Happy Birthday

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2013/11/14 17:06(更新日時)

誰にも望まれずに


誕生した少女が


紡いでいく恋物語です。

No.1720624 (スレ作成日時)

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No.51

この様にして、わたしはケイタさんを案内する事を、家へ帰るのが遅くなる言い訳にしようと考えた。


そのため、わたしはいつになく、にこやかにケイタに答えた。


「いいですよ」


「おう、助かる!ありがとな」


何も知らないケイタさんは、嬉しそうに笑った。

No.52

「取り敢えず、遊ぶ場所とか教えてくれよ!」


ケイタさんが、辺りを見回しながら言った。


その言葉に、わたしは戸惑った。


遊ぶ場所と言われても、どの様な場所を指すのか分からないからだ。


わたしには、一緒に何処かへ遊びに行く友達などいない。


マサオや家族とも、一緒に何処かへ遊びに行ったりする事はない。

No.53

マサオや家族とも、一緒に何処かへ遊びに行ったりする事はない。


そのため、わたしは何処かへ遊びに行くという行動をしない。


もしかしたら、今まで一度も何処かへ遊びに行くという行動をした事がないかも知れないくらいだ。


そんなわたしに、遊ぶための場所が何処かなど分かる訳がない。


正直、わたしが訊きたいくらいだ。


至極、そう思った。

No.54

「どうした?」


急に黙り込んだわたしの顔を、ケイタさんが不思議そうに覗き込んでくる。


その行動に、再びわたしは戸惑う事となる。


ケイタさんに対して、どう説明すればいいのか分からないからだ。


恐らく、わたしは自分が思っている事を説明するのが不得意なのだと思う。


この様な調子だから、マサオにも言いたい事を言えないままなのかも知れない。


勿論、嫌われるのが怖いというのもあるが。

No.55

兎に角、今はケイタさんに何か言葉を返さなくてはいけない。


人間というものは、沈黙を守られるという行動が最も嫌いだと思うから。


「あの、わたしは…」


「あ?何だ?」


説明を始めようと口を開いたわたしに、ケイタさんが耳を傾ける。

No.56

「遊ぶという事が、どういう事なのか分からないのです」


「あ?何だそれ?」


「要するに、わたしは遊びに行くという事をした事がないのです」


「何でだ?」


「ええと、それは…」


出来れば、言いたくない。

No.57

しかし、言わなければケイタさんは、いつまで経っても質問してくるのだろう。


それも、嫌だ。


寧ろ、その方が嫌かも知れない。


そう思ったわたしは、言う覚悟を決めた。


「わたしには、一緒に遊びに行く友達がいないのです」


わたしは、恥ずかしかった。

No.58

高校生にもなって、一緒に遊びに行く友達の一人もいない人など、恐らくあまりいないと思うから。


そんなわたしを、ケイタさんは馬鹿にする様に嘲笑うのだろう。


そう考えると、今すぐわたしはこの場から逃げ出したくなった。


そして、実際に走って逃げ出そうとした。


しかし、そんなわたしの腕をケイタさんが掴む。

No.59

「おい、何でいきなり走り出そうとするんだ?」


「わたし、分かっていますから」


「あ?分かっているって何がだ?」


「友達がいないわたしを、ケイタさんも嘲笑うのでしょう?」


「何でだ?」


ケイタさんは、意味が分からないという様な表情を浮かべる。


これは、演技だ。

No.60

今、本当は心の中で、ケイタさんはわたしを嘲笑っているに違いない。


友達が一人もいないわたしを、惨めだと蔑んでいるに違いない。


今まで、他の人達もそうだったのだから。


そう思うと、止まらなかった。


「みんな、そうだったんです。友達がいないと言うと、みんな馬鹿にする様に笑って離れて行ったんです」


わたしの言葉に、ケイタさんの表情が険しくなる。

No.61

やはり、そうだ。


ケイタさんも、みんなと同じだ。


みんなと同じ様に、心の中で嘲笑っていたのだろう。


そして、わたしに図星をつかれたから、この様に表情を険しくしているのだろう。


「リナは、俺も同じだと思うのか?」

No.62

「え?」


「俺も、他の奴等と同じだと思うのか?」


ケイタさんの言葉に、わたしは何も言い返せなくなる。


