友達イジョウ恋人ミマン
友達イジョウ恋人ミマン
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❤1❤
「オレと付き合ってくれる?」
………
……
「…はい」
キャーッ
いつ思い出しても赤くなってしまう。
心臓もバクバク。
私、男の人からこんな事言われたの、生まれて初めてなんだもん。
ホント私って、自分の思った事を口に出して言うのが苦手なの。
いっつもウジウジしてて、男の人と話すらまともにできなくて…
そんな自分が大キライで、なんとかしたくて…
それで、演劇部に入ったの。
な~んて、オカシイよね(笑)
でも、ホントにそうなの。
彼と出会ったのも、それがきっかけ。
❤2❤
「え~っ、演劇部!?あんたがっ!?」
私は早速、親友の良子に演劇部に入る決心をした事を話したの。
そしたらやっぱり、かなり驚いてた💧
「なんで、また!?」
「私、自分を変えたいの…」「は?」
「ほら、私って、結構ウジウジしちゃってて、思った事も言えないじゃない?
…だから、演劇部に入って度胸をつけようと思って…」
良子はマジマジと私の顔を見つめてから、私の手をとると、少し大袈裟に
「まぁ、あんたがそう決めたんなら、せいぜい頑張んな!」
そう励ましてくれた。
それに続けて私が
“出来れば一緒に”と言おうとした瞬間
「では、私も部活に行ってくるわ」
と、手を振って立ち去ってしまった。
あれ、良子、部活なんて入ってたっけ?
「えっ、部活って?」
私がすでに立ち去りつつある良子の後ろ姿に声をかけると
「もち、帰宅部さっ」
良子は後ろを振り向いて、ペロッと舌をだした。
良子らしいや💧
❤3❤
私は仕方なく1人で、演劇部の練習場所である視聴覚室に向かった。
だんだん視聴覚室が近づくにつれ、胸の鼓動が激しくなっていく…
そして、ついにそのドアの前にたどり着くと、もう心臓は飛び出しちゃうんじゃないかってくらい、バクバクしていた。
私は1度、深く深呼吸すると、ドアをノックした。
「は~い」
そう言ってドアから顔を出したのは、サラサラのロングヘアーのよく似合う、綺麗な女の人だった。
靴ひもの色から見ると、3年生らしい。
あっ、うちの学校は、学年によって靴ひもの色が違うんだ。
1年生、つまり私たちは赤、2年生は緑、そして3年生が青。
「何っ?」
私がノックをしたものの、いつまでも何も言わずに緊張して、オドオドしているのを見て、サラサラロングの3年生は、ちょっと顔をしかめた。
「あっ、すいません、あのぉ…入部したいんですけどぉ…」
私は慌ててそう言った。
❤4❤
「な~んだ、入部希望者ね。だったら早くそう言えばいいのに」
私のその1言でサラサラロングの3年生は、笑顔になって
「トモ~、入部希望者だって!1年だよ!」
今度は後ろを振り向いて、トモとかいう同じ3年生に声をかけた。
トモと呼ばれた3年生は、ちょっとポッチャリしてて、胸の辺りまでありそうな黒髪を後ろで1つに束ねている。
「えっ、ホント!?嬉しい~っ。さっ、中に入って、入って」
私はトモと呼ばれた3年生に言われるままに中へ入った。
❤5❤
「私は部長の新谷 友美です。よろしくねっ」
まずそう言って自己紹介をすると、握手をもとめて右手を私の方にさしだしてくれたので、私もそれに応えて
「えっとぉ、あの、私は1年の関口 若菜です。よろしくお願いします」
と右手をさしだし、握手をした。
その後に他の部員の人たちも、それぞれ自己紹介をしてくれた。
初めにドアを開けてくれたサラサラロングの3年生が、副部長さんで川島 礼子さん。
そしてもう1人、3年生がいるんだけど、その人は、茶パツのショートがよく似合う山崎 茜さん。
後は2年生の、やや茶色がかかったセミロングの丸山 絵美さんと、おもいっきり茶パツでフワフワロングの市村 美鈴さん。
以上。
なんと、我が校の演劇部は部員数5名という、とてつもない弱小部だったのだ💧
あっ、私も入れれば6名か…
❤6❤
「関口さん、ちょうどいいとこだった!
今から今年の合同演劇の事について、話すとこだったの!」
「合同、演劇…ですか?」
私にはそれが一体なんの事なのか、さっぱりわからない。
まぁ、たった今入部したばっかりな訳だから、知らなくて当然なんだけど💧
「あっ、関口さんは知らないよね💧
合同演劇っていうのは…」
そう言うと新谷さんは、合同演劇について説明してくれた。
合同演劇。
正式には『上沼 合同演劇公演』というらしい。
それは、この上沼地区にある、小谷西高校(私たちの学校)・小谷高校・掘内高校・塩尻高校・塩尻商業高校全部の演劇部が、みんなで集まって1つの劇を公演するって事で、毎年、ちょうど中間にある『掘内文化ホール』でやってるんだって。
そして、その練習は夏休みにするみたい。
❤7❤
「で、もうすぐ夏休みになるから、その前に今度の日曜にその掘内文化ホールで、初顔合わせ兼掃除があるのよね。
で、早速だけど、その場所わかる?」
新谷さんの説明が終わった後、川島さんに不意にそう聞かれて、私は思わずとまってしまった。
「関口さん?聞いてる?」
川島さんが私の顔を覗き込む。
「えっ、あっ、はいっ!
