未成熟な妻
好きになって、身体の関係を持てば、結婚しなければいけない…
そう思っていた。
僕は早く結婚したかった。誰かに、支えて欲しかった。
先の見えない道を走る為に…
君が支えてくれる
そう信じていた。
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…医大に入学して一月あまり僕は、その日は妙にはしゃぎたい気分だった。
売店で買った、人気のカレーパンの紙袋を抱えて 外で待ってる仲間の元へと足早に廊下を歩いていた。
春の日差しが
気分を高揚させていた。
田畑ばかりの田舎から、僕は夢と希望を抱えきれないくらい抱えて 上京して
見るもの 感じるものすべてが新鮮だった。
尚子は、僕が僕の力でもっても一生かかっても、手に入れられないものを
既にもっていた。
僕はそういう尚子に憧れ、尊重し、
医者という職業的な訓練を徹底的に自分に課したいと思うようになった。
彼女の存在感は僕の中で、大きくなっていった。
彼女の横にいて、恥ずかしくない自分になりたかった。
僕たちは2回生になり、尚子は8才歳上の若い研修中の医者と付き合いをしはじめた
僕は普段は手が届く距離にいながら、他の男の手で尚子が女として成熟していく様子を本当に指を加えてみていた。
尚子は恋をして さらに綺麗でかつ 妖艶さを感じさせるように なって行った。
尚子の相手の男は、尚子というそれは、素晴らしい女性を手に入れつつも、他の女性にも 声をかけるような、やつだ。
僕は尚子によく相談を受けた。
僕は冷静なふりをした。
幸せになる為に幼い頃から自分をコントロールしてきた彼女だ。理性を揺さ振られて苦しんでいた。
「上を見ている
君は妻としては最高の女だ。」
そんなプロポーズがあるもんだろうか…
尚子は医者になる。
彼の妻などになる必要性なんてない。
当の尚子はそのプロポーズを聞いて号泣し
彼と別れる決心をした。
21才の春失恋した尚子。少し痩せたがいつもと変わらずに少し無口になっただけ。僕以外だれも彼女の変化に気が付かないでいた。
秋になり、僕も尚子も学業に身が入りだした。
別れた後
尚子が少しづつ話してくれた内容は、鮮烈だった。
彼とは会うたびに身体の関係を持ったらしい。
デートらしいデートもあまりできなかったようだ。
彼の仕事の都合で呼び出し、夜昼なく
甘い言葉で引き寄せは、キスをし 尚子を抱く。
彼女が拒否すると、
好きな男を拒否する女は いい女じゃないと言われたそうだ。
彼女は彼のいうがまま
身体を自由にさせていたのに
他の女の影さえあった。
そして、プロポーズ。尚子は、聡明だから、彼を傷つくことがないように
自分が至らないと言って
別れたらしいが、
その男の傲慢さは僕は許せなかった。
尚子でさえ、惑わした男
どんな男なんだろうか…
尚子は彼を好きだったらしい。
僕にはまだ理解できず、尚子を不快に思ったりもした。
医者等過酷な職業の家族は大変だ、という話を授業の雑談を聞いて
尚子は「そうかもしれない」と言った。
僕は尚子が尚子の前の彼とのことでそう思ったのだと気が付いた
尚子の家は開業医であり
忙しいとは言え、勤務時間がムチャクチャな大学病院などの高度医療を取り扱う特定機能病院や救急指定をうけているような病院の勤務時間とはまるで違う。
僕は
「患者の命を守る為に自分の睡眠時間も家族との時間もないわけだ。」
と尚子に言った。
尚子は
「私も 両親の後を継ぐつもりでいるの。彼の大変さを見ていて、私家族がもてないと思った。遥陽君は どうしたい?君は優秀
大学病院に残るつもりなの?」
そう言い僕の目を見つめた。
「…… 尚子はどう思う?」
>> 15
「尚子さんはどう思う?…」
「遥陽君は大学病院に残って、上を目指して頑張ってみたらいいと思うな。」
「知ってる?医療ミスで東南病院の副院長が、患者さん遺族とトラブルになってるって…。
原因はすい臓のオペ
すい臓は難しいらしいの
アメリカじゃオペ自体避ける傾向があるくらい
でもそういう症例こそ、増やして行きたいわけじゃない?」
「遥陽君は 外科医になるの?体力も気力も頭脳も手先の器用さも必要だし、医療機器の操作も上手くできなきゃ
