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百丁のコルト

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高校生( 10代 ♂ )
08/11/30 19:07(更新日時)

こんにちは、ここで「誰も見ない月」という小説を書いていた者です。もう書かないつもりだったんですが、小説を書くことが楽しくなってしまい、もう一作書くことにしました。前作とは雰囲気がだいぶ違うので驚かれるかもしれませんが、ぜひ最後までお付き合い下さい。

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No.1157396 07/05/03 18:05(スレ作成日時)

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No.1 07/05/03 18:40
高校生0 ( 10代 ♂ )

14:00(月)渋谷



薄くぼやけた灰色の空から、傘をさす程でもない静かな雨が、さっきから降り続いていた。
須藤翔は特にその雨を気にとめる事もなく、新発売のファンデーションのCMをするオーロラビジョンを眺めながら、巨大な街の空洞の中に立っていた。
(あと10秒…)
須藤は心の中で、出来るだけ正確に時間をカウントする。
(たった…!)
その瞬間、空洞に人が激流の様に流れ込み、録画映像の街がまた動き出す。
誰も自分を気にしないし、自分も誰も気にしない。こんなに人がいるのに、全てが群島の様に孤立している。
自分が下手くそな哲学の真似事をしている事に、須藤は思わず笑みを浮かべた。
(…だからどうした?どうにも出来ないじゃないか…)
須藤は今自分が、笑っている様な嘲っている様な、とにかく変な表情をしているだろうと思った。
でも…誰もその顔を見たりはしない。
人は…前しか見えていない。
須藤は短い深呼吸をすると、交差点の波に飛込んだ。

No.2 07/05/03 19:29
高校生0 ( 10代 ♂ )

15:20(月)渋谷



須藤はゆっくりとフライドポテトを口に運びながら、マクドナルドの窓から交差点を見ていた。
「よっ翔!大学はまたサボリか?」
「…高瀬か、お前こそバイトはサボリかよ?」
「違ぇよ、今夜ライブだからな…なんか食っとかねぇともたないだろ?」
高瀬順一は自然な笑みを作った。
「お前と違って俺はマジメだからな、サボリはしねぇよ」
「…それもそうだな」
須藤の頭の中に、ふと高瀬が走る。
高瀬は大学で知り合った親友だった。自慢じゃないが、自分も高瀬も東大だ。
高瀬はほとんど休まずに2年通った後、大学を中退した。理由は…今の会話の通りだ。
須藤は、やりたい事のために何かを捨てられる高瀬を羨ましく思っていた。
それに比べて自分は…まともに通いもしない東大にしがみついている。
東大に受かった時、須藤はそこに何かあると思っていた。でもそこには、売店の知恵パンくらいしかなかったのに。
(…何も、無いのに)
「高瀬、ライブのチケット、残ってるか?」
「最高の席、タダで用意してやるよ」
「スタンディングだろ、席なんてあんのか?」
高瀬はぽかんとして、すぐにこみあげる笑いを堪えた。

No.3 07/05/04 16:20
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:10(月)下北沢



気持ち悪い程に隔絶された異様な空気が漂っていた。
高瀬のバンド「シャドウレイ」は本日三組目、ちょうど観客のテンションも最高潮に達していた。
愛用のベース「リッケン」を手に、トリッキーなリズムを次々に放つ高瀬の目は、自信に満ち溢れている。
もう…三曲目。
須藤はだんだんと、この空気に耐えられなくなってきていた。
いや違う、正確にはこの空気を作り出した高瀬たちに、耐えられなくなってきている。
あいつらの影響力を妬んでいるのだ。
自分には、あんな風に誰かの心を動かしたりは出来ない。
そう須藤は思った。
(タダで入れてもらっておいて悪いが、耐えられない、もう出よう…)
ギターの強烈な爆音リフが炸裂した後で、須藤は高瀬の立つステージに背を向けた。
一歩ライブハウスの外に出ると、いろいろな物を溶かし付けた様な、雑多で生ぬるい風が顔を撫でた。
細い路上には、外までせりだしてきている古着屋があり、すすけたビルの窓からは稽古をする劇団の声が響いていた。
(皆、するべき事を持っている)
須藤は逃げる様にして走った。それも全力で。

全力で走った。

No.4 07/05/04 16:53
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:25(月)下北沢



須藤の鍛えられていない肺は、走り出してすぐに音を上げた。
「本当に…何やってもダメだな…俺……」
ゆっくりと時間をかけて息を整える。
顔を上げた時、須藤は左手の狭い路地に何か光る物を見た…気がした。
須藤はそれが何か確かめるために、路地に足を向けた。
空のポリバケツを乗り越えると、その先にジュラルミンのケースが見えた。よくドラマで身代金が入っている様なやつだ。
「さすがに現金が入ってるって事は無い……よな?」
鍵はかかっていない、須藤は恐る恐る留め金を外した。

中は現金ではなかった。
携帯電話と……
「エアガンか?これ…」
銀の銃芯と茶色のグリップ、サバゲー好きな奴の持っていたエアガンを見たことがある。
「…思い出した、コルト・ガバメントだ」
手に取ってみる。
予想外に重い……プラスチックのエアガンでは当然ない。
「じゃあ、凝ったモデルガンか?」
良く見ると銃のあった所の下に、マガジン二つと袋が入っている。
袋の口を覗く。
見てすぐに閉じた、あれは……実弾だ。
「これ……ホンモノか?いったいどうすりゃ……」
その時、突然にケースの中の携帯が鳴った。

