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友達ってなんだろう
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🍀語りあかそうの里🍀1️⃣0️⃣

💉みつばちの唄💉

レス88 HIT数 7934 あ+ あ-

普通のおばさん
08/04/01 02:39(更新日時)

💀(はじめに…)

この小説は《大人の為の官能サスペンス》というコンセプトから随所に未成年の方にはそぐわない文章的表現があります…未成年の方、またその種の小説がお嫌いな方は目を通されない事をお勧めします…なお、当然の事ながらこの物語は完全なフィクションです…ご了承頂けた方のみお入り下さい💀

No.924659 08/01/18 16:47(スレ作成日時)

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No.1 08/01/18 17:17
普通のおばさん0 

💉代議士の田中悦男は『いいかい?…本当にいいんだね?』と何度も念を押した後で私の中に分身をくぐらせた…え?気持ちいいのかって?…馬鹿ッ!感じた事なんてただの一度もないわッ!…ただ相手の機嫌を損ねない程度に演技してやるだけ…アタイの目的はアタイの中に奴らの分身をくぐらせる事だけ…ただそれだけ…



『設楽警部補ッ!…やはりガイシャは衆議院議員の田中悦男です、間違いありません…』
ホテルの部屋の死体検分から出て来た相棒の巡査部長、藤田章が眉間に皺を寄せながら設楽五郎警部補に歩み寄った…
『田中が所持していた金品もそのままですし殺害の際の外傷も全くありません…』
『…死因は?』
『それが…全く解りません…自然死としか言いようが…』
捜査用の白手袋をはめ直すと設楽はラークの煙草を口にした…このひと月で同じ手口の殺人事件が神奈川県内で相次いでいた…
『死因が解らない…そんな事あるのか…?』
設楽は不可解な連続殺人事件に頭を抱えた…
『先日の横浜の弁護士殺害事件と共通する所はどちらもホテルのベットの中で息絶えている事くらいですかね…』
藤田は煙草一本いいですか?と設楽の持っていたラークをねだった…
『奇妙奇天烈タァこの事だな…』

No.2 08/01/18 18:16
普通のおばさん0 

>> 1 💉数日後、神奈川県警立木警察署管内にこの不可解な連続殺人事件の特別捜査本部が設置され深夜まで会議が続けられていた…
《えぇ~今分かっている事は被害者はいずれも男性、殺害の際の殴打痕、銃創、外傷もなく胃内から毒物薬物反応等も検出されていません…鑑識の報告では死因はまだはっきりとはしていませんがおそらく衝動的な心臓発作か何かではないかと…》
『何かでは解らないだろッ!そこん所明確にさせてくれなきゃッ!』
ベテラン刑事が楊枝をくわえながら文句を言った…発表した本部の若手係官はあたふたと書類を重ねている…
『まるで煙に巻いたような事件だな…』
『超能力殺人とかッ!ほら…一時流行ったじゃないですかッ!ノートに名前を書かれた人物は死神に呪い殺されるっていう…』
『フン、馬鹿馬鹿しいッ!TVの観すぎだ、阿呆ッ!』
会議後、薄暗い警察署の廊下を歩きながら設楽と藤田は事件をあれこれ分析していた…
『とにかく明日から関係者への初動捜査だ…忙しくなるから仮眠しとけよッ!』
設楽は腰を叩きながら藤田と署内の仮眠室に入った…
(…証拠なき殺人…カァ…)
横になるや否やすぐに眠りについた後輩藤田を尻目に簡易布団に包まり設楽は一人考え込んでいた…

No.3 08/01/18 18:46
普通のおばさん0 

>> 2 💉『ハァ~眠いッ!…さぁ、行きますかッ!』
顎が外れそうなくらいのアクビをすると涙目の藤田は設楽と一緒に覆面パトカーに乗り込んだ…
『田中悦男か…調べれば埃が出てきそうな代議士だな…』
設楽は出掛けに本部から手渡された関連書類に目を通した…
『確かに…いい噂聞いた事ないですもんね…あ、ガム食べます?』
早朝のまだ暗い街の道路を車は切り裂いてゆく…
『自殺…じゃないんですかね…』
ハンドルを握る藤田はクチャクチャと口を鳴らしながら言った…
『…それも考えたよ…しかし薬物や銃等、自殺の引き金になる証拠の品は出ていない…どう考えたって誰かの手で巧妙に殺された…それしか考えられん…』
『ですよねぇ…』
藤田はガムを包みに捨てるとポケットにほうり込んだ…息子程歳の違う藤田の横顔を眺めながら設楽は頭を掻いた…
『まずは田中代議士が所属していた党本部に行って背後関係を聞き出すか…』
藤田はもう向かってます!と言わんばかりにチラッと目配せするとウインカーを操作した…朝の通勤ラッシュに巻き込まれながら車は田中悦男が所属する民事党党本部に向かった…

No.4 08/01/18 19:13
普通のおばさん0 

>> 3 💉横浜中華街の外れにある寂れた雑居ビル街の地下にその店はあった…
『順ちゃん…お酒ッ!』
『…飲み過ぎよッ《K》…もうやめときなさいってばッ!』

『お~さァ~けッ!』
マスターの順が何も言わずに空のグラスを半ば強制的に流し場に廃除した…
『…田中悦男…ニュースになってるわよッ!』
順は熱いコーヒーを飲みながら朝刊を開いていた…もうとっくに閉店した店内にはまだエリック・クラプトンの曲が静かに流れている…
『ねぇK…もうやめたら?こんな事…』
『……やめない…』
『このまんまじゃアンタ、身も心もボロボロになっちゃうわよッ!』
順は節ばった宝石だらけの指先で髪をかきあげた…
『いいのッ!ほっといて…』
『よくないッ!放っておけないッ!…アンタにはもっと他にアンタらしい生き方あるはずだよッ!こんなに綺麗なんだし…何だってやる気さえあれば…』
順は何も言わずKという女の前にコーヒーを置いた…
『《やる気さえあれば》…カァ…フフフ…』

肩甲骨位まで伸びたサラサラのストレートの髪を無造作にかきあげるとKは半分苦笑いを浮かべ呟いた…
『ママ…好きよッ…大好きッ!』
『ハァ~!この酔っ払いッ!私は女には興味ないのッ!』
Kと順は顔を見合わせ笑った…

No.5 08/01/18 19:42
普通のおばさん0 

>> 4 💉いつの頃からか彼女は自らを《K》と名乗っていた…世間から意識的に逃避し人との付き合いも煩わしいとやめた…この横浜じゃ彼女の事を知る者は誰もいない…彼女が何処で生まれこれまでどんな人生を送って来たのか…この寂れたオカマバーのマスターである順以外は誰一人として…
『でママ…調べてくれたの?次の《蜜》…』
『…K…本当にやめない?これが本当にアンタの望んでた理想なの?私違うと思うよッ!』
珍しく順が声を荒げた…
『…これが私の世界…私の全て…フフフ、楽しいでしょ?』
Kは虚ろな目で濡れたカウンターの水滴を指先でクルクル回していた…順は筋肉質の二の腕で腕組みしながら暫く俯いていた…そして一度やり切れないため息を吐くと一枚の紙をKに差し出した…
『落合弘毅16歳…昨年8月飲み仲間と共謀して長野市内で女子高生を拉致し車で逃走…その後廃屋に女子高生を10日間監禁し仲間と暴行し続けた揚げ句死亡させ、その女子高生の遺体を松本市郊外の山中に遺棄…』
『…もう、もういいッ!聞いてられない…やめて…』
Kは耳を塞いだ…
『裁判では当時被告は極度の精神錯乱状態にあった為、裁判官は情状酌量の余地ありと認め…』
Kは声をあげコーヒーカップを肘で突き飛ばしたッ!

No.6 08/01/18 20:26
普通のおばさん0 

>> 5 💉『…何が法律よッ!何が正義よッ!…狂ってるのよこの世の中ッ!人間なんて滅びりゃいいんだッ!恐竜みたいに綺麗サッパリ跡形もなくッ!』
飲み過ぎたせいなのか、単なる怒りの現れなのか膝がガクガクと鳴った…Kはサングラスをかけるとノソノソと店の狭い出入口に向かって歩き出した…
『…やるのかい?…って紙を手渡した私が言う筋合いじゃないけど…』
サングラスの真ん中をクイッと人差し指で持ち上げるとKは何も言わずに玄関から去って行った…
(…見ちゃいられないよッ…このまんまじゃアンタ…)
順は唇を噛み締め、思い立ったようにKが散らかしたコーヒーカップの破片を片付け始めた…




『お…女を見た?』
民事党本部であっさり門前払いを食わされた設楽と藤田は事件のあったホテル近くのガソリンスタンドの店員から意外な言葉を聞かされた…
『あ、はい…事件当日の午後11時頃だったかなぁ…ホテルの玄関から一人の髪の長い女性が出て来るのを見ましたよ…例の事件とは関係ないかも知んないスけどね…でも深夜近くに若い女性が一人でホテルからって…何かおかしいとは思いましたけどねッ!』
目の細い店員はまるで探偵にでもなったかのような口調で二人に話した…