それに…遥陽君寒がりでしょ
オペ室は寒いらしいわ…」
「…じゃ僕は外科医は無理だな。まずはランニングでもしなきゃいけないなぁ。」
尚子は、僕の手先に触れて、
「外科医が、いいわ」
そう言ってくれた。
そんなある日、いつも行っていた、世田谷の家庭教師先の家でちょっとした出来事があった。12月の忙しい時期だったからか
家庭教師をしている女子高生の母親が、外出してしまい
広い家の中で
僕と女子高生が二人きりになってしまった。
ちょっと緊張した時間が続いていた。
「理沙ちゃん。この問題が終わったら、少し休憩しようか…」
「先生… 私… 」
なんだか、彼女が大人ぽく見える
「私先生のこと… 」
ああ、彼女は僕が好きなんだ。
僕は彼女の目をふせた
横顔が可愛いと思った。
「理沙ちゃん。ごめんね 今日はもう帰るね」
瞬間に身体が反応し
これはまずいと
僕は、立ち上がった。
>> 23
部屋のノブに手をかけた
「待って下さい。先生…私先生にずっと憧れていて、先生彼女いるんですか?」
僕は振り向くことができなかった。
彼女が後ろから、抱きついてきたからだ。
「ちょっ ちょっと待って…」
僕は彼女の腕をゆっくり外して
振り向いた。
彼女…理沙ちゃんは、すがるような目をして、僕に言った。
「最近できた、イタリアンのおいしいお店に先生と行きたい。」
僕はとにかく、この場所から早く帰らなければならない。
「わかった イタリアンね期末テストが終わったら、連れていくから ね。」
「本当~やった。理沙テスト頑張ります。」
「じゃあね 今日は帰りますよ…大丈夫?」
「はい!先生」
僕は、何か悪いことをした人みたいに、あたふたと 靴を履き 彼女の顔もみないで、外に飛び出した。
外の冷たい空気が、頬に気持ちよく、僕はブラブラと歩き、イルミネーションをみながら、駅に向かった。
ちょっと、びっくりはしたものの、可愛い女子高生の女の子に 憧れてたなんて言われて、やはり僕は嬉しかった。
友達として付き合って行こうと思ってた尚子に、「 君が好きだ」と言おう。
女子高生に勇気をもらった自分が、滑稽で、
部屋に戻って、布団をかぶっても、なかなか寝付けなくて、そわそわしていた。
部屋で勉強をはじめた
理沙ちゃんは、意外に黙々とシャーペンを動かしていた。集中できている。
テストも、よく出来ていた
僕は、理沙ちゃんとの イタリアンも悪くないかもと思った。
尚子といるときは、何か焦燥感みたいなものが、あって、常に少しだけ焦りみたいなものを感じていた…
理沙ちゃんとキスをして 尚子のことを考えている
理沙ちゃんの横顔は
キュートだ。
まつ毛が長く、鼻と頬のラインが綺麗だ。
少し厚めのぽってりした 唇は 赤く艶やかだ
イケナイ
また… 身体が反応してしまう
僕も勉強に集中しなくては…
青い表紙の本を開いた。 本質の研究という数学の参考書。
少し読んで 僕もゆっくり深呼吸した。
>> 34
「先生は…お付き合いしている人いるんですか?」
「僕はお付き合いしてる人はいないよ。」
罪悪感を感じながらも、当たり障りない返事をする。
「理沙ちゃんは、まだ誰か本当に好きか、よくわからないんだよな。 僕が恋人代わりに
デートしようか?」
「えっどうして、そう思うんですか? 理沙は先生が好き。そんなの、自分でわかります。」
- << 37 そう… よくわかってないのは僕だ… 理沙ちゃんにキスをしたり尚子に告白しようとしたり… [好き]という感情は、男の側から本音で語るなら 気持ちというより、欲に直結してる気がする。 視覚的なものや、感触というか、何か肉体的な記憶 が中心で、[好き]という言葉があまり、しっくりこない よく男同士で、交す情報として 「あの子 いいよね」 というのがあるが 正に、それが それに当たる気がする 尚子は、僕の中では そういう存在でなく 何か特別な存在なのは確かだ。 それなのに、僕は尚子には、積極的になれない。
>> 35
「先生は…お付き合いしている人いるんですか?」
「僕はお付き合いしてる人はいないよ。」
罪悪感を感じながらも、当たり障りない返事をす…
