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秋子( yuBCh )
13/09/30 21:09(更新日時)

短編小説です


悲しい女…

嬉しい女…

第三段です

よろしかったら、またお付き合い下さいませ

(*⌒▽⌒*)

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No.1897899 13/01/05 23:25(スレ作成日時)

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No.51 13/01/14 15:01
秋子 ( yuBCh )

上田「…分かってますか?…犯人庇うと…あなたも犯人隠匿罪になりますよ!…」


完全に疑っている二人…

「分かってます!…庇ってはいません…事実を言ってるだけですから…」


上田「…じゃ…今夜はこの辺で…遅くに申し訳ありません…」


二人は立ち上がり外へ出た

積もる雪に、刑事二人の足跡が残って行く…




そうだ!

あのインタビューに出たマスターが

俺じゃない事を知っている人間がいた!


彼女だ!

「ちょっと待って下さい!!…」


…彼女に迷惑がかかると思ったが

吾郎のためだ…


俺は…

二人を引き止めていた…

No.52 13/01/14 15:07
秋子 ( yuBCh )

渾身の願いを込めて

俺は女の事を刑事に話した


上田「…へ~墓参りに?…それって今日ですか?」


「はい…毎月5日に…いつも午前中に来てましたから…」


上田「…ホントにその女の人の連絡先…知らないんですか?」


「知りませんよ!…知ってたらとっくに今…電話してますよ!…」


下田「…近くにお寺さんありましたよね…女が檀家なら…住所…分かるかも知れませんよ…」


下田が上田にそう言うと

上田「…そうだな……調べてみるか…じゃ…」


上田はそう言いながら軽く頭を下げ

二人は車に乗り去って行った


No.53 13/01/18 16:54
秋子 ( yuBCh )

吾郎は一体どうなるんだろう

彼女は心良く証言してくれるのだろうか?

刑事達の乗った車はもう見えなくなっていたが

俺は雪の中をぼんやり突っ立っていた

気がつくと賑やかだったメトロの前にはもう誰もいない

さっぱりしたと言うより

むしろ今は人恋しい気持ちでいっぱいだった

出しっぱなしになっていた看板に雪がうっすら積もっている


手で雪を払い落とし中へ引きずるように入れた途端…

ブルブルと寒気がした






風呂へ入って温まりながらも頭の中は吾郎の事で一杯だった


吾郎は、昔から喜怒哀楽が激しくて、子供がそのまま年取ったような奴だ…

だが…

最近の吾郎を俺はよく知らない


人を殺す人間じゃない…


何かの間違いであってほしい…


ザーッと勢い良く浴槽から立ち上がり

顔をバシバシ叩いて風呂から出た…

No.54 13/01/18 17:49
秋子 ( yuBCh )

夜中のテレビのニュースで、それらしき事件の報道があった

概要はこうだ…


会社社長のSさん(58歳)がリビングでうつ伏せに倒れている所を、買い物から帰宅した妻みどりさん(38歳)が発見、警察へ通報した

Sさんの首に絞められた後があった事などから、警察は殺人事件と断定し
当初…みどりさんが買い物に出た午前10時から12時までの間に、何者かに絞殺されたとみていたが

Sさんは殺される前、元妻のKさんと電話で話しており、Kさんの話しによると、話している途中でいきなり電話が切れたという
その電話中にテレビではワイドショーをやっており、チョビ髭のマスターが会見中だったと話している事から

犯行時間は…
ワイドショー会見中の午前11時20分から、12時までの間と犯行時間を絞り込んでいる

また遺体のそばから財布が発見され、中から出てきた運転免許証が、会社従業員のIさんの物である事から
事件後、その財布をとりに来たIさんから事情を聞いている



以上だった…

No.55 13/01/18 19:17
秋子 ( yuBCh )

吾郎がワイドショーに出ていたことで

吾郎は犯人ではない事はこれで確実になった

勿論、それは俺だけが知っている事なのだが…


…何故、吾郎の財布が遺体のそばにあったのか?

…偶然なのか?

…それとも吾郎は誰かに嵌められたって事か?


頭が渦巻き膨らんで今にも爆発しそうなまま

とうとう眠らずに朝を迎えた…


窓のカーテンを開けると昨夜降った雪で

一面に白い世界が広がっていた



さて…店を開けよう!…

俺は布団から起き上がり

両肩を上げ首をポキポキとならした

No.56 13/01/18 19:25
秋子 ( yuBCh )

気温は上がらず、雪はまだ溶けずに残っていたが

メトロ入り口前には、予想以上の長蛇の列が出来て

客達はそれぞれに煙のような白い息を吐き

今か今かと店が開くのを待っていた


『メトロが有名になったら、商売繁盛するのによ~』

なんて軽く言っていた吾郎の言葉を思い出す


「申し訳ないですが 店内は狭いので、10人しか入れません、またのお越しをお待ちしておりま~す…」

ブーイング集団を尻目にメトロは賑やかに開店し、

猫の手も借りたいほどの大忙しだった

吾郎の事も事件の事も考える余裕すらなく

俺は1日飲まず食わずで駆けずり回り

あっという間に夜になった…

No.57 13/01/18 19:45
秋子 ( yuBCh )