すいません…💧」
私が慌ててそう言うと
「掘内文化ホールの場所、わかる?って、聞いたんだけど」
もう1度、今度は山崎さん。
「あっ、えっとぉ…わからないです…💧」
「じゃあ、私と一緒に行こう!
え~っとぉ…じゃあ、小谷駅に9時!いい?」
そう言ってくれたのは、新谷さん。
「はっ、はいっ、わかりました」
あちゃあ、情けない…
また、やってしまった…
私って、すぐボーッとして間が抜けちゃう事があるんだよね…
しっかりしなきゃ!
❤8❤
そして、日曜日。
「お~い、こっち、こっち!」
私が駅のすぐ側まで行くと、新谷さんはもうすでに駅へ来ていて、私に向かって手をふっている。
ヤバッ、先輩を待たせちゃった💧
これでも、早く家を出たつもりなんだけど…
「すいませんっ、遅くなりましたっ!」
私は息を弾ませながら、新谷さんの所へ駆け寄った。
「大丈夫だよ。まだ、9時じゃないしっ。」
そう言いながら、新谷さんは駅の時計を指さした。
8時50分。
「さっ、切符買おう!」
私たちは、掘内駅までの切符を買うと、改札口を通った。
❤9❤
掘内駅まで着く間、新谷さんはずっと今までの合同演劇の事とか、とにかく、演劇について話し続けていた。
その時の新谷さんは、目が輝いていて、活き活きしていた。
ホントに演劇が好きなんだなぁって、思った。
改札口を出ると、川島さんと丸山さんが私たちを待っていてくれた。
「文化ホールは、こっから15分ぐらい歩いたとこだよ」そう言うと、新谷さんは先頭にたって歩きだした。
そして、文化ホールに着くまでの間も3人の先輩たちは、演劇についていろいろ話し合っていた。
新谷さんだけじゃなくって、他の先輩たちもみんなホントに演劇が好きなんだ!
私は1人、そんな事を考えながら3人の先輩たちの後をついて行った。
❤10❤
掘内文化ホールは、私が想像していた以上に大きな建物だった。
出入口の所に、2人の女の人が立っているのが見える。
山崎さんと市村さんだ。
「トモたち、おっそ~い!待ちくたびれちゃったよぉ!」
「もう他の学校の人たち、ほとんど来てますよぉ!」
それを聞いた私たちは、慌てて駆け寄った。
「ゴメン、遅くなって!
さぁ、みんな揃ったとこで行きますかっ」
そこから中へ入ると、知らない人たちがいっぱい集まっていた。
あぁ、他の学校の演劇部の人たちだっ!
みんなさっきの先輩たちみたいに、目がキラキラして、活き活きしている!
凄いエネルギーみたいなモノを感じて、私はなんだか圧倒されてしまった…
❤11❤
「あっ、トモ!久しぶりっ!」
突然、ちょっと小柄でカワイイ感じの女の人が、離れた所から声をかけてきた。
「綾ぁっ!元気してたぁ!?」
新谷さんは、その綾とかいう人の所へ走り寄っていってしまった。
「茜さんっ、お久しぶりですぅ!元気でした?」
今度は、これまた小柄で活発そうな女の人が、山崎さんに声をかけてきた。
「おっ、涼子じゃん!?まだ生きてたか!(笑)」
「あったりまえですよぉ。あっ、茜さん、あっちに僚たちいますけど、どうしますぅ(笑)」
「えっ、なに、なにっ、あいつらもまだ生きてたのかぁ!?
よっしゃ、顔でも拝んでやるか(笑)」
2人はこんなふざけたやり取りをしながら、別の所へ行ってしまった。
他の先輩たちもそれぞれ他の学校の友達をみつけると、久しぶりの再会を喜んで話しに夢中になって、散らばっていってしまった。
そして、私は1人、その場に取り残されてしまったの…
❤12❤
やだっ…
どうしたらいいの…
なんで、先輩たちは私を置いてっちゃうの…
紹介とかしてくれたって、いいじゃない…
私はその場にしばらく立ち尽くしていた。
なんだか、自分だけ場違いなとこに来てしまったような気がして、逃げ出したくなってきちゃった…
………
……
…
「お~い!みんな集まったかぁ?
…!?
そんな時、突然どこからともなく男の人の大きな声がした。
それは、掘高演劇部顧問の田中先生の声だった。
最初に聞いた新谷さんの説明だと、それぞれの学校の顧問の先生が、毎回2人ずつ来てくれる事になっていて、初日の今日は、この田中先生と塩尻高の山口先生が来てくれてるみたい。
とにかく、私はその田中先生の大きな声で、その場から救われたような気がした。
❤13❤
「よしっ、とにかく、まずは掃除だ、掃除!」
田中先生はそう言いながら、みんなを引き連れると、ステージのあるホールへ向かった。
……!?