そう… よくわかってないのは僕だ…
理沙ちゃんにキスをしたり尚子に告白しようとしたり…
[好き]という感情は、男の側から本音で語るなら
気持ちというより、欲に直結してる気がする。
視覚的なものや、感触というか、何か肉体的な記憶 が中心で、[好き]という言葉があまり、しっくりこない
よく男同士で、交す情報として
「あの子 いいよね」
というのがあるが
正に、それが
それに当たる気がする
尚子は、僕の中では
そういう存在でなく 何か特別な存在なのは確かだ。
それなのに、僕は尚子には、積極的になれない。
理沙ちゃんは、そういうと
また、シャーペンを動かし始めた。
僕は、唐突に息継ぎができないぐらいの 長いキスを何度もしたくなった
尚子と年上の研修医との 想像もしたくない、淫らな光景がフラッシュバックみたいに、脳裏に浮かんでは消える。
あのころの尚子を思い出すと心を切なく締め上げられてしまう。
……
『 先生、何を考えているか、理沙が当ててあげましょうか…』
理沙ちゃんの視線を右側の頬のあたりに浴びて、でも僕はたじろがないで、
携帯で時間を見た。
『理沙ちゃん。僕もこう真面目そうに見えても 男なんだから、あまりからかったら、駄目だよな』
頑固に尚子を想い続けいた僕が心が
理沙ちゃんの 大胆な告白に 揺らぎはじめていた。
>> 42
デート当日
待ち合わせした、書店に
焦げ茶色の肌触りの良さそうなうさぎの毛をあしらった コートを着て、理沙ちゃんが現れた
約束のお店に二人で行き
予約席に座るまで、理沙ちゃんは、ほとんどうつむき加減で 何も話さなかった
緊張感を解きたくて
僕はイタリアの蒸留酒のグラッパを頼み、一気に飲み干した
- << 45 食事をしている間 少しずつお互いのことを話した。 僕が家庭教師になった1年前から僕のことが気になっていたこと もう家庭教師も終わりになるから、なんとか自分の想いを伝えたいと考えていたことを聞いた 僕は 田舎では、イタリア料理ななどは、ほとんど食べたことがなかったこと 東京に来て、可愛くて、綺麗な女の子達を、たくさん見て驚いたこと 医大は勉強が大変で、アルバイトも ままならず、家庭教師をしてること なんかを話した。 周りのカップルや女性グループも、クリスマス前で華やいだ雰囲気で楽しそうだった。 レストランは、見渡せる広さ、みな楽しそうで、華やいだ服装で、カップルがほとんどだった。
嫉妬は、女辺でなく、男辺のほうがいいのではないかと思う。
尚子に憧れたのも、恋人がほしくなったのも、
医大で必死に勉強したのも
急速に理沙ちゃんに僕がのめり込んだのも、
今思えば、嫉妬からくる感情に翻弄されていたのだと思う。
田舎の農家で生まれ育った僕は、何もかもが憧れの対象で、ことあるごとに、劣等感を感じていたんだと思う。 洗練された生活や仕事 生き方、すべてにおいて無知だった。何か幸せになるための方法があるのに僕だけが知らなかった。そんな気持ちになっていたんだと思う。
>> 43
デート当日
待ち合わせした、書店に
焦げ茶色の肌触りの良さそうなうさぎの毛をあしらった コートを着て、理沙ちゃんが現れた
約束のお店に…
食事をしている間
少しずつお互いのことを話した。
僕が家庭教師になった1年前から僕のことが気になっていたこと
もう家庭教師も終わりになるから、なんとか自分の想いを伝えたいと考えていたことを聞いた
僕は
田舎では、イタリア料理ななどは、ほとんど食べたことがなかったこと
東京に来て、可愛くて、綺麗な女の子達を、たくさん見て驚いたこと
医大は勉強が大変で、アルバイトも ままならず、家庭教師をしてること なんかを話した。
周りのカップルや女性グループも、クリスマス前で華やいだ雰囲気で楽しそうだった。
レストランは、見渡せる広さ、みな楽しそうで、華やいだ服装で、カップルがほとんどだった。
