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あの人が俺の前に現れた

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自由人
16/06/29 14:57(更新日時)

俺は異性を好きになったことがない。

30年間生きてきたが、
まるでわからない。

だが、何だかおかしいんだ。
あの人は何者なんだ?

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No.2019517 13/10/30 15:13(スレ作成日時)

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No.101 15/03/20 11:28
自由人 

俺は、そんなふうにして
自分の存在を自分で感じられずに
行き場のない思いだけを抱えて
いつも消えそうになりながら生きていた。

もちろん友だちはいた。
先生もいた。
思春期になると
俺を泊めてくれるような面倒見がいい先輩たちもいた。

ある日、セックスを覚えた。
乱交パーティーのようなものに誘われたのがはじまりだ。
まだ中学生だった俺は
その初めての経験で目が覚めた。

No.102 15/04/01 19:43
自由人 

俺のモノをその女の穴に入れると
女は気持ち良さそうに喘いだ。

俺はその時、はじめて
自分の存在を実感できた。
俺が動けば女が声をあげる。
俺がいなければ
この女は気持ちよくならない。
俺は確かにここにいる。

セックスは俺の存在を確認させてくれる大事な儀式になった。
叩いたり噛みついたりすることも
セックスの中では許された。
女たちはみんな、気持ちよくなっていると頭がおかしくなっているんだろう。
乱暴なことをされても
むしろ興奮していた。

俺はそれからというもの、
自分の存在が危うくなると何度も何度も
セックスをした。
どうすれば気持ちよくさせることができるか、
それも数をこなせば習得できた。

女たちは、俺のセックスを上手いといった。
俺とセックスをするために金を払う女も出てきた。

だが、俺はそんな女たちには興味はなかった。

俺はただ、自分の存在を確かめるために
セックスをした。
イクときは、決まって思い出していた。
父親が俺を殺そうとした時の恐ろしい顔と
俺を空気のように扱う冷たい顔を。

自分が人間になりきれない哀しさと
虚しさが押し寄せてくる。
だが、
俺を感じて悶える女たちがいる限り
俺はちゃんとこの世に存在するのだ。

No.103 15/04/02 15:15
自由人 

それと同時に
俺には殺人衝動が芽生えていた。
はっきりといつからだったかは覚えていない。

女があまりにも無防備になる姿をみて
人間の弱さを知った。

女が俺の下にいるときは
これで首をしめたら死ぬんだろうなと
考えていた。

俺の手によって
誰かが苦しみ、その命を終わらせる…
俺が誰かの命を握っている
そんな感覚はきっと最高なんだろう。
自分が存在するからこそ
相手の命に触れられるのだから。

だが俺は必死にその衝動を抑えるしかなかった。
殺してしまったら
この世では生きていけない。
俺は自由にはなれない。
だから、ひたすら我慢するしかないのだ。

No.104 15/04/02 18:35
自由人 

俺はつまり

プレイ上、Sなのではない。
本物のサディストだ。

俺の願望をいえばきりがない。
俺は頭の中で
いつだって人間をギタギタに切り裂いている。
ぐちゃぐちゃにしている。
全てを打ち明ければ
誰もが怖がるだろう。
気分が悪くなるだろう。

俺は自分を隠すしかない。
だがそれを隠せば隠すほど
俺はいなくなる。

俺はちゃんと生きているんだろうか…

俺はいつだってその疑問を持ち続けて
息をしている。

No.105 15/04/04 01:00
自由人 

俺はこんな自分の生い立ちを、
性癖を、
弱点を、
他人に話したことはなかった。

どいつもこいつも信用ならなかったからだ。
俺は誰も信じていなかった。

いつも、どんなときも常に緊張していた。
人間という人間の全てに警戒していた。

女とセックスした後でさえ
うっかり眠ってしまうなどということはしない。
眠るという行為は一番隙がある。
殺されるかもしれない瞬間だ。

だが、
なにもかも不思議だ。

なぜMには、話せるのだろう。
なぜMの前では眠れるのだろう。

そしてMはなぜ
こんなに恐ろしい俺を受け入れてくれるのだろう。

ああ…
Mが俺の母親だったらなぁ…

俺はもう一度そう思い、ため息をついた。

きっと笑われるようなことなんだろう。
この歳になって
俺はまだ
愛がほしいと思っている。
両親からの愛が。

愛ってなんだろう。
どんなものなんだろう。
親の愛というのは
そんなに温かいものなのか。
知りたくて知りたくて求めているが
答えなど永遠にでない。

俺の両親は結局俺を抱きしめてくれないまま
死んだ。
父親は俺が高校生のときに事故死。
母親は俺が二十歳のときに病死した。

No.106 15/04/04 01:05
自由人 

結局、聞けなかった。

なぜ俺を虐待してきたのか。
俺のなにが悪かったのか。
俺を嫌う理由はなんだったのか。

死んでしまっては
永遠に答えは出ない。

両親からの微笑み、
温もり、
安心感…

それを手にいれることは
俺にはできなかった。

No.107 15/04/10 15:20
自由人 

あなたは、本当によく頑張って
ここまで生きてきたね。

Mは俺にそう言った。

俺は他人にそんなことを言われたことがなかったから違和感があった。

俺は頑張ってきたんだろうか…?

俺はずっと自分が悪(あく)だと思っていたから
頑張るとか頑張らないとかがわからないよ。

そう俺がいうと

あなたは、悪(あく)なんかじゃないよ。
本当によく頑張ってる。
たくさん我慢をしてる。
殺人衝動とも闘ってる。
あなたが持つ性癖は、あなたのせいじゃないんだよ。 あなたは何も悪くない。
あなたはね、とても優しい人だよ。

