注目の話題
付き合ってもないのに嫉妬する人って何?
友人に裏切られ、どう対応して良いのか分かりません。
不倫相手を忘れらず、家庭に向き合えません

マインドスコープ

レス39 HIT数 3314 あ+ あ-

紗奈( 10代 ♀ Yeijnb )
09/07/23 20:07(更新日時)

風が頬を撫でる

子供たちはサッカーをして
遊んでいた

どこにでもある光景で

 何度も見ただろう


少年――桐生潤稀は目を細めながら
それを眺めていた


そっと目を閉じてみる


思い出すものはない

だがそれだけでも心地良かった

足元に小さなサッカーボールが
転がってきた


「お兄ちゃーん!ボールとって!」

子供が手を振っている


潤稀は微笑みながらボールを
蹴ろうと右足を出そうとした

 しかし、

(…?)

足が動かない、それどころか
身体が動かない

金縛りなのだろうか

急に恐怖が背筋を電撃の様に
走ってくる


叫ぼうとしても
声が出ず、呼吸が荒くなる

胃が絞られるような感覚に陥り

意識を飛ばした





次に目を開けると、

電車の中だった


視界がぼやけてたせいで
一瞬、どこなのか分からなかった


目の前でこちらを見つめていた
女子高生があわてて携帯を画面へ目線を そらした

潤稀も思わず俯いた


「次は山内駅です…」

あわてて鞄を肩にかけて
立ち上がった

タグ

No.1159402 09/05/19 20:43(スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 09/05/19 20:53
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

夢は見る人になんらかの暗示を
かけるらしい


TVで宝石をたくさん身につけた
占い師らしき女性が言っていた


あからさまにインチキさが醸し出す番組は
見ない方だがその言葉はなぜか
頭に離れなかった


もしかしたらあの夢は潤稀の
性格に関するものだろうか

駅から降りて学校まで、そんなことを
考えながら歩いていた



急に背中を叩かれ振り向くと

「よお!」

よく焼けた肌に白い歯が光る

「春彦」

春彦と呼ばれた少年はニカッと笑った


潤稀とは正反対な容姿と性格だが
小学校の地元サッカークラブからの
付き合いで、親友でもある

No.2 09/07/04 06:35
惡燈誇 ( s54knb )

>> 1 きっと名スレになる予感がします・・・!


陰ながら応援してます!


さぁ肩の力を抜いて、頑張って下さい!


あ、気が早いですが感想スレ立てて頂けたら嬉しいです!

