百丁のコルト

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2008/11/30 19:07(更新日時)

こんにちは、ここで「誰も見ない月」という小説を書いていた者です。もう書かないつもりだったんですが、小説を書くことが楽しくなってしまい、もう一作書くことにしました。前作とは雰囲気がだいぶ違うので驚かれるかもしれませんが、ぜひ最後までお付き合い下さい。

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No.1157396 (スレ作成日時)

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No.51

>> 40 中間テストなのでしばらく書けません。 少々お待ち下さい。 早く書いて下さいね😁毎日が楽しみです😍

No.52

>> 51 ありがとうございます。
できるだけ早く書けるよう頑張ります。

No.53

15:27(火)日比谷



「何で彼女を…セシルを置いてきた!」
アシュレイは前方の車を避けながら答えた。
「誰かが足止めに残らなければ逃げ切れません」
「でも彼女一人じゃ勝ち目は無い!これじゃあ見殺しだ」
アシュレイは突然に笑みを浮かべた。
「須藤さん、貴方はセシルを過小評価しているようですね。彼女はプロです、大丈夫。それに……」
アシュレイはちらりと横目で須藤を見た。
「彼女は一人じゃありませんしね………ん?」
アシュレイがサイドミラーを気にしている。
「どうしたんだ?」
「まずいですね、追手のようです……滝沢の奴、まだ人を隠していたか……」
敵の車の助手席側の窓から人が身をのりだす。手にはライフル。
アシュレイはそれをミラー越しに確認した。
「…ちっ!撃つ気か、須藤さん伏せて下さい!」
ダダダダ!
敵のライフルが火を吹く。アシュレイは車体を左右に振ってかわす。
「須藤さん、こっちからも反撃します」
そう言うとアシュレイは助手席からアサルトライフルを取り出した。
「AKS-74です…とにかく車を狙って撃って下さい!」

No.54

何でこんな面白い物書けるのと思いながら見ています☺続き待ってます😚

No.55

>> 54 感想ありがとうございます。
自分では、やはりアクション系の話は上手くいかないなと思っていたので、面白いと言って頂けると嬉しいです。
早く更新できるように頑張ります。

No.56

ネットで見つけたのですが、「パラノイア」というゲームが、スレ主さんの小説とコンセプトが似ているので、参考になるのでは?とレスしました。ただ、冷戦時代の共産主義社会を批判した問題作で、かなりキツイ内容ですので、よく考えてから閲覧してください。検索ワードは、『パラノイア紹介』です。

No.57

久しぶりです😁✨

期末も終わり資格取得試験も終って
やっと解放されました🌷✨

更新楽しみしてます😊✨

No.58

>> 57 遅れてしまって本当にすいません。
更新します。

  • << 60 えぇ⁉💦💦 大丈夫だょ❗😲✨ 主さんのペースで書いてください😉🌷

No.59

15:31(火)御成門



東京タワーはもう近いが、追手を撒くか倒すかしなければ止まれない。
(まさかライフルまで撃つはめになるとは…)
須藤は覚悟を決めた。
敵の銃撃が止む。
「須藤さん今です!」
「頼むから人には当たるな!」
須藤は素早く窓から身を乗り出すと、敵の車めがけて弾丸を放った。
ガガガガ!!
拳銃とは比べ物にならないほどの反動と、耳をつんざく様な轟音が響く。
敵の車の挙動が乱れるが、車体にも人にも当たった様子は無い。
「その調子です!当たらなくてもいいから続けて下さい!」
弾倉を入れ替えた敵が射撃体制を取る。
「させるか!」
須藤はそいつを狙って引金を引く。
ガッ!
不吉な音。
AKがジャムを起こしたのだ。
「アシュレイ!弾詰まりだ!」
無抵抗のこちらに敵は容赦無く攻撃を加える。
ダダダダ!
アシュレイは車体を振って照準をそらす。
「ライフルはそのAKしかありません…こうなったら無理矢理撒くしか………!!」
「うわっ!!」
瞬間に須藤は強い揺れを感じた。
「ちっ!タイヤに当たったか!」
アシュレイがスピンしかけている車体を必死に立て直す。
「このっ!言う事を聞け!」

No.60

>> 58 遅れてしまって本当にすいません。 更新します。 えぇ⁉💦💦
大丈夫だょ❗😲✨

主さんのペースで書いてください😉🌷

No.61

>> 60 ありがとうございます。
できるだけ早く書ける様に頑張りますので、気長に見て下さい。

No.62

15:33(火)御成門



絶対絶命。
こちらの車はパンク、AKは使えない。
敵は車も銃も無傷。
殺られるのは時間の問題だった。
「須藤さん、私の腕ではこの車をスピンさせない事だけで手一杯です。スピードも出せませんし、ましてや敵を撒くことなんて不可能です……」
冷静なアシュレイの声にも、幾分諦めの色が感じられた。
ガガガガ!
考える間も無く敵が銃弾を浴びせてくる。
「私がここに残って何とか敵を足止めします、ですから…」
「無茶だ!走ってる車を足止めなんて出来っこない!」
「しかし、何もしない訳には!」
「まだだ…何か方法があるはずだ…」
須藤は最高速度で頭を巡らせる。
敵の銃声…
頭から排除する。
必要な事だけを思考の対象とする。
こちらの武器はコルトガバメント一丁。
この距離ではいくら撃っても当たらないだろう。
タイヤのパンクした車ではまともには走れない。ライフルを持つ相手に殺られるのは時間の問題。
逃げる事は不可能、だったら倒すしかない。
この状況で、どうしたら勝てる?
須藤は決心した。
危険だが、一つだけ方法がある。
「アシュレイ、方法は一つしか無い。俺の作戦に乗ってくれ」