私はホールの中に1歩足を踏み入れたとたん、あまりのスゴさに圧倒されてしまった。
200人は軽く入れそうなぐらい広い観客席!
しかも、後ろの人もちゃんと見えるように階段状になっている。
そして、かなり本格的に整った音響や照明装置。
「さぁ、みんなで手分けして、掃除開始!」
田中先生のその1言で、みんな手に手にホウキや雑巾などを持って、仲のいい友達同士であちこちにちらばり、掃除をやり始めた。
そして、また、私は1人だけポツンと、取り残されてしまったの…
❤14❤
もう、どうしてこうなるの…
やっぱり、私みたいなのが演劇をやろうとした事自体が間違ってたのかも…
ついつい、そんな事まで考えてしまう…
情けないぞ、若菜!
しっかりしろ!
これじゃなんの為に演劇部に入ったか、わからないじゃないかっ!
でも、私にはあの中に飛び込んでいく勇気がないんだよ。
………
……
…やっぱ、帰ろうかな。
なんか、もうここにいるのがツライ。
もう、いてもたってもいられない!
新谷さんに訳を話して、帰らせてもらおうかなぁ…
私が自問自答していると
「あれ?どうした?君、1人?」
ふいに後ろから、男の人の声がした。
誰っ!?
私はおもいっきり振り返った。
❤15❤
すると、そこにいたのは、もうとにかくカッコイイ男の人だった。
山崎さんと同じぐらいの茶パツが、とってもよく似合っている。
男の人、しかも、そんなカッコイイ男の人を突然目の前にした私は、思わず顔がまっ赤になってしまった。
初めにも言った通り、私は男の人が苦手なの💧
「あのさぁ、やる事ないんなら、オレの手伝ってくんない?」
そう言うと、そのカッコイイ男の人は手に持っていた雑巾を1枚、私に手渡した。
「はっ…はっ、はいっ!」
私は言われるがままにそれを受けとると、カッコイイ男の人と2人で、照明器具の拭き掃除を始めた。
私はただでさえ、男の人を目の前にすると、緊張して何も言えなくなってしまうのに、それがカッコイイとなると、またさらにドキドキしてしまう。
やだ…
どうしよう…
私、きっと顔まっ赤だ…
手も少し震えてる…
恥ずかしい…
変なヤツだと思われちゃったかなぁ…
❤16❤
「あっ、名前!」
「…えっ!?」
私はカッコイイ男の人が、突然そう叫んだので、かなりビックリしてしまった。ホントに心臓が飛び出して、落っこっちゃうんじゃないかって思ってしまったくらい。
「そういえば、まだ名前聞いてなかったよね?」
「そっ、そうですね…」
そこで目と目が合ってしまい、私の顔はさらにまっ赤に、心臓はさらにドキドキになってしまった。
「オレは、塩高2年の真野 僚。よろしくっ」
[まの つかさ]と名乗ったカッコイイ男の人は、照明器具を拭く手を休めず、自己紹介してくれた。
「あっ、えっとぉ…私は…小谷西高1年の…関口 若菜です。よっ、よろしくお願いします」
私は緊張で震える手にグッと力を入れて、雑巾を握りしめた。
とりあえず、お互いの自己紹介が済むと、また私たちは無言で拭き掃除を始めた。
❤17❤
あっ、あれっ!?
[つかさ]??
[つかさ]ってもしかして、ここに来た時、山崎さんと涼子って人が話してた人の事かな?
私はその事を聞いてみようかなぁ?
とは思ったものの、男の人が苦手な私にそんな事、聞けるはずもなく、ただ黙って黙々と拭き掃除をするしかなかった。
私にしてみれば、自己紹介できたってだけでもスゴイ事なんだもの。
でも、なんかそれって、かなり情けないよね…
こんなんで、演劇部やっていけるのかなぁ…
なんだか、とっても不安…💧
「お~い、そろそろ掃除やめて、顔合わせするぞぉ!」
またしても、そんな私を救ってくれたのは、田中先生の大きな声だった。
❤18❤
「あっ、オレ、雑巾かたずけてくるよ!」
真野さんはそう言うと、私の分の雑巾まで持っていってくれた。
「あっ、すいませんっ!」
優しい人だなぁ、真野さんって…
きっと私が1人でいたから心配して声をかけてくれたんだなぁ…
しかも、[超]が付くぐらいカッコイイしっ!
私はさっきの余韻に浸りながら、ゾロゾロと会議室へ向かうみんなの後をついていった。
会議室には今日来ている全員が、びっしり集まっていた。
私が1番出入口に近い隅っこに立っていると、誰かに背中をつっつかれた。
!?
誰っ!?
私がビックリして振り向くと、そこにいたのは山崎さんだった。
なんだか、顔が嬉しそうににやけている。
「若菜ちゃんてば、さっき僚と2人で掃除してたっしょ!
私、見ちゃったんだからぁ」
えっ、やだっ!
私が真野さんを前に緊張して、まっ赤になってるとこ、見られてたんだっ!