Mはそう言って
優しい眼差しを俺に向けた。

No.108 15/04/22 15:59
自由人 

俺は今まで
ひとに、そんなふうにあったかく受け入れてもらったことはなかった。

それ以前に、
俺はひとを信じてこなかったため
受け入れてもらえるように自分から心を開いて
弱味を見せることもしたこともないのだから
無理もないか…。

いつだって
一人で考えてきた。

俺はなぜ両親から愛をもらえなかったのか。

俺が何か知らないうちに、気づかないうちに
悪いことをしたに違いない。

殺人願望も秘密にして生きていこう。
誰かに話したら
俺は異常者扱いになるに違いない。

そうやって
俺は自分を悪者にしながら
世間から隠れるように生きてきたんだ。

No.109 15/04/23 07:58
自由人 

俺は、Mと一緒にいる時間を
一番大事にしたかった。

とはいっても、
Mと会える日は月に1回か2回。
会えたとしても
仕事があるため昼食を食べる程度の時もある。

朝から会えても
Mは子どものために早く帰るので
夕方はせいぜい4時ごろまでしか会えない。

もっと一緒にいたい
独り占めにしたい
さらってしまいたい

そんな欲望はいつでもあるが、
求めすぎてはいけない。
お互いの生活パターンを変えすぎては
うまくいかないことが起きてくるからだ。

俺は、この瞬間Mと一緒にいることより、
この先、ずっと長い期間
一緒にいることを考えている。

俺にはどうしてもMが必要だ。
Mでなければならない。


Mもまた
俺と一緒にいることを楽しんでくれているようだが、
子どものことはとても大切にしている。

女は、狂いやすい。
狂う女をやまほどみてきた。
その場の感情で全てを投げ出してしまうような危うい女は少なくない。

気持ちよくなれば簡単に
中に出して…!
なんてことを声をうわずらせて叫んでいるのだから。

しかし、Mはそういう女ではなかった。
わきまえている。

だからなおさら俺は
Mに惹かれた。
尊敬すらしている。

笑ってしまうな。
女を尊敬できる日がくるとは。
この俺が。

No.110 15/04/24 14:30
自由人 

ラインがはいる。

明日あいてる?

Mからではない。

俗にいうセフレからの連絡だ。

ヤルだけの女たち…
一体何人いるのだろうか。
自分のセフレの人数さえ把握していない。
長く続いている女もいれば、
数回で疎遠になっていく女もいる。
忘れた頃に連絡してくる女もいる。
セフレなのだから
互いに割りきった都合のいい関係だ。
はじまりも
終わりもない。
付き合っていないということは
そういうことだ。

俺は自分の性癖から
女とのセックスはやめられなかった。
女とセックスしている時は
俺は存在している、それを実感できる唯一の作業だからだ。
セックス以外に
何が俺の存在を証明してくれる?
強いてあげるなら
殺人という行為ができたときだろうな。
それができないのなら
セックスしか思い浮かばなかった。

No.111 15/04/27 16:35
自由人 

久しぶりじゃん!
元気にしてた?

と女は言った。
この女とは、2ヶ月に1度くらいの回数で
関係がある。

女には彼氏がいる。
彼氏とのセックスに不満があるわけではないそうだ。
ただ、俺とのセックスも気持ちがいい
それだけの理由でセフレになっている。

女の運転でいつものホテルに入った。

余計な話はしない。
セックスをするために会っているのだから。

No.112 15/04/28 07:48
自由人 

女の感じている顔を上から見ながら
腰を突き動かした。

ああ…俺は確かに存在している…

俺はだいたいセックスの時、
頭の中は違うことを考えている。
女を見ながら
俺は俺のことを考えている。
そしてもっと俺自身を満足させるために
女を殺したくなる。
その衝動を抑えるのに必死だ。

女はそんなことも知らずに
あえぎ声をあげて俺にしがみついた。

相変わらずキスもセックスも
うまいね


女は着替えをしながら
笑って言った。

彼もそのくらい上手いといいんだけどなぁ

と続けた。

彼としてるとね、あなたを思い出すんだ。
あなたのキス、とろけそうなんだもん。
ねぇ、もう一度して。

俺は希望に応えて
女にキスをした。

ホテル代は女が払う。
だいたいの女がそうする。

私が誘ったんだもん。
ありがとね♪

と。

No.113 15/04/29 16:39
自由人 

俺の感情は全く動かない。
今までも
何回同じことを繰り返してきただろう。

どんなに美人を抱いても
巨乳を抱いても
俺にとってセックスは
ただ自分自身の存在の有無を哀しいほどに確認する作業。

それに対して礼を言う女たち。

需要と供給

こんな言葉がぴったりだと
俺は思っていた。

愛だの恋だの女に何の感情もわかない。
魅力も感じない。
愛着や執着もない。
これは人間としては欠陥だろう。

こんな俺から離れていく女たち。
逆に
利用する女たち。

いつだってそれで構わなかった。

だが、今の俺はちがう。
確かに変化がわかる。

Mがいる。
俺にはMがいる。

他の女を抱きながら
それを強く実感していた。

そして心の中で
Mをいつだって激しく求めている。

No.114 15/04/30 07:48
自由人 

俺はいつも気がつけばMを思い出していた。

今までに特定の人を常に思い出すとか
その人のことを考えて会いたくなるとか
そういう経験がなかった俺は
少しの戸惑いと、
それとは反対に心地よさも感じていた。

それは、今までの
冷たくすさんだ不安定な日々を癒してくれるようなものに感じた。

常に人を警戒し、疑って生きてきた俺に
Mは安心感をくれた。
安心して過ごすということが
どれだけ幸せなことか。

ではなぜ
俺は他の女とセックスしなければならないのだろう…
そこには矛盾がある。

心で求めているのはMだけだ。

だが、俺には
求められることが必要なのだ。
誰かに必要とされることで
やっと生きていられるのだから。
存在する証をくれるのだから。

俺は、俺の運命を
生い立ちを
そうすることでしか受け入れられなかった。

弱い。
だから、
Mだけを抱けない。
俺を求める女もまた必要だからだ。

足りなくて足りなくて
俺はいつももがいている。

この俺を治してくれる人がいるなら
治してほしい。

Mだけを抱いて生きていかれるように。
誰からも求められなくても生きていけるように。

No.115 15/04/30 22:14
自由人 

ああ…
またキスマークついてるよ…

Mは食事中にそう言って
俺の首筋を指さした。

Mの顔は
なんとも言えない、苦笑いなのか
呆れているのか
哀しんでいるのか、諦めているのか…
そのどれも当てはまる表情だった。

俺を見ないように
Mは一生懸命ドリアを食べていた。

俺は、しまったと思いながらも
言い訳も思い付かず黙ってしまった。

Mは下を向いて食べながら
言った。

仕方ないよね。
それがあなたなんだから。
あなたは、求めてるし、
求められてる。
あなたが誰とセックスしても
私は別にあなたと付き合ってるわけじゃないから
何も言えないし…。
それはわかってるつもり。
でも、やっぱりなんだか
とても哀しくなってしまう。
いやな女でごめんね。
嫉妬深いのは治らないみたい。
つまり、
あなたは私じゃなくても
いいのよね…。

Mはため息をつきながら
水をのみ、また食べ続けた。

Mは言った。

ごめんね。
今日はなんだか早く帰りたくなっちゃった。
これ食べたらバイバイしよう!

