Happy Birthday

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2013/11/14 17:06(更新日時)

誰にも望まれずに


誕生した少女が


紡いでいく恋物語です。

No.1720624 (スレ作成日時)

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No.201

「乾杯!」


ケイタさんが言うと、わたし達はグラスとコーヒーカップを、カチンと鳴らした。


そして、わたしがオレンジジュースを少し飲んでテーブルに置くと、ケイタさんがスプーンを手渡してきた。


「食べてみろよ」


「はい」


わたしは頷くと、オムライスにスプーンを入れた。

No.202

そして、それを口まで運ぶ。


口の中に、卵のふんわりした感触と、ケチャップの味が広がる。


「美味しいです」


「良かった!」


わたしがオムライスの感想を述べると、ケイタさんは満足気に笑う。


そして、自分もスプーンを手に取り、オムライスを食べ始めた。

No.203

「なぁ、リナ」


オムライスを食べながら、ケイタさんがわたしに声を掛けてきた。


「何ですか?」


わたしが振り返ると、ケイタさんはポケットの中に手を入れ、その中を弄り出す。


その様子を黙って見詰めていると、ケイタさんはポケットの中からブラックの携帯電話を取り出した。


そして、わたしの前に携帯電話を掲げて見せながら、ケイタさんは笑みを浮かべる。

No.204

「交換しようぜ」


「え?携帯ですか…?」


わたしは、戸惑った。


携帯電話には、個人情報とかが含まれている。


それなのに、そう簡単に交換しても良いのだろうか。


いや、良くないだろう。

No.205

どうにか、断らなくては。


そう必死に考えていると、ケイタさんが噴き出した様に笑い出した。


「はは。携帯じゃなくて、番号とアドレスだよ」


「え?…あ、成程」


普通に考えれば、それが普通だ。


普通、携帯と携帯を交換するなんて有り得ない。

No.206

しかし、わたしは友達がいないから、携帯の番号やアドレスを交換する機会がない。


そんな風だから、携帯を掲げて見せられて『交換しよう』などと言われたら、携帯と携帯を交換するのだと変な勘違いをしてしまったんだ。


何だか、恥ずかしい。


変な娘だと、ケイタさんに思われてしまっただろうか。


そう思って、ケイタさんから目を逸らしながら、黙々とオムライスを口に運ぶ。

No.207

「リナ」


ケイタさんが私の名前を呼ぶが、恥ずかしくてケイタさんの方を見れないわたしは、黙ってオムライスを食べ続ける。


「リナ」


懲りずに、わたしの名前を呼んでくるケイタさんの声を聞きながら、流石にこのまま無視し続けるのは良くないかと思い始める。


その時、急にわたしの肩が抱き寄せられた。

No.208

そして、気付くと目の前にはケイタさんの顔。


一瞬、何が起きたのか分からなかった。


しかし、すぐにわたしは肩を抱き寄せられて、ケイタさんの方を向かせられたのだという事に気付く。


わたしは、恥ずかしいから俯こうと思った。


しかし、すぐにケイタさんに肩を掴まれたので、そう出来なかった。


その状態のまま、ケイタさんは口を開く。

No.209

「リナ、笑ったりしてゴメン」


「…はい」


「バカにした訳じゃなくて、リナって面白いなぁって思ってさ…」


「面白いですか…?」


「嗚呼、面白いよ。リナといると面白い。だから、一緒にいるんだ」

No.210

ケイタさんがくれた言葉が、わたしは素直に嬉しかった。


わたしといる事で、面白いと思っている人など、今までいないと思っていたから。


わたしといても面白くないから、誰も友達になろうとしないし、マサオも長く一緒にいようとしなかったのだと思う。

No.211

しかし、ケイタさんは他の人とは違う。


わたしと一緒にいて、面白いと言ってくれた。


それだけで、わたしはケイタさんと付き合って良かったと思った。


そして、早くマサオと別れようとも思った。

No.212

「リナ、携帯の番号とアドレス交換しようぜ」


「はい」


今度は、分かりやすく言ってくれたケイタさんの言葉に、わたしはすぐに頷いた。


そして、わたしは制服のポケットを弄り、急いでリキッドグリーンの携帯電話を取り出す。

No.213

「赤外線で交換しようぜ」


「赤外線?」


「ほら、貸してみろ」


「…はい」

No.214

