不倫女
独身時代に、既婚者と不倫していました。
私 23歳
彼 35歳
自分の中の醜くい姿、人には言えない恥ずかしい過去を綴ります
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次の日、驚いたことに事務所に、田中さんが来た。
通常、仕事の打ち合わせ等では、田中さんの会社へ行く。ウチの事務所に来ることはない。
この日、田中さんは近くで用事があり、挨拶だけしにウチの事務所に寄ったという。
佐々木さんとの関係を疑っていたせいで、なんとなく会うのが気まずい気持ちになっていた。私は、簡単な挨拶だけして、自分のデスクで仕事に戻っていた。
田中さんは、高岡さんと話をして、盛り上がっていた。
そして「さくらちゃんも、ちょっとだけ手伝ってくれないかな?」と言われた。
なんだろう?
田中さんに2枚の用紙を見せられた。その時の田中さんの目が、じっと私を見つめてるようで、気になった。
(昨日のせいだ。きっと私が自意識過剰になってるせいだ。勘違いだろう)と思って、気にしないようにした。
「これね、今度、うちの雑誌でファミリー特集をすることになって、さっき出来たばかりのゲラなんだけど、どっちにしようか悩んでて。さくらちゃんはどっちの方が良いと思う?」と。
これって、他の事務所で作ったものでしょう?私たちに見せていいのかな?と疑問に思いつつ、2枚を見比べた。
写真がちょっと違うような気がするけど、あまり変わりないように見える。
けど、田中さんにとっては大切なことだから、私にも選んで欲しいのだと思って、真剣に見ていた。
すると、高岡さんが助け舟を出してくれたのか、
「この写真の子って、佐々木さんの子供なんだって」と笑いながら言った。
ビックリした。イメージ写真として写ってる、この子が・・・。
田中さんを見ると、やっぱり私を見ている。
(もしかして、知ってるの・・・?)と不安になった。
高岡さんが、「佐々木さんの子供って、可愛いよね。お父さんに似なくてよかったよね」と楽しそうに毒舌を吐いてるので、
私もこれに続いたほうが賢明だと思い、
「本当ですよね。奥さん似なんですかね。奥さん、綺麗な人で良かったですね」と言った。
「うーん、私はどっちも良いと思うけど。高岡さんは、どっちを選んだんですか?」と聞いて、申し訳ないけど、高岡さんの案に乗ることにした。
私には選べない。
というより、まともに写真を見られなかった。
「なんで、佐々木さんのお子さんの写真を使ったんですか?」と田中さんに聞いてみた。
「佐々木さん、写真が趣味だから。この特集があるときに、いい写真があると思って聞いてみたの。そしたらね・・・佐々木さん、300枚くらいの写真持ってきたのよ。で、この中なら、好きなの使ってくれって」
笑いながら、田中さんが説明している。
「こんなに沢山の中からだと選べないから、せめて20-30枚に選んで持ってきてくれ、と頼んだの。そしたら佐々木さんは『俺は、全部可愛いから選べない』って言ってね。『好きなの選んでくれって。俺はどれでもOKだから』って」
高岡さんは「うわー、本当の親バカですね」と言って、笑っていた。
私も合わせて笑わないとおかしいだろうと思って、合わせ笑っていた。
田中さんが帰った後、
私の身は大丈夫だ、田中さんにも、疑われずにすんだと思うと、やっとホッとできた。
けど、なんの為のにこの事務所に来たのだろうかと思うと、気になって仕方なかった。
一気に読みました。続きが待ち遠しいです。
>> 156
あきさん
読んで頂いて、ありがとうございます。
