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彼女たちの悲劇

レス14 HIT数 313 あ+ あ-

葉月( AmcTnb )
23/07/12 13:00(更新日時)

利絵、南加、沙智の3人が、1つの家を巡(めぐ)って対立する。


恋のバトルとポジション争いは、ヒートアップするばかり。はたしてクールダウンの日は、訪れるのかーー?




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No.3821814 23/06/28 12:35(スレ作成日時)

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No.1 23/06/28 12:42
葉月 ( AmcTnb )

「、、、、どちら様ですか?」
スペアキーで部屋に入ろうとした利絵に、南加(ミカ)が声をかけた。
「大畑といいますけど」
「どんなご用件?」
「今日、約束してたんですけど、、、」
「何の約束か知りませんけど、勝手に人の家に入らないで下さい」
南加のきつい言い方に、利絵は、ムッとして答える。
「勝手に入ってるわけじゃないです。ちゃんと、キーももらってるし、、、」
「ちょっと見せなさいよ」

No.2 23/06/28 12:52
葉月 ( AmcTnb )

「、、、なんで?あなた、管理人なの?」
「そんなわけないでしょ、ここの住人から、部屋のことを任されてるのよ」
「何か、勘違いしてません?以前住んでいた人の事かしら?」
「今現在住んでる人の知り合いです」
「、、、、ひょっとして、江口さん?」
「山川です。本人に確認してもらったらわかるから」
そう言って、利絵から奪いとったキーで、乱暴にドアを開け、南加は、玄関に入ろうとした。
「何やってるんですか!」
あっけにとられた利絵に、南加は、キーを放り投げる。
「ほら。欲しければ、私のスペアキーあげるわよ。どうせ同じ物だから。他にもいくつかあるかもしれないけど」
「どういうこと?」
「この部屋に出入りしてるのは、あんただけじゃないってこと」

No.3 23/06/30 11:52
葉月 ( AmcTnb )

ゆるくウェイブした髪をかきあげ、半開きになったドアから中に入り込み、閉めようとした南加に、利絵が詰め寄る。
「そんなのおかしいわ!あなたと私を一緒にしないでよ!私は、ちゃんと約束して来てるんだから。急な用事だったら、今度あらためて来ればいいじゃないの!」
「今日なら会えるって言われたから今日来たのよ」
「嘘よ。このあいだ彼と会った時、今日、部屋で待ってるように言われたのよ。邪魔しに来ないでよ!」
利絵は、ドアノブを外側から必死に引いて、玄関にいる南加にドアロックをかけられないよう、ローファーの足を踏みしめている。

No.4 23/06/30 12:02
葉月 ( AmcTnb )

「邪魔?どっちが?私は、お嬢様みたいにヒマじゃないの。今月中に来ないといけないから、忙しい中今日来てやったのに、これだもの。あの人も、女を見る目が落ちたわね」
「なんですって!?」
カツン、、、、 と音がして、もめている二人の背後に、ハイヒールをはいた女が一人、現れた。
「何やってるんですか?」
茶色いストレートヘアをふり上げて、利絵がふり向き、答える。
「あなたこそ誰?何の用事?」
「何の用事じゃないでしょう。他の人の迷惑を考えないの?あなたたち」
ショートヘアにシャギーを入れた女は、隙をついてドアを大きく開けて、部屋の中を一瞥(いちべつ)した。

No.5 23/07/02 12:01
葉月 ( AmcTnb )

「どうせ留守なんでしょ?」
ムッとした表情の南加が、ドアノブから手をはなし、濃いマスカラの目でにらみつける。
「大畑さんだった?」
「江口です」
「あーもう、なんでもいいわよ。今取り込み中だから、さっさと帰って」
「昨日、六本木の店で会った、沙智って言ってもらえば、わかると思いますけど」
南加と利絵は、一瞬、目を見合せる。
「お二人とも、まとめて面倒みてあげましょうか?」
沙智は、赤いショルダーバッグから、小さなパッケージの細いタバコを取り出し、ライターで火をつける。
「どういう意味よ?」
南加が、挑みかかるような目付きで、再びにらみつける。