閉店近くなった頃…

「いらっしゃいませ~」

入り口から2つの影が中へ入ってきた…

あの上田、下田の刑事がまたやって来たのだ…


客はまだ数人いたが

一斉に、このモノクロの二人に視線が集まり

店内は一瞬、シーンと静まり返った…

だが二人はにこやかに愛想笑いしながら

カウンターに座ると、客達はまたそれぞれの会話に戻り

和やかな空気になった


刑事達は店内を見渡しながら

手持ち無沙汰に俺の手が空くのを待っている


その後事件の捜査は進展したのだろうか?


詳しい事はまだなにも俺は分からなかったが

吾郎が犯人じゃない事を知っている俺は

こんな所にまたやって来た刑事達に正直…苛ついていた


カウンターに行き刑事達のそばに立った



「今日はなんです?珈琲でも入れますか?…」

素っ気ない言葉で聞いた


上田「…はい…」

上田は珈琲を飲みたそうに微笑んだが

下田「…いえ仕事ですから…なにもいりません…」

下田の言葉に促されるように

上田は仕事の顔に戻った…

No.58 13/01/18 19:57
秋子 ( yuBCh )

上田「…さっそくですが…進藤理恵子さんの件ですがね…」


「進藤理恵子さん?…」

下田「…あの墓参りの女の人ですよ…名前を進藤理恵子さんというんです…」

…進藤理恵子…

…初めて聞いた彼女の名前だ



「あ…そうですか…で?」


上田「進藤さんは確かに…あの人はメトロのマスターとは、別人だと証言してくれましたよ…石井さん…」

「そうですか…」

顔には出さないが幾分ホッとした…

上田「…だからと言って…まだ弟さんのアリバイが成立したわけじゃないんでね…」


上田はまたあの疑い深く冷たい目をして言った

No.59 13/01/18 20:00
秋子 ( yuBCh )

「あの…吾郎の財布ですが…遺体のそばに…あったんですよね…」


下田「…そうです…社長のSさんは半年前に脳梗塞で…右半身に障害が残っていまして…以来会社には殆ど出社していないんです…弟さんは……仕事の打ち合わせとかで、社長の家へは頻繁に出入りしていたみたいです…財布は以前Sさん宅に忘れて帰ったと言ってます」

…そうか吾郎は財布を社長宅に忘れて行ったのか…



上田「…本当でしょうかねぇ…殺して…気が動転して…ポケットから落とした財布にも気付かず…逃げた…ってとこでしょうねぇ…」


…まったく…頭の悪いムカつく刑事だ!

…怒りがこみ上げた


「でも…それだけで吾郎が犯人って?…随分幼稚な推理ですよね……」

言ってやった

気分はスカッとした…

No.60 13/01/18 20:08
秋子 ( yuBCh )

上田の鋭い横睨みと目があったが

動じる事なく俺は続けた


「社長さん…電話の相手は元の奥さんなんでしょう?…どんな会話してたんでしょうね…今の奥さんて38歳ですか?…親子ほど年の違う女と再婚して?…それと半身不随になった夫?…なんだか…突っ込み所満載の事件ですよね~」

今度は俺が上田を横から睨んでやった…


すると上田の顔は強張り、みるみるうちに赤くなっていった

まるで…

人間瞬間湯沸かし器のようだ


上田「…素人のくだらん憶測に付き合ってられん!…忙しい…下田!…帰るぞ!…」

そう言うと椅子を尻で押したまま立ち上がり

コートの襟に手をかけて足早に出て行った…

下田も慌てて後を追った…


「ありがとうございま~す」


こんな所で無駄に時間を潰していないで…

早く真犯人見つけろ!…


俺は心の中でそう怒鳴っていた…

No.61 13/01/18 21:21
秋子 ( yuBCh )

だが…

悔しい事に

彼女…進藤理恵子は吾郎を知らない

インタビューに出たのは俺じゃないと証言しただけにすぎないのだ…


インタビューに出たのが吾郎だと証明するには

どうしたらいいのだろう…


上田刑事のせせら笑うあの顔を思い出し

胸くそ悪くなった

「お会計お願いします…」

レジに立った客の声で我にかえった

「は~い…ありがとうございました…」

客はみんな帰り


また一人になった…

No.62 13/01/20 01:13
秋子 ( yuBCh )