No.5 07/05/05 16:25
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:35(月)下北沢



須藤は携帯を取った。
(出るな……)
自分の意識が警告している。それでも、須藤は心を振り切って、六回目の呼び出しで電話に出た。
この電話が、自分を何か大きく変えてくれる気がしたのだ。
「……もしもし」
「おめでとうございます。たった今貴方はゲームへの参加を認められました」
須藤は当惑した。
「ちょっとまて!ゲームってなんだ?第一俺はまだ参加するなんて言ってないぞ!」
電話の奥で無機質な笑い声が響く。
「貴方がこの電話を取った瞬間、ゲームの参加は貴方の義務になりました。逃げることは出来ません」
「ゲームって…この銃を使うのか?……嫌だ!俺はやらない、そもそもお前は誰なんだ!!」
「貴方の質問に答える義務はありません」
須藤は必死に叫んだ。
「いいや!答えろ、そして俺をゲームとやらから降ろせ!!」
また笑い声。
「先に申した筈ですが?……貴方の要求はどちらも無理です」
電話を握る須藤の手は震えていた。もしかしたら…自分はとんでもない事になっているのかもしれない……
「……よろしいでしょうか?それでは、ルールの説明をさせて頂きます」

No.6 07/05/06 17:36
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:40(月)下北沢



「そのケースと同じ物が東京都内に百個設置されています。つまりゲームの参加者は百人、貴方もその一人…ということです」
男は淡々と続ける。
「ルールは簡単、そのコルトで自分以外の参加者を全て……殺害してください。最後に残った一人の方に賞金として100億円を差し上げます」
「バカだろ?そんなの無理に決まってるだろ!」
「なぜですか?」
「殺人は犯罪だからだよ!このアホ!」
こちらの怒鳴り声にもまったく動じず、男は平然と返した。
「貴方が参加者をコルトで殺す事に関しては、ゲーム中殺人罪には問われません。また、そのコルトには内蔵型の高性能特殊消音器を搭載しております。所持している所を直接見られない限りは発砲しても通報される心配はありません。ご安心下さい」
男は有無を言わさず説明を続けた。
「端末の画面をご覧下さい、顔から離してもらってけっこうです。声は聞こえますので」
須藤は言われた通りに携帯の画面を見た。右上には97、という数字が出ている。画面いっぱいに地図が浮かんでいる。多分この辺りの物だろう。その中心に青い点、そして北東に赤い点が一つ、マークされていた。

No.7 07/05/06 19:59
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:43(月)下北沢



「画面をご覧になっての通り、それは携帯電話ではありません。通信は付属機能であり、主機能はそのGPSマップです」
「これが、何だっていうんだ?」
「まずその右上の数字、それは現在のゲーム参加者の数です。そして画面上のマップは今貴方のいる地点の半径10kmのものです」
「この二つの点は?」
「中心のブルーのポイントは…お気付きだとは思いますが貴方自身です。そしてレッドは今貴方に一番近い位置にいる参加者を表しています」
参加者?
須藤はもう一度、よく画面を見た、どうやら拡大も出来るようだ。
「……ちょっとまてよ、もう300m無いぞ!!」
「もちろん相手にも貴方の位置は分かっています」
須藤は混乱した。
どうすればいい?戦うのか……?
いやそれは無理だ、じゃあどうする……?
答えは一つだ、逃げるしかない。
だが、銃は置いて行くのか……?
駄目だ、ゲームから本当に逃げられないのなら、最悪の場合使うことになるかもしれない。
「なお、貴方からこちらに連絡を取ることは出来ません。また、武器弾薬の補給も出来ません……それでは、御健闘をお祈りしています」
電話が切れた。

No.8 07/05/07 17:33
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:46(月)下北沢



背後に黒く不穏な気配が流れる。
須藤はそっと振り返る。
視線の先にはホームレスの様な男が一人、銃を握って立っていた。
「お前がゲームの相手か?」
須藤は答えない。
「悪いな、死んでくれ!」
(ほ、本気だ!)
須藤は考えるよりも早く逆方向に走り出した。
直感的な恐怖に筋肉が唸り、須藤を前へと運ぶ。
(クソっ、ダメだ…間に合わない)
この狭い路地では当てない方が難しい。全力で走りながらも、須藤は絶望していた。
「死ねぇ!!」
勝ち誇った様な声が響いた。
(……?)
銃声もしない、弾も飛んでこない。
「お、おい!何で弾が出ねーんだよ?」
そうか、奴はセーフティを解除していない。これなら逃げ切れる。
須藤は本当の全力で走り続ける。
「これを解除するのか!」
男はセーフティを解除した。
(間に合え!)
須藤には出口が見えている。
「今度こそ……」
男が照準を合わせる。
須藤は出口に転がり出る。
「当たれぇ!」
パンパンパンパン!
エアガンの様な控え目な銃声が立て続けに聞こえた。
須藤は……無傷だった。弾は当たっていないらしい。
須藤は路地の出口の壁に張り付いた。

No.9 07/05/17 20:05
ガフ ( TWF8h )