No.6 23/07/02 12:16
葉月 ( AmcTnb )

「支払いが滞(とどこお)ると、恵司(ケイジ)も困るでしょう?」
沙智が、タバコのけむりを吐き出しながら、南加と利絵を見比べる。
「、、、、ケイジって、、 あんた、やけになれなれしいわね。どうせパトロンか何かなんだろうけど、自分を恵司の彼女だと思っている女なんて、六本木や渋谷に行けば、そこら中にいるわよ。最近、外国人も増えてるし。かわいそうな勘違い女がね。この、ガールズバーの一員みたいな女も、その一人らしいけど」
「ガールズバー!?」
一瞬、利絵の目がうるみ、次の瞬間、南加に向けて、厳しい表情で詰め寄っていく。
「じゃあ、あなたはいったい何者なの?見たところ、なんだかよくわからないブランドのバックみたいだけど。そのネイルも、自分で塗ったの?そんな変なネイルとかしてるんだったら、お料理なんかしたこともないんじゃないの?」
「ないわよ。いつも、彼がごちそうしてくれるから」
「あら。恵司さんは、私の手料理が一番おいしいって言ってくれたわよ」

No.7 23/07/04 12:22
葉月 ( AmcTnb )

再び、利絵と南加は、玄関の敷居越しに、にらみ合う。
「とにかく」
隙をついて、沙智が玄関に入り、ハイヒールを脱ぐ。
「ケンカしているヒマがあったら、二人とも帰って」
しばらく三人とも沈黙するが、やがて、利絵が、バックを抱(かか)え直して、言う。
「恵司さんに、連絡取ります」
そして、カバン型のバックのチャックを開け、白い携帯電話を取り出す。
「ムダだと思うけど」
沙智が、シューズクローゼットの上の灰皿にタバコの灰を落としながら言うと、南加も、警戒するような表情で、「私もそう思う」と、うなずく。
しばらくの間、利絵は、外階段付近で携帯を操作していたようだが、やがて、あきらめたように戻ってきた。
その間、沙智は、リビングを点検するように、歩きまわっている。
「、、、、ライト、切れかかってるわね」
南加は、乱暴に、テーブルの椅子を引き、腰かける。

No.8 23/07/04 12:33
葉月 ( AmcTnb )

「お茶でも、入れてあげましょうか?」
沙智が、冷ややかな表情で、微笑みながら、椅子に座った南加を見下ろす。
「けっこうよ」
「料理できないって言ってたわよね?お茶も入れられないか」
「うるさいわね。最近はみんな、ドリンク類も配達してもらってるのよ。おばさん達は、茶飲み友達と世間話でもしてれば」
「、、これだからね。彼も、逃げるわけだわ」
「逃げたんじゃないわよ。あんた達が来てるから、来ないだけでしょう」
そこに、羽根飾りのストラップを付けた携帯を握りしめた利絵が、玄関口のほうから、やってきた。
「メール送ったから、すぐ来ると思います」
沙智と南加は、ちらっと利絵を見て、その後、沈黙した。

No.9 23/07/06 12:00
葉月 ( AmcTnb )

「ちょっとあんた、何か飲み物出しなさいよ」
「、、、、え?どうして?何でそんな事しないといけないの?」
「お嬢様なんでしょ?冷蔵庫の中に、ワインやらビール1ダースやら、しょっちゅう買い置きしてるの、どうせあんたでしょ?」
「しょっちゅうじゃないわ!特別な日だけよ!私は、ただ、恵司さんと一緒に、おいしいごはんを作って食べられるのが楽しくて、、 だから、いつもきちんと、食べたい物のメニューのリストアップして、買ってきてあげるのが、私の役目だったのよ」
「そういうのを、貢(みつ)がされるっていうのよ」
「違うわ!一緒に買い物した時のポイントだって、そのつど私のカードにつけてくれて、だいぶたまってるのよ!」
「とにかく、、」
二人のやりとりを聞いていた沙智が、いつのまにか缶チューハイを開けて、飲みながら言う。
「恵司は、面倒な事が嫌いなんだから。用件が済んだら、二人とも早く帰って」

