Happy Birthday

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2013/11/14 17:06(更新日時)

誰にも望まれずに


誕生した少女が


紡いでいく恋物語です。

No.1720624 (スレ作成日時)

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No.251

※申し訳ありません。

No.249とNo.250は、間違えて過去に載せたものを載せてしまいましたので、飛ばして読んで下さい。

何度も間違えてしまって、本当に申し訳ありません。

No.252

※度々、申し訳ありません。

No.249とNo.250ですが、やはり間違えて載せた内容ではありませんでした。

No.251に書いた内容の方が間違えていましたので、普通に飛ばさずに読んで下さい。

本当に、何度も何度も申し訳ありませんでした。

No.253

「さっきも言ったけど、俺にはリナの他にも女がいた」


「…うん」


「だけど、俺は女達と本気で付き合うつもりはなかった」


「…え?」


言っている意味が、分からなかった。


今日のマサオは、理解し難い事ばかり口にしているが、今の発言は特に意味が分からなかった。

No.254

「だって、付き合うと色々と面倒じゃん?」


「面倒…?」


「浮気が、どうのこうのとか…」


浮気しておいて、よく言う。


そう思ったが、早くマサオの次の言葉を聞きたかったので、わたしは口には出さなかった。


黙って、マサオの次の言葉を待つ。

No.255

「俺も若いし、色んな女の子と遊びたいしさ…」


「じゃあ、どうしてわたしには付き合おうって言ったの…?」


マサオの発言は、矛盾している。


マサオは、確かにわたしに自ら交際を申し込んできたのだから。


そして、確かにわたしと付き合っていたのだから。


たとえ、わたしの事を一秒たりとも、好きな瞬間がなかったとしても。

No.256

「それは…」


「それは…?」


わたしは早く続きの言葉を聞きたくて、つい急かす様にマサオの言葉を鸚鵡返しに呟いてしまう。


「リナは、都合が良かったから」


「都合が良かった…?」

No.257

またまた、わたしはマサオの言った事の意味が分からなかった。


「リナは、他の女とは違う」


一体、どの様な部分が違うというのだろう。


確かに、わたしは周りの女の子に比べて、変わっている部分が多いと思う。


しかし、マサオはどの様な部分を違うと思ったのだろう。


その様な事を考えている間にも、マサオは話す事を続けてくる。

No.258

「リナは、俺がメールを送らなかったり、なかなか逢えなくても文句とか言わないだろ?」


「…うん」


確かに、そうだと思った。


本当は言いたかったが、嫌われるのが怖くて言えなかった。


「そういう部分が、都合がいいんだよ。その辺の女なら、すぐに文句を言ってくるからね」


「…成程」

No.259

マサオの言いたい事は分かった。


しかし、マサオの発言には、少し気になる点があった。


「でも、わたしがそういう女だって、付き合う前から分かっていた訳じゃないよね…?」


「いや、分かっていたよ」


「え…?」


即答したマサオに、わたしは驚きを隠せなかった。

No.260

何故、マサオは付き合う前から、わたしがどの様な人間かを知っていたのだろう。


わたしとマサオは、付き合う前には殆ど言葉を交わした事がなかったというのに。


「人間観察だよ」


「人間観察…?」


マサオが静かに口にした言葉を、わたしは鸚鵡返しに呟く。


「俺は、付き合う前からリナの事を観察していた」

No.261

「どうして…?」


「大人しい女の方が、都合がいい女が多いと思ったから」


わたしが大人しい性格だと、大抵の人は短時間で判断する事が出来ると思う。


黒髪で、高校の制服も正しく着ている。


そして、友達もいない訳だから、騒がしくしようがない。


恐らく、その様な点を見て、マサオもわたしが大人しい性格だと判断したのだろう。


しかし、まだわたしには気になる事があった。

