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夫のコレクションを捨ててしまって後悔した
義母は良い人だけど、ここが嫌だ。
彼氏との宗教の違い

お兄ちゃんと結婚しました

レス112 HIT数 194705 あ+ あ-

匿名
15/11/12 18:56(更新日時)

大好きなお兄ちゃんと結婚しました

もちろんここまでの道のりは決して安易なものではなかった

って言うかものすごく大変でした!(^-^;

でも、今はとても幸せなんで
どれもいい思い出です

…でもないか…(´;ω;`)

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No.2226650 15/06/17 20:17(スレ作成日時)

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No.112 15/11/12 18:56
匿名 

時刻は19:00
平日に彼と会う時はだいたいこの時間
迎えに来てくれた彼の車に乗り込む

明日実家に帰るとはいえ、数日間の滞在
それに彼と会うのはそんなに頻発ではなかったのであまり支障がない日数だ

それでも遠く離れることになるのは、やっぱり淋しかった

その日は食事に行って、ちょっと贅沢なデザートを食べに行く
その後某有名な夜景が見えるデートスポットで手を繋いで歩く

先程食べたデザートの話から始り、お父さんのこと、家族のこと、学校でのこと

まるで淋しさをまぎらわすかのように喋りまくる
そんな私の気持ちを察してくれたのか、彼が私の頭を抱き寄せてくれた

ちょっとビックリしたけど、ほのかに香る彼のにおい
そして温かさに酔いしれていた

彼はポケットから何やら取りだし、私に背を向けさせ、首にネックレスを着けてくれた

『安物で悪いんだけど、誕生日おめでとう』

首にひかるリングのネックレス
振り返り彼の顔を見た時、私の想いが溢れ出す

『ありがとう…』


そう言って…


私は産まれて初めて…


男性とくちづけを交わした…







その夜私は嬉しさと恥ずかしさと誇らしさ
その他もろもろの感情が入り乱れ布団の中で悶えていた

キスした後のことはあまり覚えていない
その後どんな会話をしたのか、どうやって帰ってきたのか、別れ際のことなど終始心ここにあらずだったと思う
中々眠れなかった


そして2時間弱の睡眠の後、始発の新幹線に乗る為、用意していた荷物を抱え家を出た



乗車中は携帯に入っている彼から届いたメールを何度も読み返しながら幸せん噛みしめていた




本当は病院にそのまま行こうと思っていたのだが、既に昨日退院して自宅で療養中だということなので実家へ帰る

『ただいま~』


出迎えてくれたのはお母さん
すぐにお父さんの寝室へと向かった

No.111 15/11/05 19:45
匿名 

大学生活もあと1年
卒業に至る単位はほぼクリアしていた為、進路に向けての活動が始まる

当事カウンセラーという職業は需要が少なく、有利に事進める為【臨床心理士】という資格が必要不可欠だった

そのためには後2年の実務を含めた修業期間が必要
大学院に入るか、専門の学校に入るか、はたまた開業しているカウンセリングに就業者として潜り込むか決めなければならない

私は悩んでいた

色々なセミナーに参加して、とても魅力的な専門の学校を見つけたのだが、彼の側から離れたくない事を考えれば、このまま大学院に進む方がいい

友達や彼にも相談してみた

彼は(私)のやりたい様にやればいいと言ってくれてはいるけど、できるなら大学院に入り、この地に留まって欲しいと言う

ユカちゃんは大学院
これは入学当初から決めていた

他の友達は大学院、地元に帰り専門学校が半々
やはりいきなり就業者として潜り込む人は殆どいない



私は更に視野を広げる為積極的にセミナーに参加して自分に合った道を模索している時、事件がおきた




お父さんが倒れた

それを知ったのはお母さんからの電話

別に命に別状はなく大したこと無いとの事で、お父さんも(私)には知らせなくてもいいと言ってだけど、一応知らせておいた方がいいと思たみたいで

確かに正月帰った時のお父さんの変化は見てとれた
その事を指摘すると
『もう年だから』
と、力なく笑っていたお父さん

その夜お父さんとの思い出を色々思い返していたら、無性にお父さんに会いたくなった

お父さんが全てだったあの頃
お父さんは私に対して負い目があるって言ってたけど、そう思うには私はお父さんに甘えていたと思う

仕事で疲れた時もあっただろう
でも休みと時はずっと一緒にいてくれた
行きたい場所には連れてってくれた
病気の時はずっと手を握ってくれた
寂しい時は慰めてくれて、嬉しい時は笑顔をくれた

再婚してからは、お母さんやお兄ちゃんとばかり話していて、お父さんとの思い出などほぼ皆無
それでも私の事を1番に考えてくれて…



すぐにでも会いに行きたかったけど、予定の全てをキャンセルすることはできず、私が実家へ戻ったのは1週間後

その前日は私の誕生日
彼と久しぶりに会うことになっていた…

No.110 15/10/31 22:06
匿名 

お兄ちゃんが帰ってきたのは年が開けてから

しかも帰って爆睡していたから顔を合わせたのは元旦の夜

私の姿を見ると
『おかえり』
と、私の頭をわしづかみにしてワシャワシャ

相変わらずカッコいい
でも切ない思いはしなかった




翌々日お母さんと電車に乗ってデパートへ
思う存分買い物を楽しんだ
ランチをとって午後は男連中への土産物
と言っても殆ど食べ物だけど


買い物も一段落して帰る前に甘い物でも食べようと近くの店に入る

そこで注文を終え待ってる間お母さんからビックリするような一言


『(私)ちゃん、いいことあったでしょ』

『えっ!?』

『彼氏でも出来た?』

私は目を丸くしたまま俯いてしまった

頭の中は大パニック
そんなそぶりしたつもりなかったのに

『なん…で…?』

『何でって分かるわよ
母親だもん…』

不意に涙が出そうなくらい嬉しかった
お母さんとは血の繋りがない
そのせいかどんなに愛情を注いで貰ってもどこか冷めた自分がいた

もちろんお母さんの事は大好きだ
ただ、これまで喧嘩したことがない
それがどこか本当の親子ではない見えない壁が2人を隔てているような気がしていて…

【親の心子知らず】とはよく言ったものだ
私はお母さんを見くびっていた

本当の母親ですら気づくことすら難しい娘の初恋を見事言い当てた
いや、気づいてくれた

それが本当に嬉しくて…





彼との事を一通り話し終える頃には、私も自然と笑顔になっていた
それを聖母の様なほほ笑みで聞いてくれる

『おめでとう、その彼を大事にして幸せにね』

正直お兄ちゃんの事を訊かれると思っていたけど、そんな野暮なことはもちろん言わない

この人には敵わない
本気でそう思った


家に帰ると腹を空かせた男共から大ブーイング

それを尻目に買ってきたものを温めただけの夕食
それでも文句ひとつ言わずに飛び付く男共

やっぱりお母さんはスゴい
見事手玉にとるその姿に圧巻だ





その数日後、お母さんに見送られ私は彼の待つ土地に帰っていった



No.109 15/10/31 20:41
匿名 

そしてすぐに正月がくる
本音を言えば彼の側に居たかった

でも帰省するのは実家に連絡していたから戻ることに
それでもギリギリまで伸ばして彼との時間を過ごす

帰りの新幹線では終始ニヤケ顔
見送ってくれた彼の手のぬくもりをかみしめていた

初めてできた彼氏という存在
その存在がこんなにも嬉しく愛おしいとは思わなかった

何故あんなに悩んでいたのか?
もっと早くに決断していれば楽しい時間を過ごせていたのに




実家に着く頃には既に辺りは暗くなっていて、予定していた時間を大幅に送らせたことに両親は心配していたようだ

『遅かったわねぇ、お腹すいてない?』
出迎えてくれたのはお母さん

すぐにでもこの今の幸せを報告したかったけど、その場は抑えた

お父さんやお兄ちゃんにはまだ知られたくないという思いの方が勝ったからだ

家にはお母さんしかいない
お父さんは毎年のことだから仕方がないけど、お兄ちゃんは?

聞けばお仲間さんとお出かけらしい

『(私)ちゃんが帰ってくる日くらい家にいればいいのに……』


お母さんはお兄ちゃんが就職したのを期に会社を退職していた

もともとバリバリのキャリアウーマンだったお母さんは、家でじっとしてるのが性に合わないらしく、遅めの食事をとっていた私に新年初売りに一緒に行こうと誘ってきた

これには私も大いに賛成
お母さんには彼のことを打ち明けたかったから、2人で出かけたいと思っていたし、何か掘り出し物を見つけ出して彼へのプレゼントにしたかった



遅くにお父さんが帰ってきた
私の姿を見ると
『おお…やっと帰ってきたか』
と笑顔で喜んでくれる

だけど私は喜べなかった…



久しぶりに見るお父さんは白髪やシワが増えて全体的に痩せ細っていた

この前会ったのがお盆の時だったけど、その時はお互いのスレ違いで殆ど顔を会わせなかった

反射的に笑顔で答えるけど、お父さんの老いた姿にショックを受けた



思い起こせば離婚後殆ど2人で暮らしてきた
あの頃は最も身近な存在だったのに久しぶりに会ったお父さんが何だか他人の様に思えてしまって…

そんな自分に憤りをおぼえ、同時に無性に悲しんでいる自分がいた




No.108 15/10/14 23:45
匿名 

お盆に実家に帰る
この時お兄ちゃんは既に就職していた

職場は割と実家から近かったけど、研修期間が終わると同時にまたも独立

アパートに住むこととなっていた
私が帰ってくるのでお兄ちゃんも帰ると思っていたけど、時間も遅く一泊しかしないらしい
『お気楽大学生とは違って新卒者は休みなんかねーよ』

『嘘ばっかり!どうせ彼女とイチャイチャするんでしょ!』

『はぁ?とっくに別れたよ!
やっぱ男は仕事だな』

私が知ってるだけでも大学生の頃からお兄ちゃんの彼女は4人いた

『そんなにとっかえひっかえしてたらバチが当たるよ!
だから私にしとけば良かったのに!』

『馬鹿言うなよ!』

皮肉めいた笑いで軽くかわすお兄ちゃん
ホントに私他所に行っちゃうよ…


実家に帰る時は必ずR美ちゃんに連絡して会うようにしていた
この日もそう
お互いの近況や恋愛、職場(R美ちゃんは短大卒なので既に就職)、大学の出来事(?)愚痴(?)など話題は尽きない

そんな中私が彼のことを話すとR美ちゃんは目を丸くして驚いていた

『そっか…(私)ちゃんもとうとう彼氏持ちか…』

『別にまだ付き合ってるわけじゃないよ』

『なんで?』

『なんでって…』

『何?まだお兄さんのこと諦めきれてないの?』

『………』

『(私)ちゃん…
言いたくないんだけどさ…』

『分かってる
もうちょっと時間が欲しいだけ』

そう言うとR美ちゃんはそれ以上何も言わなかった
そして別れ際に一言
『(私)ちゃん、どんな選択しても構わないけど幸せにならないとダメだよ』

その言葉がとても嬉しかった


夏休みも終わりまた忙しい日常が始まる
そして彼との関係も以前よりも、もっともっと深まっていた

私の心は…
この時既にお兄ちゃんより彼の方へ向いていた…



そして何度目かのデート

その日はクリスマスイブ



『まさか(私)ちゃんとイブを過ごせるなんて思ってもみなかったよ』

屈託なく笑う彼


幾度となく見てきたその笑顔に


私も彼の想いを受け止め





正式に付き合うことになった




No.107 15/10/13 18:09
匿名 

『まぁ深く関わることは無かったけど、自分なりにいろんな女性と接してきた中で(私)ちゃんだけなんだよ
自分を正直に出せて、一緒にいて楽しいと思ったのは

だから…何て言うか…
(私)ちゃんも少なからず自分に好意を持ってくれてるみたいだし…
さっきも言ったけど、タイミングのズレでこのままサヨナラするのは…
ちょっと…やだな…』

そこでまた時間が流れる

『私がお兄ちゃんを忘れる日がきたとしても、(彼)さんを受け入れるか分かんないよ?』

『第3者を選ぶってこと?』

『うん…』

『それならそれで仕方ないけど、(私)ちゃんそんなに移り気な方じゃ無いでしょ
お兄さんのこと忘れられないで今でも想ってるくらいなんだから…

だから、そんな(私)ちゃんを信じてる』

そう言うとちょっとイタズラっぽい笑顔を向ける彼
つられて笑う私

この時の流れる空気がとても心地よいのを覚えている

辺りはすでに暗くなっていた

『帰ろっか』

そう言って席を立つ私に続くように彼も腰を上げ供に車へ向かう

『結構強引なんだね、もっとこう…消極的な人なんだと思ってた』

『うん、自分でも驚いてる』

車に乗り込んだ後食事に誘われたが、その時は自分で今日の事ちゃんと考えたいと言って丁重に断った




別れ際ー

『(彼)さん、辛くないですか?
私も長いこと片想いしてたから…』

『別に同情をさそうつもりは無いけど、辛くないって言えば嘘になる
でも、もう少しだけ抗わさせて

あっ少しでもうっとおしく思ったらちゃんと言ってね
ストーカー的なことはしたくないから…』


『また連絡します』

そう言って家に帰る
彼は私が玄関の扉が閉まるまで見送ってくれた




次の日彼からメール

昨日のお礼と、また今度食事に行こうというお誘い
私も返事を返す

そんな他愛もない日々が続いた

一緒に出かけることもある
私が忙しくメールの返事を返せない時も、決して急かそうとはせず、返信があるまで追加のメールは来ない

夜遅くに会う時は、私が警戒しないようにファミレスとか人がいる所を選ぶ

そんな近づき過ぎず離れ過ぎない絶妙な距離感を保ってくれている彼



そんな彼への気持ちに私自身、微妙な心の変化が表れようとしていた

No.106 15/10/12 19:26
匿名 

『初めて彼女が出来たのが高校の頃でさ、
その子、とても活発な子で皆からも人気があって、めちゃくちゃ嬉しくて…

でもある日を堺によそよそしくなって、理由を聞いたら、他に好きな人が出来たって

で結局別れたんだけど、後から聞いた話しだと俺と付き合う前からそいつと付き合ってたらしくて…

ショックだったよ

それ以来女の子と話すのが嫌になって』

彼は苦笑いしながら話しを続ける

『見かねた同僚が色々コンパに誘ってくれたんだ
初めは行きたくなかったけど、このままじゃいけないのは分かってたから何度か行ってたけど、やっぱり上手く話せなくてね

そこで(私)ちゃんと出会って…
自分でも驚く位に楽しくて、同僚達からの後押しもあって連絡先渡したけど、返事来なくて、やっぱダメだと思ってたんだ』

『ごめんなさい』

『でもちゃんと連絡くれた…

すごく嬉しかったよ…』

いつの間にか彼は笑顔になっていた

『会って話してるうちにだんだん好きになっていって、自分から告白することなんてもう無いと思ってたんだけど抑えきれなくなる程好きになった』

この言葉が胸に刺さった
お兄ちゃんを好きになった自分の心境とあまりにも酷似していたからだ

『お兄さんのこと諦めずに頑張り続けるって言うのなら俺もこのまま引き下がろうと思ったけど、いつかは忘れなければって思ってるんでしょ?』

私は時間をおき小さく頷く

『ってことはタイミングさえ合えば受けてもらえたかもしれない
(私)ちゃんがいつかお兄さんを忘れられる時が来て、その後他のヤツに持っていかれると思うと悔しい』

彼の方を見るとまっすぐと私を見据えていた

『(私)ちゃん、今度は俺に時間くれないかな?』

『え?』

『もちろんその間だけ付き合って欲しいとかじゃなくて、この今の関係をもう少し続けていきたいんだ』

『もう少し?』

『うん、(私)ちゃんがお兄さんを諦められる日がくるか、今のこの関係が重荷に感じられるまで』

『ん…』

『そんなに難しく考えないで
ただ、俺が告白する前の日に戻るだけ』

『そんな簡単に戻れないよ
(彼)さんの気持ち知っちゃったもん』

『それは告白する以前から気付いてたでしょ?』

『うん…まぁ…』


No.105 15/10/10 22:11
匿名 

それからお父さんからある女性と再婚したいと言われた事

その人に私の中に潜む闇の霧を払ってもらい私のお母さんになってくれた事

お母さんには連れ子がいて私にお兄ちゃんが出来た事

そのお兄ちゃんは破天荒な人だったけど、一緒の時間を過ごすうちに心を奪われた事

でも私のこの恋は成就出来なかった事



そして何よりまだお兄ちゃんが私の心の中に居ること…


全てを話し終えるのにかなりの時間がかかっていた

『(彼)さんのことは好きです
他の男の子達とは違う感情で接しているのもたしかです

ただ、それが恋かと言われると…』

その先は口ごもって俯いてしまった


彼は何も言わずに黙ったまま聞いてくれていた
多分お兄ちゃんの件を話し出した辺りから予想していたのかもしれない
彼の方を見ると少し悲しい表情をしていた



『ひとつだけ訊いてもいい?』
私に目線を合わせる事なく彼が言った

『これからもお兄さんの事を心に宿したまま生きて行くの?』

答えに困った
諦めなくてはいけないのは重々承知している
またその為だけとは言わないが、遠くで暮らすことを決意したのも、お兄ちゃんへの未練を断ち切る為でもあったのだ

『いつかは…
忘れなければいけないとは思ってるんだけど…』
そう言うのが精一杯だった
また未だに未練がましく思ってしまっている自分にも憤りをおぼえた


その後しばしの沈黙…

そして彼が話し出した
『今度は俺の事聞いて貰っていい?』

No.104 15/10/01 22:49
匿名 

それから彼と会ったのが数日後
待ち合わせの場所に車でやってきた

『久しぶり』

『うん…』

私は精一杯の愛想笑いで答える

どう切り出すか
それだけで頭はいっぱい、緊張しまくっていた

車に乗り込むと彼が訪ねる

『どうする?
ファミレスでも行こっか?』

『う~ん…』

周りの目というか耳が気になった私は答えに困っていた
それを感じとったのか彼は
『じゃあ、ちょっと走るけど…』
そう言うと車を走らせた

どこに行くのかちょっと不安だったけど、切り出すタイミングを模索していた私はそれどころではなく…

彼も緊張していたのか20分くらい経った車中はまるで喪中のような雰囲気

そんな空気を少しでも変えようと私が重い口を開く

『どこに行くの?』

『○○川の河川敷
あそこなら車も停めれるし、今の時間なら人もまばらだから』



そしてそれからまた20分くらい車を走らせ河川敷の駐車場に到着した

その間まともに話すことはやはり出来なくて、そんな調子でこれから彼にちゃんと話せるのか心配だった

彼に言われるがまま着いていくと、木陰のベンチにたどり着き、そこに2人腰かける

時間は18時を回っていたが、まだ辺りは明るく、犬の散歩をしている人や、釣りをしている人、ジョギングで汗を流す人もいる

もう夏だというのにそんなに暑くなく、流れる風が心地よい
こんなゆっくりした時間をすごすのは久しぶりだ

『改まって話すってことは、こないだの返事だよね?』

いきなりの彼の言葉に我にかえる

『うん…』

そう言うとまた黙りこんでしまう私
ちゃんと伝えなきゃいけないのに…

暫くして彼を見ると、目が合ったことに最初ビックリしたみたいだったけど、それもすぐ笑顔に変わる
そんな彼を見る私もつられて笑顔になる

今この瞬間を逃したら今日は言えそうにない

私は意を決して話し出した

『その前に私の事を話していい?』

『うん…』

先ずはお兄ちゃんの存在を知ってもらおうと私の過去を聞いてもらった

『私が小学校の頃ね…
両親が離婚したの…』


『うん…』


No.103 15/09/29 01:03
匿名 

ユカちゃん達は幼馴染
小学校の時、イジメられてたユカちゃんを助けてくれた同じクラスの男の子
それがユカちゃんの彼氏だ

お互い意識はしていたものの想いを伝える事はなく中学卒業とともに疎遠に

高校に入り夏休みに公園にいる彼氏さんを犬の散歩をしていたユカちゃんが見つける

因みに彼氏さんとは徒歩1~2分のご近所さん

少し話して帰ろうとした時に明日ある近所の夏祭りに一緒に行かないかと誘われる

ちょっと迷って二つ返事で返したけど、内心ドキドキわくわくだったらしい

でも次の日…
一緒に回った後でちょっと離れた所で2人きりになり、なんとなく私が好きな人は小学校の時イジメから助けてくれた人
と告げると、彼氏さん何も言わずに気まずい空気が流れ…

いてもたってもいられなくなったユカちゃんが帰ろうとしたら腕を掴まれて…

半泣きのユカちゃんの顔を見た彼氏さん
『ごめん』
の一言

腕を振り払い家に帰ったユカちゃん
その夜は大泣きしたらしい

で、夏休みも終わり新学期になって数日後
校門の前に立っている彼氏さん

ビックリしたけど
『ちょっと時間くれ』
と半ば強引に連れていかれ、改めて彼氏さんの方から告白
誤解も解けて無事交際スタート

彼氏さん曰く
夏祭りの日、告白しようとしたら逆にされて頭真っ白になってしまい
トドメに泣き顔見たせいで石になる

『肝心な所で抜けてしまうのよねぇ』
そう言うユカちゃんだけど私には幸せそうに見えた

『私はね、好きになったらその人しか見えなくなると思うのね

確かに付き合いながら徐々に好きになっていくのもあると思う

でも(私)ちゃんそんなに器用じゃないでしょ

しかもお兄さんのこと踏ん切りついて無いなら尚更だよ』

『うん…分かってる…』

やっぱり今の気持ちのまま彼の想いに応えることは出来ない
次に会った時にちゃんと伝えること
それが、彼に出来る精一杯の誠意だと思った


ユカちゃんもそれがいいと言ってくれて…
ただ、メールで済まそうとする私に
『ちゃんと会って話しなさい
言い辛いのは分かるけど逃げちゃダメ』
と叱られ
『都合のいい日に連絡下さい』
と書き直したメールを送った


No.102 15/09/29 00:24
匿名 

その日以降メールや電話で話す回数に比例して、彼の事を考える時間も増えていった

その都度彼の優しさに触れ私の心境にも変化が表れる

ただそれを否定する自分もいた
理由はやはりお兄ちゃんのことだと思う

叶わぬ恋にもがき苦しむのならいっそのこと彼の好意に身を委ねるほうが賢明かもしれない

そうこう思い悩んでいる最中…

何度目かのデートの時に正式に告白された


『少し時間下さい…』
その時はいきなりでビックリしたけど、薄々感ずいてはいた
彼のことは多分好きだと思う…
一緒にいるのは楽しいし、別れ際寂しさを感じるのは事実だ

でも私の中に眠るお兄ちゃんへの想い…
そんな気持ちのまま彼と付き合うのは失礼だと思うし、考えてはダメだと分かっていても、つい比べてしまう

思い悩みながら数日が過ぎた




その日は夏休み前最後のサークル集会
雑談がいつの間にか私と彼の話題になっていた

ネタにされるのは抵抗があったので初めはのらりくらりかわしていたのだが、ついに追い詰められて告白された事を話すと、メンバーの多くは
『おめでとう!』
『いい人みたいだし付き合っちゃえば、いいじゃん!』
と、悩んでいる私の事などお構い無し

でもユカちゃんだけは
『迷ってるんならやめたら』
と言う

私のお兄ちゃんへの想いを知っているのはユカちゃんだけだ

だからメンバーの中にはユカちゃんの発言に反発する人もいたけど、私が好きな人がいる事、その人にフラレたけどまだ踏ん切りがつけてないことを話すと、皆真剣に考えてくれて…