Mはもう笑っていた。

でも
俺の目は見てくれなかった。

No.116 15/05/02 23:41
自由人 

ああ…
いつもこの繰り返しになってしまう。

俺はそのたび
どれだけMが必要かを話す。

わかっている。
たいていの人に理解されないようなことをしているのは俺だ。

どの女を抱こうが
何も感じないというのに
Mは俺に言う。

私じゃなくてもいいのよね

と。

いや、Mでなければ駄目なのだが、
Mには通じない。

でも、わかろうとしてくれているのは
痛いほどよくわかる。


Mは辛そうに言う。

私、旦那に浮気されてたでしょう?
だから自信がないのよね。
私は、あなたと同じように求めてる。
変わらない愛を。
私だけを愛してくれる人を。
でも、あなたは
誰とでもセックスしてしまう。
誰かに誘われたら行ってしまう。
私は、自分がいらない存在に思えてしまうの。

No.117 15/05/03 16:11
自由人 

俺はMを何だと思っていたのだろうか。
まるで、聖母みたいに思っていたのかもしれない。
俺の救世主のように。

だが、それは甘えすぎていた。
俺はMに甘えていた。

Mは普通の女性だ。
俺には特別な存在だが
普通の女性なのだ。

愛されたい願望をもち
嫉妬心をもち
いつもそれと闘っている
一般的な女性なのだ。

Mは言った。

みんな自分が一番大事なんだよね。
みんな自分勝手。
あなたを受け入れようと、何度も
同じジレンマを乗り越えてきて、
よし!頑張れそう!と思っても
また同じことでへこたれてしまう。
あなたを理解したい。
その思いと同時に私は、
私を理解してほしいと強く思う。


食べ終えたドリアの皿を
店員がさげにきた。

Mは
ありがとうございます
ごちそうさまでした
と店員に笑顔を向けた。

No.118 15/05/04 00:30
自由人 

Mは食後のコーヒーを飲みながら言った。

私ね、思ったんだけど
あなたと身体の関係があるからこんなに辛いのかなって。
あなたとセックスするのをやめて、
普通のお友だちになるっていうのはどうかしら。
そうしたら、わたしは
今までのように何度も辛くなることはないと思うの。

俺は首を振った。

それは考えられない。だめだよ。
俺にはセックスが必要で、
あなたとのセックスは
他の女とのセックスとは訳がちがう。
俺が求めてるのはあなたなんだよ。

俺は落ち着いて話したつもりだったが、
内心は焦っていた。

俺は言った。

俺から離れないで。
二度とそんなこと言わないで。

Mはため息をついた。

離れるんじゃないよ。
セックスをしないだけ。
いつでも会えるよ。
あなたの価値観のなかでは
セックスは誰とでもできるものなんだろうけど、
私にとっては違うの。
セックスは、誰とでもできるものではないの。
特別な感情をもっている人としかできないの。
それが私の価値観。
だから、あなたのことを理解するためには、
あなたから身体を離す必要があるの。
そうしないと私は、
あなたを理解するどころか
嫉妬ばかり…。
私は、自分がかわいいから
自分が苦しまないようにしたいの。



俺はMをまっすぐに見て言った。

俺から逃げないで

と。

俺は思っていた。

苦しんでくれ。
俺のことを考えて苦しみ、狂ってくれ。
嫉妬してくれ。
俺を心の中に存在させてくれ。
生かしてくれ。
と。

No.119 15/05/06 19:35
自由人 

店員に笑顔をむけて
会計をすませるMを見ていると
たまらない気持ちになった。

俺だけが知るMの顔を見たい。

俺とセックスしている時の顔。
店員が知るよしもない顔。

今すぐに。

俺から離れようとすることは
許さない。

離れられないようにしてやる。

俺は気持ちをおさえながら
店を出て、Mと車に乗った。

やっと二人だけの空間。
昼間だから
二人の姿は外から丸見えだ。
だが、そんなことはどうでもよかった。

Mが助手席でシートベルトに手を伸ばしたが
俺はそれをさせないように
Mを引き寄せた。

No.120 15/05/08 15:01
自由人 

Mの唇を舌でこじあけた。

Mは俺の腕をたたき
押し退けようとしたが
そんな抵抗は
男の俺にとってどうってことないものだった。

Mの唇をなめまわし
口の中もなめまわした。

Mが抵抗しなくなることはわかっていた。
Mは俺の舌を受け入れ
自分の舌を絡めてきた。

俺から離れることなんかできないくせに
なぜ簡単に言ってのける?

Mのスカートの中に手をいれると
もう大事なところが
俺を待っていた。

こんなに身体が離れられないのに?
なぜ
俺から離れたいと言う?

俺は無言でMから唇を離すと
車を発車させた。

Mは慌ててシートベルトをすると
俺の横顔をじっと見ている。

ねえ、どこへいくの?

Mの質問には答えない。
答える必要もない。

俺は、したいようにする。
Mにわからせてやる。

俺から離れられないということを。
誰にも見せたことがない顔を
俺の前でさせてやる。

俺は前だけを見て無言のまま
車をはしらせた。

No.121 15/05/10 07:48
自由人 

ラブホテルの駐車場に車を荒々しくとめると
Mが

もうセックスはしないよ
あなたは他のひととすればいいんだから。

と言った。

俺はイライラした。

降りろ

低い声でMに命令した。

Mはびっくりした様子だったが
俺は続けた。

いいから、早く降りろ。


Mはシートベルトをはずし
静かに降りた。

俺はMの腕を強引につかむと
ホテルの中に入った。

部屋のことなんてどうでもよかった。
今すぐMをめちゃくちゃにする場所さえあればよかった。

部屋を決め、無言のMを引っ張りながら歩いた。

部屋に入ると
俺はもうどうにも抑えきれなくなっていた。

絶対離れられないようにしてやる

俺の気持ちはそれしかなかった。

Mを壁に押し付けると
俺はMの耳に口をつけた。

俺はあなたとセックスできなくなるなんて
考えられませんよ。
他の女が離れてもどうでもいい。
あなたが離れなければそれでいい。

俺はそうMに囁き、
Mの耳を舐めた。
耳の中、耳の裏までしゃぶりつくしたころ
Mの力が抜けていくことがわかった。

わかってくれますか?