No.63

15:34(火)御成門



「危険過ぎます!…それに、須藤さんが手を汚す事に…」
「そんなの分かってる!いいからやってくれ!」
須藤はアシュレイに怒鳴った。
「………分かりました、やってみます」
アシュレイは運転に集中した。
さっきからの銃声騒ぎで車は周囲には居ない。
「………!!」
アシュレイはアクセルを放すと同時にサイドブレーキを引いた。
タイヤがロックし、衝撃が車体に走る。
「スピンするなよ!」
ブレーキを踏み込み、ステアリングを一気に右に回す。
後輪がアスファルトを滑る。
180度のドリフト。
フロントが真後ろを向いた。
「よし!」
ブレーキを解放し、アクセルを踏む。
敵の車に向かって一直線に加速。

そう…当たらないなら、こっちから敵に接近するしかない。

敵の銃弾がフロントガラスを割って車内を貫通する。
アシュレイと須藤は身を屈めてかわした。
車体が横に並ぶ
その殺那

二発の銃声。
一瞬の出来事だった。
敵の車はそのままガードレールに激突した。
須藤には見えていた。
自分の放つ銃弾が、二人の人間の頭を狂い無く貫通する様を。
まるで油絵の様に
その目に焼き付けていた。

No.64

15:38(火)御成門



さっきの戦いで車は動かなくなってしまい、そのうえひどい騒動になってしまった。
須藤たちはそれを避けるために、現場から離れる様に歩いていた。
「大丈夫ですか?須藤さん」
「ああ…何とか、別にこれが初めてじゃない…」
そう言った途端、昨日あの男を殺した時の、気味の悪い感情がまた込み上がってきた。
だが…それは前の時ほど強く拒絶はされない。
耐性?
いや…そんな聞こえの良い物じゃない。
人の死に対する感覚が麻痺し始めている。
気持ちの悪い、蝕む様な慣れだ。
でも…不快でありながらも何か快楽の様な、いや…優越感の様な物も一方にはある。
それが……余計に須藤の気分を悪くさせた。
「アシュレイ、この騒ぎ…どうするつもりだ?」
須藤は今の思考を払い除けながら言った。
「そうですね…映画の撮影でもあった事にしましょう」
「圧力をかけて揉み消すって事か?」
「まあ、簡単に言えばそういう事です」
警察だけでは無い、彼等の組織は日本の政府にまで力が及ぶということか?
「須藤さん、ここからなら徒歩でも十分間に合います。まずは東京タワーに行きましょう」
「ああ…そうしよう」

No.65

15:29(火)日比谷



「作戦ポイントに着いた……辺りも気にせずまた派手にやってるな、本部も事後処理が大変だ」
ギリアムはビルの屋上から問題の交差点を見下ろしながら、無線に皮肉った。
「呑気にしてないでさっさと援護してよ!!ホントにピンチなんだから!」
無線から鼓膜が破れるほどの怒鳴り声が響く。
「分かったよ!了解!!」
そう言うとギリアムは肩に掛けていたバッグを下ろし、中身を取り出した。
まず二つに分かれた本体を組み立てる。
続いて銃口にサイレンサーを接続。
最後にスコープと足を付けた。
漆黒の機能美が浮かび上がる。
高性能狙撃銃 PSG-1
交差点までは直線距離でざっと300メートル。
問題無し。
ギリアムはフローティングポジションを取り、スコープを覗き込んだ。
敵の位置を確認する。
「セシル相手には隠れてるみたいだけど、こっちからは丸見えだな」
ギリアムは再度無線に話し掛けた。
「こちらギリアム…セシル、準備OKだ。これより援護射撃を開始する」
「了解、頼むわ」
無線が切れると同時にギリアムは思考回路を切り替える。
「悪いな、お前らに個人的な恨みは無いが、これも仕事だ」

No.66

いつも楽しく見てます☺主さんは銃に詳しいのですか❓

No.67

>> 66 いや、全然詳しくないです。
何せ思いつきの話なものですから。
コルトガバメント以外は、全部メタルギアソリッドと言うゲームに登場した銃をそのまま使っています。
一応実際に存在してるかどうかは調べていますが。

  • << 72 この小説読んでたら久しぶりにメタルギアソリッドやりたくなりました✨PSG-1好きです☺

No.68

15:45(火)芝公園



「須藤さん、東京タワーまでもう少しです、急いで」
前を行くアシュレイが声をかけた。
(そうだ……)
須藤は端末を確認した。敵は奴らだけではない。偶然に近くに参加者が居る可能性もある。
参加者は現在42人
敵は近くには居ない。
「待てよ……アシュレイはゲームには参加していないのか?」
アシュレイは立ち止まって答えた。
「はい、参加しているのはセシルと、あと一人ギリアムというエージェントです。私はそのバックアップを担当しているのでゲームの参加者では無いんです」
「その…ギリアムって奴が?」
「ええ、彼女の援護に回っています。彼は組織でもトップクラスの狙撃手です。滝沢の手下のゴロツキじゃ相手になりませんよ」
滝沢…セシルも言っていた。
「滝沢って誰なんだ?」
「暴力団の幹部ですよ。数年前に私達と仕事でぶつかりまして……刑務所送りになったはずなんですが、何故か出所しているみたいですね」
「それはゲームの主催者と関係がある?」
「恐らく、奴らが何らかの方法で外に出したんでしょう」
ゲーム主催者、セシルたちの組織……
俺の見えない所で、大きな力が静かに動いている。