テレビも新聞も…

事件の捜査に特別な朗報もないまま

歯がゆい時間だけが通り過ぎて行った。


だがメトロ人気は衰える事なく続き

開店時間には相変わらずの行列ができていて

幸か不幸か俺は多忙な何日かを送った。





そんなある日…


てんてこ舞いの1日もやっと終わり

客も途切れて、そろそろ閉店という時だった


ガラガラ~

「あの~もう閉店なので、申し訳ありませんが…」

丁重に頭を下げ客を見ると…

見知らぬ中年の女が立っていた…

「あの…石井吾郎さんの…お兄さんですか?…」


女は俺の顔ををシゲシゲと見上げながら

そう言った…

弟を知っている人…

一体誰だろう…

No.63 13/01/20 01:18
秋子 ( yuBCh )

見た所 報道関係者でも、婦人警官でもなさそうだ…

「あの…どちら様ですか?…」

俺は興味深くそう訪ねた

「…私…園田です…園田恵子です…」

園田…

どこかで聞いた名字だ…

「殺された園田の前の女房ですよ…」

?!…

驚いた!…

「あのS社長の元の奥さん?…」


女は頬がこけ、髪の生え際には白髪が目立ち

生活の疲れを物語っているようだった

「まぁ…座って下さい…先に…店閉めますから…」

S社長の女房が一体なんの為にここに来たのだろう

店の看板を消し

素早くカーテンを閉め

テーブル前の女と向き合って座った…

No.64 13/01/20 01:22
秋子 ( yuBCh )

>> 63 訂正

一部S社長の女房と記載しましたが

S社長の前の女房です…

ごめんなさい

m(_ _)m

No.65 13/01/20 01:28
秋子 ( yuBCh )

女「…なにから話せばいいかしらねぇ…気がついたらここに来ちゃってたわ…」

「あの…弟を…吾郎を知っているんですか?」


女「…あ…そうよ…知ってますとも…吾郎さん…主人と離婚する前…よく家に来てましたからね…面白い人でね…」

女はまるで井戸端会議でもするように

気さくに話し出した

「そうでしたか…」

女「…だからあのワイドショーのインタビュー見て…私…びっくりしちゃって…吾郎さんだ!…そう思ったのよ…」


「そうです!…あれは吾郎が俺の代わりにふざけて…インタビューに出てしまったんです…」

吾郎だと分かってくれる人がいた

やっと表れた…

胸が熱くなった


女「…でしょう…主人もテレビ見ていたみたいで…ありゃ吾郎だ!…なんて言って…電話しながら二人で笑ったもの…」


「あの…それを警察に証言して欲しいんです…吾郎は殺人犯に疑われているんです!」


俺は頭をテーブルにこすりつけて頼んだ…

No.66 13/01/20 01:43
秋子 ( yuBCh )

女「それが…刑事が来た時…私言ったのよ…あれは吾郎さんだって!…吾郎さんは犯人じゃないって!…でも…兄弟だから…似ているだけだと言って…信じてくれやしない…全くあのバカタレ刑事が!…」

「刑事って誰です?…もしかして上田…下田じゃないですか?…」

女「そう…上田…白髪のジジイよ…」

全く…どこまで疑い深い奴だろう!…

俺は思わずテーブルをドンと叩くと

拳を握りしめていた

No.67 13/01/20 01:49
秋子 ( yuBCh )

女「…犯人はあの女よ……」


「え?…女って?…もしかして…Sさんの現在の妻って事?…ですか?…」


女「…そうよ…主人は…最近私の所に戻りたいって…そう言うんですよ…」


「…え?…離婚したあなたの所にですか?…」


女「…ええ…主人…元気な時なら…その…若い女とも…よろしくやっていたんでしょうけど…体が不自由になったら…女は…キラキラの爪が汚れちゃうから~って…介護の人にみんな押し付けて…冷たくなったって……それで泣いて頼むのよ…私の所に来たいって…」

「それで?…」

女「…最初は断ったわよ…バカにすんなって……私や子供達を捨てて女の所へ出て行った人ですからね~それに…女に家まで建ててやって贅沢三昧させといて…ふざけんなってもんですよ…」


「そりゃそうですよね…」

まるで世間話しだ…

No.68 13/01/20 02:00
秋子 ( yuBCh )

女「でも…なんだかんだで…30年一緒にいた人ですからね…情っていうんですか…主人が可哀想になっちやって…それで…私…戻って来ていいよって言ってしまったのよ…」

「……」

女「…その話しを…女と喧嘩した時に言ったんですって…俺は帰る…お前とは離婚するって…」

「……」

女「…事件のあった日も…女が居ない時に電話よこして…愚痴言ってましたよ…だけど…それが…突然…電話が切れたんです…きっと女が帰ってきたんだと思います…主人が私と電話してたんで…カッとなったんでしょ…きっと…」

「……」

女「…離婚したら…女には遺産は残りませんからね…そりゃ離婚する前に殺したくも…なりますよねぇ…大の男でも…半身不随なら…女だって…殺せるでしょう…」


「…でも…証拠が…」

女「…そう証拠なんてないわ…だから刑事にも言えない…だから…あなたに言いに来たのよ…このままじゃ吾郎さんが犯人にされちゃいますよ…もう何日拘束されてます?…取り調べがキツかったら…やってなくても…やったって白状しちゃうわよ!…」


痩せた顔に眉間のシワを食い込ませながら…

女は言った…

No.69 13/01/20 23:08
秋子 ( yuBCh )

…やってなくてもやったと言ってしまう?…


そんなバカな!