俺はMの目を正面から見て言った。

Mは俺の目をじっと見つめながら
小さくうなづいた。

俺はMの唇に舌を入れた。
Mは何の抵抗もせずに受け入れた。
キスの音だけが部屋の中にいやらしく響いた。

首筋に舌を這わすと
Mが小さな声をあげた。

そう、おまえはここが感じるんだよな。
いいよ、なめてやる。
おまえが感じたいのなら俺はいくらでもなめてやる。

俺は心の中でMに話しかけながら
Mを抱いた。

No.122 15/05/11 17:47
自由人 

もっと、もっと
狂えばいい…
気持ちがいいならもっと欲しがればいい。
めちゃくちゃにしたい。
理性なんて捨ててしまえ。
ぐちゃぐちゃになった顔が美しいのだから。
よそゆきの顔は俺の前では必要ない。
俺はどんなおまえでもうけとめてやる。

Mの感じる顔を、俺はまっすぐ見ていた。
どんな表情も逃さないように。
声もしぐさも全て俺だけのもの。


Mは、まだぐったりとして
呼吸がととのっていない。

俺も全てを放出し、クタクタになっていた。

俺の汗を受けてか、
それともM自身の汗なのか…
Mの顔は光っていた。

Mは、かすれた声で言った。

あなたが、私のこどもだったらなぁ…。

俺はドキッとした。
まったくMの言葉は予想ができない。
他の女ならば
愛してるだの
セックスがよかっただの
ずっと一緒にいたいだの言うはずなのに。

Mはかすれた声で、息を整えながら続けた。

私は、
あなたを赤ちゃんから育てて…
毎日毎日抱っこして育てて…
たくさんかわいがって…
あなたを救いたかった…

私なら、あなたをひとりぼっちにはしない。
あなたに愛を教えたかった。
生きている喜びを味わえるように。
愛されていることが実感できるように。
存在している自分をちゃんと認識できるように。
私は…
あなたを育てたかった…。

あおむけになったMの目から
涙が出て、
つぎつぎと髪に流れていった。

No.123 15/05/11 22:41
自由人 

俺は同情されているのか…。

だが、悪い気はしなかった。
俺はMの前では
嘘をつかなくてもいいのだから。

何が哀しいのだろう。
なぜ泣いているのか。

俺がかわいそうな人間だからか?

親の愛を受けられずにここまで来て
俺は普段、自分の存在すら実感できない。

セックスに依存し、
セックスの時だけ居場所を得る。

殺人衝動を隠し
愛や恋を理解できず
誰を信じることもできず
心をひらけない

この俺はやはり
かわいそうなのだろうか。


Mの涙の意味はわからなかったが、
俺は思っていた。

俺はMから生まれたかったと。

そして思わず口走っていた。

俺をあなたの子宮に入れてくれ。
そしてあなたは俺を産んでくれ。
あなたの子どもにうまれて
あなたに育てられたい。
あなたとずっと一緒にいたい。

と。

馬鹿げたことだろうか。

俺は、なんだかできそうな気がしていた。

こんなセックスなんかの繋がりではなく
もっともっと深いところで
Mと繋がりたかった。

言葉ひとつで
さよならになってしまう関係など
捨ててしまいたかった。

No.124 15/05/13 23:17
自由人 

Mは、俺の目に手を当てた。
まるで
目を閉じなさいというように。

俺は目を閉じた。

Mはそのあともずっと
俺の目を撫でていた。
そしてその手は
額にいき、そのあと髪を撫でた。

優しい優しい手だった。

俺はもう目を開けようと思わなかった。
このまま眠りたい
そう思った。

Mの前でなら眠れる
警戒せずに眠れる…

気持ちがよかった。

髪の生え際を撫でられると
くすぐったかった。

安心感でいっぱいになった。

普通の家庭で育つ子どもは
きっとこうやって
眠りにつくのだろうな…
俺はそんなことを想像した。

一度も経験がなかった
誰かのそばで
安心して眠るという行為…。

俺は優しいMの手を感じながら
眠りについた。

それは本当に幸せな瞬間だった。

俺の気持ちは
ずっと幼い頃に戻っていたように思う。

ああ、
今、こんなふうに幸せな気持ちで眠ることができる子どもたちが
沢山いてくれたらいいな

俺はそんなことを考えていた。

No.125 15/05/14 13:04
自由人 

どのくらい眠っただろうか…

隣でMも眠っていた。

俺が目を覚ましたことに気づいて
Mも目を開けた。

ぐっすり眠れた?
そう言ってMはクスッと笑った。

俺は思わず

うん。
久しぶりに熟睡した…
とても幸せだった…

そう答えた。

時計を見れば眠っていたのは
ほんの1時間くらいだったから
俺はびっくりした。
もっともっと長い時間眠っていたように感じていた。

幸せ
そんな言葉が自然と出てくることが
俺らしくないなと
違和感をおぼえたが
正直な気持ちだった。

Mは

私も幸せだった。
あなたがぐっすり眠ってくれたから。

と言って
また目を閉じた。

今度は俺がMの髪を撫でた。

本当にかわいらしい人だと思った。

俺たちは
なんて不思議な関係だろうか。
恋人でもなく
友だちでもなく
親子でもなく…

ただ、すべてが当てはまるような気がしていた。


Mは、ハッと突然目をあけると
こう言った。

ねぇ!こんど二人でボール遊びしない?
バドミントンでもいいな!

No.126 15/06/01 15:21
自由人 

ニコッと笑ったMの顔に
無性に色気を感じた。

色気とはなんだろうか。

女たちのほとんどは、
何か誤解しているかもしれない。
いや、
ほとんどの男たちもまた
誤解しているのかもしれない。

胸の谷間をみせるだの
上目遣いで相手を見るだの
唇をツヤツヤにするだの
足を露出するだの

そんなことを色気と捉えている人は少なくないだろう。

というか、
世間一般では
そういうのを色気と呼ぶのか。

だが、俺にとっての色気は違う。

媚びていない
いやらしくない

表面的なものにはとらわれない。

内面からにじみ出る真面目さや
誠実さ
優しさやユーモアの中から
俺は色気を感じとる。

真逆の顔をさせたくなる…

そう、Mみたいな女に。

俺はまた
たまらなくなって
Mを抱いた。

No.127 15/06/01 23:16
自由人 

Mの感じる顔を見ながら

それを見ていたい俺とは別の俺が
疼いている。

噛みつきたい。
いや、むしろ、食べたい。
苦しむ顔がみたい。
首をしめたい。

殺したい…。

俺はこの性を恨んだ。
俺は鬼なのか。
生まれつきなのか。
それとも
育った環境のせいなのか。

なぜ俺は

人を殺したいのか
食べたいのか

Mの隣で
こんなに安らげるようになったというのに
残酷な俺の中の性が暴れたがる。

同時に思い出す
俺を殺そうとした父親の顔を。
するととたんに
俺は消えそうになる…
いなくなってしまう

いやだ
俺は居る
俺は存在している

我にかえりMの身体に自分の一部を突き立てた。

Mを見て、やっと実感する。

俺はいま、ここに居るんだと。
存在しているんだと。

そして必死で俺は俺を殺す。
殺してはダメなんだと言い聞かせる。

だが、
本当は、なぜダメなのかが
わからなかったりする。

一応、社会のルールだからと
自分を納得させるしかないのだ。

No.128 15/06/02 15:02
自由人 

ある日、Mは
俺に会いたいと言った。

Mから俺に会いたいというのは
初めてではないだろうか。

とても新鮮に感じていた。

セフレからの誘いには
心が全く無表情だが、
Mからの誘いは
素直に嬉しくて
自然に機嫌がよくなるのがわかる。

Mに会うときはいつも
俺はまるで
子どもが遠足に行くときのように
心がはしゃいでいた。

もちろん
そんな様子はなるべく隠しているつもりだが、

Mには見透かされているような気がする。

待ち合わせ場所で顔を合わせると
Mは

おはよう

と挨拶をしたあと
俺の顔を見て
かわいらしく
ニヤッと笑った。

この時俺は
自分の顔がニヤけていたことに気づく。

No.129 15/06/02 20:32
自由人 

で、今日はどこで何をしたいの?