No.69

15:49(火)東京タワー



須藤たちは東京タワーの真下に立った。
タイムリミットの16時には何とか間に合った様だ。
展望台へ上がるエレベーターの前に一人のスーツの男が立っている。顔には黒のサングラス。
「須藤様、ミッション達成おめでとうございます。どうぞ上へお上がり下さい」
「あんたは?」
「私はこのゲームを司るお方の使い…貴方をここでお待ちしておりました」
「……そうか、分かった」
「どうぞ…お乗り下さい」
須藤とアシュレイは展望台に上がった。
エレベーターが止まり、無人の展望台へ須藤たちは立つ。
眼前の青い空……
今は何の感慨も無い。
そんな物を感じている余裕が無い。
須藤の端末が鳴った。
「須藤様、ミッション達成おめでとうございます」
「それはさっきも聞いた」
「ミッション達成の特典として、今より48時間の間、須藤様の位置情報は他の参加者の端末に表示されなくなります」
端末の参加者人数表示の下に、48:00というカウントダウンが新しく表示された。
とりあえず、ゲストに見つかる危険度は低くなったという訳だ。
「それでは、ご健闘をお祈りしております」
通信は切れた。

No.70

15:34(火)日比谷



「1…2…3…4…全部で6人、その内一人は負傷者か」
ギリアムは敵の中の一人に照準を合わせる。
「せめて苦しまない様にしてやるからな」
スコープに浮かぶクロス。その交点が頭部を捉える。
ギリアムは引金をためらい無く引いた。
音も無く弾丸は滑空し、正確に男の脳天を貫く。
男がその場に崩れ落ちるのを、ギリアムはスコープ越しに確認した。
だがそれによって躊躇や罪悪感が生まれる事は無い。
生まれない様に心を訓練してきた。
これは…仕事だ。
会社員がキーボードを打つ様に、俺は人間を撃つ。
そうでも思わなければ、すぐに押し潰されてしまう。
「よし……まずは一人だ」
敵は突然の攻撃に困惑している。
混乱している奴ほど警戒が甘くなる。
ギリアムは照準を別の男に合わせた。
こういう時に迷いは禁物だ。あっちにはセシルがいる、いち早く敵の数を減らさなければならない。
「これで……二人!」
弾が外れない事は放った瞬間に分かる、すぐに奴は倒れる。
そう……死ぬ。
俺が殺す。
「迷うな……いつもと同じ様にやればいい……仕事だ、仕方ない」
二人目が倒れるのを確認した。
即死だろう。

No.71

15:39(火)日比谷



ギリアムの射撃で二人は死んだ。残り4人、負傷者が一人だから、滝沢を入れて戦力は実質3人。
敵は銃を撃つ度胸はあっても、所詮は日本人。撃たれる度胸は無い。
味方が殺されれば、すぐに恐怖に飲まれる。
敵が戦意を喪失しているのは明らかだった。
「ギリアム、もう殺す必要は無いから、威嚇に切り替えて」
「……了解」
ギリアムの威嚇射撃が車や足元すれすれに次々と放たれる。だが、人には決して当てない。
「どっから撃ってんだ!?」
「ここにいたら殺されちまう!逃げろ!!」
「待ってくれ!置いてかないでくれ!!」
セシルの予想通り、敵は逃げ出した。
「ギリアム、撃ち方止め!」
セシルはギリアムを制する。用があるのは滝沢だけだ。他はどうでもいい。
「おい!お前ら待て!!逃げるな!!」
滝沢が仲間を追って逃げ出した。
「逃がす訳ないでしょ、このバカ!」
セシルはコルトガバメントを抜き、照準を滝沢の左足に合わせた。
パンっ!
「ぐあっ!?」
銃弾を足に受けた滝沢がその場で転倒した。
「動かないで!動いたら撃つからね!」
セシルは銃口を滝沢の頭に向ける。
「待て!撃つな、頼む」

No.72

>> 67 いや、全然詳しくないです。 何せ思いつきの話なものですから。 コルトガバメント以外は、全部メタルギアソリッドと言うゲームに登場した銃をそのま… この小説読んでたら久しぶりにメタルギアソリッドやりたくなりました✨PSG-1好きです☺

No.73

>> 72 こんばんは。
メタルギア経験者なんですか?あれ面白いですよね。
最初に小説の構想を思い付いた時に、メタルギアに銃がいっぱい出てたなって思って、使わせて貰っています。
M4やM9、ソーコムも機会があったら出して行きます。
(流石にスティンガーは無理ですが)

No.74

>> 73 メタルギア面白いですよね✨

スティンガーで街を破壊とか☺


どんな風に武器が使われるかも楽しみにしながら続き待ってます🙌

No.75

>> 74 ありがとうございます。
ご期待にそえるよう頑張ります。

No.76

15:46(火)日比谷



「あんたが須藤君を殺すミッションを与えられたんでしょ?」
「いったい何の話だ?」
「とぼけてると刑務所じゃ済まないかもよ?……ゲームの主催者があんたを刑務所から出したんでしょ?ゲームについてどれだけ知ってるの?」
「ゲームって何だ?俺は知らない!」
セシルは銃口を滝沢の額に押し付けた。
「ホントに殺すわよ?」
「俺は雇われただけだ!お前らを殺せって……成功したら無罪にしてやるってよ…それに金まで」
「それを本気にしてこんなバカ騒ぎにしたの?」
「あいつがこうしろって命令してきたんだ……それにな、あいつは俺を無罪にする位訳ねえよ」
滝沢は…須藤君を殺すために雇われた。じゃあ雇い主がゲームの参加者?
「あんた誰に雇われてるの?」
「……言えない。言ったら報酬が無くなる。」
「言わなきゃ命が無くなるわよ?いいの?」
パンっ!
セシルは滝沢の足元を一発撃った。
「あんたは私たちが平気で人を殺すってこと…知ってるわよね?」
「………分かった。その変わり俺の身の安全を約束しろ」
「刑務所の中でも良いならね」
滝沢は重い口を開いた。
「仙石晃だ…知ってるだろ?」