しかも、やっぱり山崎さんたちの言ってた[つかさ]って、真野さんの事だったんだぁ。
❤19❤
「どう、僚。若菜ちゃんのタイプ?」
突然そんな事を聞かれて、また私は赤くなってしまった。
相変わらず、山崎さんはニヤニヤしている。
私をからかってるんだ。
ってゆうか、その[若菜ちゃん]って…
いつから、[関口さん]から[若菜ちゃん]になったんだ?
「ねぇ、ねぇ」
山崎さんはしつこく聞いてくる。
「そっ、そう、です、ね…」
もう私はほとんどうつ向いて答えた。
「そっかぁ、あいつ、結構カッコイイもんなぁ。
それに、優しいし。とにかく、いいヤツだよ」
そういうと、山崎さんはうつむいたままの私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「確かにそうですね」
今度は顔を上げて、自分でもビックリするぐらいはっきりと答えていた。
「ところで、さっき山崎さん、私の事、[若菜ちゃん]っていいましたよね?」
私は、さっきふと思った事を聞いてみた。
「あっ、ゴメン、やだった?私、結構友達とか下の名前で呼ぶ事が多いんだよね」
「あっ、別にイヤじゃないです。ただ、突然でビックリしてしまって…」
❤20❤
「はいっ、皆さん静かにっ!」
今までの田中先生とは違う、女の人の声だ。
多分、塩尻高の山口先生だと思う。
その1言で、今までザワザワしていた部屋の中が静まりかえった。
「今年は、今ここに集まっている皆さんで行います。まず、初めての人もいるかと思いますので、この後それぞれ、自己紹介をして下さいね。
次からは夏休みに入りますが、その時までに各校で1つずつ、やりたい演目を決めてきて下さい。
そして、皆さんで話し合って、その中からどれにするかを決めたいと思います。その時、演出も決めて、キャストか裏方かも分けたいと思っています。
それでは、今日はこれで終わります。
皆さん、お疲れ様でした!」
顔合わせ、というより、山口先生の簡単な説明の後、みんなそれぞれ、自己紹介や挨拶をすると、文化ホールを後にした。
❤21❤
帰る途中、先輩たちはあれがいい、これがいい、など、いろいろな演目を挙げて話し合っている。
そして、私はというと、相変わらず、そんな先輩たちの後をトボトボとついて歩いていた。
私の頭の中は、劇の演目の事より、真野さんの事でイッパイだった。
真野さん、ホント、カッコよかったなぁ…
それに、優しかったし…
もっともっと、いろんな話がしたかったなぁ…
何言ってんのっ!まともに男の人と口も聞けないくせにっ!
うるさいなぁっ!
そんな事、私が1番よく分かってるよっ!
だから、そんな自分を変える為に演劇部に入ったんじゃないっ!
こうなったら、思いきってキャストに挑戦してみようかな?
きっと真野さんも、キャストだよね?
もしかしたら、2人でラブシーンなんかやっちゃったりして…
やだっ、私ってば何考えてんだろう💧
❤22❤
「…………さん」
………
……
「……口さん!」
…
「関口さんっっ!」
…!?
「えっ、はっ、はいっっ!」
「今、私たちの話、全然聞いてなかったでしょっ!」新谷さんは怒りながら、私を睨んでいる。
「すいません…」
恐いよぉ…新谷さん…
「まぁまぁ、誰にでもボーッとしてる事はあるんだから、トモもそんなに怒んないで💧」
そう言って助けてくれたのは、川島さん。
「さっきから、どんな劇がいいか話してたんだよ。
まず、ジャンルをね、決めようって事になって、それを関口さんにも聞いてみたんだけど…」
今度は丸山さん。
「ジャンル、ですか?」
急にそんな事言われても…
「そう、何がいいっ!」
新谷さんは、まだ少し怒っている。
❤23❤
「トモ、静まれ、静まれ。若菜ちゃんがちょっとボーッとしてんのは、しょうがないって。きっと、そうゆう性格なんだから💧」
山崎さんまで、助けてくれる。
「どんなのがいい?ジャンルぐらいなら、言えるでしょ?」
と、市村さん。
「…すいません。それもよく分からないです…」
「はぁ!?それもわかんないのっ!?」
今度は新谷さんは、怒ってというより、呆れながら言った。
はぁ…
ホント私って、情けないなぁ…
自分でも、つくづく呆れてしまった…
❤24❤
ホントはそこで、“恋愛がいいです!”って言いたかったんだよ。
でも、そんな事恥ずかしくって言えないもん…
何が恥ずかしいの!?
恋愛だって、立派なジャンルじゃない!
あんたが恥ずかしいのは、変な事、想像してるからでしょ!
変な事って!?
まぁ、そりゃ確かに真野さんとのラブシーンを想像しちゃったりはしてるけど…
そこでまた、真野さんとのラブシーンが頭に浮かんできて、1人で赤くなってしまった。
「あれっ、若菜ちゃん、何1人で赤くなってんの?」
山崎さんに鋭く突っ込まれて
「なっ、なんでもないですっ!」
私は慌てて、頭に浮かんだ真野さんとのラブシーンをかきけした。
❤25❤
その日の夜、私は早速良子にTELして、真野さんの事を話した。
「えっ、何、何、その真野さんとかいう人、そんなにカッコイイのっ!?」
「うんっ、もう超カッコイイのっ!