と、俺はMにきいた。

Mは

今日はね、
公園で
キャッチボールをします!

と言ってグローブ2つとボールを俺に見せた。


俺はまた素直に嬉しかった。

Mはこうやって
俺をいつも明るい方へと導いてくれる

俺が体験したことがないことを
教えてくれる

こんなに特定の人に執着したのもMがはじめてだった…

すべてMが俺を変えてくれている。

俺はそんなことを思いながら
生まれてはじめてのキャッチボールを楽しんだ。

俺が投げたボールをMが受け、
またボールを俺に投げてくる。

この当たり前のやりとりが
楽しくて仕方なかった。
言葉など交わさなくても
お互いの気持ちが伝わるようだった。

俺はふと思った。

親子のキャッチボールは
こういうところがいいんだろうな…

とくに、父親と息子のキャッチボールは
どんなに思春期になっても
言葉がいらないからいいのだろう…

幼少期のキャッチボールも
また言葉がいらないふれあいなのかもしれない。


お互いの存在が確立しているから成立する。

ごく当たり前のことだが、
俺は感動していた。

ああ…
もっと早く知りたかった。

No.130 15/06/02 23:15
自由人 

俺は一人でいるときも
Mとのキャッチボールのことを思い出していた。

本当に楽しかった。
心から。

Mの言葉を思い出していた。

あのね!
キャッチボールって
楽しいけど!
誰とやっても同じように楽しいわけじゃないのよ。
人によっては
合わなくて、長い時間できないこともあるの。

私は息子とは
ずうっとキャッチボールできたけど、
旦那とのキャッチボールは
だんだん楽しくなくなって
あんまり長くできなかったなぁ。
あなたとは不思議!
はじめてするのに、
本当に楽しい!
ねぇ!
楽しいよねー!

ボールのやりとりをしながら
息をはずませて
Mが俺に話してくれた。

Mはいい母親だ。
こうやって
息子のキャッチボールの相手をしてきたのだから。

そうしてきただけあって
Mは上手い。
時々豪速球もきたし、
俺の本気球も軽々ととった。

ああ
またMに会いたい。

俺はしょっちゅう
そんなことを思っている。

元来の俺を知るやつは
こんな俺を見たらびっくりするだろう。

ふとテレビをみると

また事件だ。


ー『人を殺してみたかった』ー

俺は、またか…と
ため息をついた。

No.131 15/06/04 07:52
自由人 

人を殺してみたかった
だと?

ああ、わかるよ。
痛いほどわかる。
俺だって、死ぬ前に
それができたらどんなに幸せだろうと思う。

もう脳が常に殺したい衝動にかられているのだから
コントロールだって容易じゃない。

わかる。
わかるよ。

ただな。
よく考えろ。

この社会のルールじゃ、
殺しちゃいけないことになってる。

殺したら最後、
逃げ切ることなんてできない。

一生不自由な生活になるか、
死刑か。

俺はいやだね。
自由に生活したいし、
生きていきたい。

だから、俺は本性は隠していくしかない。

生きたまま人を解剖し
苦しむ顔が見たい
人間を生きたまま食べてみたい
なんて
そんな本当のことを知られたら最後、
自由な生活は奪われる。

実際に殺人を犯していくやつら。
ある意味、幸せなんだろうな。
願望を果たして。

だが、俺から言わせれば
馬鹿なやつらだ。

耐えろ。
悟られるな。

この日本という国に生まれた以上
ルールを守れ。
我慢しろ。自分を抑えろ。

欲望を抑えて苦しみ生きているひとは
ごまんといる。

甘えるな。

俺は、ニュースの画面の犯人に向かって
つぶやいた。





No.132 15/06/04 23:21
自由人 

俺のように
殺人願望をもっている人間は
多かれ少なかれ
自分の性癖に悩まされたに違いない。

なぜ自分の考え方が
世の中に受け入れられないのか。
殺したいから殺すということが
なぜ許されないのか。

なぜ自分は一般の人とは違う衝動にかられるのか。

その悩みは、
いつしか自分を特別扱いすることにつながる。

自分は特殊な人間。

そうおごった人間は
ますます
自分を奇妙な人種へと変えていく。
そういうやつらは、
分析能力が低い。
視野が狭いのだ。

だから、欲望のまま
殺人を実行してしまう。

若ければ若いほど
視野が狭い。
だから、犯罪につながりやすいのだ。

だが、

思い通りにならずに苦しんでいるのは
自分だけなのか…?
そこに気づけた人間は
殺人を思いとどまるだろう。

足の不自由な人が
自由にうごく足を欲しがっても、

目の不自由な人が
何もかもを見たくても、

耳の不自由な人が
全ての音を聴いてみたくても、

どんなに手を施しても
それが不可能だったとき

そのあと
どうするのだろう。

ただ、ひたすらに
自分と向き合い
己の人生を、運命を
分析し、

今あるルールの中で
生きるしかないのだ。


それは、
殺人願望、殺人衝動をもつ人間も
同じだ。

その苦しみを
甘んじて受ける。

その一生のなかで
自分なりの喜びをみつけていく。


それ以外に道はない。

みんな、どうにもならない苦しみを抱えながらも、
うまく折り合いをつけて
幸せを探している。

人間なんてみんなそうだ。

俺はそう分析したとき、
決めたのだ。

生涯、人を殺さずに
最期のときを迎えよう…と。





No.133 15/06/06 15:24
自由人 

それに、
今の俺にはMがいる。

俺は、
Mと一緒にいられることで
ずいぶんと心が穏やかに安定していた。

ひとりぼっちで
長い夜をすごしていた幼少期のことを思い出す回数も
以前よりずいぶん少なくなった。

自分が消えそうになり
存在が薄く感じるときは

Mにメールをした。
電話もした。

電話に出られない時は
Mは必ずすぐに
ラインかメールで
返事をくれた。

大丈夫だよ
あなたは薄くなんかないよ
消えたりしないよ
ちゃんといるよ。
思い出してね。
消えそうになったら
ちゃんと私を思い出してね。

Mはそう言ってくれた。


俺は今まで、
そういう根拠のない
社交辞令のような言葉に
なんの意味も感じなかった。

むしろ
嫌悪感しかなかった。

一見優しくみえる
そんななんの信憑性もない言葉よりも、

実際に目の前にある肉体の方が
ありがたかった。
セックスさえできれば
簡単に俺の存在を確認できるのだから。

だから、
セックスの相手は誰でもよかった。
相手は、ただ俺の存在を確認するための道具にすぎなかった。

だが、
Mからの言葉は
すんなりと俺の心に入ってきた。
そんな言葉のやりとりだけで
俺は自分を取り戻せるようになっていた。

No.134 15/06/09 15:54
自由人 

セフレからの誘いも
会うかどうか
考えるようになっていた。

わざわざ休みの日を合わせたり
時間をさいたり…

そこまでして会う価値がある女なのかどうか。

答えはハッキリしている。

価値はない。
いや、ちがうか。
俺という人間の存在を証明するという点では、
セフレにも価値はある。
だが、
その他のことについては
一緒にいてなんのメリットもない。