No.77

15:50(火)日比谷



「仙石晃って……警視庁の仙石警視!?」
「そうだ」
仙石晃……
組織のリストで名前を見たことがある。
組織の調べでは
警視庁幹部クラスとの繋がりが強く、警察関係での影響力は広域に及ぶ。組織についてかぎまわっている様子があり要注意人物である……
といった内容が書いてあった。
ウチの「仕事」で、でっち上げられた詐欺容疑で逮捕されていた滝沢を仮釈放にするのは容易いだろう。
「仙石警視が須藤君を狙っているゲーム参加者?………ちょっと待って!じゃあ今、仙石はどこにいるのよ!?」
滝沢は困惑した表情で答えた。
「知らねえよ……俺は指示通りにやってただけだからな」
須藤君たちだって滝沢が自分たちを狙っていると思っているはず。
滝沢を振り切ったと思った彼等は無防備になっている……そこを狙われたら……
二人が危ない。
セシルは携帯を取りだし、アシュレイに電話をかけ始めた。
「………繋がらない、まさかもう…?」
「諦めるのは早い」
絶望するセシルの前に、一台の白いフォレストが現れた。
運転席にはギリアムが乗っている。
「まだアシュレイたちは生きている……追い掛けよう」

No.78

15:52(火)東京タワー



突然に機械の稼動音が、無音の展望台に響いた。
「アシュレイ、誰か来る」
エレベーターが到着し、ドアが開く。
須藤とアシュレイは素早く銃を構えた。
瞬間。
二人が撃つ間も無く左右に数人の男が躍り出ると、半円に二人を包囲する様に展開した。
エレベーターからゆっくりともう一人、スーツの男がコルトガバメントを手に現れる。
「動かないで貰おう、警視庁の仙石だ…ふむ、君が私のターゲットか」
仙石は須藤の方を見て頷いた。
(どういう事だ…?)
「簡単に銃を使うなんて、警官のする事でも無いでしょう」
「実際私の身分などは関係の無い事だ。お互いにゲームのプレイヤー…それで十分」
「敵のプレイヤーは殺す…そうですか?」
「君達の出方次第だな。君達に君達の狙いが有る様に、私には私の狙いが有る……そういう物だろう?アシュレイ?」
「何故私のコードネームを知っている!?」
「理由はどうでもいい…銃と携帯電話を渡せ」
アシュレイが小声で囁いた。
「須藤さん…抵抗しても勝ち目はありません」
二人は敵の部下に銃と携帯電話を渡した。
「それでいい、こちらに従えば殺しはしない…来い」

No.79

16:20(火)???



目隠しをされたまま、ずいぶん長いこと動かされた。
車が止まり、背中を銃で押されて降ろされた。
「どうぞ、大したもてなしは出来んがね」
男たちに誘導されるがままに歩く。
「目隠しを取りたまえ」
須藤とアシュレイは目隠しを自分たちの手で外した。
暗黒に慣れていた目に光が突き刺さる。
明順応……
目が力を取り戻し、脳に周囲を理解させていく。
(ここはどこだ……?)
辺りを見回す。
何も無い室内に、包囲する様に男が六人。手足が自由でもまず勝利は有り得ない。
出口は一つ、一人男が付いている。
剥き出しのコンクリート壁、タイルの無い床から推測すれば…廃ビルか、もしくは建設途中のビルのようだ。
室内は広くは無いが…狭くも無い。会社の小オフィスぐらいだろう。
窓から外が見える……少なくとも一階じゃない。
「須藤さん……」
アシュレイが聞こえるか聞こえないかの声で囁いてきた。
須藤は周囲に分からない様に無反応で耳を澄ました。
「仙石は……多分ですが、私たちをすぐには殺しません……ですから、何があっても反抗しないで、時間を稼いで下さい。助けは必ず来ます」

No.80

16:26(火)???



仙石とアシュレイは一言も発すること無く視線をぶつけていた。
無言のまま時間だけが流れていく。
「君たちは……ロストチルドレンと呼ばれているらしいね、失われた子供たち…そう呼ばれている」
沈黙に耐えかねたのか、仙石が口を開く。
「そう呼ぶ人もいますし……そうでは無い人もいます」
アシュレイはその無色の眼光を瞬かせること無く答えた。
「私は……自分の力に、というよりも自分への他者の信頼に自負があった。だが…その私にも隠された機密がある。ある時それに気付いた」
仙石はゆっくりと話し続けた。
「組織に機密はある、それは当然だ。だが…私に触れられない機密は無かった。もちろん不当な方法で探り当てる訳だが…とにかく探れない事は無かったのだ」
「………」
「だが君たちは違った。私があらゆる手段を使っても、その存在とわずかな足跡しか掴むことが出来なかった、だから……」
「だから?」
「私は『あらゆる』のその『先』の手段を使うことにした、このゲームへの参加だ……とても苦労したがね」
仙石の声色が明度を増す。
「そうして、ついにロストチルドレンに接触出来た……そういう訳だ」

No.81

16:31(火)???