どう答えればいいのか分からない。


ケイタさんも、同じだと思っている。


しかし、それを面と向かって本人に言っていいものだろうか。

No.63

そう考えると、何も言えなくなった。


そんなわたしの方を見ながら、ケイタさんが口を開く。


「俺、まだ何も言ってないぞ?」


「はい」


「何も言う前から、他の奴等と同じだって決め付けるな」


「…スミマセン」

No.64

申し訳なさそうな表情を浮かべると、わたしはケイタさんに頭を下げた。


ケイタさんも、みんなと同じだと思う。


しかし、それを口にしてはいけなかった。


この世の中は、建前ばかりで成り立っている。


人の日常会話の中に、本音なんて数少ないと思う。


本音は、底に沈めたままで口にしない方がいい。


その方が、上手く生きていけるのだと思う。

No.65

「リナ」


「はい」


「俺は、別に嘲笑ったりしないぞ」


「え?」


「友達がいないなら、俺がなってやる!」

No.66

そう言うと、ケイタさんはニッコリと微笑んだ。


正直、わたしはとても驚いていた。


ケイタさんにも、みんなと同様に嘲笑われると思っていた。


しかし、実際は違った。


嘲笑うどころか、友達になってくれると言った。


その事に、わたしは心の底から驚いていた。


しかし、それと同時に嬉しさの様なものも込み上げてきていた。

No.67

もしかしたら、建前で言っているだけなのかも知れないのに。


友達になってくれると言ったまま、ここで別れた後は二度と逢う事がないかも知れないのに。


そう分かっていても、そう簡単に嬉しさは抑えられるものではない。


「いいんですか?」


そうケイタさんに問い掛けるわたしの声は、どこかいつもよりもトーンが高めになっていた様な気がする。

No.68

「嗚呼、よろしくな!」


にこやかな笑みを浮かべたまま、ケイタさんはわたしの前に片手を差し出してきた。


その行動が、これは建前で言っている言葉ではないと思わせてくれる。


至極、それを嬉しく思った。

No.69

「こちらこそ、よろしくお願いします」


わたしは少し頭を垂れながら、ケイタさんの手を握った。


これは、わたしが人と交わした初めての握手だった。


そして、これが初めてわたしに友達が出来た瞬間だった。

No.70

「なぁ、カラオケとか行かないか?」


唐突に、ケイタさんが言った。


「カラオケですか?」


わたしは、ケイタさんの言葉を鸚鵡返しに呟く。


何故、カラオケなのだろうと思いながら。


「嗚呼!」


躊躇いなく頷いたケイタさんを見て、わたしはヒドく戸惑う。

No.71

「あの…」


「あ?何だ?」


「どうして、カラオケなんですか?」


「リナが遊びに行った事ないって言うから、これから俺が遊べる場所に連れて行ってやろうと思ってな!」

No.72

それで、カラオケなのかと納得はしたが、あまり気は進まなかった。


「…わたし、カラオケという場所に行った事がないんです」


「あ?だから、今から行かないか?」


「ええと…」


行ってみたい気はする。


しかし、やはり行きたくないとも思う。

No.73


わたしは、歌が上手くない。


そもそも、わたしは声が小さいから歌を歌ったとしても、人には聴こえていないのかも知れない。


中学校の時の音楽の時間、いつも歌のテストでは最低点を付けられていた。


そのため、高校では音楽という教科が必修ではなく選択教科になっていて、ホッとしたくらいだ。


「もしかして、上手く歌える自信がないのか?」

No.74

わたしが思っている事を分かってしまったらしく、そうケイタさんが訊ねてきた。


「…はい」


頷いたわたしの手を、ケイタさんが握ってきた。


「え?」


「大丈夫、行こうぜ!」


戸惑っているわたしの手を引きながら、ケイタさんは歩き出した。わたしが思っている事を分かってしまったらしく、そうケイタさんが訊ねてきた。


「…はい」


頷いたわたしの手を、ケイタさんが握ってきた。


「え?」


「大丈夫、行こうぜ!」


戸惑っているわたしの手を引きながら、ケイタさんは歩き出した。

No.75

申し訳ありません。


No.74の内容は、同じ事を二回も書いてしまいました。


新たに書き直しをしますので、No.74は飛ばして読んで下さい。

No.76

わたしが思っている事を分かってしまったらしく、そうケイタさんが訊ねてきた。