でも最終的には自分で決めるのが一番だと皆口を揃えて言う

分かってはいるんだけどね…




その日はユカちゃんの家に泊まった
夜遅くまで話を聞いてくれて…

そんな時、あまり自分のことを話さないユカちゃんが彼氏との事を話してくれた

No.101 15/09/23 14:49
匿名 

彼は普通のサラリーマン
何故その道を選ばなかったのか尋ねると

『俺はあくまで趣味でやってるからね
それが仕事となると義務づけされて嫌になるかもしれないから…』

そういうものだろうか?
自分の趣味を仕事にできるなんて素敵なことだと思うのだけど

まぁ本人がそれでいいなら別に構わない
私はそれ以上言うのをやめた


彼との時間は楽しかった

サークルやバイトの男の人と話すのも慣れてはきていたが、やはりどこか壁を作ってしまっている自分がいた

だけど彼と話している時は素直な自分が出せている
それは少なくとも他の男の人とは違った感覚
でもそれが恋というのも違う気がしていた

お兄ちゃんの写真を見る
以前よりも胸を締めつけるようなせつなさはなくなってきていたが、やはりそこから芽生えてくる感情は恋だと自覚できる

いずれ彼にも同じような感情を抱くことが出来るのか
不安はあるけど今のこの関係を大切にしていきたいと思い始めていた

それから何度か電話で話した時に、彼の家で一緒に作ろうということになった

電話で話してみても誠実そうな印象を持てたし、明るいうちの訪問だったので警戒することもなく自然な成り行きだった



そして当日…

待ち合わせ場面まで出向き、彼の車で家に向かう
その時間はお母さんも在宅していると聞いてちょっと緊張していたけど、挨拶すると、とても暖かく迎えてくれた


さて、そのケーキ作りだけど、こんなに細かく大変だとは思わなかった
家庭科の授業でやってたのとは大違い
とにかく細かい

材料の分量など1グラム単位の正確さだし、混ぜ合わせる時の温度、オーブンの余熱

いつも私がやっている料理とは大違い
そのひとつひとつを彼は丁寧に教えてくれた

出来上がる頃には慣れないことに疲労困憊だったが、そのおかげで以前お店で食べたものにひけをとらないほど美味しいケーキが出来た

食べ終わってティータイムには、お母さんも話しに加わって楽しい時間を過ごす

普通はこの年の男の人って母親との接触をしないようにすると思っていたけど、多少の恥じらいはあるものの、同席させる彼に優しさをも感じていた

No.100 15/09/22 23:57
匿名 

トゥルルルル…

トゥルルルル…

ガチャ

『はい』

電話先の向こうで彼が出た

『あ…あの…(私)です、先日コンパで…』

『ああ!』

『突然すみません、今大丈夫ですか?』

『うん大丈夫だよ

よかったぁ、連絡ないからやっぱダメだと思ってた』

『すみません、電話するの遅れて…
色々迷ってて…あっ違っ…迷ってたと言うか…』

『アハハハハ
大丈夫、気にしてないから』

彼の笑い声で私も落ち着きを取り戻す



その日は彼の趣味であるお菓子作りの話題がほとんど
私も1度作りたいみたいな事を話した
時間にして15分くらい

その次の日から彼のことを思う日が続き、何度目か電話で話した時に、また会おうということになった



でも少し困ったことが…
一緒にお菓子作りしようにもその場所が…
私のアパートは大学指定の、言わば女子寮みたいなもので男子禁制
(実際住人にひと声かければOKなのだが、生真面目な私はできそうもない)

かと言って、彼の家にいきなりお邪魔するのも気が引ける

『異性の友達でも家に行くことなんて全然ありだよ』
ユカちゃん含め友人達はそう言ってくれるけど…



で、当日待ち合わせ場所に行くと既に彼がいた
笑顔で迎えてくれて簡単な挨拶も済ませ
『じゃ、行こっか!』

そう言う彼にちょっと戸惑って
『え?何処に?』

『今度一緒に作ろうと思ってるヤツがあるんだけど、まずはその本物の味を知ってほしいんだ』


そう言って言われるがまま連れてこられたのはとある洋菓子屋さん
2階には食べることもできるスペースがある

そこで彼が注文したザッハトルテ

以前電話で好きなお菓子を訊かれ、チョコレートが好きと答えたが、ザッハトルテはまさにチョコレート好きにはぴったりのケーキ

薦められるがまま食べてみたけど、初めて口にするその美味しさたるや…


『美味しい!』
満面の笑みでこたえる私に彼も笑顔で話し出す
『このチョコレートは甘さが控えめで、その分…』

洋菓子初心者の私にはちんぷんかんぷんだったけど、熱心に話す彼の目は少年のようにキラキラ輝かせていて…

そんな彼に徐々に惹かれていく私がいた…

No.99 15/09/22 23:00
匿名 

家に帰り着くと貰ったメモを前に立ちつくしている自分がいた

『どうしよう…』
初めての経験に戸惑ってしまい、どうして良いのか分からない

一緒に行った友人は
『やったじゃーん』
『いい雰囲気だったもんね~』
と、茶化してばかりで話にならない

時間も遅くユカちゃんに相談しようも出来ず、悶々としたままその日は眠りについた

翌日は日曜だった為、起きてすぐにユカちゃんに電話
家まできてくれることになった

一連の話をし終えると
『う~ん…
(私)ちゃんが何を悩んでいるのか分からないよ
また会いたいと思ったら電話すればいいし、そうじゃなければしなくていいんだし…』

それはそうなんだけど、男の人に電話して何を話せばいいのか分からない
お兄ちゃん相手でも会話に詰まってしまうのに

確かに話が盛り上がった時は楽しかった
お開きになっても、もう少し話したいと思ったのも確かだ
でも一夜明けて冷静になってみると、私から連絡することがとても意味深に思ってしまって




そして連絡しないまま数日が過ぎたある日…

いつものように自炊している時、フとその人のことを思い出した
その人も料理が好きで、中でもお菓子やケーキ作りが好きらしい

食事主体にやっていた私だけど、いつかはそういうものにもチャレンジしてみたいと常々思ってはいた

彼は男ながらにそういった趣味があることを恥ずかしく思っていて、周りにはカミングアウトすることはなかったのだが、あの日は酔っ払っていたせいもあってか、料理が好きな私には分かってもらえると思い話したらしい

そんな彼の事を気にし出す日が増えてきた


そしてついに友人達からの後押しもあり、手渡された連絡先に電話することになった



当時はお互いPHSを所持していたこともかけた要因

いきなり実家暮らしの彼の所に電話なんか出来ない


仕事が終わってるであろう20時くらいに電話することに

やはり何度も番号を打っては発信ボタンを押すことが出来ず、10回ほど打ち込んでようやく発信できた





No.98 15/09/18 20:57
匿名 

この2年間様々なことがあった

勉学面では学年が進むにつれ、より専門的なカリキュラムも増えてきて、講義も大学外の講演会に参加する回数も増えてきた

恋愛面では同じサークルの人やバイト先の人から告白されることもあったが、臆病な私はその想いを受け止めることが出来なかった

やはりまだお兄ちゃんの事が心のどこかに引っ掛かってたのかもしれない

『無理して付き合うことはないと思うけど、少しは踏み込んでみたら?』

ユカちゃんはそう言うけど、やはり好きでもない人と交際するのはできそうもない

『だから付き合うのは別にしてデート位ならいいんじゃない?
お誘い受けてるんでしょ?』

『それはそうだけど…』

デート=恋人同士
当時としても古い考えだったと思うけど、恋愛経験皆無だった私には男の人と2人で…

ん?

お兄ちゃんと花火大会に行った時を思い出した

お兄ちゃんと妹いう間柄になってから日も浅く憧れの存在ではあったけど、あれも言うなればデートだった

その後その光景を見た人達から誤解されたこともあったし…

そう思うと私の中にあった警戒心も薄れていくのを感じて
デート…
してみてもいいかなぁ…
そう思うようになってきていた


そしてその機会は、すぐに訪れることになる





同じサークルの仲間からコンパのお誘いがあった
過去何度かそういう話があっては断り続けていたのだが、何事も経験とユカちゃんが背中を押してくれた
(ユカちゃんは彼氏持ちだから不参加)


で当日

ちょっぴりおめかしして指定された居酒屋へ

相手はサークル仲間の友達
皆さん社会人だった

そこで隣に座った人
明らかに他の人達とは違っていて、オドオドした様子
時折笑顔で話しかけてくるけど会話が続かない
それを自覚しているのか
『ごめんね、俺こういうの苦手で…』

そう言う彼に親近感をおぼえて
『私も苦手なんです』
と笑顔を返していた

二次会のカラオケになると、お互いに慣れてきたのか会話も弾み、歌そっちのけで話し続けていた

彼も料理が好きらしく、そこが起爆剤となり初対面とは思えないほど盛り上がっていて

帰りがけに
『別に付き合うとかじゃなくて、もう少し話してみたいから…
その…良かったら連絡下さい』
と、TEL番号を書いたメモを渡された



No.97 15/09/18 18:59
匿名 

お兄ちゃんが大学に入った時、中々連絡がとれなくなってた理由も分かってくるようになっていた

忙しいのもあるけど、こう言ってはなんだが、家からの連絡がわずらわしく思えてきた

今なら分かる
だけど当時の私は見るもの全てが新鮮で、それに没頭してしまい、家で私のことを心配してくれている両親の事を考える余裕など無く、自分勝手な行動を取っていたと思う

お兄ちゃんの言葉
『自由な分誘惑も多い…』
確かに勉強するのも、遊ぶのも、バイトするのも、ダラダラするのも私の自由

でもそこには責任が伴うことも理解出来てきて、一歩ずつ私は大人になっていく

意志が弱い私は道を外れそうになることもあった
でもその度に机に飾られたお兄ちゃんや両親の写真
見送りの際に貰ったお兄ちゃんの言葉
更に由加子さん(以後ユカちゃん)の助言が私を正しい道へと引き戻してくれる


一度実家への帰省を止めようか迷ってた事があった
以前帰省したとき、実家まで片道5時間もかかってしまい今度正月に帰る予定だったのだが、億劫に思えてきて

その事をユカちゃんに話した時怒られた
既に私の家庭事情を知っていたユカちゃん
両親側の視点に立って意見してくれて

ユカちゃんの話を聞いているうちに、幼い私を育ててくれたお父さんや心の霧を払ってくれたお母さんに会いたくなった

なんて単純なんだと当時の私を振り返ると恥ずかしいけど、そう思える今の私がいるのもユカちゃんのおかげだと思う





そうやって1つずつ成長していく私も既に3回生になっていた

No.96 15/09/14 01:06
匿名 

初めは慣れない生活に四苦八苦してはいたが、日が経つにつれ同じ学科の友達やアパートの住人達とのコミュニケーションもとれるようになり、ようやく生活の基盤が出来るようになった



そんな中で運命的と言うのは大袈裟だが、今後の人生を左右する出会いがあった

その人は同じ学科の学生で、初めて見た時は同学年と思えないくらい大人な雰囲気をかもし出して、真剣に講義を聞くその横顔に憧れを抱いてしまうほど

そのせいか少し近寄り難い存在ではあったが、一度彼女の都合で受講することが出来なかった講義のノートを見せて欲しいと頼まれたのがきっかけで話すようになり、そこから仲良くなった

話してみても知性的な面と優しさ溢れる態度に好感を抱き、女性としてだけでなく人間的にもとても魅力的な人

なのに何故か自分のことを気に入ってくれたらしく、お互いの仲が深まるまで時間はかからなかった

彼女の名前は由加子さん

もちろん初めの頃は名字で呼びあってたけど、いつの間にかお互い名前で呼び合うようになっていた

更に成績も優秀で、高校の時の成績表を見せてもらったけど『何でこの大学なの?』と思わせるほどで、有名国立大でも充分な学力だった



また彼女が所属していたサークルにも誘われて入部するようになり大学内では常に一緒にいるようになる

あたりまえではあるが彼氏もちゃんといて、妬心すら感じてしまう

『(私)ちゃんは好きな人とかいないの?』

『いるにはいるんだけど…』

一度サークルの歓迎会で酔っ払って帰りに彼女のアパートにいった時、酒のせいか饒舌になっていた私がつい口を滑らせ身の上話をしてしまった

この時までお兄ちゃんに恋する妹なんて、気持ち悪がられると思っていたので言わなかったけど彼女は真剣に聞いてくれて、私が告白してフラれたと話した辺りでは
『頑張ったね』
と頭を撫でてもらった

そんな彼女を心から好きになって(もちろん友人として)友達であり姉のような存在になっていた

そうして勉学、サークル、初めてのバイト等で毎日が気持ち良く疲れ、月日が私の意識よりも早く流れているのを感じていた

No.95 15/09/11 22:47
匿名 

そうして始まった大学生活

やはり期待より不安の方が大きく、初めの頃は慣れないことばっかりで泣きそうになっていた

何が一番慣れないって…

情けない話だが、私は幽霊の類が大の苦手で、今まで家だったから気にしたこと無かったのだが、暗くて狭いこの部屋で1人寝るのはものすごく恐くて電気をつけっぱなしでないと寝れない日が続いた

更に知らない土地に単身飛び込んできたので、方向音痴な私は迷子になることもある

その事を相談できる人もいないので、越してきて一週間もたたずにホームシックにかかってしまった

そんな時にはお兄ちゃんの写真を見て、私の中にあるパワーを奮い起たせていたのだが、それも限界に達していた



そんな折隣に住む人から声をかけられた

『こんにちは、○大生だよね』

『はい』

私の住むアパートは大学指定のアパートで、その大学生しか住んでおらず、しかも女性のみ

なので住民みんな同じ大学なのだが、社交性乏しい私は挨拶を交わすだけの毎日

だから未だに友達すらいなかった私は、声をかけられること自体が嬉しかった


その人は私の1つ上の先輩で、同じように地方から出てきた人
だから私と同じように去年越してきた時は不安な日々を送っていた

『よかったら自己紹介も含めて部屋に来ない?』

『はい、是非!』

ホント藁をもすがる思いだった

先輩の部屋に上りこみ、軽く自己紹介を済ませお互いの身の上話をしだす

聞けば先輩も去年寂しい思いをしてた際に去年卒業した先輩から声をかけられ救ってもらったらしい

そんな他愛もない話をしていると外も暗くなったので晩御飯一緒に食べようということになった

『それなら私が何か作りますよ』

こういう時、料理をしていて良かったと思える

ただ先輩の口に合うか不安だったけど、凄くおいしいと喜んでくれた



学年も学科も違った為カリキュラムも異なるから大学の講義で一緒になることは少なかったけど、アパートでの孤独感が無くなったこたは私にとってかなりのプラス要素だった


No.94 15/09/11 00:24
匿名 

出立の日

両親(多分お母さん)が気をきかせてくれたのか、駅まではお兄ちゃんが送ってくれることになった

玄関先で見送ってくれるお母さんに別れを告げ車に乗り込む

昨夜はお父さんと2人にしてくれる時間を作ってくれて、ちょっと照れくさかったけど、感謝の言葉を言うこともできた

そのせいかお父さんは朝、顔を会わせるのが恥ずかしかったのか、とっとと仕事に向かってしまってた



車中お兄ちゃんとは緊張と、この先の不安も相まってかあまり話さなかったと思う


そんな重苦しい空気だったのに駅に着いて私を降ろして帰ろうとするお兄ちゃんに我儘言って構内まで見送ってもらうことに

ホームで待つ間お兄ちゃんは意を決した様に語りだした

『俺と(私)の大学は違うからちゃんとした情報でもないかもしれないけど、大学は楽しいぞ
だけど自由な分誘惑も多い
(私)みたいに勉強ばかりで外の世界をあまり見てないヤツには刺激が強すぎることもあるかもしれないけど、道を見失わないようにしないとな』

『うん…』

『あと…』
『お兄ちゃん…』



『ん?』



『お兄ちゃんは大学楽しい?』

『まぁ、それなりにな』




『それって…彼女さんがいるから?』

俯いたまま訊いたからお兄ちゃんの顔は見ていない

だけど答える間の時間を考えると、相当面食らってたと思う





『そうだな…
それもあると思う…』


そこでアナウンスが流れる
『2番乗り場より○○行き…』


『この列車だ』

私は席を立ち乗り場へと向かう
お兄ちゃんもその後ろを着いてきてくれる

新幹線が到着して開いたドアから乗り込んだ
振り向くと笑顔のお兄ちゃん

優しくて…
カッコよくて…
頼りがいがあって…
子供の私を叱ってくれて…

大好きで、大好きで、大好きなお兄ちゃん


私は衝動的に荷物を置きお兄ちゃんの胸に飛び込んだ

『大好き!お兄ちゃん大好き!』
初めてちゃんと告白した

返事は聞かずとも分かってる
でも言わずにはいられなかった


そんな私を優しく強く抱き締めてくれた


幸せな時間を無情にも発車のベルが2人を引き離す

私はお兄ちゃんから離れ新幹線にとび乗って、閉まるドア越しに手を振る

私は泣いていた
最後に聞いたお兄ちゃんの言葉









(私)が妹で良かったよ…


No.93 15/09/07 23:22
匿名 

お兄ちゃんは彼女さんの話をしない

私に気を使っているのか?
両親に話したのかも分からない

だけど、その全てを訊いて確かめる勇気が私には無い

でも頭の中ではぐるぐる駆け巡っている

どんな人なの?
キスはしたの?
体の関係は?
結婚を考えてるの?

そんなことを考える度に心が押し潰されそうになる

そんなふっ切れない自分の為にも遠くで暮らすことを選んだ私

お兄ちゃんが遠い存在になっていく

でもその道を選んだのは私自身だ…






そしてその日はアッという間に来てしまっていた



大学も無事に合格して新居も決まり、高校も卒業して出立を明日に迎えた日

お兄ちゃんが帰ってきた

家族で行う送迎会(?)の為だ

その日は近くの料亭で皆でご飯を食べることになっていた

お母さんと初めて会ったあの料亭だ

その事はお母さんが初めに言い出した

『あれから色々あったねぇ…』

思い出話に一同が花を咲かせる

お母さんに初めて出逢いお兄ちゃんの存在を知ったけど、遂に再婚するまで会うこと叶わなかった

お兄ちゃんの反発、お互いの誤解
そしてあの事件をきっかけにだんだん家族になっていった事

お兄ちゃんへの想いが恋心だと気付き…
そして失恋…

苦しい事、悲しい事、辛い事
その度に泣いてきたけど、それ以上に笑顔をたくさんもらったこの家族
それは私の大切な宝物


『お父さん、お母さん、お兄ちゃん
今まで楽しい時間をありがとう
これからも色々心配かけることもあるかもしれないけど、頑張って立派なカウンセラーに成れるようにするから、見守っていて下さい』
そう言って頭を下げた

『何か嫁入り前みたいな台詞だな』
と言うお父さんに
『何言ってるの
私なんか(私)ちゃんに家事とか色々助けてもらって
私達こそ(私)ちゃんには感謝してるのよ
だからほら、頭上げて』
と続くお母さん

でも私は頭を上げなかった
いや、上げる事が出来なかった

私の目から大粒の涙が止めどなく溢れて止まらなかったからだ


私が選んだことは重々承知の事だか、大切な家族との別れはやはり寂しい

そんな私をお母さんが抱き締めてくれた

あの頃と変わらない大きな愛で…







No.92 15/09/06 04:54
匿名 

私の通ってた高校では3年になると、進路別にクラスが分けられる仕組みになっていた

この時すでに私はある目標があり、幼い頃の悲惨な体験でお世話になったカウンセラーの先生の様に、心に傷を持った人達の力になろうと心理学への道を選んだ

大学選びを早めに決めて推薦を狙う方針で両親とも合意

ただ目指す大学が、家からかなり遠い所だったのでお父さんからは反対されたけど、最後は私の意志を尊重してくれた


まさか私が家を離れ、遠くの大学に通うとは私自身夢にも思っておらず、その背景にはお兄ちゃんと離れて新しい生活をおくりたかったのが大きな要因

また甘えん坊で両親やお兄ちゃんに頼らずにやっていける様に自分磨きもしたかった


目標が決まってからは今まで息抜きで友達と遊びに行ってた回数もうんと下がり、ただひたすら勉学に勤しむ毎日
私だけでなくクラスの皆
いや、同学年全てがそういう雰囲気に包まれてた気がする



頑張った甲斐もあってか、夏休み明けのテストでは好成績で推薦の圏内に入ることもできた



その間お兄ちゃんとはあまり会わなかった

お盆には帰ってきてたけど、意識してあまり接しようとしないようにしていた

正直この頃になっても私はまだ、お兄ちゃんのことが好きだった

そんな中お兄ちゃんと彼女さんのノロケ話を聞けるほど、私は人間ができていない

今おもえば、お兄ちゃんがそんな話をするわけもなく、要らぬ心配だったのだが私は意地をはったのだ



推薦枠に入れたのを確認した後は、少し時間にも気持ちにも余裕が生まれ、正月ではお兄ちゃんと過ごす最後の時間と自分に言い聞かせて色々我儘言って連れ出してもらった


お兄ちゃんが運転する車中にて

『県外の大学に通うんだって?』

『うん…』

『何でまた?』

お前のせいだよ!
とツッコミたかったけどソコは我慢した

『別に…
私が行きたかった大学が、たまたま遠くにあっただけだよ』

『寂しがりのお前が?』

『もう!』

こんなやりとりも、もうすぐ無くなるのが堪らなく悲しい

No.91 15/09/02 00:28
匿名 

ショックだった

以前フラレた時はある程度予想していたことだったのだが、今回は久しぶりに会ったお兄ちゃんに消えかけていた恋心が燃え上がったとこへのカウンター

しかも自分にとってはまさかの出来事で、何の心の準備も出来ていなかったので、かなりこたえた

でも涙は出なかった
これは自分が自分なりに成長したからと思っていたのだが、そうでないことに気付いたのは数日後


お兄ちゃんがアパートに戻るまでは普通に過ごせていた

でも、お兄ちゃんが居なくなったその夜…


私は涙が止まらなかった



お兄ちゃんに恋人が出来たことは、お兄ちゃんにとってとても幸せなこと

その大好きな人の幸せを喜べない自分が、とても卑しく思えて…



いや、きれいごと言うのはよそう


単純に悲しかった

フラレたとはいえ心のどこかではお兄ちゃんと繋がっていると思ってた自分がいた

その繋りが、いつか2人を結ばせてくれるはずだと…


だけどそれは幻であり、ただ自分の独りよがりな思考だと思い知らされ…


気づけばお兄ちゃんが遠い存在になっていたと思うと、止めどなく溢れる涙を我慢することが出来なかった



後日R美ちゃんにも慰めてもらった

その日も泣いて泣いて泣きじゃくる私を最後まで慰めてくれた

こういう時、私には泣き場所がある
そう思うと少し元気が出た

いっぱい泣いたせいか、翌日からはあまり引きずることなく生活出来た







それから修学旅行を経て、さらに仲良くなった友達や、まだまだぎこちないけど、いつも挨拶程度なら何気なく交わせる男子生徒

さらには押し迫ってくる卒業後の進路

そんな充実した毎日を迎えていくうちに、私の中のお兄ちゃんは日に日に姿を薄めていく

大学の長期休みの時は帰ってくるお兄ちゃんだったけど、帰ってきても地元の友達達とほぼ毎日出かけていたので、気にすることはなかった




そしてさらに月日は流れ


私の高校生活も、後1年を余すこととなり…



私は高校3年生になっていた



No.90 15/09/01 23:32
匿名 

お兄ちゃんはベッドに横になって本を見ている

私が足元に腰かけると、お兄ちゃんも上体を起き上げた

『久しぶりだね、こうやって話すの』

『そうだな』

私にとって懐かしく、とても心休まる一時
切ない思い出もあるけれど、大事にしたい時間だ

『学校は慣れたか?』

『そりゃあ1年以上行ってりゃね』

私は新しく出来た友達や行動範囲が広がり、友達同士でカラオケやファミレスなどに行くようになったこと
そのおかげで以前より男子生徒との交流も増えたことなど、とても楽しそうに話して聞かせた

その1つ1つに優しい笑顔を向けてくれるお兄ちゃん

そこで私が以前K子ちゃん達から聞いたことをお兄ちゃんに話そうと試みた

『お兄ちゃん、あのさ…』

『ん…?』

しかし次の言葉が出ない

やはり性に関する質問はいくらお兄ちゃんとはいえ…
いや、お兄ちゃんだからこそ容易に訊くことは恥ずかしく、はしたなく思えた

何も言えずに下を向いていると
『何だよ?』
と催促するお兄ちゃん

でもさすがに言うことが出来そうになかったので急遽話題を変えることに

『彼女出来た?』




『ああ…うん、出来た』


(え?)