「このゲームの存在、ゲームの中の君たちの存在……辿り着くのには相当に苦労した、何度も私自身の身を危うくしたよ」
「ならば私たちの事など探らなければ良かった、忘れれば良かったのでは?……私たちの事を知って何の得になりますか?誰が認めますか?誰が信じますか?」
アシュレイは嘲笑する様な口調で言った。
「その通りだ。リスクは有るがメリットは無い……ただね、知りたいだけなのだよ、君たちが何のために在るのか」
「そんなつまらない探求心のために?」
「それほどまでに知りたい……暗示にかかった様なものだ。隠喩の中に閉じ込められたと言ってもいい」
「そのメタファーの裏側に触れて、貴方はどうするつもりですか?」
仙石は気味の悪い微笑を浮かべた。
「どうもせんよ……言うなれば、知ることそのものが目的であって、その先は無い」
アシュレイの視線が強まる。
「私が簡単に喋るとでも?」
「君は……喋らんだろうな。そこでだ、まずは私の話を聞いて欲しい……」
「ロストチルドレンという存在についての一つの仮説…ですか?」
「そうだ。その上で君の意見を聞かせて貰おう、私はそれで構わない」

No.82

16:36(火)???



「私は君たちについて微かな…そう、香りの様な情報しか持ち合わせていない。しかし、その情報は、100%警察の関係筋から私の前に姿を現した」
仙石は最後に探偵が自らの推理を披露する様な、全てを内包した口調で進めた。
「つまり君たちは警察と繋がりを持っている。大なり小なり、正なり負なりだ」
アシュレイは心を閉塞させ、ただ音を通している。
「私が君たちについて一番大きく知るきっかけになったのは……そう、滝沢だ」
仙石の口調は劇じみた物に変化していく。
「彼の話では、君たちは人を消すこともあるそうだね?滝沢が一人名前を上げたからね、試しに調べてみた………驚いたよ、その男は逮捕されていた。だが刑務所にはそんな奴はいない、形式的に居ることになっている……つまり『消された』わけだ」
「これは警察が君たちを法から隠しているということだろう?実際、君たちは逮捕されたりはしないし、事件にも関わってはいない…もちろん形式上の話だ」
「君たちは少なくとも警察とは友好的な関係にある……では警察側から見て、殺人者を無罪にして友好的に関わる理由は一体何なのか?」
仙石は蛇の様に笑った。

No.83

16:40(火)???



「日本の警察の官僚体質というものを知っているかね?利益追求体質と言ってもいい」
仙石は左右にゆっくりと歩きながら話し続ける。
「警察は、ご存知の通り正義の機関ではない。利益を享受するためであれば……犯罪を隠蔽する、犯人をでっち上げる、犯罪者と取引をする、自ら犯罪を犯す……見つからなければ何でもする悪党だ」
暫しの沈黙。
「警察は、その歪んだ官僚体質のお陰で政界、財界に多くのパイプを作る事に成功した。だが同時に、多くの敵も作ってしまった……相反性という奴だな。往往にして、良い物には悪い物がついてくるものだ」
仙石はくるりと回って須藤たちに背を向けた。
「では、その凶悪で残忍な敵対者から、我等が誉れある日本国警察を守るためには、いったいどうすれば良いのだろう?」
仙石はまた向き直る。
「基本は同じだ。仲間を作る様に、敵を懐柔すればいい。金やら人脈やら弱みやらを使ってね……だが、世の中には基本が通じない物がある。基本がある限り特殊がある。その特殊なケースの場合の最終手段……特殊な事態における特殊な解決手段、それが君たちロストチルドレン」

「それが私の仮説だ」

No.84

16:32(火)新宿



新宿の外れの小さなビルの屋上に、二人はいた。ここらにはバブルの頃に建設されたものの、今では借り手のいない廃ビルがいくつもある。
「見張りは…表に三人。二人は三階に閉じ込められてるみたいね」
反対側のビルを双眼鏡で覗きながら、セシルは淡々と言った。
「発信機は生きてるから二人は無事だろう。こっちの三階から見てみよう」
ギリアムがそう言うと、二人は階段を降りて三階へと向かった。
オフィスに入るための扉には、一応の南京錠が掛っている。
「………よし、開いた」
ギリアムが針金で中をいじると、鍵はものの数秒で降参した。
ここは敵からも視認できる。二人は幾分慎重に対岸を窺った。
「……少なくとも5人以上はいるわ、拘束されてる二人を逃がして、なおかつ相手をするのは辛いわね……」
セシルは忌々しそうに呟いた。
「悪い知らせだ」
ギリアムは携帯電話を閉じながら後ろで言った。
「本部からたった今指示が出た」
「何?」
「仙石以外は殺すなってさ…大方手下の奴らは仙石の息のかかった警官なんだろう」
「ただでさえ厳しいのに……やれやれね」
「時間はある……作戦を考えてみよう」

No.85

16:36(火)新宿



「……わかった。その作戦でいきましょう」
「決まりだな。よし、じゃあこれを持ってけ」
ギリアムは狙撃銃の入ったバッグから、ベレッタ17と赤外線ゴーグルを取り出した。
「そのベレッタには弱装のゴム弾が入ってる……人を撃っても死なないから安心して使っていい」
セシルは少し驚いた。
「弱装を持ち歩いてるなんて、用意がいいのね」
「備えあればなんとやら……だ。スナイパーは用心深いんだ、何でも用意しておくに越したことはない」
ギリアムは当然と言わんばかりに返した。
「赤外線ゴーグルは突入用だ。作戦の正否は突入の瞬間にかかっている。頼んだ」
「了解」
「手筈通り俺はここから支援する……とは言っても基本はお前一人だからな。中はどうなっているかわからないから、焦って進んで殺られるなよ」
「大丈夫よ。何かあったら無線で呼ぶから」
セシルは大袈裟に話すギリアムをたしなめる様に言った。
「三階の扉に着いたら連絡してくれ。その後、突入タイミングはこっちから指示を出す」
「話は以上でいい?」
「ああ…OKだ」
セシルは合図の様に、パンと一回手を叩いた。
「よし!救出作戦開始!」