私、絶対真野さんとキャストやるっっ!」
私は思わず、携帯を持つ手に力を込めた。
「つうか、まだその真野さんがキャストやるか、わかんないじゃん?」
「絶対、キャストだよっ!だって、カッコイイもん!」
「あのなぁ、カッコイイってのは、キャストをやる理由にはなんないの💧」
「なるのっ!」
「はぁ…」
そこで、いきなり良子がため息をついた。
「どうしたの?」
「イヤ、あんまりあんたがその真野さんとやらにお熱だからさぁ、呆れたの…」 「何よぉ、いいじゃないっ」
「それよりさぁ、私にしてみれば、その真野さんがキャストをやる、やらないは別として、あんたにキャストがつとまるとは思えないんだけど…」
「ゔっ…」
そこで私は言葉に詰まってしまった。
❤26❤
そして、ついに夏休み!
私たちは散々話し合った結果、『夏の日の思い出』を選んだ。
これはホントに現代劇で、少しコメディっぽいとこもある、なかなかやりごたえのありそうな演目だ。
私はまた新谷さんと小谷駅で待ち合わせをして、一緒に文化ホールへ向かった。
その後は、この前と同じ。
掘内駅で川島さんと丸山さんと合流し、山崎さんと市村さんとは現地で合流した。
そして、この前とは別の、もっと広い会議室で、全員で、丸くなってイスに座り、話し合いを始める事になった。
黒板の前には、2人男の先生が立っている。
今日は、谷高の小林先生と塩商の宮下先生だ。
「では、まず、各校で選んだ演目をそれぞれの部長が挙げてくれ。
そのだいたいの内容もわかりやすくな」
式をとるのは、年配の宮下先生だ。
❤27❤
次々に各校の部長さんが、自分たちで選んだ演目を挙げ、簡単にそれがどんな劇なのかを説明していく。
そして、それを宮下先生が黒板に書く。
それから、いろいろ話し合った結果、なんと、みんなが選んだのは『夏の日の思い出』だったのだ。
「よしっ、じゃあオレは小林先生と人数分の台本をコピーしてくるから、少し待っててくれ」
宮下先生はそう言うと、新谷さんから台本を受け取り、小林先生を連れて部屋を出ていった。
その途端、誰からともなく雑談が始まり、いつの間にか部屋の中は賑やかになった。
「私、絶対キャストがいい!」とか
「オレ、とてもキャストなんか無理だろうから、裏方でいいや」とか
「主役ねらっちゃおう」とか「ちゃんとメイクとかもやるんだよね。なんか、楽しみ」とか…
❤28❤
しばらくして、2人の先生は何冊もの台本を手に、部屋へ戻ってきた。
そして、全員に配り終えると
「みんな一通り目を通して、自分が何をやりたいか考えてくれ。
キャストはかぶったら、次回にオーディションだからな!」
えっ、オーディション!?スゴイ、なんか本格的!
全員真剣に、黙って台本を読んでいる。
私が秘かに期待していたラブシーンはないけど、せっかく演劇部に入ったんだもの、キャストに挑戦してみなくっちゃ!
全員が台本から目を上げるのを見てから
「いいかぁ、まず、とにかく演出を決めなきゃならん。誰かやりたい人はいないか?」
宮下先生がそう言い終わると同時に、新谷さんが手を挙げた。
「はいっ!私やりたいです!」
そこで全員の拍手。
これで演出は、新谷さんに決まった。
スゴイなぁ、新谷さん…
しかも、誰の反対もなく、あっさり決まっちゃうなんて…
❤29❤
「じゃあ、こっから先は演出の新谷さんに仕切ってもらう事にしよう」
宮下先生がそう言うと、新谷さんはスタスタと前に出ていって、黒板に台本に出てくる役名を書き始めた。
そして、それぞれやりたい人に手を挙げてもらって、役名の下にその人たちの名前を書きこんでいく。
私は『木下カオリ』という、準主役級の所で手を挙げた。
すると、新谷さんが私の方を見て、一瞬眉をしかめたのがわかった。
多分、“あんたには無理よっ!”って事なんだろうな…
でも、私はやるって決めたんだっ!
ところが、さすがに準主役級だけあって、私の他にも、4人も手を挙げていた。
絶対、負けないもんね!
……
…
負けないといいけど…
相変わらず、弱気な私。
それにしても、どんどん役名が進むのに、真野さんはいっこうに手を挙げる気配がない。
❤30❤
結局、最後の最後まで真野さんは手を挙げなかった。
そんなぁ…
真野さん、絶対キャストだと思ったのになぁ…
「ほとんど全部の役がかぶっちゃってるので、3日後、オーディションをしたいと思います。
各自それぞれ、読みたいセリフを1つ選んで言ってもらいます。
では、次に裏方さんの希望をとります」
新谷さんは、てきぱきと話し合いを進行していく。
「あっ、オレ、音響ねっ!」その時、突然そう言って手を挙げたのは、他ならぬ真野さんだった。
えっ、今、なんて言った?『音響』って聞こえた気がしたけど…
聞き間違えじゃないよね?