No.262

「でも、わたしが都合のいい女だとしても…」


マサオの口から聞く時も辛かったが、自分で口にすると余計に胸が苦しくなった。


しかし、ここで言葉を止めてはいけない。


そう思ったわたしは、胸の苦しみを必死に我慢しながら、絞り出す様に言葉を続けた。


「好きじゃないなら…、ムリして付き合う必要はなかったんじゃない?どうして、わたしと付き合ったの…?」

No.263

やっと聞きたい事を言葉にし終わり、わたしは少しホッとしていた。


それに対して、マサオからの返事はすぐに返ってきた。


「他の女達に、彼女がいると思わせるため」


女の子と関わる際に、彼女がいると思わせる事で、何かメリットでもあるのだろうか。


考えても、やはりわたしには分からなかった。


しかし、その答えはマサオが、すぐに口にしてくれた。

No.264

「彼女がいると思わせておけば、女達は付き合いたいとは言わないだろ?」


「成程」


わたしは、完全に利用されるためだけに、マサオと付き合っていたんだ。


「だから、これからもリナが彼女じゃなきゃ困るんだよ」


そして、これからも利用されるためだけに、マサオはわたしを縛り付け様とするんだ。


わたしの意志など、尊重しようともしないで。

No.265

翌朝、わたしは憂鬱な気分で高校へと来ていた。


本当は、気分が悪いと言って休みたかった。


もしも、わたしが本当の子供だったとしたら、そうしていただろうし。


しかし、わたしは義理の子供だ。


出来るだけ、家族からの印象を良くしなければいけない。


高校を休めば、印象が悪くなるのは確実だろう。

No.266

それだけで、捨てられるとは思っていないが、そういう事の積み重ねでいつか捨てられる日が来るかも知れない。


それだけは、避けなくていけないと思う。


わたしには、行くところがないのだから。


そのため、わたしは体調が悪くても、今まで高校を休んだ事がない。


いつも我慢しながら、真面目に授業を受けてきた。

No.267

それに比べれば、今日は体調が悪いという訳ではないのだから、まだマシな方だと自分に言い聞かせる。


それに、よくよく考えてみると、心の問題は何処にいても同じだと思う。


高校に行く事で憂鬱な気持ちが増す訳でもないし、家にいる事で憂鬱な気持ちが減る訳でもない。


寧ろ、黙って家にいれば退屈な時間を過ごす事は目に見えている。


その結果、様々な事を考えて憂鬱な気持ちが増幅するかも知れない。

No.268

とは言え、高校にいても大した変わらない様な気もするが。


落ち込んでいる時は、何故か授業に集中する事が出来なくて、考え事ばかりが進んでいく。


そのため、わたしは真面目に授業を聞こうとしながらも、何時の間にか昨日あった出来事を思い出していた。

No.269

結論から言うと、わたしは昨日の電話でマサオと別れる事が出来なかった。


マサオに告げられた事がショックで、もう別れようと言う気力もなかったんだ。


マサオが別れを望んでいない以上、そんなに簡単に別れられるとは思っていないし。

No.270

しかし、これでハッキリした事が一つある。


わたしは、マサオではなくケイタさんを選んで正解だった。


至極、そう思う。


そう思うからこそ、やはりマサオとは別れなければならないとも思う。


わたしは、マサオといても幸せになれない。


それでも、わたしはマサオの事が好き。

No.271

しかし、マサオはわたしの事を好きではない。


恋愛は、片方が想っているだけではダメなんだ。


両方が想い合っていなければ、幸せになれる訳などない。


そうハッキリ分かった上で、改めて思った事がある。


わたしが、これから付き合っていきたいのはケイタさんだ。


そして、ケイタさんの事を好きになっていきたい。

No.272

そう思うからこそ、悲しいし辛いけどマサオと別れる方法を考えていた。


このままでは、二股になってしまってケイタさんに申し訳ないと思うから。


ただでさえ、昨日はマサオの事を想って泣いていて、ケイタさんの事を裏切っている様な気がしたし。


そこまで考えた時、わたしは昨日のケイタさんからの電話に出なかった事を思い出した。


