一目惚れ
あり得ねー
こんな状況……
これって、………
運命なのか!?
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「お前…、好きなオンナ、いないのか。」
「好きなオンナ?……」
…彩矢さん?
結局、1年以上会ってねぇし…。
「誰か、紹介してやろうか?」
グラスを拭き上げながら、カウンター越しに先輩が言う。
「え?…紹介っすか?…」
なんか、今は、そんな気になれねぇ…な。
「イヤ…」
「イイ女、知ってんだけど?」
イイ女…か…
「やっぱ、いいっす。」
「お前、なんか…老けたな。」
「ちょっと…!先輩!?オレ、まだ、23っすよ!?」
つうか、先輩の方が上だしっ!
「俺が今のお前の歳には、もう、親父になってた。」
「は…!?…知ってますよ!?」
拭き上げたグラスを棚に戻す先輩。
「時間なんて、あっという間に過ぎる。ムダにするなっつう事だ。」
「おはようございます!」
「オー!干潟~今日も早いな。」
「当たり前です!新人ですから~」
仕事は、楽じゃねぇ。
けど、こんな不況でも雇ってくれた会社に、オレなりに感謝してるから。
「そんな事言う課長の方こそ、誰よりも早いじゃないですか~!」
そう。
こんなオレが、頑張れる理由がもう一つ。
部署のトップで、オレの上司。
篠原亮輔。
課長なのに、朝一番に出社して、二番目に来るオレが会社に着く頃には、キーボードをたたきながら、完全に仕事モードになってる。
「俺は、暇だからな!」
そんな冗談さえ、さらっと言える篠原課長を、尊敬しない訳がなく。
まだ何にもわかんねぇ、ミスばっかりの新人のオレに仕事のノウハウを教えてくれるだけじゃなく、
社会人としての常識も、叩き込んでくれる。
「篠原課長って、結婚してるんですか?」
「は?なんだ、いきなり…」
今日は、課長と二人で居酒屋に来てる。
週末になると、よく課長が誘ってくれるから。
つい、悪のりで聞いてしまった。
「あ!いや、だって、いつも朝早いし、帰りだって、一番遅くまで会社居るじゃないですか!」
「朝早いのは、その日の仕事を早く終わらせるためだ。」
「じゃ…、帰りは?」
カウンターに、並んで座っていたオレと課長。
この質問の後、課長がちらっとオレを見た。
「お前のせいだろ。」
「へ?オレ…あ、いや…、」
「飲んでる時ぐらいは、オレ。で、構わない。」
「!…あ…、」
こういうとこも、オレが課長を尊敬できるとこなんだよな。
「俺の課じゃ、新人のお前が一番、仕事遅いからな~」
「っ…!……ですよね?」
「何、落ち込んでんだ。
お前が聞いてきたから、答えてんだろ。」
「あ…イヤ…。別に、落ち込んでは……」
「ブッ…!ほんと、お前ってわっかりやすいよな~?」
課長……!
「失礼しま~す!枝豆です!」
店員が持ってきてくれて、オレと篠原課長の間に置いた。
「お前こそ、どうなんだ。」
課長が、枝豆を一つ口にしながら、オレに話を振る。
「え?オレ?…」
そういえば、前に先輩にも同じような事、言われたな?
「彼女、いないのか!」
ほら。
「イヤ、いませんから!」
「俺が紹介してやろうか?」
え…課長まで。
「オレ。まだ別に、結婚とか考えてもいませんから!」
彩矢さんが言った言葉は、オレの中で、どんどん大きくなってるようで。
「いきなり、結婚とか誰も言ってないし。
そう、固く考えるなよ~!」
それじゃ…
先輩に《老けたな》って言われたのと、おんなじじゃね…?
まだオレ。
23なんすけど……!
「課長…こそっ、質問に答えてないじゃないですか…!」
オレは、形勢逆転のつもりで苦手なビールを片手に課長に反論してみる。
「俺?」
「はい…!」
「完全な独身だ。」
……!
「独身だったら!」
「けど。俺には大切な人がいる。」
「大切な人…?」
「あぁ。」
「……そうなんすか?」
大切な人が居るんなら。
……結婚しないんだろうか?
確か、課長って歳は32…。
オレの事より、課長。
自分の事…が、先じゃないっすか!