「はいっ、じゃあ、真野っち、音響ねっ!」
<音響―真野 僚>
黒板には、はっきりそう書かれている。
「後の人はぁ!」
❤31❤
そんなこんなで、元々裏方希望だった人たちは、それぞれの役割が決まり、残りは、キャストのオーディションで落ちた人がつく事になった。
キャスト希望の人たちは、みんな今からかなり張り切っている。
中には、もう練習している人までいる。
「じゃあ、今日はこれで終わりです。
次は3日後、オーディションの時に会いましょう」
そして、帰り道。
「関口さん、ホントに木下カオリ役、やるつもり?」案の定、新谷さんは私にその話をしてきた。
「はい、やるつもりですけど…」
「よした方がいいと思うよ。こんな事言うのもなんだけど、関口さん、ホントまだ入部したばっかりで、なんにも練習だってしてないじゃない?
どう考えたって、無理だって。今回は裏方にして、演劇がどんなモノかを見てみる方がいいんじゃないかな?考えてみて…」
…………
………
……
❤32❤
家に帰ってもう1度、新谷さんに言われた事をよ~く考えてみた。
確かに、その通りかも…
って、思った。
まだ入部したばっかりで、練習も何もしていない私が、あの大きな舞台でキャストを演じるなんてこと、どう考えたって無理だよね。
ってゆうか、その前にオーディションで落ちるか…
そんな風に考えながら、携帯を手にとると、良子にTELした。
❤33❤
「だから言ったじゃん!
あんたにキャストなんて無理だって!」
「だってぇ…」
「何、しかも例の真野さんだっけ?
キャストじゃなくって、音響なんでしょ?」
「うん…」
「だったら、あんたも一緒に音響やったら?」
「そんなの無理だよぉ。
私、機械ダメだし、真野さんともう2人、友達みたいな人が決まっちゃったしぃ…」
「じゃあ、結局あんたはどうすんの?」
「それなんだよねぇ、いろいろ考えて、1番無難な大道具・小道具にしようかと思ったの」
「そりゃ、名案だ!」
❤34❤
そして、3日後。
またいつもの通り、小谷駅で新谷さんと待ち合わせ。
電車の中で私は早速、キャストを諦めた事を話した。
「そっかぁ、なんかゴメンね。でも、私が言った事は、今日からの稽古を見れば分かると思うよ。
それに、裏方だって大事なんだよ。
だって、キャストだけじゃ演劇はできないもん。
でしょ?」
「はい、そうですね」
そうこうしているうちに、川島さん、丸山さん、山崎さん、市村さんとも合流し、文化ホールに到着した。
❤35❤
「では、早速主役からオーディションを始めます。
主役希望の人は、前に出てきて下さい」
こうしてオーディションは始まったんだけど、私、正直、ホント、諦めてよかったって心底思ったの。
だって、みんな信じられないくらいウマイんだもん。
私、高校の演劇部がここまでスゴイとは思わなかった。
こんな事言ったら怒られそうだけど、小・中学校の学芸会に、毛が生えたようなモノだと思ってたのよ💧
新谷さんが電車の中で言ったのは、この事だったのかって、私は1人で納得していた。
❤36❤
無事すべてのオーディションが終わり、キャストも裏方も役割が決定した。
私は良子にも話した通り、大道具・小道具についた。
そして、もう1人私と一緒に組むのは、塩高2年の峰 涼子さん。
そう、初めてここに来た時、山崎さんに話しかけてきた、あの涼子さんだ。
「私、峰 涼子。よろしくねっ」
「あっ、あのっ、私は、関口 若菜です」
「若菜ちゃんかぁ、何高?」私が、“よろしくお願いします”って言うより早く、峰さんの質問がとんできた。
「あっ、えっと、小谷西…」また、私の“です”より先に
「何年?」
もう、この後もずっとしばらくこんな感じの会話が続いた。
はぁ…
なんか峰さんって、明るいというか、なんというか、ホントよく喋るなぁ…💧
私、ついていけるかな…
なんだか、とっても不安…
❤37❤
その日の夜、また私は良子にTELした。
なんだか、ここんとこ毎日TELしてるような気がする。
「そんなスゴイんだ、その峰さんって人」
「スゴイなんてもんじゃないよ!もう、機関銃みたいに喋るんだもん。ついていけない…」
「そりゃ、ただ単にあんたがトロいだけだって💧」
「ひっどぉい、良子ってば親友に向かって、そんな事言うんだぁ」
「親友だから、言うの!」
「……」
「ねぇ、それよりさぁ、せっかくの夏休みなんだから、どっか遊びに行こうよ!」
「ゴメン、私、合同演劇の稽古で、全然休みがないんだ」
「何それ、ひどくない?」
「でも、早く劇が仕上がれば、休みもとれるらしいけど…」
「いいじゃん、1回ぐらい休んだって!」
「ダメだよぉ」
「もう、全く、あんたはクソ真面目なんだから」
❤38❤