No.7 08/01/18 20:47
普通のおばさん0 

>> 6 💉『女カァ…まあ考えていなかった訳じゃないが…ホテルでの密室変死…当然女の影があったって不思議じゃぁない…』
顎髭を触りながら設楽はオニギリの包みを開き出した…
『先日の聞き込みではそんな目撃証言は皆無でしたもんね…』
藤田は体に悪そうな無果汁のフルーツジュースと一緒にオカカのオニギリを頬張った…
『とにかく田中悦男の裏で何があったのか…それを探る事が先決だな…』
『ち、ちょっと警部補ッ!そっちから開いたら海苔が取り出せないじゃないですかッ!下手ですねぇ~』
不慣れな設楽のオニギリの開け方に豪を煮やした藤田が手伝い始めた…30前の藤田章はサッパリとした性格でベテランの設楽を父親のように慕っていた…早くに父親を病気で無くしているせいもあるのか少し甘えたな所も見受けられたが設楽はそんな藤田が嫌いじゃなかった…
『その女が事件の重要な鍵を握っていると見て間違いないな…何処の誰だか身元は確認出来そうか?』
『…事件のホテルはいわゆるラブホテルのようで…玄関でいちいち身元確認は…』
『…そうだ…そうだよなッ…』
藤田の悲しい身振りに納得するように設楽は前を向いて海苔が半分になってしまったオニギリを口にした…

No.8 08/01/18 23:21
普通のおばさん0 

>> 7 💉(オチアイ…ヒロキ…確認ッ!)
都内のコンビニエンスストアの雑誌の本棚でつまらなさそうに漫画雑誌を読む若者に一人の女が近寄った…
『……ん?な、何スか?』
薄いサングラス姿に胸元の開いた黒いキャミソール、少しキツメのジーンズで女は若者の横顔を見つめた…
『落合…弘毅…くん?』
『!ッッッッッ…!』
若者はその言葉の響きを聞くな否や真っ青な顔色になり次の瞬間女の腕を掴み逃げるようにコンビニの玄関を後にした…数十メートル程離れた路地で若者は周りに誰もいない事を確認すると一度大きな深呼吸をして女を見た…
『ど、どうして俺の本名知ってんだッ!誰に聞いたッ!?』
動揺した若者は今にも女に掴みかからん勢いで迫った…
『アハハッ…パソコンに詳しい知り合いに教えて貰ったのッ!今名前違ってるんだよね?』
『しぃッッッ!黙れッて…こ、声がデカイって!』
若者は女の口元に手をあてるとしきりに周りを気にした…
『な、何で俺に逢いに来たッ!?』
若者は女の腕を掴みあちこちと場所を移しながら慌てふためいていた…
『興味があったのねッ…』
『な、何にッ!?』
『私貴方のファンみたいなもんッ!工藤あやねって言うしがないOL…ウフ…』

No.9 08/01/18 23:44
普通のおばさん0 

>> 8 💉『参ったナァ…こんな簡単に見つけられるもんなんだ…名前変えた意味ねぇじゃん…』
草野一平と名乗る若者は誰もいない工事現場の芝生に腰掛けた…
『本当に逢えるんだ…凄いッ!』
工藤あやねはポニーテールの髪を一度触ると一平の横に腰掛けた…
『アンタ幾つ?』
『…私は20歳…埼京百貨店で受付嬢してるッ…ねッ!今保護監察中なんでしょ?』
『………』
一平はあやねの顔を不愉快そうに見た…
『実際逢ってみたら普通の真面目そうな少年じゃんッ!…とても人殺した風には見えないねッ!…けどまぁそういう不良っぽくない子が案外…』
『……』
『あ!ごめん…言い過ぎたッ…』
女は胸ポケットから煙草を取り出すと一平に吸う?と差し出した…
『…アンタ、俺の何知ってるのか知らないけど…あの事件はもう終わったんだからなッ!俺には関係ねぇんだよッ!』
一平は荒々しく話し出した…
『俺は覚えてないんだッ…精神が不安定で…事件後も医者からカウンセリング受けて最近新天地でやっと落ち着いた所なんだッ…蒸し返すなッ!』
一平はしきりに終わった、もう過去の過ぎた事なんだと執拗に言い張った…
『私もね、過去のそんな事いちいち探りに来た訳じゃないの…ただどんな子なんだろなって…』

No.10 08/01/19 08:02
普通のおばさん0 

>> 9 💉『ねッ!人殺す時ってどんな感じなの?』
あやねは恐縮する様子も悪ぶる様子もなく一平にアッケラカンと尋ねた…
『…だから…覚えちゃいないって…』
『だったらどうして名前変えちゃったの?悪い事してないなら堂々としてりゃいいじゃん!』
時々長い脚を組み替え笑顔を見せるあやねは一平にはとても20歳の女性が放つオーラには見えなかった…
『いくら欲しいんだ…』
突然一平が財布を取り出した…
『お金?…あぁ口止め料ってヤツ?そ、そんなの要らないわよッ!』
『…なら何で俺をつけ回すッ!最後通告だ…もう俺にかかわるなッ!いいなッ!もし俺がこの街に住んでる事誰かにバラしたら…』
『…私をレイプして殺す?フフフ…』
一平は急に立ち上がると鬼のような形相でその場から立ち去ろうとした…その瞬間あやねは一平の腕を掴んだ!
『な、何すんだよッ!』
『…淋しいんでしょ?いいよッ…私で発散しても…』
あやねは掴んだ一平の手をゆっくりと自分の胸に押しやった…
『!……なッ』
『…女ってね…過去に傷ある犯罪者に惹かれる所あんの…その瞳の奥で何考えてるか解らない研ぎ澄まされた野獣の目にね…』
あやねの胸元で一平の右手がゆっくりと上下に動かされた…

No.11 08/01/19 08:41
普通のおばさん0 

>> 10 💉工事現場の資材置場は昼の賑やかさとは違い物音一つしない静寂に包まれていた…一平はあやねに誘われるまま2階の機械室のような真っ暗な部屋に入った…
『お、お前変なヤツだな…怖くないのか?俺の事…』
あやねは一平の頭を両手で支え激しく接吻をした…一平の鼻にあやねの香水の香りが充満する…
『怖い?フフフ…私には…ンンッ、貴方が天使に見えるわッ天使の皮を被った悪魔にね…私変わってる?こんな女の子…嫌い?』
『あ…いや、…ってゆうか…ち、ちょっと!やめろって…』
あやねの左手は一平の股間を撫でていた…
『いいよ…変態だって思われたって…でも私…ハアッ、ハアッ…貴方みたいな人間見てると凄く興奮しちゃうの…嫌いじゃないんでしょ、こんな事…』
二人の身体はスローモーションのようにそのまま冷たいコンクリートの床に倒れ込んだ…あやねは一平のスボンのチャックを外すと隆起した一平の分身を左指で優しく持ち上げた…
『ほら…身体は正直だよ…』
上目使いにじっと一平の顔を見つめるあやねの表情に一平の分身はさらに硬化した…あやねはゆっくりキャミソールを脱ぐと真紅のブラを纏った豊満な乳房をあらわにした…
『!……』
『フフフ…おっきいでしょ?自慢なんだッ!…触りたい?』

No.12 08/01/19 11:18
普通のおばさん0 

>> 11 💉『い、一体お前何者なんだッ!』
一平は気味悪がるようにあやねの手をほどくと中腰で後ずさりした…
『そっか…責められるの嫌いなんだ…フフフ、だよね…女性を自分の思いのままに支配したい方なんだもんね…ゴメンゴメンッ!』
あやねはブラジャーのホックを外した…
『!…すッ…』
『ね?だから言ったじゃん…自慢なんだって…』
ブラジャーから現れたあやねの胸は一平が今までに見た事ないような美しい曲線だった…無駄に大きすぎず、かといって物足りなくもない透き通るように白い、正に男が追い求める理想の乳房だった…
『どうしたいの、言って…?貴方の言う通りにするから…』
あやねは腰が引けてただ驚きおののいている一平の傍に近寄った…一平の中に雷のような衝動が走り脳内に電気が流れた!まるで小さな豆電球のスイッチを入力したかのように…突然一平は人が変わったようにあやねに覆い被さった!
『テメェふざけんなよッ!』
一平の押さえた手であやねの両腕は冷たいコンクリートの床にガッチリと固定されていた…
『…ほぅら本性を現したッ!ハハハッ!』
押さえ付けられているあやねは恐怖感に怯える様子もなく苦笑いしながら真っ直ぐ一平を凝視した!

No.13 08/01/19 11:45
普通のおばさん0 

>> 12 💉『そんなに欲しいならくれてやるこの色情尻軽女ッッ!どういうつもりかは知んねぇけどなッ…軽々しく俺に近付いたのは間違いだったって事今からその身体で後悔させてやるぜッ!ハアッ、ハアッ…』
一平はあやねの白い胸元にむしゃぶり付いた!
『アッ…い、いやッ…』
あやねの唇から吐息が漏れた…
『さぁどうして欲しいッ!どうされたいんだよッッ!この雌豚ッッ!』
一平は一気にあやねのジーンズのファスナーを下げ下着姿にした!
『あの子にもッ…あの女子高生にもこんな風にしたんだッ…アッ、ハアッ、ハアッ…』
『う、うるせぇッ!黙ってろッ!』
あやねの声ももはや届いてはいないようで一平は再び理性と常識を無くした野獣へと変貌した!
『ヤァッ!ち、ちょっとまッ…ヤダッ!』
まだ履かされた状態のあやねの下着の周りを一平の湿った分身が右へ左へとまだはめられていないパズルのピースのように奔走し入口を探していた…
『ま、守られてんだよッ!俺達未成年はよッ!』
『えっ!?…』
一平の右手があやねの乳房を強く掴んだ…
『責めるならこの堕落した日本の法律を責めなッ!イヒヒッッ!』
一平の分身があやねの《棲み家》を確認した!

