不倫女
独身時代に、既婚者と不倫していました。
私 23歳
彼 35歳
自分の中の醜くい姿、人には言えない恥ずかしい過去を綴ります
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東京の小さな小さな事務所で働いていました。
社員数5人の広告制作会社です。
入社して半年ほどたったある日、出版会社の編集部の田中さん(31歳、女性)から「女同士で飲み会を開くから、良かったら来て」と誘われました。
ウチの事務所からは、高岡さんと私の2人が行くことにた。
高岡さんは、私と入社時期はほぼ一緒でしたが、年齢は私よりも5歳年上の28歳の女性です。
その場には、出版会社の人の他に、他の事務所の女性、フリーのデザイナーさんなど、計6人の女性となぜか男性が1人いました。
男性は、出版会社の編集部デスク(課長)の佐々木さん。
佐々木さんとはまだ一緒に仕事をしたことはなく、
出版社にいくとチラっとみかけるくらいの間柄でした。
あれ?女性だけじゃなかったのかな・・・?と不思議に思っていました。
田中さん含め私以外の女性は、みんな30歳前後の独身。
恋愛や結婚の話が中心で、この時に初参加の高岡さんもまた、
長年付き合ってる彼氏はいるものの、
彼氏の仕事の都合で結婚できないという状況でしたので、
すんなりと会話に入っていけました。
私は、ひとり年齢が離れていたので
「さくらちゃんには、まだ分からない話だよね」と言われ、
ほとんど会話に入れなかったです。
佐々木さんは、そんな女性たちの愚痴話の聞き役を担っていて、自分の話はほとんどしませんでした。
佐々木さんは、静かな人だな・・・というのが最初の印象だった。
生活感が無く、年齢不明、結婚指輪もしてなかった。
酔っていた田中さんが、佐々木さんの事を色々とバラしはじめた。
「佐々木さんの奥さんって、恐妻家なんだよ!」
「部長に電話してきて、ウチの旦那はどこにいるの!と怒鳴ってんの、部長にだよ、あり得ないよね・・・」
「私もさ、旦那どこに行ったの!って言われて、奥さんの愚痴に1時間、付き合ったことあるんだよ・・・」
「佐々木さんさぁ、帰宅拒否症なんだよ。今日もさ、一人寂しく会社に残ってるか、誘ったの」
ええ!部長を怒鳴った・・・の。そんな奥さん、いるんだ。
話の内容にビックリした。
けど、それ以上に、田中さん大丈夫か?と心配になった。
上司のそんなプライベートなことをバラして。
みんな違う会社の仕事先の人だよ・・・やばいんじゃないの?
社会人、まだ半年の私には、どうして良いのか分からなかった。
とりあえず、聞き流す方がいいのか。そういうフリをした。
私はお酒好きで、自分では強いと思っていたが、
ここのみんなはそれ以上に強かった。
日本酒、焼酎・・・どんどん飲んでいった。
居酒屋後に、2次会へ行こうという話になった。
しかし、私だけ実家住まいで、遠かった。
片道1時間半かかるので、ここで帰ることになった。
勝手な話だが、寂しかった。
会話には入れなくて、飲み会ではほとんど聞き役だった。
帰るといっても誰も止めてはくれなかった。
「俺も帰る」
田中さんたちは、佐々木さんを引き止めたが、結局帰ることになった。
帰る方向が一緒だっだので、一緒に地下鉄に乗った。
一人で帰る寂しさがなくなったのは嬉しかったけど、
いったい何を話したらいいのか分からなかった。
会社のことや仕事の話をしたが、会話はすぐに終わってしまう。
本音では、奥さんの話をもっと突っ込んで聞いてみたかったが、
さすがにマズイだろうと思って止めた。
夜11時過ぎた地下鉄の車内は人が少なく、静かだった。
気まずい沈黙・・・
すごく嫌だった。
飲み会で、馴染めなかった失敗。
反対に、高岡さんはすんなりとみんなと意気投合し、仲良くなっていた。
私も高岡さんも、目標はフリーになることだった。
その為に、仕事をくれる人との付き合いは大切で、
自分の顔を売っておく必要があった。
高岡さんは、社交的で要領が上手い。
私は自分との差をどんどん感じていた
学生時代、飲み会や合コンの幹事をしていた時に、
場が盛り上がらずに沈黙が続くと、
「心理テストをやろう!」と声をかけていた。
心理テストは会話のきっかけになりやすい。
けど、年上の男性に心理テストなんて子供ぽいな・・・何が良いかな・・・と考えて、
「佐々木さん。最近、私、手相にハマッてるんです。良かったら見せてください」
と言ってみた。
(バカにされるかな・・・)と思っていたら、
「うん。どっちの手を見せればいいの?」
(お!良かった。のってくれた・・・)
「じゃあ、左手を見せてください。右は生まれた時、左は現在~未来を表してるんです」
佐々木さんの左手を何気なく握った。
すると、ビクッとした。身体も強張ってる様だ。
(え???もしかして緊張してるの???)
ちらっと顔を見ると、変わらずに無表情。
表情が無いから、感情がよく分からない。
(けど、緊張してるよな・・・?)
なんとなく、処女を相手にしている男性の気持ちが分かった様な気分になった。
(なんだか、可愛い人だな)
「この線は、こういう意味で、これはこうで・・・」と説明していく。
「あ!佐々木さんって、変わり者ですね?個性的っていうか・・・。この線がそうなんですよ。そんな事、言われません?」
「ああ、俺、よく言われるよ。これがその線なの?」
と、やっと嬉しそうな顔になってきた。
ちなみに、これはお決まりな言葉。
男性は「変わってる、個性的」等と特別扱いされると喜ぶから、手相を見るときは使ってる。
今回は、好印象を持ってもらうのが目標だったから、
達成できたかな~なんてホッとした。
地下鉄を降りて、私鉄に乗換えをする。
ここで佐々木さんとはお別れだ。
すると、佐々木さんが「酔い覚ましにコーヒーでも飲んでいかない?」と声をかけてきた。
終電まで、後1時間。ちょっと迷ったが「良いですよ」とのった。
(ホテルに誘われるのかな・・・。そうしたら、どうしようか)
考えは決まって無かったが、
この無表情で、奥手ぽい佐々木さんが、どんな風に誘ってくるのか見てみたいと思った。
就職して半年だが、既婚男性からの不倫の誘いは、たくさんあった。
いわゆる下請け会社の、独身で若い女の子・・・と言う立場。
この立場では、下手に誘いを断ったら、仕事に影響がでてくるので
セクハラとは騒げないし、逃げにくい。
既婚男性もそれは分かっていて、誘ってくる。
抱きつかれたこともある。
ホテルの前まで連れて行かれたこともある。
こちらも負けてはいない。上手く交わして、今までは逃げてきた。
佐々木さんは、たぶんそんな男性のタイプとは違うと思っていたが、
とりあえず、警戒心は忘れなかった。
コーヒーショップ等に入るのかと思ったら、
駅からすぐ目の前のシティホテルに行き、ラウンジに入った。
佐々木さんはスーツだけど、私はジーパンにラフな格好。
この場には不釣合いな格好で、恥ずかしかった。
コーヒーを飲みながら、会話らしい会話もなく、静かに席に座っていた。
最初は緊張して、周りをキョロキョロを見回していた。
閉店間際のラウンジには誰ひとりいなかった。
落ち着かなかったが、なんとなく、この静かな空間も良いものだな・・・と思い始めた。
大人って、こんな感じなのかな・・・と思った。
雰囲気にのまれていたのか、気づいたときには終電間際だった。
急いで駅に戻ったが、電車には乗れなかった。
「俺が、誘ったから乗り遅れさせちゃったね。車で家まで送っていくよ」
佐々木さんの家は、そこから1駅先。車を取りに行って、送ってくれると言う。
「いえいえ、私もちゃんと時間見てなかったから悪いんです。始発まで、どこかで時間つぶしますんで、気にしないでください」
そう言ったものの、駅近くに24時間のお店は無さそうだし、
これから探そうにも大変・・・困ったな。
「いや、女の子を一人残せないよ、送っていくから」
お言葉に甘えて、送ってもらうことになった。
駅前のタクシー乗り場は、終電乗り遅れた人たちで長蛇の列になっていた。
「ここで待つよりも、少し歩いた所にタクシー拾える場所あるから」と言って、2人で歩き始めた。
しばらく歩くと、
「手をつないでいいかな?」と言われた。
ちょっと驚いたが
「良いですよ」と答えた。
手をつなぐと、佐々木さんが緊張しているのが分かった。
なんだか子供みたいで可愛いなと思いつつ、
「手をつなぐなんて、小学生のフォークダンスみたいですね」なんて軽い調子で話したが、
佐々木さんは、無言でギュッと力を入れて握ってきた。
チラっと見た顔はまた無表情だった。
その時に、やっと気づいた。
(この人、寂しいんだな・・・)
誰かと一緒にいたいから、
コーヒーに誘ったし、送ると言ってるんだなと。
一緒にいても、一切、口説かれることは無かったし、好きなそぶりも全く無かった。
どんな人なんだろうか・・・と、この時に興味を持った。
程なく、タクシーをつかまえた。
タクシーの中でも、手を離すことはなかった
高層マンションが立ち並ぶ。
佐々木さんは少し離れた場所にタクシーを止めた。
「車を出してくるから、ちょっとここで待っててくれる」。
車の助手席に乗り込んだが、なかなか出発しない。
チラっと見ると、佐々木さんは何を考えてるのか分からない表情をしている。
放心してるのか、前の方をジッとみていた。
「佐々木さん、手をつなぎたいんですか?」と聞いてみる。
ちょっと照れた様に「うん。」とうなずく。
(本当に可愛いな・・・この人)
「もしかして、キスしたいんですか?」と聞いてみた。
「え?!」と顔が真っ赤になった。
「・・・・・・・。うん。」
なんというか・・・男女の立場が逆転してるみたいで、楽しかった。
反応が可愛くて、もっと見てみたくなる。そんな感じだった。
「キスする?」
「・・・・・いいの?」と聞いてきたので、
軽くキスをした。
「もっと、したい?」
うなずいたので、
ディープキスをした。
「なんで、俺がキスしたいって分かったの?」
と可愛いことを聞いてくるので、
「うーん、なんとなく。勘かな」と答えた。
それから目をジーとみて聞いた。
「これから、どうしたいの?」と。
また真っ赤になる。
そんな顔を見てると、からかいたくなる。いじめたくなる。
完全にサドの私。
・・・そんなところから始まった。
その日は、そのままホテルへ行った。
佐々木さんのセックスは、丁寧で優しかった。
家まで送ってもらったが、帰ったのは朝方だった。
家の近所のコンビニ前でおろしてもらった。
1度きりの関係だと思っていたので、家は知られたくなかった。
車が曲がる時まで、見送った。
3日後、事務所に電話がかかってきた。佐々木さんからだった。
佐々木さんの携帯番号を教えられた。
「時間がある時に、連絡して」と。
(なんだろうな・・・)と気になった。
(もしかして、奥さんにバレたとか!
キスしたの家の目の前だったもんな・・・)
なんだか気になって、すぐに事務所を出た。外から連絡した。
「さくらちゃん。今ね、近くまで来てるんだけど、これから出てこれる」
特に急ぎの仕事は無かったので、「ちょっとだけなら、いいです」と言って、
近くの喫茶店で待ち合わせをした。
待ち合わせの喫茶店に着くと、すでに佐々木さんは座って待っていた。
「お疲れ様です」と言って、目の前の席に座った。
「どうしたんですか?連絡いただいて、ビックリしました」
「うん。あのね・・・・。」
それから、しばらく黙っていた。
ドキドキした。やっぱり、ヤバイ話かも。なんだろう???
すると
「俺ね・・・・。
・・・・・奥さんとね、あまり上手くいってないんだ」
(で?どうした??)
「・・・・・。」
しばらく待っても、その話の続きはない。
「・・・・・。」
(まさか。これ言うために呼び出したの?)
ホッとしたと同時に拍子抜けした。
「あの時、佐々木さんに、携帯番号聞かれなかったから、あれでお終いだと思ってましたよ」
ホッとしたので、気楽にこんな事を言った。
「そうだね。俺も、そう思ってた。
けど。さくらちゃんさ、送っていった時、俺のことずっと見送ってたでしょう。車から降りた後。俺さ、バックミラーでみてたんだ」
(ああ、あれ。家を知られたくないから、車がいなくなるのを見てたわ)
「あれ見て、思ったんだよ。さくらちゃん、寂しいんだろうなって。寂しいから、俺としたんだろうなって。それまでは連絡するつもりはなかったんだけど。あれで気が変わったんだ」
(ええ!大きな勘違いだよ、それ!)
けど面白くなった。
(そうかぁ。お互いに寂しい人なんだって思っていたんだな・・・)
「今日は、早くあがれるの?」と佐々木さんに聞かれた。
「急ぎの仕事は無いんで、早く上がれますよ」
「美味しい天ぷら屋があるんだけど、食べにいかない?」
「いいですね。・・・ってか、その天ぷら屋さん、私みたいな格好で大丈夫ですか?」
ホテルのラウンジでの場違いさを思い出して、聞いた。
「気楽に入れるお店だから大丈夫だよ。若い人もいるよ。
そこは、カウンター席がいいんだよ。目の前で天ぷらを揚げて、すぐに出してくれるんだ。早く行かないとすぐに満席になるから」
楽しそうに話をしていた。
その天ぷら屋さんは人気店らしく、混んでいた。
運良くカウンター席に座れた。
できたては、熱々で確かに美味しかった。
早めの時間帯に入店したので、帰りも早い時間帯だった。
確か、まだ8時台だったと思う。
これから、どこか行くのかな・・・と漠然と思っていたら、
佐々木さんは「今日は電車で、家まで送っていくね」と。
(ええ。こんな早い時間に!)と驚いた。
からかい半分で「今日はエッチするのかと思ってました」と言うと、
佐々木さんは、テレながらも「もしかして、したかった?
けどね、この間、すぐにエッチしちゃったから、今日はちゃんと送りたかったんだ」
家までは、特急で約30分。
改札を出て、家近くのコンビニまでは歩いて15分。
計45分。往復だと1時間30分。結構な距離だ。
佐々木さんは、この時の1回だけじゃなく、付き合ってる時はいつも送ってくれた。
手をつないで。
佐々木さんは、いろんなお店を知っていた。
流行っているお店も、穴場的なお店も。
いろいろと連れて行ってもらった。
食事だけで、エッチしない日もあれば、
ホテルにお弁当を持ち込んで、エッチをして、のんびりと過ごす時もあった。
月~金のほとんどの日に会っていた。
二人でいるときに、佐々木さんの家族の話をすることは無かった。
佐々木さんもしなかったし、私も聞かなかった。
いつの頃か忘れてしまったが、
携帯電話を一緒に買った。
家電量販店に入った時に、たまたま携帯を目にして、その場で買うことになった。
番号は、お互いしか知らない。2人だけの電話だ。
バレないか心配になったが、佐々木さんは請求書を会社宛にするから大丈夫だと言って、気にしていないようだった。
土日になると、1日3~4回は電話がかかってきた。
「俺に会えないから、さくらが寂しがると思って」。
とはいえ、このときの私は、一番が仕事、二番が恋愛だった。
仕事で一人前になるのが目標だったが、
自分の能力の無さに自信を無くしていた。
いくら頑張っても、自分の思うような作品ができない。
こだわりが強いので、納得できるまで頑張るが、時間だけが過ぎていく。
反対に高岡さんは、仕事が速く、社長から指摘されたり直されたりもしない。
同じ時期に入ったのに、私とは大違いだった。
小さな会社だったので、雑用も自分たちで行う。
銀行、郵便局、クライアントへのお使いもあるし、事務所の掃除やトイレ掃除もしていた。
最初は高岡さんと交代で行っていたが、高岡さんは雑用をやるのを嫌がり、途中から私の仕事になっていた。
ある時に、会社は危機に陥った。
詳しくは分からないが、長年付き合いのあるクライアントとの契約が、何故か打ち切りになったのだ。
一番大きな仕事だったので、打撃は大きく、
社長は皆の前で、
「代わりの仕事を探しているが、難しい。このままだと、お給料が支払えない、もしかしたら誰かに辞めてもらうかもしれない」
と言った。
(一番最初に切られるのは、私だ・・・)と思った。
(転職先を探さないとダメかな・・・)
「いつもの元気がないね。どうしたの?」と佐々木さんに聞かれたので、
事情を話した。
「そんな事になってたんだ・・・」
ほんの愚痴のつもりだった。
すると、次の日になると、社長と先輩の長瀬さんが何か相談していた。
「新しい仕事が入った。長瀬はそっち担当するから、あとを引き継いで」
出版社から新しい依頼がきた。それから次々と仕事が来た。
佐々木さんが仕事を回してくれていた。
会社を辞めなくてすんだのは嬉しかったが、
それ以上に、私に対する気遣いが嬉しかった。
押し付けがましいことは一言もいわない。
普段は愚痴を言わない私の言葉を真摯に受け止めてくれたことが、何よりも嬉しかった。
この頃から、佐々木さんへ対する気持ちが変わってきた。
付き合い始めは、軽い気持ちしかなかった。
恋愛に対して、何の期待も、希望もなかった。
もちろん、最初は恋愛に対する期待はたくさんあった。
けど、これまでに付き合ってきた人たち。
浮気もあった。お金を貸して逃げられたこともあった。
騙されていたこともあった。ストーカーされたこともあった。
なんだか、恋愛に疲れていた。
私は、見る目はないし、普通の恋愛をする資格が無いと思っていた。
だから、早く自立しなければ・・・。
それに不倫は丁度良かった。
奥さんに相手にされない寂しい男と、恋愛に不信感を持つ女。
仕事をくれるだけじゃなかった。
「さくら。フリーになりたいなら、いろいろな人に会ったほうがいいよ」
と言って、たくさんの人に会わせてくれた。
自分が憧れている人たち。
会えて、自分の気持ちは高まった。
そして、佐々木さんと付き合えたことに感謝した。
すみません。誰も読んでないかもしれませんが。
実際の職種とは変えて、これまで書いていましたが、
書くのが厳しくなってきました。
つじつまが合わない点があるかと思いますが、ご了承ください。
佐々木さんは、会社を独立するのを手助けしたり、
私の様に、仕事関係者同士の紹介したり、
いろいろな人の手助けをしていた。
仕事以外の相談も受けていた。
私も高岡さんから直接、聞くまで知らなかったが、
生き方に悩んでいた高岡さんへボランティアすることをアドバイスし、紹介もしていた。
誇れる事をたくさんしているのに、自分からは話さない。
私は、自分自身で精一杯、余裕が全くなかった。
そんな私にとっては、とても大きな器のある人にうつった。
付き合って、半年ほどたった頃、佐々木さんから旅行へ誘われた。
1泊2日のドライブ旅行。
土日だったが、奥さんは実家へ帰省するとのことだった。
真冬でとても寒かった。
シーズンオフだったので、ホテルは閑散としていた。静かだった。
「見せたいところがあるんだ」と言って出かけた。
雪景色が、とても綺麗な場所だった。
通常は秋の紅葉が人気スポットになる場所だったが、
「俺は、雪のほうが好きなんだ・・・・」と言って、静かに見ていた。
2日間も一緒にいるのは初めてだったが、
正直、私はイライラしていた
佐々木さんとの関係が、なんなのか分からなくなってきた。
「さくらに本気で好きな人ができたら、俺は別れるから」
「さくらに合うような、いい男かどうか、俺が選んでやるから」
などと言う反面、
私が男性に電話番号を渡されたり、口説かれたりするのをみると
「さくらはやっぱり独身の方がいいのか・・・」等と言ってくる。
最初は「焼きもちをやいてて、可愛いな・・・」と思っていたが、
女性の友達と遊ぶのさえも、いい顔をしないのを見ると、だんだんイラついてきた。
けど、いい顔しないだけで、言葉では言わない。
言わなくても分かるだろう!っていう態度にムカつく。
旅行中は、イライラしていた。
「さくらは本当におこりんぼうだね」と茶化していう佐々木さんに、
余計にイライラしていた。
旅行から戻ると、佐々木さんからの連絡がなくなった。
なんだか、ホッとした。
けど、2日もすると、気になり始めた。
毎日毎日かかさず、連絡があったのにどうしたんだろうか?
せっかくの旅行だったのに、冷たい態度をとったから怒ったんだろうな。
嫌われたのかな・・・。
気になって、自分から電話してみようかなっと思った。
けど、かけにくい事に初めて気づいた。
お互いの専用の携帯を持っているけど、もし私から電話して、それがきっかけにバレたとしたら。
電話をかけるのに躊躇した。
いつもは佐々木さんから連絡をくれた。
土日も決まった時間になると連絡をくれたので、
そういった不安感を持つことがなかったから、分からなかった。
自宅にいる時に、久しぶりに佐々木さんから電話があった。
「今、会えるかな。大事な話があるんだ」と。
「分かった、すぐ行く」
嬉しくて、飛び出した。
待ち合わせの実家近くのファミレスに着いた。
佐々木さんは先に待っていた。
「佐々木さん、どうしたの?ずっと連絡くれないから、どうしたのかと思った」
「さくら、嬉しそうだね。俺と会えて、嬉しいの?」
「うん。会えなくて寂しかったよ」
「電話もさ、バレたらいけないと思って、連絡できないし・・・。あれでしょ?旅行のときに、私がイライラしてたから怒ったんでしょう?」
「え?うんうん。そんなんじゃないんだ・・・」
「あのさ、俺たちのこと、奥さんにバレたんだ」
「奥さんと、ずっとその話をしてた。だから連絡できなかったんだ」
「・・・・・・。」
思いがけない話で、ビックリした。
正直、思考が止まって、何も考えられなかった。
まさか、そんな話になっていようとは。
「え?なんでバレたの?」
「奥さん、俺のこと、よく見てたんだよ」
佐々木さんは、それ以上、深くは語らなかった。
「それで、奥さんは何て言ってるの?」
「・・・・・。許せないって。離婚するって」
吐き捨てるように、そう言った。
聞きたい事は山のようになるのに、なんと話していいか分からない。
しばらく二人で沈黙していた。
先に口火を切ったのは佐々木さんだった。
「さくらのことも言ってた。相手の女は誰だって。慰謝料をとるって」。
それを聞いてホッとした。慰謝料で済むのか・・・貯金で足りるかな・・・。
「奥さん、いくらだって言ってた?」
佐々木さんはビックリした顔をした。
それから
「さくらの事は言ってないよ。誰か聞かれても、絶対に教えなかった。俺が好きになったから、相手の子は悪くないと言った。慰謝料も請求しないように頼んだよ」
「ええ!そんな事、言ったの。奥さん、激怒したでしょう。今からでも遅くないから、彼女から誘われて仕方なく浮気したといいなよ!土下座して頼んだら、きっと許してくれるよ」
「・・・。いや、無理だよ。そんなんじゃ、許してもらえない」
「じゃあ、私から奥さんに話すのは?私が一方的に好きになったからって。慰謝料も、払いますって言えば大丈夫じゃない。女同士だし、許してくれるんじゃない?」
「いや。無理だよ。
・・・さくらに言うか迷ったけど。奥さん、探偵雇ってでも、相手の女を調べるって言ってる。さくらの親にも職場にも、不倫していたってバラすって言ってるし。さくらには耐えられないと思う」
耐えられない・・・?
正直、ピンとこなかった。
親に言うって。
うちの親なら、20歳過ぎた娘のことは、私たちには関係ないって言うだろうしな。言ってどうするんだろう?
会社に言うって。
もともと不倫の多い業界。しかもウチの社長は自ら愛人がいる。娘と同じくらいの年齢の子だと自慢してた・・・。不倫してたから佐々木さんに仕事をもらえたのだから、バレたらもっと仕事を貰って来いと言われそうだけど。
それよりも佐々木さんの方が、ヤバイのにな。公私混同したわけでしょう。佐々木さんの会社は大きいから、その点は厳しいはずだしな。
イマイチ、何が耐えられないのかよく分からないけど、
佐々木さんは自分を守ろうとしてくれたんだなって思った。
気持ち的には、白黒ハッキリさせたほうが、ラクだけど。
「そっかぁ。
でも、もう無理だなって思ったら、いつでも慰謝料は払うし、奥さんとも話すからね。その時はそう言ってね」
「分かった。ありがとう」
「さくら、ごめん。今日は一人で帰れる?送っていけないけど」
「近いし、大丈夫だよ。佐々木さんはどうするの?」
「もう少し、ここにいる。一人になりたいんだ」
「分かった。あまり遅くならないようにね。
けど、何かあったら、すぐに電話してね。いつでも待ってるから」
寂しそうな佐々木さんの表情に、後ろ髪を引かれたが、私もひとりになりたかった。
家に帰っても、眠れなかった。
何をどう考えていいのか分からなかった。
佐々木さんと奥さんの話し合い次第だと分かっていた。それまで何もできない。
けど、何かできないかなと。
朝方5時過ぎに、携帯が鳴った。
「佐々木さん?」
「おはよう。さくら。起きてたか。」
「いえ、眠れなくて。・・・佐々木さん、こんな早くに、何かあったの?」
「いや。これから始発で帰るところなんだ。あのままファミレスで一夜を過ごして」
「ええ!佐々木さん、帰らなかったの?・・・・大丈夫なの?こんな時なのに」
「うん。・・・・・また電話する」
夜に話したときよりも、いくらか元気になっていたけど、
こんな時期に、外泊して大丈夫なのか、心配だった。
その日、会社からの帰りに「会えないか」と佐々木さんから連絡がきた。
やっぱり朝帰りしたから、奥さんと揉めたのかな・・・と思って、
仕事をそこそこに終わらせて、すぐに会いにいった。
「さくら、今日は泊まれる?」
会ってすぐに、こう言われた。
「親には、連絡すれば大丈夫だけど・・・。
え?でも、佐々木さん。今日泊まったら、2泊も外泊することになるよ。止めた方がいいよ」
佐々木さんは黙ってる。
「家に帰りなよ!」少し強めに言った。
「・・・・。俺、別れることにした」
「はぁ?」(何言ってんの??)
