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続・彷徨う罪

No.144 13/10/02 02:12
ゆい ( vYuRnb )
あ+あ-


修也を診た精神科医の鑑定書をグシャリと握り潰しながら、俺は修也に向けて微笑んだ。

「お前の本当のIQは幾つだ?」

この当てにもならない騙されまくった嘘だらけの鑑定書に、なんの意味も持たない。

「…今更、最高裁の判定を覆す事なんて出来るの?
僕は逃げるよ。
君が、どんなに僕を裁こうとしても僕は逃げ切る。」

「勘違いすんなよ。
俺は、お前自身に興味があんだ。
俺の本当のIQは推定でも230…世界水準でも1位か2位だ。
だが、お前はさらに上なんだろ?」

この数字が表ざたにでもなれば大変な目に合うという事は容易に想像出来る。

天才が、凡人のフリをするのは思う以上に大変なんだ。

溢れる好奇心が、己の欲求を満たすまで暴れる。
脳をフル活動していないと、呼吸が出来ないのと同じように苦しくなる。

そんな毎日に恐怖し、人の目を気にしながら生きて行かなければならない息苦しさを俺もお前も嫌というほどに味わってきた。

社会と溶け込むんじゃなく、上手く誤魔化して同化しなければ俺たちは迫害される。

見てはいけないものや知り得てはいけぬ物があるのなら、最初から頭の中を空洞にし、目は眼球を抜いた状態で産まれてくれば良かったんだとさえ思った。

「僕はね、学校のテストじゃ50点そこそこしか採れた事がないんだ。
毎回さ、“こんなもんか”ってな具合で平均より少し悪い点をとるように調整してね。
悪目立ちしない努力は何より大変で…点数配分の調整じゃなくてさ、間違えた答えを書くストレスを必死で隠すのが何よりも大変だった。」

修也の言葉に、学生服の袖口が脳裏に浮かんだ。

そこから伸びた震える手首を必死で反対の手で押さえた。

「その精神鑑定のIQテストもそうだった。
普通より少し低い数字を考えながら、僕は禁断症状に似た全身の震えを抑えたよ。
聖二くん…僕はバケモノなんだよ。
たぶん、君が想像するよりもずっと…ね。」

冷ややかな眼差しに、背中がゾクリとした。

俺は、本当にバケモノを目の前にしているに違いない。
修也は、己の測定値にすら測れぬほどの知能をもった人間なのだ。

人間…?

人の形をした、バケモノと言った方が正しい。

「ほんと…僕みたいなのは産まれてきちゃダメだったんだよね。
存在自体が罪…神様が言った事は正しいよ。
さぁ…君は、どうやって僕を裁くの?
君は天才だけど、まだ人間だろ?
僕は…そんなレベルじゃないんだよ?」

同類ではない。

修也に抱いた儚い想いは、その歪んだ口元から否定された。

それは、修也の本心だったのか…
それとも、微かに湧いた友情を打ち砕く為の小芝居だったのか…。

それを知る術はもう、ない…。



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