No.3 09/07/04 13:14
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

惡燈誇さん
>>おおお!!こんなへちょい小説にコメントを頂けるなんて!
 感想とかは適当に書いていただけたら嬉しいです^^
 ありがとうございました

No.4 09/07/04 13:33
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

20**年―――――

この世界は今日も殺戮に満ちている

一日で殺人事件が60件
窃盗・強盗が80件
誘拐や売春が40件
自殺や心中なんて100件を超えていた

いつ、銃撃が来るのか分からない

いつ、爆発が起こるのか分からない

いつ、どこかの国と戦争するのか分からない

人々は毎日、誰かを疑い、死に怯えていた


そんな世界で、とある物質を作られた


「machine cell」


和訳通りの「機械細胞」という

大きさは通常の細胞の大きさで、空気に触れると細菌やウイルスですぐに死滅するため、小瓶につめた濡れ綿にそれは存在する

国民はその細胞を体に取り入れる義務があり、体に取り入れると

通常の人間より発達している部分に効果が得られ、機械化する


人々は必ず起こる「戦争」に向け、夢のような物質で皮肉にも「兵器」となったのだ

No.5 09/07/04 17:21
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

もちろんここにいる春彦もその「細胞」が体の中に入っている

「なあ、今日俺昨日の小テスト赤点だったから放課後遅くなるかも」

「またかよ・・・何のテスト?」

「古文と数学、いいよなあ頭がいい人は羨ましいですねー」


ちくり、と心に針が刺さった


俺だって好きで勉強なんてしていない

お前らと違うから、俺は

親友の春彦にも言えずにいる


自分はその細胞を取り入れてないって事を―――

No.6 09/07/04 17:45
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

教室に着いた頃はもう予鈴はすでに鳴っていて、幸い、先生はまだ来ていなかった

「お…おはよう、桐生君」

隣で本を読んでいた女子生徒が恥ずかしそうに顔を上げた

「おはよ、雨宮」

「おらー、席につけー」

だるそうに丸めた教科書を肩たたき代わりにポンポン叩きながら先生が入ってきた

「早速なんだけど、桐生、風見、箱崎、お前ら明日から人事異動で津崎学園な」

No.7 09/07/04 17:46
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「はあ!?」

自分の代わりに一人の男子生徒が声を上げた

「どういう意味ですか!?」

そうですよ!とは言えず呆然とその男子生徒を見つめる

「落ち着け、風見、詳しくは昼休みに校長室へ行けって」

こいつが風見か

整った顔はまるで歌舞伎役者の様だ

色白で、ひょろりと背が高い

「じゃあ、また授業で、他の二人もだぞ」

そう言うとさっさと帰ってしまった

後にいる春彦から肩を叩かれた

「おい!どういう意味だよ!?」

「…俺も分かんねえよ」

ふいに声をかけられた
「…桐生君?」

「え、そうだけど…」

雨宮の様な雰囲気の女子生徒だった

「私も人事異動みたい」

じゃあこの人が箱崎さんか

ボリュームたっぷりの髪のせいで顔がよく見えない

「彩華はいいのか!?いきなり異動なんて!」

「だって…仕方ないじゃない」

どうやら風見と箱崎は知り合いらしい

No.8 09/07/04 17:56
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

授業が始まってもなかなか頭に離れなかった

「細胞」を体の中に少しもない自分がなぜ人事異動?

疑いの中で僅かな悲しみはもちろんあった


昼休み

「失礼します」

「おお、君が桐生君だね」

「はい」

「すまない、いきなりすぎたね」

「いえ…」

「もう少ししたら風見君と箱崎さんが来ると思うから」

「…今回の異動は3人だけなんですか?」

「まあ、そうだね・・・」

校長はどこかぎこちなかった

白髪交じりの口髭がわさわさ動いている

様子が変だというのがすぐに分かった

「…失礼します」

ドアが開いて、風見と箱崎がやって来た

「風見君、箱崎さん、よく来てくれたね、さて、3人揃った所で早急に説明していくよ」

校長先生はそう言って、資料のようなものを配った

No.9 09/07/04 18:23
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

資料には

「早竹高校生津崎学園人事異動について」

と書かれていた


「異動は明日の9時に本校へ。また津崎学園は寮を設けているからそこで生活をするんだ」

「それって…家には帰れない事ですか?」

箱崎さんが目を大きくした

女の子が知らない場所で生活されると、

両親は黙ってられないと思う

「そういう事になりますね、大丈夫、もうご家族には説明しとおいたから」


簡単な説明を終え、教室に戻って
授業が始まっても少し淋しかった

春彦や、雨宮にどう伝えばいいのか

普段だるくて早く帰りたい日常も
今日はあっという間だった


放課後、

「純稀。」

振り返ると涙目の春彦と雨宮がいた

「いつ異動するんだよ?」

「明日」

「明日?!早過ぎるだろ…?」

No.10 09/07/04 20:09
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「仕方ないじゃん・・・」

「あ、あのっ」

さっきまで黙って俯いていた雨宮が抱えていた袋を差し出した

「3人だけだけど…お別れパーティーしようって春彦君が…」

スーパーの袋の中を少しのぞくと、お菓子やらジュースが詰め込まれていた

「…そっか。ありがとう」

熱くなった目頭を押さえる

声はか細く夕闇に溶けていった


それから春彦の家で夜明けまでどんちゃん騒ぎだった

雨宮も少しずつ話してくれるようになった

「桐生君は家に連絡しないの?」

「あ~それは…」

「潤稀は孤児院育ちだから」

「あっ…ごめんなさい・・・私ったら」

「いや、いーよ」

炭酸の切れたコーラを一気に飲み上げると苦笑いした

「慣れてるし」

「今はどう暮らしてるんですか?」

「一人暮らし。明日からは風見と箱崎さんと暮らすからあんま寂しくないな」

「俺らと離れて寂しくねーの!?」

ポテチを占領していた春彦が顔を上げた

「雨宮は別だけど春彦はうっさいからちょっと嬉しい」

「なんだとー!!」

時間はあっという間に過ぎ、一睡もしないまま朝を迎えた

No.11 09/07/04 20:21
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「じゃ、行ってきます」

「おうよ!」

「毎日メールと電話するから」

「はいっ」

昨日の疲れでやけに足が重かったが

二人の笑顔に少し背中を押されたような気がした


「さて、と」

どうやら一番乗りらしく、校門の前には誰もいなかった

荷物を置いて、ぺたんと座りこんだ

早朝だから霧で辺りがぼんやりとしている

「あ!」

振り返ると二つの人影が見えた

「早いねーおはよっ」

「桐生君か、君にしてはめずらしい早起きだな」


あ!ちょっとカチンときたぞ!


