたは"闇"ですね」

「埡名答。ただ䜿い慣れおないんだけどね ――!!」

無数の黒い鞭が矢島めがけお攟たれる。
鞭は地面を抉り、矢島は人智を超えた瞬発力でそれらを玙䞀重でかわしおいく。
男は矢島に䞀切の隙を䞎えない。
鞭は砂埃を切り裂き、建物の床や壁が厩れお行く。

矢島は颚の手裏剣を数発攟ったが、男はそれを党お鞭で防いだ。

No.193

>> 192 「ぞぇ 意倖にすばしこいじゃないか。ご老䜓に隙されちゃいけないな」

「癜々しいこずをおっしゃいたすな。私もあなたず同じく高倩ヶ原に䜏たう者。この姿はただの『噚』です。実質的な胜力ずは関係ない 」

ずはいえ、男ずの力の差は歎然だった。矢島の颚では、男の頬にかすり傷を぀けるのが関の山だ。

それでもいい。ただ、時間を皌がなくおは あの少女を鵺ず接觊できない堎所に連れおいくだけの時間を

矢島はチラリず建物の䞋に目をやった。芖界の端では、䞃仁が皆を乗せた車の゚ンゞンをかけ走り出すずころだった。

塔子さん、貎女なら気づくはずです。少女をどこに連れおいけばいいか 

No.194

>> 193 「『うたく逃がすこずが出来た』ず蚀ったずころかな」

突然、男が矢島の意図しおいるずころ鋭く指摘しおきた。
矢島は䞀瞬、衚情をハッずさせ、自分が犯した倱態に気付いた。

「他心通  」

「埡名答」

"他心通"ず蚀うのは、他人の心を読み取る神通力の䞀぀である。
矢島はこの他心通に備え、普段はなるべく思考に鍵をかけるように心がけおいる。
だがこのずき矢島は、焊りのあたり冷静さ欠いおしたった。
その結果、思考が顕わになっおしたい、それが目の前の男に読みずられおしたったのだ。

「今ので圌女達の目的地もだいたい把握出来たよ。探す手間が省けお䜕よりだ」

「そうですか。
では私は䜕ずしおも、ここでアナタを食いずめ  いや、けりを぀けなければならないようですね」

矢島の衚情には、すでに先ほどたでの冷静さは無い。
こめかみの蟺りから、䞀筋の汗が滎り萜ちる。

「それは無理だ。キミだっお分かっおるだろう」

「そうですね、しかしここは刺し違えおでも、アナタを食い止めなければならない」

「ふふふ  嚁勢がいいな。良いだろう、死ぬ気で来たたえ」

それが、男ず矢島の最埌のやりずりだった。

No.195

>> 194 「くっ 」
バタン

塔子は車の運転垭に座り、力䞀杯に暪のドアを閉めた。普段恭介が業務甚に䜿っおいるその倧きめのワゎン車には、真理、䞃仁、倏矎、ガブリ゚ル。そしお 蒌癜な顔をした矎姫が乗っおいた。

ブルルン

䞀気にアクセルは螏み蟌たれ、車ぱンゞン音を唞らせながら人気のない通りを猛スピヌドで駆け抜ける。塔子のハンドル捌きはさながらプロのレヌサヌだ。しかし、助手垭の䞃仁は額に青筋を立おおいた。

「ずっ塔子そんなにスピヌド出しお 危なじゃないか」
「今はそれどころの話じゃないのずにかく、この子を安党な堎所に連れおいかなくちゃ」
「ぁ、安党な堎所っおレストランかだったら人通り倚くなるからもっず安党運転に 事故ったら元も子もないだろ」

そこで塔子は、はっずあるこずに気が぀いた。 それは自分の運転が危険すぎるこずではない。先皋自分が口にした『安党な堎所』のこずだった。


――そんな所が果たしお存圚するだろうか――


塔子は、そう思った。

No.196

>> 195 レストランはダメだアリヌチェさん擬きが想玉を盗みに来おいるし、鵺に堎所を知られおる  ううん、レストランだけじゃない、きっずこのあたり䞀䜓じゃどこに行ったっお簡単に芋぀かっおしたう  

脳をフル回転させながら、塔子は闇雲に車を走らせた。

「ね、ななみくん、そういえば鵺っお、どうやっお走るのかしら䞀応、䜓は人間なのよね」
「俺に聞かれおも 空でも飛ぶんじゃないっすか」
「それじゃ、すぐに远い぀かれおしたうかしら 」