No.14 08/01/19 12:26
普通のおばさん0 

>> 13 💉『警部補警部補ッ!先月殺害された弁護士とこないだの田中悦男に接点がありましたッ!』
連日の捜査疲れの為机で俯せになりイビキをかいていた設楽に藤田が駆け寄って来た…
『ンダヨ~騒々しい…もっと静かに声掛けられねぇのかよッ…あ~頭ガンガンする…』
『殺された弁護士の村井は元田中の顧問弁護士だったんですッ!』
設楽は煙草をくわえた顔を一瞬曇らせた…
『……なぁに?本当か?』
『もう10年以上も前の話なんですけどねッ…ある強盗殺人事件で田中が容疑をかけられた時に裁判で弁護した弁護士らしいです…』
『どんな事件だっけな…』
設楽はくわえかけの煙草で頭をかきながら天を仰いだ…藤田が設楽の目の前に当時の捜査調書を置いた…
『15年前…兵庫県姫路市郊外の民家で一家四人が突然押し入って来た強盗に襲われ惨殺され…あぁ、思い出した!俺がまだ札幌に勤務していた頃の事件だな…田中悦男は当時姫路市の市議会議員で確か大型レジャー施設設営に関わる建設会社の裏取引容疑で事情徴収されていた…で、その強盗殺人と田中はどう結び付くんだ?』
設楽は藤田を見た…
『偶然かもしれないですがその殺された家族の家はそのレジャー施設建設計画の敷地内にあったんです…』

No.15 08/01/19 13:08
普通のおばさん0 

>> 14 💉『調書によりますと市の職員が何度も買収交渉に足を運んだらしいですがその家だけは先祖代々受け継いできた土地だからと売却を拒否し続けてたらしいです…奇妙な事にレジャー施設建設が決まったその数日後に強盗殺人事件は起きているんです…何か裏があるとは思いませんか?警部補ッ!』
『報復?…にしちゃぁ余りにも惨かないか?もし田中悦男が土地買収に関与していたとしてもいくら何でも偶然の強盗を装ってまでその家の住人を皆殺しにはしないだろッ!考え過ぎだ…』
設楽は藤田の思惑を一蹴した…
『強盗に押し入った容疑者は未だ捕まっていません…証拠不十分で田中悦男も起訴出来ず釈放…』
設楽は藤田の言葉を目を閉じながら聞いていた…
『仮に…仮にだッ!今回の弁護士村井と代議士田中の不可解な殺人事件が怨みの犯行だったとしよう…なら一体誰が彼等を殺害したと言うんだ?一家は全員殺害されていたんだろ?』
『殺害された家族の親戚縁者兄弟…全てを当たる必要がありそうですね…』
設楽は藤田の肩をポンと叩いた…
『ハァ~…ま、どうせ迷宮入り確実な事件だ…お前の考えで動いてみようじゃないかッ!』
藤田は有難うございますと笑った…

No.16 08/01/21 11:52
普通のおばさん0 

>> 15 💉あやねはその瞬間身体を硬直させた!一平の温もりが電線の束になって激しく火花を散らし、あやねの脳髄に達した…
(さよなら…)
『何だ…ハアッ、ハアッ…もう抵抗しないのかッ…ハアッ、ハアッ…そんな暇ねぇかッ、イヒヒ…』
一平に重なり合わされたあやねの身体はゆっくりと、時には気が遠くなる程激しく上下に揺さ振られていた…
『ハッ…貴方さっき…ハアッ、ハアッ…守られてるって…ハアッ、ハアッ…言ったよねッ…』
『そ、そうだッ!俺達未成年はよッ…ハアッ、ハアッ…たとえ人殺してもよッ…数年少年院で臭い飯我慢すりゃぁよッ…ハアッ、ハアッ…あぁ気持ちイイッッ!』
一平はしきりに辺りを見回しながらこの犯行の目撃者がいない事を確かめていた…
『良心の呵責…ハアッ、ハアッ…ないんだねッ!殺された女の子の気持ち…考えた事ないんだ…ハアッ、ハアッ』
一平はあやねの首筋に爪を立てた!あやねは真っ直ぐに勝ち誇ったような顔で自分を見下ろす一平を眺めた…
『運、運なんだよッッ!世の中全部運なんだッ…ハアッ、ハアッ…俺達に目つけられたのも運命なんだよッ!イヒヒッ…ハアッ、ハアッ…アァ~…最高ッッ!』
『…人間の皮を被った悪魔だねアンタッ…ハアッ、ハアッ…』

No.17 08/01/21 18:18
普通のおばさん0 

>> 16 💉『私も…殺すんだ…ハアッ、ハアッ…』
一平の太ももが微妙に振るえ出した…
『!…そうされてぇのか?ハアッ、…それはお前次第だよッ!お…ウッ、俺だってこれ以上罪重ねたくねぇ…ハアッ、ハアッ…今日のこの事内緒にするって約束するなら殺さねぇ…どうだッ…ハアッ、ハアッ…』
一平は汗だくになりながらあやねに凄んだ…一平はあやねの両足を肩にかけ最後の準備を始めた!と同時にあやねの首筋を両手で締め上げた!
『さぁど、どうなんだッ!ハアッ、ハアッ…アァッ…黙ってると誓えッ!ハアッ、ハアッ…』
『…それは誓えない…』
『!なッ、何だとぉッッ!』
あやねは一平をさらに凝視したッ!
『て、テメェ今どういう状況か解って言ってんだろなッ!ハアッ、ハアッ…このまま首絞めて殺したって構わないんだからなッ!…アァ、ヤベ…き、キタ…キテる…』
一平はあやねの両足を担ぎ上げさらに激しく突き上げた!
『ウグッッ!』
『さぁ言えッ!こ、殺すぞッ!言えぇッ!』
一平があやねの首筋をさらにきつく締め上げたその時だった…
『さ…よな…らッ!』
あやねの言葉と同時に一平は突然もがき苦しみ出したかと思うと断末魔の叫びのような声で唸り始めた!
『アガッ…なッ…アグィ…ッッッ!』

No.18 08/01/22 16:30
普通のおばさん0 

>> 17 💉『な…お、お前ッ!ち、チキショ…何したんだッ…グハッ!…い、息がァ…息が出来ネェッッッッッ!』
一平は転がるように胸に手を当て苦しそうに壁つたいを這いずり回り出した!
『アガッ…ウガ…い…息…ガァッッ!』
のたうちまわる一平の苦しそうな顔をあやねは剥がされた服を一枚一枚着ながらただ眺めていた…
『くッ!…くる…助けッッ…タス…け…テ…ッ!』
一平は顔面を真っ青にして泡を吹きながらあやねの脚にしがみついた!
『…ダメダメ~…もっと苦しまなきゃ…彼女が味わった苦痛はこんな程度じゃないんだからねッ!』
あやねは一平の髪の毛を掴み上げると自分の眼前に持ってきた…
『フフフ…どう?自分がいざ死の淵に立たされて初めて聞こえるでしょ?散々レイプしてゴミのように殺した彼女の哀しい悔しさの怒りがッ!…運?アンタさっき運っていったよね?…いいかい、最期に言っておくわ…臨終間際に私とSexした事…あの世で悔いるがいいわッッッ!』
『ど…毒ッ…か…ッ!』
あやねは悪魔の笑顔で一平に微笑んだ…
『毒…まぁそんなものかな…一生探しても解毒剤はないけどねッ!じゃあバイバイ~ッ!』
次の瞬間一平は顔面を真っ青にしたまま息絶えた…

No.19 08/01/31 20:51
普通のおばさん0 

>> 18 💉あやねは付近に水道栓を探すと一平の屍をズルズルとそこまで引きずった…
『さぁ…綺麗にしなきゃねッ!強姦魔さんッ!』
ホースをたぐり寄せあやねは下半身が露出された一平の股間に丁寧に水をかけて自分の膣液が混ざった一平の分身を洗い流した…



捜査は行き詰まっていた…設楽と藤田は姫路で起きた一家惨殺強盗事件で怨みを持つであろう親戚縁者の絞り込みにあたったが数日経ってもこれといった有力な情報は掴めなかった…
『なかなか割り出せないものですね…身内を殺されて怨みを持つ人間の一人や二人居そうなものなんだけどナァ~』
『…殺してやりたいと思っていてもいざ親戚の復讐まで実行しようとする奴はまぁ居ないだろうからな…』
藤田が運転する車の助手席で設楽が煙草を吹かした…
『…警部補、煙草止めたらどうすか?身体に毒ですよッ!』
藤田の視線が疎ましく設楽はいちいち煩いナァと一度舌打ちをした…
『しかし本当に四人亡くなったんでしょうか?』
『ん?…どういう意味だ?』
設楽が眉を上げた…
『いや、すみません…ハハハ…独り言です…気にしないで下さい…』
藤田は一度設楽の顔を見ると急に昨日のプロ野球の話題に切り替えた

No.20 08/02/01 11:53
普通のおばさん0 

>> 19 💉【またこの夢だ…広大なススキの草原に白いブラウスにクリーム色のスカートの女性が笑顔で立っている…そして手招きしながら私の名前を呼ぶの…おいでッ!さあこっちにおいでッ!楽しいわよッ!…幼い私は女性に招かれるままにゆっくりそちらに近付いて行くの…もう少しではっきりと女性の顔が確認出来る次の瞬間!…私は夢から醒める…いつもだ…必ず…】