「だから、ゆっくり話がしたかったんだ」
いったい、何が起こったの?
早く聞きたかった。
急いでホテルを探して、チェックインした。
「何?何?どうしたの?急に。奥さんと別れるなんて・・・。
もしかして朝帰りして、奥さんから家を追い出されたの?
何があったの?」
たたみかける様に質問したが、
佐々木さんはベッドに座って
「さくら、久しぶりにキスしよっかぁ」なんて言ってる。
「何言ってるの。それどころじゃないでしょ!
こっちは心配してるのに、ムカつく!」
「さくらは、やっぱりおこりんぼうだよね」なんて笑ってる。
「しようと思っても、俺も今日は無理だよ。
昨日だけじゃなくて、ずっと寝てないんだ。寝れなくて。
さくらと一緒なら寝れるかと思って」
「今日は、眠りたかったの?」
「いや・・・話もしたかった」
「別れるって事は、今朝、奥さんと話したの?」
「家には、着替えに戻っただけ。まだ話してない。
奥さんには、女んとこ行ってたのかって怒鳴られたけどね。
一晩、ファミレスで過ごしたと話したよ。信じてないかもしれないけど」
「そりゃ、奥さんはそう思うよ」
「じゃあ、別れるとはまだ話してないのね」
(・・・なんだ、良かったぁ。別れると決まったわけじゃないんだ。佐々木さんの決意表明みたいなもの?なのか)
「帰ったら、奥さんに言うの?」
「いや。もう少し落ち着いてから。今は2人とも冷静に話せる状況ではないから。時期をみて話すつもりだよ」
「そう・・・。話したかったのって、これ?」
「いや。まぁそうなんだけど。他にもあって」
(他って、なんだろう?)
「あのさ、さくら。俺がもし離婚しても、ずっと今のまま付き合ってくれる?」
(そんな事を心配してたのか・・・)
「うん。いいよ。佐々木さんの事、好きだから、ずっと付き合うよ」
「ありがとう。
それじゃあ、俺がもし離婚したら、・・・・結婚してくれる?」
(はぁ?け・けっこん?)
「・・・・・。
正直言うと、佐々木さんとの結婚って考えたことなかった。というより、結婚なんて考えちゃいけないと思っていたし。・・・・ごめん。今は何もいえないわ」
「そうか。・・・そうだよな。分かった」
「でも、言ってくれたのは嬉しいから、ちゃんと考えるから」
このときが、今思い返してみても、一番楽しい時期だった。
例え、佐々木さんが奥さんと揉めて逃げ場を私に求めただけであっても、なんだか一番、嬉しかったと思える。
これから、自分が手に入らないものを、ずっと追い求めていくとは想像もしてなかった。
その日は、手をつないで、二人で朝まで寝ていた。
今まで凄く不思議だった事がある。
好きな人と二人でいるのに、なんで夫婦になるとセックスをしないで寝られるのかと。
好きな人と一緒にいれば、自然にしたくなるものだと思ってたから、不思議だった。
それが、ドキドキを通り越して、「安心」するから、何もしなくても寝られるんだと分かった。
私は神経質で、他人とは一緒に眠れなかったけど、今朝は違っていた。それがまた嬉しかった。
佐々木さんと私の関係は、前よりもちょっとだけ変わっていた。
休憩だったホテルが、宿泊に変わり、
土日も会えるようになった。
そして、プライベートな話も、ちょっとずつではあるけど、踏み込んだ話をするようになっていた。
私が聞きたくても聞けなかったのは、奥さんの話だった。
佐々木さんは、奥さんの話題は避けていた。だから私も聞けなかった。
どんな人なんだろう?って思っていた。
バレた話がきっかけに、思い切って奥さんのことを聞いてみた。
休みの日、一緒にドライブにでかけた。
今日は江ノ島に。江ノ島の灯台と散歩してから葉山にでて、私の大好きなお店に案内した。
運転している佐々木さんに話しかけた。
「奥さんとは、どうなったの?」
「・・・今は、冷戦状態かな。お互いに無視してる。話は全然してないよ」
「離婚したいって話したの?」
「うん。話した。本気か?と言われたから本気だと答えたら、・・・何も言わなかった。それ以来、話してない。たぶん、向こうもいろいろと考えてるだろうから」
「そっか。」
明るくスッキリした表情の佐々木さんを見て、私もちょっと安堵した。
「私のことは、もう何も言ってないの?」
「さくらの事も言わなくなったな・・・。俺が絶対に教えないって言ったから、諦めたんじゃないかな」
佐々木さんは、そう軽く話していたが
(本当かな?相手の事を知りたがらない人はいないと思うけどな)と思っていた。
「ねぇ、佐々木さんの奥さんって、どんな人なの?」
「さくらは、今日は奥さんの事を聞きたがるね。気になるの?」
「うん、気になるし・・・佐々木さんも言わないでしょう。だから聞いてみたくて。それに、ほらっ。田中さんが言ってたでしょう。奥さんが、部長やら田中さんに電話で文句を言ってたって。あの印象が強くて。すごく気の強い人なんだと思ったんだけどさ」
「ああ、田中さんね。そう酔うとね、言うんだよ。ネタにして面白がってるんだよ、あれ」
「うーん。気は強い方かもしれないけど、ちょっとでも違うかな・・・・・・」
「しっかりしてるって感じ?」
「うーん。しっかりしてるけど、してないところもあるからな・・・・・」
「ええ?いったい、どんな感じなの?・・・私と似てる?」
「いや、さくらとは全然違うよ。むしろ正反対だな」
「いや、なんかますます分からなくなったよ。じゃあ、私と違うところって、どんなところなの?」
「そうだな。曲げないところかな」
「曲げないって?意見を?
それなら、私も自己主張するほうだから、一緒じゃない?」
「いや、さくらはさ。自分の意見は言っても、最終的には人の意見に従うよ。奥さんは、絶対に自分の思ったことを通すんだよ」
「なるほどね~。でもさ、そんな性格の人なら、佐々木さんと合うじゃん(佐々木さん、優柔不断だしさ)」
「いや。子供の教育では、話が合わなくて、喧嘩になってたよ」
「どんな事で喧嘩になったの?」
「もっとさ、子供をのびのびさせてあげれば良いのにと思ってさ」
「そっか。子供の教育方針が違って、奥さんとの仲が悪くなったの?」
「え・・・いや・・・。そうじゃないよ」
佐々木さんは、黙ってしまった。
デリケートな面をもつ佐々木さんに、これ以上ドカドカと踏み込んで聞くのは、無理かな・・・と思った。
けど、揉め事の嫌いな佐々木さんが、なぜうまくいかなくなったのか想像できなかった。
奥さんの性格がキツイのかと思っていたが、どうやら違うみたい。
どちらかというと、芯がシッカリしていて、佐々木さんと合ってる感じだし、
何が理由なのか知りたかった。
知りたくなったら、どうしても聞きださずにはいられない。
知りたいと思ったら、知りたい!それだけ。
この頃の私は、本当に自分の事しか考えてなかった。
今になってみると、こういった心の奥深い話は、
相手との絆を深めて、信頼を勝ち得た上で、
相手が自ら進んで話すのを待つべきことだった。
当たり前のことだか、それを当時の私は知らなかった。
「佐々木さん、あのね・・・。
最初に付き合ったときね、奥さんと上手くいってないと私に言ってくれたでしょう?
あれから、私、ずっとその理由を教えてくれるのを待ってたの。いつかきっと、私に話してくれるって。
・・・でも、佐々木さん、何にも教えてくれないから」
と悲しそうに言ってみた。
「そうか、そうだよな・・・。気になるよな。ごめんな。
けど・・・、さくらに話したら、気にするんじゃないかと思って」
と言って、そのまま押し黙ってしまった。
ならば!と思い
「佐々木さんの言うとおりだよ。私もね、聞きたいけど、本音では聞くのが怖かった部分もあるから躊躇してた。
けどね、結婚の話をしてくれたでしょう。あれでね、もっと佐々木さんの事を知らないといけないと思ったの。だから・・・」
とプレッシャーをかけた。今の佐々木さんには結婚の話が一番重みのある言葉だろうと踏んだ。
けど、考え込んだままで返事は無かった。
こうなったら押してダメなら、引いてみろだ!
「でもね、佐々木さん。言いにくいなら、言わなくてもいいからね。
私は、無理して言って欲しいわけじゃないから。
佐々木さんが、私に話したくなった時に、教えて欲しかったの」
しばらく沈黙が続いた。
今日はもう無理かなと思った時に、佐々木さんが話し始めた。
「俺が、前に勤めてたところのこと、話したことあるよね?」
(ああ、あの有名なところね・・・)
「そこは縦社会でね、イエスマンばかりが多くて、俺は合わなかったんだ。
新しい企画書を持っていっても受け付けてくれないところで。
それに、俺の場合(地方の国立大卒)だと、将来のポジションも決まったところまでしかいけない。
だから、30前の転職しやすいときにしようと思って、辞めたんだよ」
ふんふんと聞いていた。
佐々木さんと一緒に仕事していると、
常に新しいもの、斬新なものを手がけていたし、それが佐々木さんの評価になっていたので、
言ってる事はよく分かった。
30手前か・・・と聞いて、ふと気づいた。そうか!
「その頃って、ちょうどお子さんが生まれる頃?」
「うん。そうなんだ」
「それで、辞めるときにさ、まぁ相談しないで辞めたんだ。それで、辞めたら社宅もでないといけなくなって」
(そりゃ、妊娠中だか、生まれてからだか分からないけど、そんな時に仕事辞められたら、怒るに決まってるわ)
「で、俺は語学が得意だろう?それを武器にして、職を探したんだ。
さくらは、〇〇会社って知ってる?」
「・・・ごめんね、分からないわ」
「そこね、日本の会社なんだけど、マーケットはほとんど海外なんだ。
年間の3分の2は海外へ行ってて、日本にほとんどいなかったんだ」
「気づいたら奥さんがちょっとね、精神的に不安定になっていて・・・。子供にもね、影響がでていたんだ」
「ええ!お子さんに影響がでたって、そんなに酷かったの?けど、出張で旦那さんがいない家なんて、いっぱいあるのに・・・」
佐々木さんはちょっと言いにくそうに
「うちの子さ、アトピーなんだよね。夜中とかさ、痒がって眠れなかったりするんだ。一日中、ずっと奥さんがついてないといけないから、それがね辛かったんだと思う」
「そっか・・・。それはお母さん、辛いね」。想像しただけで、本当に大変そうだなっと思った。
「それで、これはもうヤバイなと思って、そばにいないとダメだなと思ったんだ。けど、そこの会社では日本での仕事は無いから、無理だと思ってさ。それでまた転職したんだ」
「今の会社でも、最初は海外だったんだよ。けど、今の部長に事情を話して、日本に残れるように異動させてもらったんだ」
「そっか。そんな事があったんだ・・・」
なんだか、すごく納得がいった。
佐々木さんがギャンブルにハマッたり、女にハマッたりは想像できなかったし、そういう事が原因だとは思えなかったから。
仕事がきっかけ。
でも、仕事を優先にしたけど、最終的には奥さんと子供を選んでる。
なんだか、らしいなと思った。
「私が言うのも何だけどね、だったら、(子供さんのためにも)別れないほうがいいんじゃないの?」と言ってしまった。
「さくらなら、そう言うと思ってたよ・・・」
苦笑いしながら、佐々木さんはそう言った。
「俺もさ、そう思ってた。俺のせいだしね。
けど、この間の(バレた時の)喧嘩で思ったんだ。
子供に、こんなに仲悪い姿を見せるくらいなら、もう別れた方がいいのかなと。
別の意味で、子供をフォローしていくのも有りだと思ったんだ」
そこまで覚悟していたんだ・・・と思ったものの、なんだか心の奥ではモヤモヤしていた。
(子供を手放すってことだよね?そんな不安定なお母さんに子供を任せて、大丈夫なの?)
けど、奥さんのことは聞きにくかった。変わりに
「お子さんは、・・・大丈夫なの?」と尋ねた。
「うん。もうだいぶ身体も大きくなったしね。季節の変わり目はちょっとしんどくなるけど、だいぶ良くなったよ」と。
(アトピーが良くなってるから、奥さんも安定したってこと?)
大事なことは聞けずに、この時はそのままでいた。
心の中のモヤモヤは、ずっと晴れなかった。
佐々木さんは子供の為に別れるって言ってるけど、奥さんと子供だけにして、大丈夫なの?前はそれで、不安定になったんでしょう?
なんか、矛盾してる様に思えた。
それに、この事にこだわってしまったのは、自分の子供時代に重ねてしまったからだと思う。この時には無意識だったので分からなかったが。
私は、小さい頃、しょっちゅう母親に叩かれて育った。
父は、出張でほとんど家にいなかった。
けど、父が家にいるときは叩かれないので、父が帰ってくると、父のそばにベッタリいて離れなかった。
佐々木さんの話を聞いてみて、初めて母の気持ちも考えた。
母も、奥さんと同じように父がいない間の子育てのストレスが溜まって、子供に八つ当たりしていたのかもと。母はひとりで頑張っていたのに、私はその気持ちを踏みにじって、父にベッタリしたので、余計に腹を立てたのかもと。
反面、子供時代の辛い気持ちを思い出すと、あんなことは許されることではないと思った。
けど、私は今、加害者になって、佐々木さんの子供に同じような目に合わせてるんじゃないかと思った。
佐々木さんは離婚を決意してから、土日のほとんどが私と一緒にいる。
その間・・・もし叩かれていたとしたら?
けど、佐々木さんちと、私の家は違う。
佐々木さんは、父親が家にいないほうが上手くいくと思っている。
ウチとは違うんだ、きっと。
そうか、そうなんだ。
そう思い込もうとしたが、心のモヤモヤは晴れなかった。
この頃から、私も不安定になっていた。
はっきりと聞けば分かることなのに、自分が加担していると分かるのが怖かった。
私は、常に自分の中に怒りを持っていたが、自分が罪を犯したことを認めれば、自分にその怒りが向かっていく事がわかっていた。それが怖かった。
心に蓋をし、目を閉じ、耳と口も閉じ、知らないふりをした。
友達2人に、この佐々木さんとの不倫の話をしていた。
不倫なんて、恥ずかしいし、他の人になんて思われるか分からないから、あまり言いたくなかったが、
だんだんと自分だけの心に閉まっておくのが苦しくなって、仲の良い友達2人に話してしまった。
最初は、当然のごとく怒られた。「奥さんと子供のことを考えろ!」と。
自分の事しか考えられない、最低な人間だとも言われたし、逆に既婚者に騙されてるんじゃないかとも言われた。
佐々木さんが、奥さんと別れる決意をしたことも、この2人に話した。
が、友達は「それって、本当のことなの?さくらがさ、離れていくかもしれないって心配になって、奥さんとは別れるからって嘘付いて、引き止めてるだけじゃないの?」と疑った。
その時の状況を思い浮かべて、特に佐々木さんの辛そうな表情を思い出すと、それは無いな・・・とは思ったものの、
証拠があるわけではない。疑おうと思えば、疑える。
それに私は見る目がない。今までも、男の嘘を信じてしまい、まるで見抜くことができなかった。
自信は無かった。
友達が「その彼に会わせてよ。もしさくらに本気なら、友達に会おうとするでしょう。もし会わないなら、単に遊びなんだよ」
なるほど~と感心した。
早速、佐々木さんに「友達が会いたがってる」と伝えた。
佐々木さんから快くOKの返事をもらったので、早速会う手配をした。
友達2人(アイちゃんとサツキちゃん)のうち
「騙されてる」と強く言っていたアイちゃんと会うことに。
男を見極めるのは、男の方が良いだろう!とのことで、
当日になってアイちゃんの彼氏(聡君)も急きょやってきた。
4人で、当時デートスポットとして人気のあった場所にいき、
近くのレストランで食事をした。
食事中は和やかな雰囲気で、特に何も問題なく終わったので良かったな~と思っていた。
アイちゃんは、佐々木さんは思ってたより良い人だったと言うし、
聡君はスマートで大人だったと言うし、
2人とも悪い人では無さそう(嘘を付いて騙すような人では無さそう)・・・との判断だった。
しばらくするとサツキから連絡があった。
「アイから聞いたんだけど、4人で会ったんだって!アイの言ったことで、彼氏(佐々木さん)怒ってなかった?」
と聞かれた。
「え?怒ってるって、何を?普通に、和やかに終わってたけど?」
「もしかして、聞いてないの?アイ、かなりキツイ事を言ったらしいよ」
「何?それ????聞いてないよ」
「そうなんだ。うーん、私から聞いたとは言わないで欲しいんだけど・・・。
さくらが席を離れた時にね、さくらの事は本気なのか?奥さんとはどうするんだ?あの子は信じやすいから、騙してるなら許さないって詰め寄ったみたいよ。
・・・本当に彼氏(佐々木さん)から聞いてないの?」
「えー、知らなかったよ。何にも言ってないし、そんな素振りは全然見せなかったよ」
自分の知らないところで、そんな事が起きていようとは。
「彼氏(佐々木さん)に一応、フォローしておいた方が良いんじゃない?・・・・そうそう、私もね、その彼氏に会ってみたいな~。アイだけ会って、私が知らないのは嫌だし」
「分かった。佐々木さんに聞いてみるわ」
次に佐々木さんに会ったとき、すぐにこの話を切り出した。
「ごめんね。この間、アイがキツイ事を言ったんでしょう?私が席を離れてる間に。嫌な思いさせちゃって、本当にごめんね」と謝った。
すると佐々木さんは
「全然、気にしてないから大丈夫だよ。
というよりも、友達が会いたがってるって聞いたときに、そういう事を言われるんだろうなって、想定してたし。
それよりもさくらは、良い友達がいるなって思って、俺は嬉しかったよ。さくらの事を本気で心配してくれてるんだね。」
とニコニコして言ってくれた。
なんだか、とっても嬉しかった。
キツイ事を言われたにも関わらず、佐々木さんのこの発言に、すごく得意な気分になってしまった。
サツキが会いたがってることも話した。こちらも快くOKをしてくれた。
早速、サツキに報告した。
サツキと会うときには、少し遠出した。
佐々木さんが車をだしてくれて、海の見える景観の良いレストランで会った。
サツキは彼氏がいないので、3人で会ったが、こちらも和やかに終わった。
会計を済ませた後に、私はひとりでトイレに行った。
アイたちの時も全額、佐々木さんに奢ってもらっていたが、
サツキのときも全部出してもらっていたので、申し訳ないな・・・
後でいくらか佐々木さんに渡そう、渡しても受け取ってくれないかな、なんてそんな事を考えていた。
トイレから帰ってみると、2人の様子がなんだかおかしかった。
特に佐々木さんは挙動不審?というか、私と目を合わせないし、とにかくなんか変だと思った。
先に、サツキを家まで送り届けてから、私の家まで送ってくれた。
その途中に、佐々木さんを問い詰めた。
最初は、アイと同じようにサツキも佐々木さんに厳しい言葉を言ったのかと思ったが、佐々木さんだったら前のように、気にしないだろうし・・・。
けど、急に態度がおかしくなったのは、私がいなかった間に何かあったはずだ!と思った。
「サツキとさ、何かあったの?なんか様子が変だよ」
「え?そ・そんなこと無いよ・・・。さくらの考えすぎだよ」
(やっぱり、おかしい。動揺してる)
佐々木さんの手が無意識にポケットを触るような動作をしてるのを見て、ピンときた。
「じゃあ、携帯みせて!」
「え!な、なんで!」
「何にも無いなら、見せれるでしょう!」
無理にポケットから携帯を奪い取った。
「わ・分かった・・・言うよ。だから携帯を返して」
「ダメ!!全部言ったら、返してあげる」
「分かった。いやさ・・・。別に悪気があって、黙ってたわけじゃないんだ。
・・・・言ったら、さくらが傷つくと思ってさ・・・。
さくらがトイレに行った時にさ、サツキちゃんが、
『さくらってワガママで佐々木さん大変でしょう。さくらの事で何か相談したいことがあったら、私に言ってください』って言われたんだ。
ビックリしたんだけどさ・・・
『さくらは全然ワガママ言わないよ、逆に俺が負担かけちゃって可哀想なことをしてる』って答えたんだよ。
そしたらさ、佐々木さんってすごく優しい人なんですねって言われて、電話番号を交換してくださいって。何か困ったことあったら、連絡くださいって。
いや、教えるのはマズイって言ったら、じゃあ私の番号だけ教えるって言って」
携帯を確認してみたら、確かにサツキの番号がのってる。
「嫌だったらなんで、サツキの番号を登録してるの!それも断ればいいじゃん!言ってること、おかしいよ!」
「サツキちゃんが、俺の携帯を取ってさ、自分で登録したんだよ。
さくらがもうすぐトイレから出てくるかもしれないと思ってさ、だから登録するのをそのまま見てたんだよ。
さくらと別れたら、消そうと思ってたんだ」
「じゃあ、目の前で番号を消して!」
「わ・分かった。・・・ほら、消しただろう?もう怒るなよ」
私には、サツキがそんな事をするとは思えなかった。
アイには、かなりキツイことを言われたが、
どちらかと言うとサツキは私の悩みを優しく聞いてくれて、
応援してくれてると思っていた。
佐々木さんとは、私がぶち切れてまま、その場を別れた。
やっぱりアイが正しかったのかぁ。
常々、アイは「既婚男は、若い女の子と遊ぶためなら、なんでもやる!」と断言していたので、その通りだったなっと意気消沈した。
佐々木さんからは、何度も電話がかかってきたが、全部無視してた。
落ち込みながら、アイに電話した。
「いや・・・アイの言った通りだったよ」と言って、佐々木さんとサツキの事を話した。
けど、アイからは思っても見ない答えが返ってきた。
「それは、さくらが悪い!」
「え?なんで?私が悪いの?・・・2人の事を勘違いしてるってこと?」
(あの2人が、純粋に友達として、電話の交換をしようとしてたってこと?)
「そうじゃないよ。トイレ行く時に、2人きりにして残したってことだよ!」
「え!!だって、トイレ行ってる間だよ。そんな短い時間に、そんな事するなんて、思わないじゃん」
「思わないほうがおかしい!それにサツキだよ・・・。
私だったら、絶対に聡君とサツキを2人きりになんてしない。盗られるの分かってるもん」
「え?サツキってそんな事する?アイは何かされたことあるの?」
「無いけどさ。学生の時のサツキを見たら、分かるでしょう?」
「ああ、あの男2人がサツキを取り合ったってやつ?」
サツキの顔をみると、いつも竹内まりやの「けんかをやめて」を思い浮かべてしまう。
2人の男が自分のために喧嘩して、間に挟まれてるのが辛いと言ってたな~。
「さくら、知らなかったの?あれさ、サツキがわざとやったんだよ。男は友達同士だったんだけど、どっちにも気のある素振りしてね、その気にさせたの。
まぁ、佐々木さんの事は分からないけどさ。私なら、サツキを自分の彼氏に合わせたいとは思わないな」
衝撃的だった。
じゃあ、佐々木さんの方が正しいの。
続けてアイは「悪いけど、私はさくらも聡君と2人きりにしたくないからね。・・・それを、よく考えてみな」と言われた。
佐々木さんのことよりも
サツキのことよりも
アイの最後の言葉が一番、グサッと胸に突き刺さった。
そうか・・・。
私は友達の彼氏を盗ろうとは思わないし、そんな事、考えたことすらなかったけど、
周りから見ると、不倫している自分は、同じ立場。
・・・というより、結婚してる相手なんだから、それ以上にたちが悪い!
友達から、彼氏を紹介したくないと思われてしまう、そんな女なんだという事か
サツキには、この件を聞くことは無かった。
なんだか、アイの一言で、私の立場だったらサツキに何も言えないなと思って、うやむやにしてしまった。
言い訳になるが、佐々木さんと一緒にいる時には、
既婚者だという事をすっかり忘れてしまっていた。
どこに行くのも、普通のカップルのように普通に行っていたし、
毎日のように電話もしていたし、
会話の中に家族の話がでることも無かった。私が聞く限りだが。
子供のことは頭にチラっと浮かんだが、思い出すたびに頭から消すようにしていた。
しかし、どうやら私は勘違いしていた様だ。
アイから「よく考えな」と言われたが、自分がどうしたいのか、よく分からなかった。
佐々木さんの事は好きだ。付き合っていたい。
だからといって、無理に奥さんと別れて欲しくない。子供さんのことがあるから。
この相反する2つの事が、自分の望みだったが、
どっちも自分には選べなかった。
それから、4-5日後、
先輩の長瀬さんから「さくらちゃん、お使い頼める?これさ、佐々木さんに渡して欲しい」と頼まれた。
あれからずっと、佐々木さんの電話は無視してた。だから、仕事とはいえ会いづらい。けど、断る理由も思いつかなかった。
長瀬さんはさらに「佐々木さん、外出して、いないかもしれないって言ってたから、いなかったら机の上に置いてきてね」と。
佐々木さんが会社にいないことを祈りながら、佐々木さんの会社へ向かった。
会社につくと、フロアには部長しかいなかった。
「さくらちゃん、どうしたの?」と聞かれたので、
「佐々木さんへ、長瀬先輩からの預かってきました」と言って、机に置いた。
部長から「さくらちゃん、最近、頑張ってるらしいね。佐々木から聞いてるよ」と声をかけてもらった。
嬉しかったが、なんだか微妙な気持ちになりながら、フロアを出た。
エレベータで下の階に降りると、開いたドアの前に佐々木さんがいた。
(げげ、最悪)と思いながら、「お疲れ様です。長瀬さんから、〇〇を預かりました。机の上におきましたので、ご確認お願いします」と言って、そのまま帰ろうとした。
「ありがとう。けど、直しがあるかもしれないから、ちょっといてくれないかな?」と言われた。
気まずいけど、仕事なら帰れないし・・・と思って、また再度フロアに戻って、待っていた。
久しぶりにみた、佐々木さんの仕事姿。部長に向かって、ああだ、こうだと言ってる姿は、カッコイイな~と思って、ぼんやり見ていた。
しばらくすると、佐々木さんが「遅くなって、ごめんね。あれはOKだよ。長瀬君には電話でOKだと言っておいたから、もうさくらちゃんも帰っていいよ」と言われた。
「お疲れ様でした」と言って、外に出ると、しばらくして佐々木さんが追いかけてきた。
「ごめん、さくら。〇〇で待ってて」と言い残して、すぐに帰ってしまった。
>> 95
きなこさん、ありがとうございます。
読んでいてくれる方がいて、驚きました。嬉しいです。
あまりに稚拙な文章と誤字の多さに、恥ずかしいですが、
頑張って更新したいと思ってます
このとき、私はめちゃくちゃ、イライラしていた。
サツキのことではない。
このお店のことだ。
佐々木さんが待ち合わせに指定したお店は、佐々木さんの会社の目の前だった。
こんなところで会って、会社の人にバレたら一体、どうするのか?