魅力も感じなければ
興味もわかない。


セフレに誘われると
まず、その日にMと会えるかどうか確認する。
Mに会えなかったら
セフレを相手にしてやるか、
会わないかを決める。

自分でも信じられない行動だが、
常にMが基準になってしまった。
優先させるのはMと一緒にいること。


俺の中では
これ以上ないくらいMを大事に思っていたが、

一般的な感覚だと、やはり理解されないようだ。

セフレとの関係はすくなくなったものの
未だにあることを知ったMは
そのたびに
ため息をつき哀しそうな顔をした。
そしてまた
遠くを見つめてしまう。

俺は、またMが離れることを考えているんじゃないかと不安になるから

何を考えてるの?

ときくが、
Mは決まって

ううん…と首をふり
下を向きながらこう答える。

別に、なんにも…。
言っても仕方のないことだし
言う資格もないことだから…。

と。

今思えば、
Mは必死に俺への想いを断ちきろうとしていたにちがいない。

俺はなぜ
大切なMのことをもっと大事にできなかったのだろう。

なぜ俺は、セフレとのセックスをやめられなかったのだろう。

No.135 15/06/11 08:50
自由人 

ある日、俺の仕事の先輩とMが
何やら楽しそうに話をしているのを見た。
先輩というのは、もちろん男だ。

仕事上、Mと他の男が話をするのは
よく見ていたし
それはごく普通の光景だった。

だが、
俺はなんとなく
胸騒ぎを感じていた。
直感というやつか。

先輩の歳は、38。
独身だが、なぜ独身なのかわからないくらい
顔は整っていた。
仕事熱心で真面目で優しく、
男の俺からみても尊敬できるいい男だ。
もちろん女性からの人気も高い。
最近は、彼女がいた時期もあったが、
仕事が忙しかったりですれ違いが増え、
別れたときいていた。

先輩は、Mと楽しそうに会話していた。
Mもまた、にこやかだった。

これはヤキモチだろうか。


咄嗟に、急ぎの用事を見つけて
先輩を呼んだ。
Mと離れてもらいたかった。

No.136 15/06/13 10:00
自由人 

それから数日経ったころだったか、
Mが俺に言った。

あのね、
わたし、今度のお休みに
ドライブに誘われちゃった。
Jさんに。

Jというのは、俺の先輩の名だ。

俺はなんとなく嫌な気持ちがして、
思わずMにきいた。

お休みの日っていつ?
息子さんはどうするの?

Mは、

お休みっていうのは、
私の仕事の平日休みね。
来週の火曜日なの。
だから、息子は学校だよ。
J さんが、お休みを合わせてくれたの。
この前、立ち話してたら、
今の季節はどこに出掛けても気持ちいいですね
っていう話になって。
そしたら、ドライブに誘われて。
あ、でも
どこにいくかは決まってなくて…。

そう、一気に話した。

Mは俺の反応を心配していたのかもしれない。

俺は
面白くない気持ちを隠して

そう。

とだけ言っておいた。

本当はもっと言いたいこともあった。

だが、どれもこれも矛盾したことばかりだった。

No.137 15/06/13 12:00
自由人 

だいたい、俺は
いくらでもセフレとセックスするような男だ。

その俺が
Mが誰と何をしようが
どうこう言える立場ではない。

しかも俺とMは
付き合っているわけではない。
つまり、恋人同士ではない。

Mは俺のものではないし、
俺はMのものでもない。

何か特別な約束を交わしたわけでもない。

だから、
俺はMの行動にいちいち干渉できる立場にない。

それはわかっている。
わかっている。

だが、これだけは言える。
誰からもわかってもらえなくても
俺にとっては
Mは特別な存在なのだ。
だから
Mの行動には興味や執着がある。

俺の知らないところで、
MがJ 先輩と会う…?

どんな顔をして会う?
話し方はどんなだろう。
俺といるときとは違うのだろうか。

俺は知りたかった。
Mの全てを。

俺の知らないMを見たかった。

そんなふうに思う自分と、
そう思うことに矛盾を感じる自分と、

俺は、自分がよくわからなくなる。
ただ、無性に寂しくなる。

No.138 15/06/14 07:46
自由人 

Mは言った。

あなたも他の人と会ってるんだもんね。
私だって、そうしていいということだよね?
私たちは付き合っているわけじゃないし…。

と。

俺は勝手なやつだな。
俺は誰と寝たっていいんだ。
変わらないから。
誰と寝ようが、会おうが、
Mしかいないのだから。

だが、Mは他の男と会ったりしてはダメなんだ。
Mは、変わる。
きっと俺でなくてもよくなるだろう。
Mは変わってしまう。

そんな思いが頭の中をぐるぐると
駆け巡った。


俺はMに言った。

火曜日、俺もついていくよ。
一緒にいく。

Mは、

ええっ?!

と、へんな声をあげて笑いだした。

なにいってるの?
無理に決まってるでしょう?

Mは、まだ笑っていた。

冗談だとでも思ったか…?

俺は、

無理じゃないよ。
俺はあなたと一緒にいたいし。

といった。

Mは俺の真剣な顔を見て
笑いをとめた。


あなたは、誰に対しても
そんなふうに思うの?