こんにちは🙋この小説を読ませて頂きました😃おもしろいです‼続きを楽しみにしてます

No.10 07/05/18 20:39
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 9 ガフさんありがとうございます。
更新してみます。

No.11 07/05/18 21:03
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:49(月)下北沢



須藤は恐怖にあえいだ。
心臓の速すぎる鼓動がうざったく響く。
心の中では悪い冗談だと思っていたが、本当にまずい状況らしい。
(落ち着け……)
須藤は素早く辺りに視線を送る。隠れられる場所も、人影もない。
とにかく逃げるしかない。少なくとも、相手には殺意がある。
(逃げなきゃ…殺される)
須藤は左に向かって全力で地面を蹴る。駅の方向だ、人通りの多い所なら相手も迂濶には撃てないはずだ。
須藤は自分の持つ能力に驚いた。
息が切れていたのが嘘の様に肺が波打ち、筋肉が敏感に反応する。
チュイン!
突然に足元のコンクリートが弾ける。
(追い付いて来る、このままじゃその内やられる…)
須藤は片手でセーフティを解除すると、振り返らずに銃口を後ろに向けた。
パンパン!
発射と同時に右手が反動に震えた。だがその振動は同時に、心の動揺を相殺した様だった。
「クソっ!危ねえ…」
背後から情けない声が聞こえた。
当てるつもりはない。相手が怯めばそれでいい。
頭の中が淡水の様にシンプルに動く。
ただ走る、それだけに集中している。
須藤は何か、自惚れに似た余韻の中にあった。

No.12 07/05/18 22:16
匿名12 ( 10代 ♀ )

主サン💕
初めまして🙌✨
小説読みました😚💕
前作の『誰も見ない月』
もとても面白かったです✌✨
百丁のコルトの方が好きですが☺💕
頑張ッてくださぃ❤
1ファンょり😉💕

No.13 07/05/18 23:30
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 12 ありがとうございます。
前作も読んで頂いたみたいで、嬉しい限りです。
またご意見がありましたら、ぜひ教えてください。

No.14 07/05/19 12:46
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:52(月)下北沢



パンパン!
男はすがる様にコルトの引き金を引き続けていた。
須藤はちらりと後方をうかがう。
さっきの威嚇射撃で怖じ気付いたのか、男はだいぶ距離を取って追い掛けて来ている。
この距離で、自身も走りながら動く目標に当てる事は、素人にはかなり難しいはずだ。
パン!
須藤はもう一度威嚇に弾を放った。
(逃げ切れる!)
自らの射撃が希望の号砲となり、須藤を勇気付けた。

「ぐあっ!?」
突然に左腕を高熱が駆け抜ける。
(当たったのか?)
そう意識すると同時に、傷口の熱は急速に逆転し、氷の冷たさに変わった。
ピシュ!
空気を切り裂く鞭の様な音。
第二射が須藤の頭をぎりぎりでかすめた。
不自然な切口の黒髪がクルクルと回転しながら落ちる様子が、スローモーションで須藤の瞳に焼き付いた。
何かのスイッチが入り、突然に足が言うことを聞かなくなる。走ることを止め、ガタガタと震える。
振動が心臓に、心に伝波して、強烈な動揺と心拍が交互に鳴り響いている。
(こ、殺される……)
須藤はゆっくりと体を回転させた。
銃口……
須藤はふと、今自分がどんな表情をしているのか気になった。

No.15 07/05/19 17:18
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

テスト期間なんすけど読んでみた
表現力がすげぇ✨(笑)

応援する🐤

『誰も見ない月』見てみたかったな

No.16 07/05/19 19:07
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 15 小人さん感想ありがとうございます。
テストなんですか?頑張ってください。
私の高校は六月なのでまだ余裕ですから、更新します。

No.17 07/05/19 19:20
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

>> 16 ずるっ😲(笑)
羨ましい✨

初日は
日本史と英語っすね🐔

読ませて貰います📖

  • << 19 日本史と英語なんですか? 私は世界史クラスなので、日本史と聞くと懐かしい感じです。 いい成績を残せることをお祈りしております。

No.18 07/05/19 19:42
高校生0 ( 10代 ♂ )

21:54(月)下北沢



男は一歩一歩確実に接近して来る。その目はすでに勝利を確信している様だった。
(もう駄目だ…足が動かない)
男はすぐに須藤の目の前までやってきた。
おもむろに男の右腕が持ち上げられ、須藤の瞳は必然的に漆黒の穴を捉える。
男のコルトと須藤の頭が致命的なラインを形成した。
撃たれれば……
即死だ。
(俺は……死ぬのか?)
「悪いな、お前の負けだ……死ね」
男が引き金に指をかける。
「お前は、俺をクソ野郎だと思うか?その通りだ、俺は今まで道端のクソと同じ生活をしてきた…それに戻るくらいなら、人を殺すくらいワケねぇんだよ!!」
(嫌だ…死にたくない、俺だって……人を殺したって、コイツを殺したって、それでも……)
「……生きたい…」






どれだけの時間、そうしていたのか分からない。
須藤の視線の先には、過去形が転がっていた。
もう、死んでいる。
自分が…殺した。
須藤は恐怖と恍惚が入り混じった様な不思議な感覚を覚えていた。
そうだ……
俺が、この男を決定したのだ。
須藤は、自分が求めていた物が、ふとここにある気がした。
それと同時に、猛烈な吐気に襲われた。