「俺の知り合いで。干潟に合いそうなやつがいるんだ。」
「え?…あ、……はぁ、」
オレは、手に持っていたビールをぐいっと飲む。
遠くから、
課長の声が聞こえる……?
「おい!干潟~。聞いてんのか?」
やべ……
オレ、
「すみません…課長。酔っ払ってしまった……みたいです………」
「ったく…。ほんと、弱いな。」
すみません…
「あ…。」
ん…?
課長が、オレ越しに目線を向けている。
ゆっくりと振り返った。
「ちょっと…!?」
つもりだったのに、オレは椅子から崩れ落ちそうになったみてぇ…
しっかりと、上半身を支えられたオレ。
課長にじゃなく、
振り返った先にいた人間に。
「す…すみません……」
謝ってみるも、
頭、クラクラする。
「悪いな。」
「ううん、大丈夫。」
……?
課長とオレを支えてくれた……人。
……………
オンナ…?
そして更に、2年が経った。
今年もクリスマスをひとり過ごす予定のオレ。
社会人になって、3年が経とうとしてる。
1年目の頃と違って、仕事もいろいろ任せられるようになったオレは。
先輩の店にも、あんまり行けなくなって、
そんなオレは、後輩もできて、たまには、指示も出したりして。
「お前も、やっと社会人らしくなってきたな。」
昼休み、課長に話しかけられる。
「あ、課長。お疲れ様です!」
「言葉遣いも、自然になってきたしな。」
「え?あ、ありがとうございます…。あ…、
そんな課長だって!来年、部長になるらしいじゃないですか!」
そう。
篠原課長が今度の人事で、部長になる。っつう噂。
そういえば…
前に課長、オレに紹介したいって人がいるって言ってたな……。
…ま、いっか。
「干潟。今日、時間あるか?」
え?
「あ…、はい、ありますけど?」
「どこか、飲みに行かないか?」
「…いいですよ?」
「じゃ、お前の行きつけの店で、待ち合わせするか?」
っつう事で。
オレは今、先輩の店に居る。
「久しぶりだな~」
「はい!すみません…!ずっと、ご無沙汰して。」
「ご無沙汰…って。」
「…?」
「お前が…なぁ。」
「なんですか、先輩!?」
「いやな、お前も、大人になったなって。」
先輩……。
「は!?オレ、もう、充分大人っすよ~」
分かってます。先輩。
オレ、自分でも…、
こんな言葉遣い、自然とできるようになって。
少しは、社会人として恥ずかしくないようになれたかなって。
いろんな人のおかげっすよね。
今日。
課長と待ち合わせしている事は、先輩には話していた。
「初めてだよな。お前が、会社の人間をうちに連れてくるなんてさ。」
先輩が、こんな事言うのも無理なくて。
オレはほんとに、プライベートと仕事を分けてるっつうか、…
同僚でも、先輩の店に連れてくる事はなかった。
だから、先輩に言われるまで、気付かなくて。
「あ…、そう言えば…オレ、初めてっすよね…!」
「ま、それだけその課長が、お前にとって信頼できる相手っつう事なんだろ。」
「信頼できる相手。…」
課長に、オレの行きつけの店にって言われた時…、
何の疑問も持たなかった。
それぐらい。
オレにとって課長は、大きな存在でもあるんだけど、同時にすげー身近な存在にもなってんだろうな。
「ねぇ…、」
「……?…」
「私、…おばさんになった?」
ん!?
「そんな事ないよ?」
「ほんと?」
「うん…。3年前と、全然変わってねぇし。いや…、あ…、また、その…、キレイに、なったよ…」
「笙……」
なんか、オレ、キモいかも…
こんなクサイ台詞、言うなんて……
でも、嘘じゃねぇ。
「正確に言うとね。2年前にも会ってんだけど、」
「え…?………」
2年前、……
「お兄さんと居酒屋で飲んでた時と、…ここ。」
え…!?
居酒屋…
「ああー!!!」
え…!?じゃ…
あの時、課長と一緒にオレを部屋まで運んでくれた人って……
「あ!あれって、彩矢さん!?」
「そう。」
マジ!?…
あ…、
そういえば、…
「さっき、ここって言ってたけど…、」
「このお店の事は、あなたに聞いて知ってたから、一度来てみたいって思ってて。」
あ…、思い出した!