Mが聞くから、俺はこたえた。

いいや、違う。
他のひとが、誰と何をしていても
全く気にならない。
でも、あなたのことは、
知りたい。
もし、あなたとJ先輩が付き合うことになったとしても、
セックスをするようになったとしても、
俺はそれを見ていたいと思う。
俺と一緒にいるときのあなたも、
そうでないあなたも、
俺は全部知っていたい。

俺はMを見つめながら話していた。
Mもまた、
俺を見つめて聞いていた。

No.139 15/06/17 11:54
自由人 

あなたって、本当に変わってるね。

Mが、真顔でそう言った。

私だったら、
あなたが他の人とデートしたり
セックスしたりするのを
見たくないもの…。


大抵の人がそうなのだろう。


俺は、とにかく知りたいんだよ。
知りたい。
あなたが、俺以外の男に対して
どんな声をあげるのか
どんな顔をするのか。

そう言うと、
Mは

やだ…

と恥ずかしそうに目をそらした。


あ、でも、
実際にデートについていったりは
さすがに無理だよね。
我慢しておくよ。

俺はとりあえずMを安心させておいた。

No.140 15/06/17 15:22
自由人 

火曜日は落ち着かなかった。
俺は仕事をしながら
Mと先輩のことを考えていた。

考えてみれば
Mのような女が、モテないわけがない。
旦那が死んだ以上、
デートの誘いがあってもおかしくない。

俺は前に、
Mの恋愛遍歴をきいたことがあった。

Mは言った。

私はね、女って感じじゃないでしょう?
だから、恋愛の対象になってなかったんだと思う。
私を好きだと言ってくれる人もいたけど、
何となくうまくいかなかったなぁ…。
私は、すぐに
こんな私のどこがいいんだろう?って
考えちゃうから。
ダメな私を好きだという相手も
またダメに見えてしまうのよね。

付き合っても長続きしなかったけど、
旦那は違ったの。
いくら私が自分に自信がなくても、
旦那はしつこいくらいに私を必要としてくれて。
だから、結婚できたんだと思う。

そんな話をしていた。

Mは鈍感なのか、
鈍感なふりをしているのか、
よくわからないが

Mのことを
女として感じない奴はいなかっただろう。
男友達を装って
Mの近くにいたやつらがたくさんいたに違いない。
恋愛の対象にしたくても
Mは高嶺の花すぎたのだろう。
気まずくなるよりは
友達としてMの近くにいたほうがよいのだから。

No.141 15/06/22 08:32
自由人 

火曜日がすぎ、
水曜日がすぎ、
木曜日がすぎ…

俺はMに連絡をとれずにいた。

なぜだろう
遠慮していた。

ふと思った。

Mは俺からの連絡を待っているだろうか?

それとも
Mから連絡がないということは
俺を忘れているのだろうか?

J先輩とうまくいったのだろうか…

ざわざわと胸が騒がしかった。

Mが俺ではないやつを選ぶ?
Mが俺を忘れていく?

一気によみがえってきた。
誰にも相手にされずに
一人で夜をすごしていたこと、
飯をひとりで食べていたこと…

俺は居るのか
居ないのか
ちゃんと生きているのか
存在しているのか

実感できない怖さ

その感覚が戻ってきた。

ああ…
まただ。俺は過去に引き戻される。

消えそうだ…

弱い。なんて弱いのか。
自分の弱さに嫌気がさした。

なぜ俺はひとりで生きられないのだろう。



ちょうどよく
セフレからの連絡が入る。

Mからの連絡ではなかったことに
苛立った。

人妻29歳のセフレに会うしかない。

今すぐ会えるよ
俺はそう返事をした。

馬鹿な人妻
おまえに会いたいわけではない。
俺の存在を確認したいだけだ。

お互いさまか。

人妻もまた
俺のテクニックが欲しいだけだ。
旦那と違う味を思い出しただけだ。
気晴らしだ。

似た者同士というわけだな。








No.142 15/06/22 09:08
自由人 

すっごく会いたかったよ♪

人妻は俺に会うなり、そう言った。

どんな理由があるせよ、
今日のこの瞬間に俺を思い出し、
会いたいと思い、
実際に会ってくれるのだから
有り難い。

この人妻は
俺の子が欲しいといい、
俺の子を産んだ。

いや、本人がそう言っているだけで
嘘かもしれないが。

俺には全く興味がないことだ。

俺の子を産みたいといわれたときも
俺は責任をとれないよ?
つくるだけ。
と念をおしてある。

人妻は、俺の子かもしれない子どもの写真を見せてきた。


ほら、こんなに大きくなったよー!
来年小学生!

この女の考えていることがわからない。
旦那の子として育てている子どもの写真を、
俺に見せてなんになる?

疲れる…俺は正直そう思っていた。
面倒なおしゃべりなどしたくなかった。

さっさとホテルに行って
することだけしたら早く離れたい。

そう思っていた。

No.143 15/06/23 07:51
自由人 

ホテルに着くと
人妻が俺に甘えてきた。

痛めつけてやりたいという欲望が
俺の中で溢れてくる。

手がうずく。

怪我をさせたらヤバイ。
だが、ギリギリのところならいいだろう。

俺は乱暴に人妻を抱いた。

痛いっ!

人妻は時折痛みに顔を歪める。

もっと痛がれ。
もっと苦しめ。
泣け。
ぐちゃぐちゃの顔を見てやるよ。

心の中で笑いながら
人妻の身体を弄んだ。

不思議なものだ。
痛いと言いながら、だんだんそれが快感になるやつもいる。

人妻は、俺に
痕はつけちゃダメだよ…っ!
痛いっ…!
そう言いながらも
俺にしがみつき、よがり声をあげている。

白い肌に俺の痕がつく。
俺はそれがおもしろかった。
本当は、そのまま噛みちぎってしまいたいくらいだった。

No.144 15/06/24 14:22
自由人 

今日のあなたは、いつもより乱暴だったね。
激しくて激しくて、壊れるかと思っちゃった…。ちょっと怖くて、ゾクゾクした!

人妻は言った。

俺は、答えなかった。

ねぇ、今日、私よくなかった?
あなた、イカなかったでしょう?
気持ちよくなかった?

さらに話しかけてくる人妻に、
俺は着替えをしながら答えた。

あ、違うよ。
多分疲れてるんだと思う。
でも気持ちよかったよ。





そうだ。俺は、またイケなかった。
時々ある。
自分の存在を確かめることに集中してしまうと、
相手に何も感じなくなるから
興奮しなくなる。
だから、途中でモノが萎えるのだ。

だが、そんなことは人妻には言わない。
面倒だからだ。
だいたい、説明したって不可解なことだらけだろうし、
俺の生い立ちを話すのは疲れる。


そう。
大丈夫?身体は大事にしてね。
ちゃんと食べるんだよ!

人妻は俺を心配する言葉を吐いた。

なんと嘘くさい社交辞令だろうか。

俺は、Mを思い出した。
Mもまた社交辞令を言うのだろうか。

俺を思う言葉は、嘘なんだろうか。

信じられるものなど
この世にはない。

ひとは、思ってもいないようなことでも
顔色ひとつ変えずに
平気で言葉にできる。

簡単に人を信じられるやつがいるが
全く羨ましい限りだ。

親にさえ警戒して生きてきた俺には
信じるということが
浅はかでくだらない妄想にしかみえないのだ。


そんな俺が、
Mと一緒にいるときは
安心感を得られるのだから不思議だ。

頭のなかは
Mのことだらけだった。

No.145 15/06/25 15:43
自由人 

Mが先輩と二人で会ってから
一週間が経ったころ、俺はMに
電話をした。

Mの

お久しぶり

という言葉が、なんとなくよそよそしく聞こえた。
だが、その次の

元気にしてた?