浅はか過ぎないか・・・と思って、イライラした。
今思えば、佐々木さんもそんなことを考える余裕が無かったのだろうが、
このときの私は気づかない。
待ち合わせ場所を変えて、また連絡しようか?と思って席を立とうとすると、
佐々木さんがやってくるのが見えた。
「ごめんな、さくら。もっと早く抜けられると思ったんだけど。遅くなって」
と言って、席に座った。
ぶすっとして、返事をしない私。
「・・・いや、あの、ごめんな。この間の事で怒ってるんだろう?」
「・・・・。」
「いや、いや・・・。サツキちゃんのことで嫌な気持ちにさせて、本当に悪いと思ってるよ。でも本当に誤解だから。サツキちゃんとは何でも無いから」
「・・・・。」
「いや、参ったな。さくら、怒ってるでもいいから、何か言ってくれ」
「怒ってるよ。見たら分かるでしょ」と冷たく言い放った。
佐々木さんは、私が話した事でちょっと安堵したのか、これから他の女の子の番号は絶対に登録しないから、とか、携帯は手渡さないから、とか、一所懸命に言い訳をしていた。
けど、怒っていたのはサツキの事ではなくて、
(それは、もうアイに言われたので、どうでも言い気持ちだったので)、
こんな場所で、痴話喧嘩のような話しをしている佐々木さんに怒っていた。
「サツキの話はもういいから。それにこんな場所で、会社の目の前のお店で、いう話でも無いでしょう」と言った。
「さくら、それを心配してたのか。大丈夫だよ。この時間帯は、みんな外に出てるから。会社の人はいないよ。フロアに誰もいなかっただろ?」
確かに部長がいるだけだった。
「俺もさ、いつもはこの時間にはいないから。今日はさ、長瀬君に頼んでたものを、もしかしたらさくらが持ってくるかもしれないと思って、早く帰ってきたんだよ。ちょうど間に合って、本当に良かったよ~」
なんだか楽しそうに話す佐々木さんをみて、余計に腹が立ってきた。
「あのさ、佐々木さん。サツキの事なんだけど、サツキの番号を消せって私、言ったよね。無理やり消させて、悪かったなって思ってるんだ。サツキの番号を知りたかったら、教えようか?」
「え?・・・いや、いいよ。どういう事?」
いぶかしげに私を見る、佐々木さん。
「え?だってさ、私が言う立場じゃないじゃん。奥さんでもないしさ。あの時は焼きもちやいて、思わず言ったけど。よく考えれば、佐々木さんを縛る立場でもないしね。だから、遊びたかったら遊びなよ」
挑発的に、そう話した。
「それ、本気で言ってるのか!」怒りながら、そういう佐々木さん。
「だってさ、アイもサツキも、佐々木さんの事、優しそうな良い人だって言ってたよ。良かったじゃん。若い子にモテて。今は結婚してるから、相手してくれるの私ぐらいしかいないかもしれないけど、離婚したら、佐々木さんに合う人いっぱいいるよ」と言い放った。
「さくらは、俺の事を、そんな風に見てたのか!」
とうとう激怒した。
怒らせてやった!という優越感と
キツイ事を言ってしまったなという後悔
両方の、この矛盾した気持ちでいっぱいだった。
しかし佐々木さんは大人だった。
すぐに気を取り直して
「さくら、俺のこと嫌いになったのか?嫌いになったら、そう言え」
『嫌い』とすぐに言いそうになった。
言ったら、このややこしい関係も終わる。そしたら、友達から嫌われることもなくなる。子供への罪悪感を感じなくなる。言ってしまえばラクになる。
けど、ブレーキがかかった。
言ったらもう会えなくなるんだ。そう思ったら、言えなくなった。
しばらく二人で黙っていた。何も言えなかった。
私の方から「もう時間だから・・・」と言って、席を立った。
会社までの移動はバスだったが、停留所で確認すると、バスの時間まで時間がある。
でもここに留まっていたくなかった。
歩いて、帰る事にした。
歩きながら、だんだんと気持ちが静まってきた。
嫌われることをしたな~と思った。けど後悔は無かった。
このまま佐々木さん、私のことを嫌いになってくれないかな・・・と思った。
私からは、佐々木さんを振ることはできないと、よくよく分かった。
だから、佐々木さんから私を振って欲しいと願った。
一人暮らしをしたかった。
昔から、親と離れて暮らしたかった。離れたら自由になると思ってた。
だから、高校生の頃からバイトして、お金を少しずつ貯めて、一人暮らしをする費用を貯めていた。
しかし、父親が反対していた。理由は「女の子だから」。
しかし、この職場に働いて、実家から会社まで往復3時間以上かかる通勤時間は、体力的にかなりしんどくなっていった。
私は、疲れたり、ストレスがあるときは、よく過呼吸になってしまう。
満員電車の中で過呼吸になったら、どうしようかと心配になっていたが、それが余計にストレスになっていた。
就職してから、約1年。
本格的に、父を説得していた。
気まぐれなのか、なんなのか、いきなり了解を得た。
しかし条件として、
家の近くであること。
週末には必ず家に帰ること。
会社近くのほうが、安くて良い物件がたくさんあるから、そっちにしたかった。
けど、せっかく許しがでたのだから、これ以上は妥協しなきゃ。
会社と実家の間の路線を中心に探すことにした。
休みの日、早速、家捜しを始める為に、張り切って出かけようとした。
父が突然、「お母さんにも一緒に行ってもらいなさい!」と言い出した。
困ったことになったな~と思った。
だいたい父は、こんな感じだ。言うだけ言って、後は母に全部任せようとする。
このときも、父は母に任せて、自分はパチンコへ行ってしまった。
母は父には逆らわない。その代わりに、子供にあたる。
「あんたが余計なことを言うから、私がこんな目にあう!」みたいな感じに。
なので、「お母さん、一人で行くから大丈夫だよ」といつもの様に言った。
父の前では、一緒に物件探しに行ったことにすれば良い。
しかし、この時は違った。
「お父さんにどんな部屋だったのか伝えないといけないから、一緒に行くわ」と。
(もしかして、心配してくれてるのかな)嬉しかった。
母と出かけるなんて、何年ぶりだろうか。たぶん小学生以来だな。
先に一人暮らしをしてる友達から、リサーチをしていたので、
だいたいの目星をつけていた。
しかし、この時期はもう部屋数が少ないとの事で、
厳しいことが分かった。
2-3軒周ると、母が「もう疲れたわ。まだ探すの・・・」と言い出した。
ここで潮時だなと思ったので、
「あとは一人で探すから、帰っても良いよ。まだあっちの路線もみたいし」と言った。
けど、なかなか帰ろうとしない。
どうやら、若い女の子一人だと、不動産屋に足元を見られるから、という事を心配してたらしい。
母が「ねぇ、さくらって、誰だかさんと付き合ってるんでしょう?」
「え?佐々木さんの事?」
詳しくは話してないが、付き合ってる人がいるとだけ話していた。
「そうそう、その人。その佐々木さんって人、今から出て来れないかしらね」
(何を言い出すんだ、この人は)
「いやー無理だと思うよ。仕事かもしれないし、こんな急には無理でしょう」
「もしかしたら、来てくれるかもよ、電話してみなさいよ!」
「いいよ。迷惑になるから」
「男の人はね、女の子に頼られるのが好きなのよ!大丈夫だから電話しなさい」
こんな会話を、不動産屋さんの中で、延々と続けた。
不動産屋さんにも迷惑になると思って、私が根負けした。
「とりあえず電話だけね」と言って、佐々木さんへ電話することになった。
(電話にでなきゃ、いいな・・・)と思ったが、
佐々木さんはでてしまった。
ザッと事情を話すと、「すぐ行くから!待ってて」と言って来てくれることになった。
妻子のある男を、自分の親に会わすのって、どう?やっぱり変だよね?
さすがにそれはマズイと思って、
「佐々木さん、来てくれることになったから、お母さん、帰っていいよ!」と言って、早く追い返そうとした。
「いや、それなら挨拶しないと!」と言って帰ろうとしない。
「いや、佐々木さん、仕事だから遅くなるかもって言ってたから(嘘だけど)、いつになるか分からないよ」と言って、無理やり駅まで連れて行った。
駅まで連れいって、ホッとした。
佐々木さんとは、不動産近くの店の前で待ち合わせしたので、そこに行ったら、もう待っていた。
「遅くなって、ごめんね」と言って、少し立ち話をして、不動産屋さんに行こうとしたら、
なんと目の前に母が戻ってきた!
「不動産屋に忘れ物しちゃって」なんて、わざとらしい。
「いつも、娘がお世話になっています。お話はいつも伺ってるんですよ」等と、いつもより1オクターブくらい高い声で、話し始めた。
うわ~最悪だ。佐々木さんも、親に会うなんて嫌だろうなと思ったが、
普段通り、というか愛想よく、母と話している。
「(不動産の)営業マンを待たせてるから・・・」と言って、話を切り上げさせて、母とは別れた。
「さくらのお母さんって、若いよな。最初はお姉さんかと思ったけど、『娘が・・・』て言われて驚いたよ」「良いお母さんだな」なんて言ってる。
お世辞ではなく、本当に若くみられる。少し前にも、私と同年代の男の子にナンパされたばかりだった。
母を見ると、たいていの人からは良いお母さんでよかったね、と言われるが、実際の姿を知ってる私は複雑な気分になる。
つくづく外見が良い人は、得だな~と思う
佐々木さんに迷惑だったのかと心配していたが、全然そんな様子はなく、むしろ私よりも積極的に物件を見てまわった。
母の言っていた、「男の人は頼られるのが好き」っていうのは、当たってるもんなんだなと感心した。
結局、1日だけでは決まらなかったので、後日もう一度、物件巡りをすることにした。
結局、ある部屋に決まった。
私は古いところだったのでイマイチだったが、佐々木さんが「絶対に、ここが良い!」と主張した。
部屋が広くて、トイレとお風呂が別なのが気に入ったらしい。
家賃の値下げ交渉もしてくれた。
「さくらってさ、お給料いくらもらってるの?」と聞かれたので、
「素直に〇〇万円だよ」と答えた。
「え!そんなに少ないの?ボーナスは?」
「ボーナスなんて、貰ったこと無いよ」ちょっと恥ずかしかった。
「え・・・じゃあ、俺がいくらかサポートしてあげようか?」
「サポートって・・・?」
「うーん、家賃全額は厳しいけど、半分くらいなら、どうかな?」
思ってもみない申し出だったので、返事に困った。
それにそれって、・・・愛人みたいじゃん。
なんだかショックだった。
「いや、自分一人で生活してみたいから、いいよ」と断ると、
すごく残念そうな顔をした。
「じゃあ、光熱費代は?さくらに何かしてあげたいんだ」
何かって。気持ちは本当に嬉しかった。
でも、毎月毎月、光熱費代を払ってもらう姿を想像すると・・・なんか違うと思った。
1年後も2年後も、この付き合いをこの状態で続けているのか?
申し訳ないけど・・・と言って、断った。
断ると、本当に残念そうだった。
母の言った「頼られるのが好き」という言葉が思い浮かんで、ちょっと胸が痛んだ。
「変わりに何かプレゼントさせてよ。入居祝い。何が欲しいか考えておいて」
一緒に買い物に出かけたが、さすがに気の長い佐々木さんでも、私の買い物には呆れたらしい。
私の買い物の仕方は本当にうっとうしい。こだわりすぎるので、迷いに迷う。買う覚悟ができない。
お店を何軒も何軒も周って、現物を見て、価格のチェックし、1回じゃ飽き足らず、2回も3回もお店にいって、買うか迷う。
2回までは、一緒に付き合ってくれたが、さすがにそれ以降は「買うと決めたら連絡して」と言われてしまった。
必要最低限の物を揃えるだけで、ものすごく時間がかかってしまった。
まだまだ部屋は閑散としていたが、これからどんどん物が増えていくだろうと楽しみに思った。
ある程度、物がそろったので、佐々木さんを部屋へ招いた。
佐々木さんからは、家具をプレゼントしてもらった。
「俺が、今日の夕飯をつくってあげるよ」
「え?!佐々木さんって、料理できるの?」
「俺さ~、休みの日になると、いつも作ってるんだ。上手いんだぜ」と言って、早速作り始めた。
男の人が料理しているのを始めてみた。
父は料理しないし、今まで付き合った人もしなかった。
付き合い始めは、私が料理すると喜んでくれるものの、だんだん当たり前になり、家政婦みたいだな~と思って、嫌だった。
「座って待ってて」と言われても、気になって台所をウロウロしてた。
「この部屋さ、台所が別に付いてるのが良かったんだよね。ガス台だと料理もできるしね。」楽しそうに料理をしていた。
見てると、やけに野菜を細かく切っていた。それによく炒めていた。
なんでこんな風に料理するのかな~と思っていたが、ふっと友達の言った事を思い出した。
その子は高校時代の友人で、保育士さんをしている。
「お弁当を見るとね、その子の親がどんな人か分かるんだ」と言っていた。
子供が食べやすい様に、野菜を細かく刻んだり、おにぎりを一口サイズにしたり、子供に合わせた料理をつくる親。
反対に、たとえおかずの種類がたくさんあったとしても、子供の口には入らない様な大きさの料理をつくる親。
「お弁当を食べるときにね、すごく食べにくそうにしてるの。そういうのに、気づく親と気づかない親っているのよね。やっぱり見てると、子供の安定度も違うのよ」と。
この人は嘘じゃなくて、本当に家で料理を作ってるんだろうなって思った。
良い旦那さんじゃないか。
私にとっては、本当に理想の旦那様だ。
奥さんは、こんな人に選ばれて結婚したのに。
なんで冷たくしているのか!
頭では事情は分かっているが、気持ちの中では腹立たしい気持ちでいっぱいになった。
もちろん、単なる嫉妬だ。
単なる嫉妬だけど、手に届かないものへの渇望かもしれない。
佐々木さんの奥さんに関係がバレてから、3ヶ月後だったと思う。
「さくら、連休中はたぶん連絡ができないと思う」と佐々木さんに言われた。
その頃の佐々木さんは奥さんと膠着状態だったものの、以前と同じような生活に戻っていた。
平日は家に遅く帰り、土日は家で過ごすようになっていた。
私は親との約束通り、週末から土日には実家へ戻って、親と一緒に過ごしていた。
「連休中に、どこか行くの?」
「いや・・・兄貴たちが家に来るんだ」
「お兄さんたち?どうして、東京に?観光?」
「いや・・・そうじゃなくて。話し合いをするために、来るんだよ」
「え?!話し合いって?どうして、お兄さんが?」
離婚は夫婦間の問題としか捉えてなかったこの時の私には、佐々木さんの家族が出てくることは理解しがたい事だった。
「親父とお袋は、兄貴の子供とウチの子供を連れて、ディズニーランドへ行くから、その間に、兄夫婦と俺たちで話し合いをすることになってるんだ」
「お兄さんは、何て言ってるの?」
「子供の事を考えろ!って怒ってるよ。前から、言われてたんだけど、俺がさくらと別れないから、とうとう家族みんなで説得しに来るんだ」
苦い顔をしている。
その様子を見るに、そうとう厳しく責められたんだなと思った。
「そういえば、奥さんの方は?奥さんのお父さんやお母さんは来るの?何か言われた?」
「いや・・・来ないよ。うちだけ。何も連絡はないな」
「ふーん、奥さんは親と仲が悪いわけじゃないよね?よく実家に帰ってるし」
佐々木さんを説得し、責めたいのなら、まず奥さんの方の家族がくるはずだろう。なんでこないのか?
佐々木さんに聞いても、分からない。
なんだか腑に落ちなかったが、とにかく大変な事になったと思った。
説得されなければ良いな~と思う反面、少しは事態が動くことも期待した。
連休中は不安だった。不安だけど、何も出来ない。
ただ佐々木さんがどうするのか、見守ってるだけ。待ってるだけ。
連休が終わった後、すぐに佐々木さんから連絡があった時には、本当にホッとした。
疲れ切った様子の佐々木さん。
私の顔を見ると、佐々木さんもホッとしたようだった。
「会いたかったよ、さくら・・・」
「お疲れ様。お兄さんとの話し合い、どうだったの?大丈夫だった?」
「ん・・・彼女と別れろって言われた。けど、俺が絶対に別れないと拒否したから、最後にはもし彼女と結婚するなら、家族の縁を切るといわれたよ」
そっか・・・。もし私と結婚しても、誰にも祝福されないのか・・・そう思うと悲しくなった。
けど、それだけの事をしている。当然なんだろう
それから、1週間後くらいだっただろうか。
佐々木さんから「さくら、ごめん。これから土日会えないから」と言われた。
理由は、奥さんがパートに出始めたから。
土日のパートだから、その日は佐々木さんが子供の面倒を見るからと。
そもそも土日にそんなに会ってるわけではないし、
私も実家へ戻らないといけないから、困ることは無かったが・・・。
さらに、それから1週間後くらいだろうか。
佐々木さんが、珍しくすごく酔っ払っていた。
泣きそうな顔をしていた。
「さくら、あいつ(奥さん)が謝ってきたんだよ」
「え?奥さんが!」
佐々木さんの話では、とても謝りそうに無い奥さんだったので、私も驚いた。
「私が、悪かったって。俺がさくらへ気持ちがいったのは、私が全部悪いって。今まで、冷たい態度をとって、寂しい思いをさせたからって」
「これからは、もっとあなたの事を考える。子供の為にも戻ってきてと、言われた。なんなんだよ、いったい。今さら、何を言ってるだよ!」
この時になって、やっと気づいた。
奥さんは、本気で彼を取り戻すつもりだ。
かしこい女性だと思った。
彼をよく分かってる。すごいなと。
佐々木さんの親兄弟に相談をして、なぜ自分の親に言わないのか、不思議に思っていた。
あくまでも想像だが・・・
私との関係がバレた時に、奥さんは佐々木さんを責めた。
佐々木さんは奥さんに反発し、関係は悪化した。
奥さんの親に言えば、同じことが起こると思ったのだろう。
自分が苦しくて親に助けを求めるよりも、佐々木さんとの将来を優先させた。
感情よりも、理性を優先できる、そんな頭の切れる女性なんだと思った。
土日も、私と会う時間を減らすためだろう。
弱みを見せたのは、情にもろい佐々木さんを分かっていたからだろう。
すごいな。
こんな人に勝てるんだろうか、私が。
当たり前だが、勝てるわけがなかった。
けど、焦っていた。何かしなくてはいけないと。
バカな私は、あまり深く考えず・・・
というよりも、自分だけのことを考えて、佐々木さんにこう申し出た。
佐々木さんの子供を、自分たちで引き取って、育てればいいのでは?と。
私にとっては最大限の愛情だった。
『虐待された子は、親になれば虐待する』と言う。
私は親に叩かれた子だったので、自分が親になった時に、叩く親になることをすごく恐れていた。だから結婚なんてするつもりは無かったし、親になんてなれるはずがないと思っていた。
けど、そんな私でも佐々木さんの子供は頑張って育てようと覚悟しての事だった。
しかし、佐々木さんに
「さくらに子育てできるわけがないだろう!」と一喝された。
「でも、奥さんが不安定なら、子供が・・・」と言う私に対して、
「だから、悩んでるんだ!離婚して、子供を奥さんに任せるのは不安だから、離婚できないんだ。余計なことを言うな」と怒鳴られた。
>> 126
最初から一気に読みました。
この後も気になります。
にゃんきちさん
ありがとうございます。
明日以降から、更新できると思いますので、お待ちくださいませ
>> 127
佐々木、怒鳴るようになってきたな。
あさん
ありがとうございます。
怒鳴られたのは、この一回だけです。もうすぐ終わりです。
>> 128
まだ やってる💦
これ 小説だったの❓
過去の思い出(反省)をつづった日記です。
ひとり言だと思っていただければ、ありがたいです。
小説では無いので、修羅場も何もない、つまらない話ですが、
読んでくれる方もいるようなので、続きを書きますね。
時間ができましたので、更新します。
さらに佐々木さんから
「だから、さくらに話すのは嫌だったんだ。俺の家族のことなんだから、俺がなんとかする。だから、さくらは何も言うな」。
口を出してはいけなかった。
佐々木さんを信じて、待っていなければいけなかった。。
余計なことを言った自分は、なんてバカなんだろう
けど、拒否されて、悲しかった。
それから1ヶ月後。
佐々木さんの妹さんが、佐々木さんの家に泊まることになった。
お兄さんがきた時とは違って、とても嬉しそうだった。
「妹は、とても頭が良いんだよ!大学院で、研究をしてるんだ」と自慢気にいろんな話をしてくれた。
妹さんは、私と近い年齢。佐々木さんとは年齢が離れていて、とても可愛がってる様だった。研究がひと段落付いて、1週間くらい泊まるという事だった。
佐々木さんの様子を見て、私も安心していた。
だが、1週間過ぎても、連絡がなかった。
最初は、妹さんの滞在が長引いてるのかと思ったが、2週間も過ぎると不安になっていた。
やっと連絡がきたときは、ホッとした。
待ち合わせの店に会いにいった。先に佐々木さんが待っていた。
「会えなくて、寂しかったよ。どうしたの?妹さん、こっちには長くいたの?」と聞いたが、
佐々木さんは目を逸らしたまま
「いや、1週間、こっちにいて、帰ったよ」とだけ言った。
じゃあ、なんで会えなかったの?と理由を聞きたかったが、佐々木さんの様子を見てると、聞けるような雰囲気ではなかった。
どうしたんだろう?何があったんだろう?
気になって仕方が無かった。
とりあえず気を取り直して、「これから、どうする?ご飯にする?」と聞くと、
「ごめん、家で夕飯の用意をしてくれてるから、一緒にご飯にはいけない」と言われた。
「え!奥さんが!ご飯つくってくれるの?」と思わず、驚いて言ってしまった。
「うん」と、目をそらしたままの佐々木さん。
「それは・・・良かったね」。他に言葉が思いつかず、そういってしまった。
何も考えることができず、そのまま別れた。
佐々木さんは、家庭に戻る決意をしたのだろうか?
こんなに急に、気が変わるものだろうか?あまりにも急すぎる。
すごく不安になった。いつ私は振られるのだろうか・・・。
理由を聞けば、ハッキリするが、
理由を聞くと決定打になる気がして怖かった。
聞くのが怖くて、「なぜ」「どうして」の言葉を飲み込んだ。
その後も会っていたが、明らかに態度が変わった。
会う回数も減ったし、帰る時間も気にするようになった。
特にエッチをした後に、時間を気にして帰る姿をみるのは、辛かった。
きっと妹さんに、お兄さんの時と同じく縁を切ると言われたのだろう。
妹に弱い佐々木さんは、それで家庭に戻ることにしたのだろう。
こんな短期間に考えを変えたのは、そのせいだ。
しかし、妹さんは、元の生活に戻った。だからきっと、佐々木さんもそのうち元の様に私の元に戻るだろう、そう期待した。
佐々木さんからは、何の言葉も無いまま、時が過ぎた。
私の誕生日プレゼントには洋服を買ってもらった。佐々木さん好みの大人っぽいセクシーな服装だ。
以前、赤坂のイタリアンのお店で、スタッフが奥の厨房に近い席に私たちを案内した。
ジーンズのラフな格好をした私のせいだと思う。
こんな席に座らせて、恥をかかせてしまった。
佐々木さんに合うような女性に、まずは服装からでも、なりたいと思った。
それから2ヵ月後、今度は佐々木さんの誕生日だった。
夜は会えない。
夕方の少しの時間だけ、会って、誕生日プレゼントを渡した。
シャネルの香水、エゴイスト。
この当時、男性で香水してる人自体、少なかった。
サラリーマンなら、なおさらしない。
佐々木さんも、プレゼントを見て、少し引いてるのが分かった。
「俺、香水はつけないから・・・」
「うん。つけないのは分かってるけど、私と会ってる時だけに付けてほしいの。会えない時でも、この香りを嗅ぐと佐々木さんがそばにいると思えるでしょう」
たぶん、ロマンチストの佐々木さんなら、この言葉にグッとくるはずだ。
「分かった。そっか・・・会えなくて、寂しい思いさせてるもんな。次から、必ずつけてくるから」
思ったとおり、うまくいったな・・・と思った。
けど、それ以上の意味、『もっとたくさん会いたい』はどうやら伝わなかった様だ。
一緒にいるときに、携帯のバイブレータの振動が聞こえた。
やや焦り気味の佐々木さん。
「あれ?携帯だよ。とらないの?」と私が言うと、
取り出したのは、お互いに専用で買った携帯電話だった。
私だけが知ってる番号のはずなのに・・・。なんで?他の人が知ってるの?