『………』




『………』



固まってしまった


ただ話題を変えようと、なにげに問いかけたことが、とんでもない地雷だった


『そう…なんだ…』

そう言ったまま顔をそらす

『いつから…なの?』

『ん~
ほら、いつか(私)が家に来たときあっただろ?
あの後すぐにちょっと仲良くなって、色々話すようになって…

で、この前告白されたから…』



『好きなんだ…』

精一杯の強がった笑顔で訊いた

『好きって言うか、話してみていい子だと思えたし…
これから好きになっていくんじゃないか?』



『そう…
おめでとう、お兄ちゃん』

私は部屋を出ようと立ちあがりドアへ向かった

『(私)!』

ノブを掴んだとこでお兄ちゃんが、声をかける
でも私は振り向くことが出来なかった

『大丈夫、おやすみ』

そう言ってお兄ちゃんの部屋を後にした



No.89 15/08/29 20:24
匿名 

その日を境に私の交友関係がガラリと変わった
というか、幅が広がった

K子ちゃん経由で新しい友達も増え男子生徒とも話せるようになっていった

この時まで周りの私に対する印象はガリ勉女子
恋愛にも興味が無く、また男子生徒達に至っては、例のお兄ちゃんの影への恐怖もあったらしく
『○○さんと話しただけで殺される』
みたいな噂までたってたらしい

その中でもクラスは違うが同じ方向に帰る友達も出来たことはとても嬉しかった

終業時間になっても暗くなるまで話したり、友達同士でカラオケに行くこともあった

夏休み間近になる頃には名前で呼び合えるほどに

男子生徒達とは勉強だけはしっかりしてたせいか、試験前には
『ノート見せて!』
と、声をかけられることも多く、談笑したり、教えあったり出来るまでになっていた

始めは帰りが遅くなってきた私に心配していた両親だか、(特にお父さん)毎日楽しそうに学校に通う私を見ていたら何も言わなくなっていた

夏休みに入ってもほぼ毎日補習でさほど変わらないが、午前中で終わるため友達とランチに行ったりすることもしばしば

青春を謳歌する毎日が、少しずつお兄ちゃんのことを忘れさせていく…

その事に気付いたときは少し淋しい気持ちになったけど、これは自分にとってもいいことなんだと言い聞かせていた




だか、お盆になると補習も休みで…
何よりお兄ちゃんが帰って来ることに…


玄関で出迎え久しぶりに見るお兄ちゃんはカッコ良さに磨きがかかり、忘れかけていた私の恋心を熱く燃え上がらせていく

何とか笑顔で自然に迎えれたけど、胸は締め付けられるように苦しくなっていた

その日はお兄ちゃんのリクエストで私とお母さんでお兄ちゃんの大好物を振る舞い、久しぶりに家族で楽しむ夕食では以前よりも饒舌になったお兄ちゃんに驚きを隠せない自分がいた


夜になると、隣の部屋にいるお兄ちゃんに我慢が出来なくなり、気がつけば足はお兄ちゃんの部屋へと向かって歩き出していた


コンコン
『お兄ちゃん…』

『ん?』

ガチャ
『入っていい?』

『何?』

『ちょっとお話ししたくて…
疲れてる?』

少しビックリしたようだが、すぐに笑顔に変わり迎え入れてくれた

No.88 15/08/28 18:51
匿名 

私の質問内容が性に関するものだったので、始めK子ちゃんは驚きと戸惑いの表情を浮かべた

答えに戸惑うのは当然のこと
私とK子ちゃんはそんなに親しい仲ではない

逆の立場だったら私も躊躇するだろう

それでもK子ちゃんは1つずつ答えてくれた

K子ちゃんと彼氏は既に経験済み
やはり求めてくるのは彼氏から
同年代の男の人が皆そうかは分からないけど、彼氏が言うには周りの友達との会話は異性の話題が多いとのこと

Hな本やAVは殆どの人が見ている
又は持っているはず

お兄ちゃんの部屋は殺風景だったから隠す場所も無かったと思うけど、それでも持ってたのかなぁ…

1度一線を越えると行為はエスカレートしていく
自分も興味があることならばそれでも構わないけど…
ちょっと引いちゃうことでも、彼氏のことが好きだから応えちゃうらしい

だから(私)ちゃんは焦らずに性のことは真面目に考えたほうがいいよと言ってくれた


因みに詳しい内容を聞いたけど…
当時の私には理解し難い内容だったので、そっちの方のアドバイスはあまり役に立たなかった

チラリと時計を見てみると20時を回っている
さすがに長居しすぎた

『今日はありがとう、色々勉強になった
また相談に乗ってね』



K子ちゃんと別れ急いでバスに乗り込む

バスに揺られながら今日の話を思いだし自分なりに整理していく

お兄ちゃん以外の男の人と殆ど話したことがない私にとっては目から鱗の連続であり、男の人を理解する上で、とてもいい話が聞けたと思う

お兄ちゃんはどうなんだろう…?
私に少しはそういう感情があったのかな?

そう思うと急にお兄ちゃんに会いたくなった
でも家に帰ってもお兄ちゃんはいない

その現実が私の胸を締め付ける


私はまだお兄ちゃんが好きみたい…
1度芽生えた恋心は簡単には枯れてくれなかった


No.87 15/08/13 21:19
匿名 

ただR美ちゃんの言うことを鵜呑みにすることは出来ない
別に信用してない訳ではなく、こういう話しを出来るのは今のところR美ちゃんだけ
つまり視野が狭すぎるのだ

でも他に相談出来る人は…
両親とか絶対無理だし、かと言って周りの友達にも話す勇気なんかない
というか、私と同様な気がする
近すぎず遠すぎない人がいい


となると…
不意に1人の人が頭に浮かんだ

クラスメイトのK子ちゃん
まだK子ちゃんと呼べるような仲ではないが、1年の時から同じクラスで何度か話したことがある

K子ちゃんはちょっとぽっちゃりで少しスローな女の子
それになんと言っても同年の彼氏がいる

彼氏がいる子は他にもいるが、ちょっと話し辛い
彼女なら何とか相談出来そうな気がした


そうと決まれば早速…
と思ってたら中々話しかけるきっかけがつかめず、気がつけば通常授業を終えて、補習も終わり下校時間となってしまった

もう背水の陣となり意を決して話しかける

『あの…!○○さん!』

『ん?あ~(私)ちゃん、どうしたの~』

『ちょっと話したいことがあって…
いつか時間もらえるかな?』

『別にいいよ、何なら今からでも』
ちょっとビックリしてたみたいだけど、快く受けてくれた

K子ちゃんとは家は反対方向だけど、乗るバス停までは一緒だからそこまで歩くことに

でも、周りの目(耳)が気になり中々切り出せないでいると
『何か美味しいものでも食べない?』
と言ってきたので、その提案にのることに

家に電話して(留守電だけど)遅くなることを伝えたあと私達は近くのファミレスに入った

勿論校則違反なのでドキドキしたんだけど、K子ちゃんはたまに通ってるから大丈夫だと言って席に着く

『ちょうど小腹がすいてたんだ~』
そう言ってパフェを注文するK子ちゃん
私は詳しく覚えてないけど、飲みものをたのんだ

『何かビックリ、(私)ちゃんとこうやって話すの久しぶりだね~』

『うん…』

『何か深刻なこと?』

『うん…私にとっては…かな…』

終始笑顔のK子ちゃん
その顔を見てたら徐々に緊張がほぐれていった

『何か嬉しいなぁ~(私)ちゃんから相談されるなんて…
何でも言ってね』
その優しさにつられて私もやっと切り出せた

『あのね…』

No.86 15/08/12 20:12
匿名 

『お兄ちゃん』

『んん?』

『後は煮込むだけだから、1時間くらいしたら火を止めて、これとこれを入れてかき混ぜて』

『帰るのか?一緒に食べてけばいいのに』

『そうしたいけど、遅くなっちゃうし明日学校だから』



帰り仕度も終えて玄関先で見送るお兄ちゃんに
『じゃあ体に気をつけてね、それと…
また来てもいい?』
と訊くと、ちょっと皮肉めいた笑いで
『そんなしょっちゅうじゃなかったらな』
と返す

もう!と少しふてくされた顔をすると、真面目な顔で
『気ぃつけて帰れよ』
と心配してくれた

最終的にはお互い笑顔で、今日来てよかったと心から思った




数日後、学校からの帰り道に、偶然R美ちゃんに会った

そのままR美ちゃんの家におよばれしてお互いの近況報告

勿論この前の出来事も話す
するとR美ちゃん
『もう、そんなんなら既成事実作ってしまえばいいのに!』

ん?

当時まだウブだった私には理解できず、詳しく尋ねると、R美ちゃん今度は小声でゴニョゴニョ話して聞かせる

すると、バッと顔を上げ赤面し(てたと思う)
『そんなん出来るワケないじゃん‼
…そんなん出来るワケないじゃん‼』
なぜか2回言ってしまった


『でも(私)ちゃん、もしお兄さんが求めてきたらどうするの?』

『お兄ちゃんそんなことしないもん』

『だから、もしよ…』

そんなこと考えたこともなかった

R美ちゃんの話だと、年頃の男の人ってそういうことで頭が一杯らしい
もちろんお兄ちゃんも例外ではないって言ってるけど、そんな素振り見たこともなかった


性に対しての知識が全く無かったので今まで気にしてすらなかったけど、男の人と付き合うのにはそういう覚悟も必要なのだとその時初めて知った

恋愛の小説やマンガはよく見てた(性の描写が無いやつ)ので、実際の恋愛もあんな綺麗な世界観だと思ってた私にはショックだった


今まで周りの友達とそういう話しになっても性に関する話題はあまり無かった


中学生の頃、異常だと思ってた(ボス女)さん達との会話が、実はそんなに間違ったことでもないことにも気付かされた


No.85 15/08/11 23:44
匿名 

お兄ちゃんと2人だと会話が続かないと思ってたら、久しぶりということもあり私も饒舌になっていた

そうこうしていると、お腹も減ってきたので約束通りご飯を作ることに

取り敢えず冷蔵庫を見てみると…
酒ばっかり…

『お兄ちゃん!いつも何食べてるの!?』

『ほぼ外食…あとバイト先の賄いとか
たま~に弁当作ってくれる奴もいるし』

『相変わらずモテますこと』

ともかく材料が全く無いので買い出しに行くことにした
最低限の調味料や調理器具はお母さんが1人暮らしを始める際に持たしていた

『近くにスーパーある?』

『あるけど、俺も行くの?』

『当たり前でしょ!』

渋るお兄ちゃんの手を引きスーパーへ連行
大学の近くにあったせいか、お兄ちゃんの知り合いにも遭遇、その都度紹介される

その内数名からは、彼女?と言われ少し照れたりもしたが、食いぎみで否定するお兄ちゃんに腹も立ったりした

『こんなに要らないだろ!』

『もう煩い!』
こうやってお兄ちゃんと言い合うのも久しぶりで楽しい
いちいち文句を言うお兄ちゃんも笑ってた

買い物も済ませて帰ると早速料理開始
本当は健康の為にも和食を作りたかったけど、時間がかかるので野菜たっぷりの冷製パスタを作る

まだか?まだか?煩いのでお兄ちゃんだけ先に食べさせることにして私は夕食の用意にも着手

『何してんの?一緒に食おうぜ
まだ何か作ってんのか?』

台所に立つ私を覗き込むようにお兄ちゃんが後ろに立つ

この位置取りはマズイ、ある種トラウマだ

『もう、夕食にお兄ちゃんの大好物作ってんだから邪魔しない!』

そう言って食べるように促すが、私の後ろから離れようとしない
(普段勘鋭いんだから気づけよ!)

ラチがあかないので、一旦手を止めて一緒に食べることに

『旨い!久しぶりに(私)の料理だべるけどやっぱり旨いな!
(私)、いいお嫁さんになるよ!』


『…お兄ちゃんの口からそういうこと聞きたくないなぁ』

『ん?…ああ、そうか…ごめん…』
(こういうとこも鈍い)



食べ終えるとお兄ちゃんは大学の課題(?)、私はまた料理に取りかかる


3~40分もすると、あとは煮込むだけとなったので、私は帰り仕度を始めた


No.84 15/08/10 22:44
匿名 

お兄ちゃんが家を出て数ヵ月

お母さんはたまに電話してたが、ほとんどつかまらない
つかまっても
『ああ…』
『今忙しい』
『鬱陶しい、もう切るぞ』
と、まともに話せない

1度私に代わってもらった時は、いつもの優しいお兄ちゃんだったけど、相変わらず会話が続かずすぐにお母さんにバトンタッチ

そんな中、お母さんが1度様子を見に行くと切り出す
勿論お兄ちゃんはこれを拒否
それでも(私)ちゃんとご飯作りに行くからと言うと、渋々了承

その日お母さんは仕事が入ったから(私)ちゃん1人で行ってきて
と無茶ブリ

お母さんの笑顔を見て最初からそのつもりだったと気付く


そんなこんなでバスと電車に揺られること2時間、お兄ちゃんの最寄りの駅に到着

到着時間は知らせてたからお兄ちゃんが来てくれる手筈
ちなみにお母さんが来ないことは言ってない


しばらくすると、気だるそうにお兄ちゃんがやって来た

『あれ?1人?』

『うん…仕事が入ったからって…』

しばらく目を瞑り考えた後、険しくなった顔で
『まぁいい、行くぞ』
と、先導して歩く

(怒ってる?)
終始黙ったまま後を着いていく私

お兄ちゃんの住んでるアパートは2階建ての1K

部屋は一緒に住んでた時と同じく殺風景
取り敢えず中に入り机の前にチョコンと座ると、お兄ちゃんがジュースを出してくれた


そして対面に座るやいなや
『で、母さんにはどこまで言ったんだ?』

『えっ?』
最初何の事かわからなかったが、お兄ちゃんの険しい顔を見てるとすぐに理解した

『あの…言ったというか…勘づいてて…
何とか誤魔化そうとしたんだけど…』

『出来なかったんだよな!?』
最後はお兄ちゃんの怒りの声で締められた

『ごめんなさい…』

『親父さんは?』

『一応言わないでって言ったけど、お母さんが勘づいてるならお父さんも多分もう…』


この時既にお兄ちゃんの家に来たことを後悔していた

久しぶりに会うお兄ちゃんと楽しい時間が過ごせると思ってたのに出鼻を挫かれるとは思ってもみなかったから…


でも、お兄ちゃんはフーっと大きくタメ息をつくと、優しい笑顔に変わり私の頭を撫でてくれた

No.83 15/08/09 22:10
匿名 

その心の隙間を埋めてくれたのがお母さんだった

お兄ちゃんが家を出て私が1人で家にいることが多くなったから出来るだけお母さんも早めに帰宅するようにしていた

お父さんは相変わらず帰宅時間が遅くなる為、お母さんと2人で夕食をとることが普通になっていく


そんなある日…

お母さんと一緒に夕食の後片付けをしていたらお兄ちゃんの話題になっていた

私がお兄ちゃんとの思い出を楽しく話していたらお母さんが急に神妙な顔をして
『ねぇ…(私)ちゃん…
あの…前から思ってたんだけど…

あっ別に答えたくなかったら答えなくていいからね』

『えっ何?』
いきなりの態度に身構えてしまう

『あの…さ…
(兄)のこと…どう思ってる…の…?』

『え?』


ビックリして食器を拭く手が止まる

『どう?って…』
すぐに何か返さなきゃと思えば思うほど言葉が出てこない

色々頭の中で言葉を巡らせたが、既に言い訳出来ないほどの沈黙が流れ、それが答えを表していた

『ごめんね変なこと訊いて』
私は居たたまれなくなり、食器を置き急いで部屋に戻っていた



しばらくしてお母さんが部屋に入ってきた
そして布団にくるまり身を縮めた私に話しかける

『(私)ちゃんさっきはごめんね、ただ勘違いしないで、別に反対してる訳でも怒ってる訳でもないから…
むしろ…嬉しい…かな…』

思いがけない言葉にヒョコっと頭を出しお母さんを見る
出会った時から変わらない優しい笑顔

そんなお母さんを見てたら警戒心などとっくに無くなっていた

『好きなんだね(兄)のこと』

私はコクンと小さく頷いた

『反対はしないよ、反対はしないけど…
あの子は…手強いよ~』



『うん…分かってる…
私、1回フラれてるもん…』


………。



お母さん、口を半開きにして固まる

お兄ちゃんを好きだということよりも、そっちの方にビックリしてたみたい

『そう…なの…』



お母さん曰く
当時の私は恋愛に興味がなく、告白する度胸もないと思ってたらしい


まぁ、毎週ドラえもんを楽しく見てたから、実年齢より幼く見えて当たり前だけどね


その後お兄ちゃんのことを色々話した


そして最後にお父さんには秘密にしておいてほしいと言うと、勿論言わないけど私が勘付いてるなら、お父さんも勘付いてると思うよと言われた

No.82 15/08/09 19:37
匿名 

その後、両親への罪滅ぼしのためか進学することに


元々負けん気だけは強かったお兄ちゃんだったので、一度そういう目標が出来ると勉強第一の生活に変わり、いつもやってたジョギングにも単語帳を手に行くほどの変わりよう

たまには息抜きでお仲間さん達と遊びには行ってたみたいだけど、その数は激減
私も近寄りがたくなってしまうほど集中していた

さすがに国立のセンター試験には間に合わなかったけど、成績はうなぎ登りだったらしく何校かは射程圏内に入るほどに

そこで問題が…

まだ、自分の将来の目的(職種)が定まっておらず、どの大学に標準を合わせればいいのか悩んでいた

『無駄な金は使わせたくない、職種によっては大学じゃなく専門学校でもいいかもしれない』
と言うお兄ちゃんに対し
『取り敢えず大学に入って決めれば?
私達もそうだったから…』
と、助言する両親

すると
『そんなんだから変なの(異性)に引っかかんだよ!』
と、きっつい返し

そんなこんなでようやく志望校を絞り、それに邁進していき、その努力が報われ合格通知を手にすることが出来た


ただ、入学する大学は同県だけど、家から通うにはちょっと無理があるので、当初お兄ちゃんが言っていたように家を出る形になった


下宿先も決まって引っ越しも済ませてお兄ちゃんが家を出る日

その日はお兄ちゃんの先輩が車で送ってくれることになってたので、私達は玄関でお見送り

部屋から出たお兄ちゃんの背中に額をつけて
『頑張ってね』
と声をかけると、反転して私の頭を抱き寄せながら
『お前も頑張れよ、じゃあ行ってくるから』
と、その後両親にも別れを告げ行ってしまった


私も2年生になり、友達も増えて高校生活を謳歌していく

でも、家に帰るとお兄ちゃんはもういない…

失恋したての頃はお兄ちゃんがいることが苦痛になってた時期もあったけど、独りでいる家はやっぱり寂しいく、心にポッカリと穴が空いていた…

No.81 15/08/04 00:20
匿名 

翌日お兄ちゃんとお母さん、担任の先生、生活指導の先生で相手宅へ謝罪

相手側本人たっての希望で面会することに

そこで相手本人が、このケンカは自分がけしかけたこと

お兄ちゃんに落ち度はないから学校としての処分はしないでほしいとのこと

その後、お兄ちゃんと2人で話したいと言ってきたので数分間2人にすることに
(親御さんは反対したが、押しきったらしい)

で、お兄ちゃんと和解



これにて一件落着
…とはいかず

相手側は被害届けを出さなかったため警察沙汰にはならなかったみたいだが、学校側はこの事を重く受け止め、お兄ちゃんに反省文と…


ププ…


丸坊主で謹慎解除

お兄ちゃんはもちろん丸坊主になるなら学校止める!と言い退けたけど、卒業間近でそんなこと通るはずもなく床屋じゃなく学校にてバリカン制裁

お兄ちゃん…
ププ…
見事に丁稚奉公に…

家に帰った時は私終始半笑い
本人もヤケになり
『(頭に)絵でも書くか?』と…

まぁ、両親にはかなり心配かけたのを反省したみたいで、しばらく勉強に専念して進路を大学進学すると決意
(元々そんなに成績悪くなかったみたい)




