修羅のパート 闘う奥様

プロローグ

【株式会社アイライズ】

関東随一の規模を誇る年中無休のスーパーマーケット「アイライズ」
峰富士郎（70）が立ち上げた株式会社「アイライズ」は、峰社長の人脈の豊かさが功を期し、全国から品々を格安で仕入れることに成功。
かつ、店装をアミューズメント風のアトラクションにするという前衛的な手法で、瞬く間に全国へと店簿を増殖させた。

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>> 1 2018年４月に開催された新入社員歓迎式に出席した際の峰社長の御言葉

「えー…私は今から数十年前、闇金で得たお金を元手に、株式会社アイライズを立ち上げました。当時は商店街が全盛期でありまして、スーパーマーケットというものは世の中にあまり認知されてなかったのですわ。私は時代を見据えアイライズを立ち上げた訳で御座いますが、竜頭蛇尾とでも言いますか、当初は営業利益も右上がり、他のライバル社の追随を許さない、非常に活気ある会社で御座いました。」

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>> 2 「私は当時のことを生涯忘れません。何故、アイライズみたいな一介のスーパーマーケットが、こうも更盛を得たのかと言いますと、ひとえにバブルの影響も多いかと思われます。行きはよいよい帰りは怖い。バブル崩壊後のアイライズは、そりゃあもう四苦八苦七転八倒、苦難の連続でした。」

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>> 3 従業員への賃金の未払い、長時間労働、社員の大量リストラなどを経て、メディアは弊社をブラックと言いました。しかし、皮肉にも私がアイライズを建て直したのは、ブラックにも由縁なブラックマネー、即ち、闇金に手をつけたことが、今のアイライズが存在する一つの理由です。

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>> 4 私は夜な夜な闇金に手を染め、ついには酒とギャンブルにのめり込んでしまいました。しかし、ひょんなことから私はとあるヤクザの組長のド金玉を握りまして……えー……これは比喩ですね。
百々のつまり、弱味を握ったということですよ。それ以来私は、裏社会に流通する多額のマネーと、もはや私の従属となったヤクザの三下による脅迫と脅し、時には暴力をも駆使し、大から小までのライバル社を買収に買収を重ね、アイライズはここまで大きくなったのです。

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>> 5 当時を振り返った新入社員の言葉

A.Nさん(男性)

いやあ、当初社長の言葉を聞いた時は僕の耳と社長の頭を疑いましたね。だってあれでしょ。アイライズって言ったらあのネオンにも劣らぬ大企業ですよ？学生が就職したい企業で常に上位にくい込んでるじゃないですか。ホワイトというイメージで地域からの信頼も厚いのになんてこったい。入社した翌日に契約書みたいなもの書かされてね。他言厳禁またいな感じの。それ破ったらさ、ヤクザに半殺しにされるんだってさ。せっかく苦心の末にいい大学入ったってのに…僕、もう首吊ろう思いましたもん。

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>> 6 episode１

金子敦子

春うらら。爽やかな薫風が吹いて、夏の予感をひしひしと感じる季節。似たり寄ったりな家が、何十と密集する住宅街の一つが、金子夫妻の家

「ねえ健介さん。私のあつらえた手作りクッキーのお味はどう……？」

「…………………。………………………。」

「ちょっと健介さん、返事くらいして頂戴。せっかく私が苦心して作ったんだから。」

「…………………。…………。」

「ちょっと、聞いてんのか、ああ？」

「敦子、頼むからセーラー服を脱いでくれ。いい加減に目を覚ましてくれよ。お前はもうすぐ古希なんだよ？どうして朝っぱらから気分を害されなくちゃならんのだ。」

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>> 7 現実逃避は金子敦子の十八番。現実に生きながらも、理想の自分で生きる金子敦子のあつかましい姿は、現代社会に生きる多くの人々が学ぶべき点がありそうです。

無論、他人の戯言などに耳はかさぬ。敦子、今日も大いに生きる。

敦子は幸せに浸っていた

「嗚呼、私は頭のてっぺんから足の付け根まで敦子なのね。敦子は敦子なのよ。みてごらんなさい。世の男共の滑稽なお姿を。美貌に翻弄され、視線を一点に直視出来ず、濁らす姿はなんとも言えぬ可愛さがあるものよ。アスファルトの道路はレッドカーペットに早変わり。道行く人は私の賛美者。草木花は私あつらえむきのプレゼントよ。ああ、私ってなんて幸せなのでしょうか。」

• << 10 episode２ 木村納谷 「私という人間は、他のどの人間とも違う、言わば亜種みたいなもんだわ。私は孤独。無論、他の人と仲良くするのなんてご法度よ。普通、種は同じもの同士が群れるのであって、異種とは関わらないもの。ううん。他人に敵意など持っていない。人を信用してるかって？もうそんな次元の問題ではないのよ。私は……。」 アイライズの工場内、朝の朝礼にて、木村の公開処刑が行われていた。その情景、イスラム国の如し。 社員は猫なでで言う 「木村さぁん。あなたは今日は…マカロニの盛り付けに入ってもらいまあす。」 木村は死に間際の老人のような声で、辛うじて声帯を震わせる 「はぃ。。。」

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>> 8 現実逃避は金子敦子の十八番。現実に生きながらも、理想の自分で生きる金子敦子のあつかましい姿は、現代社会に生きる多くの人々が学ぶべき点がありそ… episode２

木村納谷


「私という人間は、他のどの人間とも違う、言わば亜種みたいなもんだわ。私は孤独。無論、他の人と仲良くするのなんてご法度よ。普通、種は同じもの同士が群れるのであって、異種とは関わらないもの。ううん。他人に敵意など持っていない。人を信用してるかって？もうそんな次元の問題ではないのよ。私は……。」


アイライズの工場内、朝の朝礼にて、木村の公開処刑が行われていた。その情景、イスラム国の如し。

社員は猫なでで言う

「木村さぁん。あなたは今日は…マカロニの盛り付けに入ってもらいまあす。」

木村は死に間際の老人のような声で、辛うじて声帯を震わせる

「はぃ。。。」

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>> 10 突如、社員の表情は烈火の如く怒気に満ちた表情へと早変わり

「おい木村ぁ！てめえはそんな小さな声しか出せねえのか！それでも大人なんですかぁ！

…あ、それとも社員私を嫌ってわざと返事をしないのですかぁ！」

辺りにはクスクスと笑いが洩れる。この無様な体たらくの木村納谷を嘲る笑いなのか、はたまた社員の極度の短気症が面白いのかは不明瞭

恐らく両方であろうか

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>> 11 刹那

閃光が轟き

全ての物質は無に帰した

灼熱の太陽が

全てを焼いた

刹那

ほんの刹那であった

太陽の距離がほんの僅か

地球に近づいただけであった

おお何が悲しや

混沌より生まれしものは混沌に帰着す

諸行無常

人間のおこがましさよ

清きものも

よこしまなものも

楽しげなものも

悲しげなものも

今や存在しない






【完】

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