という言葉は、いつもの優しいトーンで
俺はホッとした。

今度、いつ会える?

俺はいろいろなことを聞きたいのを我慢して
会える日だけをきいた。

Mは、

今、忙しい季節に入っちゃったから、
1日お休みはとりづらいかも…
ランチの時間でよければ会えるけど…。

そう言った。

少しの時間でもかまわないよ。
会いたい。

俺は正直に話した。

Mが日にちと場所を提案してきたから
俺は了承した。

やっとMに会える…


Mが先輩とどうなっていようが
この際どうでもよかった。
俺を拒否せずに
会い続けてくれるのなら。

No.146 15/06/26 14:28
自由人 

その日、俺は約束の時間よりずいぶん早く待ち合わせ場所についた。

Mが俺の車をみつけて
いつものように窓の外から軽く会釈してきた。

久しぶりに会う感覚で、
とりあえず何を話せばいいか思い付かなかったが、
Mを助手席に座らせると
車をはしらせた。

俺たちは無言だった。


信号が赤になると、俺は
Mの腕をつかんで強引にキスをした。
せずにはいられなかった。

Mは一瞬抵抗したが、俺の舌を受け入れた。

青信号になると
俺はまた無言で運転した。


Mは、俺の方を見ながら

どうしたの。
いつもと違う感じだね。
何かあったの?

優しい声でたずねてきた。

俺は、思わず

先輩とのデートはどうだった?

と聞いた。



ん…?うーん…。
えーっと…。
何から話せばいいのかな。

Mは窓から見える景色に目をやりながら
少し戸惑っていた。

No.147 15/06/27 08:59
自由人 

ドライブしたよ。
海が見たいって話したら
海に連れていってくれた。
ついでに水族館にも行ったし、
帰りはお寿司食べてきた!


Mは一気に話したが、
俺は
そんなことが聞きたいわけではなかった。

で?先輩は、何か言ってた?

とりあえず冷静にきいた。

Mは、

うーん…。

そう言ってしばらく黙っていたが
やがて口を開いた。

私と一緒にいると楽しいって。
次も二人で会ってほしいって。


なんとなく、何か隠している気がした。
それだけか?俺は心の中で思った。

Mは言った。

でも、ほら、
私は旦那がいないとは言っても
子持ちだから。
Jさんだって本気じゃないよ、きっと。

そう言いながら、あははと軽く笑った。


それで、あなたは先輩のこと
どう思ったの?

俺は一番聞きたかったことをたずねた。

Mは

ねぇ、今日は会うなり質問ばっかりだね。
どうしたの?
ところで、なに食べる?
ランチの時間終わっちゃうよ!

話をそらした。


ダメだよ。
あなたは俺に話さなきゃ。
俺はあなたを知りたいと言ったはず。

俺が強い口調でいうと
Mは

まだわからないよ。
でも、楽しかった。
それだけだよ。

吐き捨てるように早口で言った。

No.148 15/06/29 12:06
自由人 

怒らせてしまった…

俺は
怒っているMを観察していた。

何やらわけのわからないことで怒りだし、
泣いたりわめいたりする女は
散々見てきた。

女たちのくだらない思い込みと
感情の起伏の激しさ、
被害妄想的な自己嫌悪、
八つ当たり、
俺はそういうものにうんざりしていた。

涙をみせて同情を買おうとする女もまた
滑稽にみえる。

俺に、そういうものは通用しない。
なにも心は動かない。

冷たい男だと罵る女、
突き放されて快感を得る女、

いろいろといるが
Mはどうなんだろう。

No.149 15/07/01 14:40
自由人 

なんとなく
気まずい雰囲気でファミレスに入った。

注文を済ませると
Mが口を開いた。

本当はね、J さんに、
本気でお付き合いを申し込まれたよ。
1日一緒にいて
今までの気持ちに確信が持てたって。
結婚を視野にいれて
お付き合いしたいと言われたの。
子どもの話をしたけど
構わないって。
とても真剣に話してくれたから
私も考えてみようと思ってる。
で…

そこまで話してから、Mは
水を一口飲んだ。

で、ね。
もし、私がJ さんとお付き合いするように
なった場合は、

私はあなたとは
もう二人で会ったりしないつもり。




俺は心の中で
冗談じゃない、そんなことは
絶対認めない
と思った。

そう簡単に俺から離れようとしても
無駄だ。


俺は、M に

それは無理な話だよ。
あなたが必要だから、
俺はあなたとは離れない。
そんなバカなことは考えない方がいい。
J 先輩と付き合っても
結婚しても構わない。
ただ、俺はずっとあなたに干渉していくよ。
あなたが俺から離れられないようにする。
あなたは、俺にとっては
稀な人間なんだよ。
今まで俺は、他の誰にも言ったことがない。
あなたにしか言わない。
あなたはとても大事な人だよ。

そう言った。

No.150 15/07/02 10:42
自由人 

Mは、俺の目をじっと見て言った。

それは、いつもきいてる。
あなたは、私に執着しているんでしょう?
でもね、
あなたは、致命的に変われない。
あなたは、私を幸せにしてくれない。
あなたは、いつも自分が一番。
それは私も同じかもしれないけど
それでも、あなたの幸せを祈ることはできる。
あなたは、
私の幸せを願うことなんてできる?
私のために、
自分を変えてみようと思ったことはある?

私は、あなたのことが好きだと思ったから
あなたが誰と関係を持とうが、
一生懸命認めようとしてきたよ。
自分が変わればいいんだと思った。
だから、我慢してきた。

あなたは?
私のために、何かを我慢したことある?
しようとしたことは?
変わろうとしたことは?

いつもあなたは、自分を押し付けてきた。
私を変えようとしてきた。
わかってくれ
わかってくれ
受け入れてくれ
そればかり。

私は本当に
あなたのことがわかりたかったし、
あなたに幸せになってほしかった。
今まで悲しい思いをしたぶん、
取り戻してほしかった。

あなたは、私に
興味をもった。
他の女性には感じない感情を
持ったのかもしれない。
でもそれは
私には理解できない。
なぜなら、あなたは
他の女性といくらでも寝れるから。

たとえ私が
それをやめて、私だけを見てほしいと頼んでも
あなたは、きいてはくれないでしょう?

いや、俺は、こういう人間なんだよ
と説得するだけでしょう?

いつも、私たちは
この繰り返しなんだよ。

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