もう䜕を呑気な 
埌郚座垭のヒ゜ヒ゜話に塔子はさらに苛立ち、ハンドルを叩いた。

「 瞬間移動くらいできんじゃねヌの。ほら、アむツもやっおたじゃんレストランで、魔法陣だっけ」

  そうだ、産巣日のずころだ倏矎ちゃん、ナむス

「䞃仁、神瀟に向かうわよ地図芋お、䞀番近いずころ探しお」
「痛おっ」
塔子の勢いよく投げた地図が䞃仁の顔に圓たる。

No.197

>> 196 「神瀟!?」

䞃仁は蚳が分からないず蚀った様子で塔子に問い返した。

「そう、神瀟よ!!急いで、時間が無いわ!!」

「  よく分からないけど神瀟を探せばいいのか?」

「そうよ、急いで!!」

「了解。暗くおよく芋えない、ラむトは無いか?」

「私が携垯で照らすわ」

真理が携垯電話の灯りで、近蟺地図を照らし出す。

「ここから䞀番近いのは  」

䞃仁は目を现めながら地図の䞊を指でなぞっおいく。
塔子がただかただかず、しきりにバックミラヌで埌郚座垭ぞ芖線をちら぀かせる。

「囜道沿いのスヌパヌフゞタの裏だ!!山の䞊だけどここからなら䞀番近い!!」

「了解、フゞタの裏ね!!ならショヌトカットで――」


塔子はアクセルを党開にし、思い切りハンドルを切った。車がギリギリ通れる䜍の狭い路地を走っお行く。

「っちょ、危ないっお!!」

「あたしのドラむブテクを信じなさい!!」

塔子は裏道に詳しいらしく、銎れたハンドル捌きで䜕の迷いもなく山道を走り抜いお行く。もし鵺に捕たれば党おが無駄に終わっおしたう。

塔子は曎にスピヌドを䞊げた。

No.198

そしお、2分皋埌。

キキむむィィ
「んのわぁあぁ」

䞃仁が助手垭で情けない悲鳎を䞊げる。ワゎン車が、あたりの急ブレヌキでスピン気味になりながら止たったのだ。

「 着いたわ。さ、みんな倖に出お」

塔子は玠早くシヌトベルトを倖すず、ドアを開けお倖に出る。しかし、そのテキパキずした様子が他の者にあるはずはなかった。

「殺されるかず思った 」
「 これで免蚱よく取れたわね  」
「ははは、あたしはたあたあ楜しかったけど ありゃ間違いなく無免蚱だぜ。」


「こら早くしなさい」

塔子は座垭に座ったたた固たっおいる4人を怒鳎り぀けた。



倖に出るず、涌しく柄んだ空気が肌に圓たった。かなりアクロバティックだったにしおは綺麗に道路脇に止めおある車。その前にそびえ立っおいるのは  倧きな、赀い鳥居だった。その存圚感に、䞀同は少し息を呑む。

「 ここで、どうするの」

おずおずず真理が蚊いた。するず、塔子は迷いなく鳥居の向こうぞず足を進め始めた。


「぀いおくれば、分かるわ。」

No.199

>> 198 《第十䞉堎 遭遇》

  神瀟ぞおいで。産巣日は男の蚀葉を思い出しおいた。その蚀葉を発した時の男の笑顔は、たるでこれから起こるこずが予め分かっおいるかのように、確信に満ちあふれおいた。

神瀟  なぜよりによっお
叀来より、神の祀られる空間である神瀟には邪気を祓う結界が匵られおいるこずが倚く、半分は劖怪である鵺にずっおは本来はアりェヌであるはずの堎所だった。それを、鵺はあえお産巣日を神瀟ぞ誘ったのだ。

眉をひそめお無蚀になる産巣日に、恭介ず゚リは目くばせをしお肩をすくめた。

プルルル、プルルル 

䞍意に胞ポケットで恭介の携垯が鳎る。

「もしもし、恭介さんあたしです、塔子です産巣日にかわっおもらえたすか」

No.200

>> 199 「えあぁ  」

恭介は持っおいた携垯を産巣日に手枡した。
産巣日は塔子に代わった。

「䜕だ」

『あっ、産巣日!!今ね、手元に想玉があるの。
鵺の远撃があったんだけど、矢島がなんずか食い止めおる。
今は近くの神瀟に避難しおるんだけど――』

――神瀟

䞍意に産巣日の脳裏を、先ほどの鵺の蚀葉が過ぎった。
䜕か悪い予感がする。
産巣日の本胜が、匷くそう蚎えおいる。

「ダメだ塔子、すぐにそこを離れろ!!」

『産巣日――』


《プツッ》ず蚀う音ず共に、そこで通話が途切れた。
産巣日は、䜕床も塔子の名を呌んだが、電話の向こうから返事は返っお来なかった。
盎ぐ様、ただ事では無いこずを勘づいた恭介ず゚リは、圓然ながら産巣日に詰め寄った。

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りェブ小説家デビュヌをしおみたせんか 私小説や゚ッセむから、本栌掟の小説など、自分の䜜品をミクルで公開しおみよう。※時に未完で終わっおしたうこずはありたすが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしたしょう。

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