「誰からの電話だったの?」
「田中さん(会社の部下)からだった。どこですかって。今、部署のみんなで飲んでるからって」
「田中さんが、なんでこの番号知ってるの?」
「いや・・・。前に会社で、この携帯を持ってるのを見つかったんだ。『いいの持ってるじゃないですか』って言われて。ほら、俺さ、会社にあまりいないだろう。で、なかなかつかまらないから、この番号も教えてくれって言われて。高橋さん(会社の契約社員)も一緒に、教えてくれって言われたから、2人に教えたんだよ」
2人だけのはずなのに・・・腹が立った。
サツキの時といい、佐々木さんには隙がありすぎる!
「携帯、貸して」と言って、佐々木さんから携帯を受け取った。
腹が立ったので、田中さんたちのアドレスを消してやろうと思っていた。
けど、登録を見ると、他の人たくさんの人たちのアドレスがあった。
「え?2人だけじゃないの?」
「いや・・・。もうさ、田中さんたちに知れたんだから、他の人に教えても一緒だろうと思って、いろんな人に教えたんだ。ハハハッ」
怒るどころか、呆れてしまった。
「さくら、怒ってるの?けど、これ俺が払ってるのだからさ・・・」
(いやいやいや、そんな問題じゃないだろう)
「いや、怒ってるんじゃなくて、呆れてるの!もうこの話、やめよう。腹が立つだけだから。」
その後、1-2週間たった頃だと思う。
一緒に電車に乗っていた。
ちょうど今頃の季節。
寒くなってきた頃で、私は薄着で、佐々木さんはコートを着ていた。
「さくらは、いつも寒そうな格好をしてるね」と言いながら、佐々木さんは私の手をつないで、そのまま自分のコートのポケットに手を入れた。
指先に、何かあたってる。
佐々木さんは癖で、いろんなものをポケットに入れている。
この時も、笑いながら冗談で「なんか宝物が見つけちゃった~」と言って、
ポケットの中にあるものを掴んで、取り出した
取り出したのは、長~いレシート。
なんだ、これ?と見てると、
佐々木さんは「ああ、それ。この間、部署のみんなで飲んだ居酒屋のだよ」と。
また佐々木さんが支払ったのか~、お人よしだよな~と思って、
レシートをよく見ると、この日付って?
「この日って、私と会う約束してた日だよね?」
仕事が忙しいからと言って、ドタキャンした日だった。
「それは、仕事が遅くなって、終わったときに、田中さんから飲みに行きましょうって言われたんだよ。もう遅くなったからさ、さくらには悪いと思って連絡しなかったんだ・・・」
しどろもどろに言い訳していた。
(田中さん、田中さんっていったい何なんだ・・・)
佐々木さんが、田中さんと仲良しなのは知っていた。
田中さんが、彼氏がいるのも知っていたが、
彼氏に30才過ぎても結婚を考えてないと言われて悩んでると聞いていた。
もしかして、田中さんと・・・?
変な想像をした。まさかな。
奥さんの元に戻ったのだと思っていた。
けど、もしかして、他に女が・・・。
本気で奥さんと寄りを戻すと決めたなら、私のことはとっくに振っていただろう。
けど、他の女に興味をもって、私をキープにしたかったなら、今の状況もあり得ることだ。
以前、サツキの時に、怒りに任せて言ってしまった。
「離婚したら、私より良い女がいるかも」と。それを今、実践してるのだろうか。
最初の出会いを思い出していた。
この人は、私が誘ったら、すぐにOKだったよな。
既婚者のくせに軽い男だった。
そう思うと、どんどん疑ってしまう。
考えるのが嫌になった。考えれば考えるほど、悪いほうへ疑ってしまう。
佐々木さんと話したところで、今の私では、ひどい言葉を投げつけてしまうだろう。それも嫌だった。
逃げ出したくなった。
電車の扉が開いた。
そのまま佐々木さんを置いて、ひとり電車から降りてしまった。
何か言われた様な気もするし
何か言った様な気もするが、全く覚えてない。
とにかく、冷静に考えられる場所が欲しい。頭にはそれしかなかった。
実家に帰ろうか、それとも私の好きな場所へ行こうか・・・と思っていたが、気づいたら蒲田駅についていた。
ここに来たか!と思わず、笑ってしまった。
私の初めての彼氏がここに住んでいた。彼は、役者の卵だった。
蒲田行進曲が好きで、東京に出たら蒲田に住みたいと思っていたそうだ。
蒲田駅は、プラットホームのベルが「蒲田行進曲」だから、余計にこの場所が好きだと言っていた。
その彼が、突然、行き先も言わずに消えてしまった。アパートは解約し、理由も分からずにいなくなった。ただただ、呆然としていた。
蒲田駅に行けば、もしかしたら会えるんじゃないかと思って、何度か足を運んだことがあった。電車で通り過ぎるときでも、ホームにいるんじゃないかとつい探してしまっていた。
なんでこの場所にきたんだろう?
そうか、あの頃と私は全然変わってないという事か。
あの時も、なんでいなくなったのか、理由が分からずに苦しんだ。
私が嫌になったのか、彼に何が起こったのか、なんで気づかなかったのか。
答えの出ない事を、いろいろと考えすぎて、余計に辛くなっていった。
昔を思い返すと、なんだかバカバカしくなってきた。
家に帰ろう。
佐々木さん、きっといなくなって驚いただろうな。いや、さすがに怒ってるかもな。
連絡したほうがいいかな。謝ったほうがいいかな。
けど、なんて言えば良いのだろう。
田中さんと浮気していると妄想して、怒って飛び出したというのか。
次の日、驚いたことに事務所に、田中さんが来た。
通常、仕事の打ち合わせ等では、田中さんの会社へ行く。ウチの事務所に来ることはない。
この日、田中さんは近くで用事があり、挨拶だけしにウチの事務所に寄ったという。
佐々木さんとの関係を疑っていたせいで、なんとなく会うのが気まずい気持ちになっていた。私は、簡単な挨拶だけして、自分のデスクで仕事に戻っていた。
田中さんは、高岡さんと話をして、盛り上がっていた。
そして「さくらちゃんも、ちょっとだけ手伝ってくれないかな?」と言われた。
なんだろう?
田中さんに2枚の用紙を見せられた。その時の田中さんの目が、じっと私を見つめてるようで、気になった。
(昨日のせいだ。きっと私が自意識過剰になってるせいだ。勘違いだろう)と思って、気にしないようにした。
「これね、今度、うちの雑誌でファミリー特集をすることになって、さっき出来たばかりのゲラなんだけど、どっちにしようか悩んでて。さくらちゃんはどっちの方が良いと思う?」と。
これって、他の事務所で作ったものでしょう?私たちに見せていいのかな?と疑問に思いつつ、2枚を見比べた。
写真がちょっと違うような気がするけど、あまり変わりないように見える。
けど、田中さんにとっては大切なことだから、私にも選んで欲しいのだと思って、真剣に見ていた。
すると、高岡さんが助け舟を出してくれたのか、
「この写真の子って、佐々木さんの子供なんだって」と笑いながら言った。
ビックリした。イメージ写真として写ってる、この子が・・・。
田中さんを見ると、やっぱり私を見ている。
(もしかして、知ってるの・・・?)と不安になった。
高岡さんが、「佐々木さんの子供って、可愛いよね。お父さんに似なくてよかったよね」と楽しそうに毒舌を吐いてるので、
私もこれに続いたほうが賢明だと思い、
「本当ですよね。奥さん似なんですかね。奥さん、綺麗な人で良かったですね」と言った。
「うーん、私はどっちも良いと思うけど。高岡さんは、どっちを選んだんですか?」と聞いて、申し訳ないけど、高岡さんの案に乗ることにした。
私には選べない。
というより、まともに写真を見られなかった。
「なんで、佐々木さんのお子さんの写真を使ったんですか?」と田中さんに聞いてみた。
「佐々木さん、写真が趣味だから。この特集があるときに、いい写真があると思って聞いてみたの。そしたらね・・・佐々木さん、300枚くらいの写真持ってきたのよ。で、この中なら、好きなの使ってくれって」
笑いながら、田中さんが説明している。
「こんなに沢山の中からだと選べないから、せめて20-30枚に選んで持ってきてくれ、と頼んだの。そしたら佐々木さんは『俺は、全部可愛いから選べない』って言ってね。『好きなの選んでくれって。俺はどれでもOKだから』って」
高岡さんは「うわー、本当の親バカですね」と言って、笑っていた。
私も合わせて笑わないとおかしいだろうと思って、合わせ笑っていた。
田中さんが帰った後、
私の身は大丈夫だ、田中さんにも、疑われずにすんだと思うと、やっとホッとできた。
けど、なんの為のにこの事務所に来たのだろうかと思うと、気になって仕方なかった。
>> 156
あきさん
読んで頂いて、ありがとうございます。
ネガティブな話だし、自分語りなので、
読んでくださる方にはつまらないのでは?と気になりますが、
中途半端にやめるのは嫌なので、最後まで書き上げたいと思ってます。
もう終盤です。この後、1ヶ月以内に別れています。
家に戻って、改めて今日の出来事を振り返った。
会社にいた時は、田中さんの事が気になって、写真の事には意識が向かなかった。
俺には、子供の写真を選べないって言ってたな・・・。
選べない。可愛いから。
その言葉の重みを、ひしひしと感じた。
バカだな、私は。最初から結論は決まってたことなのに。
少しでも私に気持ちがあって、選んでくれるんじゃないかと期待してた。
前日、電車から逃げ降りた後に、結局、佐々木さんへは連絡しなかった。
なんて言えばいいのか分からなかったし、
正直言うと、何もかもが面倒になっていた。放り投げ出したかった。
そして今日、田中さんの話を聞いたら、もうこのまま連絡しないほうがいいんじゃないかと思った。
佐々木さんからも、連絡は無かった。
いつもは喧嘩しても、佐々木さんの方から必ず電話してきてくれたが、
さすがに昨日の私の行為は、許せないと感じたのかも。
そんなこんな、いろいろと思い浮かべてると、なかなか寝付けなかった。
夜半になって、ウトウトしてるときに、
いきなり佐々木さんの子供の顔が、頭の中にでてきた。
どう表現したらいいのか分からないけど、
必死に私に向かって訴えかけてるような、そんな表情で、すごく怖かった。
写真は、そんなにハッキリ見たわけじゃない。
けど、今の私の頭の中では、すごくクリアに見える。
思い浮かんだというような生易しい感じじゃなくて、
頭に映像が焼き付いてる感じ。
毎晩、毎晩、これを見るようになって、私は眠れなくなった。
もともとお酒は好きで、毎日晩酌はしていたけど、
この日を境に眠れるまで、たくさん飲むようになってしまった。
最初は、家庭を壊しそうになった私を恨んでいる
というより、その罪悪感で、私自身が、そういった子供の姿を見ているのかと思っていたが、
何か、違う。そうじゃない。この表情は、それを訴えているんじゃない。
なんなんだろう。私はまた何か勘違いしているのか。
気づくのが怖かったが、気づいてしまった。
写真は、雪遊びしてるところだった。
場所が分からないように周りの様子は加工していたけど、家族で遊びに行ったのが分かるような写真。
佐々木さんは、こういう場所に家族と行くのか・・・。
意外だなと漠然と思ってると
まてよ。この時は、私ともう付き合っていたよな・・・。
そうだ。奥さんにバレる直前、2人で旅行に行った時も雪だった・・・。
その頃かぁ。
けど、その時って、休みの日は毎日電話くれてたよな・・・?
タバコ買いに外へ出たとか、雑誌買いにコンビニにいるとか。
そういって毎回、昼の11時には必ず電話があって、
時間があるときは夕方にも電話を。
え?その時って、子供はどうしてたの・・・?
深く考えると、気持ち悪くなってきた。
子供と楽しく遊んでるのに、私とも電話をしてたってこと?
子供が目の前にいるのに、平気な顔をして裏切ってるってことだよね。
子煩悩で、優しいというイメージが、ガラガラと崩れた。
>> 162
早く更新して
ちょっとですが更新しました。
夜はもう少し続きが書けるかもしれませんので、お待ちくださいませ。
>> 164
早く続きが読みたい気持ちは判るけど‥‥育ちの悪いガキが「腹減った❗腹減った❗」って騒ぎながら、お箸でお茶碗🍚叩くような催促は止めなさいって😥…
すごく上手な例えですね!
私もそんな風に文章上手になりたい。
フォローありがとうございます。
子供が大切だから、裏切れないんだと思っていた。
けど違う。浮気してる時点で、最初から裏切っていたんだ。
こんなに可愛い子供がいるのに。
人を裏切れる、冷たい、自己中な人間・・・。
本当に、優しい人なら、そもそも浮気なんてしないってことか。
そういう事か。
自分は?気づかなかったとはいえ、ずっと加担していた。
一緒に、加担していたんだ。
「子供が可哀想」
何度も、その言葉を聞いた。
けど、私の中で思い描いていた、その子供は、私の子供時代の姿だった。
けど、写真を見てしまった今は違う。この子は、私じゃない。
私とは別の人生をこれから歩く子なんだ・・・。
その子の人生を私は壊そうとしていたのか。
そう気づくと、一気に罪悪感が溢れてきた。
苦しい。
けど逃げたくても、頭に焼きついた映像が、それを許さない。
苦しい。気持ち悪い。
心臓の鼓動が早くなる。呼吸ができない。
久々に過呼吸をおこしていた。
ビニール袋をつかんで、呼吸をした。
過呼吸は、酸素を吸いすぎるから苦しくなる。
だからビニール袋に吐き出した二酸化炭素を吸って、呼吸を元に戻せばいい。
なんとか落ち着いた。
佐々木さんを恨めしく思った。
こんな罪悪感があることを、早く教えて欲しかった。
そしたら、早くこんな関係は止めていたのに。
そもそも、こんな関係は持たなかったのに。
それとも、罪悪感がないのだろうか。
また苦しくなった。
そしてパニックになった。
そういえば、生理がきてない・・・。
出来ていたら、どうしよう!
振り返ってみると、たぶん佐々木さんを信用できない人だと初めて認識した。
その男の子供を身ごもってしまう事への不安から、急にそう思い立ったのだと思う・・・。
とにかく、この時は頭に、どうしよう!どうしよう!それだけしかなかった。
>> 168
はじめまして!
すべて読みました。
同じような境遇にいるので
勉強になります・・
ななしさん
ありがとうございます。
書き終わった後に、感想をいただければ、ありがたいです。
とはいえ、私は「無排卵」で、そもそも子供ができる体質ではない。
20歳の頃から、婦人科に通院して、薬を服用していたが、一向によくなる気配は無かった。
毎日、基礎体温を計っていたし、生理不順も当たり前のことだったので、
冷静に考えれば、こんなに動揺するのはおかしな話だったが、
この時は、それに気づく余裕すらなかった。
慌てて、佐々木さんへ電話した。
何度、電話してもでない。
留守電を残したが、返事がない。
1時間、2時間・・・待ったが、電話がない。どんどん不安になってくる。
今日は休日で、婦人科はやっていない。どうすればいいんだろう。
不安でたまらない。
誰かと話したい、相談したいと思ったが、
こんな話、妊娠したかもしれないなんて、誰に言えるというんだろう。
しかも相手が既婚者なんて。誰にもいえない。
・・・・。
ああっ!そっか。判定薬があったな!
どこで売ってるのだろうか?薬局か?
急いで、買いに走った。
薬局について、妊娠判定薬を見つけた。
たくさんの種類があるので驚いた。
1つの箱に、1本だけのと2本入ってるのもあるし、価格もそれぞれ違う。
どれを選べばいいんだ?
全然、分からない。
2本入ってるってことは、失敗する可能性もあるってことか?
全部の種類の、裏の説明書を読んで、やっと買うものを決めた。
思いがけず、時間がかかってしまった。
家に戻ると、携帯に着信が入ってた。
焦って家を出たから、携帯を置き忘れてしまっていた。
先に電話をするか、検査をするか迷ったが、結果を知りたかったので検査をした。陰性だった。良かった。
タイミング良く、佐々木さんからの電話があった。
急に恥ずかしくなった。
こんな不確かな事で電話してしまった。
しかも、今日は休日だ。もしかして家族といたかもしれない。
相手への迷惑とか配慮とかも、全く頭になく、ただ一人でパニックになっていた。
「さくらか。ごめんな、遅くなって。仕事先に来ていて、さっき携帯に気づいたんだ」
(ああ、仕事だったんだ・・・。良かった)
「仕事中に、ごめんね。生理が遅れてたから、ちょっとパニックになって、焦って連絡したの・・・。けど、今、検査をしたら陰性だったから、もう大丈夫だよ」
「ああ、そうか。分かった。・・・俺も大丈夫だろうとは思ってたよ。ハハッ、俺がそんなヘマするはずないしな」
(ヘマって・・・、いったい)
「ちょっと仕事立て込んでるから、切るわ。また(仕事が)落ち着いたら連絡する。ちゃんと話し合いをしよう」
ヘマって、いったいなんなの?
もし私との間に子供ができたら、ヘマになるというのか。
妊娠してなくて、ホッとしたはずなのに、その言葉ですごく落ち込んだ。
奥さんとの間にできた子供は、300枚の写真をとって、なおかつ選べないという。
けど私がもし妊娠したら、ヘマだったんだ。
自分との差を感じて、愕然とした。けど、これが現実の差だと思った。
試してみたら、良かったな。
あの時、検査をせずに、先に佐々木さんの電話に出てみたら良かったんだ。
もしかしたら妊娠したかもしれないと佐々木さんに言ったら良かった。
その反応を見たかった。
見て試したかった。
試せば、真実が分かったのに。
失敗した。
反面、久しぶりに声を聞いたら、愛おしさも募ってくる。
冷たい人だ、子供を騙してる卑怯な人だと分かってるのに、まだ愛おしいと思ってる。
なんだか自分が佐々木さんをどう思っているのか、分からなくなってきた。
感情がコントロールできない。
好きだけど、信用できない。
信用できないけど、愛おしい。
愛おしいから、嫌われたくない。好きでいて欲しい。
けど、試したい。
自分が、いったいどうしたいかも分からなくなってきた。
「落ち着いたら、電話する」と言われたが、あれから連絡がこなかった。
「妊娠したかも」と大騒ぎしたので、飽きられて、もう連絡がないかもしれないと不安になった。
いやいや、あの時、「話し合いをしよう」と言われたし、きっと忙しいだけだと思い込もうとしたが、不安は募るばかり。
街中はクリスマス一色になっていた。寂しい。
クリスマスは一緒に過ごせるわけない。そう思うと、ますます寂しくなる。
去年のクリスマスは、どうしたっけ?
去年も佐々木さんといなかったけど、全然寂しくなかった。
サツキとお酒をたくさん飲んで、騒いで、楽しかった。
高岡さんから、他の事務所の子と一緒に忘年会しよう!と誘われた。
私は、その事務所の人たちとは、一緒に仕事をしたことないけど、
気分転換になると思って、ありがたく誘いに乗った。
飲み会は6人の若手メンバーだった。
その中で、隣りに座った男の人は、加藤さんといって、30歳のフリーライターだった。
「あれ?今日は大人しいね、どうしたの?」
(誰だっけな?この人???)
覚えてなかった。けど、それを言ったら失礼になると思って、知ってるふりをして話をしていた。
ゲイバーの話をしていたら、突然、思い出した!
そうかそうか。この人は。
以前、1度だけ飲んだことがあった。半年以上前だったな。
その時も、ゲイバーの話をしていた。
加藤さんが取材で、新宿〇丁目に行った時の話。
話がとても面白くて、「私も行ってみたい!」とねだったな・・・。
それで名刺をもらって・・・。
そうか。連絡するの忘れてた。
正直、加藤さんは好みのタイプだった。
話も面白い。久々に楽しい気分になってきた!
「加藤さん、手をみせてください」
「え!なんで?」と言いながら、右手を出してきたので、
「違う、違う、左手!そう、それで裏返してみて」
「何?何?これが何かあるの?」
「いやいやいや・・・。薬指に指輪の跡がないか、チェックしてるんですよ」
「指輪って。俺、独身だよ」
「ほらっ。そういって、飲み会の時だけ指輪を外す、既婚者がいるでしょう。だから今、チェックしてたの」
こういって引く人もいるが、加藤さんは思ったとおり、この会話を楽しめる人だった。
「で?俺はどうだった?合格」
「うーん、跡が分からない。夏まで待って、夏は日焼けするから、その時にチェックね!」
「おお!次は夏だな!」
笑いながら、話していた。
加藤さんと付き合いたいとは全く思わなかったが、
久々にスッキリした気分だった。
そこに、先輩の長瀬さんと佐々木さんが偶然やって来た。
ビックリした!
高岡さん、佐々木さんまで呼んだのかな???
けど、違っていた。
先輩の長瀬さんが、こちらに気づくと、向こうも驚いていた。
長瀬さんがテーブルにやって来て、
「いやー、このお店には誰も知ってる人が来てないと思ったんだけどさ。高岡さん、さくらちゃんも、今日、佐々木さんに会ってるの、社長には内緒にしておいてくれないか」と言われた。
「はい。分かりました」と返事をしたものの
(佐々木さんと、何の話をするのだろうか?)
気になって仕方無かった。
佐々木さんは、テーブルから少し離れた場所に立っていた。
軽く、他の人と挨拶をしていた。
私と目を合ったときは軽く会釈をしたが、
なんだかじっと見られてる様で落ち着かなかった。
加藤さんと楽しく話してるのが、なんだか悪い様な気がした。
楽しい気分だったのも、消え去っていた。
すると加藤さんに
「あのさ、長瀬君と一緒に来てた人って、もしかして〇〇会社の佐々木さん?」
「そうですよ。加藤さん、お知り合いですか?」
「いや、会ったのは初めてだけど、噂ではよく聞いてたから。さくらちゃんはさ、佐々木さんと付き合い長いの?」
「いえ、私は。うちの事務所だと長瀬さんと高岡さんが佐々木さんの仕事を担当してるので」
「そっか・・・。いやさ、知り合いだったら、紹介してもらえないかと思って。せっかくだから、後で挨拶してくるよ」
加藤さんはそう言いつつも、なかなか挨拶にいかない。
他の人たちが、帰り支度を初めてるのにまだ行かないので、不思議に思っていると
「ん。ほら、まだ長瀬君と話し込んでるからさ。(挨拶の)タイミングを見てるんだよ」
「みんな、他のお店行こうって言ってますよ」
「じゃあ、先に行ってくれないかな。後から行くわ」
「分かりました。じゃあ、先に行きますね。・・・けど、佐々木さんは優しい人だから、会話の途中でも怒らないと思いますよ」
「いやいや。そういう問題じゃなくて。最初の印象はよくしたいからさ」
加藤さんだけをお店に残して、みんなで2次会に行くことになった。
加藤さんって、すごく気を使う人なんだな・・・と思ったが、
違うか、佐々木さんが気を使わせる立場の人間ってことなのか!。
恋愛ばかりに目を奪われていたが、仕事の立場も考えないといけない。
そうだった。佐々木さんは仕事のできる人で、周りからの評価も高い。
なんだか、そう考えてるうちに2次会へ行く気力がなくなった。
みんなに「飲みすぎて気分が悪くなった」と言って、一人帰ることにした。
けど、このまま一人で家に帰るのも嫌だった。
夜遅くでも開いてる本屋に行って、立ち読みしたり、ぐるぐる周っていたが、何も頭には残らないし、何も考えられなかった。
自分の仕事での立場も考えなきゃいけない。
佐々木さんと別れたら、どうなるんだろうか?
付き合って、相談したから仕事をもらえた。けど?別れたら?
まさか、いきなり切るって事は・・・ない?いや、あるかもしれない。
携帯が鳴った。佐々木さんからだった。
「さくらは今、どこにいるの?」
「ん、今は新宿の本屋だよ」
「え?まだ新宿にいるの?」
「うん。佐々木さんはどこにいるの?」
「俺、もうすぐ家」
「そうなんだ。・・・長瀬さんと話し込んでたけど、何の話だったの?偶然、会って驚いたよ」
「・・・・・・。」
「もしも~し、あれ電波が悪いのかな?」
切って、あらためて、電話をしようとすると
「ごめん、嘘」
「え?」
「今、さくらの家の前にいる」
「は?」
「試したんだ。さくらが家にいるって、嘘付くかを」
「え!なんで、そんな事したの?とにかく急いで帰るね。そこ寒いから、家の近くにお店あるでしょう。そこの中で待ってて」
慌てて、家へ急いだ。
加藤さんとの様子を見て、もしかして誤解したのかな。
きっと佐々木さん、焼きもちをやいたんだ!
心配で、家まで見にきたんだ!
そう思うと、さっきまでの気持ちが吹っ飛んで、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
待ち合わせのお店に着いた。
佐々木さんにすぐ気づいた。
さっきの表情とは違って、優しい笑顔だった。
「待たせて、ごめんね」
「いや・・・俺も、急に来たからさ」
「ウチに、これから来る?」
心の中では、(これる時間はあるの?家に帰らなくても言いの?)と聞いていた。
佐々木さんは、
「行ってもいいの?」と。
(なんて他人行儀なことを言うんだろう?)