箱崎さんと風見だった

昨日のどんちゃん騒ぎで疲労困憊の状態でそんなことを言われるとカチンとくる

「風見ィ、お前『偏見』っつー言葉知ってる?」

「知ってるが何か?」

「君のようなことを言うんだよこの女顔!!」

「なっ…」

とっさに顔を赤くし、俯いた

「女顔」というのがコンプレックスらしい

「ごめんね~伸一はちょっと皮肉だけどいい奴だからさ♪」

「彩華っ」

「だって本当のことでしょ?」

「うっ…」

「なんだお前らカップルだったの」

「「違いますけど!!!」」

「やあ、早いね、遅れてすまない」

しばらくして校長先生がやって来た

後ろには先生ではなさそうな知らない人達が何人かいる

No.12 09/07/05 12:31
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「この怪しい雰囲気は『蝦蟇』ね?」

「おいコラ失礼だろうが」

「何それ?」

風見は目を丸くした

「何って…君はそんなことも知らないのか!?」

「学校で習ったっけ?」

「これは常識だろ!?全く…なぜ君のような者が人事異動に…」

「はあ!?もしかしたら階級が下がってんのかも知れねえし」

「そんな訳ないだろ!」

「まあまあ落ち着いて二人とも、仲がいいんだから」

「「良くないっっ!!」」

「…そろそろよろしいかな、君達」

校長が咳払いをした

「この方達は津崎の指導員だ。箱崎さんの言うとおり『蝦蟇』の軍団だ」

『蝦蟇』と言われた3人の黒ずくめは軽く会釈した

「よろしく」

一人はにこやかに手を振った

「…」

一人は無言

「はっ、まだこんなガキとは…」

一人は風見がもっとひどくなったような態度だった

ちらりと風見を見ると眉間に皺を寄せていた

「さて、もうバスが来たようだね」

小さなオンボロバスが止まった

「私はもうここで、ではよろしくお願いします」

「我々にお任せを」

そう言うと校長はそそくさと帰ってしまった

昨日から校長の様子がおかしい

「さ、乗って下さい。もうじき出発するから」

「バスに乗りながら説明をする…何故お前らが人事異動になった事もな」

No.13 09/07/05 12:55
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

早竹高校と津崎学園

共通点は公立高校唯一の軍事学校であること

「細胞」を取り入れた子供たちがその能力を生かして

いつ起こるか分からないが、必ず起こる「戦争」に備えている

津崎学園が創設されたのは200年前

初めは学校でなく「医療最先端センター」だった

病院と刑務所、科学研究所が集まったようなもので、不気味な所だった

実際にもそうで、戦争で捕虜した人間を実験の材料にし「機械細胞」もそこで作られた

また、引き取り手のない「危険物質」の子供も教育され、『蝦蟇』という戦闘軍団を作られる

そんなことを繰り返し、ようやく軍事学校と認められ、現在に至る

「そんなお前らは『危険物質』と早竹で確認された」

「なっ…」

驚きを隠せなかった

「桐生君も気付いたかと思うけどあの校長先生、自分の生徒がそうだと知って結構前から怖がっていたんだよ」

「でも俺はっ」

細胞を取り入れていない


突然、口を塞がれた

「んぐっ」

「黙ってろ、お前のことは知っている」

風見と箱崎が眉を寄せた

「俺達が何で…というか『危険物質』って?」

「『危険物質』とは…」

低い声で呟いた

「通常より強力な力を発揮するが、暴走して自我をなくす細胞を持つ人のことだ。」

No.14 09/07/05 13:10
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「え…?」

頭の中が真っ白になった

「じゃあ…あなた達も?」

さっきの愛想のいい人が苦笑した

「まあね…おかげで親戚から腫れものを触るような扱いでさ」

「…さっきから俺達まだまともな自己紹介してねえだろ」

「え?そうだっけ?」

「このヘラっとした奴が比留間(ヒルマ)俺達の班のリーダーだ。んで俺が太市(タイチ)。
そしてこっちの無口は且南(ショナン)。」

てきぱきと紹介していく

「太市ィ~俺そんなにヘラっとしてるかな?」

「…してると思いますが」

「えぇ!?風見君ひどいなー!」

「つか、太市さん意外ですね。もっと大雑把な人かと思いました」

「てめぇ箱崎…ズケズケ言いやがって」

「って、君達落ち込まないの?『危険物質』なんだよ?」

「別に俺たちは優秀なんでそれくらい平気です。自己抑制だってできるし。」

「結構キツイんだぞ」

「大丈夫すよ、あ、桐生は違うかな?頭悪そうだし」

カチンときた

「ああ!?も一回言ってみろ女顔!!」

「ぶっ!!」

比留間が噴き出した

「確かに風見君、美人だよねえ!」

「その呼び名はやめろー!!」

「あーコラ!!バスん中で騒ぐな!!」

バスの中もどんちゃん騒ぎだった

No.15 09/07/05 13:37
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