吾郎が捕まってからもう5日がたっていた…


「でも証拠がなくても…動機はあるでしょ?…S社長があなたの所に戻りたがっていた事を…刑事に言えばいいでしょ?…捜査するのが警察の仕事なんだし…」


女「…実は…誰にも言ってないんだけど…」

「なんです?…」


俺は女に頭を近付けた…

No.70 13/01/20 23:12
秋子 ( yuBCh )

女「…死んだ主人が言ってたのよ…『みどりには男がいる…俺が死んだら…財産も二人にいいようにされる…』って」


「え?…」


女「…主人が殺されたって…聞いた時すぐあの女だと思ったわ…だから…へんな事言ったらこっちまで危ないでしょ…それに…最近…誰かに見られているような気がして…怖いのよ私…」

女は…肩を両手で包み下を向いた


俺はカーテンをチラッと開けて

外を見た…

闇の中から誰かがこっちを見ているかもしれない

ゾッとしてカーテンを元へ戻した…

No.71 13/01/20 23:23
秋子 ( yuBCh )

女「…もう帰らなくちゃ…でも…話したらだいぶ落ち着いたわ…聞いてくれてありがとね…感謝してるわ…」

女は水色のマフラーを口まで巻き

ツバのついた毛糸の帽子を深めにかぶり

顔を隠して立ち上がった…

「タクシー呼びますか?…」

女「…いえ近くの空き地に車を止めてあるから…大丈夫…」

女はバックから

小さい子犬のキーホルダーがついた車の鍵を取り出した

「気をつけて…」

女の後ろ姿は見えなくなり

戸を閉めた…

その時…

何か黒い影が動いた

格子の硝子から目を凝らしてよく見ると

まるで女を尾行するような早足の男…

その後ろ姿


白髪頭と襟を立てた長いコート




あ!…


刑事の上田だ!…


思わず息を止めた!




何故だ?

上田がなんでSの別れた女房を追っているんだ?

No.72 13/01/20 23:29
秋子 ( yuBCh )

そうか…

みどりの男って…

上田だったのか?

そうか!…

だから…


みどりの犯行をもみ消しにして


どうしても吾郎を犯人にしたかった?!


なるほど、それなら辻褄が合う…


女の連絡先を聞いておくべきだった

激しく後悔した…


そうだ警察へ電話を!…


いや…警察はダメだ!

No.73 13/01/20 23:35
秋子 ( yuBCh )

女は上田を振り切って車で逃げただろうか?…


上田はまだ近くにいるのだろうか


俺は店内の明かりを全て消し

二階の電気もつけずに階段をそっと上がった…

そして、外を見た…



いた…

奴だ!…

上田がこっちに戻って来る…

メトロ玄関の前で止まった…

俺は思わず壁際に頭を引っ込めた…




心臓の鼓動が波打つ…


ドクン…

ドクン…









『ジリ〰〰〰ン!!!』


『ジリ〰〰〰ン!!!!』

No.74 13/01/20 23:51
秋子 ( yuBCh )

電話?…


異様に大きい音に感じて驚いてしまった


ガタガタ震えながら

這うように進み電話に出た…


「もしもし…」


「石井さん?…いるんですか?」


上田の声だ!


「はい…いえ…もう寝たので…」


上田「もう…お休みに?…」


「風邪気味なので…なにか?…」


上田「…さっき…メトロから出て行った人はKさんですよね?…」


「Kさんって?…」


上田「…あ…園田恵子さん…殺されたSさんの前の女房ですよ……」


どうやら女は無事に帰ったようだ

安堵感で受話器を離して、大きく息を吐いた

No.75 13/01/20 23:59
秋子 ( yuBCh )

「…女の人はいました…でも私の知らない人です…」

上田「…へぇ…知らない人?…とぼけてもダメだよ!…まぁいい…彼女…なんか言ってましたか?…」


上田の声がいつも以上に冷たく聞こえた…


言うもんか!

お前になんかに口が裂けても言わないぞ!


「…べつに…閉店間際に来て…珈琲飲んで帰っただけですよ…嘘じゃないです…」


上田「…あなたも分からない人だねぇ…弟が自分に化けたとか…Kさんを知らないとか…まぁ…いいですけど…Kの言う事を真に受けない方がいいですよ…」


…余計なお世話だ!

この悪党め!…


「もう…眠いんで…切っていいですか電話…」


上田「…あぁ…悪かったねぇ…じゃ…」

ガチャン!…


ホッとして

頭を抱え、その場にぐったりうずくまった…

No.76 13/01/21 23:05
秋子 ( yuBCh )

どうすればいいんだ…


吾郎をハメたのはみどりと刑事の上田…


だが…

一般市民の俺なんかが

職権を振りかざすす傲慢な上田に

どう対抗できると言うのだ…


吾郎が上田に自白を強要される前に…

どうにかしてアリバイを立証させたい…

このまま、みすみす吾郎を冤罪にしてしまうのか?