そして髪の毛が、少し生えてきた時お兄ちゃんと2人で話す機会があった



実は警察に身柄を拘束され両親が呼ばれた時、お父さんがお兄ちゃんを殴ったらしい

これには私も信じられなかった

その時既にどうにでもなれ常態のお兄ちゃん、お父さんに詰め寄る

そこでお父さん一喝
『守るんじゃなかったのか!』
お兄ちゃんたじろぐ

『(兄)君がいなくなったら誰がお母さんや(私)を守るんだ!』

以前お兄ちゃんとお父さんは2人で居酒屋で酒を酌み交わしたらしい

私はこれにもビックリ

そこで私(お父さん)が居ない時は(兄)君がお母さんと(私)を守ってやってほしいと頼まれたとのこと

その後も本当に守るということ、本当の意味で大人になるということをお父さんなりに話す

そのことに深く感銘を受けたお兄ちゃん
『今までいろんな先生からそういうことで説教受けたけど、一番堪えた…な
すげえなお前のお父さん…』
と言ってくれた

No.80 15/08/03 22:12
匿名 

その日、私が帰宅すると全員が帰宅していた

時刻は18時
こんなことは初めてだ

中に入ると3人ともリビンクに…
雰囲気からして普通じゃなかった

お父さんは腕を組み険しい表情

お母さんは頭を抱えて項垂れている

お兄ちゃんも恐い顔で一点を見つめている


私は場の空気に耐えられずに自分の部屋に入る


鞄を置き部屋着に着替えた頃お母さんが部屋にやって来た

『お腹すいたでしょ、お母さんちょっと疲れちゃったから出前でもとろうかって』

『私作るよ』

『いいわよ、(私)ちゃんも勉強大変でしょ
お寿司にしよっか?』

声は明るめだったけど無理してるのが分かる

私が頷くとお母さんは下へ降りていった


1時間くらししただろうか出前が届き皆一同リビンクへ
そこでお母さんがお兄ちゃんに何やら促す

お兄ちゃんはうざったそうに
『後で言う!』
と言い放つ


通夜のような夕食が終わった後、お兄ちゃんから呼ばれて部屋に行く

お兄ちゃんの部屋に入るのはあの日以来だ

今日は違う意味でドキドキしてる

お兄ちゃんはベッドに腰掛け私は立ち尽くす

『何かあの日と一緒だね』

『そう…か?そうだな…』

ようやくお兄ちゃんに笑顔がでる


『ごめん…な…
(私)とも約束してたのに守れなかった…』

『えっ…?』

夕食の時は恐くてお兄ちゃんの方を見なかったから気付かなかったが、お兄ちゃんの両拳が血でにじんでるのを見て瞬時に悟った


お兄ちゃんの話だと
相手からふっかけてきたケンカだったらしいが、連日の鬱憤も溜まっていたせいか、やり過ぎてしまい相手は気絶、そのまま救急車で病院送り

そうなると現場が外だったので警察が介入することに
学校に連絡がいきその後両親の会社へ連絡がくる

一応身元引き受け人が来たので釈放、学校の先生と両親で相手方の病院へ謝罪に行くが門前払い

仕方なく帰宅
そこで4者面談

学校側は、相手の出方で処分を決定するとのこと、それまでは自宅謹慎


さすがに進路決定前なので、この事が後にひびくことも覚悟してくれとのこと



さすがにこれには呆れてしまった

No.79 15/08/03 20:08
匿名 

数日後、R美ちゃんに結果報告

初めは笑顔で聞いていたが、失恋したことを話すと急に顔がこわばる…
『ごめんなさい、私がけしかけたから…』

『そんなことないよ、私が自分の意志でしたことだから』

そこまで言うと抱きしめられた
そして
『今日はウチに泊まり!』
と言ってくれた


少し考えたが明日は補習も休みだし、何よりお兄ちゃん一緒にいるのはやっぱりまだ辛かったから泊まることにした

家に戻ると誰も居なかった為、お泊まりの用意を済ませて置き手紙を書く

R美ちゃんは近所だし、お父さんとも面識があるから大丈夫だろう

一応R美ちゃん家の連絡先も書いて家を出る


夕食はR美ちゃんのお母さんが作ってくれた
お母さんとは小さい頃よく遊んでいた時以来だからたいそう懐かしんでくれ、歓迎してもらった


その後R美ちゃんと夜中まで色々話した
話題はやはりお兄ちゃんのこと

先に話した内容は、失恋した経緯だけだったからあらためてお兄ちゃんとの思い出を話すと、やっぱりまだお兄ちゃんのこと好きなんだなぁと、しんみりしてしまう

ふとR美ちゃんを見ると泣いていた

『ごめん、私が泣いちゃダメだよね』

その顔を見てたら私も泣けてきた

その後2人抱き合ってワンワン号泣
お兄ちゃんに失恋して初めて泣いた


多分悲しかったと言うよりも、私のために泣いてくれる人がいることが嬉しかったんだと思う




それから月日は流れ…

夏休みも終わりまだまだ残暑厳しい中、我が家ではお兄ちゃんの進路の話でもめていた

卒業と共に家を出て働くと言うお兄ちゃん
進学を勧めるお母さん
家を出ることを第一に考えてたお兄ちゃんに、進路が決まった後住む場所を決めては
と言うお父さん


私はやっぱりお兄ちゃんとは一緒に居たかったので、進路云々よりも家を出ることに反対だった

…けど、私の意見などこの場では無いも同じ

初めは穏やかだったけど、徐々にヒートアップしてきて…

やはりお母さんとお兄ちゃんが、どっちも譲らずの攻防
お父さんはなだめ役に徹していた


そんな日が何日も続き、お兄ちゃんのイライラは目に見えて分かるように…

私は恐くて話しかけることも出来ない




そして…


事件はおこった…

No.78 15/08/02 11:56
匿名 

不思議とあまりショックは受けなかった

ある程度予測していたからなのだろうか、笑顔で頷けた

酷い言葉で断られることも少しは考えていたけど、お兄ちゃんはちゃんと誠意ある態度で答えてくれたのが少し嬉かった


『ありがとう、ちゃんと聞いてくれて
張りつめてたから何だかホッとしちゃった』

『うん…』

お兄ちゃんはうつむいたまま返事をする

私はお兄ちゃんに近付き両手を取り引っ張りこんだ

『お兄ちゃん、立って』
言われるがままに立ち上がるお兄ちゃん


『お兄ちゃん、お願い…
もう1回だけでいいから、抱きしめて…

それだけで…頑張れるから…』

自分でもビックリするくらい普通に言えた
まぁヤケクソというか、失うものはないという考えからなのだろうか、いつもの自分とは考えられないほど大胆になれた


『本当に大丈夫か?』

『うん、これで最後、もうこんな我儘言わないから…』

そう言うと、お兄ちゃんは私を抱き寄せてくれた
私もそれに身をあずける

お兄ちゃんの胸に耳をあてると鼓動が聞こえた


凄く幸せ…


いつまでもこうしていたい…


お母さんから抱きしめられた時とはまた違ったやすらぎをおぼえる

しがみつく私の腕にも力が入る
するとそれに応えるかのようにお兄ちゃんも強く抱きしめてくれた




『お兄ちゃん…大好き…』


お兄ちゃんは何も言わなかったが、私の頭を撫でてくれた

私はお兄ちゃんの顔を見れないでいた
もしこの状況で見つめ合いでもしようものならキスまでせがんでしまいそうだったから


そこまではお兄ちゃんも応えられないと思う


私は腕に入れてた力を緩め、またお兄ちゃんの両手を掴んで距離をとる

『ありがとうお兄ちゃん、これからも妹として仲良くしてね
私も兄として見れるように努力する』

『分かった』

『じゃあね…』


そうして部屋を出る

最後までお兄ちゃんの顔は見れなかったから、お兄ちゃんがどんな表情をしていたのかは分からないまま…


それでも後悔はなかった…

想いは成就出来なかったけど…

とても幸せなひとときだった…




ありがとう…


お兄ちゃん…

No.77 15/08/02 00:09
匿名 

私は意を決し
『ただいま~!』
玄関のドアを開けた
…はずだった

『おお、おかえり』
目の前にお兄ちゃんがいた

とっさに目をそらし、そそくさと部屋に向かう
自分でも赤面しているのが分かるくらいに顔が熱い


無理無理無理無理…

絞り出した勇気もどこへやら
既に戦意はなく、目を見開いて固まっている自分が情けない



うん、明日にしよう
そう自分にいいわけする

その後、夕食の準備が出来たとお母さんの呼ぶ声に下へ

夕食の最中はお母さんに色々話題をふり、出来るだけお兄ちゃんとの会話をしなくてすむ方向へ
お兄ちゃんもその事に気付いていたのかいないのか、自分から話題をふってくることはなかった

でも、そのままお兄ちゃんを無視してたらお母さんも不信がるはず
お兄ちゃんとも話さないと…

無理無理無理無理…


顔を見るだけでお腹一杯
ヘタレな私…

早々と夕食を済ませて部屋に戻るお兄ちゃん
ホッとする私


私も夕食を済ませてお母さんと一緒に後片付け
そして部屋に戻る

と、いきなりお兄ちゃんの部屋のドアが開き中へ連れ込まれた



手を離すとベッドに座るお兄ちゃん
私は突っ立ったままだった


『何…?』
おそるおそる訊いてみた

『それはこっちのセリフだ』

お兄ちゃんの言わんとしてることは理解してるつもり
でも私は何も言えず、ただ時間が流れていく



『お兄ちゃん…気付いてる…でしょ?』

『何を?』

『私の…気持ち…』


しん…と静まりかえる部屋

お兄ちゃんは険しい表情を浮かべている

その顔を見たら何かふっきれた

『ごめんね、気持ち悪いよね
妹から好かれたって
でも安心して、別に付き合いたいとかそんなんじゃないから
時間が少し必要だけど、お兄ちゃんを困らせることはしたくないし、また普通に戻れるから』
自分でも驚くほど笑顔で言えた

お兄ちゃんも少し驚いていた

『いや、気持ち悪いってことはないよ
(私)は俺の中で一番近い異性だし、大切な家族だから…』

『家族…』

『そう、家族…
だから…その…女性としては見れない…』

No.76 15/07/30 22:36
匿名 

私は今までの経緯をたどたどしく話し出す

途中、言葉を選びながら話していると
『もう…全部話しちゃいなよ、その方がスッキリするよ』
と言ってくれたので、包み隠さず全部話した

それだけで心のつっかえが少し取れた気がする
内容が内容なだけに、誰にも相談することが出来なかった私をR美ちゃんが救ってくれたのだ





『そう…お兄さん一度見たことがあるよ
(私)ちゃんと一緒にいた所
話だけ聞いてると、噂みたいに怖い人じゃないみたいね』

そう言えば、R美ちゃんからもお兄ちゃんに会わせてほしいと頼まれたのを思い出し、無神経な話だよねと言ったけど
『ああ、そんなこともあったね
でもただの興味本位だったから気にしないで』と笑ってくれた



『で、(私)ちゃんはどうしたいの?』


そこで改めて事の本質に気付く



別に付き合いたいワケじゃないって言ったら嘘になる
ただ、そうすることによって今の関係が崩れてしまうのが何よりも恐い

しかし、すでに賽は投げられている
お兄ちゃんは私の気持ちに気付いているはず
だからお兄ちゃんに会うことが…
お兄ちゃんと話すことが…
恐い…


『だったら、ちゃんと言った方がいいよ
そんな中途半端じゃお兄さんもどうしていいか分からないと思うから』

『うん…』

『それに…後、半年しか無いんだよ…』



ハッとした


R美ちゃんの言う通りだ


壊したくないと思っていたこの生活も長く続かない
だから、たとえダメでも別れて暮らせばいつかはいい思い出になるだろう


『R美ちゃん、ありがとう
相談して楽になったし勇気も湧いてきたよ』

『そう、良かった!』


気付けば辺りはかなり暗くなってる
2人共時計を持ってなかったが、今の季節でこの暗さはかなりの時間が経っていることは容易に推測できた

『帰ろっか!』

『そうだね!』



別れ際どんな結果になろうとも必ず報告することを約束して家路についた






そして決戦の時を迎える

No.75 15/07/28 23:14
匿名 

翌朝、お兄ちゃんとの関係がギクシャクしていた

お兄ちゃんはいつも通り接していてくれたのだが、私の方が過剰に反応してしまう

後から教えてもらったのだが、お兄ちゃんと目が合う度に顔が真っ赤になりそそくさと離れていったようだ

お兄ちゃんは私の気持ちに気付いているはず
でも、お兄ちゃんの気持ちは?

それを確かめる勇気などあるはずもなく、モヤモヤとした時間だけがすぎていく

学校でも考えるのはお兄ちゃんのこと
こんな私に何も頭に入ってくる訳もなく、気分が悪いと言って帰らせてもらった

補習をサボるなど今まで無かったし、自分がその様な行動をとるとは考えられないことだった


家に帰るとお兄ちゃんはバイトで居なかった
何故かホッとする自分がいた

家に居ても何もする事がないので気晴らしに以前お兄ちゃんと行った公園まで足を伸ばすことにした



公園のベンチに腰掛け、ただボーッと時間がすぎていく

どのくらい時間が経ったのか、辺りは夕焼け色に染まっていた

そんな私に声をかけてきたのがR美ちゃん

R美ちゃんは犬の散歩の途中で、一度私を見かけたけどその時は素通り

で、暫くしてまた同じ所を通ったらまだ私がいるし何やら深刻そうな感じだったので声をかけたとのこと

彼女と会うのは卒業以来
わりかし近所に住んではいたが、高校も違うしたまたま会う機会もなかった


『どうしたの?』

私は何も答えることが出来なかった

するとR美ちゃんは隣に座り、心配そうに私の手を握ってくる

『私は一度(私)ちゃんに助けてもらったから、出来るだけ(私)ちゃんの力になりたい
よかったら何でも言って』


『ありがとう』
そう言って少し微笑んだ

私は今まで恋愛に臆病な方で、友達ともあまりそういう話をしたことがない
故にいざ自分がそういう立場になったらどうしていいかわからず、周りに相談できる相手も居なかった

その事に気付いた時、とても自分が虚しく感じていたのでR美ちゃんの言葉は正直嬉かった


暫く考えた後、R美ちゃんに甘えてみようと思うようになっていた

『誰にも言わない?』

『もちろん』
後から聞くとR美ちゃんは自分に頼ってくれるのが嬉かったらしく、笑顔で答えてくれた



『あのね…』

No.74 15/07/28 00:26
匿名 

夏休みに入り、私は夏季補修、お兄ちゃんはバイト
去年とさほど変わらない生活を送っていた



その日は両親共帰りが遅くなるとのことで私が夕食を作ることに

学校の帰りに買い物を済ませて早速準備に取りかかる
お兄ちゃんはバイトが休みだったらしく、前日はいつもの仲間達と遊びに出かけて午前様どころではなく、朝日と共に帰ってきた

『お兄ちゃ~ん、ご飯出来たよ~!』


数分後、寝ボケ眼のお兄ちゃんが降りてくる

『今まで寝てたの?』

『ん…?んーん』

首を降り否定するが一目瞭然
そのまま食卓につく

お兄ちゃんと2人で食事をとるのは久しぶり
緊張するが、そんな素振りを見せないよう必死で努めた


食事も終わり後片付けをする私
お兄ちゃんはテレビを見ている
…はずだった



台所で洗いものをしていた私の髪を不意にお兄ちゃんが手でとかす

ビックリした
ビックリしすぎて固まっていた

お兄ちゃんに髪を触られているこの状況にドキドキが止まらず気持ちが高揚し続ける

お兄ちゃんは何も言わず私の髪を束ねシュシュを着けた

『ハイ、プレゼント』

そう言って私を覗きこむ
…と、お兄ちゃんもビックリして固まった

私が今にも泣き出しそうな顔でお兄ちゃんを見ていたからだ

もう抑えきれなかった
そのまま思わずお兄ちゃんの胸に頭を付けうなだれる

お兄ちゃんが私の頭を撫でてくれる

そのまま流れるようにお兄ちゃんに抱きついていた
体ごしにお兄ちゃんの緊張が伝わる

『どうした…?』

私は答えなかった
そのまま数秒間経った後、再び頭を撫でてもう一度
『どうした…?』
と訊いてきた

その直後にゆっくり離れ
『ごめんね』
と、呟いた


お兄ちゃんの顔は見れなかった
見たら自分が次どのような行動にでるか分からなかったからだ



そして台所に振り返り再び洗いものを始める

お兄ちゃんも何も言わずにその場から離れていった





凄く幸せな数秒だったが、私はひどく後悔した
鋭いお兄ちゃんだ、私の気持ちに気づいたはずだ
ひょっとすると前のような関係には戻れないかもしれない…



そう思うと…




我慢できなかった自分に憤りをおぼえる自分がいた






No.73 15/07/27 23:27
匿名 

翌日私は起き上がるとトイレに直行
ゲーゲーもどした

さらに音を聴くだけでもひびく頭痛
お母さんが謝りながら看病する

お兄ちゃんも心配して来てくれた
が、お母さんには火に油

『お母さん、そんなに怒らないで
いい気分転換になったから
…て言うか、大声だすと頭が…』



帰宅したお父さんも来てくれた
これにはさすがにお兄ちゃんも怒られると思ったそうだが、最初はビックリしてたけど、笑ってたらしい…


『全くウチの男共は…!』
お母さんは呆れてたみたいだけど…






その日から私の中でお兄ちゃんが特別な、より大きな存在になっていく

以前読んだ恋愛小説やマンガで、血の繋がりがない兄妹は結婚できるとは知っていたが、そんなに上手くいくワケがない

お兄ちゃんが優しいのは特別な意味などなく、私が妹だからだ

諦めなきゃ…
いつもそう思っていた

だけど、壁の向こうにはいつもお兄ちゃんがいる
その事実が私をより一層苦しめる

好きな人といつも一緒に居られるなら幸せだと思う人もいるかもしれない

でも普通はそうなる状況ではお互い気持ちが通じあってる時だろう

片想いの同居は蛇の生殺しだ
気持ち悪いと思われるかもしれないが、お兄ちゃんの部屋側の壁にいつもピトってくっついて寝ていた

一度自覚してしまうと、その気持ちを悟られないようにするのが大変だ

私はすぐ顔に出るみたいで分かりやすいらしい

自然に振る舞うのが難しかった

それでも自分を騙しながら何とか日々暮らしていた



けど…



ついに抑えていた感情が…



溢れ出してしまった…



それは耳をつんざくほどの蝉の合唱が鳴り響く暑い夏の出来事…


No.72 15/07/25 00:01
匿名 

『では、(私)ちゃんの誕生日を祝ってかんぱ~い!』

今度の乾杯は躊躇なく輪に入る
お酒のせいか、気分も高揚し場にも慣れてきた

『楽しいか?』

不意にお兄ちゃんが訊いてきた

『うん!』
満面の笑みで答える

お兄ちゃんはちょっと複雑な顔をしていた
その意味を知るのは帰り道の時






それからは私の隣に色々な人が座る
K岡君やM樹さんともしゃべった

お兄ちゃんがいなければ知ることの無かった世界観がここにはあった


宴も酣となった時には酔いが回り、真っ直ぐには歩けないほどになっていた

皆から支えられ外へ出る
夜風が気持ちいい
酔っぱらい初心者の私は何故か大声で叫びたくなる
が、僅かに残っていた自制心がそれを止めた

皆とはそこで別れ、お兄ちゃんに支えられながらタクシーに乗り込み帰路につく

タクシーの中ではお兄ちゃんの腕にしがみつき幸せな時をすごしていた


『あっ、その辺で結構です』
いきなりの言葉にお兄ちゃんもビックリしていたが、私が
『ちょっと歩きたい』
と言うと、それに付き合ってくれた


『(私)から見ると、アイツらは不良だろ?
まぁ実際そうなんだけど、そんなに悪いヤツラでもないんだよ』

『うん、最初は戸惑ったけど楽しかったよ』

『そうか、なら良かった
最近何か元気なさげだったからな、少しは気分転換になればいいと思ってな』

普段はあまり私に関心なさげだったのに、心配してくれたことが嬉かった
多分、この嬉しさは恋心もあるのだろう

『凄く居心地が良かった、また連れてって』
と、言うと
『いや、もう誘わない…』

さっきまでの優しい顔が少し険しくなった

『居心地がいい分のめり込み易いんだよ
(私)はそこにはまっちゃダメだ
お前は真面目なままでいろ
俺達のようにはなるな』

お兄ちゃんはお兄ちゃんなりに私のことを真剣に考えてくれていた
居酒屋で見せた複雑な顔の正体を理解出来た気がした

それがまた大人を感じさせ、好きな気持ちを増幅する





帰りつく頃にはお母さんも帰宅しており、酔っぱらった私を見た途端に般若と化す


その場をなだめ私を介抱するが、私が眠った後、お母さんからメチャクチャ怒られたらしい…





でも、本当に嬉かったよ
ありがとうお兄ちゃん




No.71 15/07/23 23:14
匿名 

飲みものが運び込まれ、それぞれがグラスを持つ

改めて見てみると、怖そうな人もいたが普通の高校生
その中に女性も2人ほどいた

『えっ!?』

そのうちの1人に見覚えがある
この前お兄ちゃんと歩いてた人だ

かんぱ~い!

皆一同にグラスをあわせてる中、私は固まっていた
見かねたお兄ちゃんが私の手をとり乾杯の輪へ導く

私はお兄ちゃんの肘を引っ張り
『ねぇ、あの人…』
私の目線の先を辿り
『ああ、あれ?T也の彼女、M樹』
その時M樹さんと目が合う
とっさに目線を反らしてしまった

ってことは私の勘違い?

『でも、この前一緒に歩いてた…』

お兄ちゃんはしばらく考えて
『ああ、いつかは忘れたけど、俺ら仲間だから2人きりになることもあるさ』

一気に気が抜けた
そして飲みものを口に運ぶ

ぶっ!

『お酒じゃん!』
キッとお兄ちゃんを睨む
半ば呆れた笑いのお兄ちゃん
『うっそぉ~、酎ハイって言ったじゃん』

『知らないよそんなの!レモンジュースかと思ってたのに!』

ホッとしたのか自分でも笑顔になれたのを感じていた
すると途端に食欲が出てきた

いつの間にか並んだ料理に手を伸ばす

こういう店で食べる焼き鳥はすごく美味しい
揚げ出し豆腐、豚足、チーズ揚げ、手羽餃子
どれもこれも始めて食べるものばかり

だんだんその場にも慣れてきて、お兄ちゃんの友達とも会話が進み、私の知らないお兄ちゃんの一面も垣間見ることができた

すると突然私達の座敷の照明が落ちる

HAPPY BIRTHDAY to you~♪の歌声と供に蝋燭を立てたケーキが運び込まれる

その時、店に来て初めて誕生日だと思い出した

あまりの出来事に言葉が見つからない

歌が終わり、私の前にケーキが置かれる
お兄ちゃんを見ると笑顔で頷いていた

フーっと蝋燭の火を消すと、照明が戻り
『(私)ちゃんお誕生日おめでとう!』
と、歓声が上がった

拍手の中ちょっと照れくさかったけど、本当に嬉しく思えた


No.70 15/07/23 18:48
匿名 

それから数週間後

普通に過ごしてるつもりでもどことなくお兄ちゃんとはぎこちない
というか、私の方だけ意識してしまう

以前は夜になると、よくお兄ちゃんの部屋に行き、たわいのない話をしたものだ

それもあの日以来出来ないでいた



そして今日は私の誕生日
その日は土曜日でお父さんは出張、お母さんも遅くなるとのことでお兄ちゃんと2人

『ごめんね、誕生日なのに…』

お母さんも仕事だから仕方のないこと
でも、今はお兄ちゃんと2人になるのがちょっと辛い

お父さんからも少し多めにお金をもらい
『これで好きなケーキでも買いなさい』
と言われた

私が帰った時には既にお兄ちゃんもいた

今日の夕食何が食べたいか聞きに行くと、お兄ちゃんもお母さんからお金貰ってたらしく外食しようということに

いつもなら喜んで行くのに今は複雑な気持ち
それでも好きな人と出かける誘惑には勝てず、そうすることに

『どこに行くの?』

『内緒』

そう言ってニヤリとするお兄ちゃん


そして8時になる頃お兄ちゃんに呼ばれついていくことに
別に不安や心配はしてなかったけど…



…居酒屋!?


お兄ちゃんは躊躇なく入って行くけど、私は足がすくむ

『どうした?』

『えっ!?いいの?』

『何が?』

『居酒屋だよ』

『うん』

そんな感じで半ば強引に入らされた

『いらっシャーい‼』

怒号とも言える威勢のいい声
居酒屋初体験の私は呆気に取られる

オロオロとお兄ちゃんにピッタリとくっついてついていく

『あっ!○○さんこっち!』
『おお!』

(はい…?)

てっきりお兄ちゃんと2人きりと思ってたけど、お仲間らしき人達の方へ歩いていく

ワケが分からないまま座敷に通され、お兄ちゃんの隣に座る

『何飲みます?』

『とりあえず生』

(おい…)

『妹さんは?』

お兄ちゃんの友達だろうか、メニューを渡してくれた
私はお兄ちゃんを見る

その顔は戸惑いと怒りと…その他諸々だったと思う

『酒飲んだことあるか?』

『あるわけ無いでしょ!』

怒りながらも小声でしゃべる

『酎ハイレモンで!』

お兄ちゃんが勝手に注文したが、私がソレがお酒だということを理解するには無垢すぎた

No.69 15/07/22 18:34
匿名 

今思えば、一目惚れだったのかもしれない

それでも初めの頃は兄というものの憧れと混同して分からなかった

それが今日、恋心だと文字通り痛いほど思い知らされた

でも、お兄ちゃんの心の中に私はいない
いるのは多分あの人…


遠目だったからあまり分からなかったが、綺麗な人に見えた

楽しそうに笑いながら歩く2人の姿が目に焼き付いてはなれない




それから1時間くらいして、お母さんとお兄ちゃんが帰ってきた

たくさん泣いたせいか、ちょっとスッキリした
元々叶わぬ恋だったのだ
忘れよう、普段通り過ごそう

顔を洗い、泣いていた痕跡がなくなる頃下へ行こうと思ったが、泣き腫らした顔は中々元には戻らない

夕食の時間になり、呼ばれたので観念して下へ行く

『何かあったの?』

『テレビで悲しいの見ちゃった』
そう誤魔化すことにした

私は明るくいつも通り振る舞った
さすがにお兄ちゃんの顔は見れなかったけど、悟られないように楽しい夕食をとる




その夜…





試験も間近だったので机に向かう
でもこんな状態では何も頭に入ってこない

その時不意にドアをノックする音と共にお兄ちゃんが入ってきた

『よお』

お兄ちゃんは近くまで来ず、ドア付近に立ってこっちを見ていた

『どうしたの?』

私は笑顔で迎える

暫しの沈黙の後…
『お前、なんかあっただろ?』

『えっ?』

笑顔がひきつるのを感じた

『お母さんも親父さんも多分気付いてる
ばれてないと思ってるのはお前だけだと思うぞ』

『別になにもないよ…』

そう言いながらも、もうお兄ちゃんの方を向くことが出来なかった

『それならいいけど…』
そう言うとお兄ちゃんは部屋を出る

恥ずかしかった
悔しかった
惨めだった

私の猿芝居は家族には見透かされていた
『お前は分かりやすい』
以前お兄ちゃんに言われてたので、気を張っていたのにも関わらずだ

でも、本当のことなど誰にも言えない
上手い言い訳も浮かばない



お兄ちゃん…


苦しいよぉ…

No.68 15/07/21 20:34
匿名 

『ばか…』

やっと絞り出した言葉がそれだった
お兄ちゃんは皮肉めいた笑みをうかべる

『前にも言ったと思うが、人の噂には尾ヒレがつくんだよ
俺が壊滅させただの、○して埋めただの
でもソイツら皆生きてるし、解散してもいない』

ドキドキが止まらなかった

『何でそんなことするの?
死んでたかもしれないんだよ…』

『生きてる』
自分を指差しおどけてみせる

『そういうこと言って…』
『分かってるって‼
お母さんからも同じようなこと言われた
もうしない』

この話をすると私がお兄ちゃんに恐怖感を抱くのではないかという心配があったらしいけど、私が抱いたのは恐怖よりも心配だった

あの時お母さんと中々会えなかった理由、お父さんが落ち着かなかった理由が痛いほど理解できる


もう二度とそんな無茶はしないと、お兄ちゃんと指切りした



だが、この約束はアッサリとやぶられるのはまだ先の話




それ以降、○○さんの妹と噂が噂をよび皆に知れ渡るまでそう時間はかからず、他の生徒から敬遠されてしまう

元々仲のよい友達も
『あの子恐くない?』
と、聞かれる始末

確かにあまりいい気はしないが、噂に関係なく接してくれる友達もいたので気にしないようにしてた


そんなある日の下校中、お兄ちゃんを見かけた

そういうことは何度かあって、1人の時は一緒に帰ったりもしたのだが、大体は友達数人といることが多い


でも、その時は違ってた…

隣に女の人がいた



私はその場に固まってしまい、その姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた





その後どうやって帰ったのか分からない


部屋に入ると壁を背にし、ズルズルと力なく座り込む

頭の中は空っぽだが胸が苦しいほど傷む

そして声をださずに泣いていた




いつの間にか…

こんなにも…

こんなにもお兄ちゃんのことが…







好きになっていた…


No.67 15/07/21 18:49
匿名 

『誰から聞いた?』

『誰も何も言わないの!でも皆知ってるの!』

私だけが蚊帳の外だという孤独感だけでなく、お兄ちゃんの影を必要以上に怯える周りに嫌気がさしたからかもしれない

いつもなら、お兄ちゃんの低く凄む声を聞くと引いてしまうが、その日の私はひるまなかった

初めはのらりくらりとかわしていたが、しつこく聞いてくる私に怒り出した

『(私)にも知られたくない過去くらいあるだろ?誰にだってあるんだよ!』

確かにお兄ちゃんの言う通りだ
溢れる涙を拭いながら立ち尽くす

『でも…ヒック、わた…私…ヒック、だけが…ヒック、知らない…ヒック、んだ…よ…ヒック』


ふーっとため息をついたお兄ちゃんが私を隣に座るよう促した
私もちょこんと腰掛ける

『(私)には、そういうことの外側に居て欲しかったんだけどな』

そう言うと、重い口を開き出した


両親の離婚後、あまり喧嘩をしなくなったが、再婚の話を聞いた時から再び荒れだした お兄ちゃん

ある日、友達と遊んでいたところ同学年くらいの人達からからまれ、喧嘩になり相手に怪我を負わせる

その中の人が、ある団体さんの人だったらしく、後日10人くらい連れてお兄ちゃんを襲撃

その日は通行人の通報により、あまり怪我しなかったらしいが、これで頭にきたお兄ちゃんは単身でその団体さんが屯するところへ乗り込む

いくら強くても多勢に無勢、お兄ちゃんボコボコにされ倒れてたとこ通行人に発見され病院へ

入院したのはこの時で、担ぎ込まれた時は、かなり危険な状態だったらしく、ショック症状(?)が出て、命も危なかったみたいだ

当然そうなると警察沙汰になったが、お兄ちゃんは頑として口を割らない(知らないヤツと言いはっていた)