No.86

16:44(火)新宿



傾いた日が作る、ビルの影の生む安全地帯。その窪みにセシルは立っていた。
ビルの入り口とは斜めの位置関係だ。見張りは三人の内一人しか見えない。
中の奴らに気づかれても、連絡されてもまずい。静かに、全員を片付けなければならない。
「左と入り口前の奴は俺が麻酔銃で黙らせる。お前は右を頼む」
「了解」
無線で常に連絡を取り、作戦を進める。
「……一人やった。もう一人もOK」
その連絡を聞きながら、セシルは風の様に駆け出した。
敵は味方が倒れるのを見て、携帯を出している。……こっちに気づいた。
セシルは銃を抜こうとする敵を無視して、一直線に突進する。
敵は銃を構える。その時、セシルはすでに目の前まで接近している。
左肘で、敵の右手首を打ち上げる。敵は反射的に左拳を顔に打ち込んできた。成程、確かに警官のようだ。
セシルは首を降り、その一撃を造作も無くかわす。
敵は一旦距離を取るため、バックステップしようとした。
「遅い!」
それを読んでいたかの様に、セシルは敵が動くよりも早く距離を詰め、みぞおちに一撃を入れた。
敵は姿勢を維持出来なくなり、がっくりと崩れ落ちた。

No.87

16:46(火)新宿



「こっちも片付いたわ。ギリアム、こいつら縛って隠す?」
「相手がターゲットを殺すタイムリミットは17:00だ。時間が無い、ほっとけ」
「了解、じゃあ中に入る」
「気をつけろよ」
「分かってるって」
セシルはベレッタを右手に、慎重にビルに入った。
真っ直ぐ廊下を行くと、道が左右に分かれている。壁に張り付いて、セシルは先を窺った。誰もいない。
セシルは右に進み、そのまま階段を上る。警戒は怠らない。
「入り口と、二人のいる部屋以外には、人はいないみたい。私たちを相手にするには、無用心ね」
「敵がいないなら、こっちには好都合だ」
無線からそっけない声が返ってきた。
二階にも、人の気配は無い。そのまま三階までセシルは上がった。
三階にも、人は居なかった。滝沢なんかを使っている割には、無用心にもほどがある。
二人のいる部屋は、すぐに察しがついた。中からアシュレイの声が聞こえたからだ。
そこまで行って、セシルはギリアムに無線を入れる。
「扉の前に着いた。ギリアム、本番よ」
「ああ、二人を救出するぞ」

No.88

16:44(火)新宿



さっきから隣のビルに人影が写る。ギリアムだ。
……まだ誰も気づいていない、彼らが行動を起こすまで、自分に仙石たちの視線を引き付けておく必要がある。
「貴方は私に意見を求めると言いましたね」
「その通りだ」
「では……貴方の仮説に対する私の意見は『沈黙』です」
仙石は卑しい笑い声を上げた。
「全くもって君の返事には予測がついていたよ」
仙石はホルスターからニューナンブを抜いた。
「拳銃というヤツだな。威力は無いが…ちゃんと人は殺せる」
仙石はそれの銃口をアシュレイの額に突きつける。
「自分の命で組織は売りません」
仙石は無言で腕を水平に動かした。須藤の頭の前まで。
「どうだね?」
……万一情報を漏らしても、ここにいる全員を消せば済む。
だが、『全員』には須藤も含まれる。
彼は助けたい…
アシュレイは賭けに出た。
「…それで?」
アシュレイの返事に、仙石はまた声を出して笑った。
「それでこそだ、エージェント・アシュレイ!」
仙石は銃口を須藤の左肩に向けた。
パンっ!
乾いた銃声、鋭い痛み。
「ぐぁぁ!!」
(早く、急いでくれ…)
アシュレイはただ祈った。

No.89

16:49(火)新宿



熱の塊が須藤の肩を突き抜ける。かすった時とは比べ物にならない激痛が続いて走る。
息が吸えない。
「須藤さん!!…貴様!!」
「言わないのなら…また別の所を撃つだけだがね、どうする?」


「ギリアム!室内から銃声一発!」
セシルが無線に叫ぶ。
「すぐに突入に移る!タイミング逃すな!!」


ギリアムは煙幕を込めたグレネードランチャーを構える。
射角を目測し、引金を引く。
弾は放物線を描き、窓ガラスの一枚を貫く。
「10秒後に突入!」


バリンっ!!
室内に不吉な音が響く。
「何だっ!」
仙石は動揺し、窓に向かって歩いた。
その次の瞬間。
「うわっ!!」
弾頭から勢い良く黒煙が噴き出し、一瞬にして室内を闇夜の如く染め上げた。
「くそっ!二人を確保しろ!逃がすな!」
「仙石さん、何も見えません!無理です!!」
「奴ら、味な真似を」


(…7、8、9、10!)
セシルは扉を開けて突入した。
赤外線ゴーグルを装着する。
中は黒煙で視覚的には何も見えない。
だが、人間の体温から発する赤外線を感知すれば、二人の位置はすぐに分かる。
(今助けるから、無事でいて)

No.90

16:51(火)新宿



室内に入るとすぐに、セシルはしゃがみ込む二人を発見した。
周囲の警官は煙幕に混乱して、セシルの侵入には全く気づいていない様だった。
「…大丈夫?」
近づいてきたセシルが、敵に聞こえないよう小声で話しかける。
「須藤さんが撃たれました……」
「須藤君歩ける?」
「ああ……大したことない」
アシュレイが肩を貸そうとする。
須藤はその腕を右手で払いのけた。
「須藤さん……」
「触るな……撃たれたのは肩だ、一人で歩ける」
「……分かってもらえないとは思いますが、私にはああする事しかできなかったんです。」
須藤はアシュレイの弁解に、一言も応じなかった。
アシュレイは平然と俺を仙石に差し出した。俺の命よりも組織の機密を取った。
須藤は錯乱した。
俺は今、一体どんな状況にあるのか?
誰が味方で誰が敵なのか?
第一、味方なんて……いるのか?
ゲームが終わる時……

俺は……
生きていられるのか?