悔しい…




結局また眠れず悶々としたまま朝になった…

No.77 13/01/21 23:13
秋子 ( yuBCh )

頭はパンク寸前状態だったが


開店どきの行列に

「申し訳ありませんが…10人しか入れませ~ん…」

いつものようにそう呼びかけた

その時


「マスタ~」

そう声をかけて手を振りながら

俺に近づいて来る女がいた

見ると…

いつかの、あの垢抜けたレポーターだった


…まったく暇な女だ

レポーター
「行列ができる喫茶店になっちゃって…マスコミの影響ってすごいでしょ?…視聴者からその後のメトロを見たいとかマスターをまた取材して欲しいって要望がありましてね…」


マスコミの影響?


そうだ!…

これだ!


吾郎を救うには、もうこれしか他に手がなのかもしれない…


半ばヤケクソだったが…


「取材?…いいですよ…喜んで」

俺の心良い返事に

レポーターはにこりと笑い

携帯でどこかに電話し始めた…

No.78 13/01/21 23:15
秋子 ( yuBCh )

吾郎を知ってる人なら

あのインタビューは吾郎だったと

分かっていた人がいたはずだ


現に殺されたS社長やあの女が

あれは吾郎だったと宣言していたじゃないか

みどりや上田の思い通りにさせてたまるかっ!…

吾郎を取り戻すんだ!


見てろ!上田!


テレビで全てぶちまけてやる!…


外はお日様が出ていた…

久しぶりの小春日和だった…


客達の注文に汗だくになりながら走り回り


報道陣を待った…

No.79 13/01/21 23:23
秋子 ( yuBCh )

「マスターおじゃましま~す…」

マイク片手に笑顔で表れたレポーター

タイトスカートの眩しい足が、中へ入って来た


取材に気がつき

ざわつくメトロの客達…

どこから来たのか窓から覗く野次馬…

みんなが見ていた

そして…

なんといっても…

これからテレビを見るであろう、ローカルエリアの

数十万人の目があるのだ…




チョビ髭、蝶ネクタイ、全身をチェックする

レポーターと質問やら、会話の打ち合わせをするも

内容など頭には

まるで入っていなかった…


やがてワイドショーが始まり

時間を調整しながら

あの時と同じ時間になった…

生き物の目のようなカメラが俺を捉えている…


パッ!!

ライトの光で

いっきに緊張した…

これから始まる俺の…

一世一代の大イベント…


さあ…

どうする俺…

しっかりしろ俺…

頑張れ俺!…

No.80 13/01/21 23:25
秋子 ( yuBCh )

レポーター
「皆さ~ん、こんにちは~喫茶メトロから実況中継です…あのチョビ髭マスターに、会いに来ました…はぁ~いマスターお元気でしたか?」

滑らかな口調でインタビューは始まった

口の前にマイクが向けられ

「はい…元気です…」

レポーター
「あれ以来…行列ができる喫茶店として、有名になりましたが?…今どんなお気持ちですか?」


「はい…おかげさまで………」

レポーター
「あら…マスター今日は元気ないですね…先日と全然雰囲気が違いますね~まるで別人みたい…アハハハハ…」


「そうです…実は別人なんです!…」

No.81 13/01/21 23:28
秋子 ( yuBCh )

レポーター
「あら…それはどういう意味です?…」


「皆さん聞いて下さい!…私はメトロのマスター石井史郎です…でも1月5日のワイドショーに出たチョビ髭マスターは…私ではありません…弟の石井吾郎です…」


レポーターは俺にマイクを向けたままキョトンとしている


「…あの日私は…インタビューが嫌で…代わりに弟が…ほんの冗談のつもりで…俺そっくりの格好をしてカメラの前に出ました…」


レポーター
「…それって…ホントですかっ?…私達…騙されたって事?…」

レポーターは真面目な顔になったが

好奇の目でまたマイクを俺に向けた

「申し訳ありません…それはお詫びします…でも…実は今…弟が殺人の疑いで…警察で取り調べ中なんです…」

レポーター
「えぇーっ?!…」

No.82 13/01/21 23:39
秋子 ( yuBCh )

レポーターは予想外の展開にうろたえ始めたが

マイクはまた俺に向けた…

そして…

店内のざわつきはなくなり

シーンと静まり返った…


「1月5日に…〇〇町で殺人事件が起きました…犯行時間は…弟がワイドショーに出ていた時です…だから弟は…殺していないんです!…犯人は別にいます!…」


レポーター
「あの…ちょっと…それって…こ…困るんですけ」


さすがにレポーターは動揺し

マイクの向ける先をどうしようか迷っている

俺はレポーターからマイクを奪い取った…


「聞いて下さい……警察は…それを信じてくれません……5日のワイドショーを見ていた人で…あれが石井吾郎だと分かる方いませんか?…お願いです…いたらどうか証明して下さい…警察は…無実の弟を犯人にしようとしているのです!…犯人は…社長の…うっ…」