『大丈夫ッ!?ねぇKッ!…大丈夫ッ!?』
はっと目を醒ますとKには見慣れた部屋の風景が確認出来た…そこは順のバーの奥のソファーのある小さな洋室だった…脇の下から背中まで汗でびっしょり濡れていた…
『うなされてたわよ…大丈夫?』
順は化粧っ気のない顔でKの顔を心配そうに覗き込んでいた…
『心配ない…大丈夫…有難う…』
ゆっくり立ち上がるとKは冷蔵庫からミネラル水を取り出し浴びるように喉奥に流し込んだ…
『ハァッ…どう?ニュースになってる?』
『いや…まだ…』
順は腕組みをしたままため息をついた…
『ねぇK…もうヤバイよ…やめにしよッ…』
『大丈夫…足はついてない…誰も私の仕業だとは夢にも…』
『そういう事言ってるんじゃないのッ!アンタの身体の事心配してんのさッ!』
大丈夫だとKは順の肩を叩いた…

No.21 08/02/01 16:48
普通のおばさん0 

>> 20 💉それから間もなくして横浜市郊外のとある工事現場の資材置場から草野一平こと落合弘毅の死体が発見された…今回もまた不可解な変死体殺人であった為所轄の合同捜査本部を敷いていた立木署から設楽と藤田両名がその現場に向かった…
『おいおいまたかよ…勘弁してくれッ!』
傷一つない死体に布を被せると設楽はため息をついた…
『警部補ッ!ちょっといいですか?』
刑事らしからぬお洒落なブランド物の背広を着た藤田がため息をつく設楽に耳打ちをした…
『…!…な、何ぃ?本当かッ!?』
『えぇ…害者の本名は落合弘毅…例の女子高生監禁暴行容疑にかけられ裁判で不起訴になったあの少年です…事件後は身分を変え草野一平と名乗っていたらしいですが…』
現場には野次馬を散らそうと何人もの警察官が声を上げ、慌ただしく県警の鑑識担当者達が行き来していて辺りは騒然としていた…
『この間の田中達の事件との関連性はあるのか?』
『いえ…今の所それはありません…』
設楽は顎に手をあて考え込んだ…
『犯人が同一犯だとすると…ウム…これは単なる個人的な怨みの犯行ではないのか…』
設楽は現場を鑑識に任すと車まで戻り煙草に火をつけた…

No.22 08/02/01 17:39
普通のおばさん0 

>> 21 💉『何ぁ~んか引っ掛かるんだよナァ~…』
付近に目撃者がいないか聞き込みに当たる設楽に藤田がボソリと呟いた…眉間に皺を寄せながらさながら名探偵コナン気取りの藤田を見て設楽はまたかぁ~今度は何なんだと空を見上げため息をついた…
『いぇね、例の姫路の一家惨殺強盗事件…』
『あのな藤田ッ…それなら俺も調べたよッ…何度不審がってもあの時あの家族四人は無念にも強盗に確かに殺されてたんだよッ!ちゃんと死体も発見されてるんだ…警察の調書が間違いだって言いたいのか?』
『いえ、そうは言ってませんよッ!ただ…ねぇ警部補…あの事件もう一度詳しく調べ直してもいいでしょうか?』
設楽は今の捜査に支障が出ない程度ならいい、もう勝手にしろと半ば諦めた顔で言った…
『藤田お前…こないだの田中の事件で浮かび上がった不審な女とその強盗事件…強引に結び付けようとしちゃいねぇか?』
設楽の質問に藤田は首を大きく振って笑った…
『まさかぁ…俺はただ調べてみたいだけですよ…今回の連続殺人事件の手掛かりになるかもしれませんし…』
確かに全く無関係とは設楽も考えてはいなかった…

No.23 08/02/01 18:08
普通のおばさん0 

>> 22 💉【確か蝉の声がけたたましい小学1年の夏休みの朝だった…その時の記憶がうっすら瞼の裏に残っている…白い服を着た大人達が五人程私の家の玄関に立っていた…父親は唇を噛み締め柱に顔を押し付けていた…母は彼らに頭を下げると私に抱き着き激しく泣いていた…私は兄弟達に手を振ると彼らに回りを囲まれながら車に乗った…あの時の母の哀しそうな顔は今でも脳裏に焼き付いている…母の唇は震えながら最後にこう言った…《愛してる…》それが私が見た家族の最後の姿だった…】


『何も今更わざわざ外で働く事なんてないじゃんよッ…これまで通りウチのお店手伝って頂戴よッKッ!』
順はカクテルグラスを棚に並べながら口を尖らせた…
『有難うママ…だけどこれ以上ママに迷惑かけらんないから…これからの食い口位自分で探すわッ!』
『もう充分迷惑かけられたってのッ!…けどK…それってつまりさ…あんな事もうやめるって事?』
順の太い声が嬉しそうに上擦った…
『……』
『やめるんだよね?』
『…残念~…やめないよッ!ママ…』
順は両手で顔を覆ってため息をついた…明らかに自分が期待していなかった解答だ…
『お願いママ…解って…ママにだけは解って欲しいんだ…』
順は俯いた…

No.24 08/02/01 19:13
普通のおばさん0 

>> 23 💉『被害者は三木康博氏と妻百合子さん…それと当時小学四年生だった双子の兄弟、勇気君と元気君…』
薄暗い県警本部の資料室で二ヶ月振りに非番の藤田は一人パソコンと睨み合っていた…兵庫県警独自の当時の捜査資料と新聞記事をパソコンのネットで検索し一人頭を抱えた…
(三木康博氏は土地売却を拒否していた…同じ頃偶発的に起きた強盗殺人事件…施設建設にどうしても障害になるあの家を何とかして処分したかったのか…ん~…解らない…)
飲みかけのコーヒーが冷めきってミルクの膜を張っている…
(そういえば…こないだの聞き込みで妙な事言ってたよな…)
ふと思い出した藤田は手帳を開いた…
(三木康博氏の弟真一氏の証言…あの時はさほど気には止めなかったんだけど…《嫁の百合子さんはあの日以来元気がなくて…《あの日》…あの日って何だろ…?)
腕組みをしながら藤田は聞き込みで証言された康博氏の弟真一の言葉に引っ掛かっていた…
(もっときちんと聞いておけば良かった…小さな事でも引っ掛かるなら疑えッ!刑事の基本だろがッ!このバカバカ!)
藤田はパソコンの電源を消すと背広を来て署の玄関を出た…
(案ずるよりも…よしッ!)
藤田は手帳の中の三木真一の住所を確認した…

No.25 08/02/01 19:42
普通のおばさん0 

>> 24 💉先日一度通った道だったので藤田は簡単に三木真一の自宅を捜し当てる事が出来た…真一家族はあの事件まで同じ姫路に住んでいたのだが兄家族の死を期に埼玉の川越市に越してきていた…
(真一なのに次男…か…まぁそんな事はどうだって…)
藤田は一人頷くと玄関チャイムを鳴らした…こないだも聞き込みをした真一の妻が現れた…
『何度もすみません…立木署の者ですがご主人さんは?』
神妙な顔付きで康博の弟真一が藤田の前に現れた…
『何でしょうか?…こないだ全部お話したはずですが…』
真一は不審感を露にしたような顔で藤田を見ていた…
『ここじゃ何ですから近くの喫茶店にでも…』
出来る限りの笑顔で藤田は真一を近くの喫茶店に連れ出した…
『砂糖はおいくつ?』
『結構…自分で入れますから…』
コーヒーカップを握りながら真一は曇った顔付きのまま藤田に何の用かと問いてきた…
『三木さん…貴方まだ我々に何か隠している事はありませんか?それは今回の連続変死殺人事件解明にとても大事な事のように私は感じたのですが…』
真一は動揺したのか一瞬藤田の顔を見るとまた視線をコーヒーにやった…
『隠していますよね?殺された兄家族の大事な事…教えて頂けませんか?』

No.26 08/02/01 20:02
普通のおばさん0 

>> 25 💉『こないだの聞き込みの時の事覚えておられますか?貴方確か《百合子さんはあの日以来元気がなくて》…こうおっしゃったんです…あの日とは何なんです?』
真一の視線は真っ直ぐテーブルの木目を捕らえていた…
『さあ…そんな事いちいち覚えていませんが…おそらく土地の買収の件で兄と二人色々悩んでいた…私はそう言いたかったのでは?』
『…私はそうは思いませんが…』
藤田は飲みかけのカップを置いた…
『そ、それは警察の方の勝手な解釈で…私はそのつもりで…』
『本当ですか?三木さん…本当にその意図でおっしゃったのですね?』
藤田の執拗な追求が続いた…真一は黙ったまま否定も肯定もしなかった…
『フゥ~…やっぱり…我々にも言えぬ何かがあったんですね…』
藤田はゆっくり背もたれに身体を委ねた…
『これは…』
『!…ん?…これは…何ですか?』
『…この事は誰にも言わないと…でもまさか…そんな馬鹿な事が…もしそうだとしたらッ!アァッ!』
突然真一が乱れ出した…藤田は暴れる真一を押さえつけて落ち着いて下さいと宥めた…
『三木さんッ!何がッ!あの家族に一体何があったんですかッ!』
『ウワァッ!』
コーヒーカップがパリンと音を立てて床で割れ落ちた…