そしてここからがお兄ちゃんの馬鹿な(ある意味凄い?)とこで退院して体が治ったらまたそこへ乗り込んだ

その時は、団体さんの頭の人をボコボコにしたらしい
お兄ちゃん曰く、他のやつらは呆気に取られ見てるだけで、頭のヤツも殆ど戦意が無かった



それ以降、お兄ちゃんは怒らせるととことん追い込みかける危ないヤツという噂が流れる




あまりのことに私は言葉を失った

No.66 15/07/18 21:46
匿名 

その数日後また同じ先輩から呼び止められた

でも、今度はものすごく暗い顔で…


『この前はごめんなさい…○○さんのこと悪く言って…
○○さんにこのこと言った?』


私はその日のうちにお兄ちゃんに話してた
もちろん誰から聞いたとかは言わずに

だから私はコクンと頷くと先輩の顔がみるみる青ざめて今にも泣きそうに
『あっでもお兄ちゃん笑ってたから別に怒ってないし大丈夫ですよ』
私は慌ててそう言い放つ

話しを聞くと、先輩が私に言い聞かせたことを彼氏に話したら、めちゃくちゃ怒られたらしい
『俺が殺されたらお前のせいだからな!』
と言っていたそうな…

個人名を言ってないし、今後言う気もないから大丈夫と先輩を落ち着かせながら話す

先輩は何度も私に頭を下げ戻っていった

ここでもまた私の後にあるお兄ちゃんの影の強大さを身をもって体験した

それと同時に、何故お兄ちゃんがそんなに恐れられてるのか気になるようになってきた

私は直感で噂の根元が、お兄ちゃんが入院した時のことだと思っていた

両親はその時のことを話したがらないし、お兄ちゃん本人が言うはずもない

先輩やお兄ちゃんを知ってそうな人に聞いても、皆一同に
『○○さんが言ってないことを私がいえるはずがない』
で、皆逃げるように去っていく

その後、偶然見かけたK岡君に私から話しかけて聞いてみる
『えっ?○○さんから聞いてないんですか?』

私が頷くと
『なら自分から言うことは出来ないッスよ
多分言わないのは○○さんの優しさだから、無理に聞こうとしないほうがいいと思いますよ』

両親はいいとしても赤の他人が知っていることを私は知らない
それがとても悔しく、悲しかった




そして日曜日
お兄ちゃんとふたりになった時、私は思いの丈をぶちまけた



No.65 15/07/18 21:14
匿名 

お兄ちゃんは少し険しい顔になり、色々聞いてきた

制服の形、色、男の子の特徴、人数

いつになく真剣なお兄ちゃんにちょっと圧倒されると共に、このことが新たな火種になるんじゃないかという不安がこみ上げる

ひととおり話し終えた後、お兄ちゃんは天を仰ぎ大きく息を吐いた

私もチラッとしか見てないから詳しいことは伝えられず曖昧な部分も多かった

『まぁ、大丈夫とは思うけど…』

お兄ちゃんの記憶の中には該当する人がいなかったようだ

『ただ、俺は恐れられてる分あちこちから恨みかってるからな、注意だけはしとけよ』

一人で帰るな、路地裏には行くな、明るいうちに帰ってこい、知らないヤツにはついていくな、あと…

それって小学生に言うやつじゃん

でも心配してくるのは嬉しかった





でもある日、知らない人達から声をかけられた

『あの…○○さんの妹さん?』

振り返るとこの前見た人とは違う人

『はい…』

『あっそんな警戒しないで、○○さんの妹さんに何もしやしないよ』

でも見るからに悪そうな感じの人
2、3歩後ずさる

『俺、××高校のK岡です
○○さんによろしく伝えてくれたらいいです』

そういうと去っていった






『ああ…K岡なら大丈夫』

K岡君はお兄ちゃんと同じ中学の後輩
私の1つ上

何故かしらお兄ちゃんに憧れてるみたいだ


私の高校ではそういう人と縁遠い人達ばっかりなので、そういうことで声をかけられることはなかった

と、思ってたら…

『ねぇ、(私)さんって○○さんの妹?』

話しかけてきたのは2つ上の先輩
つまりお兄ちゃんと同い年

先輩は直接知ってるわけじゃないけど、先輩の彼氏が知ってるみたい
その彼氏経由でお兄ちゃんの噂を耳にしたようだ

『お兄さんって怖くない?』

私は家では優しく、決して私には暴力を振るわないことを力説した
先輩から聞くお兄ちゃん像が、あまりに酷かったからムキになったからかもしれない




No.64 15/07/16 21:06
匿名 

真新しい制服を身に纏い鏡の前に立つ
今日から高校生

卒業式の数日後、合格発表に行くときはやっぱり緊張したけど、無事に合格できた

そして長めの春休みを終えて、入学式の次の日、初めての登校となる

お兄ちゃんとは別の高校だけど、途中までは同じ道だから一緒に行ってくれるように頼んだ

『もう行くぞー!』

『分かったー!』

出て行く私に両親が見送ってくれる

『(私)ちゃん、頑張ってね』

『うん、行ってきまーす!』


私の通う高校はバス通学
お兄ちゃんも一緒で降りる場所も同じ

それから徒歩10分だが、お兄ちゃんはさらにそこから地下鉄に乗り換えなければならない
故に時間的に私がお兄ちゃんに合わせる格好になる

通学時にお兄ちゃんと色々話して
『何かこういうの楽しい!憧れてたんだ~』
って言ったら
『そうか…』
つれない返事

お兄ちゃんとの生活は後1年しかないと思うと悲しい
だから今のうちにいっぱい話しておきたかったんだよ…


学校では仲の良い友達と離れてしまって、更に同じ中学の子は少なく、いてもあまり面識がない子ばかり

ただ、同じ塾で話したことのある子はチラホラ(志望校別にクラス分けしてたので)いたから孤独感はなかった

でもやっぱり皆緊張ぎみ
初日はクラス別に特別教室、その他の施設を渡り歩き説明を受ける
更に新入生歓迎と称した部活の勧誘なんかで終わった




夜お兄ちゃんに明日の時間を聞きにいく
『えっ毎日なの?』
その言葉にふてくされた顔をすると
『まぁ、じきに行けなくなるからな』




その言葉の意味を知ったのは数日後…

私の通う高校は進学校だった為朝補習が強制的に始まる

その時間にお兄ちゃんが合わせてくれるはずもなく、一人寂しく登高するはめになった



そうこうして毎日を過ごしてたある日、下校途中にいかにも悪そうな人達が、私の方を見て何やら話していた

制服を見る限り私の高校でもお兄ちゃんの高校でもない

私は怖くなり急いでバスに乗り込む
そしてその夜、お兄ちゃんにこのことを話した

No.63 15/07/14 23:31
匿名 

季節は秋
いよいよ受験シーズン突入

以前志望校を話し合う三者面談で私はお兄ちゃんと同じ高校を希望した

学力的には問題ないが、もっと上を目指すべきと担任は言う

お父さんも同意見
塾の先生も同様

家に帰っても、お母さん、お兄ちゃん共に同じ意見

これを覆す胆力は私にはなく、渋々了承することに

まるでヤル気を失った私に両親が何かご褒美をくれると言ってきた

そこで、以前行けなかった家族旅行を提案
行き先は私に一任
これにはさすがにヤル気もアップ

渋ったお兄ちゃんも、小声で家を出る前に思い出作りしたいと言うと、困ったような顔で首肯してくれた




そして2学期も終わり冬休み
クリスマスは、いつも一人だったけど(お父さんの仕事の都合)今年はお兄ちゃんと過ごせる

と、思ったら甘かった
お兄ちゃんは友達と予定があるみたい…

それでもR美ちゃん達と久しぶりに勉強を忘れパーティーをした
会場は我家

誰もいないのが都合が良かったらしい




そして大晦日
去年と同じくベランダで外を眺めていた
違うのはお兄ちゃんが居ること

本当はカウントダウンに誘ったけど見事にフラれた


少しは悪いと思ったのか、お兄ちゃんもベランダに出てきてくれて話し相手になってくれた

『寒くないか?』

『大丈夫、これ、私の年の瀬の恒例なんだ
ぼ~っと外眺めて今年1年思い出すの
去年はお母さんのことばかり思いだしてた』

『今年は?』

『う~ん
やっぱお兄ちゃんのことかなかな…』

ビックリ顔のお兄ちゃん

『最初に会った時のことや、怖かった時のこと、一緒に留守番したり花火大会行ったり…
色々あったけど、今こうして隣に居るのがなんだか不思議だよね』

『そうだな…』

『お兄ちゃんは去年何してたの?』

『去年?
ああ、退院したばっかだったから家で寝てたなぁ』

『そうか!怪我で入院してたんでしょ?
何で?』

『う~ん、イヤ、聞かない方がいいと思う』

『またそれだよ~』

そうは言っても喧嘩が原因であることは容易に創造できる

だが私が詳細を知ったのはまだ先のことなのだが、それは予想の範疇を超えていた



そして、何故お兄ちゃんがこうも皆から恐れられるのかを知ることになる


No.62 15/07/13 22:11
匿名 

確かにお兄ちゃんの言うとおり
でもなんだか釈然としない


『これからも俺の妹でいる限りそういうのはつきまとうからな

って言っても後1年半の辛抱だから我慢しろ』

『え?』

不意にお兄ちゃんを見た

『やっぱり出て行くつもりなの?』

『まあな…』

お兄ちゃんも家族というのに慣れてきてるみたいだから出て行くのはずっと先のことだと思ってた

『まぁ、出て行く理由はかなり変わったけど、やっぱり
高校卒業とともに出て行くよ』

『何で…?』

『う~ん
やっぱ親父さんのことは嫌いじゃないけど、世話になりっぱなしってのも気が引けるし』

やっぱりこういう話しをすると、お兄ちゃんは大人だ
私はまだ家を出るという意識がない
まだ中学生だからだろうか、それとも前にお父さんが言ってた男女の差なのだろうか

『あっ
この話お母さんにはするなよ
あれ煩いから』




お兄ちゃんの話を聞いた時は感心したが、改めて考えてみると凄く寂しかった
でも私なんかが引き止めることなど出来ない

それにR美ちゃんのことだって解決したワケではない


『あーもう!何でこんなに心配事ばっかなんだよー‼』

この叫び声はお兄ちゃんに聞こえていたらしく、翌日笑われた

『お前、青春してるな』
だって
人の気も知らないで…



数日後
学校も終わり家路の途中、友達と別れたとこでR美ちゃんが声をかけてきた

顔を見ると、この前腫れ上がっていたところも治ったみたいでホッとした

『ありがとう
○○さん(昼休み話した人)に言ってくれたんでしょ?』

『あ…うん、大丈夫?』

『うん…元通りにはなれないかもしれないけど、大丈夫だよ』

笑顔でこたえるR美ちゃん
その笑顔が本当なのか強がってるのかは分からない
でも笑えるようになったのは嬉しかった
小学校一緒に遊んだR美ちゃんが戻ってきたようで…


その日以降R美ちゃんとの交流が再開することに
一緒に帰ったり、おしゃべりしたり
家が近い分会う回数も自然と多くなる





それから彼女が遠方に嫁ぐまで付合いは続き、今でも年賀状での交流はある


何より…

お兄ちゃんと付き合えるようになったのは

R美ちゃんのおかげだと今でも思っている


No.61 15/07/13 20:18
匿名 

『ごめん…ちょっといい?』

昼休み、私はその人に話しかけた

その人は面食らった表情を見せる
少し怯えたようにも見えた

もちろん私にではない
私の後ろにあるお兄ちゃんの影だろう

『R美ちゃんのことなんだけど…』

『ああ…』

R美ちゃんに何がおきたのか知りたかった
すると、その経緯を話してくれた

私とR美ちゃんのやりとりを見た人が、その人含めた(ボス女)さんグループに報告

その人達が私に謝れと言ったところ少し生意気な態度をとったらしい

それで張り手一発
その後R美ちゃんグループに脅しをいれ、R美ちゃんをシカトするように

で、今に至る



信じられなかった
たったそれだけで人を殴るのか?
彼女達だって私に頼んでお兄ちゃんに会ったのに、他人がやると許さないなんて

お兄ちゃんからのプレッシャーもあったのだろう
それにR美ちゃんの私に対する態度もおかしいのは分かる
でも、だからといってそこまでする?



もちろん性格上強く言えない私だから、もう怒ってない、許してあげて、イジメないであげて

そう言っても『別にイジメてないし』で終わらせようとする

何も出来ない自分に腹がたった
強く言えない自分に憤りをおぼえた

疎遠になっていたとはいえ、昔は一緒に遊んだ幼なじみ
その子が私が原因で独りになっている
それを助けてあげれない

そう思うと涙がこぼれた


『えっ?ちょっと待ってよ!』

いきなり私の手を掴みトイレへ連れ込む
そしてハンカチで私の涙を拭った

『こんなとこ見られたら今度は私がイジメられるじゃない』






正直怖かった

私の後ろにあるお兄ちゃんの影
その影が本人の意思とは関係なく他人を傷つけてしまう現場が…





その夜お兄ちゃんに事の経緯を話した


『ああ…
そういうの何度かある

人の噂ってのは尾ヒレがつくからな
多分俺の周りの評価は鬼みたいになってるんじゃないか?

別にどう思われようが知ったこっちゃないけどな』

『でも、それで傷つく人がいるんだよ!』

『人の噂ってのはねずみ講式に広がっていくんだぞ
そのひとつひとつに干渉してたらキリないだろ』

No.60 15/07/10 23:48
匿名 

嫌な思いをしたまま1日を過ごす
でもこんなこと誰にも言えない

明日も何か言われるのかなぁ?
寝る前学校に行くのが憂鬱になっていた



そして次の日…


下駄箱の前でR美ちゃんを見つけた
こっちを見ている

私は目を合わせないように上靴に履き替えた

教室に上がろうとしたらR美ちゃんが声をかけてきた


『き…昨日は…ごめんなさい…』

泣いてるようだった

顔を見てビックリした

誰かに殴られたような痕がある
真っ赤に腫れ上がっていた

『R美ちゃん!顔どうしたの!?』

辺りを見渡すと、不良グループらしき人達がこっちを見ている
でも私と目が合うとそそくさと階段をかけ上っていった

R美ちゃんは泣きながらか細い声でただ
『ごめんなさい』
と呟くばかり

『もういいよ!怒ってないから!』
そう言うと顔を覆って泣くばかりだった




それから数日間
独りで帰るR美ちゃんを見かけた

気になってR美ちゃんと同じクラスの友達に聞いてみる
どうやらイジメとまではいかないが、無視されてるみたいとのこと


いたたまれなかった

1度お兄ちゃんにも相談したけど
『お前はまた…
余計なことには首を突っ込むな!
自業自得!』
と、真面目にきいてくれない

確かにお兄ちゃんの言うとおりかもしれないけど、自分が原因かもしれないと思うと、何とかしてあげたくなる

大体の目星はついている

R美ちゃんと同じクラスにいる(ボス女)さんと同じグループの人だ

下駄箱の奥でその人を見たから…


次の日
勇気を振り絞ってその人に聞いてみることにした

No.59 15/07/10 19:32
匿名 

そんな私達の態度の変化を見逃すお母さんではない

一緒に後片付けしている時にきかれた

『(兄)と喧嘩した?』

『喧嘩っていうか、怒られた
でも、お兄ちゃんの方が正しいから言い返せない』

『そう…
兄妹だから喧嘩くらいするわよ』

お母さんを見上げると笑ってた

『(私)ちゃんには悪いけど、ホントはちょっと嬉しいんだ
お互い遠慮し合う仲なら喧嘩すらならないからね』

なるほど、それもそうか
そう思うと、気分的にも楽になった




翌朝、お兄ちゃんと階段ですれ違う時に
『昨日はごめんなさい』
と言うと、私の頭を掴みワシャワシャワシヤっとした後何も言わずに微笑んでくれた


髪はボサボサになったが、嬉しかった







月曜日

『○○さん!』
不意に呼び止められた

『R美ちゃん』

R美ちゃんは小学校1、2年の時のクラスメイト
当時は家が近所だったこともあり、良く遊んだ仲だ
3年からはクラスが別れ段々疎遠に

中学から俗に言う不良グループ(この前ウチに来たのとは別の)とよく一緒にいるのを見かけた

『あのさ、ちょっと聞いたんだけど△△さんって○○さんのお兄さんってホント?』

『うん…』
すぐに表情が曇る

『今度家に行くからちょっと会わせてくれない?』

『ごめん…そういうの断ってるんた』

『何で~
この前(ボス女)さん達は遊びに行ったんでしょ?』

『うん…

でも、その時にもうそういうことはしないって言われたから…』

『そこを何とかお願い!』

知ってる相手だけにかなり粘る
でも、ここで折れるわけにはいかない

『ホントごめんね、お兄ちゃんとの約束だから…出来ない…』

そう言うとさっきまでの態度が激変
舌打ちして睨みながら去って行った

何あれ?

暫しその場に立ち尽くす
去って行くR美には、もう幼い頃の面影などなかった


怒りより、それが無性に悲しかった

No.58 15/07/09 21:47
匿名 

『お前は勉強でもしてろ』

正直(え~)っと思ったけど、お兄ちゃんの真面目な顔を見てたら従うしかなかった

確かに宿題や塾の課題は山ほどあったから暇をもて余すことはなかったけど、時々隣から笑い声が聞こえる度に切ない気持ちになる

だけどそれも15分くらいで止んだ

その数分後私の部屋のドアが開き、5人共そそくさと帰り仕度を始める

『帰るね…』

そう言った彼女達の顔は寂しげだった

お母さんと玄関先まで見送る
『お邪魔しました…』
やって来た時の元気はどこへやら
トボトボ歩いて帰っていく

その後ろ姿を見ていると、いたたまれなくなり気がつくと追いかけていた



『ねぇ!』

皆こっちを振り向く

『お兄ちゃんから何か酷いこと言われた?』

皆一様に下を向く

その中からボス女が
『うん…ちょっとね…
でも気にしないで…
こっちこそ悪かったね、無理言って
もう頼まないから』
と言って帰っていった






家に帰ってすぐにお兄ちゃんの元へ

その時の私は多分ちょっと怒ってたと思う
『お兄ちゃん!何て言ったの!』

お兄ちゃんは見ていた本を閉じ、皮肉めいた笑いをした

『ほんと分かりやすいなお前は…』

『え?』

『じゃあ、普通に楽しませれば良かったのか?
それで、調子に乗ってまたお前に頼んでくる度に俺は会ってやらないかんのか?
俺は嫌だ!
それを分かってもらうにはハッキリと言うしかないだろ?』

立ちあがり私の目の前に立つ

『俺はお前が嫌がってると思ったから、その事もハッキリ伝えた
だからアイツらはもうお前に頼むことはないだろう
俺がしてやれるのはここまでだ
今度別口で同じ事頼まれても俺は知らん
自分の口でハッキリ言うんだな!

分かったら部屋に戻れ!』

そう言って私を追い出す

部屋に戻ると涙を堪えるのに必死だった

正直悔しかった

お兄ちゃんの言ったことは正しいと思う
だから表面上だけを見て、ひとり踊ってた自分に腹が立つ
故に言い返せない


その日はお兄ちゃんと目を合わせないというささやかな…今思ってもガキっぽい反抗で過ごしてしまった


No.57 15/07/08 20:31
匿名 

それからお母さんにも事情を話す

『別に構わないわよ』

『ただ…皆お兄ちゃん目当てだから…そっち系の人達ばかりだから、ビックリしないでね』

『あ…あ~そういうことね
大丈夫、でも(兄)が何て言うか…』

『お兄ちゃんには了承済みだよ』

『へ~そうなんだ』

そこへお兄ちゃんがたまたまやって来た

『モテモテじゃ~ん』
ニヤケたお母さんが、肘でウリウリ
『あーうるさい』

『にしても優しくなったじゃん
可愛い妹ができると違うね~』
更にウリウリ

『あー鬱陶しい!
そんなに言うなら止めるぞ!』

『あっウソウソ!』

その場を去るお兄ちゃんに必死で取り繕うお母さんが可愛く見える

私は別に焦んないよ
ちゃんと約束は守ってくれるもんね







次の日、OKが出たと報告

『やったー!ありがとー‼』

相変わらず凄い格好…

その後日時等を含め5分ほど話して終了
結局5人来ることになった

話しだけすると普通の中学生なんだけどなぁ



で、当日…
土曜日で塾も休み
いつもなら仲のいい友達と楽しくおしゃべりタイム…
のはずだった…

約束の時間は3時、既にお兄ちゃんは帰宅している
一応逃げないように念を押しておいた

ピンポーン

玄関まで出迎える
ドアを開けた瞬間膝から崩れ落ちそうになる

5人共…
いや…もはや何も言うまい…

とりあえず家の中に入れて私の部屋へ案内する

『か~!やっぱ優等生の部屋は違うわ!』

これが普通なの!あなた達が異常なの!
と、言えるはずもなく作り笑い

しばらくは部屋でおしゃべり
お母さんが用意してくれたお菓子とジュースで先生や男子生徒の愚痴大会

その後恋バナから下ネタへ…
この頃の私は全くの無垢だった為、下ネタにアワアワ、オロオロ…

お兄ちゃんから、出来るだけそっちで時間潰せと言われてたんだけど、耐えきれずバトンタッチ

お兄ちゃんの部屋へ助けを求めに…





OKが出た所で皆を連れてお兄ちゃんの部屋を訪れる

初め皆ワーワーキャーキャー言って、口々に『お邪魔しま~す』

で、私だけ追い出された

ナゼ…?( ̄▽ ̄;)

No.56 15/07/07 19:34
匿名 

ドッと疲れがきた

正直なとこ呼びたくない
一番の理由はあの容姿だ

あんなケバケバな人達が家に来ると思うだけで頭痛が…
ましてやお父さんは時間的に居ないとして、お母さんに私の友達として紹介しなくちゃならないと思うと、胃まで痛くなる…

更にお兄ちゃん…

彼女達の目当てはお兄ちゃんだから、それを了承させなくては…

無理だ!