それからは、ホントに休みなく毎日、稽古が続いた。
といっても、裏方の私には稽古はなく、相変わらず機関銃のようによく喋る峰さんと、台本を読みながら、どこでどんな大道具や小道具がいるのかをチェックして、書き出したりしている。
「違うっっ!何度言ったら分かるのっ!もう1回、今のとこからやり直しっ!」 「ゴメン!」
今のは、セリフのタイミングを間違えた、星 綾さんに新谷さんが注意したとこ。
星さんといえば、新谷さんとは仲がいい友達同士で、同じ3年生らしいんだけど、いったん稽古に入れば、2人は演出とキャスト。
新谷さんは、相手が友達であろうとなんであろうと、間違えれば厳しく注意する。
あぁ、キャストの人たち、たいへんだぁ…
な~んて、ノンキに思ってると
「関口さん、ボサッとしてない!」
裏方の私にまで、注意はとんでくる。
❤39❤
新谷さんはキャストばかりでなく、裏方の人たちの方にも度々様子を見にきて、注意をしたり、アドバイスしたりしている。
ホントすごいんだぁ、新谷さんって。
さすが、自ら真っ先に演出を引き受けただけのことはあるなぁ。
「おい、これよかさぁ、さっきのヤツの方がいいんじゃねぇの」
そんな時聞こえてきたのは、真野さんの声。
私がその声の方に目をやると、真野さんがラジカセの前にあぐらをかいて座り込み、他の2人と何やら話し込んでいる。
そんな真野さんの姿は、真剣そのもので、目もキラキラ輝いている。
あぁ、やっぱ真野さん、カッコイイ…
私は隣にいる峰さんの事も忘れて、しばらく見とれてしまった…
❤40❤
「こらっ、関口!何よそ見してる!」
峰さんに丸めた台本で頭をポンと叩かれて、我にかえった私は、思わず慌ててしまった。
峰さんは、さっきまで見ていた私の視線の先を追うと「ははぁん…」
ニヤニヤした。
「関口さん、もしかして、僚の事、見てた?」
ギクッ💧
図星。
「そっ、そんなっ、ちっ、違いますっ」
私は恥ずかしくって、慌てて否定した。
「私が仲を取り持ってあげようか?」
峰さんは、まだニヤニヤしている。
「…!?なっ、何言ってるんですかっ、違いますっ」私がもう1度否定した時
「こらっ、そこの2人、お喋りしてないでちゃんとやって!」
私たちは新谷さんに怒られてしまった💧
❤41❤
新谷さんの厳しい稽古が1週間ぐらい続いたある日、その日の稽古が終わりに近づいた頃だった。
「お~っ、やってるな!」
「久しぶりっ!」
「どんな調子だ?」
突然、知らない男の人たちが3人中へ入ってきた。
3人とも、手にお菓子やジュースが入っているビニール袋をぶら下げている。
「あ~っ、圭輔さん、裕司さん、一真さん!」
真っ先にそう叫んだのは、もちろん(?)新谷さん。
それに続いて、他の人たちも
「やだ~っ、久しぶりぃ!」「どうしたんですかぁ?」
「もしかして、差し入れですか?」
などと騒ぎながら、その3人に駆け寄っていく。
でも、私と他の学校の1年生たちは
“誰??”
って顔して、ポカーンとしている。
❤42❤
「おうっ、かわいい後輩たちに差し入れだっ!」
その3人のうちの1番背が高くて、メガネをかけている人がそう言うと
「よっしゃっ、じゃあ先輩方に免じて、今日の稽古はこれでおしまいっ!」
と、新谷さん。
その途端、みんなはワーッと輪になって、お菓子やジュースを広げ始めた。
さっきまでポカーンとしていた他の1年生たちも、いつの間にか、その輪に加わっている。
でも、相変わらず私だけは、1人取り残されて、ポツンと突っ立っていた。
すると、そんな私を見かねたのか、川島さんが私の側へ寄ってきて
「3人とも演劇部のOBなんだよ。あの中でも1番カッコイイのが、塩商OBの清水 一真さん。で、メガネの人がこれまた塩商OBの倉田 裕司さん。最後が谷高OBの高橋 圭輔さんだよ」
と、教えてくれた。
「さっ、関口さんもこっちきて!」
私は川島さんに連れられて、みんなの輪に加わった。
❤43❤
「何、今年は新谷が演出なんだって!?」
「そうだよ、完成を楽しみにしててよ!」
「どんなのやるんだ?」
「それはいくらOBといえど、秘密です」
「でも、新谷が演出じゃあ、かなり厳しいんじゃねぇ?」
「厳しいすよぉ。もう、鬼ですよ、鬼っ!」
「何それ、聞き捨てならない!」
「そういや、初めてみる顔、結構多いな」
「今年は1年が結構いるんだよ」
「私、初めての参加なんですけど、いきなりキャストで、今から緊張なんです💧」
こんな調子で、話はかなり盛り上がっているんだけど、やっぱり私はその会話の中に入っていけない。
最初は呆気にとられていた1年生たちも、今ではすっかり打ち解けて、話に参加している。
私、1人だけなんか浮いてるよね…
早く帰りたいなぁ…
もう、お菓子やジュースも味なんかわからない…