「もちろん、良いよ!」
テンションが高くなって、浮かれていた。
家に来てくれるのは、久しぶりで、本当に嬉しかった。
「今日の門限は何時まで?」冗談めかして聞いた。
せっかくの二人の時間に深刻な話はしたくなかった。
「うん。今日は長瀬君と飲んでくると言ったから・・・」
「もしかして、遅くなっても大丈夫なの?」
「うん。」
「そっか。」
もしかして、お泊りもできるのかな・・・そんな期待に胸が膨らんだ。
家の入口近くに、お酒の空き瓶、缶を山のように置いていた。
「さくら、これ・・・すごいね」、驚いた様に言われた。
佐々木さんと会えないから、
こんなにお酒を飲んで、気を紛らわせていたのかな、と思われたら
うわっ、すごく恥ずかしい。もう飲むの控えないと・・・。
「前の資源ゴミの日に、出し忘れちゃって。ここ月2回しか出せないから」
と誤魔化した。
「ねえ、長瀬さんと、何話してたの?」
「仕事の話で、相談があるからって。まぁ、そのうち長瀬君から詳しい話があると思うよ」
「ふーん」(私に教えられない話なのかな??)
「加藤さんとは、どんな話をしたの?」
「加藤さん???」
「あれ?加藤さん、挨拶に行かなかったの?飲み会で、私の横に座ってた人なんだけど、佐々木さんに挨拶するって言ってたよ」
「ああ。彼ね。うん。挨拶に来てくれたよ。名刺もらった。けど、すぐに帰ったから、ほとんど話してないな・・・」
あまり覚えて無い様子で、驚いた。
(あれ?焼きもちやいて、ここへ来たって思ったけど・・・もしかして勘違いだった?)
加藤さん、すごく気を使っていたのに、佐々木さんには通じてないんだな。
「ねえ、佐々木さんの元にはさ、加藤さんみたいに、自分を売り込んでくる人ってたくさんいるの?」
「いや、そう多くは無いけどね、たまにあるよ」
(たまにでも、あるんだ!)驚いた。
「ふーん。それって、どんな基準で選んでるの?」
「選ぶって?」
「この仕事には、このライター使おうって。選ぶ基準があるでしょう?人柄とか、性格も関係あるの?」
「まぁ、そういうので選ぶ人もいるだろうけど、俺は能力と、あとは使いやすさかな」
やっぱりこの人は、私よりも上の立場の人間、選ぶ側の人間なんだな・・・と実感してきた。
「この部屋、寒いね」といって、佐々木さんはエアコンの温度を調節した。
備え付けのエアコンは古いタイプのものらしく、全然温かくならない。
「さくら、おいで」と言って、抱きしめられた。
キスをされて、胸を触られる。
「佐々木さん、私、ゴムもってないよ、あるの?」
「ん・・・。無くて、いいよ」
「いや・・・。ダメだよ、しないと」
この間、妊娠したかもしれないと言って、大騒ぎしたばかり。
無排卵とはいえ、薬を飲んで治療してるから、もしかしたら出来るかもしれない。そんな危険は冒せない。
「ゴム無いと、ダメだよ」重ねて言ったが、
「大丈夫、うまくやるから」
結局、受け入れてしまった。
終わった後、佐々木さんは急いで着替えていた。
「まだ終電に間に合うから、帰る」と言って、急いで出て行った。
佐々木さんが、この部屋に入ってから、1時間しかたっていない。
少し話して、エッチして、帰った。
呆気なかった。
エッチも雑だった。洋服の上は着たままで、下だけ脱いだ状態。
単に行為をしただけだった。
何しに来たんだろう、いったい。
焼きもちやいて、私に会いたくなって来てくれたんだと浮かれていたが、
そうじゃなかった。
偶然会って、顔を見て、やりたくなったのだろうか?
せっかく会えたのに、会う前よりも、もっと虚しくなった。
受け入れた自分が、本当に情けなかった。
気持ちに流された・・・。弱い自分、本当に情けない。
ますますお酒の量が増えていった。
佐々木さんの子供の顔は、まだまだ頭に焼き付いてる。
眠れない。これは、マズイ。
薬局で、睡眠薬を探した。風邪薬で、眠くなるやつがあるな、それでいいかな・・・。
探していると、薬の名前は忘れてしまったが、安定剤のようなものが売っていた。気分が落ち込んでる時に、飲むと書いてあった。
こんなのあるんだ。知らなかった。買ってみようかな?
その数日後、佐々木さんから電話があった。
やけにテンションが高い。
「今日、やっとさ、終わったんだ」
どうやら年明け発行の特集号を3つ掛け持ちしていたらしい。
その1つにトラブルがあって、危うく間に合わないところだった。
それが無事に終わったらしく、喜んでいた。
なかなか会えなかったのも、連絡も無かったのも、そのせいだったのか・・・と思うと、すっかり嬉しくなったが、
この間の事を思い返すと、またぬか喜びをしてバカを見るのかもしれない
今日は気持ちに流されずに、ちゃんと話し合いをしようと覚悟して、会いに行った。
会った時の佐々木さんも上機嫌だった。
その顔を見てると、だんだんムカついてきた。
自分だけが、振り回されて、悩んで、バカみたいだ。
「ボーナスも出たし、今日はさくらの行きたいお店に行こう!どこがいい?」
ふっと思い立った。
「お寿司がいいな~」
「いいね!寿司か。じゃあ、〇〇に良いお店あるから、そこに行こうか?」
「んー。そこでも良いけど。他のお店じゃダメかな?この間ね、会社の人たちが美味しいって言ってた店があるんだけど、××駅の近くにあるんだ」
××駅とは、佐々木さんの家の近くだ
近くといっても、生活圏内でない距離だ。
うまくいえないが、知人に、もしかしたら会ってしまうかも?の気持ち悪いくらいの距離。
自分を雑に扱った恨みもある。
意地悪をした。
どう反応するかな。
ちょっと嫌な顔をしたように見えた。
(よし!)と心の中でガッツポーズをした!
「別に、他のお店でも良いよ。ただね、美味しくて安い店があるからって、社内で盛り上がって。私だけ話しに入れなかったから、行ってみたかっただけなの。嫌だったら、他の日に、友達といくから・・・」
「分かった。まぁ、今日はさくらの行きたい店だもんな。そこに行こうか」
(よっしゃ!そうくると思ってた!)
そういわせるだけで、満足していた。
>> 201
どうも突然でごめんね。
過去は過去でいいじゃん。それで幾らかでも自分が成長できたんなら?
俺もバツイチだよ。今の自分が何より大事だよ。不…
つかさ様
ありがとうございます。
批判は覚悟してましたが、まさかそんなコメントをもらえるとは思ってませんでした。
なんていうか過去の自分を否定してるわけではないです。
軽率でおろかな行動をとってしまったと、思っていますが。
けど、少しでも成長したから良いとも思っていないです。
不倫なんて、するもんじゃない!と私は思っていますよ。
自分の為にそう思います。
>> 202
主さん後悔して愚痴ってる訳じゃない
日記コーナーではあるが読み物として更新を楽しみに待っている人間もいる
文章の中に明らかに見苦しい記述…
ありがとうございます。
更新を待っていただいて、ありがとうございます。
今週は時間があるので、もう少し書けると思います。
お店に着いたら、人気店らしく、行列ができていた。
しばらく待たなければいけない。
佐々木さんは、無言だった。怒ってるのかな?
意地悪で、この店に連れてきたことをすぐに後悔した。
なんとか会話を弾ませようと、いろいろと話しかけたが、返事はイマイチ。
お寿司を食べてる間も、イマイチな反応で、
せっかくのお寿司も美味しいか否かすら、分からなくなった。
帰り際に、佐々木さんはお店の文句を言っていた。
「本当に、ここの店が美味しいって、みんな(社内の人)言ってたの?」
今まで、お店や料理の文句なんて聞いたこと無かった。
本当は嫌だったのに、仕方なく、一緒に来てあげたんだ!という心の声が聞こえて、すっかり嫌になった。
話しかけるのを止めて、無言で歩き続けた。
なんかもう、つまらないし、家に帰りたいな。
佐々木さんも私と一緒にいるのが嫌なら、帰ればいいのに!と思っていたが、
帰る気配はなく、私と一緒に黙って電車に乗っていた。
なんだか我慢比べみたいだ。
駅で降りて、駅前の商店街を歩いていた。
さすがに、佐々木さんがこれからどうするのかと気になった。
この間みたく、家にきて、またエッチして帰るつもりなのか!と思うと、
腹が立ってきた。
「今日は、エッチはしないからね!」とキツメの口調で言った!
唐突に、そう言われたので驚いたのかもしれない。
「え?なんで?・・・もしかして生理?」
やっぱりするつもりで、ここまで来たんだ、と思うと、余計に腹が立った。
「なんでって。この間、ゴム無しはイヤだって言ったのに、したじゃない。だからもう、佐々木さんとはエッチしない!」
「え!ゴム買ってくるよ。駅前に戻ればコンビニがあるから・・・」
頭に血が上った。
「そういう意味じゃない!もう一生、佐々木さんとはしたくない!」
と大声で言った。
たぶん周りが気になったのだろう、佐々木さんは
「分かったから。家で話そう」
家に戻ったら、言いたいことを言ってやろう!と思っていたが、
だんだんと悲しくなってきた。
エッチをするかしないか、ゴムつけるつけないで喧嘩するなんて、まるでバカみたいだ。
家に戻ると、
妊娠したと思って大騒ぎしたが、
その次に会った時にゴムをつけなかったのが嫌だったこと。
それから、佐々木さんの子供の写真をみてしまって、ショックを受けたこと。
を話した。
写真の件は、佐々木さんにしてもショックだった様だ。
「だから、さくらは不安定になっていたのか・・・」と。
一番、聞きたかった事を尋ねた。
「もし、妊娠していたら、どうしたの?」
「俺はもう子供はいらないから。・・・さくらも、子供はいらないって言っただろう?二人だけの方が、楽しいよ」
いらない、なんて私は言っただろうか?覚えてなかった。
私は、いらないのだろうか?
二人だけの方が楽しい。子供がいる人だけにしか分からない言葉だ。
子供のいない私には、自分にとって、いた方がいいのか、いない方がいいのかなんて、知らないし、比べられない言葉だ。
佐々木さんは、例え私と一緒になったとしても家庭を築く気持ちはなく、
この恋愛ごっこを続けるつもりなんだな、という事だけは分かった。
無性に悲しくなった。
涙がボロボロでて、とまらない。
涙なんてカッコ悪いし、泣くなんて負けたようで悔しい。
けど、とまらなかった。
「ごめん、さくら。ごめん。これからエッチするときは、ゴムつけるようにするから。さくらはゴム着けてすると感度が悪くなるから、さくらも無いほうが良いと思ってたんだ・・・」
必死で、慰めようとするが、全然見当違いなことを言ってる。
この人に、何を言っても伝わらないんだろうな。
「駅前行って、買ってくるから!」と言って、佐々木さんは出て行った。
この日も結局は、してしまった。
クリスマス前だったと思う。
祝日前か、金曜日か。とにかく休みの前日。
仕事終わって、帰宅途中。
いつも商店街の酒屋でお酒を買うが、
この日は、家に焼酎が半分あるし、ビールもあるから足りるだろうと思って、買わずに帰った。
けど、全部飲んでも、全然酔えなかった。眠れそうもない。
しまった!買っとけば良かった。
後悔したが、もう酒屋は閉まっている。
寒いし、外に出たくない。
睡眠薬代わりに、眠くなる風邪薬を飲んだ。
・・・けど、眠れない。
仕方ない。遠くのコンビニまでお酒を買いに行くか・・・。
コンビニでは、ビールと安いワインを2本買った。
これだけあれば、寝れるだろう。
けど、ワイン1本空けても、寝れなかった。
起きてると、いろいろと嫌な事を考えてしまう。
今日は飲んでも、飲んでも頭が冴えてる。
どんどん暗い気分になっていく。
ああ!そうだ!この間、買った薬を飲んでみよう。
落ち込んだ時に飲むんだよな。
これ飲んだら、気分が明るくなるかもしれない。
けど、飲んでも明るくならない。
ならないどころか、胸がモヤモヤして吐き気がする。
なんだこれ?吐いたほうが良いのかな?
心臓のドキドキも大きく聞こえる。マズイぞ。変な薬を飲んでしまったのかも。
みぃさん
ありがとうございます。
全くその通りだと思います。
けど、この時は、受け身ではなく自分の意志でやってると思ってました。
この時は、分からなかったです。
短絡的で浅はかなバカな奴だと思います
>> 213
どんどん佐々木のくずっぷりがあらわになってきたね~
最初のキャラと随分変わってきたね。
ありがとうございます。
これは当時の私からみた視点なので、私がどう感じたのかで、人物の印象も変わるのだと思います。
ただ、私の方がクズだと思いますよ。間違いないです
みなさまへ
どこまで書こうかと悩んでいましたが・・・それは皆様にお任せします。
私は略奪婚をしています。
佐々木さんは家に帰りました。
つまり、佐々木さんではない既婚者と付き合って、今は結婚しています。
佐々木さんは自分の家庭に戻りましたから。
その話まで書くべきか、佐々木さんとの恋愛で終わらすべきなのか、迷っています。
- << 219 全て書いてほしいです💡
皆様、ありがとうございます。
このままの調子で書き続けると、佐々木さんが悪い人で、そのままいってしまいそうでしたので、なんだかそれだとフェアじゃないと思いました。
私の方が最低なのは間違いないです。
旦那の話まで書くと、長くなってしまいますが、ご了承くださいませ。
ヤバイ。変な薬を飲んだ!
もう一本、ワインがある。それを飲んで忘れて、寝よう。
そう思った。
調子悪いなと思って、途中にトイレに吐きに行った。
少し気分が良くなった。
最後の一本のワインは、コルクの栓だった。
面倒だな・・・と思って、コルクの栓抜きで空けようとしたが、途中でコルクが千切れてしまった。
げげ?!どうしよう。切れた。
他にお酒は無い。買いに行くのは嫌だ。
もう夜中の1時を過ぎてる。寒いし、怖い。
なんとか、カッターナイフで途中で千切れたコルクを抜けないか試していた。
カッターナイフが誤まって、指に突き刺し、血が出た。
バカだな・・・と思っていたが、血を見てると、なんだか変な気持ちになってきた。
カッターで、手首を切った。
が、切れない。
驚いた。ドラマとかでは、ナイフで切ればアッサリと血が噴きでて自殺未遂をはかってるのに!なんでだ?なぜ切れない?
切り口は、赤く盛り上がっていて、血も出ずにすぐに治っていた。
なんだか感動した。
人間の身体って、なんて素晴らしいのだろう。
治癒力の凄さに感動した。
もっと切れるものは無いかな?家の中を探した。
ハサミがあった。けど、切れない・・・。
何かないか。
そうだ!包丁があったな!
包丁で切ってみた。おお!血が出てる。さすが包丁だ!
なんだか切ってると楽しくなってきた
もっと、血がでる場所はないかな???
そうか、頚動脈を切ればいいのか。血がたくさん流れる場所だよな。
首の横だよな。
手鏡をもって確かめた。
この辺かな?けど、うまく包丁では切れない。
包丁が扱いにくい。
諦めて、洗面所に行って、備え付けの鏡を見ながら切ろうとしたが、上手く扱えない。
そうか・・・。なんで自殺未遂の人が常に手首を切るのかと不思議に思っていたが、なるほど、他の場所だと切りにくいからか・・・と納得できた。
ならば、ひじの横に動脈があるよな、そこを切ればいいのか!
朝起きた。
といっても、昼間近の11時だった。
目覚めた時に、右手に包丁を持っていた。驚いた!
昨夜の事は、はっきりと覚えていた。
手首は傷だらけだった。首にも傷跡がある。ひじの横にも傷がある。
なんてことをしたんだ!!!
とうとう私は頭がおかしくなってしまった!
そう思うと、何をしでかすか分からない自分自身に怖くなった。
自分が怖くなった。
怖いし、誰か助けて欲しい。
アイに電話した。
不倫の話をしてるのはアイとサツキだけ、だけどサツキにはそんな話はしたくない、だから言えるのはアイだけだった。
パニックになって電話した。
「手首切っちゃったよ。どうしたらいい?」そんな事だったと思う。
アイは、「え???じゃあ、後で電話するから、ちょっと待ってて」と言って、電話を切ってしまった。
アイの電話をずっと待っていた。けど、かかってくる事は無かった。
夕方になって、やっとアイから電話がこないことが分かった。
そうか、そうだよな・・・。
不倫をして、しかも自殺未遂するような女と関わりたくないもんな・・・。
この子とは友達として付き合えないのかと思われたんだなと、思うと
悲しくなって、思わず佐々木さんに電話しようと思った。
けど、こんなバカなこと、言いたくなかった
佐々木さんへ言わないのは、自分の最後のプライドというべきなのか。
とにかくもう、家へ帰ろう。
この部屋にいたら、自分はダメになってしまう!
一人でこの部屋にいたら、何をしでかすか、分からない!
そう思って、実家へ帰った。
実家へ戻ると、家は暖かかった。
父と母の両親には、「一人暮らしをした部屋のエアコンの調子が悪くて寒い。だから暖房を直してもらう」といって実家へ戻る説明をした。
家族の元で、クリスマスも過ごした。一番、嫌な季節だ。
母は、「あんたはクリスマスに過ごす彼氏もいないの」と相変わらず嫌味を言うが、なんとなく心地よい。
家族はいいものだと、そう思った。
しばらく両親の元で暮らしていたが、
ガスの元栓や、窓の鍵が閉め忘れたのではないかと心配になってきた。
急いで、あの部屋を出てきた。
そこで戻ってみると、なんら変わりない日常の部屋だった。
閑散として、そのまま。
なんだが悲しくなったが、そんなものかと思った。
もし私が死んでも、この人(佐々木さん)には関係ない。携帯に連絡がいくわけでもないし、そのままなんだろうと思った。
逆に言えば、佐々木さんに何かあっても、私に知らされることは無い
コメントありがとうございます。
自分がされたら嫌だから不倫はダメだと思ってるんじゃないですよ。
たぶん最後まで読んで頂けたら分かると思いますが、
略奪といっても全く揉めずに修羅場もなにもないです。
相変わらずつまらない話ですが、自分の汚い面をさらけ出して書くつもりなので、これで嫌になった方は続きを読まない方がいいと思います。
どんなコメントでもありがたいので自スレ設定は遠慮させてくださいませ。
家に戻ってから、佐々木さんとの専用携帯はずっとOFFにしていた。
佐々木さんの声を聞いてしまうと、
どんな気持ちになるか自分では予測できなかった。
怖くて、ずっとOFFにしたままだった。
部屋に戻ってから、その携帯を開いた。
もしかしたら電話がつながらなくて、心配してるかもしれない。
けど、留守電には何のメッセージも残ってなかった。
そうか・・・。
ここまでだな。
そのままショップへ行って、携帯を解約した。
年末、仕事納めの日に、一人暮らしの部屋に戻った。
年末年始も実家で過ごそうと思っていたから、
簡単に荷造りをして、アパートに隣接してる大家さんへ挨拶をしていこうと思っていた。
定時に仕事が終わったので、急いで帰った。
できれば今日中に、荷造りをして、部屋を出たい。あの部屋で一晩過ごすのは、まだ怖かった。
大家さんの家の前に人影があった。
驚いた。佐々木さんだった。
予想外だった。
なんでこんなところにいるのか。
こんな寒い日に、ずっと外で待っていたのだろうか。
一瞬、嬉しさがこみ上げてきた。
けど、ダメだ・・・。そう思ったら、また流される。
もう別れると決めたんだ!強くならないと!
怒った顔をして言った。
「いったい、何?今さら何しに来たの!」
「いや・・・。さくらの携帯がつながらないから、どうしたのかと思って」
(今さら、携帯の事に気づいたのか!)
本当に腹が立った。
「もう解約したから」冷たく言い放った。
「なんで?そんな急に」
無視しながら、部屋の前まで歩いてきた。
佐々木さんも一緒に中へ入ろうとする。
「この家に入らないで!」
「なんで?理由を教えてくれ」
自分の気持ちを話したかったが、そう言えば説得されるかもしれない。それは嫌だ。
「佐々木さんのこと、嫌いになったから!」
ショックを受けた様子だった。
「分かった。とにかく話をしよう。ここ(部屋の前)だと迷惑になるから、中に入ろう」
部屋に無理やり入ってこようとする。
「ダメ!入るな!帰れ!」
必死で抵抗した。
私が大声で叫んだので、きっと周りの目が気になったのだろう。
佐々木さんは、しぶしぶ入るのを諦めた。
「嫌いになったって。他に好きな人ができたのか?」
懇願するような目だった。
この目に弱い。気持ちがぐらつく。
「そんなわけないでしょう!!!本当に何にも分かってない!」
「だったら、何で?」
本気で好きになってしまったから、辛くなったんだ!
と言いたかった。
けどそれを言葉にだしたら、また負ける。自分に負ける。
「この部屋に入りたいなら、奥さんと別れてきて。それまでは来ないで!」
佐々木さんが信じられないという表情をしている。
「なんで、そんな事を言うんだ・・・。俺たち、これまで楽しくやってきたじゃないか」
ああ・・・やっぱり別れる気は無かったんだ。
「とにかく、帰って。結婚してる人とはもう付き合えない」
佐々木さんの目の前で、ドアを閉めた。
まったくもって、見っともない別れかただった。
けど、これが自分では精一杯だった。
これ以上、長く話しを続けていたら、
また気持ちが揺らいで、きっと元に戻ってしまう。
とにかくもう会わない様に、考えない様にするしかない。
1月半ばだった。
新年会があった。金曜日の晩。
佐々木さんも参加する。あれ以来、会っていない。会いたくなかった。
忘れる為に、いろいろな友達に連絡し、遊んで気を紛らわせてきた。
新年会の日は、男女9人で、スノボをしに行く。
車をレンタルして、金曜日の晩から出発し、日曜日の夜に帰ってくる予定だった。
待ち合わせは深夜0時だったが、これを言い訳にして、新年会は欠席したいと思った。
が、社長に相談すると、今日は上の立場の人たちも来るから、顔だけでも出して欲しい、途中で抜ける様にしてあげると言われたので、
1時間だけの我慢!と思って、参加した。
だらだらと仕事をして、なるべく出席する時間を遅らせた。
けど、あんまり遅れるのもマズイ。ギリギリに到着した。
20人位いるはずだから、離れて座れば大丈夫だな、と思った。
が、着いてみると私が最後で、しかも佐々木さんの隣りの席になっていた。
わざと隣りの席になったのかと疑ったが、そうではなかった。
佐々木さんもギリギリの時間に着いたらしく、そこの席しか空いてなかった。
・・・同じ事を考えていたのか・・・。
気まずい。
佐々木さんは、私ではない方の隣りの女性にずっと話しかけていた。
私の方は見ない。無視されていた。
私は一番端の席だったので、佐々木さんに無視されると他に誰も話す人がいない。
なんだか寂しくなって、一人でお酒を飲んでいた。
すると、遠くの方から、ある会話が聞こえてきた。
遠くだったから聞き取りにくかったが、佐々木さんの話だった。
「佐々木は、何であんな遠くに家を建てたんだ。通勤が大変じゃないか」そんな会話をしていた。
そんな話は聞いてなかった。ビックリした。
「佐々木さん、引越しされたんですか?」
思わず聞いてしまった。
みんなが見てる。
会話の主は、部長だった。
私がそう聞いたので、部長が説明してくれた。
「そうだよ。佐々木は〇〇県に、最近、引っ越したんだ。それが辺鄙な場所で。お前、なんであんな遠くに引っ越したんだ。通勤、2時間くらいかかるんじゃないのか?」
「いや、そんなにはかからないです」
「けど通うのが大変じゃないの?どうして」と他の人からも言われていた。
「いや、まぁ。場所が良かったんですよ。空気が良いから」と歯切れが悪く説明していた。
やっと理解できた。
「もしかして、お子さんのアトピー為に引っ越したんですか?」と聞いた。
佐々木さんは、やっとこっちを向いてくれた。
「うん。そう」とだけ言った。
他の人が驚いていた。「佐々木さんのお子さんって、アトピーなんですか!」と。部長も知らなかったらしく驚いていた。
やばい、みんなの知らない話を私が知っているなんて!と思ったが、
どうしても聞きたいことがあった。
聞かずにはいられなかった。
「いつから?いつから、家探しを始めたの?」
「夏頃かな・・・」
夏か。
そうか。佐々木さんの妹さんは、大学が休みになってからきた。7月くらいだったな。
そうか。あの後に、様子がおかしくなったと思っていたんだ。
あれは間違いじゃなかったんだな。
あの頃には、もう奥さんの元に、家庭に戻ろうと決意していたのか。
いくら私が思っても無駄だったってことか。
家探しをしていたから、連絡が少なくなって、会えなくなったのか。
どんどん謎が解けていく。
気づかなかった。知らなかった。
そんな話が進んでいたとは。
あのまま付き合って、私に引越しの事がバレないと思ったのだろうか?
説明してくれる気持ちすら無かったということか。
さすがだな、奥さん!さすがだ!
お子さんの事もあるだろうけど、
遠くに引越しをしたのは浮気相手と会えない様にする為だろうな。
時間がなければ会えない。
遠くなら、終電までに間に合う様に帰らないといけない。
タクシーでの帰宅は無理だろうから。
そうやって、会えないように、時間をつくらないようにしたのか。
すごいな!
悲しかったけど、事情が分かるとスッキリした。
良かった。別れて正解だったて事か!
ウチの社長が「さくら、そろそろじゃないのか?」と声をかけてくれた。
「すみません、約束があって。今日からスノボに行くんです。お先に失礼します」
「こんな時間から、スノボに行くの。元気いいね。若いっていいね」等と言われながら、途中で帰ろうとした。
佐々木さんにも、「すみません、お先に失礼します」と挨拶をした。
佐々木さんは怖い顔をして、「誰といくの?」と言った。
その言葉にひるんだが、「男女9人で行きます」とやっとの思いで答えた。
「本当に行くのか?」
行くな!っていう心の声が聞こえてきた。
ダメだ。これにひるんだら、また同じ事を繰り返す。
「行きますね」
土日のスノボから帰ってきた後の、月曜日だった。
夕方、事務所には私と高岡さんしかいなかった。
高岡さんが誰かと電話で話して、盛り上がっていた!