わたしが携帯電話を手渡すと、ケイタさんは手慣れた様に二台の携帯電話を操作し、それらを向かい合わせた。


「ほら、これが俺の番号とアドレスだから」


そう言って、ケイタさんに返された携帯電話の画面を見ると、ケイタさんの携帯の番号とアドレスらしきものが、シッカリと登録されていた。

No.215

「スゴイ…」


思わず、わたしは感嘆の声を漏らす。


携帯電話を向かい合わせるだけで、携帯電話の番号とアドレスを交換出来るとは思っていなかった。


現に、わたしとお姉ちゃんが携帯電話の番号とアドレスを交換した時は、メールで送り合って交換した様な気がする。

No.216

「今の携帯って、本当にスゴイよな」


そう言って、ケイタさんが微笑んだかと思うと、わたしの頭に手を伸ばしてきた。


「俺達、こうして今日から恋人同士になった訳だし、いつでも連絡してこいな」


「はい」


ケイタさんの言葉に、わたしは自然と笑顔で頷いていた。


きっと、嬉しかったんだ。


こうして、ケイタさんと連絡先を交換し合った事で、そう簡単には切れない繋がりを持てた事が。

No.217

オムライスを食べ終わると、ケイタさんはわたしを家の傍まで送ってくれた。


本当は、ケイタさんは家まで送ると言ってくれた。


しかし、わたしがそれを拒否した。


その理由は、やはりケイタさんと一緒にいる時に、家族と鉢合わせするのを避けたいためだ。


特に、ケイタさんは顔立ちが整っていて、他の人よりも余計に目立つ。


見掛けたり擦れ違ったりしたら、振り返らない人などいないのではないかという程に。

No.218

そのため、絶対にケイタさんを家に近付けない様にしなくてはと思った。


そんな事を思いながら家の中に入ると、わたしはすぐに自分の部屋へと足を向ける。


そして、制服を脱いで私服に着替えると、自分の携帯電話と睨めっこしていた。


本当は、今すぐにでも交換したばかりのアドレスを使って、ケイタさんへメールを送りたい。


しかし、その前にわたしにはやらなくてはならない事があった。

No.219

一応、まだわたしとマサオは付き合っている事になっている。


しかし、わたしはケイタさんと付き合う事を選んだ。


そして、もう既に付き合っている。


後戻りは出来ない。


そのため、わたしはマサオと別れなければいけない。


このまま、マサオと別れずにケイタさんと付き合い続ければ、二股になってしまうから。

No.220

わたしは、どうマサオに切り出せばいいのかを悩んでいた。


マサオは、わたしの初めての彼氏ではない。


しかし、初めての彼氏に別れを切り出すのかというくらい、わたしは物凄く悩んでいた。


それも、その筈だ。


今まで、わたしは彼氏との別れを何度か経験してきたが、自分から別れを一度も切り出した事がない。


いつも別れを切り出すのは、彼氏の方だったんだ。

No.221

そのため、どうやってマサオと別れればいいのか分からなかった。


ただ単純に、メールに『別れよう』とだけ書いて送ってもいいのか。


それとも、メールに『話がある』と書いて送って、マサオに逢った時に『別れよう』と切り出すべきなのか。


友達がいれば、この様な事も相談出来るのだろう。


しかし、わたしには友達などいない。


唯一いた友達のケイタさんとは、恋人同士になってしまった訳だし。

No.222

恋人同士だと、この様な事を相談して良いのか分からない。


もしかしたら、他の男と別れる前に付き合ったという事で気を悪くするかも知れない。


そう思ったので、ケイタさんには黙っておこうと思った。


そうすると、他に相談出来る相手と言ったら、やはり一人しかいない。


お姉ちゃんだ。

No.223

美人で勉強も出来るお姉ちゃんなら、恐らく的確なアドバイスをくれるだろう。


しかし、お姉ちゃんにだけは頼りたくないと思った。


昨日、お姉ちゃんは彼氏から婚約指輪をもらったというのに、妹のわたしは彼氏と上手くいかなくて別れるのだと同情されたくなかったんだ。


そのため、やはり自分で考えるしかないという結論に至る。


取り敢えず、電話してみよう。

No.224

電話で話しているうちに、別れ話を切り出せるかも知れないし。


そう思ったが、すぐにわたしは考え直した。


電話だと、相手の声を聞きながら直接言わなければならないので、恐らくメールよりも別れ話を切り出しにくいと思う。


特に、わたしの様に優純不断なタイプなら、尚更だと思う。


そのため、もしかしたら言い出せないままで終わるかも知れない。


それでは、意味がない。