「…はい」


頷いたわたしの手を、ケイタさんが握ってきた。


「え?」


「大丈夫、行こうぜ!」


戸惑っているわたしの手を引きながら、ケイタさんは歩き出した。

No.77

「行こうって…」


「カラオケ!」


「だから、わたしは歌が…」


わたしは、その場に立ち止まろうとする。


しかし、ケイタさんの力の方が強い。


そのため、わたしは引っ張られる形で、ケイタさんの後を歩く形になっていた。


しかし、急にケイタさんは急に立ち止まった。

No.78

そして、わたしの目を真っ直ぐに見てきた。


「歌ってみなきゃ分からないだろ?」


歌ってみなくても分かる。


わたしは、歌が上手くない。


わたしの歌を聴いたら、ケイタさんもガッカリするに違いない。

No.79

「それに、歌は上手いか下手かじゃないぞ!」


「え?」


「自分が楽しむために歌うものだ!」


「楽しむためですか?」


「嗚呼。人生、楽しまなきゃ損だろ?」


そうなのかも知れない。


泣いていても笑っていても、滞りなく時は過ぎていくものだ。

No.80

寸分の狂いもなく、どの様な人の時も平等に。


それなら、人生は楽しんだ方が得なのかも知れない。


しかし、どうしたら人生を楽しく過ごせるのか、わたしには分からない。


学校では、教えてくれなかったから。


「カラオケ、行こうぜ!」


「カラオケに行ったら、人生が楽しくなりますか?」

No.81

「リナ次第だ」


「わたし次第ですか?」


わたし次第とは、どの様な意味なのだろうか。


そう疑問に思いながら、わたしはケイタさんの答えを待つ。


「何でも、楽しもうと思えば楽しめるもんだ!」


「楽しもうと思えばですか?」

No.82

「嗚呼。カラオケも、上手く歌う事よりも、リナが楽しむ事を優先するんだ!」


「わたしが…」


「人の目を気にして、何かしても楽しくないだろ?」


確かに、そうだ。


ケイタさんの言う通り、人目を気にして何かしても楽しくなどない。


ただ単に、プレッシャーばかり感じる。

No.83

上手くやらなければとか、失敗してはいけないとかばかり考えて、常に緊張して不安ばかり胸に抱いている。


それは、正にわたしの人生そのものを表している様だ。


わたしは、いつも常に人目ばかり気にしてきた。


自分が楽しむ事など、考えた事がない様に思う。


「カラオケ、行こうぜ!俺の目なんか気にしないで、リナが楽しめばいいから」


カラオケに行ったとして、果たしてわたしは楽しめるのだろうか。

No.84

楽しみ方を知らないわたしには、考えても分からなかった。


しかし、先程よりも興味は湧いてきていた。


人生、楽しまなきゃ損だというケイタさんの言葉に、妙に共感を覚えてしまったから。


それに、ここでカラオケに行く事を拒否すれば、ケイタさんと一緒にいる理由がなくなる。


今日は、家へ帰りたくない。


そのため、まだケイタさんと一緒にいたい。

No.85

腹黒いわたしは、そう思う。


そのため、わたしは腹を括った。


「…カラオケ、行ってみたいです」


わたしの手を握ったままのケイタさんの手を握り返しながら、わたしはそう口にした。


「やっと、行く気になったか!」


手を握っていない方の手で、わたしの肩を叩きながら、ケイタさんがニッコリと笑った。

No.86

「そうと決まったら、サッサと行こうぜ!」


ケイタさんは、再びわたしの手を引きながら歩き出した。


今度は、わたしも大人しくケイタさんの後をついて歩いていた。


しかし、すぐにケイタさんは立ち止まる。


「どうしたんですか?」


不思議に思いながら、わたしはケイタさんに問い掛ける。

No.87

「そう言えば、カラオケってドコにあるんだ?」


「え?」


「ほら、俺って引っ越してきたばかりだから、そう言えばドコにあるんだと思って…」


どうやら、カラオケボックスがある場所を知らないらしい。


わたしに、この辺りの案内を頼んできたくらいだから、考えてみれば当然なのだが。


カラオケボックスの場所が分からないのに、カラオケに行こうと誘ってきたケイタさんに、何だか少し笑いが込み上げてきた。

No.88

「お、初めて笑ったな!」


クスリと小さな笑みを浮かべたわたしを、ケイタさんが嬉しそうな目で見てくる。


それに対して、どう反応すればいいのか分からなかった。


正直、困る。


それは、やはりわたしが人と関わる事に慣れていないからなのだろう。