❤44❤
「あっ、そうだ!初めての人が結構いるから…」
突然、高橋さんがそう言いながら、ズボンのポケットから、茶色い革の手帳を取り出した。
「またか、高橋…💧」
と、倉田さん。
「“また”とはなんだ、“また”とは!オレは、友達になった人には必ず、ここに住所とTEL番号を書いてもらう事にしてるんだ。
オレは、人と人との出会いを大切にしてるんだ」
「はい、はい…💧」
呆れる倉田さんを尻目に、高橋さんは
「1年の子はみんな順番に書いてね」
と、自分の1番近くにいた1年生にその手帳を手渡した。
“人と人との出会いを大切に…”かぁ…
この高橋さんってひと、結構いい事言うなぁ…
❤45❤
「はい」
突然、私の所にその茶色い手帳が回ってきた。
「…えっ!?」
あっ、そうかっ、私も1年だったっけ💧
我ながら間抜けだ…
「はっ、はい」
私は慌ててそれを受けとると、自分の住所とTEL番号を書いた。
えっとぉ…
私が次にその手帳を誰に回せばいいのか、困っていると
「あっ、君が最後」
高橋さんが私に手を差し出した。
高橋さんは私から手帳を受けとると、またズボンのポケットにしまいこんだ。
そうしながらも、みんなお菓子をたべたり、ジュースを飲んだりして、演劇の話で盛り上がっている。
❤46❤
その日の夜、私は相も変わらず、良子の所にTELしていた。
しかし、良子もよくこう毎日毎日私のグチに付き合ってくれたもんだ。
やっぱ、持つべきモノは親友だなぁ。
「へぇ、OBの3人って、カッコイイの?」
「う~ん、1人は真野さんくらいカッコよかったよ。
いやっ、やっぱ真野さんの方がカッコイイ!」
「はい、はい…💧」
「後の2人はねぇ、1人はメガネかけてて、なんだか真面目そうな感じで、もう1人は、フツウかな?」
「なんだ、そのフツウって💧」
「だって、フツウなんだもん。フツウはフツウだよ」
「そんな事より、あんた真野さんとはどうなってんの?」
「どうって?」
「好きなんでしょ?告ったりとかしてないの?」
「…!?なっ、何っ、突然!?」
「好きじゃないの?」
「………」
❤47❤
私、真野さんの事、“好き”なのかなぁ?
確かにカッコイイし、優しいし、ついつい見とれてしまったりするけど…
でも、“好き”かどうかなんて、良子に言われるまで考えてもみなかった。
自分の気持ちなのに、自分でもよく分からない…
真野さんを見てると、顔がまっ赤になっちゃうし、ドキドキもするって事は、“好き”なのかな?
でも、良子に聞かれてすぐに“好き”って答えられなかったし、こんなやって改めて考えちゃうって事は、“好き”じゃないのかな?
じゃあ、“好き”じゃなかったら、この気持ちは何?
ただの憧れ?
よくいう、“恋に恋してる”ってやつ?
あ~っっ、なんで自分の事なのに分かんないのよぉ。
はぁ…
……
…
❤48❤
私、真野さんの事、“好き”なのかなぁ…
次の日の稽古の時になっても、私はまだ1人でその事を考えていた。
その真野さんはというと、相変わらずカッコイイことには変わりもなく、友達と一生懸命に音響さんの仕事に励んでいる。
「こらっ!」
ポン
峰さんに丸めた台本で、頭を叩かれる。
これも、相変わらずの出来事。
「また僚?」
「……」
「好きなの?」
今日の峰さんは、いつもみたいにからかうのではなく、真剣な顔をしている。
私は、昨日からずっと考えている自分の気持ちを、正直に話した。
❤49❤
「とりあえず、友達になってみたら?」
これが、峰さんが私に言ってくれたアドバイス。
「友達、ですか?」
「そう、ただそうやって考えて、グズグズしてたって何の解決にもなんないよ」
「はぁ…」
「何、その間の抜けた返事はぁ」
「なぁ!」
…!?
突然後ろから声をかけられて、私たちはビックリして同時に振り返った。
❤50❤
すると、真野さんがラジカセを持って私たちの後ろに立っている!
真野さんっ!?
やだっ、今の話、聞こえてなかったよね💧
「なんだ、僚かぁ…」
「なんだとは、なんだ。なんだとは!」
「何よ?」
「ちょっと頼みがあんだけどさぁ」
「頼みぃ?」
真野さんは、私たちの目の前に広げてある台本の中程の所を指さして
「ここんとこで使う曲なんだけど、どっちがいいか選んでくんない?
さっきからずっと、森下たちと話し合ってんだけど、全然決まんなくってさ」
そう言うと、ラジカセを側に置いた。
「ふ~ん、どれとどれよ」
峰さんが言うと、真野さんはまず初めの曲を流し始めた。
私はただ黙って、そんな2人のやり取りを見ているだけだった。
私もこんな風に真野さんと話せたらなぁ…
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