そう思ったわたしは、マサオにメールで別れ話を告げる事にした。

No.225

最近、マサオにメールを送っても返ってこない事が多い。


忙しいからなのか、意図的に無視しているからなのかは知らないが。


マサオの気持ちが、わたしに向いていない事は間違いないと思う。


そのため、わたしが『別れよう』という言葉を告げれば、マサオとの関係は簡単に終わると思う。


この時のわたしは、そう信じて疑わなかった。

No.226

そのため、『別れよう』とメールで打つのに、涙を堪えながら必死になっていた。


そして、メールを作成した後も、震える指で必死に送信ボタンを押した。


メールを送った瞬間、わたしは達成感に浸っていた。


ようやく、マサオと別れられたんだと。


マサオからの返事は、こないと確信していたから。


悲しくないと言えば嘘になるし、涙も次々と零れてきたけど、これで良かったのだと自分に言い聞かせる。

No.227

わたしは、マサオと付き合い続けているよりも、ケイタさんといる方が幸せになれる筈なのだから。


そんな事を考えながら、ベッドに寝そべって涙を拭っていた時、わたしの携帯電話の着信音が鳴った。


「え?」


もしかして、マサオなのだろうか。


そんな事はないと思う反面、わたしは少し期待していたと思う。

No.228

恐る恐る、携帯電話の画面を見ると、ケイタさんからの着信である事が分かった。


その事に、スゴくガッカリしてしまった。


それで、分かってしまった。


わたしは、まだマサオの事がスゴく好きなんだ。


そのため、わたしは『別れたくない』とマサオに言ってもらえる事を、心のドコかで期待していたと思う。


そんな事は、有り得ないと分かっているのに。

No.229

どうして、期待などしてしまうのだろう。


マサオの事を嫌いになりたい。


それなのに、どうして嫌いになれないのだろう。


ケイタさんの事を好きになりたい。


それなのに、どうしてわたしが好きなのはマサオなのだろう。

No.230

恋をするって、本当に苦しい。


自分の気持ちなのに、こんなに思い通りにいかないのだから。


恋をするって、本当に難しい。


嫌になるくらいに。

No.231

結局、ケイタさんからの電話に出ずに泣いていたわたしは、何時の間にか泣き疲れて眠っていた。


そんなわたしが目を覚ましたのは、夜の12時を過ぎる直前に携帯電話の着信音が鳴ったからだった。


ケイタさんだろうか。


悪気はなかったが、先程は電話を無視してしまった。


そのため、謝らなければと思いながら、わたしは眠たい目を擦りながら枕元にある携帯電話に手を伸ばした。


ところが、携帯電話の画面を覗き込むと、予想外の名前が表示されていた。

No.232

マサオだ。


その名前を見て、わたしは一気に目が覚めた。


「もしもし…!?」


気が付くと、わたしは急いで通話ボタンを押していた。


一秒でも早く、マサオの声が聞きたかったんだ。

No.233

それくらい、わたしはマサオの事が好きだったのだと思う。


「…リナ」


本当は、そんなに久し振りでもないが、物凄く久し振りに名前を呼ばれた様な気がして嬉しかった。


そして、もっと名前を呼んで欲しいと思った。


しかし、どうしてマサオが電話をしてきたかの方が気になった。

No.234

「マサオ、どうしたの…?」


わたしは、緊張しながら訊ねる。


しかし、やはり心のドコかでは期待していた。


「リナ、さっきのメールの事だけど…」


早速、わたしが送ったメールの事に、マサオは触れてきた。


これは、期待しても良いのだろうか。

No.235

もしかしたら、『うん、別れよう』などと同意の返事をするために、わざわざ電話をしてきた可能性もある。


しかし、それ以上に期待する気持ちの方が、今のわたしは強かった。


「俺は…」


「…うん」


わたしは、緊張した面持ちで頷きながら、マサオの次の言葉を待つ。

No.236

「リナと別れるつもりはない」


「え…?」


一瞬、わたしは物凄く驚いた。


しかし、その次の瞬間、わたしは嬉しさに酔い痴れていた。


その言葉を、どれだけ待ったか。


わたしと別れたくないという事は、ちゃんとマサオもわたしを好きでいてくれたという事なのだろう。


それが、どんなに嬉しい事だろうと思うと、わたしは自然と涙が溢れてきた。

No.237

しかし、次にマサオが発した言葉は、わたしが予想もしない言葉だった。


「俺、リナにフラれるなんて納得いかない」


「え…?」