No.27 08/02/01 20:41
普通のおばさん0 

>> 26 💉【あそこでの生活はまさに生き地獄だった…毎朝検査だと泥水のような飲み物を流し込まれ身体中には無数の電極が繋がれて生活の一部始終をモニターされていた…白衣を着た若い研究員達は言葉こそ丁寧だったが私を見る目は明らかに竒獣でも見物するかのように冷ややかで研ぎ澄まされ無機質だった…お母さんに逢いたい…お父さんに逢いたい…そして兄弟達にも…すぐ逢えるよ!心配いらないから…一番偉そうな白衣のオヤジが私の頭を撫で笑いながら言った…その瞳の中に私は嘘と恐怖を感じた…】



Kは結局順の紹介でバーからさほど遠くない中華街のとある店の厨房で働く事になった…横浜ラーメンの専門店で結構有名らしく土日ともなるとかなりの人で賑わった…Kは接客は苦手だったので余り人と接する事なく黙々と食器を洗うこの単調な仕事を気に入っていた…『お疲れ様でした…』一日で店員と交わす会話はこの言葉くらいだった…
『ねぇねぇ…君名前何てぇの?俺小島義人…君みたいな綺麗な子が何でこんな店で働いてんの?』
お喋りが好きそうでいかにも軽薄そうな小島という男がKに話しかけてきた…
『……』
『幾つ?…』
Kは何も言わなかった…

No.28 08/02/02 07:56
普通のおばさん0 

>> 27 💉『俺22歳ッ!栃木から去年出て来たんだ…今横浜の大学に通ってる…レベル低いからあんまり大きい声じゃ言えない大学だけどねッ…』
小島という男は聞きもしないのにベラベラと自分の事を話している…まるでこの後は君が自分の事話すんだよ!とまで言わんばかりに…
『……お疲れ様です…』
Kが速足になると小島も後からひつこく付いてくる…面倒臭い奴だ…Kは思った…
『ねぇご飯食べない?美味しい店知ってんだ俺ッ!』
『…付き纏わないで…』
Kの低い声に小島は少し戸惑ったが特に気にしない様子でさらに言葉を重ねようとした…
『お願いだから付き纏わないで…貴方の為だから…あんまり私と親しくすると後悔するわよ…』
Kは小島を睨み付けると今度はゆっくり来た道を引き返して行った…小島は今までに見た事がないようなKの悲しく研ぎ澄まされた瞳にたじろいでいた…
『な、何だってぇのさ…友達いなさそうだから人が折角誘ってあげてんのにさ…』
頬を膨らませると小島は黒のリュックを背にかけトボトボと帰って行った…
(出来るだけ人と関わりを持たない…それが私に課せられたこれからの人生…)
Kは自分にそう言い聞かせた…

No.29 08/02/02 08:19
普通のおばさん0 

>> 28 💉薄暗い研究室の中で星都大学免疫生物学教授富樫幹久は頭を抱えていた…成果は順調に上がっていた…だがまさかこんな事態になるなんて誰が予想したであろうか…富樫は部屋にある極秘資料を眺めながら今後の対応に苦慮していた…
『教授ッ!また原因不明の変死体が発見されましたッ!今度は17歳の少年ですッ!』
『あぁ…知ってる…新聞で読んだよ…』
血相を変えて飛び込んできた若い研究員の南原に富樫はゆっくり頷いた…
『何て事だ…我々が一番恐れていた事態だ…』
『教授ッ!マスコミに公表…しますか…?』
それは駄目だッ!富樫は悲痛の声を上げた…
『しかしこのままでは…無差別殺人に発展しかねませんッ!今世間に公表してこれからの犯行を未然に食い止めるのが賢明ではッ!?』
研究員の南原亮は富樫の顔を凝視した…
『しかしこの事が世間に知れ渡れば…大変なパニックになる…何としても極秘のまま事を進めねば…』
『厚生労働大臣には報告は?』
『あぁ…その大臣からの通達だ…今はこれ以上事を荒立ててはならんとな…』
『し、しかしそんな悠長な事を…』
富樫は検査書類を金庫に厳重にしまい鍵をかけると暫く一人にしてくれと南原に告げた…

No.30 08/02/02 08:57
普通のおばさん0 

>> 29 💉『おい藤田ッ!こんな大事な時期に遅刻かッ!どういうつもりだッ!』
出勤時間を悠に越え藤田が立木署に来たのは午前8時の事だった…
『何だッ…寝坊かッ!ったくッ…最近の若い奴では珍しく出来る男だと評価していたがとんだお門違いだったようだ…』
鼻であしらわれ上司であり捜査の相棒である設楽に散々皮肉を言われた藤田は眠い目を擦りながら設楽の前に腰掛けた…
『警部補ッ…大事な話がありますッ!』
『好きな女が出来たとかそういう下らん話する前にさぁ、聞き込み行くぞッ!』
待ってましたといわんばかりに設楽は腰を上げ廊下に出た…
『警部補ッ…聞いて下さいッ!』
『遅刻の言い訳なら後にしてくれッ!ほら、急げッ!』
車に乗り込んだ二人はシートベルトを装着した…
『…さっきまで川越に居たんです…』
『川越ぇ?』
『…例の殺された三木一家の弟の真一氏に話を聞きに…』
設楽の動きが止まった…藤田のいつになく真剣な表情を悟った設楽は黙って次の言葉を待った…
『大変な事が解りました…』
『……大変な事?』
藤田は車を発進させ前一点をじっと見つめていた…
『何だ…大変な事って…』
『三木家の子供は二人ではなかったんです…』
『!な、何ぃッッッ!』

No.31 08/02/02 11:13
普通のおばさん0 

>> 30 💉『ふ、二人ではなかっただとぉ?それはどういう事だッ!説明しろッ!』
設楽はさっきまでの眠気が吹き飛び思わず藤田の肩を揺すった…
『殺された三木康博、百合子夫妻から産まれたのは双子ではなく…実は三つ子だったんですッ!』
『な、何だとぉッッ!三つ子ッッ!?』
『昨夜弟の真一氏に兄家族の事を徹夜で説得して聞き出しました…そしたらそんな事実が…』
設楽は信じられないといった表情で前を見た…
『で、そのもう一人の子供は今どこにッ!?あの強盗事件の時運よく災難を免れたんだろ?』
『…それがその話をすると真一氏は黙り込んでしまって…結局それしか聞き出す事が出来ませんでした…』
車は横浜ベイブリッジに差し掛かった…
『しかしそんな大事な事実今までどうして解らなかったんだ…三つ子だという事くらい簡単に捜し得た情報じゃないか…』
『…何処かからの強大な圧力…それしか考えられませんね…』
藤田は悔しそうに唇を噛んだ…
『とにかくもう一度殺された三木家族の近辺を洗おうッ!どうやらこの事件の鍵はその子供にありそうだ…生きていたらの話だがな…』
設楽は一度舌打ちすると捜査本部に藤田が聞き出したその事実を報告した…

No.32 08/02/02 12:11
普通のおばさん0 

>> 31 💉Kの生活は平凡そのものだった…毎朝10時頃に職場に行き夜はやはり10時頃まで仕事をした後順のバーに戻る毎日…職場のスタッフ達はKのあまりの美しさと不思議な雰囲気に初めは近寄る者も多かったが無愛想で付き合いにくいKの性格を知ってからは次第にみんなKから遠ざかるようになっていた…
(これでいい…私に関心を持たない方が身の為なんだから…)
Kは何度も自分にそう言い聞かせていた…しかしただ一人だけその静寂を遮る男がいた…同じ職場に働く小島義人だった…
『美咲さん…原田美咲さんって言うんでしょ?店長に聞いちゃった!アハハハ…いい名前だねッ!』
昼ご飯休憩に一人離れて食事を取るKに小島義人が話しかけてきた…
『…何度も言うけど…私の事は放っておいてくれない?』
『アハハハ…そう言うなよッ!一人でご飯なんて寂しいだろ?』
屈託のない笑顔で小島は笑った…顔はほっそりとしていてさほど男前とは言い難いが人は良さそうだ…だがそれを言い事に甘えたりしてはいけない…私の真実を知ったら明日から小島義人という人間は存在しなくなるかも…Kは鋭い視線を送るとおもむろに食事する席を変わった…
(ハァ~…ま、いっか!)