ここまで言って

とうとう…

レポーターにマイクをもぎ取られてしまった…

レポーター
「止めて下さい…CMに切り替わりましたから!…」

No.83 13/01/21 23:48
秋子 ( yuBCh )

気がつくと

レポーター
「…番組の主旨が違うでしょ!…公共の電波を使って…スキャンダルは困ります!…名誉毀損で訴えられますよ!」

さっきの柔らかい顔とは一転

レポーターはひどい剣幕で、俺を怒鳴り散らした…


「申し訳ありません…でも…ホントの話しです…俺だって切羽詰まっていたんですから!…」

それだけ言うと俺はキッチンに駆け込み

冷たい水をコップに入れ、いっきに飲み干した



くそ!…もう少しで上田の陰謀も暴けたのに…

チャンスだったのに…

でも…

吾郎の無罪は主張してやった…

生放送だ…

もうすでに流れたはずだ…



クックッ…クックッ…アハハハハハハハ…


急に笑いがこみ上げた…

No.84 13/01/22 21:39
秋子 ( yuBCh )

俺に出来る事はやった…

あとは運を天に任せるだけだ…


だが…


眠れない夜が続いていた俺は、完全に疲労困憊だった…


すぐにでも店を閉めてコタツに潜り込み


死ぬほど眠りたい気分だった…


だがそうもいかず

キッチンから店に出ると

報道陣の姿はもうどこにも無い

勝手に公共の電波を乱用した俺に

きっと呆れて帰ってしまったのだろう

まぁ…

仕方ないさ…


ふと見渡すと…

インタビューで俺の事情を知った客達の

気まずそうな視線が、体に痛いほどつき刺さってきた

No.85 13/01/22 21:52
秋子 ( yuBCh )

客達は何も言わないが俺をどう思っただろう


憩いと平和が売りの喫茶メトロだったのに


振り込め詐欺事件…

インタビュー入れ替わり事件…

挙げ句のはてが…殺人事件…


もはや…

お騒がせ喫茶メトロ…

それ以外の何物でもなくなった



これで今日の俺のインタビューで、もし誰も目撃者が名乗り出なかったら

吾郎が解放されなかったら

俺はお騒がせ喫茶メトロの

アホなマスターって事になる…


そうなったら、もう店は閉めるしかないだろうな…


まぁ…いいや…


客の帰ったテーブルを拭きながら、

ふとそんな事を思っていた…


…ガラガラ~

「いらっしゃいませ…」

やれやれ…また客か…



「こんにちは…」




…そこには…

あの会いたかった彼女…

…進藤理恵子が

天使のような笑顔で立っていた…


だが俺は…


立ったまま意識が無くなった…



No.86 13/01/23 23:55
秋子 ( yuBCh )

ぼんやりした女の顔…

お客さん達だろうか、知らない顔達が…

上から俺を覗き込んでいる


でも睡魔に完全支配された俺には

状況が理解できない

ただ…

男の背中に担がれて

ガタガタ体に衝撃が伝わった後に

柔らかい布団の上に心地よく解放されたのだけは


うっすら覚えていた…



深い眠りに吸い込まれた






No.87 13/01/23 23:58
秋子 ( yuBCh )

どのくらい眠っていたのだろう…

目を開けると

あの吾郎がいる…

その隣にあの彼女も座って居る


この場面…

いつか見た事があったよな…


…なんだまた同じ夢か…


再び目を閉じた…



「アニキ!…もう起きてくれよ!」

大きい声に嫌でも目が覚めた

よく見ると


ホントに吾郎が目の前にいた…

「吾郎か?…夢じゃないよな?…お前どうしてここに?釈放か?」


吾郎「そうだよ…アニキ!……目撃者が現れたんだよ…それも…一人や二人じゃない!……マスコミの影響って…すごいよな!アハハハ…」


そう言って俺の手を握った

No.88 13/01/24 00:02
秋子 ( yuBCh )

「そうか?…目撃者が…出てくれたのか…良かった!…」

俺の一世一代のイベントは無駄ではなかったようだ…

良かった…

涙が溢れ出した…


上田刑事やみどりが犯人だとか

もう、そんな事はどうでも良かった

吾郎が無罪放免になっただけで

やっと俺の目の前に明るい出口が見えた

そんな気がした…

No.89 13/01/24 00:06
秋子 ( yuBCh )

吾郎の隣で一緒に喜んだくれている彼女…

そうだ彼女はどうしてこんな所にいるのか?

「あ…あの」

俺の部屋きったねぇ…

最近掃除もろくにしていない

洗濯物にパンツと腹巻きが!…

俺…恥ずかしい!