ネガティブな話だし、自分語りなので、
読んでくださる方にはつまらないのでは?と気になりますが、
中途半端にやめるのは嫌なので、最後まで書き上げたいと思ってます。
もう終盤です。この後、1ヶ月以内に別れています。
家に戻って、改めて今日の出来事を振り返った。
会社にいた時は、田中さんの事が気になって、写真の事には意識が向かなかった。
俺には、子供の写真を選べないって言ってたな・・・。
選べない。可愛いから。
その言葉の重みを、ひしひしと感じた。
バカだな、私は。最初から結論は決まってたことなのに。
少しでも私に気持ちがあって、選んでくれるんじゃないかと期待してた。
前日、電車から逃げ降りた後に、結局、佐々木さんへは連絡しなかった。
なんて言えばいいのか分からなかったし、
正直言うと、何もかもが面倒になっていた。放り投げ出したかった。
そして今日、田中さんの話を聞いたら、もうこのまま連絡しないほうがいいんじゃないかと思った。
佐々木さんからも、連絡は無かった。
いつもは喧嘩しても、佐々木さんの方から必ず電話してきてくれたが、
さすがに昨日の私の行為は、許せないと感じたのかも。
そんなこんな、いろいろと思い浮かべてると、なかなか寝付けなかった。
夜半になって、ウトウトしてるときに、
いきなり佐々木さんの子供の顔が、頭の中にでてきた。
どう表現したらいいのか分からないけど、
必死に私に向かって訴えかけてるような、そんな表情で、すごく怖かった。
写真は、そんなにハッキリ見たわけじゃない。
けど、今の私の頭の中では、すごくクリアに見える。
思い浮かんだというような生易しい感じじゃなくて、
頭に映像が焼き付いてる感じ。
毎晩、毎晩、これを見るようになって、私は眠れなくなった。
もともとお酒は好きで、毎日晩酌はしていたけど、
この日を境に眠れるまで、たくさん飲むようになってしまった。
最初は、家庭を壊しそうになった私を恨んでいる
というより、その罪悪感で、私自身が、そういった子供の姿を見ているのかと思っていたが、
何か、違う。そうじゃない。この表情は、それを訴えているんじゃない。
なんなんだろう。私はまた何か勘違いしているのか。
気づくのが怖かったが、気づいてしまった。
写真は、雪遊びしてるところだった。
場所が分からないように周りの様子は加工していたけど、家族で遊びに行ったのが分かるような写真。
佐々木さんは、こういう場所に家族と行くのか・・・。
意外だなと漠然と思ってると
まてよ。この時は、私ともう付き合っていたよな・・・。
そうだ。奥さんにバレる直前、2人で旅行に行った時も雪だった・・・。
その頃かぁ。
けど、その時って、休みの日は毎日電話くれてたよな・・・?
タバコ買いに外へ出たとか、雑誌買いにコンビニにいるとか。
そういって毎回、昼の11時には必ず電話があって、
時間があるときは夕方にも電話を。
え?その時って、子供はどうしてたの・・・?
深く考えると、気持ち悪くなってきた。
子供と楽しく遊んでるのに、私とも電話をしてたってこと?
子供が目の前にいるのに、平気な顔をして裏切ってるってことだよね。
子煩悩で、優しいというイメージが、ガラガラと崩れた。
>> 162
早く更新して
ちょっとですが更新しました。
夜はもう少し続きが書けるかもしれませんので、お待ちくださいませ。
>> 164
早く続きが読みたい気持ちは判るけど‥‥育ちの悪いガキが「腹減った❗腹減った❗」って騒ぎながら、お箸でお茶碗🍚叩くような催促は止めなさいって😥…
すごく上手な例えですね!