「二人とも、今は脱出しなきゃ……そろそろ敵も気づくかもしれないし」
セシルの声で現実に引き戻される。
「……分かった」
須藤は一言だけ返事をして、それから立ち上がった。

No.91

16:54(火)新宿



部屋の扉を出て、三人は階段へと駆け出す。
「くっ……」
鈍い痛みに須藤はうめいた。
肩の痛みが伝波して、足まで上手く動かなくなる。
「こっちだ!逃げたぞ!!」
すぐに気づいた警官たちが部屋から追ってくる。
「邪魔しないで!」
セシルがベレッタを三発撃った。だがわざと誰にも当てない。弱装だと気取られないようにするためだ。
銃声に臆した警官たちは部屋の入口に身を隠した。
「先に行って!下にギリアムがバックアップに来るから合流して!」
「分かりました!」
「ちょっと待てよ!またセシルを……」
アシュレイが右手を引っ張った。
「気持ちは分かりますが……私達が残っても足手まといです」
「アシュレイの言う通り。早く!!」
右手でベレッタのトリガーを引きながら、セシルは振り向かずに左手で須藤の背中を押した。


「何をしている!!」
仙石が後方で激を飛ばす。
「しかし、敵も銃を……」
「防弾盾を使え!何のために持ってきたと思ってる!」
「りょ、了解!」
警官達は透明の盾を持ち出し、廊下に一列に並んだ。
「お前らはもう片方の階段から先回りしろ!絶対に逃がすな!」

No.92

16:56(火)新宿



階段の手前の角に身を隠しながら、セシルは盾を構えた警官隊に銃撃を加えていた。
「盾か…ちょっとやばいかな」
盾があれば銃撃の抑止力は低下する。事実、一塊のその集団は、冷静に突撃の機会を窺っている様に見えた。


階段の生み出す上下の振動は、須藤の肩にはさらに堪えた。
「須藤さん!一階です!」
やっとのことで階段を下りた須藤の前方で、アシュレイが先を窺う。
一階はT字路の様な構造になっていた。自分たちのいる階段、その先にもう一つの階段。
そしてその中間に出口へ繋がる道……
「いたぞ!!」
奥の階段から数人の警官が躍り出た。
「先回りか!?」
アシュレイは素早く拳銃を抜く。
道は直線、途中に遮蔽物は無い……
先に銃撃で牽制し、怯んだ隙に強行突破するしか無いとアシュレイは踏んだ。
「須藤さん走れますか?」
「それしか方法が無いなら…」
アシュレイが敵前に身を晒そうとしたその瞬間。
「撃つな!アシュレイ!」
突然に出口から男が一人駆け込んで来た。敵の警官を視界に捉えたと同時に、迷い無く連続で引金を引く。
怯んだ警官は一旦身を隠した。
「今の内にこっちへ来い!」

No.93

16:58(火)新宿



「ん?…何だこの弾は?」
盾を構えた警官の一人が、足元に落ちていた弾丸の一発を拾った。
「ゴム?…仙石さん、敵の弾は非殺傷弾です!」
「何!?…奴らには私達を殺す気は無いのか……よし、強行突破する、盾で押しきれ!」
前方の一群が一つの個体となり、突進する。
「弱装がバレた!?」
ベレッタの音は、もう敵を止められなかった。


須藤はギリアムであろう男の顔を見た瞬間、戦慄で動けなくなった。
「お前…高瀬!?何でここに……」
「俺は、お前の高瀬じゃない……アシュレイ、早く連れて逃げろ」
アシュレイはいぶかしげな表情をしていたが、すぐに了解した。
「須藤さん後は彼に…」
「動くな!!」
出口に拳銃を真っ直ぐに構えた男が一人。
「チィっ!セシルが気絶させた奴が目を覚ましたか」
ギリアムが男に銃を向ける。
「そこまでだ…」
背後から、仙石の絶望と同義の声が響く。
挟撃の形…
「降伏したまえ、もう逃げられはしない」
警官の後ろに、捕縛されたセシルが見えた。
「君のその銃も、ゴムのオモチャかね?」
ギリアムは苦悶の表情を浮かべる。
「私の勝利、君らの敗北……だよ?」

No.94

17:00(火)新宿



仙石の勝利は誰の目にも明白だった。
「組織の駒が三つも捕まるとは、全く私にも予想外だったよ……君らをカードに新しい権力を握るのも夢で…わ無…い!?」
仙石の優越に浸りきった表情が、突如として豹変する。青ざめ、視線が定まっていない。
(何だ……?)
須藤にはその現象が飲み込めない。
仙石は立位を維持出来ずに、片膝をついた。
「何……何、だ…突然、心臓が……」
仙石は胸を押さえて、ほとんど空気の様な声を発した。須藤の目にも呼吸が急速に速く、浅くなるのが見て取れる。
尋常では……無い。
「く……クそ、奴ら、これ…に、細工を?そんな馬鹿な……有り得、無い」
仙石は息絶えた。
須藤ははっとして時計を見た。
17:01……
(確か、俺を殺すミッションの期限は17:00…)
端末の説明が、須藤の記憶から鮮やかに想起される。
(ミッションの放棄は……)
「……処分?」
(確かに自然死にしては状況が出来すぎている……
だが、殺されたと仮定して、いったいどんな方法で……?)
須藤は突発的な悪寒に襲われた。
寒気で足が震える。
いや、違う。
俺は…
この瞬間を恐れている?