一体、どういう意味なのだろう。


わたしは、マサオに言われた言葉の意味を、すぐには理解する事が出来なかった。

No.238

「そういう訳だから、まだ俺とリナは別れていないから」


もしも、マサオが別れたくない理由を聞いていなかったら、恐らくわたしはこの言葉で喜んでいただろう。


しかし、今のわたしは素直に喜ぶ事が出来なかった。


マサオの言葉の意味を、徐々に理解してきたんだ。


マサオは、わたしにフラれるという事が、どうも納得出来ないらしい。


恐らく、わたしなんかにフラれたら、自分のプライドが傷付くと思っているのだろう。

No.239

要するに、わたしの事を好きだから別れたくないとは、全く思っていないという事だ。


そう分かっていても、直接本人に確かめてみないと気が済まないのが人間の性。


気が付くと、わたしは声を強張らせながら、マサオに質問していた。


「それって…、わたしの事を好きだから別れたくないとか…、そういう訳ではないんだよね?」


「嗚呼」

No.240

「…そっか」


マサオが即答した事に、わたしは物凄く落胆した。


躊躇いすらしてくれなかった事で、マサオの気持ちが全くわたしにない事が、痛い程に伝わってくる。


「じゃあ、マサオはわたしの事を、最初から好きじゃなかったの…?」


「……」


マサオが黙り込んだ事で、わたしの目尻に涙の粒が浮かんだ。


答えられないという事は、肯定したという事だから。

No.241

流石のマサオも、自分から好きと言って付き合った以上、先程みたいに即答する事は出来なかったのだろう。


そう判断したわたしは、次の質問に移る。


「どうして、マサオはわたしと付き合ったの…?」


「……」


「……」


「……」

No.242

なかなか口を開かないマサオの言葉を、わたしは無言で待っていた。


しかし、とうとう待ち切れなくなってきた。


「答えて…」


「…分かった。話すよ」


涙交じりに吐き出した私の言葉に、マサオが決心した様に頷いた。

No.243

もしかしたら、『うん、別れよう』などと同意の返事をするために、わざわざ電話をしてきた可能性もある。


しかし、それ以上に期待する気持ちの方が、今のわたしは強かった。


「俺は…」


「…うん」


わたしは、緊張した面持ちで頷きながら、マサオの次の言葉を待つ。

No.244

※申し訳ありません。

No.243は、間違えて過去に掲載したものも書き込みしてしまったので、飛ばして読んで下さい。

No.245

「リナ」


わたしの事を、最初から好きではなかったと分かっても、マサオに名前を呼ばれると嬉しく思う。


そんな自分に嫌悪感を抱きながら、わたしはマサオの言葉の続きを促す。


「何…?」


「俺に、他に女がいたって知っていた?」


「え…?」

No.246

信じられない。


マサオに、わたしの他にも付き合っている女の人がいたなんて、全く知らなかった。


これが、浮気というやつだろうか。


それとも、二股というやつだろうか。


一体、いつからだろう。


わたしの頭の中を、様々な疑問が駆け巡った。

No.247

「その様子だと、知らなかったみたいだね?」


わたしの事を見下す様に、マサオが言う。


「いつからだと思う?」


「……」


「最初からだよ」


「……」

No.248

「多い時は、一度に10人くらいいた」


ショックで何も言えないわたしに、マサオが一方的に話し掛けてくる。


そこには、残酷な言葉ばかりが並んでいた。


未だに、信じられない。


しかし、全て真実なのだろう。


その真実を聞けば聞く程、わたしの心は傷付き、溢れる涙の量は増えていった。

No.249

しかし、わたしが質問した事には、まだマサオは答えていない。


その答えを聞いた時、わたしは今以上に悲しむのだろうか。


そして、泣くのだろうか。


そんな不安が、頭の中を過ぎる。


しかし、このまま聞かない訳にもいかない。


今、マサオの口から聞かなければ、この先も気になって前に進めないと思うんだ。

No.250


「それで…、どうしてマサオはわたしと付き合ったの…?」


一向に言おうとしないマサオに、わたしは急かす様に再び訊ねた。


すると、ひたすら一方的に口を開いて話を続けていたマサオが、一瞬だけ黙った。


そして、先程も聞いた事を再び口にする。


「…分かった。話すよ」


わたしは無言で、マサオが話し始めるのを待つ。

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