私もそんな風に文章上手になりたい。
フォローありがとうございます。
子供が大切だから、裏切れないんだと思っていた。
けど違う。浮気してる時点で、最初から裏切っていたんだ。
こんなに可愛い子供がいるのに。
人を裏切れる、冷たい、自己中な人間・・・。
本当に、優しい人なら、そもそも浮気なんてしないってことか。
そういう事か。
自分は?気づかなかったとはいえ、ずっと加担していた。
一緒に、加担していたんだ。
「子供が可哀想」
何度も、その言葉を聞いた。
けど、私の中で思い描いていた、その子供は、私の子供時代の姿だった。
けど、写真を見てしまった今は違う。この子は、私じゃない。
私とは別の人生をこれから歩く子なんだ・・・。
その子の人生を私は壊そうとしていたのか。
そう気づくと、一気に罪悪感が溢れてきた。
苦しい。
けど逃げたくても、頭に焼きついた映像が、それを許さない。
苦しい。気持ち悪い。
心臓の鼓動が早くなる。呼吸ができない。
久々に過呼吸をおこしていた。
ビニール袋をつかんで、呼吸をした。
過呼吸は、酸素を吸いすぎるから苦しくなる。
だからビニール袋に吐き出した二酸化炭素を吸って、呼吸を元に戻せばいい。
なんとか落ち着いた。
佐々木さんを恨めしく思った。
こんな罪悪感があることを、早く教えて欲しかった。
そしたら、早くこんな関係は止めていたのに。
そもそも、こんな関係は持たなかったのに。
それとも、罪悪感がないのだろうか。
また苦しくなった。
そしてパニックになった。
そういえば、生理がきてない・・・。
出来ていたら、どうしよう!
振り返ってみると、たぶん佐々木さんを信用できない人だと初めて認識した。
その男の子供を身ごもってしまう事への不安から、急にそう思い立ったのだと思う・・・。
とにかく、この時は頭に、どうしよう!どうしよう!それだけしかなかった。
>> 168
はじめまして!
すべて読みました。
同じような境遇にいるので
勉強になります・・
ななしさん
ありがとうございます。
書き終わった後に、感想をいただければ、ありがたいです。
とはいえ、私は「無排卵」で、そもそも子供ができる体質ではない。
20歳の頃から、婦人科に通院して、薬を服用していたが、一向によくなる気配は無かった。
毎日、基礎体温を計っていたし、生理不順も当たり前のことだったので、
冷静に考えれば、こんなに動揺するのはおかしな話だったが、
この時は、それに気づく余裕すらなかった。
慌てて、佐々木さんへ電話した。
何度、電話してもでない。
留守電を残したが、返事がない。
1時間、2時間・・・待ったが、電話がない。どんどん不安になってくる。
今日は休日で、婦人科はやっていない。どうすればいいんだろう。
不安でたまらない。
誰かと話したい、相談したいと思ったが、
こんな話、妊娠したかもしれないなんて、誰に言えるというんだろう。
しかも相手が既婚者なんて。誰にもいえない。
・・・・。
ああっ!そっか。判定薬があったな!
どこで売ってるのだろうか?薬局か?
急いで、買いに走った。
薬局について、妊娠判定薬を見つけた。
たくさんの種類があるので驚いた。
1つの箱に、1本だけのと2本入ってるのもあるし、価格もそれぞれ違う。
どれを選べばいいんだ?
全然、分からない。
2本入ってるってことは、失敗する可能性もあるってことか?
全部の種類の、裏の説明書を読んで、やっと買うものを決めた。
思いがけず、時間がかかってしまった。
家に戻ると、携帯に着信が入ってた。
焦って家を出たから、携帯を置き忘れてしまっていた。
先に電話をするか、検査をするか迷ったが、結果を知りたかったので検査をした。陰性だった。良かった。
タイミング良く、佐々木さんからの電話があった。
急に恥ずかしくなった。
こんな不確かな事で電話してしまった。
しかも、今日は休日だ。もしかして家族といたかもしれない。
相手への迷惑とか配慮とかも、全く頭になく、ただ一人でパニックになっていた。
「さくらか。ごめんな、遅くなって。仕事先に来ていて、さっき携帯に気づいたんだ」
(ああ、仕事だったんだ・・・。良かった)
「仕事中に、ごめんね。生理が遅れてたから、ちょっとパニックになって、焦って連絡したの・・・。けど、今、検査をしたら陰性だったから、もう大丈夫だよ」
「ああ、そうか。分かった。・・・俺も大丈夫だろうとは思ってたよ。ハハッ、俺がそんなヘマするはずないしな」
(ヘマって・・・、いったい)
「ちょっと仕事立て込んでるから、切るわ。また(仕事が)落ち着いたら連絡する。ちゃんと話し合いをしよう」
ヘマって、いったいなんなの?