その事で、ケイタさんに不快感を与えたかも知れない。


いや、今も不快な思いをさせているかも知れない。


すぐにでも、謝らなければと思った。

No.273

わたしは授業中なので、物音を立てない様に気を付けながら、制服のポケットに手を突っ込んだ。


そして、そこからリキッドグリーン色の携帯電話を取り出す。


電話帳を開くなり、ケイタさんの名前を呼び出した。


わたしは必死に文章を考えながら、ケイタさんへ送るメールを作成していく。


色々と考えたが、あまりメールの文章が長いと言い訳じみてきそうな気がする。

No.274

そのため、『昨日は早めに寝てしまって、電話に出る事が出来なくてスミマセン』とだけ書いて、わたしはケイタさんへメールを送信した。


それから、一分経ったか経っていないかというくらいに、わたしの携帯電話が震える。


携帯電話の画面を確認すると、ケイタさんからのメールが届いていた。


こんなに早く、ケイタさんから返事が来るとは思っていなかった。


そのため、わたしは物凄く驚いていた。

No.275

そして、もしかしたらケイタさんがわたしからの連絡を待っていて、携帯電話を常に自分の傍から離さない様にしていたのかも知れないとも思った。


もしも、この推測が当たっていたらと思うと、ケイタさんに対する申し訳ないという気持ちが更に高まっていく。


そのため、ケイタさんから届いたメールを見るのが怖かった。


先程から、なかなか開封出来ずにいる。


もしかしたら、わたしを責める言葉が書かれているかも知れない。


自業自得なのだが。

No.276

ケイタさんから電話が来た時に本当に寝ていたなら、恐らくこんな気持ちにはならなかったと思う。


今のわたしは、ケイタさんに対して後ろめたい事があるから、こんなに不安な気持ちになるのだろう。


しかし、ここでメールを無視してしまえば、更にケイタさんに対して不快感を抱かせてしまうと思う。


そう思ったから、わたしはケイタさんから届いたメールを開封した。

No.277

『そうだと思っていた。だから、別に気にしなくていいぞ!それより、今日も高校が終わった後に迎えに行ってもいいか?』


こう書かれていたケイタさんからのメールを見て、わたしはホッとした気持ちになった。


しかし、すぐにまた頭を悩ませる。


わたしも、ケイタさんに逢いたい。


そして、抱き締めて今の傷付いた心を癒して欲しいと思う。


しかし、今のわたしにはやらなければいけない事がある。

No.278

それは、マサオと一日でも早く別れる事。


そうしなければ、わたしはいつまでもマサオの事を気にして、前に進めないと思う。


勿論、二股になるのが嫌だという気持ちもあるが。


そのため、ケイタさんからの申し出は、今日は断ろうと思った。


マサオと別れた後に、幾らでも逢えばいい訳だし。


そう決めたわたしは、すぐに『今日は家の用事があるので、また今度お願いします』とケイタさんにメールを送信した。

No.279

ケイタさんに嘘を吐いている事を、少し心苦しくも思った。


しかし、今は仕方がないと自分に言い聞かせる。


そして、今度は電話帳から、マサオの名前を呼び出した。


そのまま、『今日、昨日の事をもう一度話したい』と素早くメールの本文に入力していく。


それを、わたしの心に迷いが生じる前に、素早く送信した。


マサオからの返事は、意外とすぐに来た。

No.280

わたしがメールを送ってから、恐らく五分も経っていないだろう。


こんなに早くメールを返せるなら、今までもそうしてくれたら良かったのに。


そしたら、わたしはマサオと別れるのに、こんなに必死にならなかったかも知れない。


そもそも、別れようとすら考えなかったと思う。


その様な事を、わたしは頭の片隅で思った。

No.281

その直後に、たまたま今日のマサオは時間に余裕があったため、すぐにメールを返信出来ただけなのかも知れないと思ったりもしたが。


マサオからのメールには、『分かった。じゃあ、俺の家に来て』と書かれていた。


わたしは、少し戸惑った。


ケイタさんと付き合っているのに、マサオの家に行っていいのだろうか。