電話が終わると私に、
「ねぇねぇ!今ね、田中さんから電話があったんだけど、面白いこと聞いたの!」
「え?どんな事ですか?」
「それがね。佐々木さんの不倫相手が分かったんだって!」
青くなった。なんでバレたんだろう?
子供さんのアトピーを知っていたからか?
胸の鼓動が早くなって、気持ち悪くなってきた。
「それがさ、伊藤さんだったらしいの!」
伊藤さん???
新年会の時に、佐々木さんの隣りに座っていた女性だ。
ずっと佐々木さんが話しかけてた人。
30代半ばで佐々木さんと同年齢くらい。×1だと言ってたな。
新年会の時に、ずっと仲が良さそうに話してたから、勘違いされたのかな?
けど、私とはバレないみたいだ。胸をなでおろした。
「え?なんで、伊藤さんと分かったんですか?」
「それがさ・・・、私もこの間の新年会で、はじめて聞いたんだけど。
ほら、さくらちゃんは、先に帰ったじゃない。あの後、2次会に行ったときにね」
高岡さんは説明し始めた。
「あの時に、田中さんから、どうやら佐々木さんには女がいるらしいと聞いたのね」
田中さん、疑ってたのか!
「携帯を見つけたんだって。会社から携帯を支給されてるのに、もう一つ持ってるのは変じゃない。おかしいと思って、登録させてくださいって言って、携帯のアドレスをみたら、1件しか入ってなくて。絶対に、女との専用電話だと思ったらしいよ」
私との携帯のことか。だから気をつけるように言ったのに!脇が甘すぎる。
「誰が相手なのか、佐々木さんに聞き出そうとして、飲みによく行ってたんだけど、絶対に白状しなかったらしくて」
だから、田中さんとの飲み会が多かったのか・・・。田中さんとの関係を疑ってた。
「それにね、コロンをつけてきたんだって。で、コロンなんてつけるのは、相手は若い女に違いないって言ってたの。伊藤さんだったなんて、予想が外れたと、田中さん悔しがってたよ」
コロンって、私が誕生日にあげた香水のことか!会社につけていったの!驚いた。
若い女って、そうか!田中さん、私を疑ってたんだな。
そうかそうか、突然に事務所に来て、佐々木さんの子供の写真を見せたのは、反応を見たかったからか!
鋭いな!よく見てるな。
それにしても・・・、他人の不倫相手を探そうなんて人、いるんだな。
そういえば、中・高校生の時に、やたらと他人の恋愛関係に敏感な子がいたけど、あんな感じなのだろうか?
すっかり感心して聞いていた。
けど、なんで伊藤さん?
「え?でも、それで何で伊藤さんだと分かったんですか?」
「私は2次会で帰ったから、知らなかったんだけど、田中さんたちは朝まで飲んでたんだって。そこでね、佐々木さんと伊藤さんがね、朝、二人で一緒に歩いてるのを目撃したんだって」
頭が真っ白になった!まさか、嘘でしょう。
「で、二人の後を追いかけたんだけど、途中で見失って。
バッチリ証拠を見たから、田中さんが、今日こそは佐々木さんに白状させるって。(責める)人数が多いほうが、きっと佐々木さんも白状するだろうから、私とかさくらちゃんにも、一緒に来て欲しいって言われたの。
どうする?今日は行く?」
信じられなかった。というか信じたくなかった。
「でも、終電に乗り遅れて、二人で朝までいただけかもしれませんよね。佐々木さん、遠くへ引っ越したって言ってたし。分からないですよね」
「まぁ、そうかもしれないけど。たださ、〇〇町って知ってる?」
「いや、知らないです」
「そこって、ラブホテル街なんだけど、そっち方面から歩いてきたらしいよ」
・・・。
いや、いや、違う!そうじゃない。きっと何かの間違いだ。
誰か似てる人と間違えたんだ。
「それにね、手をつないで歩いてたんだって。何もない人たちが、手なんてつながないでしょう?」
手をつないだ・・・
手をつないでたんだ。
佐々木さんと手をつないで、よく歩いた。
佐々木さんが手をつなぐのが好きだったから。
そうか・・・。
やったんだ、伊藤さんと。関係したんだな。
高岡さんが、私の返答を待ってる。
何を答えたら、いいんだろう。何も分からない。何を話したらいいのだろう。
「私が、佐々木さんと付き合ってたんです」
全部、ぶちまけてしまった。
高岡さんは、めっちゃ切れて怒ってた。
けど、言われた事は何も覚えてない。頭の中に入ってこなかった。
次の日から、辞める直前まで、高岡さんは口を利いてくれなかった。
挨拶しても無視。話しかけても無視。
少ない人数の事務所内で、無視はきつかった。
けど、仕方無い。
全部、自分が悪いのだから。
なかなか現実を受け入れられなかった。
自分は佐々木さんにとって、特別な存在だと信じたかった。
奥さんと子供がいるけど、出会った日がもっと早ければ、私とうまくいってたはずだとそう思っていた。
自分が身を引くことで、佐々木さんの家族が幸せになれると思っていた。
そう信じたかった。
けど真実は、自分の代わりなんて沢山いること。
佐々木さんにとっては、寂しさを埋めてくれる人なら誰でも良かったこと。
それを受け入れるのに、苦しんだ。
けど、それが現実だ。向き合わないと。受け入れないと。
受け入れたら、ラクになるのかと思ってた。
けど、違った。受け入れてからの方が苦しい。
伊藤さんと付き合うんだったら、何も私が別れなくても良かったんだ。
現状がかわらないなら、なんで私は別れてしまったんだろう。
まだ好きなのに、なんで苦しい思いまでして、別れてしまったんだろうか。
この思いに囚われた。
いやいや、別れて正解だった。
変なことは考えるのは止めよう!とすぐに、後悔の念を打ち消そうとしても、
気持ちは消せない。
もっと最後まで、自分の気持ちを貫けば良かった!
>> 262
詮索の為に朝まで飲むとか、写真ばらまいて反応みるとか、周りもやたら首突っ込んできて皆で白状させるとか、きもいね。
自分からわざわざ話すのも…
あさんへ
感想スレって、必要だと思いますか?
たいした内容で無いし、私はいらないな~って思ってるんですが。
>> 263
あなた偉そうでムカつく💢
人に頼む言い方知らないの😒💢⁉
主さん、あまりに腹立つ言い方だったのででしゃばったまねごめんなさい🙇💦
気にしてないです。
フォローありがとうございます。
1つ年上の女友達が、クラブに連れて行ってくれた。
「穴場のところなんだよ~!面白いよ」と言われたが、
クラブになんて行った事が無いからよく分からない。
けど、せっかく誘ってくれたし、興味もあったので、連れて行ってもらった。
クラブで、ナンパされた。
それが背の高いイケメンだった!
竹野内豊に似てる。キレイな顔。
イケメンにナンパされるなんて、
私もまだまだ大丈夫なのかな~と嬉しくなった。
クラブは、どうも私には合わなかった。
そのイケメンと2人で席に座って、話して、飲んでいた。
派手な外見とは違って、性格は地味・・・というか大人しい感じの人で、好感が持てた。
帰り際に電話番号を聞かれたが、教えるのは嫌だったので、イケメン君の電話番号を聞いて登録した。
佐々木さんへ無性に会いたくなった。
嫌いになったのは嘘だ。また戻ってきて欲しい。
衝動的に電話したくなる。
電話番号は登録していない。けど、頭の中で番号は覚えてる。
携帯を前にして、グッと堪える。電話しちゃダメだ。これが苦しい。
自分に負けて、電話してしまいそうになった時、
ふと、この間、ナンパされたイケメン君を思い出した。
こっちにかけよう。電話した。
10日くらい前だから、私のことを覚えて無いかも?
気になったが、覚えてないと言われたら、切ればいいだけのことだ。
イケメン君は、私を覚えていた。良かった~。
それに、たまたまその日がイケメン君の誕生日だという。
「本当に?じゃあ、誕生祝いに奢ってあげるよ」と言って、会う約束をした。
家も近い。ラッキー!
免許書で確認すると、本当に誕生日だった。
誕生日にひとりって事は、彼女いないのか!
ビリヤードをして、遊んで、ご飯を食べに行った。
「ねぇ、彼女いないなら、私と付き合わない?」と聞いたら、
「いいよ!」との返事。
好きでも何でも無いが、付き合うことになった。
佐々木さんを忘れる為だが、もうひとつ、友達への信頼回復の目的もあった。
不倫をしたバカな女という印象を消して、普通に戻ったと思われたかった。
それには、この1つ年上の、誰もがカッコイイと思うイケメン君と付き合うのが一番良い方法だと思った。
誰にでも紹介できるし、外も堂々と歩ける。
今まで、不倫の付き合いで我慢していたこともできると思った。
とはいえ、失礼な話だが、すぐに飽きてしまった。
デートの場所は、カラオケやゲーセンが多かったが、どちらにも興味が無い。
けど、きっとこれが、年相応の付き合い方なんだろうと思って、イケメン君に合わせていた。
付き合って2ヶ月くらいが過ぎた頃、渋谷のゲーセンで、キレイなお姉さんがイケメン君に話しかけていた。
なんだろう?
もしかして、昔の彼女か!
ドキドキして、見ていた。
何か、ハプニングが起きないかと期待した。
話が済んだころを見計らって「どうしたの?知ってる人?」と話しかけた。
「ん・・・。ちょっと外でようか?」
何?何?何があるの?
ゲーセンを出てから、「どうしたの?」と再度尋ねると、
「これ、貰ったんだ」と言って、手渡された。
見ると、手作りの名刺で、女の子のプリクラが貼ってある。
「これって。もしかして、逆ナンされたの?」
逆ナンなんて、初めて見たわ~。
しかもキレイなお姉さんだった。
ワクワクした。
どうするんだろう、一体。
すると、「俺、ああいうの嫌いなんだよね。彼女がすぐそばにいるの知ってて、渡してくるなんて。それ(名刺)、破いて、捨てていいよ!」と言われた。
ええ!私が破くの?捨てないといけないの?
彼女って、そんな事をしないといけないの。
・・・それは重いわ。
3ヶ月も、もたなかった。
私には普通の付き合いはできないのかと落ち込んだ。
イケメン君と一緒にいても、いつも佐々木さんと比べてしまう。
比べてしまって、いつも佐々木さんの方が良いと思ってしまう。
イケメン君にも悪い、そんな付き合いは。
やっぱり一人で忘れるまで、我慢するしかないのか。
コメント、ありがとうございます。
削除があったんですね。
気づいた時には消されていたので内容が分からないのですが、
続けても大丈夫なんでしょうか?
とりあえず、ちょっとだけ更新します
アイとサツキに、イケメン君と会わせる約束をしていたけど、
キャンセルをしなきゃいけない。
「好きでもない人と付き合うからだ!」と怒られるかな。
そう推測していたら、全く違った。
「なんで!そんな理由で別れるの?キープしておけば、良かったのに。イケメン君、良い人なんでしょう?」
はぁ?キープって?どういうこと?
「いや・・・こっちが本気で付き合えないなら、相手に失礼でしょう?」
「・・・。さくらはさ、人が良いね」
感心されたのか呆れられたのか、そう言われた。
なんで?私はまた、間違ってるの?
いくら考えても、間違ってる様には思えない。
本気ではない相手と付き合って、お互いになんのメリットがあるのだろうか?
それから、しばらくたって、アイと話した。
アイから「私ってさ、男を切らしたことがないんだよね、さくらも知ってるでしょう?」
もちろん知ってる。アイにはいつも、必ず彼氏がいる。
けど、それはアイが美人でモテるからだと思っていた。
「違うよ。男を切らさないようにしてるんだよ。彼氏はキープしておいて、その間に違う人を探すの!で、新しい人とうまくいったら、前の人は切るんだよ!」
「え!なんで、そんなややこしい事するの?バレたら面倒じゃん。それに彼氏が可哀想だよ」
「けど、一人になったら、自分が寂しいでしょう。私はそんな寂しさは耐えられない。さくらは寂しくないの?」
そりゃ、寂しいわ!けど、そんな風に付き合うなんて・・・
アイの言いたい事がよく分からない。
「じゃあ、イケメン君をキープしながら、他の人を探せば良かったって事?いや~、とても私にできるとは思えないよ。表情にすぐ出るし、態度ですぐにバレると思う。・・・アイはどんな風にしてるの?」
そこで、アイの前彼と今彼(聡君)の時の話を聞いた。
詳しくは書けないが、かなり驚いた。
数ヶ月間かけて、聡君を自分の方に向かせるようにする。
しかも自分からは絶対に告白はしない。相手から、させるように仕向ける。
で、前彼と切るときは、情も何もなく、バッサリと切り落とす!
>> 282
まあちゃんさん
ありがとうございます。
自分に負けないで、頑張ってくださいね
アイのような駆け引きを、みんなしてるのか。
自分の気持ち通りにしか動いてなかった私が、あまりにも子供にみえた。
うまくいかないのも納得だ!
もうひとつ驚いたのは、
アイは自分から好きになった人と付き合ってるという事。
どちらが告白したのかは別として、自分が選んで付き合ってる。
私は、自分から好きになった人とは、一度も付き合ったことが無い。
羨ましい。
佐々木さんとは成り行きだったが、その前に付き合った人たちは、相手が積極的に行動して付き合った。けど、自分が本気で好きになると、みんな離れてしまう。
アイにその事を話すと、逆に驚かれてしまった。
「今、好きな人はいないの?」
・・・いない。佐々木さんだけ。
「好きじゃなくても、付き合ってみたいなとか、気になる人もいないの?」
・・・誰もいない。
このこって、寂しい子だなって思われたのかな?
自分でも、なんて寂しい女なんだと思っていると、ふと思い出した。
「思い出した!まだあまり会った事がないから、よく知らないけど、気になる人はいるよ!」
気になるというのは、言葉通りに本当に気になる程度の人だったが、多少の見栄もあって、そう言った。
「じゃあさ、私がその人とうまくいくように協力してあげるよ!まずは会える様にセッティングして」
「え?私が、誘うの?」
「そうだよ。誘うくらいなら、自分でできるでしょ!日時決まったら、連絡して!」
困ったことになった。
誘えるのは、誘える。
だけど、アイのいう誘うは、直接的に言ってはいけない。
相手から、誘う様に仕向けるってことでしょう?
そんな駆け引き、したことない。
アイは、なんて言ってたかな。
まずは相手の友達を味方につけたと言ってたな。
とりあえず、友達に電話してみるか!
友達というのは、1つ上の荒川さんという女性。
スノボに誘ってくれた人だ。
私が気になっているのは、そのメンバーのひとりで、潮崎さん。
これまで、そのメンバーで3回会ったが、天然というか、かなりマイペースな人で、
どんな人なんだろうかと興味をもっていた。
でも、ただそれだけだった。
荒川さんに電話で話そうとした。
けど、ここでも、なんて話したらいいのか分からない。
ストレートに、潮崎さんをゲットするために協力してくれ!と言うのだろうか?
困ったな。
寂しい女だと思われないために、下手に見栄を張ったせいで、えらいことになってしまった。
とりあえず、荒川さんに電話してみよう。
潮崎さんの事を聞けなくても仕方ない。
適当な用事をつくって、電話した。
さりげなく、潮崎さんの話に持っていったつもりだったが、
荒川さんはすぐに感づいた様だ!
「えー?誰が、潮崎さんを狙ってるの?もしかして、さくらちゃん?」
バレバレだ。
私が説明、というか言い訳をする前に荒川さんは、しゃべり始めた。
「潮崎さんかぁ~。彼女いないよ!私の知ってる限りでは、ずっと彼女がいないから、良いんじゃない?けどさ、私の知ってるだけで、3人の子が狙ってたけどさ、みんな上手くいかなかったな」
3人も!
そんなモテそうな感じがしないのに!
マイペースな言動で、みんなから突っ込まれる様な人だったから、驚いた。
「あれ?知らなかったの?潮崎さんの家って、開業医なんだよ。地方にさ、大きな病院があるって。その話を聞いてみんな狙うんだけどね、潮崎さん、なかなか固くて落ちないみたいだね。私もさ、医者だって聞いた時は狙ってみようと思ったよ」
面白そうに、そう話してた。
聞いて、一気に嫌になった。
そんなにレベルの高い人だったとは!
私じゃ、無理に決まってる。
天然系のあの性格は、お坊ちゃま特有のものだったのか。
アイに電話して、この話は無かった事にしよう。
けど、アイは逆に「そんな相手だったら、付き合わなくても良いから、仲良くならないと!友達を紹介してもらえばいい。私も仲良くなりたい!」と言われ、
会う手配をしなければいけなくなった。
アイはなんて言ってたかな。
相手の興味を持ってるものにアドバイスを求めて、仲良くなったと言ってた。
とりあえず、荒川さんから「潮崎さんはワイン好き」と聞いたので、それをきっかけにすることにした。
電話をして、
友達と一緒にワインを飲みにいくんですが、どこか良いお店を知りませんか?
と聞いた。
すると、お店どころか、ワインの事まで、熱心に話してくれた。
その時に、「今度、一緒に飲みに行こう」と言ってもらえた。
やった!これか!この言葉を引き出したかったんだ!
次に電話したときに、みんなで一緒に飲みに行く約束をした。
誘うのって、こんなに大変なのか・・・。
ここまでは、自分なりに頑張ったと思うが、この後は散々だった。
みんなで約束通りにワインバーに行った。
アイとサツキが、私の為に協力をしてくれてるのは分かるけど、
とにかく私のことを褒めて褒めて、褒めまくって、
そのアピールが圧倒的で、何にも話せなくなってしまった。
終わった後に、アイとサツキから、
「もっと積極的にいかないとダメだよ!」と
ダメだしを食らって、すっかり嫌になってしまった。
けど、良い経験になった。
今までは、気持ちのまま、感情のままに動いていたけど、
少しは頭を使って動くことができた。
アイの真似だけど。
それにしても、他の人はどんな風な恋愛をしているんだろうか?
表だけじゃない、裏の感情、本音の部分が知りたい!
この少し前に、事務所を辞めていた。
佐々木さんと別れたのは年末。
その次の年になると、先輩の長瀬さんが独立をすることになった。
忘年会の日に、佐々木さんと長瀬さんが相談していたのは、この事だった。
最初は、佐々木さんから依頼されてる仕事は、長瀬さんと高岡さんに分けてしていたが、2月に入ると長瀬さんの事務所だけが担当することになった。
仕事量が減って、また事務所がピンチになった。
仕事のできない私がクビになるかと思っていたが、社長は高岡さんに辞めて欲しいと言った。
社長曰く
仕事の要領が良く、無難に仕事をするのは高岡さん。
私は要領が悪いが、入社よりも格段に仕事ができて、育ててみたいと思っていたとのことだった。
高岡さんは、社長に懇願し、バイトとして残ることになったが
佐々木さんの件で、私と高岡さんとの関係が悪化したが、
この件で、さらに悪くなってしまった。
佐々木さんと別れたから、仕事を切られたと思っていたので、
高岡さんに申し訳ないと思っていた。
けど、社長にそう説明するわけにはいかない・・・。
説明するには、佐々木さんとの関係も話さないといけないから。
それはできないと思っていた。
とはいえ、高岡さんが無視して私とは話さないので、関係が悪いのは、みんなも分かっていた。
ある時、「何があったのか知らないけど、仲直りしたほうがいい」との事で、二人きりで飲む席が設けられた。
当然、自分が悪い。
高岡さんが、私のせいで仕事が減って、自分がバイトになってしまったと言われたら、
謝って、私が事務所を辞めようと思っていた。
だが、高岡さんから言われたのは、そんな事ではなかった。
私と高岡さんは同期だが、高岡さんはそう思ってなかった。
年下の私の方が、下の立場だと思っていた。
高岡さん曰く、
さくらは、分からないことがあったら、先輩の長瀬さんや社長に聞いて、私に仕事を助けて欲しいと言ってこないのが気に食わなかった!
私の方が仕事ができるのに、さくらの方が良い仕事をもらってる!
そして最後に、トイレ掃除を毎日してない!汚いと思わないのか!
最後のところでプチンと切れた。
私は毎日、掃除してる。だけど、みんなが仕事中に掃除をしたら迷惑になると思って、誰もいなくなった時間帯してる!
雑用は高岡さんと私の二人で割り振って協力してやって欲しいと、最初に言われたのに、高岡さんは何もしてない!
と言い返したら、いきなりお酒をかけられた!
「あんたは、社会人のくせに何もわかってない!」と言って、お店の中で大暴れした。
店主が、暴れている高岡さんを抱き止めて、「あんたは、もう帰ったほうがいい」と私に言った。
何がなんだか分からずに、その場から逃げ出した。
地下鉄に乗ると、涙がいっぱいでてきた。いったいなんだったんだろうか?
次の日、高岡さんに会った時に、言った。
「私は高岡さんのことを尊敬してましたよ。それに高岡さんの作品は私は好きで、できあがりを見るのは楽しみでした」
そういっても、何の反応もなく、無視された。
もうダメだな・・・。
私が辞めるべきだと思って、社長に辞職を申し出た。
その一ヵ月後に辞めた。
早速、職探しをはじめたけど、全くダメだった。
何社受けても、不合格。
一人暮らしの部屋も解約して、実家へ戻った。
1-2ヶ月ほどたつと、長瀬先輩から仕事の依頼がきた。
長瀬先輩は事務所を開いたとはいえ、まだ一人で仕事をしていた。
順調そうで、「単発の仕事だけど、やってみない?」という。
以前、私がやったことのある仕事だった。
経験があるから、なんとかなるだろうと思ったが
迷ったり、悩んでも、誰も聞ける人がいない。
全部が自分の責任。
今まで事務所で、どれだけ自分が助けられてきたのかをすごく実感した。
やり終えた後、腰が痛くなって、歩けなかった。
パソコンの前でずっと座っていたからと思ったが、
何日たっても変わらない。腰を伸ばすことができない。
これは困った。まともに歩けないから、何もできない。
病院で検査したが、原因は分からなかった。
とりあえず週3日は通院しなければいけなくなった。
これから半年間、仕事はせずに病院通いをしていた。
しばらくして、腰痛がそれほどでもなくなった時に、
アイが、サツキに習い事(スポーツ系)を誘ったと聞いた。
「私も暇だから、一緒に行きたい!」と言って、
アイは嫌そうだったが、結構強引に入会した。
実は、アイはこの習い事に好きな人がいた。
1年以上前から、習い事を始めていたが、
どうやら上手く落とせないから、
サツキに協力を求めた様だった。
今彼の聡君は可哀想だな・・・と思いつつ、
アイがどんな風に口説いて、落とすのか、見てみたい!
アイの好きな人は、崇さんと言って、この競技の中では有名な人だった。
全国大会で、何度も入賞してる様な人だった。
この崇さんに最初に会った時、
先に入会していたサツキが私のことを紹介してくれた。
「ウチのナンバーワンです!」と冗談で言ったのに
「ええ!この子が!だったら、アイの方が可愛いだろ」と真顔で返された。
なんだと!そんな事、わざわざ言われなくても知ってるわ!
ずいぶん口の悪い人だな・・・。
「あの人(崇さん)のこと、苦手なんだよね」とサツキが珍しく弱音を吐いてた。
アイに協力を求められたものの、苦戦しているのだろう。
確かに、この人は、落とすのが大変そうだ。
朝から夕方まで、インストラクターに教えてもらった後に、
みんなで近くのお店でご飯を食べるのが恒例になっていた。
円卓のテーブルで、大人数で囲むのだが、
アイは毎回、しっかりと崇さんの隣りに座っていた。
崇さんの逆の隣りに、サツキが座って、二人がかりで話しかけていた。
私は邪魔にならない様に、離れて座わって見ていた。
アイは大人しく、ニコニコ笑っている。いつもの毒舌は無い。
仮面、被ってるな~。
けど、どうやって口説くのかな?
見た感じ、普通に話してる様にしか思えないのに。
ある時。
私は端に座って、休んでいた。
こんなに難しい競技だとは思わなかった。
初心者コースに入ったというのに、体力がなくて追いつけない。
同じ初心者のサツキは、どんどん上手くなっていくのに!
私はめっちゃ痩せていた。
佐々木さんと別れる少し前からお酒に頼る生活をしていたが、それ以降もほとんど食べない食生活になっていた。
自分の体を見たら、ガリガリで気持ち悪い。あばら骨が全部、見える。
色気も何も無い、女性らしい身体とは全くいえない身体になっていた。
体力が無い。インストラクターの方に待ってもらってるというのに動けない。
私を待っている、初心者コースの人に申し訳ないと思って、端で休んでいた。
すると崇さんがやってきた。
「俺さ、この台風の時期って、右のひざが痛むんだよね。骨を折ってさ・・・」
こっちは疲れて休んでるのに。
ベラベラとひとりで何を言ってるんだか・・・。
この人は、気遣いも何も無い人なんだな。
崇さんの話をほとんど聞かずに、適当に相槌を打っていた。
「へぇ~、骨折ったことあるの?どこ?ひざ?」
やばい!適当に返事してたら、骨折ったって話し合わせちゃったよ。
うーん、どうしよう。
「心が折れちゃったんですよ。グサグサってね。傷がついて、心が折れちゃったんです」
笑いながら、そう話した。上手く話を逸らしたかな?
崇さんの目がキランと光った・・・ような気がした。
というより、初めて、まともに私の顔をみた。
「心って、なんだ、何があった。もしかして、男だろ!」
急に、そんなに興味を持つなんて、なんなんだ?