もし私との間に子供ができたら、ヘマになるというのか。
妊娠してなくて、ホッとしたはずなのに、その言葉ですごく落ち込んだ。
奥さんとの間にできた子供は、300枚の写真をとって、なおかつ選べないという。
けど私がもし妊娠したら、ヘマだったんだ。
自分との差を感じて、愕然とした。けど、これが現実の差だと思った。
試してみたら、良かったな。
あの時、検査をせずに、先に佐々木さんの電話に出てみたら良かったんだ。
もしかしたら妊娠したかもしれないと佐々木さんに言ったら良かった。
その反応を見たかった。
見て試したかった。
試せば、真実が分かったのに。
失敗した。
反面、久しぶりに声を聞いたら、愛おしさも募ってくる。
冷たい人だ、子供を騙してる卑怯な人だと分かってるのに、まだ愛おしいと思ってる。
なんだか自分が佐々木さんをどう思っているのか、分からなくなってきた。
感情がコントロールできない。
好きだけど、信用できない。
信用できないけど、愛おしい。
愛おしいから、嫌われたくない。好きでいて欲しい。
けど、試したい。
自分が、いったいどうしたいかも分からなくなってきた。
「落ち着いたら、電話する」と言われたが、あれから連絡がこなかった。
「妊娠したかも」と大騒ぎしたので、飽きられて、もう連絡がないかもしれないと不安になった。
いやいや、あの時、「話し合いをしよう」と言われたし、きっと忙しいだけだと思い込もうとしたが、不安は募るばかり。
街中はクリスマス一色になっていた。寂しい。
クリスマスは一緒に過ごせるわけない。そう思うと、ますます寂しくなる。
去年のクリスマスは、どうしたっけ?
去年も佐々木さんといなかったけど、全然寂しくなかった。
サツキとお酒をたくさん飲んで、騒いで、楽しかった。
高岡さんから、他の事務所の子と一緒に忘年会しよう!と誘われた。
私は、その事務所の人たちとは、一緒に仕事をしたことないけど、
気分転換になると思って、ありがたく誘いに乗った。
飲み会は6人の若手メンバーだった。
その中で、隣りに座った男の人は、加藤さんといって、30歳のフリーライターだった。
「あれ?今日は大人しいね、どうしたの?」
(誰だっけな?この人???)
覚えてなかった。けど、それを言ったら失礼になると思って、知ってるふりをして話をしていた。
ゲイバーの話をしていたら、突然、思い出した!
そうかそうか。この人は。
以前、1度だけ飲んだことがあった。半年以上前だったな。
その時も、ゲイバーの話をしていた。
加藤さんが取材で、新宿〇丁目に行った時の話。
話がとても面白くて、「私も行ってみたい!」とねだったな・・・。
それで名刺をもらって・・・。
そうか。連絡するの忘れてた。
正直、加藤さんは好みのタイプだった。
話も面白い。久々に楽しい気分になってきた!