そう思ったので、『他の場所じゃダメなの?』と書いたメールを作成して、わたしはマサオに返信した。


すると、『ダメ。俺の家じゃなきゃ、リナの話は聞かない』と書かれたメールが、すぐにマサオから返ってきた。

No.282

そのため、わたしは諦めてマサオの家に行く事にした。


メールに『分かった。高校が終わったら行く』と書いて、マサオに返信した。


それから、わたしは制服のポケットに携帯電話こそ仕舞ったが、やはり授業は耳に入ってこなかった。


というよりも、もう真面目に授業を聞こうという気すら起こらない。


高校が終わった後のマサオとの話し合いの事で頭がいっぱいだった。


まず、マサオに何と言って切り出そう。


そして、マサオに何を言うべきか。

No.283

恐らく、昨日も言った事だし、マサオはわたしが何を言いたいのか分かっていると思う。


そのため、わたしが言いだす前に話を遮ってくるかも知れない。


そして、また昨日みたいに自分に都合の良い話を始めるかも知れない。


それは、出来れば避けたい。


先に口を開かれたら、わたしの性格的に言いたい事を言いにくくなると思うから。

No.284

マサオのペースに、飲み込まれない様にしなければいけない。


マサオが話し出すよりも先に、わたしが先に口を開かなくては。


マサオに何を言われても、ちゃんと『別れたい』と言う事を伝えなければ。


そんな事を考えながら授業を受けているうちに、何時の間にか放課後を迎えていた。

No.285

帰りのホームルームが終わると、わたしは騒がしい教室を飛び出して、負けず劣らず騒がしい廊下を小走りで抜け、下駄箱で上履きから外履きへと履き替える。


そして、高校という空間から抜け出した。


その足で、真っ直ぐマサオの家を目指す。


マサオの家には行き慣れていないが、それでも何度か行った事がある。


そのため、マサオの家に行くまでの景色も、少し見慣れてきていた。


しかし、この景色を見るのも、今日で最後にしたいと思った。


もう今日で、マサオの家に行くのは最後にしたいから。

No.286

そんな事を思っているうちに、目的地であるマサオの住んでいるマンションへと到着した。


わたしは、チャイムに手を伸ばす。


しかし、緊張して手が震える。


わたしは手の震えを抑えるために、チャイムに伸ばしていた手を引っ込めた。


そして、もう片方の手でギュッと握り締める。


手の震えが治まった頃、今度こそチャイムを押そうと手を伸ばす。

No.287

「リナ」


ふいに声を掛けられ、驚いたわたしは再びチャイムへと伸ばした手を引っ込める。


そして、声がした方を振り返ると、そこには高校の制服に身を包み、通学用鞄をダルそうに肩に担いでいるマサオがいた。

No.288

「リナ、入って」


マサオが家のドアを開けると、ドアを押さえたまま、わたしの方へ目をやる。


いつも、マサオは自分が先に家の中に入っていって、わたしのためにドアを押さえたりなどしないのに。


今日、いつもと違う行動を取るのは、わたしを逃がさない様にするためなのだろうか。


心配などしなくても、わたしは話し合いに来た訳だけだから、逃げたりなどしないのに。

No.289

そもそも、話し合いを持ち掛けたのも、マサオではなくわたしだ。


そのわたしが、逃げる訳などない。


その様な事を思いながら、わたしは玄関のドアを潜った。


すると、マサオは自分も家の中に入り、玄関のドアを閉める。


そして、わたし達は玄関で靴を脱ぐと、マサオの部屋へと向かう。


その間、わたし達の間には、相変わらず会話というモノがなかった。

No.290

部屋へ着くと、マサオがベッドに腰掛けた瞬間、わたしは立ったまま口を開く。


「マサオ。早速、昨日の話の続きだけど…」


「リナ、取り敢えず座って」


「やっぱり、わたしはマサオと別れたい!」


話している最中に、マサオが座る様に進めてきたが、それを無視してわたしは続けた。

No.291

「リナ…」


いつもの口調とは違い、急に叫ぶ様に言ったわたしを見て、マサオは呆然としている。


しかし、すぐにいつもの少し冷たそうな表情に戻ったマサオは、真っ直ぐとわたしの方を見据えて口を開いた。