  • << 34 💉神戸三宮駅近くにあるさほど大きくない産婦人科医院の玄関をくぐると鼻につく消毒液の臭いが二人を包んだ…設楽と藤田は白衣の受付孃に警察手帳を見せると前の待合室に座った… 『…本当の事話してくれるでしょうか…』 藤田がスリッパを履きながら言った… 『さあな、解らん…何せ今の今まで何等かの形で極秘扱いだったんだからな…』 絵本の棚に目をやりながら設楽は両手を肘にかけて重ねた…設楽の脚はカタカタと貧乏揺すりが始まった…煙草が吸えない場所に来るとイライラが募るようで藤田は毎度の事に見て見ぬふりをして黙っていた… 『院長の梅澤です…私に何か御用で?』 奥の扉が開き割腹のよい口髭を生やした院長が看護師に招かれて現れた… 『神奈川県警の設楽と申します…こっちは藤田…』 梅澤は不思議そうに二人に頭を下げた…応接室に通されて設楽と藤田は産婦人科医梅澤と向き合った… 『実はですね…我々所轄神奈川県横浜で先月から立て続けに起きています連続殺人事件の事でお伺いしたんですが…』 『あぁ…存じてます…何か変な殺人事件だとか…怖いですなぁ…で、横浜の事件で何故私どもの産婦人科医院が関係してるのでしょうか?』 梅澤は首を傾げた…
  • << 37 💉【今日は不思議な夢だ…いつも見る夢とは違う…私は病衣を来て無菌室に横たわっている…そのそばではまるで機械のようにひたすら自分の課された仕事をこなす頭でっかちそうな白衣の研究員達…私はいつものように狂喜に満ちた声で喚き散らしている…ここから出せッ!出してッ!お願いッ!…誰一人として私の願いを聞いてくれる人はいない…失意のどん底に叩き落とされてもなお容赦なく続けられる検査の嵐…これ以上私をどうしようって言うのッ!】 カウンターの上で目が醒めた…シャツの背中が汗で濡れている…いつもの光景だ…自由になれたのに、ようやく自由になれたというのに私の心はまだポッカリ穴が開いたまま埋まらない…この穴はどうすれば埋まるのだろう…自分に言い聞かせるように私はやはり鬼になる…鬼として生きる事が私に残された使命… (…絶対殺すッ!…私のやり方で絶対あいつの息の根を止めてやるッッ!) Kはそばにあった水のグラスを飲み干した… 『また例の夢かい?…』 煙草を吹かしながら順はKに当たり前のように尋ねた… 『…ねぇママッ!早く次の蜜をッ!』

No.33 08/02/02 13:09
普通のおばさん0 

>> 32 📓皆様はじめまして‼《みつばちの唄》小説いかがでしょうか⁉作者です😁まだ序盤ではありますが読んで下さっている皆様からのご意見など頂けたら嬉しいです💕大人向け小説なのでファンタジーがお好きな学生さんには退屈かもしれませんが(笑)どうぞお気軽にレスして下さいね👍‼

No.34 08/02/03 23:50
普通のおばさん0 

>> 32 💉Kの生活は平凡そのものだった…毎朝10時頃に職場に行き夜はやはり10時頃まで仕事をした後順のバーに戻る毎日…職場のスタッフ達はKのあまり… 💉神戸三宮駅近くにあるさほど大きくない産婦人科医院の玄関をくぐると鼻につく消毒液の臭いが二人を包んだ…設楽と藤田は白衣の受付孃に警察手帳を見せると前の待合室に座った…
『…本当の事話してくれるでしょうか…』
藤田がスリッパを履きながら言った…
『さあな、解らん…何せ今の今まで何等かの形で極秘扱いだったんだからな…』
絵本の棚に目をやりながら設楽は両手を肘にかけて重ねた…設楽の脚はカタカタと貧乏揺すりが始まった…煙草が吸えない場所に来るとイライラが募るようで藤田は毎度の事に見て見ぬふりをして黙っていた…
『院長の梅澤です…私に何か御用で?』
奥の扉が開き割腹のよい口髭を生やした院長が看護師に招かれて現れた…
『神奈川県警の設楽と申します…こっちは藤田…』
梅澤は不思議そうに二人に頭を下げた…応接室に通されて設楽と藤田は産婦人科医梅澤と向き合った…
『実はですね…我々所轄神奈川県横浜で先月から立て続けに起きています連続殺人事件の事でお伺いしたんですが…』
『あぁ…存じてます…何か変な殺人事件だとか…怖いですなぁ…で、横浜の事件で何故私どもの産婦人科医院が関係してるのでしょうか?』
梅澤は首を傾げた…

No.35 08/02/04 00:08
普通のおばさん0 

>> 34 💉『大変つかぬ事をお聞き致しますが…21年程前にこの産院で三木百合子さんという患者さんがお子さんをお産みになられていると思うのですが…その当時の詳しい資料は今まだここには?』
えぇ、まだ記録はあるはずですがと院長の梅澤は看護師に過去のカルテ記載帳簿を持ってくるように指示した…設楽は胸元から手帳を出して一度指に唾をつけるとパラパラとめくり出した…
『あぁ…ありました…三木百合子さん…1986年4月24日にお子さんをお産みになられておられますなぁ…』
梅澤は眼鏡を一度直すと眉間に皺を寄せながら資料に目を通していた…
『それは三つ子…ですか?』
藤田が我慢しきれなくなったように梅澤に結論を尋ねた…設楽はバカッ!と思わず藤田を睨み付けた…
『……え~…い、いや…双子の男の子さんですな…』
『双子ッ!?…ですか?』
設楽はちょっと黙ってろと言わんばかりに藤田の脚を蹴った…
『えぇ…記録では確かに双子のお子さんです…私が直接担当した訳ではありませんが…この記載に間違いはないと思います…それが何か?』
藤田は嘘だろッ?と意気消沈したような顔になったのを設楽ははっきり見て取れた…
『間違いありません…双子です…』

No.36 08/02/04 00:35
普通のおばさん0 

>> 35 💉『警部補…あの院長明らかに動揺していましたね…』
長い石畳の坂道を歩く最中に藤田が設楽に呟いた…
『あぁ…間違いない…おそらくこないだお前が三木真一氏から聞き出した証言は信憑性があるようだ…チッ、しかしどうしてそこまでして三木家の出生の過去を隠蔽しなければならんのだッ?…病院ぐるみで隠さないといけない何か…一体何なんだ…』
設楽と藤田は帰り際の梅澤の動揺振りを見逃さなかった…それ以上は何も聞かなかったがあの顔は明らかに何かを隠そうと怯えている表情に見て取れた…

『仮に…何等かの形で世間に秘密にされざるを得ないその子供が何処かに生きていて…一家惨殺事件を知って復讐に燃えているとしたら…』
『復讐に燃える殺人鬼…有り得ますね…しかし先日殺された保護監察の少年はあの姫路一家惨殺事件には何等無関係ですよ、警部補ッ!まだ生まれてませんし…』
藤田の言葉に設楽は腕を組んだ…
『これは極論だが…代議士田中や村井弁護士…三木一家惨殺事件関係者の処刑をきっかけに…世間の諸悪全てに制裁を加えるメサイアになった…だとしたらどうだ…家族を殺され自暴自棄になった殺人鬼…考えられんか?』
藤田は息を飲んだ…

No.37 08/02/04 19:55
普通のおばさん0 

>> 32 💉Kの生活は平凡そのものだった…毎朝10時頃に職場に行き夜はやはり10時頃まで仕事をした後順のバーに戻る毎日…職場のスタッフ達はKのあまり… 💉【今日は不思議な夢だ…いつも見る夢とは違う…私は病衣を来て無菌室に横たわっている…そのそばではまるで機械のようにひたすら自分の課された仕事をこなす頭でっかちそうな白衣の研究員達…私はいつものように狂喜に満ちた声で喚き散らしている…ここから出せッ!出してッ!お願いッ!…誰一人として私の願いを聞いてくれる人はいない…失意のどん底に叩き落とされてもなお容赦なく続けられる検査の嵐…これ以上私をどうしようって言うのッ!】


カウンターの上で目が醒めた…シャツの背中が汗で濡れている…いつもの光景だ…自由になれたのに、ようやく自由になれたというのに私の心はまだポッカリ穴が開いたまま埋まらない…この穴はどうすれば埋まるのだろう…自分に言い聞かせるように私はやはり鬼になる…鬼として生きる事が私に残された使命…
(…絶対殺すッ!…私のやり方で絶対あいつの息の根を止めてやるッッ!)
Kはそばにあった水のグラスを飲み干した…
『また例の夢かい?…』
煙草を吹かしながら順はKに当たり前のように尋ねた…
『…ねぇママッ!早く次の蜜をッ!』

  • << 39 💉『南原ッ!富樫教授がお呼びだッ!』 次の日同僚の研究員に呼ばれ顕微鏡から目を放すと南原は固まった… 『お呼びですか…教授…』 神妙な面持ちで南原は富樫の部屋に入った… 『…何故呼ばれたか…解っているな?』 『え?…何の事でしょうか…』 富樫は持っていたペンを一度クルッと回すとため息をついた… 『…そう言えば南原君…君は確か《検体》と仲が良かったな…』 富樫は眼鏡を置いた… 『…まずい…実にまずいんだ…君は将来有望な模範研究生だと私は期待しておったんだよ?…なのに…残念でならん…』 富樫は側にあったテレビを付けた… 『!…か…こっ…!』 そこには昨夜富樫の部屋に忍び込んだ南原の姿が映し出されていた! 『なッ…なぜッ!?』 『聞きたいのはこっちの方だよ南原君…こうなってしまった以上私の元で働いて貰う訳にはいかないな…残念だ…実に…』 富樫の合図で側にいた研究員達が南原を取り囲んだ! 『き、教授ッ!どういうつもりですかッ!このまま隠し通せるとでも思ってらっしゃるんですかッ!犠牲者は確実に増えてるんですッ!教授ッ!』 南原は研究員に取り押さえられるとそのまま深い地下の研究室の離れに隔離された…