「加藤さん、手をみせてください」
「え!なんで?」と言いながら、右手を出してきたので、
「違う、違う、左手!そう、それで裏返してみて」
「何?何?これが何かあるの?」
「いやいやいや・・・。薬指に指輪の跡がないか、チェックしてるんですよ」
「指輪って。俺、独身だよ」
「ほらっ。そういって、飲み会の時だけ指輪を外す、既婚者がいるでしょう。だから今、チェックしてたの」
こういって引く人もいるが、加藤さんは思ったとおり、この会話を楽しめる人だった。
「で?俺はどうだった?合格」
「うーん、跡が分からない。夏まで待って、夏は日焼けするから、その時にチェックね!」
「おお!次は夏だな!」
笑いながら、話していた。
加藤さんと付き合いたいとは全く思わなかったが、
久々にスッキリした気分だった。
そこに、先輩の長瀬さんと佐々木さんが偶然やって来た。
ビックリした!
高岡さん、佐々木さんまで呼んだのかな???
けど、違っていた。
先輩の長瀬さんが、こちらに気づくと、向こうも驚いていた。
長瀬さんがテーブルにやって来て、
「いやー、このお店には誰も知ってる人が来てないと思ったんだけどさ。高岡さん、さくらちゃんも、今日、佐々木さんに会ってるの、社長には内緒にしておいてくれないか」と言われた。
「はい。分かりました」と返事をしたものの
(佐々木さんと、何の話をするのだろうか?)
気になって仕方無かった。
佐々木さんは、テーブルから少し離れた場所に立っていた。
軽く、他の人と挨拶をしていた。
私と目を合ったときは軽く会釈をしたが、
なんだかじっと見られてる様で落ち着かなかった。
加藤さんと楽しく話してるのが、なんだか悪い様な気がした。
楽しい気分だったのも、消え去っていた。
すると加藤さんに
「あのさ、長瀬君と一緒に来てた人って、もしかして〇〇会社の佐々木さん?」
「そうですよ。加藤さん、お知り合いですか?」
「いや、会ったのは初めてだけど、噂ではよく聞いてたから。さくらちゃんはさ、佐々木さんと付き合い長いの?」
「いえ、私は。うちの事務所だと長瀬さんと高岡さんが佐々木さんの仕事を担当してるので」
「そっか・・・。いやさ、知り合いだったら、紹介してもらえないかと思って。せっかくだから、後で挨拶してくるよ」
加藤さんはそう言いつつも、なかなか挨拶にいかない。
他の人たちが、帰り支度を初めてるのにまだ行かないので、不思議に思っていると
「ん。ほら、まだ長瀬君と話し込んでるからさ。(挨拶の)タイミングを見てるんだよ」
「みんな、他のお店行こうって言ってますよ」
「じゃあ、先に行ってくれないかな。後から行くわ」
「分かりました。じゃあ、先に行きますね。・・・けど、佐々木さんは優しい人だから、会話の途中でも怒らないと思いますよ」
「いやいや。そういう問題じゃなくて。最初の印象はよくしたいからさ」
加藤さんだけをお店に残して、みんなで2次会に行くことになった。
加藤さんって、すごく気を使う人なんだな・・・と思ったが、
違うか、佐々木さんが気を使わせる立場の人間ってことなのか!。
恋愛ばかりに目を奪われていたが、仕事の立場も考えないといけない。
そうだった。佐々木さんは仕事のできる人で、周りからの評価も高い。
なんだか、そう考えてるうちに2次会へ行く気力がなくなった。
みんなに「飲みすぎて気分が悪くなった」と言って、一人帰ることにした。
けど、このまま一人で家に帰るのも嫌だった。
夜遅くでも開いてる本屋に行って、立ち読みしたり、ぐるぐる周っていたが、何も頭には残らないし、何も考えられなかった。
自分の仕事での立場も考えなきゃいけない。
佐々木さんと別れたら、どうなるんだろうか?
付き合って、相談したから仕事をもらえた。けど?別れたら?