「昨日も言ったけど、俺はリナと別れるつもりはない」


「どうして…?」


「それも、昨日も言ったよ。もう一度、聞きたいの?」


確かに、どうしてわたしと別れられないのか、その理由をマサオは昨日の電話で話していた。

No.292

マサオがわたしと別れられないのは、他の女の子達に『彼女になりたい』と言わせないためらしい。


しかし、今日のわたしが聞きたいのは、その様な言葉ではなかった。


「確かに、わたしと別れられない理由は聞いたよ。だけど、そんなの実際にわたしと付き合わなくたって、彼女がいるって口で言えばいいだけじゃない?」


「リナの言う事は、確かにその通りだと思う」


「じゃあ…」


納得した様子のマサオに、ついわたしは嬉しそうな声を出す。

No.293

「だけど、実際に付き合っていないとリアリティがないんだと思う」


「リアリティ?」


「うん。俺に彼女がいるって言っても、みんな信じないんだよね」


鸚鵡返しに呟いたわたしに、マサオは頷きながら話している。


「大抵の娘は、俺に彼女がいるっていうと誰とかどんな人とか訊いてくるんだ」

No.294

自分が彼女になれないと知っても、彼女になれる人がどの様な人なのか気になるのは、どうしてだろう。


彼女が自分よりも可愛かったら、自分は彼女には敵わないと諦めるためだろうか。


それとも、自分と比較して彼女が自分よりも可愛くなかったら、自分も彼女になれるかも知れないと自信を持つためだろうか。


恐らく、後者なのだと思う。


人間という生き物は、自分が他人よりも上だと思いたい生き物だから。

No.295

「その時に、実際に彼女がいたらどんな人か言いやすいし、名前も言えるからリアリティが出てくるだろ?」


「確かに、その通りだと思う」


飽くまでも、理論上はでの話だが。


「だろ?」


マサオが同意を求めてくるが、わたしは今度は首を横に振った。


「でも…」

No.296

「何だ?」


マサオが訝しむ様な表情で、わたしの方を見る。


「わたしが彼女だと言っても、女の子達は諦めないと思うよ」


わたしは、確信を持ってマサオに告げる。


「何で?」


本当に分からないという様な表情で、マサオはわたしの方をマジマジと見てくる。

No.297

「人間って、自分が相手よりも上に見られたい生き物でしょう?」


「…嗚呼」


急に、どうしてその様な話を始めるのだろうという顔をしながらも、マサオはわたしの言葉に頷いた。


「だから、わたしが彼女でも女の子達が諦める訳なんてないんだよ」


「あ…」


わたしの言いたい事が分かったらしいマサオが、口を開けたままわたしの方を見詰める。

No.298

その時、いきなり女性の歌が流れ出した。


わたしは少しビックリしながら、マサオの方を見詰める。


女性の歌は、マサオの方から聴こえてきた気がしたんだ。


それに、これは聴き覚えのある歌だった。


マサオは困った様な表情を浮かべながら、わたしと絨毯を交互に見ている。


その間、まだ女性の歌は流れ続けていた。

No.299

「電話じゃないの?出れば?」


淡々とした表情で、わたしはマサオに言う。


そう、急に流れ出した女性の歌は、マサオの携帯電話の着信音に設定された着うただったんだ。


「…あ、嗚呼」


居心地悪そうに頷きながら、マサオは制服のポケットから携帯電話を取り出した。

No.300

そして、携帯電話の画面を見て少し戸惑った様な顔をしたが、結局は通話ボタンを押して耳に当てた。


「……」


マサオは黙ったまま、電話相手の様子を窺っている。


『もしもし』という言葉すら言わないとは、恐らく電話に出たくない相手だったのだろう。


もしかしたら、マサオは相手に彼女にして欲しいと言われているのかも知れない。


そうやって、実際に言われているからこそ、わたしを手放すまいとマサオは必死になっていたのかも知れない。


今、彼女と別れたという事実を作れば、今まで以上に彼女にして欲しいと言われる筈だから。

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