でも約束しちゃったし…

友達に相談しても『ゴメン…力になれない』
当然だよね

ふつうの格好して来てと言うことすら怖くて言えないよ


帰りは友達の哀れむ目線を背にトボトボ帰って行った




こうなれば正直に言うしかない

出来ればお母さんとお兄ちゃん、1つずつクリアしていきたいので別々に話すことにした

コンコン

『はい?』

『お兄ちゃん?ちょっといい?』

ドアを開ける

『何?』

『いや…ちょっと…』

思えばこの時初めてお兄ちゃんの部屋に入った
まぁ見事な殺風景
ベッドと鉄アレイしかない
散らかってないというか、散らかしようがない部屋
テレビや机すら無かった

『お兄ちゃん、こんな部屋でいつも何してるの?』

『筋トレ
で、何?』


『あっ…ちょっと…お願いが…』

途端に顔が、険しくなった

私は今日あったことを事細かに話す

お兄ちゃんは困った…というか露骨に嫌な顔をする

『前に言っただろ?
俺、そういうの苦手だって

お前相手でも上手く出来ないのに、見知らぬ女相手とか…』

別に私が望んだことじゃないのに…
ちょっとふて腐れて下を向く

するとフーっと大きく息を吐き
『まぁ、お前の性格じゃ断りきれないか…』
と、少し笑みを浮かべる

『いいの?』

黙ったまま頷くお兄ちゃん

『あっその中にボスみたいなヤツいるか?』

『うん…多分いると思う』

昼休み話しかけてきた人がまさにそうだ
何度か見かけたが、いつも輪の中心にいた

『ならいい、今度来た時そいつに言うから』

『え?』

『心配すんな、お前に危害がおよばないようにするだけだから…』


No.55 15/07/07 18:26
匿名 

私はいつものように学校へ向かう

途中で友達と合流し一緒に教室へ行こうとした時、ちょっと怖そうな人達が入口を占領していた

いつもなら脇をこそこそと入るのだが、その時は私達に気付いたその人達が『すみません』と道を開けた

友達とふたり『えっ何?今の…』と不思議そうに教室へ入る

それから授業の合間の時間に廊下から視線を感じるようになった

私が振り向くとその人達は目をそらし、そそくさと帰っていく

クラス内でも微かに聞こえる私の名前
振り向くと同じく目線を反らす

仲の良い友達に聞いても、分からないらしく反対に『何かしたの?』と聞かれる始末


こそこそ話をしている人達は私達のグループとは違うちょっと怖そうな人達だった為、不安は更に大きくなってきた



そして昼休み


いきなり私の席の前にヤンキー(古い?)風の生徒(女)が座った

その人はまさにスケバンを絵に書いたような人
その後ろには同じような人達5~6人が全員こっちを見ている

『○○さん(私の名字)ちょっといい?』

穏やかな表情だったけど、それが逆に不安を益々煽る

『あのさ…○○さん彼氏いるよね?』

『え?』

『こないだの花火大会の時、△△さん(お兄ちゃんの名字)と一緒に歩いてたでしょ?』

キョトンとした

確かにお兄ちゃんと行ったけど、何故この人が知ってるのか?
何故そんなに気になるのか分からなかった

『あ…いえ…別に付き合ってるわけじゃ…』



私はいきさつと、お兄ちゃんだということを説明した
ここ半年くらいの家庭環境や名字が違うことも全部

すると…


エエーー!
ウソーー!
一緒に住んでんのーー!
羨ましーー!

気づけばクラス中が聞き耳立ててた様子で、一時騒然となった


『ねぇねぇ!今度○○さんの家に遊びに行っていいかな?』

『私も!』『私も!』『私も!』



お兄ちゃんはいつもいるわけではない

大勢呼べるほど広くない

等とやんわり断ったんだけど、『お願い!』を連呼され、しぶしぶ了承することに…

私が塾がなく、お兄ちゃんが家にいる日を調べて後日連絡するということでその場は何とか収めることが出来た

No.54 15/07/06 23:00
匿名 

そして花火大会当日


私は最後まで悩んだが、やっぱり浴衣で行くことにした

初めは友達と行く予定だったので、浴衣を着ることに何の抵抗もなかった(事前に一緒に浴衣で行こうと示し会わせていた)が、相手がお兄ちゃんということもあり気合い入れるのも抵抗があった

『お待たせ~』

先に玄関先で待ってたお兄ちゃんにちょっと恥ずかしそうに披露する

『おっ可愛いじゃん』

予想外の言葉に照れていたと思う




会場(?)まではバスと地下鉄を乗り継いで行く
近付くにつれ浴衣姿の人も多くなりお祭りの雰囲気が強くなってきた

私は出店で夕食をすまそうと思ったのだが、お兄ちゃんは『(値段が)高い!』と言ってファミレスへ


思えば、同年代の男の人とこういう所に来たことがないのでドキドキした

対面に座り改めてお兄ちゃんを見ると、やっぱり綺麗な顔をしている

家ではよく見てるはずなのに外で見ると感じが違うのだろうか、見とれてしまった

『何?』

『ううん…』
慌ててメニューを見る


注文し待つ間何かしゃべらなきゃと思ったけど、何も思い浮かばない

『無理しなくていいよ』

『え?』

『間、もたそうとしただろ』

見透かされてた

『俺もこういうの得意じゃないから』

そう言って笑うお兄ちゃんにつられて笑顔になる

『お兄ちゃん彼女いないの?』

『はぁ?何だよ急に』

『いや…お兄ちゃんもこういうの得意じゃないって言ったから…』

『うん…マザコンだからね』

何故かホッとした自分がいた






食事を済ませ会場に向かい始まるまで出店を回る
『まだ食うのか?』

『女の子は甘いものは別腹なの!』

結局全部お兄ちゃんが払ってくれた



花火大会が始まると、最初は普通にしてたお兄ちゃんも段々『おー』とか、『スゲー』とか声を出すように


終わってから帰る時は大渋滞で家に着いたのは日付けが変わる頃のなってた
勿論途中で家には連絡済み
その分色々話もできてとても楽しい思い出になった

それはお兄ちゃんも同じだったらしく
『初めは面倒臭かったけど来て良かった』
と、言ってくれた




だけど…





このことがちょっとした事件を巻き起こす…





それは新学期始まって2、3日後のこと…


No.53 15/07/06 22:19
匿名 

夏休みも残り僅かになった頃、友人から電話がかかってきた

明日一緒に行くはずだった花火大会に行けなくなったとのこと
理由は夏風邪…

勉強づくしの中学最後の夏休み
最初で最後のイベントだから楽しみにしてた

しょうがないこととはいえ私の落胆は大きい

『一人で行くのもなぁ…』





お父さんは人混みは嫌がるし、お母さんを誘ってみた

だけど明日は仕事が忙しいみたいで帰りが遅くなるから、私に夕食を頼もうとしてたらしい…


『そうだ、お兄ちゃんと行ってきたら?
そしたら夕食も作らなくてすむし、外で食べて来なさいよ』

あっそれ名案!
と思ったけど来るはずない
それに、誘うこと自体ちょっと恥ずかしい

『大丈夫、私が言ってあげるから』
自信満々のお母さんだったけど…



『え~嫌だ』
やっぱり…
夕食時にこのことを話したけど、予想通りの反応

『あなたは夏休み好きなことしてだけど、(私)ちゃんは勉強ばっかで楽しめなかったのよ』
この頃になるとお母さんは私のこと『さん』ではなく『ちゃん』と呼ぶように

『俺も中3の時はそうだったよ!』


『無理ならいいです…』

そう言って、ちょっと寂しそうな顔をする私を見て

『そんなに行きたいのか?』

私が申し訳なさそうに頷くと、困った顔で頭をかくお兄ちゃん

『行ってあげてよ』

お母さんが、更に頼み込むとお兄ちゃんば黙って手を差し出した

『んもう…分かったわよ
その代わりちゃんと最後まで付き合ってね!』



何のことか分からなかったけど、翌日お金を催促したことを教えてくれた



『今年だけだぞ』




そう念を押すお兄ちゃんだったが、まさか一緒に行ってくれるとは思わなかったから嬉しさもひとしおだった

No.52 15/07/05 00:27
匿名 

それからお互いの色んなことを話した

ほとんど私が一方的に話したんだけど…

(兄)さんは笑顔で聞いてくれた




私はどうしても聞きたいことがあった
あの日のこと…

一晩中S子さんと何を話したのか?
何故皆と仲良くなろうと思ったのか?

でも、(兄)さんはう~んと困った顔してるだけ
『ちょっと…それは…
何て言うか…恥ずかしい…』

悶々としてたが、(兄)さんとせっかく仲良く話が出来たのに、困らせて後味悪くなるのも良くないと思ったので、それ以上はきかなかった



急に空腹感をおぼえた

そういえば朝から何も食べてないことを思い出す

『お腹すいちゃった』

『じゃ、帰るか』

立ち上がる(兄)さんに
『ちょっと待って!
帰る前に1つだけお願いきいて』

(兄)さんはちょっと困惑した顔

『今度から、私のこと…お前じゃなくて名前で呼んで

それから…
(兄)さんのこと…


お兄ちゃんって呼んでもいい?』


『え?いや…別に…構わないけど…』


そう言われると私は立ち上がり
『帰ろ!お兄ちゃん!』
と、お兄ちゃんを通り越していた

多分ニヤケ顔だったんだろう
暫く振り向くことが出来なかった



家に着くとS子さんが心配そうに外を見ていた
後から聞いた話では、お兄ちゃんが私を散歩に誘うことは知っていたらしい
でもちゃんと和解出来るか心配だったみたい


私が笑顔で帰ってくるのを見て、胸を撫で下ろす

『お帰りなさい』

『ただいま~』


『大丈夫だった?』

『うん!』

とびきりの笑顔でこたえる

『今度からお兄ちゃんって呼ぶことにしたの!』

『そう!良かった』

そして私は
『ありがとね!』
一呼吸おいて、意を決して
『お母さん!』
と、叫ぶ

みるみるお母さんの顔が崩れていく

私もそんなお母さんの顔を見て我慢できなくなり、ふたり抱き合って号泣

それを見ていたお父さんも涙を浮かべる


その光景にお兄ちゃんひとり( ゚д゚)ポカーン





かくして私達は家族になった






No.51 15/07/03 23:07
匿名 

『俺…どうすればいいかな…?』

『教えてあげたら?』

『え?』

『あの子、私に男の子がいるって聞いた時から、よくあなたのこときかれたから

知りたいのよ』

『うん…分かった…
でも、聞いたらまた怖がらせてしまわないかな?』

『その時はその時!
んもぅ!頼むよお兄ちゃん!
可愛い妹なんだから!』
そう言って背中をバシッと気合いの一発

~~~~~~~~~~~~~~~


これが、昨夜の出来事

お父さんや、S子さんがそこまで私のこと思ってくれたことにまた泣きそうになった


『だから、俺のこと話したいんだけど…
聞いてくれるか?』



それから(兄)さんは色々話してくれた

初めはよく遊んでくれる優しい父親だったが、会社が倒産し無職になってからは酒に溺れS子さんに暴力を振るうようになったこと

その度にS子さんを守ろうと父親に立ち向かったこと

でも力の差は歴然でいつもコテンパンにやられていたこと

それ以来ただ強くなりたくて、喧嘩を繰り返してたこと

『俺、弱っちかったから負けてばっかで
でも、怪我が治ったらすぐにまたそいつにふっかけてさ…』

そうこうしてるうちに同学年では相手がいなくなり、上級生、他の学校
負けて再戦して勝って強くなる
の繰り返し

そしてついに中2にして父親超えをする

この時お互い血だらけで病院直行
このままじゃ息子が犯罪者になると思ったS子さんが離婚を決意

そうして命懸けで守ってきた母親が、いきなりの再婚宣言で荒れたこと

『まっ要するに極度のマザコンってこと』

そう言ってはにかむ笑顔の(兄)さん


そして最後に
『ご飯めちゃめちゃ美味しかった、ありがとう、また作ってくれ』
と言ってくれた

No.50 15/07/03 22:24
匿名 

時は昨夜に遡る

~~~~~~~~~~~~~~

『ただいま~遅くなってごめんね~』

返事はない
しかもリビングの電気は付けっぱなし
台所も洗い物がそのまま
食べかけの夕食

普段私はきちんとしてたから、かなりおかしいと思ったらしい

そこに(兄)さん登場
何があったのか問い詰められる

『いや…俺も何がなんだか分からないんだけど…』

(兄)さんが状況を説明する
それを聞いたS子さんの顔が怒りに変わる

『あの子が何で残ったのか分かる?』

『受験生だからだろ?』

『それは多分口実、あなたと仲良くなりたかったのよ』

『そんなんわかんねぇよ!俺完全に嫌われてると思ったし!』


『…ご飯どうだった?』

『えっ?』

『あなたの大好物ばかりだったでしょ?凄く美味しかったでしょ?』

『……』

『女の子と言えど中3の子が、何もせずにあんなに上手に作れると思うの?』

『……』

『美味しいって言った?ありがとうって言った?

あの子が残るって決まった後、私にあなたの大好物や作り方を色々聞いてきたのよ
凄く嬉しそうに!

嫌いな相手にそこまでする!?』

『……』

『それに、あの子はあなたと同じ傷を持ってるの…

だから、あの子を悲しませることだけはしないで…』

そこまで言うとS子さんは部屋を出て行った

後に残されたお父さんが話しかける

『まぁ、知らなかったならしょうがないよな?』

『すみません…』

『いやぁ…ただ、あの子はそう簡単に人を嫌いにはならないよ
(私)は幼い頃母親から虐待されててねぇ…』

『えっ?』

『そういう過去があったからかも知れないが、(私)は人の痛みが分かる優しい子になってくれた
凄く気を使う子でね、人の顔色ばっかり気にしてる
親である私にさえね』

『そうだったんですか…』

『さっきお母さんが言った同じ傷ってのはそこのことなんだろう…

君は男だから立ち向かえただろうけど、女である(私)は辛かったろう

優しい反面、少し心が弱いところがある…
面倒臭いだろうがよろしく頼むよ…』

そこへS子さんが戻ってきた

『大丈夫、眠ってるだけみたいだった』

『そうか…』




No.49 15/07/03 20:55
匿名 

『この辺りにさ、落ち着いて話せる公園とかある?』


私の家は山を切り開いて建てられた住宅地だったので、近くにかなり広め(逃走中出来るくらい)の自然公園がある

『それなら5分くらい歩いた所に…』

『じゃあ案内してよ』

昨日までの(兄)さんとは違う
時折笑顔も見せる
何言われるんだろうと警戒していた心が徐々に薄れていくのを感じた

公園に着くまで終始無言だったけど、(兄)さんは何か色々思い巡らせいたようで、百面相している姿はいつものクールな(兄)さんとは別人みたいで…

こんな人間っぽい(?)仕草は見ていて面白かった


公園に着き林の遊歩道を進む

『へぇ…良いとこだな』

私もこの公園はお気に入りでたまに来る
広場もあるし遊具も充実している

いつかS子さんと一緒に来たかったが、まさか(兄)さんと先に来るとは予想だにしてなかった


暫く歩くとベンチを見つけた

『そこでちょっと休もうか』


2人でベンチに腰かける

暫しの沈黙のあと
『あのさ…昨日はごめんな』
と切り出してきた

『別に、嫌いとかじゃなくて…
って言うか、逆に嫌われてると思ったから…

ほら、この前怖いとこ見せちゃったし…

そしたらいきなり泣き出すから…
俺、混乱してさ…
何言ったら良いのか分からなくて…

それで、2人が帰ってきて
家の中の状態見て問い詰められて…

母さんにメチャクチャ怒られた』


『S子さんに?』

『うん…
お前を悲しませるようなことはするなって…

まぁそんなつもりはハナからなかったんだけど…』

ビックリした
昨夜そんなことになってたなんて…

それなのに今朝会った時は普通に接してくれたS子さんの優しさと、自分の昨夜のことはばれまいとする演技が見透かされてたはずかしさになんとも言えない気持ちになった

『S子さん他に何か言ってた?』


『うん…
お前のこと色々聞いた…』





No.48 15/07/03 20:03
匿名 

翌朝目が覚めると、そのまま眠ってしまったせいか寝汗で気持ち悪さを感じた

閉めていたはずの窓が開いてたことで、昨夜はお父さん達が帰ってくる日だったと思い出す

慌てて下へ降りるとS子さんがいた

『ただいま』

『お帰りなさい』

私は笑顔でこたえる
昨夜のことを知られるわけにはいかない

『ごめん、疲れて眠っちゃった
後片付けしてなかったでしょ?』

『いいのよ、(私)さんも(兄)の面倒みてくれてありがとね』

昨夜のことが一瞬フラバした

『私、シャワー浴びてくる
そのまま眠っちゃったからベトベト』

その場から逃げるように着替えを取り出しお風呂場へ逃げ込む







体はサッパリしたが、気分は沈んだままだった

旅行の話でも聞いて気分をまぎらわせようとリビングへ行く

『‼』

そこには(兄)さんがいた

『おはよ…』

(兄)さんはちょっと気まずそうに言う

『おはようございま…』

最後のほうは聞き取れないほど小さくなる

それから沈黙が流れたが、(兄)さんは何か言いたげだった

耐えきれず部屋を出ようとすると
『あのさ!』
呼び止められ振り向く

『あの…時間あるなら…ちょっと付き合ってくれん?』

黙ったまま頷いた

『俺、まだこの辺詳しくないから散歩でもしない?』



また何言われるのか怖かったが、断る理由も見つからなかったので付き合うことにした

『髪乾かすから…ちょっと待って…』




身支度を終え外で待つ(兄)さんの元へ向かった











No.47 15/07/02 23:24
匿名 

別に恋愛感情がどうのこうのではない
ただ、(兄)さんと仲良くなりたかった


2人とも共通の話題がない
というか会話力の問題かもしれないが、会話が続かない


私は料理だけは得意だったので、そこからきっかけが作れたらなぁと思っていた

だけど私のこの計画はボロボロに崩れさる



1日目
(兄)さんはギリギリまで寝てたいらしく朝食は1人
塾に持っていく弁当をつくるが、(兄)さんのバイト先では賄いが出るらしい

ならば夕食時と思ってたけど緊張のあまり会話すら出来ない

食べたあと後片付けをしようとする(兄)さんに
『そのままでいいですよ』
と言うと、部屋に戻っていく

2日目
そうだ、笑顔だ!
あと、敬語も良くない
そう思って(兄)さんが帰ってくると
『おかえり』
と笑顔で出迎えた

面食らったような(兄)さん
でも『ただいま』で会話終了

夕食時も頑張った

『おいしい?』

『うん…』

『バイトって何してるの?』

『飲食店』

『大変?なんか(兄)さんが料理作るの想像出来ない』

『俺、フロアだから…』で終了


3日目

同じく何聞いても生返事
ヘタレな私は心が折れる…

4日目

相変わらず無愛想な(兄)さんに悲しさが頂点に…

ここで泣いたらダメだ
同情ひくのは嫌だ
そう思ったがあふれだす涙を止められなかった

そんな私の姿を見てビックリしたのか
『え!?どうした?』
と、声をかける

寂しさと泣いてしまった悔しさで益々涙があふれだす

『わた…しの…こと…
嫌い…です…か…?』

最後は言葉につまり言葉にならなかった

『いや…そんなことないけど…
どうした?』

そうきかれても泣き続ける私にどうしていいのか分からず、そそくさと夕食を平らげ部屋に戻ってしまった




さんざん泣いた後私も部屋に戻る
そして泣き疲れたたのか泥のように眠ってしまってた


その後2人が帰ってくると思い出したのは翌日になってからだった


No.46 15/07/02 22:32
匿名 

それからというもの(兄)さんは、少しずつではあるが皆の中に溶け込んでいった

お父さんともたまに話したりしているようだった

だけど私には…
冷たくはないのだがよそよそしく、あまり話してもらえない

(兄)さんに対する恐怖は日に日になくなってきてるのでそれに比例する形で寂しさがつのる

『照れてるのよ、あの子あまり女性に免疫ないから』
S子さんはそう言ってくれるが、私としては憧れだった兄という存在が現実となったわけだから、色々話してみたいとは思っている

だけど、私も男の人と気軽に話せるような性格ではない


ある日、家族旅行はまた次の機会にしようと言ったお父さんに対して、せっかく休み取ったなら3人で行ってくればいいと、(兄)さんが切り出した
(自分はあくまでバイトの為パス)


そこまで言うなら甘えちゃおうとS子さんが、旅行計画にのり出す


そこで私が新婚旅行も兼ねて2人で行ってくるように提案した



『何で?(私)さんと行くの楽しみにしてたのに!』

『受験生に夏休みなんてないよ!夏期講習だってあるんだから
その代わりお土産お願いね!』


何度も誘われたが、確かに受験生だから大切な時期、それに2人なら大丈夫だろうと言うことで盆休みを利用し三泊の旅行に出かけた

こうして、(兄)さんとの2人暮らしが始まった

前の日(兄)さんのスケジュールを聞いておいた(ご飯の用意とかの為)

初めは『お前行かないの?』と、ビックリしてたようだが、受験生だからと言うと納得したようだ

で、(兄)さんは4日ともバイト
朝昼はご飯要らない
夜は6時には帰宅と言うので夕食だけ作ることにした

別にいいよと断ったが、1人分作るのも2人分作るのも一緒だからと言うと、これにも納得したようだ

No.45 15/07/01 23:15
匿名 

その日の夕食

お父さんも帰ってきたので、テーブルにつく

お父さんとは昨夜のこと、昼のS子さんから聞いたことを話した
S子さん同様詳しいことは話さなかったが、これからはいい方向に向くといってくれた

夕食の用意が出来たのでS子さんが(兄)さんを呼ぶ

2階から降りてくる(兄)さんの足音
正直私はまだ怖かったのを覚えている

直ぐに椅子に座ると思っていたら何故かお父さんの前に立った

私はドキドキした
だが、そこからでた(兄)さんの言葉は予想に反するものだった
『昨日はすみませんでした…』

お父さんは何も言わずに笑って頷くだけ

そして私にも
『怖がらせてごめんな』
と、頭を下げたのだ

私は『いえ…』としか言えなかった


『さあ、食べましょ!』





食事中何度も(兄)さんをチラ見してた

あんなに頑なに反発してたのに…
それがたった一晩でこうも変わるのが不思議でならない

いいことなんだけど、昨夜の詳しい内容を知らないのは、この家で多分私だけ

そう思うと少し寂しい気持ちになった


『じゃあ仲直りのしるしに家族旅行行くか!


『あっいや…
そこまでは、まだちょっと…
照れ臭いっス』

『何で?そんな気にすることないじゃない』
そう言うS子さんを制するように
『そっか…じゃあしょうがない
って言うか、実は私もちょっと照れ臭い』

皆笑ってた
その中でも初めて見る(兄)さんの笑顔に無性に喜びを感じていた


No.44 15/07/01 22:42
匿名 

目が覚める
いつの間にか眠っていたようだ

時計を見ると昼の12時を過ぎていた

家の中はシンと静まりかえっている
昨夜の出来事を思うとそれが不気味に感じた

隣の(兄)さんの部屋からも何も聞こえない

私は喉の渇きをおぼえ下へ降りることにした


冷蔵庫から麦茶を取り出しコップ一杯飲みほした
パタパタ
『あっ起きた?』

『S子さん…』

昨夜の時とはうって変わって満面の笑みを浮かべる
そして、私を優しく抱きしめてくれた

『ごめんなさいね
心配かけて…』

『お父さんは?』

『会社にいったわよ
私は休みとっちゃった』

『(兄)さんは?』

『まだ寝てるんじゃないかしら』

あの後の事をききたかったけど、聞くのが怖かった

そんな私を察してか、S子さんはゆっくり話してくれた

『私ね…
前の夫と別れてから、あの子を守らなきゃってずっと思ってた
だけど、違ってた
あの子の後ろには、私がいたの』

『…?』

『雨降ってナンとやらね
あの子とゆっくり話せてよかった
いきなり家族団らんってわけにはいかないと思うけど、昨夜のようなことにはならないから…』

そこまで言うとS子さんは俯き私に申し訳なさそうにこう言った

『だから…あの子のこと…
嫌わないであげて…』

嫌いに?