No.89

「わたし、あちらの方でカラオケ店を見た事がある気がします」


幾つもの建物が建てられている方を指差しながら、わたしはケイタさんに言う。


それが、反応に困ったわたしが取った行動だった。


「そうか!あっちか」


そう呟きながら、ケイタさんはわたしの手を握る手に力を込める。


そして、わたしが指差した方向を目指して歩き出した。

No.90

カラオケボックスに着くと、わたし達は店員に個室へと案内された。


個室には大きなテレビがあり、その正面にはテーブルと椅子がある。


ケイタさんがテレビの傍に座ったので、その正面にわたしは腰掛けた。


すると、店員がマイクとリモコンが入ったカゴをテーブルの上に置いた。


「リナ、何飲む?」


元からテーブルの上にあったメニュー表を、ケイタさんはわたしの方へ差し出す。

No.91

わたしは、メニュー表のドリンクの欄を見る。


見た事のないカタカナで記されたドリンクばかりだ。


正直、わたしは戸惑った。


何を頼めばいいのだろう。


取り敢えず、ここは適当に頼んでおくべきなんだろうか。


そう思いながらメニュー表を見ていると、ケイタさんにページを捲られた。

No.92

「リナ、ここから選べ」


メニュー表を一瞥してから、ケイタさんが言う。


「はい」


ケイタさんに頷きながら、わたしはメニュー表へ視線を落とす。


すると、今度はわたしも見た事のあるドリンクの名前ばかりが記されていた。


正直、わたしはホッとした。

No.93

「アルコールは、まだリナには早いからな」


私の方を見ながら、ケイタさんが呟く。


成程。


先程の見た事のないカタカナのドリンク達は、どうやらアルコールだった様だ。


恐らく、高校の制服を着ているわたしを見て、ケイタさんは未成年だと思ったのだろう。


そうでなくても、わたしは見た目が幼く見られがちだし。

No.94

その様な事を、ケイタさんが気にしてくれるのが意外だった。


ケイタさんは、意外と真面目なのかも知れない。


そんな少し失礼な事を思いながら、わたしはメニュー表のドリンク欄に目を通していく。


「オレンジジュースがいいです」


わたしが言うと、ケイタさんは店員の方へ向き直った。

No.95

「オレンジジュースとアイスコーヒーを一つ」


「かしこまりました」


そう言って頭を下げると、店員は個室から出て行く。

No.96


数分後、オレンジジュースとアイスコーヒーを御盆に乗せて店員が戻ってきた。


そのドリンクが、私達の前にドリンクを置かれる。


「ごゆっくり、どうぞ」


にこやかな笑顔で言い残し、再び店員は個室から出て行った。

No.97

「よし、いっぱい歌おうぜ!」


カゴの中から取り出したマイクとリモコンを、わたしと自分の前に置き、ケイタさんが張り切った様な声を上げる。


「はぁ…」


どう反応すればいいのか分からなくて、わたしは使い方の分からないリモコンを見詰めながら、適当に相槌を打った。


「おい、もっとリナも楽しそうにしないと!」


「楽しそうにと言われましても…」

No.98

「取り敢えず、何か歌おうぜ!まずは俺が歌うから、そのうちに何か歌いたい曲を考えておけ」


口籠ったわたしの前で、手早くリモコンを操作しながら、ケイタさんはマイクを握る。


「え?あの…」


リモコンの使い方が分からないです。


そう言おうとした時、ケイタさんが入れたらしい曲のイントロが流れ出した。

No.99

わたしは、チラリとケイタさんの方を伺う。


マイクを握りながら、ケイタさんは歌うのを楽しみにしている様子だ。


そのため、わたしは言葉を飲み込むしかなかった。


歌うのを楽しみにしている様子のケイタさんを、邪魔してはいけないと思う。


それに、もしかしたらリモコンは少しいじってみれば、意外と簡単に操作出来るものなのかも知れない。

No.100

そう思いながら、ドコかで聞いた事のある歌を歌い始めたケイタさんを余所に、わたしはリモコンを手に取る。


そして、タッチペンで適当に操作してみた。


すると、意外と簡単に使い方は分かった。


歌いたい曲名か歌手名を入力して、検索ボタンを押せばいいだけだった。


しかし、なかなかわたしが歌う曲は決まらない。


先程から、適当に知っている曲名や歌手名を入力しては、検索ボタンを押している。

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