食事を終わらせ、外に出た 水族館の前にある観覧車に乗る為に、地下鉄の駅まで歩いた。 切符を買ってあげて 改札に入った。 理沙ちゃんとはぐれないように手をつないだ。 少し酔いもさめてきていた駅の構内の地下道を歩いていた時、右手に見覚えのある姿を見つけた。 同じ学部の友人の佐藤祐介だ。看護学部の恋人の唯といっしょだった。 二人はこちらに手をふって合図を送ってきた 「 遥陽誰なんだよ~紹介紹介 ムチャクチャ可愛いじゃない タレントかと思うくらい!僕は遥陽のトモダチ 佐藤です!遥陽の彼女さん? 」 「びっくりしたよ祐介に会うなんてな 僕が家庭教師をしてる理沙ちゃん高校3年生だよ。春から城南大学のフランス文学科に行くお嬢さん」 と紹介した。
>> 47
祐介は、理沙ちゃんに
「こいつね 理想が高いんだよ。」
と耳元で言った。
「じゃあな また!」
お互い手をふり、別れた。
僕は理沙ちゃんと
また 手を繋いだ。
なんだか、観覧車に乗りに行くのが、ツマラナイと思え、
「部屋に来る?」 と聞いた。
「うん。いいよ。行きたい。」
「じゃあ、変更 ごめんね口の悪い友人で。」
「大丈夫です。…………」
電車がホームに入って来る音が聞こえた。
僕は理沙ちゃんの手をもう一度握り直し
反対側に着いた電車に乗る為に 理沙ちゃんの腕を引っ張り、走った。
- << 50 駆け込み乗車して息がキレた。 理沙ちゃんの肩と胸が上下し続け、少し紅潮した頬がかわいらしい。 10分ほどの間 僕はずっと理沙ちゃんの肩を見ていた。 駅に着き僕の部屋まで歩く。 「あの角を曲がったら、僕の部屋だょ。」 理沙ちゃんはコックリとうなずいた。 「先生。お部屋に入ったら、理沙にキスしますよね。」 僕は返事しなかった。 コツコツと理沙ちゃんのブーツの踵の音が響き 僕の心臓の音と呼応してる。 「ここだよ。理沙ちゃん 寒かったよね。暖房は入れてきてるから。」 理沙ちゃんはまた うなずいた。 鍵をあけ、理沙ちゃんの肩を抱えるように中へ入るように促した。
>> 48
寒い冬がくると、家族で少しの間住んだ。北海道の冬を思い出す
東京育ちのお嬢さんだった彼女にとって、それは、楽しいだけでなく、辛く寂しい時もあったはず
手袋もマフラーも役目を果たさないぐらいの寒さ
吹雪の夜は、交通手段さえ途切れる
雪を踏みしめる時のサクッとなる小さな音だけを聞きながら、歩く。
突然現れた尚子の残像
単線の電車の音
尚子のあの時の声
妻の打ち拉がれた横顔…
結婚は、職業より人生に深く関わるんだ。
- << 63 転勤になることを尚子に話をしなければと、夜勤でないことを確認して 青山のリストに誘った。 約束の時間よりはやくにお互いにつき、 僕は尚子に、ことの経緯を説明した。 尚子はすぐに 『奥様はどうするの いっしょに連れて転勤するの?幼稚園に入園したばかりだし、住み慣れた東京を離れるよりは、単身で行ったほうがいいんじゃないかしら… 多分1年で戻るんだし、 遥陽君が行き来すればベストなんじゃないの?』 と言ってきた。 『それは…できないよ 理沙は僕が居ない夜は、 薬がないと眠れない それに息子の喘息もあるから、睡眠薬も飲めない。 連れて行くしかないよ。』 『奥様の大変さもわかるけど、遥陽だって、こんなに大変なのに… 』 『呼吸器内科のある救急病院の近くのマンションに引っ越すのはどう?母親が安心して安定すれば、症状が大変でも、精神的にはいいんだし。』
>> 48
祐介は、理沙ちゃんに
「こいつね 理想が高いんだよ。」
と耳元で言った。
「じゃあな また!」
お互い手をふり、別れた。 …
駆け込み乗車して息がキレた。
理沙ちゃんの肩と胸が上下し続け、少し紅潮した頬がかわいらしい。
10分ほどの間
僕はずっと理沙ちゃんの肩を見ていた。
駅に着き僕の部屋まで歩く。
「あの角を曲がったら、僕の部屋だょ。」
理沙ちゃんはコックリとうなずいた。
「先生。お部屋に入ったら、理沙にキスしますよね。」
僕は返事しなかった。
コツコツと理沙ちゃんのブーツの踵の音が響き
僕の心臓の音と呼応してる。
「ここだよ。理沙ちゃん
寒かったよね。暖房は入れてきてるから。」
理沙ちゃんはまた
うなずいた。
鍵をあけ、理沙ちゃんの肩を抱えるように中へ入るように促した。
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