No.38 08/02/04 20:34
普通のおばさん0 

>> 37 💉東都大学構内の富樫幹久教授の部屋は整然と片付けられていた…南原真樹斗は富樫が居ないのを確認するとゆっくり部屋の中へ入った…
(確か教授の机の中に彼女の検査資料と研究結果が記載されたフロッピーがあったはず…)
南原は懐中電灯を片手に富樫の机の引き出しを探った…正門の守衛には大事な忘れ物を取りに来たと嘘をつき南原は夜の大学に忍び込んでいた…
(下っ端の研究員である僕が何を公表したって世間は信用しないだろう…せめて研究結果が記載された資料さえ証拠として差し出せば…)
南原は富樫が大事に保管しているフロッピーを探したがなかなか見つからなかった…
(おかしい…この引き出しに入れたのを僕はこの目で見たんだッ!…)
次第に南原に焦りの色が出てきた…余り帰りが遅いと守衛に感づかれてしまうッ!
(チキショウ…出直すしかないな…)
南原は富樫の机の中を丁寧に元に戻すとゆっくり部屋を出た…
(必ず尻尾を掴んでやる…)
誰もいない冷えた廊下を南原は一人帰って行った…その南原の行動の一部始終を備え付けの無数のビデオカメラが捕えている事は彼には夢にも思っていなかった…

No.39 08/02/04 20:52
普通のおばさん0 

>> 37 💉【今日は不思議な夢だ…いつも見る夢とは違う…私は病衣を来て無菌室に横たわっている…そのそばではまるで機械のようにひたすら自分の課された仕事… 💉『南原ッ!富樫教授がお呼びだッ!』
次の日同僚の研究員に呼ばれ顕微鏡から目を放すと南原は固まった…
『お呼びですか…教授…』
神妙な面持ちで南原は富樫の部屋に入った…
『…何故呼ばれたか…解っているな?』
『え?…何の事でしょうか…』
富樫は持っていたペンを一度クルッと回すとため息をついた…
『…そう言えば南原君…君は確か《検体》と仲が良かったな…』
富樫は眼鏡を置いた…
『…まずい…実にまずいんだ…君は将来有望な模範研究生だと私は期待しておったんだよ?…なのに…残念でならん…』
富樫は側にあったテレビを付けた…
『!…か…こっ…!』
そこには昨夜富樫の部屋に忍び込んだ南原の姿が映し出されていた!
『なッ…なぜッ!?』
『聞きたいのはこっちの方だよ南原君…こうなってしまった以上私の元で働いて貰う訳にはいかないな…残念だ…実に…』
富樫の合図で側にいた研究員達が南原を取り囲んだ!
『き、教授ッ!どういうつもりですかッ!このまま隠し通せるとでも思ってらっしゃるんですかッ!犠牲者は確実に増えてるんですッ!教授ッ!』
南原は研究員に取り押さえられるとそのまま深い地下の研究室の離れに隔離された…

No.40 08/02/05 08:18
普通のおばさん0 

>> 39 💉『う~ん…せめて本名さえ掴めてりゃあ捜しようもあるんだが…』
今日一日の捜査日報を閉じると設楽はペンを置いて窮屈そうに背伸びをした…
『もし生きていても偽名を使っている可能性もありますしね…第一その子供が犯人だという証拠もないですし、まるで雲を掴むような捜査ですよッ!』
藤田は疲れた顔で欠伸をした…捜査員達は連日の捜査で皆疲れの色は隠せない…
『じゃあ警部補ッ…お先に失礼します…』
『何だ藤田…今日はえらい早いじゃないか…』
『すみません…今日は飲みに行く約束してまして…たまには息抜きしないとブッ倒れちゃいますもんねッ!』
藤田が笑うと設楽は苦笑いをしながら小指を立てた…
『ち、違いますよッ!従兄弟の男の子と飲みに行くだけですよッ!』
藤田は設楽の言いたい言葉を先に被せた…
『あんまり飲み過ぎんなよッ!明日もあるんだから…』
設楽は藤田から視線を外すと軽く手を振った…藤田はでは!と足速に去って行った…設楽は一人代議士田中、弁護士村井らが載った殺人事件の捜査調書を一人苦虫をかみつぶしたような顔で眺めてはため息をついていた…
(どんな小さな事だって構わない…犯人逮捕の手掛かりが欲しい…)

No.41 08/02/05 11:33
普通のおばさん0 

>> 40 💉藤田章は約束の店で従兄弟を待った…カリブ海と椰子の木を意識したような洒落たジャマイカンバーのような場所だった…店内には軽快なレゲエが耳障りではない程度に流れていて普段こんな場所で飲まない藤田は少し戸惑いを見せていた…
『あ~悪い悪いッ!ごめんねアキ兄ッ!待った?』
黄色いシャツにオーバオールといった信じられない趣味の服装で彼の従兄弟が藤田の前に腰掛けた…
『なぁ義人ッ!その服装の趣味何とかならねぇの?』
頬杖をつきながら藤田は呆れ顔で呟いた…
『えッ!?変?レゲエの神様ボブ・マーリーを意識したんだけど…』
義人という従兄弟は自分の服装をマジマジと眺めてこの感性は兄さんには到底解らないよ!と毒づき笑った…
『まぁいいじゃん!飲もッ!』
義人は黒人のスタッフに声をかけるとカリブビールという飲み物を二つ注文した…
『お疲れ~ッ!』
ビールジョッキがカチンと鳴り二人は中身を一気に飲み干した…
『あ~うまいッ!ねッ!旨いだろ?こないだコンパで使って気に入ったのここッ!』
『…お前から誘うなんて珍しいじゃないのッ!何かあった?』
藤田は義人をじっと見つめると義人はさすが刑事ッ!と持ち上げた…

No.42 08/02/05 11:51
普通のおばさん0 

>> 41 💉『…何だよ義人ッ!はっきり言えよッ…相談があって呼んだんだろ?』
タコス風のクレープを口に含みながら藤田は上目遣いに義人の顔を覗き込んだ…
『…いや…それがさッ…何てゆぅんだろ…』
『ハハァ~…さては…女だな?惚れたな?』
藤田のにやけた顔に義人はまぁそんなトコ!と照れ笑いを浮かべた…
『どんな子なんだよッ!もう告白したのか?』
『いやまだ…ハハハ…それが俺にゃ勿体ない位の超美人でさ…』
藤田は思わず口笛を吹いて義人を茶化した…
『同じラーメン屋のバイト先の子でさ…たぶん同い年くらいかな…』
藤田はビールを注文した…こんな話飲まなきゃ弾まないだろ?と笑った…
『そっか…どんな子だろ…見てみたいな…何処に住んでるんだ?』
『それが…名前以外は全くの情報なしッ!情けない話だけど…それに…』
『それに?』
『何だかあんまり男と話すの好きじゃないみたい…過去に何か大失恋したのかな…意識して人を避けてるみたいだし…』
それはお高く止まってるか、お前が嫌われてるだけの事じゃないのか?と藤田は笑った…
『ねぇアキ兄…今度一度逢いに来てみてよッ!兄なら女性の趣味良さそうだしッ!』
馬鹿ッ!と藤田は義人の頭を叩いた…

No.43 08/02/05 15:47
普通のおばさん0 

>> 42 💉藤田が手洗いから戻ると拳ほどの鋏を持つジャンボクラブのボイルがテーブルに置かれた…金払わないでいいのをいい事にこんなどでかい食い物注文しやがってッ!藤田は義人を睨み付けた…
『で、アキ兄どうなの?横浜連続変死体殺人事件の方は?進展あった?』
当たり前のように聞いてくる義人を見て海老の鋏と格闘していた藤田は驚いた…
『な、お前…何でその事知ってんだよッ!』
『言わなくても解るよッ!立木署にその事件の捜査本部が立ち上がったってニュースで言ってたじゃん!それにアキ兄は立木署だし絶対召集かかってると踏んだんだッ…どう?当たり?』
『そういうトコだけは鋭いな、お前は…』
小さなステージでは黒人バンドによるレゲエの演奏が始まった…
『残念ながら進展なしッ!容疑者すら特定出来てない状況だよッ!あ~この海老面倒臭ぇッ!』
藤田は海老の殻剥きを諦めると丁寧におしぼりで手を拭いた…
『証拠なき殺人事件なんだろ?何かミステリアス~』
『馬鹿ッ!当の捜査する身にもなってみろッ!毎日頭が痛いってぇの!』
藤田は視線をステージに向けるとスチールドラムのカリビアンなメロディに耳をやった…

No.44 08/02/05 16:06
普通のおばさん0 

>> 43 💉『ごっそさぁ~ん!金欠の時また頼んますッ!』
『馬~鹿ッ!早々何度も奢れっかッ!こう見えても薄給サラリーマンだぞ俺はッ!』
店の外はきらびやかなネオンが輝いていた…
『じゃあまた…アキ兄さっきの件頼んだよッ!』
『さっきぃ…?あぁ、彼女の事か…はいはい近々一度見に伺いますッ!』
藤田は冗談混じりにペコリと頭を下げた…
『俺もそれまでに何とか頑張っちゃうからッ!とにかく逢ってみてよッ!度肝抜かれっくらいイイ女だからさッ!小島義人22歳ッ!頑張りますッ!』
はいはいと半ば適当に手を振ると藤田は駅に向かって歩き出した…
(フフフ…色気付きやがって義人の奴…)
藤田は顔は悪くないのだがこれまで余り女性には縁のなかった従兄弟の義人に心の中でしっかりやれよ!とエールを送った…酔っ払いのサラリーマンに何度も肩を突かれながら藤田はさぁまた明日から続けられる稀に見る奇妙な殺人事件の捜査に一人気合いを入れ直した…
(三つ子…カァ…残りの一人は何処にいるんだ…あの話が本当なら…日本の何処かで生きているのだろうか…)
提灯のおでんという文字がやけに薄く見える…自分でもかなり酔っている事は感じていた