確かに昨夜の(兄)さんは恐怖でしかなかった
こんな人とは一緒に暮らしていけないと思ってのも確かだ

でも嫌いにはなれなかった

たまに見る…
ロボットらしからぬ悲しい顔

その顔が私の幼い頃とかぶって見えた

『嫌いになんてならないです…』

そう言うと再び抱きしめ
『ありがとう』
と、そっと呟いてくれた

No.43 15/06/29 21:43
匿名 

残された部屋では、へたりこんだ私の泣き声と、そんな私を抱きしめ『ごめんなさい』と囁くS子さん


そんな中、私は…
いや、多分3人ともこう思ってたに違いない




もう無理だ…




その後の沈黙からS子さんが話し出した

『ごめんね(私)さん…
あなたもごめんなさい…』

小さく頷くお父さん

『私、もう一度あの子と話してみる』

『大丈夫なのか?』

『うん…
こんな状況になってまだこんなこと言うのはなんだけど…、
あの子は絶対に私には暴力振るわないから』

訝しげな表情をするお父さんだったけど
『あの子を信じてあげて』
と言われたら頷くしかなかった

『(私)さんも部屋に戻りなさい
後片付けは私がやっとくから』

そう言われても私は立ち上がることが出来なかったため、結局S子さんに付き添われながら部屋に戻った

私の部屋から出ていくと直ぐに(兄)さんの部屋へと入っていった





それからどのくらい経っただろうか…

(兄)さんの部屋は隣だったため時より話し声やS子さんの泣き声が微かに聞こえた

だけど会話の内容までは聞き取れない

じっとしてられなくなった私は後片付けをするため1階へと降りた


そこにはお父さんがいた

『お父さん…』

私は寄り添うようにお父さんの隣に座る
お父さんは私の頭を撫でながら言う

『S子がああ言う以上お父さん達は信じて待つしかないよ
だけど、どんな結果になろうともあの2人を恨んじゃいけないよ』

私は頷くと暫くお父さんの側にいた

その後、後片付けを終え部屋に戻る

(兄)さんの部屋ではまだ話し声が聞こえていた







そして長い長い夜が明けた…




No.42 15/06/29 20:47
匿名 

その日の夕食、S子さんが切り出した

『ねぇ(兄)、今度お母さん達休みとれるから、皆で一緒に旅行行かない?』

S子さんをチラッと見た後、無視して食事を続ける(兄)さん

それでも執拗に誘い続ける

『行くと思うか?』

家の空気が凍りつく

居たたまれない雰囲気にドキドキが止まらずもはや食事どころではない

『行きたきゃ勝手に行けばいい
大体俺が行ったところで旅行が台無しになるのは目にみえてるだろ?
なのに何で誘うんだよ』

『家族旅行だもの、(兄)を誘うのは当たり前でしょう?』

『家族って思ってるのはあんたらだけだし…

いい加減分かってんだろ?
この家で俺は不必要だろうし、3人でいたほうが幸せだって

ただ卒業までの2年は我慢しろよ』

『不必要なんて…』

S子さんは額に手を当て俯いてしまった

私はこの空気に耐えきれず席をはなれドアの前に立ちつくす

(兄)さんは言葉こそあらげてはいないが、私はその迫力で押し潰されそうになっていた

『そんなになるなら何で産んだんだよ!
好きでもねぇ男の子なんざ』

『(兄)君!言い過ぎだろ!』
黙って聞いていたお父さんが、ついに口を開く

その瞬間(兄)さんの顔が変わり、そのままお父さんに詰め寄る

『俺は男には容赦せんぞ…
言ったよなぁ!俺に干渉するなって!
約束守れよ』




うーーーーーーーー!
うーーーーーーーー!

怖かった

物凄く怖かった

私は無意識のうちに声を出して泣いていた


うーーーーーー!
うーーーーーー!

すぐさまS子さんが駆け寄り私を抱きしめる

(兄)さんはお父さんから離れこちらに歩いてきた
そして私の横を通りすぎる時に話しかける

『おま…』
ビクッ

もう(兄)さんそのものが恐怖になってたため、近くで声を聞くだけでビクついてしまう

『お前もこんな兄貴いやだろう…』

そう言うと(兄)さんは部屋を出て行った

No.41 15/06/27 20:38
匿名 

その後の生活はそれなりに楽しかった

やっぱりS子さんといつも一緒に居られることが大きな要因

一緒に買い物して、料理作って、学校であったことを話して

今まで出来なかった母親との生活を思う存分楽しんだ

まだ、素の状態では『お母さん』と言うには照れ臭く、タイミングをはかる毎日

きっとS子さんも待ってるには違いないから、早く応えなきゃならないと思いつつ数日が経っていた

(兄)さんはロボットのまま
挨拶意外の言葉を耳にすることはなく、家に居るときは部屋に閉じ籠りっぱなし
たまに『今日ご飯要らない』と言った時なんかは翌日まで帰らないこともしばしば

一度S子さんに聞いたことがある
『(兄)さんって前からこんな感じだったんですか?』

普段はあまり(兄)さんのことを話したがらなかったS子さんだが、その日は色々教えてくれた

『小学校に入ってからは喧嘩ばっかりして帰ってきてた
同級生だけじゃなく上級生ともね

毎日のように学校や相手の家に謝りにいってたわ

中3になってからだいぶ落ち着いてきて、家に居ることも多くなり、よく話すようになったの

でも…やっぱり再婚の話しをしたときからおかしくなっちゃった

会話が減ったことよりも、あの子から笑顔が消えたことが…すごく悲しい…』

そう言って悲しく頬笑む





相変わらず(兄)さんとの溝が埋まることもなく、数ヶ月が経ち夏休みに入った

このままではさすがにマズイと思ったお父さんが、環境を変えてみようと言い出し、休みを利用して家族旅行を提案してきた

初め難色を示してたS子さんだが、他に案も無いため承諾した

後は(兄)さん次第だが…







その不安が現実のものとなり

我が家で最初の修羅場となった…

No.40 15/06/26 22:46
匿名 

『お待たせ~』

S子さんが笑顔でやってくる

『(私)さん、今日からよろしくね』

いつものS子さんだ

とたんに私も笑顔になる

その後に大きな荷物を抱えた(兄)さんがやって来た


『(私)さん、はじめまして
今日から一緒に生活させてもらう(兄)です
よろしくお願いします』
と言って深々と頭を下げる

『早速ですが部屋の方に案内してくれますか?』

『(私)、案内してあげて』

お父さんが私を肘で小付く

正直嫌だったが
『あっこっちです…』
と、案内した

『失礼します』
それに(兄)さんが続く

2階へ上がり部屋(兄)さんの部屋の前まで来た
『ここです…』

この部屋は以前はお父さんの書斎兼物置き
(兄)さんのために要らないものを処分し、必要なものは1階の部屋へと運んだ

『どうも』

私に一礼して中に入る


ロボットだ…

これが私の『お兄ちゃん』の第一印象

玄関先から今まで全て無表情
必要最低限の会話

笑顔で迎えようとした私の計画は脆くも崩れ去った


下へ降りると2人がリビングで何か話していた

私もその輪に入ろうと隣に腰かける

『ありがとうね案内してくれて』

『いえ…』

『無愛想な子でしょ』

私はコクりとうなずき
『何だかロボットみたい』
と、言うとS子さんは笑ってた

『だって無表情なんだもん…』



『ごめんね…』
というS子さんに対し
『相変わらずだな(兄)君は…
いつまでアレが続くかな』

お父さんの突拍子のない言葉に2人共驚いた

そんな私に量眉をつり上げおどけた表情を見せる

『お父さん何か秘策でもあるの?』

『秘策?そんなもんあったらとうに使ってるよ
ただ、なんとかなるかなぁと、思って』

私はポカーンだった

『ほんっっっと能天気よね!
この人会社でもそうなんだから!』

私はお父さんを睨み付ける

『でも、やるときにはやる人なのよねぇ』



No.39 15/06/26 20:35
匿名 

『私達…そっちで一緒に暮らしてもいいかな?』

『え?』

予想外だった
先日のお父さんの話しだとまだ時間がかかると言ってたから、軽く1年は覚悟していた

下手すれば(兄)さんが自立する2年後かな?
とも…

『このままじゃあの子も変わらないと思うから、直にあなた達親子と接してもらって…少しでもいい方向にいけたらなぁって』

『私は構わないけど…
お父さんは?』

『うん…実はこの案、お父さんからなの…』

『それなら私は大丈夫です
(兄)さんとも仲良くしたいから』

『ありがとう
ごめんね、こんな母親で…』

『そんなこと言わないで…』







そして1ヶ月後、S子さん親子との生活が始まった


初めは再婚せず同居という形にしようとのことだったけど、(兄)さんが、そんな回りくどいことするなと一括

同居する今日、婚姻届けを提出した

予め大きな荷物は少しずつ持って来ていて、いつでも住める環境にはしていた

その際はお父さん達の会社の人達も手伝ってくれた

『いよいよですね部長!』

皆でする引っ越しは楽しかった
何度かウチに遊びにきて見覚えのある人もチラホラ…

そんな中なのか、いつものお父さんとはちょっと違った顔をしていたのが何だか可笑しかった

でも、その中に(兄)さんの姿はない


だから今日が初顔合わせ

ドキドキが止まらない

このドキドキは期待なのか、不安なのか…

多分両方だろう


そうこうしているとチャイムがなった

ピンポーン


『来た』

私はお父さんの後ろに隠れるように2人を出迎えた

No.38 15/06/25 21:06
匿名 

『…………‼』

私は言葉を失った

(兄)さんは、私の2つ上

それなのに大人の人に対して論破する

(兄)さんがとても大人に…そして恐く思えた


『S子さんは…?』

『うん…
S子も今回のことはかなりショックだったと思う
もう少し(兄)君と話し合ってみるとは言ってたが…、難しいだろうな

それ位(兄)君の言葉には強い意思を感じた』


『そう…』

『だからもう少し時間が必要かもしれん
焦るなよ』

『分かった…』


部屋に戻って床に入る

聞いた感じでは家を出た後も親に頼ることはなさそうだ

ということはたった1人で生きていくこととなる
私がまだ幼いからだろうか、女だからなのか

そんな生活はとても想像できない

憧れていた兄がすでに怖い存在になっている


私はその日不安なまま眠りについた







それから2週間後S子さんから電話がはいった

『あっS子さん‼
お父さんまだ帰ってきてないんですよ』

『うん、知ってる
さっきまでお父さんと話してたから』

『?』

『お父さんから(兄)のこと聞いた?』

『はい…』

『そこで(私)さんにお願いがあって電話したの』

『お願い?』


いつものS子さんからは想像もつかないほどやつれた声
多分(兄)さんのことであろうことは容易に想像できた


No.37 15/06/24 23:21
匿名 

『僕は…、(兄)さんと家族になりたいと思ってます』


『言ってる意味が分かりませんが…?
あなたと母が再婚すれば、自動的にそうなります』

『………』

『あなたの言う家族って何ですか?』



『朝はおはようから始まり、夜はおやすみで終わる
そして色々なことを皆で喜び、助け合い、分かち合うのが家族かと…』

『それは無理ですね
何故なら自分はあなた方にまるで興味が無い』
『(兄)‼』
『心配しないで下さい
自分は高校卒業と共に家を出ます
その後理想の家庭を築いて下さい』



『どうすれば…
父親と認めてもらえるのかな…』

『勿論、2年間はあなたのお世話になります
ただ、自分に父親は必要でないので』
『いい加減にして‼』
『自分勝手なこと言ってるのは重々承知してます
しかし人の生活を変えようとするのであるなら、それなりにリスクを背負うべきでは?』