バスに乗って数時間

「津崎学園」と書かれたビルの様な建物が見えた

どちらかといと大きな病院の様な建物で早竹よりはるかに大きい

「ったく…バスの中が地獄みてぇだった」

バスが止まるとげんなりとした表情で太市が降りた

「あれ?太市、顔色悪いよ」

「このガキ共がうるさかったからな」

太市が親指を指した先には3人はいびきをかいて爆睡していた

「本当に、こんなガキが『危険物質』なんてな。可哀相だぜ」

「そうだよねぇ…まだ子供みたいな一面があるからね…太市?」

太市は安らかな眠りについている3人の顔の前で手をパン!と鳴らした

「…ッふああ!!」

間抜けな声を出した箱崎が目を覚ました

「よう、いい夢でも見たか?」

そんな太市の皮肉めいた言葉を無視し、バスを降りた

「あれ?ここ病院?」

「元々は医療センターだからね…」

そう言った比留間の目はどこか寂しげのようだった

しばらくして風見、潤稀の順番に起きて

「うあーッ…眠い…」

「早く眠らせて下さい」

ボケボケと言葉をもらした

「ったく…本当にまだガキだな!」

太市が舌打ちをした

No.16 09/07/05 15:01
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「改めまして、ようこそ、津崎学園特進クラスへ!」

大げさに手を広げた比留間の背後はたくさんの人だかりだった

あまり歓迎されてるわけではなさそうだ

「危険物質」がこれから暮らすのだから

「よろしくね、桐生潤稀君、風見伸一君、箱崎彩華さん!」

比留間一人で拍手をする
隣で太市が腹をさすった

「とりあえず腹、減ったろ。まずは腹ごしらえだ」

それって自分がお腹空いてんじゃないの?と思ったがさっきから腹の虫が鳴り止まなかった

「歓迎いたします」

軍服を着た女性に案内され、やって来た所は食堂のようだった

あの建物に似合わないシャンデリアがジャラジャラと、白いテーブルクロスをかけた長いテーブル、アンティークな椅子、小物などが上品だった

おいおい、ここはハ○ポタじゃねーぞ

(一応)女の子の箱崎は部屋の中をまじまじと見つめていた

「あ、君達3人はあっちだよ」

「え」

比留間は赤いクロスをかけた豪華なテーブの方を指した

すでにワイングラスやナプキンが置かれている

早竹の学生ホールとは正反対だ

恐らく「とんかつ盛り盛り定食」や「うどん丼」はここにはないだろう

No.17 09/07/05 15:08
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「なんか恥ずかしいんですけど…」

「何照れてんだよ!!堂々としろ!!」

太市は潤稀の背中を思いきり叩く

「っでぇ!!」

痛さで涙目になっている潤稀の背後でぞろぞろと人が入って来た

「もうすぐだね、ほら、席に着いて」

比留間に半ば押されつつ赤いテーブル座席に座った

イスはふかふかしていて気持ちいい

頭に当たるんじゃないかというくらいに小さなシャンデリアが目の前でぶら下がっている

そして前を向けば

「…歓迎されてないみたいだね、僕らは」

風見が苦笑した

こちらを見る目は1mmも離さず、じっと見つめている

中には小さな子供もいたが、これが子供の目なのかと疑うくらいに

冷やかな目つきだった

「大丈夫、そのうち慣れてくるから」

本当かよ、と比留間を横目に歓迎会が始まった


「うあ~ッ、腹痛ェ…」

「つーか目線怖くて食べ物が喉に通らなかったんだけど」

「本当に大丈夫かなー」

案内された部屋で大の字になって寝ころんでいた

ゴージャスなのはあの部屋だけみたいで寮部屋はいたって普通だった

もし暖炉とかフカフカのソファがあったらどうしよう・と考えていた位

No.18 09/07/05 15:29
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

コンコンとノック音が聞こえた

「入るよー」

比留間だった
後ろにはさっきの軍服の女性がいる

「そうだった?歓迎会」

答えを期待しているようでニコニコしている

「「「全然」」」

無性に腹立ち、抵抗なく一蹴する

「ええっ!?」

「ぶっ!!」

軍服の女性が噴き出した

「あったりまえさ、あんな目がチカチカするような部屋でいきなり歓迎会って。旅の疲れで
そんな気分じゃないはずだろ」

ぽかんと口をだらしなく開けた3人を見てさらに女性は爆笑した

「まあ、本性はこっちさ。あたしは『蝦蟇』の火好季(ヒズキ)。比留間班の事務員をやっている」

よろしく、と差しのべられた手は事務員なのか・と首を傾げる程、切り傷やタコでいっぱいだった

正直女性の手ではない

「よろしくお願いします…」

「ああそれと」

ごつごつした手が箱崎に向ける
反射的に箱崎はびくっと体を跳ねた

「彩華は女の子だから潤稀と伸一に何かされたら連絡しろよ。」

「「ぶふっ!!」」

「ぎゃははははははは!!!」

No.19 09/07/06 11:40
霧 ( rbPinb )