「いやいや、そんなに期待に添えるような話じゃないですよ。単に、別れた男に未練たらたらなだけです」
「どんな男だったの?未練たらたらって、なんで別れたの?」
質問責めにされた。
けど、友達でも無いのにベラベラとしゃべるのは嫌だった。
「いやー、そんなに面白い話ではないんで」と言って、
詳しい話は何もしなかった。
その日の夜、いつもの様にみんなでご飯を食べに行った時に、
サツキがやってきた。
「崇さんがさ、さくらと話したいんだって。私と席替わってくれない?」
サツキはいつもの様に崇さんの隣りに座っていた。
ええ!嫌だな・・・
けど断れば、サツキが困ることになるしな。
いやいや、席を替わると、
思ったとおりに心の傷をつけた男の話を聞きたがった。
もう面倒だし、不倫してたことを言っちゃおうかなっと思ったが、
崇さんの横に座ってる、アイの姿が気になる。
特に怒った様子は無いし、こちらを気にしてる様子もないけど、
心の中ではどう思ってるか分からない。
というか、普通はこの状況は面白くないだろう!
やっぱり話すのは止めておこう。
昼間と同じく、適当に誤魔化していた。
崇さんは諦めたのか、
「俺さ、口堅いんだよ。相談したくなったら、いつでも話を聞くからさ」
「そういえばさ、名前なんて言うの?」
(はぁ?名前も覚えて無い子の男の話を聞きたがったの?)
「さくらです」
「さくらちゃんか。さくらって言いにくい名前だね。他にあだ名は無いの?」
言いにくいって、余計なお世話だ!
「うーん、あだ名は特に無いですね」
「そっかぁ、じゃあさ、かえでちゃんって呼ぶな」
「はぁ?何で、かえでちゃんなんですか???」
「かえでちゃんぽいからさ」
それ以降、崇さんに会うと必ず声をかけられる様になった。
声をかけられると言っても、たいていは下ネタ。
からかいの対象になっていた。
「俺さ、本当は色白なんだよ」
崇さんは、練習の為に外にいるせいか、真っ黒だ。
「へぇ~、そんな風に全然見えないですね」
すると、パンツを下ろして、
「ほら!色白だろ!!」とお尻を突き出された。
「げ!!!そんな汚いもん見せないでください!!」
「なんだよ~。俺の尻の形は良いって、よく言われるのに」
「そんな事、言うのは彼女だからでしょう。普通は、好きな男のしか見たいと思わないですよ!」
小学生レベルの会話。
だけど、気楽に話せるのが楽しくなっていった。
サツキはどんどん上達して、とうとう上のクラス(中級コース)へと上がった。
私は相変わらず下手。これはマズイと思って、練習の回数を増やした。
今までは、アイとサツキと同じ土日に練習していたが、
平日もひとりで練習するようになった。
帰りがけに、崇さんと会った。
「今日は、3人一緒じゃないんだ。・・・家、どこ?車で送っていこうか?」
「崇さんは、どこに住んでますか?・・・私の方が、家が遠いので、いいですよ。電車で帰ります」
「なんだよ。遠慮すんなよ。乗ってけよ」
「じゃあ、崇さんの家の最寄り駅まで、いいですか?」
途中まで、車で送ってもらった。
崇さんは地方出身で、2階建てのアパートに一人暮らしをしていた。
そんな話を聞いていくうちに、その流れで、私も都内のアパートで一人暮らしをしていた経験を話した。
「隣りの部屋の人がね、夏になると窓を開けたまま、エッチしてたんですよ」
「え!マジで」
「あえぎ声がね、聞こえてきて。あれがね、本当に苦痛で・・・」
「俺の部屋では、それは無いな」
「そうですよね。窓を開けたまましないですよね!」
普通の友達と話す感覚で、そんな話をしていたら
「あのさ・・・。それって、もしかして、俺のことを誘ってるの?」
「はぁ??」
なんのことか分からなかった。
「誘うって?」
「まぁ、俺は優しいからさ、部屋ではしないで、ちゃんとホテルへ行くよ」
崇さんは運転しながら、こっちを見てニヤニヤしてる
ホテルって、誘うって、そういう意味か!
「いやいやいやいや・・・全然、そんなつもりはないですから!!!」
「この先にさ、(ホテル)あるよ。行く?」
「いや、無理ですから!駅行ってください、駅に!」
「ふーん。でもさ、俺ってマジで優しいよ。相手の嫌がることはしないしさ」
またニヤニヤ、笑ってる。
ああ、そうか。
またからかわれたのか!
次に練習に行く日。
アイとサツキとも一緒に
電車で向かっていたが、
車内で、アイが「崇さん、彼女の名前が分かったよ」と話し出した。
ビックリした。彼女がいるとは思わなかった。
彼女がいるとは聞いたことないし、
土日や平日の暇な日も必ず練習に出ているから、いるような感じに見えなかった。
アイはインストラクターと仲良くなって、彼女がいると聞き出し、
崇さんにも確認をとって、彼女の名前を聞き出していた。
驚いたのは、アイもサツキも彼女がいて当然の様子。
しかも、諦める様子はなく、
さらに詳しい情報を得ようと相談していた。
そうなのか。
付き合う前に、ここまで徹底して相手を調べないといけないのか。
そんなこと、考えたことも、したことも無かった。
アイは、崇さんに自分の恋愛相談して、もっと仲良くなり、
崇さんからも恋愛の話を聞き出せる様な仲になっていた。
アイの相談は
彼氏(聡君)と真剣に交際しているが、
聡君から結婚は考えてないと言われてしまった。
別れた方がいいのか、悩んでる
・・・といった内容。
半分は本当で、半分は嘘だ。
聡君から、結婚は考えてないと言われたのは本当だが、
就職したばかりで「まだ」考えてない。
この点をうまく隠して、相談していた。
それはともかく、
崇さんは、私にはからかうけど、アイに対しては一切言わない。
対応が全然違う。
アイに対しては、いい加減な対応をしてはいけないと思ったのだろうか。
自分を軽く見せない、軽く扱わせない
漠然と、それが大事なんだろうな・・・と分かりはじめた。
その日、練習をしていると、崇さんが通りがかった。
「すごい、汗だね!」と話しかけられた。
「汗っかきなんですよ、私」
「拭くもの無いの?」
「あっちに置いてきちゃって」
「俺の貸すよ、ホラ」
渡されたタオルを見て、
(これって、彼女が洗ってるのかな~?)と、
拭くのを躊躇してると
「なんだよ!遠慮すんなよ!キレイに洗ってあるから大丈夫だ」
タオルに化粧が付かないように、ソッと拭いたつもりだったが、
口紅がついてしまった。
「ごめんね。口紅がついちゃった。(タオル)洗ってくるよ」
「ああ、このくらいなら大丈夫、洗濯すれば落ちるだろ。気にすんなよ!」
何か閃いた。ピンときた。
ちょっとからかってやろうと思った。
「えー、でも怒られちゃいますよ」
「怒られるって、誰にだよ」
「なんだっけ、えーーーーと、ともこさん(彼女の名前)」
「なんで、知ってるんだよ!」
崇さん、めっちゃ驚いてた!
ビックリした顔が面白かった!
思わず、笑いながら逃げ出したら、追いかけてきた。
捕まって、わきの下とかを、こちょこちょされて、ゲラゲラ大笑いしていた。
「なんだよ。誰だよ、言ったのは!」
いつもと反対で、相手の焦ってる顔を見るのは面白かった。
「ごめん、ごめん、彼女いるの秘密なんだよね。もう言わないからさ」
笑いながら、謝った。
「別に、秘密にはしてないから、言っても構わないけど・・・」
と崇さんは答えた。
あれ?おかしいな。
今朝、電車内でアイとサツキが話していたのは、
崇さんの彼女は一部の人しか知らない。
崇さんはこの競技で女の子のファンが多いから、きっと内緒にしているのだろう・・・
そんな話だった。
怒ってる様子もないし、アイとサツキが深読みしたのかな?
「けどさ、崇さん。彼女いるなら、ホテル行こうなんて誘ったら、ダメだよ。例え冗談でも、自分がいない時に、他の女の子を誘ってるなんて知ったら、すごくショックだと思うよ」
いい気になって、説教じみたことを言った。
崇さんは、ばつが悪いのか、そのまま何も言わずに、去ってしまった。
最初は、崇さんと彼女の事を「ラブラブじゃん!」とからかっていたが、
詳しい話を聞いていくうちに、そうではないことが分かった。
彼女と結婚しようと思っていた。
しかし、半年ほど前に彼女のお父さんに挨拶にいくと、結婚を反対された。
「娘と本気で結婚したいなら、そんな競技は止めろ!そして、きちんとした会社の正社員になれ!」と言われていた。
崇さんは、この競技関連の仕事の契約社員だった。
競技を取るか、彼女(結婚)を取るか・・・
結局、崇さんは、この競技を諦められない!
彼女との関係は続けられない。
自分からは彼女へ連絡しない。
けど、彼女から連絡がきて、遊びに行きたいといけばデートに行ったりしていた。
崇さん、アイ、サツキ、私の4人で、飲んでいる時にこの話を聞いた。
聞いてて、納得できなかった。
他人の恋愛で、私には関係ない。
それは分かっていたが、
崇さんの本音を知らないで、崇さんの事を諦めきれない彼女が可哀想で仕方なかった。
まるで、家族を選んだのに、それを私に言わなかった佐々木さんの様だと思った。
「なんで、彼女に、もう無理だ、会わないってハッキリ言ってあげないの!彼女はまだ崇さんとチャンスがあると思ってるんでしょう。1%でも2%でも、チャンスがあれば、もしかしたら・・・と未練もって、ずっと引きずるんだよ!彼女が可哀想だと思わないの!!」
飲んでた勢いもあって、崇さんを責めた。
普段、私は深い話には参加しない。
この時もずっと黙って聞いていたが、我慢しきれずに言ってしまった。
崇さんは、押し黙っていた。
サツキが、「けどさ、崇さんだって、辛いと思うよ。彼女に情があるんだよ。そんなに簡単に割り切れないんだよ」
と、その場を取り成した。
「彼女がさ、自分で納得して諦めがつくまで、崇さんは待ってあげてるんだよ」とアイも言った。
そうなのか。
そんなものなのか。
いやいや、けど、自分が別れを決断したのなら、やっぱり言ってあげないと。
言わないのは、自分が悪者になりたくないから。ズルイし、卑怯だと思う。
ここは譲れない!
けど、崇さんの彼女は、私とは違う。
アイとサツキと同じ考えかもしれない。
そう思って、納得した。
この話をしてる最中、ずっと佐々木さんと自分を思い出していた。
自分の押し殺していた感情が、一気に溢れ出てきて、辛くなった。
しばらく誰とも会いたくない。気持ちが落ち着くまで。
そう思って、練習を休んでいた。
しばらくすると、サツキからメールがきた。
「花火大会があるんだけど、行ける?スクールの人たちが、前日から席取りしてくれるんだって。良い席で観れるよ~。崇さんが、さくらは来ないのかって、聞いてくるんだ。出来れば、来てね!」
あいまいな返答をした。
が、当日の花火大会になると、何度も、頻繁に、サツキから連絡がきた。
(これは、行かないとマズイな・・・)
結局、行くことにしたが、花火大会の会場はものすごく混んでて、場所が分からなかった。
なんとかサツキに会って、みんなのいる場所へ案内してもらった。
すると、崇さんが待っていた。
怒ってるのかな?と思うような表情で「なんで、こんなに遅くなったの?」と。
「いやー、花火大会の客で、電車も、この場所も混んでるんですよ、観る場所が見つけられなくて」
と言い訳した。
「そっか、混んでるもんな」ちょっと、顔が緩和したような気がした。
「あれ?アイはどこにいるの?まだ来てないの?」
「アイは、あっち(もっと前の方)へいるよ」とサツキが教えてくれた。
珍しいな~。アイが崇さんのそばにいないなんて。
「じゃあ、アイの方へ行こうか!」と動こうとしたけど、サツキも崇さんも動かない。
サツキが「崇さんがね、さくらに膝枕して欲しいんだって。待ってたんだよ」
はぁ?
ひざまくらって・・・。なんで???
崇さんの方をみると、崇さんは花火の方を向いて、私とは顔を合わせない。
嫌だな。そんな事したら、アイに誤解されるじゃないか!
困ったな。けど、断る理由を思いつかない。何て言えばいいのか。
困って、サツキを見た。
目で、「助けてくれ!」と合図したら、
察しの良いサツキが気づいてくれた。
サツキが今度は崇さんに向かって
「私の方が、お肉があるからプニプニして気持ち良いですよ。ホラ!私が膝枕をしてあげますよ」
サツキ、上手い!ナイス!
崇さんは、花火を見たまま、何も言わない、動かない。
「ホラ、ここ!ここ!」
太ももをポンポンと叩きながら、サツキがいくら誘っても、崇さんは無視してる。
サツキも困ったのか、私の方を見た。
沈黙が続く。
根負けしたのは、私だった。
「膝枕って、したことないけど・・・。正座するのかな?」
すると崇さんが
「正座なんてしたら、痛いからいいよ」と言って、私の太ももに頭を乗せてきた。
私はアイが気になって仕方無かった。
こんなところ見られたら、どう思われるか。
佐々木さんの時に、「彼氏を紹介したくない人」扱いされてから、
ものすごく気になっていた。
サツキだけが、一所懸命に話していた。
崇さんはサツキの言葉を完全に無視していた。
サツキは気まずくなったのか、
「アイのところへ行くね」と去ってしまった。
何度もサツキから連絡がきたのも、きっと崇さんに言われたからだろうな。
用が済んだら、無視するなんて・・・サツキ、完全に崇さんのパシリじゃん。
ひどい男だな。
崇さんは、私に背を向けて、ひざに近いところで、寝ていた。
膝枕って、こんなもんなんだな・・・。
もっと密着してくっついるのかと思った。
なんだか、崇さんの体が強張ってる様な気がする。
さっきから、いつもと違う様子で
全く話さないし、もしかして崇さん、緊張してる?
そう思ったら、急に可愛く思えてきた。
思わず、寝ている頭をなでなでした。
「なんだよ!もう!」と言いながら、崇さんがこっちに振り向いた。
すごく嬉しそうな顔をしていた。
「いやー、なんか可愛くて。崇さん、私としばらく会えなくて、寂しかったんでしょう?」
崇さんは「なんだよ!」と言いながら、
頭をなでてる私の手を自分の顔に持っていった。
照れて顔を隠してるのかな?と思っていたら、
ペロッと私の手の平を舐めた。
「うわ!舐めた!汚い!」と言って、手を引っ込めたら、
へへッといたずらっ子の様に笑っていた。
いつもの顔に戻った!と思って、安心した。
>> 327
みささん
ありがとうございます。
文章下手だから、読みにくいですよね。
すみません・・・
ボチボチと更新していきますので、良かったら続けて読んでください。
花火が終了すると、
サツキが戻ってきた。
「ねぇねぇ、これからご飯食べに行くんだって。お店に予約してあるから、行く?」
「え?私の(予約の)分は入ってないでしょう?」と躊躇してると、
「ひとりくらい入れるだろ!」と崇さんが言ったので、
3人でお店まで歩いていた。
「アイはどうしたの?」と私が聞くと、
「先に、みんなと行ったよ」とサツキが答えた。
アイとは今日は、一度も会ってない。
どうしたんだろう?
私がいない間に、崇さんと何かあったのだろうか?
暗くて人込みの中だったので、崇さんの背中側のTシャツを、サツキと私が掴んで歩いていた。
サツキが、わぁ!と言って、転びそうになった。
崇さんが「なんだよ!気をつけろよ!俺の手を握れ!」と言って、サツキと手をつないで歩いた。
反対側の手を出して、「お前はこっち握れ!」と言って、私は反対側に手をつないで歩いた。
「崇さん、両手に花ですね」とサツキがからかう様に言ったので、
私も「こんな美女2人に囲まれて、幸せですね」と続けて言った。
すると、何も言わずに、つないでいた手を振り払われたので、ビックリした。
ええ!なんで急に振り払われたんだろう。
何か、私、悪いこと言ったけ???
崇さんと手をつないでない事に気づいたサツキが、
「さくら~、私と手をつないで行こうよ!」と声をかけてくれた。
今度はサツキが真ん中になって、手をつないで歩いた。
崇さんに手を振り払われた事が、
自分でも思ってないほどショックだった。
それに、そういう気持ちになっていた自分にもショックだった。
お店に着いたが、まだ入れず、
店の前で、しばらく待たなければいけなかった。
入り口から、少し離れたところに座って待っていた。
>> 332
さやさん
ずっと読んでくださって、ありがとうございます。
来週は、時間があるので、もっと更新できると思います
>> 334
ゆうさん
ありがとうございます。
最後まで頑張ります!
お店の前で待っているとき
崇さんは、知り合いを見つけた様で、いなくなってしまった。
サツキと2人でしばらく待っていたが、
「アイを探してくる!」とサツキも、行ってしまった。
サツキは、やっぱり良い奴だよな・・・。
明るくて、優しい、おまけに面倒見も良い。
NOと言えない性格で、アイや崇さんに振り回されるのを見ると、
佐々木さんを誘惑しようとしていたなんて、信じられない。
やっぱり佐々木さんの方から、番号を聞きだしたんじゃないの・・・。
本当はどっちなんだろう?
あの時に、うやむやにしてしまった事、今さらながら後悔する
崇さんが戻ってきて、私の隣りに座った。
「もう友達との話は、いいんですか?」と聞いた。
「おお」と、崇さんはあいまいな返事をした。
「彼女さんの友達は、来てないんですか?」と聞いてみた。
崇さんの彼女は、私たちと同じで、
以前、女の子3人でここに習いに来ていた。
彼女は、ここをもう止めてしまったが、友達の1人がまだ続けている。
もしかしたら、今日は来ていたのかと、気になっていた。
「なんで?気になるの?」
「いや・・・。(膝枕してたのを知ったら、)彼女が嫌な気持ちになるんじゃないかと思って」
「・・・・・・。お前さ、なんでそんなに優しいの?」
真剣な顔をして、言われた。
優しいって?私が?
優しいこと、何かしたか?
普通、優しいと言うのは、サツキみたいな子を指すだろう。
「え???私、全然、優しく無いですよ・・・。なんでですか?」
何か優しい行動をしたのかな?と思い出そうとしたが、何も浮かばない。
けど、褒められて悪い気はしない。
「いや・・・。そうじゃなくて」。
崇さんは真剣な表情は崩さずに「なんで、そんなに優しいんだ」と重ねて言われた。
え???なんだこれは?
意味が分からない。
何と返事していいのか分からない。
とりあえず、褒められて照れくさいので「へへへ・・・」と愛想笑いしていたら、
怒った顔をして、崇さんはどこかに行ってしまった。
なんで怒ったんだろう。
ますます意味が分からない。
いや・・・
もしかして、
今、私は口説かれたのか?
これは、マズイ!一緒にいたら、ヤバイ!
焦った。
つないでいた手を急に振り払ったのも、
かけひきだったと思えば、そう見える。
一旦、冷たくして、その後に優しくする。
口説くときの鉄則だ。
崇さんは、そんな風な事をするタイプには見えない・・・
けど、男だから、分からないぞ。
帰ろうと思い立って、サツキを探しに行った。
その後、サツキと2人で帰った。
結局、この日にアイとは会わなかった。
崇さんに口説かれたかもしれない
と思ったが、勘違いの可能性が大きい。
いつもの様にからかったのを、私が本気にしていると思われたら、恥ずかしい。
何よりアイに知れたら困る。
だから、黙っていた。
この日の帰り道に、サツキと約束をした。
サツキの会社に、私の高校時代の同級生(男)がいた。
前々から、久しぶりに一度会って飲みに行こうと言っていたのだが、
なかなか都合がつかずに延びていた。
会う日の約束をした。
同級生は、佐藤君という。
高校時代は親しくは無かったが、クラスの中では良い人だった思い出がある。
サツキと私と佐藤君の3人で会うつもりでいたが、
約束した場所には、佐藤君の友達も来ていた。
「俺一人だと、つまらないと思って、(女の子と)話せる友達を呼んだんだ」と佐藤君は気を使ってくれた様だ。
けど、この友達、名前は忘れてしまったが、二度と会いたくない男だった。
この友達、とにかくよくしゃべる人だった。
サツキと私は、何とかついていけたけど、
佐藤君は、ほとんどしゃべらない。
佐藤君にもっと話させてやれよ!と、内心は思った。
この友達のペースに乗ってしまい、
私もサツキも佐藤君も、とにかく飲んで、飲んで、
帰りはみんな、ベロベロの状態だった。
駅へ向かう帰り道、サツキと佐藤君が少し前を歩き、
私は後で歩いてると、急にこの友達に腕をひっぱられて、
いきなりキスされた。
おまけに舌も入れてきたので、本当に苦しかった。
「よし、よし!まだ大丈夫だな」と言って、
「こっちへ行こう。少し休憩して帰ろう!」と肩を抱かれて、
ラブホテルへ連れて行かれた。
酔っていたので、おぼろげながらの記憶だが、
ラブホテルは混んでて、待ってるカップルがたくさんいた。
待ってる間に、頭が少し働いてきた。
「ごめん、私、帰るわ」と行って、ホテルから出ようとした。
「ちょっと、ちょっと、待って!」と引き止められた。
そのままフロントへ何かを話しに行って、帰ってきたら、
「ほら、すぐに部屋が開いたから」と言って、鍵を見せられた。
なんで?こんなに混んでるのに?どんなマジックを使ったんだ???
とにかく酔って、気持ち悪いし、眠い・・・
という状態だったが、
この友達は、相当に溜まっていたのか、エッチを4-5回してきた。
あまり覚えてないけど、コンドームが無くなって、
フロントに頼んで余分に持ってきてもらったのは、記憶にある。
「もっと貰えるんだね」と驚いていたら、
「知らなかったの?俺なんて、毎回、お代わりするのに。今まで、たいした奴と付き合ってこなかったんだな」と、自慢していた。
なんだこいつ!
何回もできるって言っても、早漏だから、できるんだろ!
そっちの方が恥ずかしいわ!
と思ったのも、記憶にある。
朝、目覚めると、頭がハッキリした。
ヤバイ事したと一瞬、反省したが、
やったもんは仕方無いか・・・とすぐに開き直った。
それより、これからどうするかが大事だよな・・・。
この男はどうでもいいけど、まず佐藤君に軽い女だと思われて、
高校時代の同級生の間で、噂を流されたら、困る。
この男に、口止めしないと。
この軽い、おしゃべりな男が黙ることなんて、できるのだろうか。
「なぁ、もう1回しようよ」と誘ってきた。
げげ!マジかよ、勘弁してくれ!
「ごめんね。体がね・・・ちょっと痛くて。彼氏と別れてから、エッチしてなかったから。久しぶりだったせいだと思うけど」と若干、ぶりっ子をして言った。
「そうか・・・。俺、激しかったからな」と、まんざらでも無い様子。
「ねぇ、いつも、あんな風に女の子を誘うの?!」と、怒った様に聞くと
「大学時代はな。たぶん、50-60人の女の子は喰ってきた」と、さらに調子に乗って自慢してきた。
「え?大学時代って、佐藤君とつるんでたんでしょう?佐藤君も、そんな事してたの?」とビックリして聞いた。
「いやいや、あいつはさ、真面目だろ!あいつはさ、女の子にモテる俺に憧れてんだよ」
・・・こいつは、どこまで自意識過剰なんだ!
「ここさ、入る時に混んでたでしょう?なんで先に入れたの?」と疑問をぶつけると
「ああ。それは、クレームを入れたんだよ。俺より後から来た奴を先に部屋へ入れたってね。そしたら、一発で入れたよ」
「それって、みんな待ってるのに、待ってる人が可哀想じゃん!」と思わず、言ってしまった。
「さくらちゃんが、帰ろうとしただろ。だから、ヤバイなと思って。普段は、待つよ、俺だって」と言い訳をしていた。
帰り際、電話番号を聞かれた。
こいつだけには、絶対に、教えたくない!
けど、下手に断ると佐藤君に言われるかも・・・。
一瞬悩んだ末、嘘の番号を教えた。
携帯電話の下一桁を違う数字にした。
もし仮に、文句を言われたら、下一桁だけ間違えたと言い張れる!
帰ると、サツキから電話があった。
「昨夜は、どうしたの?駅に着いた時に、さくらがいなくなったの気づいて、佐藤君と2人で探し回ったんだよ!」
心配して、探し回ってくれたんだ!
サツキに、ものすごく迷惑かけてしまった・・・。
やったことは仕方無いと割りきっていた昨夜の出来事が、
急に、ものすごく悪いことをした気持ちになった。
「いや・・・ごめんね」と言いながら、しどろもどろに説明をした。
するとサツキは
「ごめん、そんなにさくらが酔ってると思わなかった、本当にごめんね、私が気づいて、離れない様に気遣ってあげれば良かった・・・」と自分を責めだした。
「いやいや、全然、サツキのせいじゃないから、私が悪いから」と言っても
サツキは自分を責める。
本当に、悪いことをしてしまった。
この男とは、これで終わったから良かったけど
問題は、この一件で、アイとの仲が微妙な関係になってしまった。
サツキから、今回の件を聞いて、
アイからお叱りの電話がきた。
正直、なんでアイに怒られないといけないのか、
意味が分からないと思っていた
>> 350
こんにちは。
一気に読めました。
昔同じような経験をしたので、主さんの気持ちに共感できるとことできないところを楽しみながら、読ませて頂…
OLさん、ありがとうございます。
感想もらえると、すごく元気になります^^
>> 351
こんにちは。され妻も不倫してた女も、間近で見てきた立場です。
多分だけど主さんは孤独感が強いのかな
でも、本当に人って合わせ鏡みたいなんです…
りすさん
ありがとうございます。
孤独感が強いのは、当たってます!