そう思いながら彼女を見た


理恵子「ワイドショー見て心配になって来てみたんです…私が…お役に立てなかったばっかりに…申し訳ないです」


「とんでもない…ご迷惑かけまして…」


吾郎「…おれがここへ来たら…アニキが倒れてて…理恵子さん困ってたぜ!…アニキが起きるまで…居てやってくんないかって…頼んじゃったよ…」

No.90 13/01/24 19:32
秋子 ( yuBCh )

「え?…俺が起きるまで?…待っててくれた?…ありが…で…でも帰らなくていいんですか?…今何時?…夜?7時?…」


吾郎「アハハハ…アニキ…なに動揺してんだよ~…俺はもうそろそろ帰る…家族が待ってるからな…アニキ…理恵子さん…送ってけよ~」

?!…

彼女と二人になるのか俺?!…(゚Д゚)!

こ…困る…


「ご…吾郎…会社は?…クビにならないか?…殺人犯だったんだぞお前…」

吾郎「…クビ?…あり得ねえ…うちの会社…借金だらけで…経営不振…もう倒産寸前なんだよ…」


ほんの吾郎を引き止めようとした問いかけだったが…

意外な答えが返ってきた

No.91 13/01/24 19:40
秋子 ( yuBCh )

「…倒産?……」


吾郎「あぁ…給料だって3ヶ月も貰ってない…同僚達もだ…こうなったのも…あの社長のせいだよ…」


「どんな社長なんだ?」


吾郎「…みんな会社の為に夜も昼も一生懸命働いて…なのに社長は…金使いは荒いわ…見栄っ張りだわ…その挙げ句…倒れちまって…それでもまだ…社長面して…俺を呼びつけちゃ…デカい話しばっかりしやがって……だから俺がカッとなって殺したんだろうって…みんな思ってたらしいよ…」


「え?…社長が死んだら…妻の…みどりさんに財産がごっそり…じゃないのか?」


吾郎「…え?…アニキ…もしかして…みどりさんが犯人と思ってんの?…」

「あ…いや…なんとなく…」

立ちっぱなしだった吾郎がまた座り直した

No.92 13/01/24 20:03
秋子 ( yuBCh )

吾郎「…財産って?…借金付きの財産だぜ…保険ぐらいは入るかも知れないけど…それだって…借金とりが…黙っちゃいないだろ?…詳しい事は分からんが…みどりさんは社長を殺すより…生きているうちに、きれいさっぱり…離婚したかったはずだよ…」

「え…?…みどりさんが離婚したがっていた?…」

吾郎「…あぁ…それに…社長の奴…懲りもしないでまた若い女つくって…高い部屋にタダで住まわせて…それが…とうとう…みどりさんにバレて…負債抱えた…病気の浮気社長なんて…そんなのいらねえだろうよ~」


じゃ…あのKの話しはなんなんだ?…

「じゃ…誰が社長を?…」

No.93 13/01/24 20:06
秋子 ( yuBCh )

吾郎「…さぁ…だから警察は多分…みどりさんを疑っちゃいないと思うよ…だから俺が疑われて…散々…おんなじ質問ばっかりされて…参ったよ…アニキが今日テレビに出てくれなかったら…俺…やりましたって…言ってたかもな…」

「なぁ吾郎…あの社長のもと女房って…知ってるだろ?…どんな人だ?」

吾郎「…あぁ…恵子さんか?…知ってるよ…面倒見が良くって…俺…昔から随分世話になったよ…いい人だよ…なんで?…」

「いや…なんでもない…」

…話しが違う…

…離婚したがっていたのは社長の方だとKは言った…

Kは、会社が負債を抱えて倒産寸前な事や

新しい女がいた事を知っていたのか?


それとも知らなかったのか?

頭がこんがらがってきた…


吾郎「…じゃ…俺家帰ってゆっくりするよ…出所祝いってとこだな~…アハハハ」

少しやつれた顔でそう笑い飛ばした吾郎は

やがて、帰って行った…

No.94 13/01/24 20:15
秋子 ( yuBCh )

吾郎が買ってきたのか

コタツの上にはホカ弁が2つ置いてあった

犯人が誰でももう終わった事だ…

俺には関係ない…



気分を変えて彼女と向かい合って食べた…

考えてみれば、彼女とは、最初から、変な出会いだった…

理恵子「携帯電話のお礼もまだ言ってなかったですね…」

「あ…そんな事もありましたか…でも今日は俺が…迷惑かけたから…帳消しですね…」

理恵子
「マスターここで暮らしてるんですね…」


「古い家でしょ…すきま風も入ってくるし…でも夏は涼しいです…」

理恵子
「いえ…私の母の実家がこんな感じで…懐かしいです…」

…今度一緒にご飯でも…

なんて言いたかったが…

「また来月5日に来てくれますか?…」

それだけ言って彼女を見た

理恵子「…はい…」
俺は彼女のニッコリ笑う顔を見て

ホッとしてお茶を飲んだ…

No.95 13/01/24 20:35
秋子 ( yuBCh )