こんな感じのお話大好きです❤

更新楽しみにしています☺

自分のペースで良いので頑張って下さい☺

No.20 09/07/06 19:38
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

霧さん
>>ありがとうございますw
 こういう小説好きなんて!💕
 頑張りますね★

No.21 09/07/06 19:47
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

火好季まだ笑っているのか少し涙目だった

「あー…とりあえず中見ていくか?疲れてるところ申し訳ないんだけど」

「まだ津崎の事分かってもらえてないからね」

比留間はポケットから一枚の紙を取り出した

「はいコレ、津崎の案内図。俺たちはこれから仕事だから後は適当に生徒に聞いて一緒に回らせてもらって」

ちっとも喜んでいない生徒がすんなりと案内するはずがない

「えっ…」

「んじゃっ、また後で。」

「お疲れ様」

返事の前に出て行ってしまった

「…無理でしょ」

「俺、話しかける勇気ないよ」

「って!!彩華ッ」

彩華はすでに部屋を出ようとしていた

「何?」

「何じゃねぇよ、ちょっと休んでから俺達で回ろうよ」

「そんなこと言ってたら友達できないよ?」

「友達って!」

「これからお世話になるんだし、あいさつしながらね」

おお、ちょっと尊敬
風見には恐らくない能力だな

No.22 09/07/06 20:02
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「…そうだな」

「って桐生も!?」

「風見君のコミュニケーションの練習しながらね」

「ぐっ…」

結構、風見はからかいがいのある人物でもある




「あっ…!!いたよ、あの人なんてどう?(ヒソヒソ)」

「なんでコソコソしなきゃなんねーの?(ヒソヒソ)」

「隠れる意味もないだろ…(ヒソヒソ)」

大きな観賞植物に隠れて女子生徒の様子を窺う

「あれが制服?」

「え…軍服なんですけど」

「でもあの歓迎会の時、白衣もいたぞ?」

No.23 09/07/10 21:14
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

すると、女子生徒が振り向いた

「!!??」

「あー!!!お前らッ!!」

女子生徒の指はしっかり観葉植物の後の3人を向いていた

「って!?待てよ!!」

「「「ぎゃー!!!」」」

(反射として)猛スピードで逃げだした

「待てってー!」

女子の割には体力があり、後ろを走っていた箱崎の腕をつかむ

「ひゃあっ!!」

そのままは津崎と早竹の力差

ぐいっと引っ張られた

「うおー!!箱崎ィ!」

「彩華ッ!!」

「お前ら、早竹の新人だろ?」

「…え?」

女子生徒の目は輝いてた

「オレさーっ、今まで早竹の『うどん丼』に興味があったんだよ!なあ、どんな味すんの?」

まさか『うどん丼』がここまで広がるとは


「オレ、洲崎瀬奈!」

「自称男」という瀬奈はなんと蝦蟇の一員らしい

「年はお前らの2つ上かな?実はオレも早竹から人事異動でここ来たんだよね」

「えー!?そうだったんですかぁ!」

なんと先輩も

どうやら早竹から津崎の人事異動は一度ではないらしい

『うどん丼』も異動後に出されたメニューで友達から聞いたのだとか

No.24 09/07/10 21:25
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「で、どんな味だった?」

「食べたことないですよ!!」

「えー」

3人+αは昼間なのに薄暗い部屋の中を回っていた

「あの…ここ寒くて薄暗い…鳥肌スタンダップ」

腕をさすりながら呟く

「『危険物質』を優先してる学校だから、こういう環境が落ち着くらしいよ」

その言葉にズキリ・と心が痛んだ

「もっとおかしくなった『危険物質』もいるんだって、オレあんま知らねぇから」

『危険物質』に光はあるのか

こうやって気を遣われて人に避けられ、怯えながら

「っわ…悪ィ…なんか変なこと言っちまって」

No.25 09/07/11 18:40
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「…いえ」

風見は俺の様子に察したらしく、何か言おうと口を開いた

が、授業のチャイム(というよりサイレン)が鳴り、3人の会話は途切れた


それからもう一週間が経った

『蝦蟇』の正式隊員になり、ほんの少しだけどクラスに馴染んできた

時々春彦達に連絡を取り合って、

よく喧嘩するけど風見のことを「伸一」、箱崎のことを「彩華」と呼べるようになった

そして、今日は

「異動早々、すまないが、演習することになった。」

伸一や彩華らはやる気満々だったが、俺はそれどころじゃなかった

ずっと悩んでた

なんで、細胞を取り入れていない『俺』が

少なくとも他の『危険物質』とは違う筈

俺は…何?