(兄)さんが一方的にしゃべるとその後、長い沈黙がおそう

それを、打破するようにS子さんが静かに話し出す

『私は…この再婚をあなたに祝福して欲しい…』

(兄)さんは大きく深呼吸し見下すような目でS子さんを見る
『俺は再婚には俺の同意が必要としかきいてない
祝福?今さら条件かえんなよ
相手にも失礼だろ』

そこまで言うと(兄)さんは立ちあがり、玄関の方へ歩き出す

『とにかく条件さえ守って頂けるなら、明日にでもそちらのご家族に挨拶に伺います』

『どこ行くの!?』

『心配すんなよ!ちょっと走ってくるだけ!
1時間で戻る』

そう言い放つと(兄)さんは外へと走り出した

~~~~~~~~~~~~~~~~

No.36 15/06/24 21:48
匿名 

『再婚…してもいいって…』

『やったじゃーん!おめでとー‼』

私は飛びはねて喜んだ
だけどお父さんは浮かない顔…
トボトボと部屋へと戻って行く

心配になりつけていくとお父さんは背広をぬぎネクタイを弛めていた

『何か…あったの?』

『うん…
再婚するに至って色々条件出された』

『条件?』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以降はお父さんやお兄ちゃんから後日きいて
私が想像で書きます


時間は3時間前にさかのぼる


ピンポーン

ガチャガチャ

S子さんが出迎えてくれた
『いらっしゃい』
2人とも緊張気味

『(兄)君は?』

『居間で待ってる』

『そうか…』

居間に行くと(兄)さんが座って待っていた

お父さんの姿を見るやいなや立ちあがり深々と頭を下げる

『どうぞ』

そして座るように促す

(兄)さんの対面にお父さん
側面にS子さんが座る形となった

『ダラダラしゃべる気は無いので要点だけ』

『はい…』

『以前伺った再婚の件ですが反対致しません
ただ少し聞きたい事と条件が…』

『はい…』

『再婚後住まいの方はどうされるつもりですか?』

『できれば私共の家に来て頂きたいと思ってます
部屋は余分にあるので』

『分かりました
ただそちらの住所からですと、自分の高校へは交通機関を使っての登校となります
その費用は負担して頂けるのでしょうか?』

『(兄)、失礼よ』
身をのり出すS子さん
だが、(兄)さんはそれを無視し続ける

『もちろん、親である僕の役目だと思ってます』



『次に、自分は名字を変えたくありません
夫婦別姓でお願いできますでしょうか?』

『別に僕もそこには拘ってません』

『分かりました
そしてこれが一番重要なことなのですが、
自分に干渉しないで頂けますか?』

『(兄)!何言ってるの!』

S子さんの表情が険しくなっていく

No.35 15/06/24 21:03
匿名 

すみません主です…(*´・ω・`)b、

善スレでミスが有りました(;>_<;)

中学2年生という表記
正解は中学3年生です

以降(私)は、中学3年生の受験生として読んで下さい(´・ω・`)

今後とも『お兄ちゃんと結婚しました』を
よろしくお願い致しますm(._.)m

No.34 15/06/24 18:50
匿名 

それからさらに月日は流れ、私は中学2年生になった

放課後、定期的に通っていたカウンセリングも精神状態が安定してきたこともあり、様子見(通院無し)になった


再婚への進展としてはあまり進んでない様子

S子さんにはちょくちょく会っていて、こないだは一緒に料理をして楽しんだ

小学校から家事(ほとんど食事の用意)をしていたから、私の手際の良さにはS子さんもビックリしてた様子

しかも習ったのがお婆ちゃんだった為、和食がメイン
出汁の取り方から味付けまで逆に教える立場
S子さんからは主に洋食を教わった

だけど…


相変わらず(兄)さんとは会えないでいた…



そんな時、転機が訪れる

今まで会おうともしなかった(兄)さんから、お父さんと話しがしたいと言ってきた


その日は私も行きたかったけど、難しい話になりそうだから長引くかもしれないとお父さん1人で出掛けた

『戻りは何時になるか分からないから、先に寝てなさい』

もちろん私は起きて待つつもりだ

お父さんもここが勝負所と思ったのか、かなり気合いが入っていた


夜8時からだから帰りは日付が変わる頃かなぁ

『気合いだけ先行してへましなきゃいいけど…』

すると

ブロロロ…

お父さんの車の音

『え?まだ10時すぎ…早すぎない?』



ガチャ

『どうだった!?』
玄関前で待っていた私にビックリするお父さん

『おお…まだ起きてたのか…』
『そんなことよりどうだったの!?』



『うん…』

No.33 15/06/23 21:18
匿名 

そこでふと思い出した

『S子さん、写真持ってきてくれた?』

『えっ?
ああ、持ってきたわよ』

鞄の中をガサゴソして1枚の写真を取り出す

『あまり写真撮りたがらない人だから、最近のやつはこれしかないんだけど…』

そしてそれを受け取る

正装したS子さんの隣に少しふてくされ顔の制服をきた男性
写真だけど初めて見る『お兄ちゃん』がそこにいた





見た感想は…


とにかく、ビックリしたって言うのが本音
カッコいいと言うのではなく綺麗だった

やっぱり親子、初めてS子さんを見た時と同じ思いだった


『凄い綺麗な顔…
モテるでしょ?』

『う~ん、どうかしら…
最近はめったに話さないから…』

『あっ怪我で入院して…』

『ううん、もうだいぶいいの
今は普通の生活してるわ
やっぱり思春期の男の子は難しいわね
前はそれでもよく会話してたんだけど…
やっぱりあの日以来…』

ハッとして口を紡ぐS子さん
きっとあの日ってのは再婚のことを話した時だろう


『再婚に反対してるんですか…?』

軽くうなずき
『あの子もね、(私)さんと同じように心に傷を持ってるの
だから時間かかるかもしれない
だけど私諦めないから』

しばし沈黙が続く


『この写真もらっていいですか?』


『えっ?
別に構わないけど…』






後にこの写真は紛失することになるんだけれど、私が落ち込んだ時、泣きそうになった時、何度も助けてくれた

No.32 15/06/23 20:48
匿名 

『あっいた!』

初詣客でごった返す中、S子さんを見つけた

向こうも私に気づいたのか笑顔で手を振る

車で行くと渋滞に巻き込まれるから嫌だと電車で向かったお父さんだが、あまりの人の多さにすでにヘトヘトになっていた

『凄い人ね!』

『いやぁ参ったよ
昔の通勤地獄を思い出した』

私はお父さんとS子さんの間に入り、2人の腕を組んで歩いた
参道を抜け境内に着く
そこで3人揃ってお参り

横目でチラッと2人を見る

(きっと同じことをお願いしてるんだろうなぁ)



お参りを済ませ参道をまた歩いてると
『部長、少し休みません?』
と言ってきた

『ここで部長はないだろう』

『そうでしたね、すみません』

そんなやり取りを見てると何か新鮮な気持ちだった

『へぇ~、お父さんのこと部長って呼んでるんだ』

『会社ではね』

『じゃあ部長、あそこで一休みしますか』

2人の腕を引き参道にあるお茶屋さんにはった




『それで、S子さんは部長のどこが好きになったの?』

2人とも甘味を食べる手が止まる

『何?馴れ初めききたいの?』

『やめろよこんなとこで…』

対称的な2人の顔
お父さんは嫌がったが、お願いするとS子さんが話してくれた

『お父さんって時々抜けてるでしょ
普段からぼ~っとしてて…
会社でもほとんどそんな感じなんだけど、ちゃんと見てるのよ』

『何を?』

『みんなを…』

『みんな?』

『そう、特に元気が無い社員とか、悩んでる社員とか、見つけては声をかけたりアドバイスくれたりして
で、ただぼ~っとしてるだけの人かと思ったら、部下の失敗を素早くフォローしてなんとかしてくれるの

だから…
そのギャップに…
やられちゃったのかなぁ…』


終始赤い顔をしてうつむいてるお父さんに
『で、部長はS子さんのどういったところを好きになっ…』『言えるか!』
かなり食いぎみで打ち消された

そんな2人を見て、私もいつかこんな素敵な恋をするのかなぁ…
と、期待に胸を膨らませていた

No.31 15/06/22 23:44
匿名 

『そう言えば今日、正月あけたら会いたいって言ってたぞ』

『ホント!?』

『ああ、初詣行こうって』

『(兄)さんは?』

『う~ん…』
困った顔のお父さんを見てそれ以上きくのを止めた

『じゃあ写真持ってきてって頼んどいて』

『分かった言っとくよ』




片付けが終わり脱衣場に行く

お風呂のドアごしに入浴中のお父さんに話しかけた

『お父さん…』

『ん~?』

『あのさ…(兄)さんって、やっぱり…
結婚のこと反対してるの…?』
今まで聞きたかったけど何か怖くて聞けなかったことだ

『ん…』

黙ってしまった
気まずい空気が流れる

『まぁ…男の子だからなぁ、男女の違いもそうだが、母親が出来るのと父親が出来るのは違うのかもしれんなぁ…』

『じゃあさ…
(兄)さんが反対したら…結婚しないの…?』




『しないって言うより、出来ないよ
それがお互いが決めた条件だからな…
逆でもそうだった筈だよ…』

『そっか…』

『それに子供達の説得はお互いの親がするようにしてるから、お父さんは何も出来ない
ただ、お前がS子さんと仲良くすることは、説得する彼女の力になれるはずだよ』



『うん…』




それしか言えなかった…





そうして年が明けた

No.30 15/06/22 23:12
匿名 

あれから3ヶ月が過ぎた

電話や手紙のやり取りはあったが、会えずに過ごすのはやっぱり辛い

今日は大晦日
1人夜のベランダでいつもと変わらぬ風景をただぼんやりと眺めていた

『今年は色々あったなぁ…』

突然の再婚宣言、S子さんとの出会い、トラウマの克服

様々な環境の変化に追いつくので精一杯だった一年
来年の今頃は誰とどうしてるだろう

何気なくそんなことを考えてた


すると見慣れた車がこちらに向かってくる
お父さんだ

この時期お父さんの仕事は忙しいのは知っていた
なのでS子さんと中々会えないこともしょうがないことだと思っていた

バタン
車を駐車場に停め降りてくる

『お帰り!』

いきなりの声に辺りをキョロキョロ見渡すが、私を見つけられないでいる
その姿があまりに滑稽で、相変わらず天然だなぁと可笑しくなってきた
『こっち!』

ようやく見つけたお父さんは顔を上げ
『おお、寒くないか?』

『大丈夫!お腹は?』

『ペコペコ!』

そういうので、すぐに台所へと下りていく



『今日は年越しそば』

遅い夕食の用意が整った時には、すでに着替えたお父さんがいた

よほどお腹が空いてたのか、アツアツ言いながらそばをすする

その姿を笑顔で見つめる私に気づき
『何?』
と、照れ臭くきく

『いや、可愛いなぁって』

ブッと吹き出すとあわてて側にあるティッシュに手を伸ばす

『S子さんって、こういうとこに惚れたのかなぁ』

『なんだよ急に…』

こういう風景を不思議に思う人もいるだろうが、私はこの年頃によく見られる『父親への嫌悪感』的なものが無かった

No.29 15/06/22 20:34
匿名 

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう

両手でポンッと両膝をたたき
『じゃあそろそろおいとましよっかな』

とたんに私の顔が曇る

そんな私の頭を撫でさらに抱きしめてくれた


『次いつ来るの?』

抱きしめながら小声で
『今はできるだけ(兄)についていてあげたいから、いつとは言えないけど…
また時間できたら電話するから』

S子さんの胸の中で頷いた

立ち上り帰り支度をするS子さんに
『じゃあさ、次来る時(兄)さんの写真持ってきて欲しい』
と言うと

『写真かぁ~
確か入学式のがあったと思うから』

『約束ね!』
指切りした

『(私)、今日はお父さん車で送っていくから』

『私も行く!』

『ちょっとは気ぃきかせてくれよ』
いたずらっぽく笑うお父さん

まぁ大人同士の話もあるだろうしなぁ




靴を履く2人を玄関先で見送る
やっぱりちょっと寂しい…

『早く結婚すればいいのに…』
ホント無意識にボソッと呟いた

2人とも同時に顔を上げた
ビックリしてるようだった

『結婚…していいの?』
S子さんが驚きながらきく
結婚に賛成する言葉を口にするのは初めてだとその時気づいた

『当たり前じゃん!その為に来てるんでしょ!』
照れ臭くなった私は自分の部屋へと駆け込もうとした

それを止めるかのように
『(私)さん!
私達、幸せになろうね!』
涙をうかべながらも笑顔で言うS子さん

『うん!じゃあね!』
そそくさと階段をかけ上る

いつの間にかS子さんに対して敬語で無くなってたことに気づき、本当の親子のような会話ができてたことを素直に喜んだ

No.28 15/06/22 18:26
匿名 

今日はS子さんがやってくる日

鏡の前にちょっとおめかしして立っていた

S子さんはもちろんだけど(兄)さんに会うことが緊張であり、楽しみでもあった

ピンポーン

(来た!)

初めはどんな顔で会えばいいのか分からず、お父さんの後ろに隠れる

『こんにちはー
(私)さん久しぶりね、元気にしてた?』

『はい…』

(あれ?1人?)

S子さんは私に両手を広げハグしようとする
一瞬躊躇したが、それを受け入れ抱きしめた

(大丈夫だ!)
闇どころか安らぎを感じる

『(兄)さんは?』
『え?』

お父さんに顔を向け小声で
『言ってなかったの?』と呟く

何も言わず2、3度小さく頷くお父さん

『ごめんね~
(兄)、怪我して今入院してるのよ』

『え?そうなんですか?』
私は目を丸くした

先ほどのS子さんとのやり取りで、お父さんか知っていたことは分かった

だったら言ってくれればいいのに!
気合い入れておめかしした私が馬鹿みたいじゃん

お父さんにちょっとイラついた

リビングへ移り用事した飲み物に口をつけるS子さん

『ひどいんですか?』

『うん…ちょっとね
だけど今は回復に向かってるから治ったら連れてくるから』

『そうなんですか…』

S子さんとはあの日以来

やはり普通の状態ではお母さんと言えない自分がいた

No.27 15/06/22 17:45
匿名 

ご要望がありましたので、感想スレ立てました

以降こちらはレス制限いたします

ご意見、感想は、お手数ですが感想スレの方にお願いしますm(__)m

これからも『お兄ちゃんと結婚しました』をよろしくお願いします(〃ω〃)

No.26 15/06/22 13:17
名無し26 ( ♀ )

>> 25 確かに…

じゃないと横レスで途切れ途切れななっちゃう💦💦

No.25 15/06/22 11:41
携帯小説ファン25 ( ♂ )

感想スレを立てると、応援者がたくさんいることが分かりますよ😃

No.24 15/06/22 00:53
旅人24 ( ♀ )

初めて携帯小説にハマってしまいました 次回どうなるのでしょうか? 情景がすごく伝わってきます

No.23 15/06/22 00:26
小説大好き23 

>> 21 ありがとうございます 何か否定的なご意見ばかりだったので、書くのを辞めようかと思ってました (打たれ弱いので(´・ω・`)) … 私も楽しみにしてますよ

マイペースで良いので、お願いします

No.22 15/06/21 23:55
匿名 

その日以降S子さんと会えない日が続いた

お父さんにきいても
『今会社が忙しい時期だから』
『体調が悪いらしい』
『今週は用事があるみたいだから』
と何かしら理由をつけて私を納得させようとしていた

でもねお父さん
最初に『え~っと…』とかつけると一発で嘘とわかるんだよ


夜遅くに電話で深刻そうな顔で話してたり、妙にソワソワして家の中を熊みたいにウロウロしてたり、1人真っ暗な中でお酒飲んでるのを見たりする度、事の深刻さが感じとれるようになっていた


会えない日が続いたため一度電話で話した

電話口のS子さんはいつもと変わらず優しく私の話を聞いてくれた

でも
『今度いつ会えます?』
の問いには言葉を濁すだけ
それが私の不安を余計に増幅させていった

前回のことで無くなったと思ってた心の闇が、不安になるとまた私を攻め立て、カウンセリングに通うことになった


会えないまま1ヶ月が過ぎようとするころS子さんとまた電話で話す機会があり今度の日曜は必ず会いにくると約束してくれた


私は嬉しさで跳びはねお父さんに抱きついて喜んだ

でもお父さんは相変わらず深刻な表情

私は浮かれてたのかその深刻な表情のワケも考えず次会える日を思い床についた

No.21 15/06/21 22:54
匿名 

>> 20 ありがとうございます

何か否定的なご意見ばかりだったので、書くのを辞めようかと思ってました
(打たれ弱いので(´・ω・`))

1人でも楽しみにしてくれてる方がおられるならば頑張ってみようと思います

更新ゆっくりですが、よろしくお願いします

  • << 23 私も楽しみにしてますよ マイペースで良いので、お願いします

No.20 15/06/21 16:44
ぱんだ☆ ( 30代 ♀ tneL )

主さん、こんにちは!
楽しみに、読ませて戴いております。

私もS子さん同様、元・旦那にDVを受け廃人になりかけました…

こんな私ですが、楽しみに…と言ったら不謹慎ですが、小説を楽しみに待ってます(^-^)

主さんのペースで構いませんので、これからも読ませていただけたら…と思っています(^_^)v

No.19 15/06/20 20:13
匿名 

その後私はS子さんにしがみついたまま離れなかったらしい

剥がそうとするとパッと目を覚まし
『行かないで!』
と、泣きわめく
まるで乳飲み子みたいだったよ
後にお父さんが笑いながら話してくれた


S子さんはいつもなら夕飯前には必ず帰るようにしていた

当然ながらS子さんにも子供がいるため、またこの外出は自分の結婚のためのものだから息子に迷惑だけはかけまいとするS子さんなりの気配りだった

それを私が我が儘言うもんだから結局時間は夜8時をこえてしまっていた

もちろん途中で家には連絡済み

でもいい加減帰らなくてはならないので、その旨を切り出す

『(私)さん、もう帰らなくちゃ』

『嫌!今日はここにいて!』

『(私)!いい加減にしなさい!』

お父さんの怒号が響きわたる

するとS子さんは私を包み込むように抱きしめ
『今日はありがとう、お母さんって呼んでくれて
私も(私)さんのことが大好きよ
自分の娘だと思ってる
でもね家には同じくらい大事な息子もいるの
だから分かって、お願い…』

この時S子さんの子供に嫉妬した

でもこのまま我が儘言って嫌われるのが怖かったのでうなずいてその手を離した

帰り際S子さんは
『今度は必ず息子も一緒に連れてくるから』
と言い軽くお父さんにうなずいて帰っていった

私も落ち着きを取り戻し次に会える日を楽しみしよう、息子さんとも仲良くなれるようにしようと心に決めて見送った



だけど、この私の我が儘が(兄)さんとの壁を厚くしてしまっていようとはこの時はまだ気付いていなかった

No.18 15/06/19 23:51
匿名 

ふと我にかえり、差し出されていた手を掴む


その瞬間私の中で何かが壊れた



うわあああああぁぁん‼

お母さああぁぁん‼


S子さんの手から体へと抱き付き泣きわめいていた

お母さあああぁぁん‼

お母さああぁぁん‼


私の中で壊れたものからありったけの感情が流れだす

自分でも制御できないくらいの感情


その全てをS子さんにぶつけていた


うわあああああぁぁん‼


お母さああぁぁん‼





どのくらい泣き叫んだだろうか

私は意識を失っていた




『大好きな母親からの暴力で逃げ場を失った(私)さんは、母親を憎むことでその現実から逃避しようとしてた
そしてそれは(私)さんにとって最善で唯一の防衛本能だったのかもしれない』


その後通うことになったカウンセラーの先生の言葉だ

あまりの出来事に戸惑っていたS子さんだったが、最後まで私を優しく抱きしめてくれた









私はあなたを傷つけたり捨てたりしない







No.17 15/06/19 23:32
匿名 

たどたどしくゆっくりとだけど自分の言葉で夢の話を話し終えた
そして最後に

『私、S子さんのことが好きです
S子さんと家族になったらどんなに幸せか

だけどそう思う度に…胸が…』

自分の胸を強く握り俯いてしまった

その前にスッとS子さんが手を差しのべる

『私はあなたを傷つけたり捨てたりしない』

嬉しい言葉だけどその手を握りしめることが出来ない

『そっか…
前のお母さんと重なっちゃったか…』
手を伸ばしたままS子さんは語り出した

『私もね、前の旦那から暴力を受けてたの…』

『え…?』
思わず顔を上げる

『怖いんだよね…絶対的な力って…
女は特にそう

(私)さんなんかまだ幼かったから逃げることもできなかったでしょう?』

S子さんも同じようにあの地獄を味わってたなんて

『その相手が自分の好きな人ならほんとに悲しい…』





心を射ぬかれた


好きな人?

違う!私はあの人なんか大嫌い!
あの人なんか…

不意に小さな頃の私が現れた

初めは悲しい顔だったのが笑顔に変わっていく
そしてあの人に抱き付き幸せそうに顔を埋める

違う!私はあの人なんか大嫌い!

『(私)…』
振り向くとあの人が私を呼んでいる
記憶に微かに残ってた
いや、自分の中に封じ込めてたあの人の笑顔

そうだ…






私はお母さんが大好きだった

No.16 15/06/19 22:25
匿名 

コンコン
『(私)、S子さん来てくれたぞ』
ドア越しにお父さんが呼んだ

『分かった、今行く』

あれから2時間くらいたっただろうか、S子さんが来てくれた

その間、服を着替えS子さんにどう話そうか考えてた

全てを話そうと言ってもどうやったら上手く伝えれるのか分からない

考えてた間あの人のことやS子さんとサヨナラすることを思うとまた涙が溢れだす

とにかくS子さんの待つリビングへと足を運んだ



『こんにちは』

『こんにち…』
泣きはらした私の顔を見てS子さんは言葉を失う

私の元へと近づき手を伸ばす

ビクッ
条件反射で私はそれを拒否してしまった

『ごめんなさい』
悲しい顔で出した手を引っ込めた

『とりあえず座りましょ』
そう言ってソファーに座るS子さん

その仕草1つ1つに凜とした大人の女性を漂わせる

そして理想の母親のようないつもの笑顔で迎えてくれる

この人に何の躊躇もなく甘えられたらどんなに幸せだろう

だがそう思うとあの苦しみが容赦なく胸を締めつけてくる

私はS子さんの隣にちょこんと座った

『ごめんね…私のせいだよね』

『違うんです…私…』

『お父さんまで取られちゃうと思ったの?』

一瞬キョトンとした

確かにS子さんと会う前はそんなことも考えて不安になったこともあった
今でもそのことが心のどこかで引っ掛かってるのかもしれない

後から聞いたとき2人ともそれが発作(?)の原因と思ってたようだ

『それもあるかもしれないけど、多分違うんです』


私はゆっくりと昨夜見た夢のことを話しだした


No.15 15/06/19 21:16
匿名 

目が覚めるといつもの天井

だけど無性に悲しい気持ちだ

起きたばかりというのに涙が溢れだして止まらない

再び目を閉じる



『お父…さん…』

微かな記憶を頼りに昨夜のことを思いだす




夢のこと…
(あの人の夢をみたんだ…)

(それでパニックになって…
お父さんが来てくれて…)



『2人で暮らそう…』

(え?
2人で暮らすってどういうこと?)

目を見開く

(S子さんは?)

分からないが、これ以上考える気力もない

(とにかくお父さんと話さなくちゃ)

起き上がろうとすると体が重ダルく節々が痛む

途中途中壁に寄りかかるように階段を下りリビングへと向かった

お父さんがソファーに腰掛け頭を抱え込むように座ってる

『お父さん』

『おお…
起きたか』

その顔はとても寂しそう
目に力もない


『今日S子さん来るんでしょ?』

『いや…』

力なく笑う

『もういいんだ』

『どういうこと?』

『彼女とはもう会わないよ
と言っても会社では会っちゃうけど、それ以上の付き合いはしない』

『え?』

『ごめんな無理させて』

『違うの…お父さん』

『ほんとにもういいんだ…』

その場にヘタレコム私

『違うの…S子さんは悪くないの…』

立ち上り私を抱き寄せる

『もう、お前のあんな姿は見たくない』

お父さんの優しさに泣き崩れそうになる

でもここで泣いたら終わっちゃう

『お願い…もう一度だけS子さんに会いたい』

会ってどうなるかは分からない

ただこのまま会えなくなるのは嫌だった

会って全てを話そう

たとへその先に『サヨナラ』が待っていたとしても…


No.14 15/06/19 14:41
匿名 

『いやあぁぁー!』

自分の叫び声で目が覚める

まだ夢と現実の区別がつかずのたうちまわってた
『いやあぁぁー!』
『やめてぇ!』
『来ないでぇー!』

実際この時の記憶はない



(後日お父さんから聞いた話だと)

いきなりの凄い物音で目が覚める

(私)の叫び声や物が割れる音
強盗が入ったに違いない!
そう思ったお父さんは近くにあった掃除機の吸い込み口の部分を取り外し私の部屋へとかけ上る

『(私)!大丈夫か!』
ドアを開き電気を付けとっさに身構える!

だがそこにはベッドから転げ落ち、身を縮めた私…
しか居ない

多少部屋は荒れていたが、窓はすべて施錠されており人が出入った形跡などない

すぐさま私に駆け寄り肩を揺らし声をかける
『(私)…』
ビクッ
『やめてぇ!』
そう言いながら震える私の姿ですべて悟った

(俺のせいだ!
俺が再婚を認めさせようとしたから…)

お父さんが私を優しく抱きしめる
ビクッとしながら小さな声で
『やめて…』
『ごめんなさい…』
を繰り返す私に

『ごめんね…
もうどこにも行かないから…
またお父さんと2人で暮らそう』

そう言ってしばらく抱きしめてると
私はいつの間にか眠りについていた

No.12 15/06/18 22:04
匿名 

その日はS子さんが遊びに来る前の日の夜

夢の中にそいつは現れた

雨に打たれながら遠くを見つめる幼い私
その目線の先にはお母さんと手を繋いで帰るお友達

とても寂しい記憶の中の幼い自分を今の自分が見てる感じだ

幼い私は歩きだす

そうだ
私は雨で涙をごまかして泣きながら帰っていってた





家の前に立つ
玄関を開ける幼い私を今の私が止めようとする
『開けちゃダメ‼
あの女が‼』

そう

そこには私を産んだあの女がいた



そしてゆっくりと振り向く



ただ今の私にその女の顔の記憶が曖昧なのかS子さんとダブって見えた



そのままあの時と同じように私を地獄に落としたあの言葉を放った












オ・マ・エ・サ・エ・ウ・マ・レ・テ・コ・ナ・ケ・レ・バ

No.11 15/06/18 21:08
匿名 

正直少し心が踊った

寂しい幼少期を過ごした私にとっては、常々兄弟が欲しいと思っていたからだ

中でも兄という存在に凄く憧れていた


その場はお開きということになり、店を出る時、女将さんから声をかけられた
『いい話だったみたいね
来たときとはまるで別人みたい』

S子さんも聞いてたので恥ずかしかったけど、理想のお母さんと、欲しかった兄との生活に期待してたのは確かだった

しかし、そう思えば思うほど心の闇が大きくなり呼吸が苦しくなる





家に帰り、その日はお父さんと一緒に夕飯の準備をした

会話はもちろんS子さんのこと

でもやっぱり会話が盛り上がれば盛り上がるほど胸が締めつけられる

その都度険しい顔になる為、お父さんにしたら気にいってくれたのか、そうでないのか分からなかったらしい

私の中に2人いるみたい

自分でも何故こうも苦しくなるのか分からなかった
次第に夜がふけるにつれ闇の部分が大きくなる気がして怖くてたまらない

恥ずかしいけどその夜はお父さんと一緒に寝てもらった



その日以降、S子さんとの交流が増えていった
ウチに来ることもあったし、外で会うこともあった
けど相変わらず(兄)さんが来ることは無かった

相変わらずといえば、私の中の闇もS子さんとの楽しい時間を過ごす度に暴れだす

特に触れた時なんか呼吸が苦しくて立っていられないくらいにひどくなる

そんな私を見るS子さんの悲しい顔を見る度に申し訳ない気持ちになった

ほんとに悔しい
何故こんなにも私の中の闇はS子さんを拒絶するのか?
自分で自分が嫌になる

そうやって自分の中の闇を恨みながら過ごしていってたら…


ついに

その闇が私に牙をむいた

No.10 15/06/18 17:37
匿名 

その後はしばし談笑

家では見ることの出来ないお父さんの話をしてくれた

私の天然はお父さんゆずりなんだ
と思った

話が進むに連れ私も顔を上げその人(以後S子さん)の顔をまともに見ることが出来るようになってた
(やっぱり綺麗な人だなぁ)

私の理想の母親の姿がそこにはあった

でもそう思うと自分の中にある黒いモノが激しく蠢くような不快感に襲われる

なのでこの時の私の笑顔はかなり微妙なものになってたはずだ

ともかく話も尽きようかとした所でS子さんが大きく深呼吸して私に笑顔を送り
『今日はほんとにありがとうね
すごく楽しい時間が過ごせました

何か私に聞きたいことある?』
と言われたので、私は恐る恐るきいてみた
『あの…
お子さんが…いるって…』

すると手を叩き
『そうそう!
(兄)っていってね(私)さんの2つ上の男の子がいるの

本当は今日連れてくるつもりだったんだけど…』

ちょっと困った顔をして
『その…何て言うか…
ちょっと…じゃないわね
結構…

クスッ
かなりの問題児なのよねぇ~』

意外だった

どう見てもお父さんよりかなり若く見える
(実際は3つ下)
のに私よりも2つも年上の子

しかも何故か女の子と決めていたのに男の子だったなんて…

No.9 15/06/18 13:40
匿名 

その人は続ける
『別に今日認めてくれって言ってるんじゃないのよ
今日来たのは娘(私)さんにお願いがあって来たの』

(お願い?)

私が顔を上げその人と目が合うと、軽く微笑み

『私があなたのことをもっと知りたいし、あなたに私のことをもっと知って欲しいから、これからそういった…時間を…
ちょっとずつでいいから…ちょうだい…?』

軽くその人を見た

ちょっと申し訳なさそうな顔をしていた
もちろん威圧感などない

その表情を見てたら思わずコクンとうなずいてた

『ありがとう』
その人のとても嬉しそうな顔に自分もつい顔が綻ぶ

その後お父さんの
『この先家に連れてくることもあるだろうけど、許してくれるか?』
との問いにも同じくうなずいていた



No.8 15/06/17 23:52
匿名 

3時

向かった先は意外に近く、お父さんともたまに通う料亭

そこの奥座敷に通された

『いらっしゃいませ』

『ああ…ごめんね
今日は食事じゃないんだ』

『ええ、伺っております』

と笑顔の女将さん

いつもなら私も挨拶するのだがそれどころじゃなかった

そんな空気を察してか、すぐに去っていった

そして数分後

『お連れ様がお見えになりました』

その言葉と同時に女の人が入ってきた

私はとっさに俯いていた

『ごめんなさい遅れて』

『いやいや大丈夫…だけど…
あれ?1人?』

『やっぱりダメだった』

私は『?』と思ったけど顔を上げれずにいた

『こんにちは娘(私)さん』

『こんにちは…』

蚊の鳴くような声で答える

(優しそうな声)

でもやっぱり顔は上げられなかった

そこで飲み物を頼み、届けられるまではほぼ無言

飲み物を一口二口飲んだところで
『ほら、いい加減顔を上げなさい
失礼だろ』
と言うお父さんに対して
『いいのよいいのよ、やっぱり警戒しちゃうわよね』

その言葉に初めて顔を見た

その人はすごく優しい笑顔でこっちを見てた
それよりも一瞬我を忘れるほどの美人

『そのままでいいからちょっと話聞いてちょうだいね』

話の内容は
・その人はお父さんと同じ会社で働いてる人
・ちょっと前から正式に付き合ってること
・いずれは結婚をして一緒に暮らしたいと思ってること
・でもお互いの子供達が納得しない内は結婚しないこと


覚悟してたとはいえ、やっぱりショックだった

(え?でもお互いの子供達?
ってことはこの人にも?)

No.7 15/06/17 23:00
匿名 

その日の朝
いつもなら朝食を作る時間だけど私はまだベッドから起きれずにいた

しばらくするとお父さんがノックしてドア越しに

『おきてるか?』
『嫌なら無理しないでいいんだぞ』

昨夜までの私の態度や起きてこないことからやはり私の心境がつたわってるらしい

私は応えなかった

すると部屋を離れるお父さんの足音

その足音がすごく淋しそうで…
一瞬離婚した時の顔がフラバした

いてもたってもいられなくて、気がつくとベッドから飛び起き部屋を出ていた

『大丈夫!
ごめん!すぐ用意するから!』

『そうか…
待ち合わせは3時からだから』

『うん』

ここまでくると逃げられない
お父さんの為にも会うだけ会ってみようと思った

No.6 15/06/17 22:43
匿名6 

>> 4 削除されたレス え?何が問題?

自伝小説は、ここじゃダメなの?

No.5 15/06/17 22:42
匿名 

ただ勉強だけはしっかりさせたかったらしく、家庭教師か塾に通わせたいと言ってきたので迷わず塾を選んだ

それからは友達も増えやっと中学生らしい(?)生活を送れるようになった

でもそんなある日お父さんから
『次の休みの日開けといてくれないか?
会わせたい人がいる』
と言ってきた

『うん…』
とは一応返事したものの正直嫌な予感しかしなかった

いくら鈍感な私でもさすがにこれは気づく
例のトラウマのこともあるし、不安で眠れない
でもそこら辺分かってくれてるのでいい人なんだろう
でも私が邪魔な存在になったら?
でもお父さんがこのままひとり身じゃ可哀想だし、幸せになってもらいたい
でもやっぱり怖い
でも…でも…でも…

私がはっきり『嫌‼』と言ったら優しいお父さんのこと
きっと独身のままだろう

でも私がいずれ嫁ぐ時お父さんは独りぼっちになってしまう

毎日がこういう自問自答の繰り返し
まるで出口のない迷宮に迷いこんだみたい



そして…

その日がやって来た…

No.3 15/06/17 21:12
匿名 

そんな生活を続けるには部活なんか出来ないし、色恋沙汰なんてとんでもない

お父さんは会社の重役で夜も帰りが遅く、生活費を貰っては学校と家事の毎日

なもんで友達も徐々に離れて行って…
寂しくないって言ったら嘘になるけど、会社が休みの時には必ずお父さんと2人で出かけたり一緒に遊んでくれたからそれだけでも頑張っていけた

でもいつもお父さんと過ごしてたから
『たまには友達と遊んできてもいいんだぞ』
『勉強のほうはちゃんとやってるのか?』
とか、学校での話をほとんどしない私に疑問をいだきだし、結果今の現状を問いただすと
かなりショックを受けたらしく、病床のお爺ちゃんの看病でてんてこ舞いのお婆ちゃんには頼めなかったから家政婦を雇うことにした


だけど…

初めて家政婦さんが、家に来たとき…
トラウマなのか大人の女性と家の中で2人きりっていうのが耐えきれず、軽いパニックを起こしてしまった

お父さんはそのことにもショックを受け、私が学校に行ってる時間帯だけということでとりあえずは解決
だけどこのこと以来お父さんは私に負い目が出来たようで、涙ぐんで謝ってきた

No.1 15/06/17 20:41
匿名0 

私が、小3の時両親が離婚

って言うか私を産んだ人が男作って出ていった
正直この人に『母』という文字すら使いたくない
ってほど嫌い

物心ついた時からいい思い出などなく、虐待や酷い言葉で罵られたり嫌なことばかりで、お友達がお母さんと仲良く帰ってるのを見ては独り泣いてました

だからお父さんから
『今日からお父さんと2人で暮らそう』
と言われた日はちょっと嬉しかった

でもお父さんの悲しい顔を見てたらそんなこと言えなかった

それからお祖母ちゃんがちょくちょく来ては家事をしてくれて…
私も幼心にお手伝いしなくちゃならないと思い、中学に上がるまでには一般的な家庭料理くらいはマスターしてた

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