9時…

理恵子が帰ると言って身支度を始めた…


俺は、タクシーを拾い理恵子を送り届けた…

隣町の国道沿いに

新緑荘と言う古くて小さいアパートがあった

理恵子はそこに一人で暮らしていると言った…

理恵子「じゃ…今度は、私が見送りますから…運転手さん行って下さい…」


Uターンした車の後部座席から、子供のように

後ろを振り返り、理恵子が見えなくなるまで

俺は手を振った…

夜の闇で理恵子の姿はすぐに見えなくなってしまったが…

それでも、俺はしばらくぼんやり眺めていた…




久し振りに気持ちが癒された夜だった…





タクシーは家に着き…

店の戸を開けようとした時…


「石井さん…」

突然後ろから声をかけられた…

No.96 13/01/26 00:42
秋子 ( yuBCh )

振り返ると…

マフラーと帽子で顔を隠した

あの殺された社長の前の女房…K…

園田恵子が立っていた…

「…昨日はどうも…吾郎さん…無罪になったんですってね~良かったじゃないの~」

相変わらず気さくな女だ

「はい…お陰様でどうにか解放されました…いや~ホッとしました……あの…で…今日は何か?…」

恵子は人目が気になるのか

キョロキョロしてまるで落ち着きがない…

…まだ何か言いたい事があるのだろうか…


吾郎の話しを聞いてから

俺は恵子に対して疑惑を持ち始めていた…

でも、もう事件に巻き込まれるのはたくさんだと思った…


しかし…

吾郎がお世話になった人でもあるし

邪険にはできないだろう


「中へ入りませんか?…珈琲でも入れますよ…」

恵子を招き入れた…

恵子は昨日と同じテーブルを選び

俺はストーブに火を付けると

珈琲の準備をして…

恵子の前に座った

そして警戒するようにチラッと

恵子を見た…

No.97 13/01/26 00:50
秋子 ( yuBCh )

恵子「今日のインタビュー…見てましたよ…はっきり言えましたね…さすがですよ…マスター」


「はい…一大決心でしたよ~もう…どうにでもなれって感じで…でも目撃者が表れてくれて…ホント良かったです…」


恵子「…ええ~吾郎さんも…よく耐えましたよね…辛かったでしょうね~」


「はい…昨日…あなたが…あれは吾郎だと断言してくれたお陰で…テレビで呼びかける勇気が出たんですよ…いや~いいタイミングで報道人が表れましてね……」


そこまで言って

ある違和感に気がついた

そうだ…

昨日の今日でいきなり報道陣が来たのは何故だ?

ただの偶然だろうか?

あのレポーター…

視聴者に、メトロを取材して欲しいと言われたって

言ってたよな…

その視聴者って?


誰だ?…

No.98 13/01/26 00:54
秋子 ( yuBCh )

恵子「…もう一息で…みどりが犯人だって言って貰えたのに…」

え?…

そうだ…俺…

インタビューで…吾郎の目撃者を募ったあと

犯人は…

そう言いかけてマイクをもぎ取られたんだった…

でも吾郎はみどりが犯人じゃない

みどりには殺す動機がない

そう言っていた…

今は、インタビューで余計な事を言わないで良かったと

むしろそう思っている俺なのに

この女はみどりが犯人だと未だに信じているのだ…

しかもそれを俺に言わせて

捜査をみどりに向けようとしたのか?


恵子への返事に困った俺は


黙った…

「……」

No.99 13/01/26 00:56
秋子 ( yuBCh )

恵子「…今日のインタビューで…また明日あたり…メトロに取材が押しかけるんじゃないかしらね~」


「…まさか…もう懲り懲り…ですよ…」


恵子「…警察誤認逮捕!…アハハハ…なんてね…マスコミは警察叩きが…好きでしょう?…」

「はぁ?…」

…なにが言いたいのだろう…

恵子「…マスコミに…みどりが犯人って言ったら喜ぶんじゃないかしらホホホ…みどりには男もいる…なんてね…」


「え?…」

…それを俺に言えってこと?!…

煽るつもりだろうか?

それこそ名誉毀損で俺が訴えられるだけだろ…


「あの…珈琲ができたみたいです」


俺は立ち上がった…

No.100 13/01/26 01:01
秋子 ( yuBCh )

恵子が社長を殺したのだろうか?…

かすかに震える手でサイフォンから

珈琲をカップに注いだ…


でも…

犯行時間は、吾郎がテレビに出て居る時だった

恵子はその時確かに社長と電話をしていたのだ…

恵子にはアリバイがある


だが…

携帯電話だったら家に居たとは限らない


外でも…

パトロール中のお巡りにみつからなければ

車で移動中でもいい訳だ…


社長は家の中にいてテレビで吾郎を見た…

これはおそらく確かだろう…

吾郎がテレビに出ていると知ったのは社長から聞いたのか?

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