No.19 07/05/19 20:40
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 17 ずるっ😲(笑) 羨ましい✨ 初日は 日本史と英語っすね🐔 読ませて貰います📖 日本史と英語なんですか?
私は世界史クラスなので、日本史と聞くと懐かしい感じです。
いい成績を残せることをお祈りしております。

No.20 07/05/20 13:34
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

>> 19 私は2年時
世界史だったんよ📖

Thank you❗
I'll be back😊

  • << 22 テスト終わったら、ぜひまた読んで下さい。 お待ちしております。

No.21 07/05/20 17:59
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:10(火)上野



自宅に着いてからも、須藤は今の状況に必死に頭を巡らせていた。

このゲームは誰が主催しているのか?
賞金は100億円、人を殺しても警察には捕まらない…
現に、俺が殺した男の事はニュースにもなっていない。いくら人通りが少なくても、道の真ん中に落ちている死体が見付からないのは不自然だ。

……これだけ大がかりな準備と100億を用意する資金力と、一国の警察権力を封じ込める影響力を持った組織があるということか?

いったいこのゲームに何の目的があるのか?

……こういうのを見て喜ぶ物好きな金持ちが、世界にはたくさんいるのかもしれない。

ゲームの主催者はどうやって俺の位置を調べているのか?

……銃か端末に発信機がついているのか?

……いや違う、それではケースごと川に捨てられたらゲームが成立しなくなる。
参加者は俺の顔は知らない。つまり、端末の位置情報をもとに相手を判断している。だから、相手の端末に俺の位置が表示されないなら、俺はゲームに参加していないも同然だ。
ということは、他の方法で参加者の位置をモニタリングしているのか?
(分からない事だらけだ……)

No.22 07/05/20 18:01
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 20 私は2年時 世界史だったんよ📖 Thank you❗ I'll be back😊 テスト終わったら、ぜひまた読んで下さい。
お待ちしております。

No.23 07/05/21 21:17
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:21(火)上野



(分からない事を気にしても仕方がない)
須藤は気をとり直し、今出来る事をしようと思った。
そうだ、左腕を撃たれたのだ。ここまで必死で、須藤は全く気が付かなかった。
腕を見てみる。すると、傷口は転んだ程度のかすり傷だった。だから痛みもすぐに引いたのだろう。
もう傷は完全にふさがっている。取り立てて手当てをする必要はないだろうと須藤は思った。

次に、須藤はコルトに手をかけた。
(…俺はこの銃で人を殺した。だけど…撃たなきゃ俺が死んでいたんだ)
……考えても無駄だ。

マガジンを抜いて弾を詰め直す。
コルトの装弾数は7発、予備のマガジン2つも弾で満たした。

今度は端末を確認してみる。
参加者は74人にまで減っていた。
地図を確認してみると、近くには敵はいない様だった。
ホッとした。
「この地図、以外と大雑把だな……」
よく見ると、参加者の位置は建物単位でしか分からない様だ。つまり、相手には俺がこのアパート内に居る事は分かるが、どの部屋に居るかは分からない……

という事だ。
(屋内の方が有利なのか……)
そんな事を須藤が考えていると、突然端末が鳴った。

No.24 07/05/23 20:27
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:31(火)上野



須藤は端末の通話スイッチを押した。
「生き残られた様ですね、おめでとうございます」
須藤は返事をしない。こちらの声が何も影響を及ぼさない事を知っているからだ。
「追加の説明をさせて頂きます」
「ゲームの終了についてです。来週の月曜日になった段階でゲームは終了となり、賞金は生存参加者で頭割りとなります」
(つまり、一週間逃げ切ればゲームから解放されるのか)
「ゲストについて説明します。ゲストとは我々が依頼して、参加して頂いている方々の事です。職業は殺し屋、退役軍人、ギャングなど……いうなればプロの方々です」
(迂濶に逃げ回るのも危険……という事か)
「ミッションについてです。ゲームが停滞した場合、参加者にミッションが課せられます。ミッションは特定参加者の殺害、指定場所への移動など様々です。ミッションを放棄した場合、処分となります」
(処分……か)
「これで追加の説明を終わります」
淡々とした通話は切れた。

ふと、端末を見ると、赤の点が約1kmの地点まで動いている。
「……クソっ!」
さっきのゲストの説明が頭によぎる。
コルトを握る手に一つ汗が走った。

No.25 07/05/23 21:25
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

やほ✋

test終わった(笑)✨✨✨
いつも更新楽しみ待ってる👍

ちなみに
誰も見ない月と言う作品はどんなジャンルの作品だったんすか❓

No.26 07/05/23 22:05
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 25 こんばんは、いつも読んで頂いてありがとうございます。

誰も見ない月は、私が初めて書いた小説です。
簡単にあらすじを話すと、主人公の高校生、冬馬が親友の司の自殺を通して
「友情とは何なのか?」
という問題に、迷いながらも答えを出していく……
何てたいそうなテーマを掲げながらも、技量不足でグダグダしちゃった小説です。

多分過去ログを見たらあると思います。
(なにぶん駄作なものですから、人の目にさらしたくない気持ちもあるのですが……)

No.27 07/05/23 22:44
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

>> 26 愛読なん👍✨


いゃいゃじゅうぶんスゴイ📖✨
うぉっ😲

過去ログっすね✨
見てみます💨(笑)

No.28 07/05/23 23:42
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:34(火)上野



赤の点がリアルタイムで直線を伝う。
逃げるのは無理だ。この速度はどう考えても車かバイクだ。
(どうする?室内にたてこもるか…?)
だが、相手がゲストだったら?いくらこっちが有利でも、真っ向勝負は危険すぎる。
須藤は最大速度で頭を働かせる。何か上手い作戦はないか?