就職が決まって、こっちに帰ってくるってなった時。
彩矢さんに、先輩の店教えてた…
「珍しいって思ったぜ~お前が、人にうちの店教えるなんてさ。」
あ…
オレ……
…………課長にだって、この店教えたの3年かかってたのに。
彩矢さんには、もうそんなに早いうちに教えてたのか…。
正直。
オレと彩矢さんは、付き合ってたって感じじゃなかった。
初めて会ったホテルであんな事した後だって。
その後は、なんつうか…
お互い、仕事の話とか、オレの将来の夢とか。
そんな話ばかり、してたっけ。
だからって、冷めてたってワケじゃなくて。……
いや…、むしろオレは、
彩矢さんの事。
本気で
信じてたんじゃねぇのか…。
だから、オレは
彩矢さんに先輩の店、教えたんじゃないのか…?
「でも、ここで笙に会ってからは、もうずっと来てなかったから。……」
「え…、あ、だから、さっき久しぶりって…」
「うん…。」
「ちょくちょく来てくれてたのにさ~」
先輩が、軽くオレの頭をつついた。
イテッ…
………あ!
「え…!?オレと会う前、そんなに来てたの!?…つうか、オレと会ってから、来なくなったって…!?」
何がなんだか、ワケわかんねー……
「笙に紹介してもらって、初めて来た時から。
凄く気に入って。」
横で、先輩がニコニコ笑ってる。
「笙の事、いろいろ聞いてた。でも、マスターには私の事、黙っておいてって頼んでたんだ。」
「?……なんで?」
「お兄さんにも、笙の事聞いてて…」
「?…」
「仕事の事で悩んでたり…。でも、自分はまだまだだって、言ってたり。
笙は、必死なんだって思った。」
彩矢さん…?
「居酒屋で笙に会った後、偶然、ここでまた、会って…。
正直、…名乗り出たかった……。けど、……
笙が、大人として、一社会人として…やっていけるようになるまで、見守っていこうって…」
「彩矢さん…。」
「最初に言ったけど、…一目惚れだったの…。
だから、このお店にも何度も通った……。あなたに会えなくても…、笙の大事にしてるものに触れたくて…」
…
彩矢さん……
一目惚れ…。か…
そういえば、そんな事、言ってたな…
ん?
「何度も通ったって…彩矢さん?…2時間もかけて……?」
「前に俺、言っただろう?」
不意に課長が投げかけた言葉に、視線を向けるけど。
「違う部署だけど、移動になったヤツが居るって。」
課長の答えに、記憶を手繰り寄せるオレ。
…………
…………………
「え…、えぇーーーー!!!」
そんな事って…!
「まぁ、驚くのも無理ないな~。」
課長!
「イヤ!……!?オレっ…、っつう事は、彩矢さんと同じ会社に就職したっていう事?だよね…?」
「笙に就職先聞いた時は…、ほんとにびっくりした…。私の移動の話は、その時、もう決まってて…。
でも、笙にとって、これからが大事な時だって思い直して。黙ってたの…」
こんな偶然……
アリなのか…?
★一目惚れ、読んでくださった方々へ。
番外編のような形で書いたものでしたが、やっと、終える事ができました(笑)
12月に入り、体調崩したり、職場の忘年会などで多忙を極め、なかなか更新ができませんでした。
短編として書き始めたので、長くなる予定は元々ありませんでしたが。
思ったより時間がかかり、もう一つの話を進める事ができませんでした(^_^;)
もう多分、誰も見てはいないと思うので、そちらはストップしようかと…。
とにかく。
ここを覗いてくださった方々には、素人の気分転換にお付き合い頂いた事。
感謝します。
ほんとに、ありがとうございました!
最後に…
皆様、よいお年を♪
主より。
☆クーさん、そしてレスして下さった方へ
今、スレに気付きました!
そちらのスレに書き込ませていただくか…
かなり、迷いましたが。
小心者の自分には、皆様とやり取りする勇気はなく…。
ましてや、素人の息抜きに書く、小説とは言い難いお話にスレまで立てていただき…
正直、本当に驚いています。
なので、まだこんなお話に付き合っていただける方がいらっしゃった事。
感激です☆
ただ年末年始は、仕事とプライベートで多忙を極めるため、更新は難しいかと…。(^_^;)
クーさん、レスして下さった方々。
想い。受け取りました(^_^)v
もうしばらく、お待ち下さい。
本当に有り難うございました♪
主より。
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