No.10 23/07/06 12:12
葉月 ( AmcTnb )

携帯をテーブルの上に置いて、利絵が、沙智に向き直った。
「おたくこそ、どういうご用ですか?六本木のお店の人?チーフかマネージャーの方?一回、一緒に動画か何か撮影でもしたとか言うんじゃないでしょうね。
そういう事なら、私の方にも、幹部候補のスタッフがいるけど、なんなら連絡するわよ」
「何が言いたいの。私は、ただの友達よ」
「じゃあ、なんで、勝手に家の中に上がり込むんですか!!」
利絵が大きな声で怒ると、しばらく沈黙が続き、やがて、南加が髪をかき上げて、椅子から立ち上がった。
「あー、バカバカしい。もういいわ。これ、彼に渡しといて」
と、バックから封筒を取り出し、テーブルの上に置く。
「水道代」
「、、、、は?」
利絵も、バックを開け、中から現金を取り出す。

No.11 23/07/11 12:49
葉月 ( AmcTnb )

「私は、支払いの請求書は、今手元にないけど、お金ならあるわ。ついでに、ここに関する費用の請求されてる分、まとめて払います。手切れ金になるなら、安いもんだわ」
「もともとは、ガス代の分でしょ?」
「ええ」
「じゃ、電気代は、、、、」
南加と利絵は、じっと、沙智を見つめる。
「何も、出す物はないわよ。私は、銀行引き落としにしてるから」
再び、気まずい沈黙が続き、椅子から立ち上がった南加が、冷蔵庫を開けて、コンビニのスイーツを何パックか、三角コーナーにぶちまける。
「賞味期限、過ぎてるじゃないっ!!」
南加を、冷ややかな目で見つめる利絵と沙智。その時、テーブルの上の携帯が鳴り出した。

No.12

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No.13 23/07/11 13:03
葉月 ( AmcTnb )

あわてて、利絵が、画面を確認する。
「恵司さん、もうすぐ来ますよ」
沙智は、「そう」と一言言って、缶チューハイを飲み続ける。
やがて、玄関を開ける音がして、茶髪の男が入ってくる。
「あれ?みんな、集まってるの?」
「、、、、遅かったじゃない」
南加が、きつい目付きで、恵司をにらみつける。
「そう? ごめんごめん。店のほうが混んでてさ」
マドラスチェックのシャツのそでを折りながら、恵司が、笑顔で、ビニール袋をステンレスの流し台の上に置く。

No.14 23/07/12 13:00
葉月 ( AmcTnb )

沙智が立ち上がり、空になった缶チューハイを、リビングのゴミ箱の中へ放り込む。
着信音が鳴り出し、利絵が、ボタンを押して話し出す。
「はい、、、 あ、ママ? 、、、、うん、今日は、ちょっと、遅くなると思う、、、、 うん、大丈夫、心配しないで」
じっと、利絵の電話が終わるのを待つ、南加と沙智。
「どうしたの?なんか今日、空気が重いよ? せっかくだからさ、パーッといこうよ、パーッと。あ、ビール飲む?」
そう言って、恵司は、冷蔵庫から缶ビールの1ダースパックを取り出し、テーブルの上に置く。
「え? 仕事先から? 、、、、よくわかんないから、明日行きますって、言っといて」
利絵の話は、まだ、終わらない。
南加と沙智は、黙って、缶ビールを見つめている。
恵司は、いそいそと、笑顔で、「ワインも飲む?」と、食器棚から、グラスを取り出している。



〈End〉

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