赤の点はすぐ近くまで来ている。もうアパートの目の前にいるはずだ。
須藤は接近してくる頃合いを見計らって電気を消す。こちらの位置と防戦の意志を知らせるためだ。
(よし…行くぞ)
須藤はコルトを握ると、反対側の窓から裏庭に出た。そのまま建物づたいに進む。
アパートの側面の壁に張り付いて、玄関側をうかがう。
少し先に見慣れない自動車が見える。
暗くて相手は視認出来ないが、この先にいるのは確かだ。

作戦はこうだ。
こちらが部屋で防戦するふりをして注意を引き、裏から出て表に回り込む。
建物ぎりぎりで動けば相手の端末の、俺の位置を示す点は動かないはずだ。
これなら、相手の背後をつける。

はずだった。

「惜しいねぇ…策に溺れたかな?」
冷たい銃口の感覚。
背後を取られたのは

須藤の方だった。

No.29 07/05/24 21:33
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:36(火)上野



後ろから聞こえる声は少なくとも、男の物ではなかった。
「お、女…?」
「そうよ、私は女……女にやられちゃ悔しい?」
クスクスと笑い声。
「さあ、手を上げて…武器をよこして」
「なんで……俺の作戦が分かった?」
女は須藤の右手からコルトを取り上げながら話す。
「部屋で防戦するフリをして、裏から回り込んで、後ろから奇襲……表示の大雑把な端末の盲点を突いた、効果的な作戦ね」
須藤は口を挟まず聞いている。
「でもね、それは私が馬鹿じゃなきゃ成功しない……残念ながら私は慎重なタイプなの、そっちが小細工してくるかも…っていうのは予測済みってワケ」
「あんた、ゲストか?」
「だったら?何か問題ある?」
女は堪えられないという様に、まだ笑っている。
「俺を……」
女は須藤の口調を真似して遮った。
「殺すのか?……
って聞きたいの?殺すなら最初からそうしてるわ」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「君次第…かな?」
「俺次第?」
「そう、全ては君次第よ」
(どういう意味だ?)
女は須藤の手にコルトを返した。
「私と手を組まない?代わりに君の知りたいこと、教えてあげる」

No.30 07/05/25 20:35
高校生0 ( 10代 ♂ )

0:50(火)上野



「ところでさ…俺はまだ手を組む件、OKしてないんだけど」
須藤は自分の部屋に図々しく座り、コーヒーを飲んでいる女に向かって、皮肉混じりに言った。
外では顔が見えなかったが、女は予想外にかわいい顔立ちをしていた。きっと、まだ23か、24歳くらいだろう。
「そんなのダーメ!君に選択権は無い、分かる?」
笑顔で脳天に銃口をつきつけられ、須藤はたじろいだ。
「第一手を組んでも、君にデメリットはないでしょ?」
確かにそうだ。手を組めば生き残れる可能性は格段に上がるし、彼女はゲストらしい。ゲームに関する情報も得られる。
「……分かったよ…手を組もう」
「よし!交渉成立ね。あ、そうだ、君名前は?」
「須藤……」
「そう、須藤君ね。ヨロシク」
彼女は握手を求めてきた。須藤はそれに応じる。
「アンタは?何て呼べばいい?」
彼女は少し悩む様な表情を浮かべた。
「別に…何でもいいわ。彼女の名前ででも呼べば?」
「…………」
「あ!…彼女いなかった?」
「…………」
「しかたないな、じゃあ…セシルって呼んで」
セシル?外人?
「日本人…だよな?」
「まさか、コードネームよ」

No.31 07/05/26 16:04
高校生0 ( 10代 ♂ )

1:00(火)上野



「手を組む代わりに、俺に情報をくれるんだろ?」
「もちろん…知っていて、話せる事ならね」
セシルは意味もなくコーヒーをかきまぜながら言った。
「セシルはゲストなのか?」
「ええ、あっちがそう呼んでるだけだけどね」
「コードネームってことは、その、どこかの…組織みたいな物の人間なのか?」
「簡単に言っちゃえばそうね」
「雇い主は?」
「それは言えないわ、ノーコメント」
ここまでは分かる、須藤は少し思いきった質問をしてみる。
「このゲームに参加する目的は……金じゃない?」
「須藤君、鋭いね。
その通り、私の目的は金じゃない……このゲームの裏側を知ること」
裏側?ゲームの開かれる目的や、主催者の事だろうか?
それを知りたいという事は、セシルもゲームについてはそれほどの事は知らないのだろう。
「須藤君、私が目的を果たすために一番大事な事、何だか分かる?」
須藤は少し考えて、控え目にこう答えた。
「生き残る事?」
「そうよ、私は須藤君を守る、だから君は私を守って」
「努力してみるよ」
「期待してるからね、須藤クン」
セシルはまた、分かりやすい笑みを浮かべた。

No.32 07/05/26 16:56
高校生0 ( 10代 ♂ )