「ってちょっと待って!!これのどこが演習!?」

彩華の言いたい事は言わずとも分かる

だって、そこは―――

「第一部隊ッ!!撃て!!」

「救護班ッ何してるの!?早く来て!!」

「うっ!!」

「ッ…先輩ッ!!」

そこは確かに戦場だった

人は倒れ、白衣の救護班がバタバタ走りまわっている

白衣は血や土で汚れていた

頭上から軍服を着た上の人(っぽい)男性がメガホンを手に取った

「特別保安部隊『蝦蟇』・比留間班!!第五研究所に着け!!」

「はあ!?」

「急ぐぞ!!」

太市に続き、一斉に走り出した

No.26 09/07/11 18:59
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

津崎は医療センターの形を引き継いで、現在は5つの研究所が建てられている

第一は化学技術
第二はクローン技術
第三は薬剤開発
第四は機械開発

そして、今回担当する第五研究所は…

人工細胞開発―――即ち『機械細胞』の発端となった場所である

「あの中を攻撃されたら、津崎は終わりだ!!死んでも守れ!!」

少々荒っぽい口調だが太市はあくまでまだ冷静らしい

土袋を積んだ低い盾に向かって匍匐(ほふく)前進で移動する

これは早竹でもやる基本中の基本

「うわ!!潤稀速ッ」

にゅるにゅると青虫のように体をくねらせ、定置に着いた

そして、恐る恐る覗いてみる

「危ねぇ!!」

「ボン!」爆発音が響き、気がついたら腕の中だった

「勝手な行動すんなって!!」

瀬奈だった

(とりあえず)女の子に後ろから抱き締められたことが恥ずかしかったが、

この状況ですぐに吹っ飛んだ

「班長ッ」

軍服の女性が匍匐前進でやって来た

「火好季さんっ」

何か紙のようなものを持っていた

「よお、お前ら。…奴らの詳しい情報がわかったぞ」

そう言って、紙を湿った地面に置いた

「下手に撃つなよ。早竹の生徒が人質にとられている」

No.27 09/07/17 18:26
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「え…?そんなの早竹か分からないんじゃ…」

「証拠はある」
火好季はそう言ってポケットからカメラを取り出した

再生ボタンが押され
小さな液晶画面にパッと人だかりが写った

「こいつ等は輪生庁だ。」

聞いたことのない単語に頭が混乱する
「リンセイチョウ?」

「反機械細胞組織。つまり、機械細胞の体へのチャージを反対する奴等だよ」

「津崎学園!!」
頭上から声がかかった

「早竹の生徒を預かった。返して欲しければその倉庫の中にある細胞をこちらによこせ!」

まるでドラマのワンシーンの台詞だ
こんな台詞が現場で聞けるとは

「しつこいな…」
太市が唇を噛んだ

「え?」

「今日を含めて24回」

それを聞いた比留間は爆笑した
「いくら向こうが嫌いだからって数えることはないんじゃない?」

「るっせぇ!!」

余裕を思わせる二人の会話をよそに伸一は眼に手をかざした

「相手が遠くて見えない…僕の能力を使いましょうか」

No.28 09/07/17 18:30
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「え…ちょっと伸一君?」

比留間の返事を無視してかざした手から小さな円盤が出てきた

初めてみるそれにぎょっとした

「驚くのはまだ早いですよ」
するとその円盤から一回り小さな円盤、またその円盤にさらに小さな円盤…

カシャンといって伸一の目はドリルのような鋭利へ化した

「…なんだソレ」
太市が円盤ドリルを指した

「これは虫眼鏡みたいなもので、遠くにいるモノをうつしだすんです」

目を凝らして人質を見る

「…まさか」

「誰なんだ!?」

No.29 09/07/19 15:21
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

そう言うと伸一は少し眉をしかめた

その能力で遠くのモノが見えても人だかりでなかなか見つからないらしい

「俺たちと同じクラスの女子みたいだ」

一気に心臓の鼓動が速くなる

まさか、

いや違う

…雨宮?