No.45 08/02/05 19:07
普通のおばさん0 

>> 44 📓ここまでの登場人物を整理します…

💉謎の女《K》…正体不明の美女。唯一の理解者《順》のゲイバーで居候している。立て続けに起きた横浜連続変死体殺人事件に関与している。

💉順…Kが居候しているゲイバー《順ブライド》のママ。詳しい経歴は不明。

💉設楽五郎…神奈川県警立木署所属の刑事。役職は警部補。相棒の藤田章と共に連続変死体殺人事件を捜査。

💉藤田章…設楽五郎とコンビを組む立木署の刑事。役職は巡査部長。好奇心旺盛でどんな事にも首を突っ込むが細かい洞察力は非凡。若さの余り突っ走る事も。

💉小島義人…Kのバイト先の中華屋で働く大学生。あっさりした性格だが空気を読む事が苦手で無駄が多い。秘かにKに恋心を抱く。立木署刑事、藤田章の従兄弟にあたる。

💉南原真樹斗…星都大学免疫生物学研究生…ある実験に参加した事からKに運命を翻弄される。

💉富樫幹久…星都大学免疫生物学教授。ある画期的実験の総責任者。実験データと事実が世間に公表される事を恐れる。

💉三木真一…過去に姫路で起きた強盗殺人事件の被害者、三木康博の実弟。家族の秘密を握る。

(順不同)

No.46 08/02/05 19:57
普通のおばさん0 

>> 45 💉南原真樹斗は仲間の研究員に腕を掴まれ憔悴しきった顔で富樫教授の前に連れて来られた…
『悪かったな、南原君…悪気はなかったんだ…私の方もついカッとなってしまった…』
富樫は腕を持つ研究員に座らせてやれと南原の腕を解いた…
『…解ってくれたかい?いいか南原君…この研究は日本、いや世界の免疫生物学会を震撼させる大変大きな意義ある発見なんだ…残念な事に現在《検体》は此処には存在していないがきっと見つけ出して連れ戻すッ!そして論文を完成させて…それまで全てを世間に公表する訳にはいかんのだッ!』
『……』
南原は黙って富樫の狂喜に満ちた言葉を聞いていた…そして小さな声で解りました、今後は教授の指示に従いますと呟いた…
『…そうか、解ってくれたか…有難う…さ、何か食べる物をッ!さッ…』
富樫は急に猫撫で声になると南原に笑いかけて普段の生活に戻る事を許可した…
(狂ってるッ!見てろよ…こんな馬鹿げた研究僕が終わらせてやるッ!そして全ての絶望からきっと僕が助けてやるからね…)
南原は富樫の呑気な狸顔を眺めながら心に呟いた…

No.47 08/02/05 20:38
普通のおばさん0 

>> 46 💉【白い壁に覆われた窓もない病室…見たくもない沢山の検査器械の隅っこに今日も花瓶に一輪花が挿してある…いつからか毎日違う花がそこに咲いている…誰が持って来てくれたのだろう…無機質な空間にポツンとあるその花瓶に私は不思議と心が安らいだ…まるで花が私に訴えかけているようだ…運命なんかに負けるなッ!頑張れッ!って…】



捜査は完全に暗礁に乗り上げていた…これといった目撃証言も得られぬまま数日が過ぎた…そんなある日立木署にある人物から一本の電話が掛かって来た…
『設楽警部補ッ!お電話ですッ…』
若い刑事が電話を取り次いだ…
『誰からだ?』
『さぁ…設楽さんを出して欲しいと…』
カップヌードルを食べようとしたまさにその直後だったので設楽は少し不機嫌に受話器を取った…
『はいもしもし…機動捜査一課設楽ですが…あ~すみませんッ!少し電話が遠いようでッ!…もしもしッ!?』
《設楽五郎さんですか?…横浜連続変死体殺人事件についてお話したい事が…》
設楽の表情が一気に硬直した!
『えッ!…あ、あぁ~お宅はッ!?』
全ては逢ってお話しますと時間と待ち合わせ場所だけ告げ電話は切れた…

No.48 08/02/05 20:57
普通のおばさん0 

>> 47 💉電話で指定された場所は立木署からそう遠くない喫茶店だった…
『あのぅ…立木署の設楽ですが…電話下さったのは貴方ですか?』
設楽は警察手帳を提示した…電話の主は見るからに不審者のような出で立ちだった…黒い帽子にサングラス、真冬でもないのに毛糸の分厚いマフラーで口元を覆っていた…
『あ~えぇ~…で、話というのは?』
テーブルの向かいに座ると設楽は男をじっと凝視した…まだ若い風だ…
『……』
『お顔は駄目ですか?』
設楽は一呼吸置いて尋ねたが男は黙って頷いた…
『で…話とは?…横浜連続変死体殺人事件の情報か何かで?』
もしかしたらガゼネタかも知れないと設楽は勘繰った…最近こういう目立ちたいだけの輩が多いのも事実だ…冷やかしなら一喝してやろうと設楽は準備した…
『三人を殺した犯人を知っています…』
設楽は動揺したがまだ疑いの姿勢は崩さなかった…
『犯人を知っている…ホォ~…そいつは穏やかじゃないですなぁ…しかしどうしてそのような大事な情報を敢えて私に?』
『…立木署で一番信用出来る刑事さんだからです…』
設楽は首を傾げた…
『とすると…以前何処かでお会いしましたか?』
男は黙っていた…

No.49 08/02/06 08:19
普通のおばさん0 

>> 48 💉『以前私の知り合いが貴方に助けて頂き親身に相談出来て大変優しい刑事さんだったと…それで…』
設楽は必死に頭の中をフル回転させたがいつの話を言っているのかイマイチ思い出せなかった…刑事になればそんな事の一つや二つ、日常茶飯事だ…
『まぁいいでしょう…それで貴方は横浜の連続変死体殺人事件の何をご存知なんですか?犯人を知っていると?』
設楽は話の核心をついた…
『はい…しかし最初に断っておきますが彼女は決して殺意を持った悪い人間ではありませんッ!…利用されて…酷い仕打ちを受けた揚げ句仕方なく犯行に及んだんです…きっと人間としてのあるべき心を失ってしまった…ある意味被害者なんです…』
『彼女…かの…?すると犯人は女なんですか?』
設楽の眉が動いた…
『なるほど…で、仮にその女性が犯行に及んだと仮定しますと…殺戮方法は何なんでしょうか?…遺体からは凶器の殴打痕や銃器、薬品類も検出されていないのですが…』
男は姿勢を正して座り直した…
『いいですか設楽さん…今から話す事は真実ですッ!だからしっかり聞いて頂けますか?』
猜疑心に満ちた目で設楽は男を見た…そしてゆっくり頷いた…

No.50 08/02/06 09:56
普通のおばさん0 

>> 49 💉『ちょっと警部補ッ!何処行ってたんですかッ…捜しましたよッ…』
心痛な面持ちで捜査本部に帰って来た設楽に別件で出掛けていた藤田は声を掛けた…
『……』
『どうしたんですか?いつになく浮かない顔して…』
設楽は目を閉じて一度深いため息をすると話があると藤田を誰もいない取調室に連れ出した…
『どうしたんですかッ!?人に聞かれちゃぁマズい話なんですか?』
設楽は何も言わず煙草を口にした…いつもなら署内禁煙ですよ!と軽く注意する藤田だったが今日の設楽のただならぬ雰囲気に煙草の件はそのまま流した…
『今さっき横浜の連続変死体殺人事件の犯人を知っているという電話があってな…』
藤田の顔色が変わった…
『なッ…何ですってぇッ!?で、で、その人物と接触したんですかッ!?犯人が解ったんですねッ!?』
藤田は催促するように設楽に詰め寄った…設楽はくわえ煙草で軽く頷いた…
『俺だってまだ百%信用した訳じゃない…だが…』
設楽の動きが止まった…
『だが…何です?』
『その男の話を聞いていて…信じられなかった…』
設楽は椅子に座るとゆっくり話し始めた…
『こんな事まだ捜査本部には報告出来る段階じゃないからお前だけに話す…いいなッ!』

  • << 51 💉『お疲れ様でした…』 年代物のパンチャーにタイムカードを差し込むとKは形だけの挨拶をして店の勝手口から外に出た…ポニーテールにした髪のゴムを外すと栗色の長い髪がサラリと夜風になびいた…小さく舞った枯れ葉の渦が本格的な冬の訪れを知らせている…コツコツと白いハイブーツを鳴らしKはねぐらである順のバーに向かって歩を進めた…店から順のバーに向かう道路の脇は若者向けのブティックや美容サロンが立ち並ぶお洒落な路地で、あちこちで華やかな服を着たマネキンがすまし顔で立っている… (本当なら今頃私も普通の年頃の女性みたくこんな綺麗な服を見て心踊らせているのだろうか…) Kはマネキンを見ながら何故か言いようのない虚しさに襲われた…ようやく自由の身になれたのに…鎖から解き放たれたというのに…絶望と隣り合わせで生きていかなければならない自らの人生を憂いだ… (これから一体私はどうすればいいんだろ…誰か教えてッ!お母さんッ!お父さんッ!) その時Kの後頭部に衝撃が走った!次の瞬間すごい力で身体が浮かされたかと思うとKは二人の覆面の男達に側の薄暗い路地へと引きずり込まれていた…
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