No.95

17:04(火)新宿



突然の仙石の死に、警官たちの間に動揺が津波の様に走った。
無理もない事だ。
こいつらは皆、仙石という権力の象徴にすがっていただけで、何も知らない下っ端なのだから。
「お前ら、頼みの仙石は居なくなったが…どうする?」
ギリアムの声に一頻りざわついた後、一人が逃げる様にドタバタと走り出すと、群衆心理に従ってビルの中はたちまち静かになった。
アシュレイが仙石の亡骸を業務的に調べた。
「間違い無く心臓発作ですね……」
「まあ……考えられる理由はそれくらいだけど」
須藤はふと、無言で立っているギリアムの横顔を見た。
やはりその顔はどう見ても、昨日ステージでベースを弾いた高瀬の物に相違なかった。
ギリアムは一度もこちらを見なかった。まるで、面倒な状況を作る須藤という存在を、徹底して消し去っている様だった。
同じく須藤も無言で横に立った。言った所で簡単に進展するような位置に自分が居ないことだけは、明白だったからだ。
瞬間
(え……?)
天井が暴れる。
(何だよ?)
肩が突然強く痛み、そして一切の感覚が消え失せた。
「ちょ…須藤君!?」
何もかも、幕を降ろして白くなる

No.96

こんにちは。

久々に来ました。
わたしには良くわからない拳銃も、それぞれ特徴があってわかりやすい内容で面白いです。

セシルと警察のバトルシーンは、わたしがゲーセンでゾンビ倒す感覚かな?と想像したりしました(笑)

お互い受験生なんですよね…。
小説の方は自己ペースで頑張ってください。
これからも楽しみにしています。

No.97

>> 96 こんばんは、お久しぶりです。
また読んで頂けて嬉しいです。
確かにもうすぐ受験ですから、勉強の邪魔にならないよう息抜きに更新していこうと思っています。
ペースは多少遅れるかもしれませんが、なんとか見捨てないで読んで頂ければ幸せです。
小人さん、来て頂いてありがとうございました。
お互いに受験頑張りましょう。

No.98

Intermission~幕間~



こんにちは、この小説の作者です。ここまで読んで頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。
ついに火曜日が終わりました。
延べ29000字、原稿用紙72枚半……非常に時間がかかりました。
ところで、話の最初の部分を覚えてますでしょうか?前から読んで頂いている皆様には
「高瀬って誰?」
と思った方がたくさんいらっしゃると思います。
この先の展開は物語の謎が解かれ、そしてラスト……
という形を取るつもりなので、冒頭からセシルが合流する辺りまでを一旦読み返して頂けると、より一層この先の展開が楽しめると思います。(もちろんタイムラグが生じたのは私の不手際なので、そのまま進んでも理解できるよう努力するつもりです)
もう一つ、読者の皆様にお願いがあります。
ぜひ感想を書いて下さい。
ここが良い、ここが悪い、面白い、つまらない……何でも構いませんので、横レスとかは気にせず思ったことはドンドン教えて下さると私としても勉強になります。
大学受験なので更新が遅れるかもしれませんが、最後まで書けるよう頑張りたいと思っています。



全ての読者の皆様へ

作者より

No.99

??:??(?)???



意識が朦朧とする。まるで……そう、自分の体がそっくりそのままどこかへ行ってしまった様な感覚だ。
須藤は『自分』の欠片を拾い集める。それには時間がかかる。
確固たる自分を、ジグソーパズルの様に一から構築していく。
ゆっくりと目を開く。
(何だ……?)
不思議な場所だった。
意識だけが浮遊している。
暗い……
だが真っ暗という訳ではない。
黒の下地に、薄墨色の流線が幾重にも重なり、独特の模様を描いていた。それは前衛美術の様であり、夜風の様だった。
(寒い……)
温度ではない…
それは容易に想起された。相対的な感覚ではない、寒さそのものが概念として存在している。
なんとなく、そんな感じだった。


(……声?)
声が…微かに聞こえる。
誰の声……?
須藤は思い出そうとする。
わからない……
その内容を聞き取る事もできない。
ただ、それは不吉な呪文の様に須藤の感覚器官を揺さぶるだけだった。
やがて、強い光が空間を照らし始める。
ここがどこなのかはわからない。
それでも、自分の行き先は確信できた。
(俺は……自分の場所に帰るんだ)
光が全てをまっさらに還していく。

No.100

20:18(水)上野



いつの間にか、須藤は現実としての意識を取り戻していた。
目をゆっくりと開ける。視線の先には、気だるく光る蛍光灯が浮いていた。
「……夢か」
目をぐるりと一回転させると、ここが上野の自宅だということがすぐに分かった。
物凄く長い旅路の果てに、故郷に帰って来た……
不思議とそんな心地がしていた。
須藤はゆっくりと上体を起こす。
「…っ!」
突然に左肩が酷く痛んだ。
恐る恐る肩を触ってみる。少し圧迫して痛みを調べる。
大した事は無い。突然の痛みに痛覚が驚いただけだ。目の粗い包帯の質感が掌に伝わった。
(仙石に捕まって、撃たれて、その後……その後、俺はどうした?……思い出せない……夢を見ていたことしか……あれ?夢?……どんな夢だったかな?凄く重要な気が……)
……止めた。
夢の事なんか考えても仕方がない。それよりも今の状況の方が余程重要だ。
「端末……」
須藤は枕元に置いてあった端末に手を伸ばした。
周囲には……誰も居ない。今のところ安全だ。
参加人数は……33人。
(だいぶ減ったな……)
「須藤さん!目が覚めましたか?」
奥の方から、アシュレイの声が響いた。

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