まさか、いきなり切るって事は・・・ない?いや、あるかもしれない。
携帯が鳴った。佐々木さんからだった。
「さくらは今、どこにいるの?」
「ん、今は新宿の本屋だよ」
「え?まだ新宿にいるの?」
「うん。佐々木さんはどこにいるの?」
「俺、もうすぐ家」
「そうなんだ。・・・長瀬さんと話し込んでたけど、何の話だったの?偶然、会って驚いたよ」
「・・・・・・。」
「もしも~し、あれ電波が悪いのかな?」
切って、あらためて、電話をしようとすると
「ごめん、嘘」
「え?」
「今、さくらの家の前にいる」
「は?」
「試したんだ。さくらが家にいるって、嘘付くかを」
「え!なんで、そんな事したの?とにかく急いで帰るね。そこ寒いから、家の近くにお店あるでしょう。そこの中で待ってて」
慌てて、家へ急いだ。
加藤さんとの様子を見て、もしかして誤解したのかな。
きっと佐々木さん、焼きもちをやいたんだ!
心配で、家まで見にきたんだ!
そう思うと、さっきまでの気持ちが吹っ飛んで、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
待ち合わせのお店に着いた。
佐々木さんにすぐ気づいた。
さっきの表情とは違って、優しい笑顔だった。
「待たせて、ごめんね」
「いや・・・俺も、急に来たからさ」
「ウチに、これから来る?」
心の中では、(これる時間はあるの?家に帰らなくても言いの?)と聞いていた。
佐々木さんは、
「行ってもいいの?」と。
(なんて他人行儀なことを言うんだろう?)
「もちろん、良いよ!」
テンションが高くなって、浮かれていた。
家に来てくれるのは、久しぶりで、本当に嬉しかった。
「今日の門限は何時まで?」冗談めかして聞いた。
せっかくの二人の時間に深刻な話はしたくなかった。
「うん。今日は長瀬君と飲んでくると言ったから・・・」
「もしかして、遅くなっても大丈夫なの?」
「うん。」
「そっか。」
もしかして、お泊りもできるのかな・・・そんな期待に胸が膨らんだ。
家の入口近くに、お酒の空き瓶、缶を山のように置いていた。
「さくら、これ・・・すごいね」、驚いた様に言われた。
佐々木さんと会えないから、
こんなにお酒を飲んで、気を紛らわせていたのかな、と思われたら
うわっ、すごく恥ずかしい。もう飲むの控えないと・・・。
「前の資源ゴミの日に、出し忘れちゃって。ここ月2回しか出せないから」
と誤魔化した。
「ねえ、長瀬さんと、何話してたの?」
「仕事の話で、相談があるからって。まぁ、そのうち長瀬君から詳しい話があると思うよ」
「ふーん」(私に教えられない話なのかな??)
「加藤さんとは、どんな話をしたの?」
「加藤さん???」
「あれ?加藤さん、挨拶に行かなかったの?飲み会で、私の横に座ってた人なんだけど、佐々木さんに挨拶するって言ってたよ」
「ああ。彼ね。うん。挨拶に来てくれたよ。名刺もらった。けど、すぐに帰ったから、ほとんど話してないな・・・」
あまり覚えて無い様子で、驚いた。
(あれ?焼きもちやいて、ここへ来たって思ったけど・・・もしかして勘違いだった?)
