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黄昏の時 vol . 2

No.2 13/09/30 20:17
名無し2
あ+あ-

。日曜日は店休日であるが、景子が独りでジャズを聴きながら飲んでいることは知っている。辰蔵は、久しぶりに飲みたい気分になり、景子の店へ足を向けた

「あら、久しぶり」

扉を開くとカウンターに座っていた景子が振り向き、驚いたように言った

「おぉ..ん」

辰蔵は、景子の隣に座っている三十ぐらいの男に気付くと、足早に近づいた

「コウ!!」

辰蔵は、驚きと懐かしさが込み上げながらコウの肩を強く叩いた

「ア..ア!!」

コウは辰蔵に気付くと、しぼるように声をあげた。白い歯をいっぱいに見せながら立ち上がると、お互いに背中を叩きあった


コウは、晴代の十歳違いの弟で、姉の晴代と同じように十六歳になると、アメリカへ渡り大学に進んだが、二年目に突然中退すると、何を考えたか海軍へ入隊した。すると、これが性に合っていたのか、メキメキと頭角を顕し精鋭部隊を経て、特殊工作部隊に配属されたが、コウの人生はここで暗転した。中東のゲリラ組織を極秘裏に殲滅する任務を受け、コウは一個小隊を率いて戦地に赴いた。軍部の情報では、ゲリラ組織は二日前の政府軍との戦闘で、戦力が半減しているとのことであったが、虚報であった。敵は用意周到に待ち伏せしていた。戦いは凄惨を極めた。コウの小隊は壊滅しながらも、任務は遂行した。この苛烈なまでの戦いでコウは聴力を失い除隊した。しかし、除隊後も手話や読唇術を学びながら、傭兵となり戦闘のスキルを研磨し続けた

『元気だったか..大人になったな』

辰蔵は手話で語ると、十年ぶりに会った甥を眩しげにみながら、両拳をコウの厚い胸板にゴツンとぶつけた。それから、辰蔵、コウ、景子の三人で途切れていた時間を埋め合わせるように語りあった。晴代がお見合いの席で飲み過ぎ、相手に説教を始めて辰蔵が真っ青になってとめに入ったことや、景子の妹であり晴代とコウの母である行方知れずの雪子のこと、その雪子と晴代が景子のバースデーケーキを作ったが、砂糖と塩を取り違えていて一口食べて吐き出したこと..あの頃はよく笑っていたな..いつから笑わなくなったのだろう..みんなで笑いあえた想い出は月日をかさねるごとに薄らいでいく..だが間違いなくその想い出はそこにあったのだ..

辰蔵は、コウの微笑みが小さくなり、俯いた横顔に刻まれたような翳りを見ていた






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