23:45(月)下北沢



「ジュン!打ち上げ行こうぜ!」
ボーカルの由良が待ちきれないらしく、高瀬を呼びに来た。
「悪い、これからちょっと用があるんだ、また今度な」
「フジー!ジュンが来ないってよ!」
由良に呼ばれて、ギターの藤原がやってきた。
「ジュン、今日は俺達に目をかけてくれてるレコード会社の担当も呼んでる。シャドウレイのデビューが決まるかもしんないんだ。それより大事な用なのか?」
リーダーの藤原は、流石に今日の打ち上げを重く見ているらしかった。
高瀬は、無理に深刻そうな表情を作って言う。
「フジ、どうしても外せないんだ、ホントゴメン」
藤原はスキャナーの様な視線を高瀬に向けた。
「……分かった、話は俺がなんとかしとく、来れんなら遅くなってもいいから、顔出せよ」
「ああ、間に合ったらな」
藤原だけは何か不信感を感じたんじゃないかと、高瀬はふと思った。
だが、彼等は何も知らない。知る必要もない。
何も言わずに去る事に罪悪感が無い訳じゃない。
だが、それが皆のためだ。
(……ゴメン)
高瀬はシャドウレイのメンバーとは逆方向に、まるで光を受けて伸びる影の様に、早足で歩き出した。

No.33 07/05/26 17:23
高校生0 ( 10代 ♂ )

23:55(月)下北沢



少し歩いた所で、高瀬はふらりと路地に入った。
高瀬の視線の先には、スーツを着た黒ずくめの男が立っていた。暗くて顔はよく見えない。
だが、高瀬にはこの男の顔など関係なかった。どうせこいつは「伝書鳩」その先にいる、俺の契約者とは何の関連も無いのだから。
「確認しておく、そっちは俺の要求を呑むんだな?」
「義務を果たさぬ者の権利を守るほど、我々は寛大ではない」
「それは分かっている……お前らの指示はちゃんと守ってやる」
「義務を果たした者の権利を守らぬほど、我々は卑怯ではない」
そう言うと、男はジュラルミンのケースを持ち出した。
「いいのか?これを受け取れば、もう引き返せないぞ?」
「どっちみち消されるだけだろ……第一、俺は降りるつもりもない」
「あんな要求を呑むなんて、私にはお前が解せん」
「お前には関係ないだろう。さっさとガバメントをよこせ」
高瀬はそれを受け取るのと交換に、背負っていたベースを男に渡した。
「何だ、これは」
「見て分かんねぇのか?ベースだよ」
「何で私にベースを渡す?」
「俺にはもう必要ない」
そう言い残して、高瀬は雑踏に消えていった。

No.34 07/05/27 18:09
小人 ( 10代 ♀ twI8h )

うぉ~~ぃ

誰も見ない月読ませてもらいました✨

とっても
良かったょ👼✨

No.35 07/05/29 23:18
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 34 ありがとうございます。
これも完結できるよう頑張ります。

No.36 07/06/02 20:21
高校生0 ( 10代 ♂ )

10:05(火)上野



瞼の裏にふと、ちらちらとした感覚があった。
「ん……朝?」
疲れが出たのか、須藤はすっかり熟睡していた様だった。

眠っていた?
とっさに飛び起き、銃を握った。危ない…意識が無ければ、戦いようがない。
「起きた?須藤君」
キッチンからセシルがトーストとスクランブルエッグを持って出てきた。
「セシル?……そうか、そうだった」
「大丈夫、ちゃんと見張ってたから。一応これでも私、プロなんだからね」
「悪い…俺だけ寝ちゃって」
料理をテーブルに置きながら、セシルは言った。
「ギブ&テイクよ、今夜は須藤君が見張りなんだから、しっかりしてよ?」
「ああ、分かってる。俺だって死にたくない」
「見張りって言えば、須藤君の端末ちょっと見して……やっぱり、私の位置が表示されてる」
そういえばそうだ。一番近い参加者はセシルだから、これじゃあ索敵のしようがない。
「……よし!これでOK、私の表示を消したわ」
セシルから返された端末を見ると、確かに一番近い参加者はセシルではなくなっていた。
「じゃあ、とりあえず朝食にしよう、須藤君食べられる?」
「ああ、食欲はあるみたいだ」

No.37 07/06/03 21:12
高校生0 ( 10代 ♂ )

10:30(火)上野



セシルの料理は旨いのだが、どことなく無機的な味がした。
それはきっと、職業的な要素なのだろう。
須藤はそう考えた。
ふと、須藤はセシルの事をじっと見ている自分に気付いた。
彼女の横顔…
思えば、彼女は俺と同い年くらいの普通の女の子なんだ。

瞬間に視線に気付いたセシルと目があう。
「須藤君…変なコトしたらぶっとばすからね?」
「ち、違うって!」
「じゃあいいけど…」
須藤は実際そんな事は考えていなかった。
ただ、お互いにこんなにも違う境遇にあるのは、何が理由なのか?
そんな取り留めの無い事を考えていただけだった。
「セシル、一つ聞きたいんだけどさ」
「何?須藤君」
「セシルはどうして…その仕事に就いたんだ?」
セシルは自然な微笑を浮かべる。
「うーん…もう忘れちゃった」
上手くかわされた…
そう須藤は思ったが、それ以上は追及しなかった。
「でも…これだけは言えるわ」
「何?」
「私は今も、自分の意志で生きてる…これで答えになる?」
「ああ、十分…」
それは今の須藤にとって、精神的にも十分な答えだった。