加藤さん、すごく気を使っていたのに、佐々木さんには通じてないんだな。
「ねえ、佐々木さんの元にはさ、加藤さんみたいに、自分を売り込んでくる人ってたくさんいるの?」
「いや、そう多くは無いけどね、たまにあるよ」
(たまにでも、あるんだ!)驚いた。
「ふーん。それって、どんな基準で選んでるの?」
「選ぶって?」
「この仕事には、このライター使おうって。選ぶ基準があるでしょう?人柄とか、性格も関係あるの?」
「まぁ、そういうので選ぶ人もいるだろうけど、俺は能力と、あとは使いやすさかな」
やっぱりこの人は、私よりも上の立場の人間、選ぶ側の人間なんだな・・・と実感してきた。
「この部屋、寒いね」といって、佐々木さんはエアコンの温度を調節した。
備え付けのエアコンは古いタイプのものらしく、全然温かくならない。
「さくら、おいで」と言って、抱きしめられた。
キスをされて、胸を触られる。
「佐々木さん、私、ゴムもってないよ、あるの?」
「ん・・・。無くて、いいよ」
「いや・・・。ダメだよ、しないと」
この間、妊娠したかもしれないと言って、大騒ぎしたばかり。
無排卵とはいえ、薬を飲んで治療してるから、もしかしたら出来るかもしれない。そんな危険は冒せない。
「ゴム無いと、ダメだよ」重ねて言ったが、
「大丈夫、うまくやるから」
結局、受け入れてしまった。
終わった後、佐々木さんは急いで着替えていた。
「まだ終電に間に合うから、帰る」と言って、急いで出て行った。
佐々木さんが、この部屋に入ってから、1時間しかたっていない。
少し話して、エッチして、帰った。
呆気なかった。
エッチも雑だった。洋服の上は着たままで、下だけ脱いだ状態。
単に行為をしただけだった。
何しに来たんだろう、いったい。
焼きもちやいて、私に会いたくなって来てくれたんだと浮かれていたが、
そうじゃなかった。
偶然会って、顔を見て、やりたくなったのだろうか?
せっかく会えたのに、会う前よりも、もっと虚しくなった。
受け入れた自分が、本当に情けなかった。
気持ちに流された・・・。弱い自分、本当に情けない。
ますますお酒の量が増えていった。
佐々木さんの子供の顔は、まだまだ頭に焼き付いてる。
眠れない。これは、マズイ。
薬局で、睡眠薬を探した。風邪薬で、眠くなるやつがあるな、それでいいかな・・・。
探していると、薬の名前は忘れてしまったが、安定剤のようなものが売っていた。気分が落ち込んでる時に、飲むと書いてあった。
こんなのあるんだ。知らなかった。買ってみようかな?
その数日後、佐々木さんから電話があった。
やけにテンションが高い。
「今日、やっとさ、終わったんだ」
どうやら年明け発行の特集号を3つ掛け持ちしていたらしい。
その1つにトラブルがあって、危うく間に合わないところだった。
それが無事に終わったらしく、喜んでいた。
なかなか会えなかったのも、連絡も無かったのも、そのせいだったのか・・・と思うと、すっかり嬉しくなったが、
この間の事を思い返すと、またぬか喜びをしてバカを見るのかもしれない
今日は気持ちに流されずに、ちゃんと話し合いをしようと覚悟して、会いに行った。
会った時の佐々木さんも上機嫌だった。
その顔を見てると、だんだんムカついてきた。
自分だけが、振り回されて、悩んで、バカみたいだ。
「ボーナスも出たし、今日はさくらの行きたいお店に行こう!どこがいい?」
ふっと思い立った。
「お寿司がいいな~」
「いいね!寿司か。じゃあ、〇〇に良いお店あるから、そこに行こうか?」
「んー。そこでも良いけど。他のお店じゃダメかな?この間ね、会社の人たちが美味しいって言ってた店があるんだけど、××駅の近くにあるんだ」
××駅とは、佐々木さんの家の近くだ
近くといっても、生活圏内でない距離だ。
うまくいえないが、知人に、もしかしたら会ってしまうかも?の気持ち悪いくらいの距離。
自分を雑に扱った恨みもある。
意地悪をした。
どう反応するかな。
ちょっと嫌な顔をしたように見えた。
(よし!)と心の中でガッツポーズをした!
「別に、他のお店でも良いよ。ただね、美味しくて安い店があるからって、社内で盛り上がって。私だけ話しに入れなかったから、行ってみたかっただけなの。嫌だったら、他の日に、友達といくから・・・」
「分かった。まぁ、今日はさくらの行きたい店だもんな。そこに行こうか」
(よっしゃ!そうくると思ってた!)
そういわせるだけで、満足していた。
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