予想通りに伸一の口からその名前が漏れた

「…雨宮さんか?」

彩華と潤稀は眼を丸くした

「そんなっ…雨宮さんって潤稀の友達だったよね!?」

彩華は放心状態の潤稀の肩を揺さぶった

太市が舌打ちした

「アイツらに拉致られたらまずいな、一刻も早くあの少女を救出しろ!!」

太市が手を振ると部下達が袋の盾を飛び越え、走り出した

「…抵抗する気か!」

輪生庁のリーダーらしき人物が睨みつけた

「撃てェ―ッ!!!」

太市の声で互いの銃弾が飛び交う

「適当に撃つな!!流れ弾が雨宮に当たったらどうすんだよ!?」

さっきまで放心状態だった潤稀がいつの間にか叫んでいた

彩華がビクっと肩を震わせた

「大丈夫だ」

瀬奈が暴れる肩を置いた

「俺達が適当に撃ってると思うか?こう見えて津崎は頭でっかちだけじゃねぇんだぜ」

突然、目の前で瀬奈がトランシーバーを取り出した

「第五研究所担当、比留間班員・洲崎瀬奈!!バズーカーいきまーす!!」

No.30 09/07/19 15:30
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

すでに瀬奈の腕は変形していた

それは瀬奈の背丈程の銃でドラム缶の様だった

「息止めてろ」

瀬奈の低い声が耳に響き、次に爆発音が聞こえ、目の前は真っ赤になった

――――――――――――――――

「っげほげほ!!」

「クセぇ…!」

「目に染みる~」

先ほどの大爆発から数分後、ようやく視界が見えてきた

「だから言ったのにー」

ゴーグルと防臭マスクを身につけた瀬奈はもちろんケロっとしている

「って!!敵どころか皆死んでるんじゃ…」

「それはないね」

瀬奈は向こうを指した

「比留間さんと太市さんがガードしちょる」

煙のせいでぼやけてはいるがその存在は大きかった

「なんですか…アレ」

それは傘にしてはいびつで、ドームにしては小さい黒い物体だった

No.31 09/07/19 16:07
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「あれは火好季さんの能力。比留間さんが使ってるけど」

「はははー!!どうだ私の能力は!」

瀬奈の後ろでゴーグルを身につけた火好季が仁王立ちしていた

「私の細胞は『蜘蛛』だ。普段イヤリングにしているから持ち運び楽ちん」

よく見ると赤い双眸がギラリと光った

気のせいか、火好季の髪がわさわさと動いた

「で、も一個の相棒」

気のせいではなかったらしく、髪を耳にかけるとブンブン振り子みたいに揺れている
小さな蜘蛛がいた

「戦いにうずうずしてんだろうね、こいつは」

行ってこい・と遠くへ投げると蜘蛛は空中で一度体を縮ませた後、一気に
さっきの巨大な物体へと化した

その姿は正直気持ち悪い

「火好季さんのはちょっと珍しくて細胞を自分の体から離す事ができるんだ」

No.32 09/07/21 15:58
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

メガホンで比留間達の安否を確認する

さらに激戦が増した

「瀬奈のおかげで半分倒れたな」

「さっきの爆発で雨宮さんが無事なのが奇跡に近いですね」

伸一のレンズの先は未だ捕まっているが、怪我一つもない雨宮がいた

「も一回バズーカーいきます?」

彩華は眉をしかめた

「結構です」


一旦瀬奈は見張りとなり、今度は新入りトリオの攻撃となった

「腕がなるぅ~」

彩華は小さくガッツポーズする

「俺は奴等の様子を見てるから、勝手に攻撃すんなよ」

一瞬で血の気が引いた

まずい、

「じゃあ彩華、先頭ね、伸一は後ろで様子を見て、そして君は…」

火好季と目が合う

心臓が止まった気がした

「…君は私らの近くで事務担当」

「は?」

細胞のないただの人間は雑用!?

呆然としていると、乾いた音が響いた

No.33 09/07/22 13:00
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「ぐっ…」

潤稀の近くにいた生徒が倒れた

目の前で人が撃たれた

頭の中が真っ白になった

「潤稀ッ!!ここは危険だ!早く来い!」

火好季の声は銃声の中、溶けていった

「潤稀!」

腕を掴まれ、引きずっていく形で連れていかれた

「…なんで」

「『細胞』もない人間が何故戦場に連れてかれるのか、か?」

内心ドキッとした

「そうだな…そろそろお前に言わなくちゃならねぇな」

思わず火好季を直視した

「え…」

「この状況だから単刀直入に言う、お前は…」

するとまた近くで銃声が響いた

腕を掴んだ火好季の手がするりと離れる

火好季が撃たれた

テレビで見るスローモーションに本当になってゆっくりと火好季が倒れる

「火好季さんッ!」

腹を撃たれたらしくドクドクと赤黒い血が流れる

「くっ…」
火好季の前髪が汗でくっついていた

「救護班を呼んできます!」

「待て」
潤稀の顔の前で火好季の手の平が迫った

「事務員は戦場で死ぬ覚悟でここにいるんだ…助けを呼んだら生徒に迷惑だ」
そう言って薄く微笑む

「何言ってるんですか…!!迷惑な訳がない…とにかく!!そこにいて下さい!」

今度は何も言わなかった

銃声と流れ弾が飛び交う中、走り出す

今は恐怖なんてなかった

No.34 09/07/22 13:14
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

自分にできること、弱い自分にできること

こうやってみんなをサポートするしかない

頬に鋭い痛みが走った

流れ弾が頬をかすめたようだ

間一髪で頬の肉が潰れるとこだった

救護班らしき女性が立っている

「きゅっ、救護班!!」

すると女性が振り向いた

「どうなさいました!?」

「人がッ…人が撃たれたんです!早く!死んじまう!」
―――

「これは…ひどい」

救護班の女性は思わず手を口に押えた

白衣が真っ赤に染まり、撃たれた箇所から湧水のように血が流れていた

「まだ、息はあります…とりあえず運びましょう、足を持って」

救護班の女性の適切な応急処置で火好季は助かった

良かった・と胸を撫で下ろした刹那、誰かの叫び声が響いた

叫び声をした場所に目を向けると誰かが倒れていた

「伸一!?」

伸一が胎児のように体を丸くし、カタカタ震えている

その声で伸一が顔を上げた

「なっ…!?」

伸一の右目が潰れていた
そこは伸一の細胞の能力の場所だった

「どうした!?撃たれたのか!?」

「分からない…急に眼が潰れて…それより彩華と瀬奈サンが…」

No.35 09/07/22 13:58
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

ちょっとした解説←

桐生潤稀
>>元・早竹高校 現・津崎学園生徒兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班員
 機械細胞なし