その時、突然に須藤の端末が冷徹に鳴り響いた。

No.38 07/06/04 20:43
高校生0 ( 10代 ♂ )

10:35(火)上野



須藤は端末に出た。
「須藤様にミッションが与えられました、画面をご覧下さい」
須藤は言われた通りに端末の画面を見た。セシルもそれを後ろから覗き込んでいる。
上野からマップが南に移動する…芝公園だ。
さらにマップ上に緑の点が追加される。
「ミッションは本日16時までに、緑のポイント…東京タワー展望台まで移動する事です」
「それだけか?」
「ただし、同時にある参加者に『本日17時までに須藤様を殺害する』というミッションが与えられています。」
「その参加者には俺の位置は分かるのか?」
「はい。ミッション中に限り、須藤様の位置情報は緑のポイントで常時表示されます」
こちらの位置は常に相手に分かる…ミッション中は警戒を強化する必要があるな、と須藤は思った。
「健闘をお祈りします」
そう言い残して通信は切れた。
「ふーん、いよいよゲームも本番ってことね」
そう言うと、セシルは携帯でどこかに電話を始めた。
「どこにかけてるんだ?」
「援軍を頼むのよ」
通話はすぐに終わった。
「OK、じゃあ出発しましょう」
「ああ、だが…」
「大丈夫、須藤君を殺らせたりはしないわ」

No.39 07/06/07 21:46
高校生0 ( 10代 ♂ )

12:00(火)新宿



「ギリアム、貴方の方の首尾はどうですか?」
「こちらは問題無い、予定通りゲームにも参加している。ゲームの様子はどうだ?アシュレイ」
「今の所は特にトラブルはありません。先ほどセシルから連絡が入りました、全て予定通りです」
「そうか、組織の人間に気取られるな、奴らは何処から監視しているか分からない」
「それは分かっています。私はゲームには参加していませんから、少しはマシでしょう……ギリアム、貴方こそ気を付けて下さい。貴方の位置は組織に筒抜けですから」
「……そうだな、その通りだ」
「……どうしました?ギリアム、何か気にかかる事でも?」
「いや、何でもない。これからセシルを迎えに行くのか?」
「はい、貴方は?」
「俺は当初の予定通り動く」
「分かりました、ではまた後ほど」
「GoodLuck、アシュレイ」
「ThankYou、ギリアム」

No.40 07/06/13 23:10
高校生0 ( 10代 ♂ )

中間テストなのでしばらく書けません。
少々お待ち下さい。

  • << 48 早く書いて下さいね😁毎日が楽しみです😍
  • << 51 早く書いて下さいね😁毎日が楽しみです😍

No.41 07/06/23 17:28
高校生0 ( 10代 ♂ )

14:00(火)大手町



セシルの駆るスカイラインはすぐには東京タワーの方角には向かず、さっきからふらふらとオフィス街を縫っていた。
「何ですぐに行かないんだ?時間稼ぎか?」
「半分は正解」
セシルはサイドミラーに映る黒い車を気にかけている。須藤は端末を見た。参加者の点…あれが自分を殺そうとしている奴だという事は確実だ。
もう一台、青い車もいたが、どうやらそっちはたまたまの様だ。
「残りの半分は?」
「後ろの車、さっきから尾行して来てるでしょ?」
「ああ、そうみたいだな」
「じゃあ須藤君、敵の気持ちになって考えてみて…もし、相手の目的地が分かってるならどうする?」
行き先が分かるなら…
「それは……その目的地か、その途中で……ああ、そうか」
「分かった?須藤君」
セシルは待ち伏せを警戒しているのだ。もし一直線に向かえば、ルートや目的地に見当を付けられてしまう。それを防ぐために、わざとクネクネと走っているのだ。
「見えない相手を警戒するよりは、尾行させた方がいいって事か」
セシルはふぅっ、と息をついた。
「まあ……あんなにつけ方が下手なんじゃ、大した相手じゃなさそうだけどね」

No.42 07/06/23 17:30
高校生0 ( 10代 ♂ )

お待たせしました。
テストが終わったので再開します。

No.43 07/06/24 01:34
やじ馬43 

>> 42 テストお疲れさまです😊前作から読ませてもらってた者です✌相変わらず面白いですね😉続き待ってます✨

No.44 07/06/24 16:48
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 43 ありがとうございます。
誰も見ない月も読んで頂いた様で嬉しいです。
描写重視の前作とは違い、この作品はかなりストーリー展開を重視しています。
皆さんを驚かせる様なラストを用意できるよう頑張ります。

No.45 07/06/24 20:08
高校生0 ( 10代 ♂ )