風見伸一
>>元・早竹高校 現・津崎学園生徒兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班員
 右眼に通常機械細胞「ムシメガネ」チャージ

箱崎彩華
>>元・早竹高校 現・津崎学園生徒兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班員
 機械細胞 ???

比留間
>>津崎学園指導員兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班長
 機械細胞 ???

太市
>>津崎学園指導員兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間副班長
 機械細胞 ???

且南
>>津崎学園指導員兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間副班長
 機械細胞 ???

火好季
>>津崎学園事務員兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班事務長
 両耳に体外性機械細胞「イヤリング」チャージ

洲崎瀬奈
>>元・早竹高校 現・津崎学園生徒兼特殊戦闘軍団『蝦蟇』比留間班員
 右腕に通常機械細胞「バズーカー」チャージ   

No.36 09/07/22 13:59
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

機械細胞:人工細胞、通常より発達している身体の一部が特殊変化する
     チャージが義務付けられている

危険物質:『蝦蟇』にいる戦闘員を指す
     通常の機械細胞より強力な力を発揮するが、代償として
     騒音などによるストレスで細胞がチャージされた人体の一部が破損する

チャージ:機械細胞を体に取り込ませること

体外性:体から離すことができ、他人に与える事が可能なごく稀な細胞の例

細胞能力:チャージされた体から発揮する力のこと(例→伸一:遠くのモノが
見える、火好季:防御力が高いドームを作ることができる、など)  

No.37 09/07/22 18:53
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「潤稀!」

「瀬奈さんっ!」

瀬奈は頭から血を流しているが、軽傷みたいだ

「来るな!下がってろ!」

瀬奈の向こうにいたのは彩華だった

でも普段の彩華とは違う

眼は機械のようで光がなく、「アーアー」と機械音のような声が薄く開いた唇から
漏れている

「彩華!?」

「うっああああああ!!」

潤稀の声でその声は叫びになり、こちらへ走って来た

人間離れのジャンプで彩華の足は潤稀の目の前で振り下ろされた

「うがッ!!」

数メートル吹っ飛んで大きな岩にぶつかった
一気に吐き気が増してくるが、思わず飲み込んだ

「潤稀!?」

頭がズキズキ痛む

そうか…これが…

『危険物質』――…

再び彩華は叫びながら向かってきた
その眼には涙がたまっていた


助けて、


そんな声が聞こえた気がした

No.38 09/07/22 19:10
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

わかった、

俺なら、助けられる

根拠のない自信、とでもいうのか

これは俺の勘だ

細胞がない理由、

このためか

彩華が突進してくる
恐らく彩華の能力が暴走しているのだろう

「潤稀!」

「ああああああ!!」

「っ…くっそ…」

そのまま押さえ込んだ

熱さで指の骨が砕けた

摩擦で靴底が溶ける

体中に切り傷ができる

痛さで叫びそうになる

でも今は関係ない

俺は…

さらに力を込めると、青白い炎が彩華を包み、次に潤稀、そして瀬奈、伸一

この場の全員を飲み込んだ


「…き」

「…んき!」

「潤稀ッ!!」

眼を開けると伸一と彩華がいた

伸一は苦笑していて彩華は今にも泣きそうだ

「ごめん…潤稀…あたし…」

「彩華のことは見逃してやってくれ」

No.39 09/07/23 20:07
紗奈 ( 10代 ♀ Yeijnb )

「え…」

まだ頭が言うことを聞かない

「暴走した俺たちを止めてくれたろ?あの光で」

ようやくさっきの出来事を思い出した

伸一の右眼が潰れた

彩華が暴走した

彩華を押さえた後、青白い光が飲み込んだ

―そうか

あれは…

「桐生君ッ」

視界にもう一人入って来た

見覚えのある顔

早竹の制服

「あ、雨宮!」

バネみたいに飛び起きた

「大丈夫か!?」

「うん、さっきの光で逃げたみたい」

はあ、と大きなため息をした

でも、

「なんで、お前が…」

どうやら学校の帰り道に怪しい車が雨宮の前で止まり、数人の男に拉致られたらしい

特に何もせず、津崎学園に連れて来られたらしい

幸い、無傷だった

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

お知らせ

6/10 カテゴリの統合(6月20日、26日実施)

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