15:00(火)日比谷



セシルは相変わらず蛇行運転を繰り返していた。青い車は既に途中で曲がり、今はいない。黒い車体が下手な尾行を続けているだけだ。
「須藤君、後ろのをひっぺがして東京タワーに向かうわ、しっかりつかまってて」
そう言うやいなや、セシルはアクセルをめいっぱいふかす。突然に急減速し、直角に曲がる、ギアが流れる様に動き、ハンドリングにシャフトが悲鳴を上げる。
敵も懸命に喰らい付く。
だが、勝負はあっさりとついた。
稲妻の様にジグザクに高速で折れる、セシルの残像を追う事は不可能だった。
「よし!まいたみたいね、須藤君どうしたの?」
須藤は驚愕の表情に自分の顔が固定されている事に気付かなかった。
「いや、あんな運転初めてだったから……」
「もしかして……びびった?」
「少し…」
セシルはさっきまでの真剣な顔から笑顔に変わった。
「笑うなよ…」
須藤はぼそりと呟いた。

セシルは高速で交差点を走り抜ける。
その時、須藤は青く引き延ばされた影を瞳にしっかりと捉えた。
「セシル!!」
ハンドルが一気に回転する。
駄目だ、間に合わない!
次の瞬間
強烈な衝撃が体全体を駆け巡った。

No.46 07/06/27 17:29
高校生0 ( 10代 ♂ )

15:15(火)日比谷



フロントへの衝撃で車がスピンする。エアバックが膨らむ。
二回転した後、オフィスビルの壁面に激突して止まった。
「……須藤君!大丈夫?」
「……ああ、なんとか…」
「早く外に出て!」
セシルは既に銃の安全装置を解除している。
「くそっ!黒は囮か!」
「そうみたいね…迂濶だったわ」
少し先に停車している青い車からは、既に二人の男が降りていた。
まんまとはめられた。
尾行はこちらの目を引き付けるための囮。途中でまかれたふりをして、俺達を油断させる。
そして本命は途中で消えた青い車だ。最初からこっちにぶつけて動きを取れなくするつもりだったのだ。
「須藤君隠れて!」
ダダダダ!!
敵がサブマシンガンを乱射する。街中に悲鳴が響く。
「こんな所で銃なんか撃たないでよ!」
車の裏に隠れてセシルが反撃する。
パン!
「ぐぁっ!?」
セシルの銃弾はマシンガンを持つ男の右腕に正確に着弾した。
須藤ももう片方の男に向かって銃弾を放つ。
パンパン!
弾は相手には当たらず、敵が隠れている車に当たった。
「須藤君、無理しなくていいから隠れてて!」
「俺だって足手まといにはならない」

No.47 07/06/28 00:06
高校生0 ( 10代 ♂ )

15:21(火)日比谷



須藤達と敵は車線を挟んで膠着状態になっていた。だが、敵の黒が追い付いて来れば、こちらが圧倒的に不利になる。
「ごめん、須藤君だけでも逃がせるチャンスがあればいいんだけど…」
須藤の視界に黒が入り込む。
「セシル、黒い奴だ!」
黒い車から降りたのは四人、絶体絶命だ。
「滝沢!?…何で奴がここに……」
セシルが敵を見て固まっている。
須藤は直感的に危機を察知した。
「セシル!伏せろ!」
ダダダダダ!!
敵が一斉に引金を引いた。轟音が響き、盾にしている車体が頼りなくその弾丸に呼響する。
もう長くは持ちそうにない。
「くそっ!敵が多すぎる……」
須藤はやけくそになって銃を乱射する。だが、その軌道上に敵は一度も入らなかった。
「須藤君、諦めないで…もう少しだから」
セシルは必死に反撃を試みる。だが、すぐに敵が数十倍の弾幕を張り、埒があかない。
「よし!前に出るぞ!お前らは援護しろ!!」
「分かりました」
敵が迫る。
「セシル!!」
「ちょっと待って……来たわ!!」
その瞬間、一台の車が須藤達と敵の間に割って入った。
「申し訳ありません、セシル、遅くなりました」

No.48 07/07/04 13:46
中学生48 

>> 40 中間テストなのでしばらく書けません。 少々お待ち下さい。 早く書いて下さいね😁毎日が楽しみです😍

No.49 07/07/04 21:35
高校生0 ( 10代 ♂ )

>> 48 更新が遅くなってすいません。
なにぶん受験生なものですから、勉強もしないとやばいので。
それでは、続きをどうぞ。

No.50 07/07/04 22:35
高校生0 ( 10代 ♂ )

15:23(火)日比谷



割り込んだ白のクラウンの運転席から、なぎ払う様に銃弾が放たれる。迫っていた男の内一人はその場に倒れ、残りは自動車の後ろに引き上げた。
「アシュレイ!ホントに遅い!」
「だから謝ってるじゃないですか…」
ダダダダ!!!
アシュレイのクラウンに激しい銃撃が浴びせられる。
「アシュレイ!須藤君をお願い。私は奴らを足止めする」
「分かりました。須藤さん、後ろに乗って下さい…早く!」
アシュレイが強い語調で急かした。
「でも…セシルは……」
「私なら大丈夫、一人なら何とかなるから…早く出してアシュレイ!」
アシュレイは持っていたサブマシンガンをセシルに投げた。
「使って下さい、少しはマシでしょう?」
「ありがと。……須藤君を頼んだからね」
「分かっています……須藤さん、車を出します!伏せて下さい!」
タイヤが唸りを上げてアスファルトを掴む。
「車を狙え!!」
銃口が一斉にこちらを向く。
「あんたらの相手はこっちよ!!」
セシルがマシンガンを連射した。その音が背後に響く。
アシュレイは東京タワーに向けてスピードを上げる。
ギアがまた一段上がるのを、須藤は体で感じた。

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