これからアイの過去になります。
どこまで書いていいのか、私の事ではないので悩んでいるのですが、
本人が特定されない程度に書こうかな、と。
この時期、みんな恋愛で悩んでいたんだな~と思います。
>> 352
主様、皆様、横レス大変申し訳ありません。
楽しみに拝読している携帯小説なんです。
日記、携帯小説に出現するのいい加減やめてもらえませんか。…
すみません、主です。
続きを待っている方がいるので、
早くこっちを書かないと…とは思ってるのですが、
新しくスレを立ててしまいました。
すみません。書きたくなりました。
この文では、抜かしたのですが
佐々木さんと別れて、イケメン君と付き合ってる時期に、
最初の彼氏(本文では、役者で、急にいなくなった元彼)から、
2年ぶりに連絡がきてました。
この人の話を書くと、長くなるし、関係ないのでこちらでは省いたのですが、
興味のある方は、読んでみてください。
「初めての男が詐欺でした」というタイトルで、日記のカテゴリーに書いてます。
http://mikle.jp/threadres/1731514/
この不倫女の方を優先して書きますので、ご了承ください
「サツキから聞いたよ!」
アイは、怒っていた。
「いや・・・でもさ、私も酔っ払ってたし・・・」と言い訳をしたが、
「私は、さくらの為に言ってるんだからね!」と聞き耳をもたない。
ムッとした。
不倫ならともかく、今回の相手は、フリーだ。
なんで、私が怒られるんだ!
「だってさ、誰にも迷惑かけてないじゃん。たかが、1回、エッチしたくらいで・・・」
アイは黙ってしまった。
しばらくすると、
「さくらを見てると、昔の自分を見てる様で、辛くなるんだよ・・・」と語りはじめた
アイは、中学、高校と彼氏がいたが、その時はまだ未経験で、
大学に入り、サークルの先輩と付き合って、初めての経験をした。
けど、この先輩は初エッチをした途端、アイを捨てた。
いわゆる、やり逃げだ。
しかしアイは、その後、すぐ彼氏ができて、
それからも何人か彼氏が変わったけど、ずっと彼氏を切らしたことはない。
「先輩に、やり逃げされたとき、私も死にたい、死にたいって、ずっと思ってたんだ。誰にも言わなかったけど・・・自殺未遂もしたし・・・」
驚いた!
「その後に付き合った人いるでしょ?付き合っても、先輩の事が忘れられなくて。ナンパしてきた人と浮気したんだ」
「その人(浮気相手)との間に、子供ができたんだよ。たった、1回だけで。・・・・・・みんなには言わなかったけど、内緒で、中絶したの」
「ええ!なんで、その時に話してくれなかったの!!そんなに辛い目にあってたなら、協力したのに!」
ショックだった。
中絶したことよりも、その時、そばにいたのに何も教えてもらえなかった事にショックを受けた。
そんなに私は頼りにならないのか・・・。
「私、プライドが高いから。もしこれを話して、みんなからの見る目が変わることを考えたら、言えなかった」
「そうか・・・。けど、中絶したって聞いても、アイのことは変な風に思わないよ。辛かったんだなって思うだけで」
そうか。だからアイは、こんなに付き合うまでに慎重なのか。
やっと分かったような気がした。
「さくらはそう言うと思った。けど、違うんだよ。そうじゃないの」
・・・何が違うのか。よく分からない。
けど、アイが自分のことをさらけ出して話すのは、初めてだ。
最後まで聞かないといけない。
「浮気した事、すごく後悔して、苦しくなって、彼氏に話したの。全部、正直に。怒ってたけど、許してくれるって言って。・・・けどね、本当は許してくれなかった。態度が変わって。冷たくなった。・・・私はふられるのが嫌だから、変わりの人を探して、私からふったの」
その後の彼氏との話も聞いた。
中絶した経験から、エッチするのが苦手になってしまった。
それが原因で、うまくいかなくなった。
ふられるのが嫌だから、自分からふってしまう。
それを繰り返していた。
そんな過去の話を、今彼(聡君)に話したら、全部を受け止めてくれた。
エッチする時も、アイが辛くて嫌になったら、止めてくれる。絶対にしない。
けど、ここまで受け止めてくれてるのに、結婚はまだ先と言われる。
だから、ふられる前に予防線を張ってしまう。
そういう話だった。
「さくらが、佐々木さんと付き合った時、既婚者なんかと付き合ったら、さくらは遊ばれて、傷つく思って、反対してたの。・・・けどね、佐々木さんとさくらを見て、二人一緒にいるのが、本当に幸せそうだった。あの時、私はきつい事ばかり言ったけど、本当はね、結婚してからも、本気で人を好きになることってあるのかなって思ったの」
「だから、さくらが手首切っちゃった・・・と電話してきたでしょ?本当に驚いて、自分が自殺未遂したことを思い出して、電話を切っちゃったんだ」
「自分では、どうしていいのか分からなくて、聡君に電話したの。聡君は、すぐにさくらちゃんのところへ行ってあげた方がいいって言ったんだ。けど、私にはそれができなくて・・・」
アイの本心、というより懺悔の言葉を聞いた。
この全てを私に受け止めて欲しいのか。
「大丈夫。(自殺未遂は)酔っていただけで本気じゃなかったし、あの日は実家に帰ったから、気にしないで。それに聡君にも迷惑かけちゃったんだね・・・、そのうちに奢るからって言っておいて。ハハ、それにさ、アイには言ってなかったけど、私は妊娠しないんだよ!無排卵でさ、ずっと通院してたんだけど、全く、その兆候はなくて。今は、病院すら行ってないから」
そういう問題じゃない!というのは分かっていたけど、そういう言葉しか出てこなかった。
私は相談という名で、アイに重い荷物を背負わせていた。
これ以降、
アイは微妙に、私に気を使ってくる。
私は知らないふりして、なるべく普段通りに振る舞っていた。
崇さんに口説かれ(?)て、
なんだか崇さんに会うのが気まずくなって、
本当は習い事を止めたかった。
けど、今、止めたら、アイが気にするかもしれないと思って、
そのまま続けていた。
崇さんからは、からかわれてるのか口説かれているのか、
分からないアプローチが続いた。
最初はアイや彼女に対する罪悪感みたいな気持ちが沸いたが、
だんだん一緒にいると楽しくて、それを忘れてしまっていた。
そして11月のある日。
「今度、大会があるんだ。関西だから遠いけど。できれば応援に来て欲しい」と崇さんに言われた。
「もちろん!みんなで、応援に行きますよ!!!いつですか?」と答えると
「いや。ひとりで来て欲しいんだ」
「え?ひとりですか・・・?」
「俺は準備があるから、前日に車で行く。その時に一緒に乗ってもいいし、当日に新幹線でもいい。新幹線なら、駅まで迎えに行くよ。帰りは車でちゃんと送るから。・・・今回は優勝するつもり。だから来て欲しい」
真剣な顔で言われた。
今、ここで返事をしないといけないの。
YesでもNoでも、どちらの言葉をいっても、今までの関係は変わってしまう。
そう思ったら、どちらも言えなかった。
今のままが良い!今の関係が、一番、居心地が良い。
「もしかしたら、仕事かもしれないから・・・」と、逃げた。
「分かった。仕事の都合が分かったら、連絡して」
最低なことに、連絡しなかった。
少し前にさかのぼる。
7月位に、高校時代の友達(チエちゃん)から久々に連絡がきた。
「ねぇー聞いてよ!」。
ずいぶん、うっぷんが溜まってる様だった。
久々に会って、話を聞くと、
驚いた事に、私と同じだった。
チエちゃんも、会社の上司と不倫して、会社を辞めたという。
チエちゃんの会社は、そこそこ大手企業。
チエちゃんは、営業職で、上司は課長。
社内で1位2位を争う、やり手の営業マンとのこと。
「私も同じだよ~!」と佐々木さんの話をすると、
「やっぱり、仕事のできる人って、カッコイイよね!」と話は弾んだ。
秘かに、
絶対にそんな男よりも、佐々木さんの方が仕事できてカッコイイ!と
対抗意識を燃やした。
けど、チエちゃんの話を聞くと、そんな思いは吹っ飛んだ。
ものすごい修羅場だった。
その課長には、子供がいた。
けど、病気か何かで血液検査をしてみると、自分の子ではないと分かった。
奥さんが浮気して、できた子供だった。
そんな課長の悩みを聞いて、チエちゃんは同情し、付き合う事に。
課長は奥さんと別れるから、チエちゃんと結婚しよう!と言ったが、
奥さんは同意しない。
しかも、奥さんが子供を連れて、会社と自宅に乗り込んできた。
チエちゃんは、会社に居辛くなり、辞めた。
親が弁護士を立てて、奥さんとの話は何とかおさまった。
しかし、課長の方が、ストーカーになってしまった、という。
奥さんが会社に乗り込んできたことで、社内での立場がおかしくなり、
奥さんと子供との関係もおかしくなった。
チエちゃんが別れ話を切り出すと、自分の人生を壊したのに!と、
逆恨みをした様だった。
その後、警察に被害届を出す、騒ぎになったという。
すごい話で、愕然とした。
チエちゃんは、佐々木さんの事を羨ましがっていた。
「さくらの事を、奥さんに話さなかったんでしょう。それって、さくらに愛情があるからだよ!それに比べてさ、ウチなんて・・・。奥さんに問い詰められて、私の事をベラベラ話しちゃうんだもん。本当に、私へ気持ちがあったら、庇ってくれるはずだよね」と、文句を言っていた。
「いや、それって、奥さんの性格だと思うよ。浮気して、違う人の子供を産む様な人だから、そんな人に問い詰められたら、話しちゃうのも仕方ないよ」と、チエちゃんを哀れに思って、同情して言った。
こんな奥さんを持つ男なんだから、きっと、ろくな男じゃない。
佐々木さんの奥さんは、かしこい人だから、
私のことを知っても、こんな事はしないだろう。
そんな風に思っていた。
「そうかな。私は違うと思うな。これは彼の気持ちの問題だよ。佐々木さんの奥さんだって、さくらの事を知ったら、どうなってたか分からないよ。バレた時にどうだったの?」
よくよく思い出してみた。
「そういえば・・・私に慰謝料を請求して、親や会社にも言うっていってた」
「そうでしょう!庇うってことは、それだけ真剣だったんだよ」
最後の別れを思い出すと、そんな風には思えないけど、
同じような経験をしたチエちゃんのいう事には説得力がある。
母親と一緒に連れてこられたという子供の事が気になった。
「その子って、いくつくらいだったの?会った時にどうだった?」
「んー5歳だったかな?女の子で、本当に、可哀想だったよ。(会社に奥さんがきたときに)奥さんがね、私の事を、『パパが家に帰ってこなくなったのは、この女のせいなんだよ』って、子供に言ったの。そしたら、子供が『え?この人のせいなの。私がパパの本当の子供じゃないから、帰ってこないんじゃないの?』って言うの。社内の人たちも聞いてて、可哀想だねって言ってたよ・・・」
「チエはさ、どう思ったの?(子供に)罪悪感とか、感じた?」
「なんで、私が感じるの?浮気して、他の男の子供を産んだ奥さんが悪いのに!」と、怒りながら、そう言った。
けど、既婚者と知ってて関係を持ってるんだから、理由はどうであれ、悪いことのはずなのに・・・?そう思わないのかな?
と心の中で思った。
「チエの、両親は、なんて言ってた?怒ってた?」
「うん。お前は、本当に人が良すぎるって。だから騙されるんだって。男の話を素直に聞いて、同情しちゃって、本当にバカみたいだったわ」
ええ!そっちなの!
加害者ではなく、被害者意識しか持ってないのか。
チエちゃんから、「今ね、出会い系サイトやってるの」と言われ、
「見て見て、カッコイイでしょう」と男の子の写真を見せられた。
もはや、不倫男の事など、過去の事で、今では何とも思ってない様だ。
9月になって、また職探しを始めようと思っていたが、
以前の業種では、求人が全く無かった。
10月になると、チエちゃんが派遣会社に登録したと連絡をくれた。
「さくらもさ、派遣会社に登録してみたら」と勧められ、
新しい業種で仕事を探してみようと思った。
すると、有名な大手企業が、派遣社員を大募集するというので、
チエちゃんも私も受けてみることにした。
5対5の集団面接だった。
私は、久しぶりの面接だったが、手ごたえは十分にあった。
仕事内容は面白そうだったし、面接官の印象も良かった。
面接が終わって、帰る時に、面接官のひとりから、私だけ呼び止められた。
「派遣社員でも、優秀な子には社員への登用もしているから、頑張ってね!」
と言われた。俄然、やる気が出た。
しかし、母は反対だった。派遣社員なのが、気に入らない。
母は、昔から、正社員の事務職を探せといってきた。
それに逆らって、以前の職に就いたこともあって、
今回は、ただ逆らうだけは躊躇した。
そこで、求人に1社、正社員の事務職があったので、受けてみることにした。
今や、不況の時代。未経験の私が受かるはずがない。
落ちたら、諦めるだろうと思っていた。
その会社は、1500人規模の会社で、地元のオフィスビルのワンフロアに、本社があった。
採用試験は、
1対1の面接だった。
が、驚いた。
面接官は私と同じ年齢くらいの若い男。
しかも、話す内容は、学生の会話のように軽い、チャラ男だった。
なんだ、この会社は・・・?こんな人に面接させるのか・・・。
チャラ男とは、あまり上手く話せなかった。
面接が終わった。
すると、
「もう少し、お時間よろしいですか?上司が面接しますので」と言われたので、そのまま待っていた。
上司が入ってきた。
見て、驚いた!!!
この人、佐々木さんに似てる!
入ってきた瞬間、本当に佐々木さんにソックリだと思った。
けど、よくよく見ると、顔かたちは全然違う。
なんだろう?雰囲気が似ているのかな??
ドキっとしたのは一瞬で、すぐに気を取り直して、面接をした。
本社、営業部の課長だった。
さっきのチャラ男とは違って、すごく落ち着いた雰囲気の中、上手く話せた。
とはいえ、受かるとは思ってなかった。
気持ちは派遣にあり、派遣会社からも返事を催促する電話が、何度もかかってきたので、そっちに行く気だった。
2日後、採用との電話があった。
母が、その電話を受けて、喜んでいた。
落ちるだろうと思って受けた会社に、受かってしまった。
母に今さら派遣に行くとは、言いにくい。
11月1日付けで、入社することになった。
私は、営業部の事務員になった。
面接官の課長の部下だった。
本社フロアには、30人ほどの社員がいた。
うち、半数は女性社員だったが、なんとなく、変な雰囲気の会社だった。
女性社員が、誰も、ニコリともしない。みんな無表情で、黙々と仕事をしてる。
活気がなく、暗い雰囲気。
挨拶しても、女性社員は、誰も返答してくれない。
私を無視して、自分の友達とだけ話している。
最初は、私が嫌われてるのかと思った。
けど、違った。
それは、すぐに分かった。
逆に男性社員は、みんな愛想が良い。
何なんだろうと不思議に思ったが、
まずは事務職の仕事を先に覚えないと!と思っていた。
しばらくすると、東さんという女性が声をかけてくれた。
その後、ともちゃんという女性と仲良くなった。
ともちゃんは、この会社の唯一の既婚女性で、
一番年上だったが、性格はサッパリとした毒舌家で、
私好みの大好きな女性だった。
入社して、3-4週間したある日、残業して、7時くらいまで残っていた。
総務部の次長が、「さくらちゃんの歓迎会って、まだやってないね。これから飲みにいかない?」と声をかけられた。
正直、すごく嬉しかった。
会社に全然馴染めずにいたから、声をかけてもらって、やっと認めてもらえたのかと思った。
その時に、本社フロアにいたのは、次長と男性3人と女性は東さんだけで、計6人で飲みに行った。
が、この次長、「今日の主役なんだから、飲め!飲め!」という人で、日本酒一気や、とにかく飲まされた。
断ったら、マズイ!と思って、言われるまま飲んでいたら、相当に酔っ払って、トイレで吐いていた。
東さんが心配して、トイレに来てくれた。
その後、カラオケに行って、次長のリクエストを歌わなければいけなかったのは覚えてるけど、あとは記憶に無い。
家に帰った記憶も無い。
次の日、二日酔いのまま会社へ行くと、みんなの見る目が違う・・・ような気がした。
もしかして、せっかく次長が、歓迎会を開いてくれたのに、泥酔したから、呆れられてしまったのか・・・と落ち込んだ。
その日の帰りに、課長に、「今日、飲みに行かないか?歓迎会も兼ねて」と言われたけど、
「すみません、調子が悪いので」と断ってしまった。
さらに次の日。
会社に行くと、昨日、課長の誘いを断ってしまったのにも関わらず、
妙に課長が優しかった。
なんだろう、気持ち悪いな・・・
と思っていたら、午後になると、総務部の次長から、こっちこっちと手招きをされた。
次長の元に行くと、
「一昨日は、飲ませすぎちゃって、ごめんね」と謝ってきた。
今さら、なんだろう?と思って、
「いえ、いえ、私も限度知らずに飲みすぎて、すみませんでした」と謝った。
次長が「昨日、課長にね、怒られたんだけど、その話は聞いてる?」と言われた。
「いえいえ、全然、聞いてませんけど・・・?」
なんなんだろうか?
「あのね、タケ(新入社員の男の子)ってさ、童貞なんだよ。社会人にもなって、童貞って、可哀想だろう?」
は???童貞って、いったい何の話だろう?
「でさ、キスも経験したことないんだ。俺さ、その話を聞いて、可哀想になっちゃって」
はぁ・・・?
「さくらちゃんさ、カラオケBOXで、寝ちゃっただろう?で、タケにさ、さくらちゃんにキスを教えてもらえって、俺も酔ってたから、けしかけたんだ」
ええ!それって、もしかして、タケって人と私がキスをしたって事!
驚いて、そのタケ君を見た。
次長の斜め向かいに座ってる。
下を向いたまま、じっと動かない。
「昨日ね、さくらちゃん、課長の誘いを断っただろう?さくらちゃんが断るなんておかしいな、って課長が話してたんだ。するとカズ(一緒に飲みにいった一人)が、『タケと無理やりキスをしたせいだ』ってバラして。課長が、えらい剣幕で怒っちゃったんだ。その後、あの場にいた3人(男性社員)が会議室で正座させられて・・・なっ、タケ」
急に、次長はタケ君に話をふった。
するとタケ君は「はい。僕、2時間、正座させられました・・・」と話した。
「ほら。タケも反省してるだろう?で、俺もさ、1時間、課長に説教されたんだよ。さくらさんが辞めたら、次長のせいだって。・・・会社、辞めないよね??」
やっと、分かった。
次長は、私が会社を辞めたら、自分の責任になるから困るから、
急に謝ってるんだな・・・。
なるほど。
けど、次長と課長だったら、次長の方が上の立場。
その次長に1時間も説教したなんて・・・。
課長って、すごい正義感が強いんだな。
感心した。
とりあえず、ここは次長に恩を売ったほうがいいだろう。
「分かりました。私も飲みすぎたのが悪かったし、課長にはそう言います」
「そっかそっか。良かった。俺が謝っていたとも、課長に言ってくれるかな」
この次長は、どれだけ課長に弱いのか。
そう思うと、面白かった。
「分かりました。課長が戻ったら、伝えます」
課長が戻ってきた時に、早速、お礼を言った。
けど、課長と話してみると、事態はもっと酷いことが分かった。
キスというよりも、寝てる私にタケ君が覆いかぶさり、無理やり舌を入れてる。
課長から見ると、レイプされてる様に見えたそうだ。
それを男性社員のひとりが、デジカメにとり、社員メールに載せてバラ撒いていた。幹部以外の社員は、その写真をみたはず。
・・・という話だった。
次長め!話が違うじゃねーか!
と腹が立った。
課長が2時間正座させたって話も、頷けた。
けど、そのせいか否かは分からないけど、
女性社員の目が優しくなった。
女性社員は、このセクハラ次長を嫌っていた。
異動させて欲しいと、訴えていたが、なかなか異動にならなかった。
プライベートな接触は避けて、
仕事だけキッチリすれば良いと割り切っている様だった。
それから数日後、
帰りの電車をホームで待っていると、たまたま課長に会った。
「課長、珍しく、帰りが早いですね」と声をかけた。
「さくらさん、これから飲みに行かないか?この間、歓迎会できなかっただろ」
と言われた。
そうか!この間、迷惑かけちゃったもんな。
お礼しないとな・・・
「課長の奢りだったら、行きますよ!」と笑いながら言った。
もちろん冗談で、私が奢るつもりだった。
乗り換えの駅に着いた。
そこで居酒屋に入って、二人だけで飲んだ。
お礼ともうひとつ、聞いてみたいことがあった。
なんで、未経験の私を採用したのかを
知りたかった。
応募は200名ほどいたそうだ。
その中から、1人だけ選ばれた。
なんの経験も、なんの資格もないのに・・・?
「俺さ、面接の時に、必ずすることがあるんだよ。
それができたのは、今回の中でさくらさんだけだった。
だから選んだんだ」と言われた。
なんだろう?
面接を思い返してみたけど、普通の面接となんら変わりはなかった。
「分からない?」と聞かれた。
「んーー。ヒントは?どんな事ですか?」
「ヒントか、そうだな。面接の最後だな」
最後か・・・。
思い出そうとしても、何も特別なことは思い出せない。
「分からない?俺さ、最後に変な質問しなかった?」
「変ですか???んーーー。いや、全部、普通の質問だったと思ったんですけど」
「そっか。いや、そう思うなら、さくらさんは元々できるってことだな」
なんだか意味深な事を言う。
そんな風に言われたら、余計に気になる。
「え、何ですか?教えてください」
「質問って、どこの会社でもだいたい同じ事を聞くだろ。
だから、面接を受ける時は、みんな練習してると思うんだよ。
だから普通の質問をしても、その人の性格は分からないだろ?」」
ふむふむ、その通りだ。
「だいたい一通りの質問をして、これで面接終わりますって時に、
そういえばって感じで、相手には分からない難しい質問(経済用語)をするんだ。
ほとんどの人は答えられないから、困るだろう。
困った時に、その人本来の姿が見える。
分からないって、素直に言う人もいれば、誤魔化そうとする人もいる。
分からないけど、頑張って答えようとする人もいる。
面接を受けた中で、何の迷いもなく、スムーズに話したのは、
さくらさんだけだった。
この子は、頭良いな!と思ったんだ。
俺の仕事は、今後の営業の戦略を練る仕事だから、
新しい企画を練れるような子が欲しかったんだ。
事務は教えればできることだから、経験が無くてもいいけど、
企画を練れる子はなかなかいないだろう」
そんなに期待されていたのか!知らなかった!
課長の言葉を聞いて、純粋に嬉しかった。
「あの・・・実は、企画があるんですよ。
企画っていうか、提案なんですけど。
提案書、持っていったら、見てもらえますか?」
「おお!良いね。そのやる気、俺は好きだよ!」
「ウチの人事課長が、事前調査で、さくらさんの以前の会社に電話したんだよ」
履歴書に偽りを書いてないか、採用する時に調査したとの事。
そんな事をするのか!やっぱり、小さな会社とは違うんだな~と驚いた。
「人事課長が電話した時、前の会社の人がね、さくらさんの事を心配してたらしいよ。前の会社の人に、連絡してあげた方がいいって、言ってたな」と教えてくれた。
前の会社の人・・・今、残ってるのは、社長と高岡さんだけ。
心配してたって・・・どっちだろう?
社長はそんな事を言いそうもない。
けど、高岡さんとは辞める時に揉めてしまった。
どちらでも、無いような気がした。
「えっと、男性でしたか、女性でしたか?」と聞いた。
「いや、誰だったか、詳しくは聞いてないけど」
「そうですか・・・」
ちょっと残念だった。
「けど、褒めてたらしいよ。何も文句を言わず、雑用でも何でもする、頑張り屋だって。人事課長は、事前調査した中で、あそこまで褒められた子は、今までいなかったと言ってたぞ」
励まされて嬉しかった。
そうだ!人事課長に、明日にでも聞いてみよう!
「さくらさんは、付き合ってる人はいるの?」と聞かれた。
「いや、いないですよ」
「へぇ~、好きな人はいないの?」
「好きな人はいます」
「それって、前の会社の人?」
「そうです。前の会社っていうか、仕事関係の人でしたが・・・」
「告白はしなかったの?」
「いえいえ、付き合ってたんですけど、別れちゃったんです。けど、しつこく、未練タラタラで、今でも好きなんです」
この子、可哀想だな・・・と課長が同情の目を向けた様に見えたので、
「そういえば、課長と最初に会った時に驚いたんですよ。ソックリだなって」
と言った。
けど、話しながら、ヤバイ、これ言ったら、佐々木さんの事をもっと突っ込まれるかもしれない・・・と思って、後悔した。
けど佐々木さんの事は聞かずに
「実はさ、俺も同じ事を思ったんだよ。面接で、最初会った時。昔の彼女にさくらさんがソックリなんだ」と言われた。
「ええ!そうなんですか!奇遇ですね」と驚いた。
「どんな人だったんですか?」
「いや、高校時代に付き合ってたんだけど・・・」
その後、元カノの話を聞いた。
いろいろな話ができて、課長に親近感がわいた。
飲みに行った次の日に、
早速、提案書を3本出した。
「よし!早速、持ってきたか!」と課長は喜んでくれた。
人事部は、隣りの席だ。
人事課長に、事前調査の件を聞きたくて仕方なかったが、
どう切り出したらいいのか迷っていた。
すると、課長が、私の様子に気づいたようで、
人事課長に声をかけてくれた。
人事課長が言うには、
社長と高岡さん、両方とも話をしたとの事だった。
社長は、会社側の都合で、さくらさんが仕事を辞めた。
決して、本人に何か問題があって、辞めたわけじゃない。
雑用でも何でも、真面目に頑張って仕事をしていた、と。
社長との話が終わると、今度は高岡さんが話したいといって、電話を代わったそうだ。
高岡さんは、私から何の連絡が無いから、どうしているのか心配だった。
だから、仕事が決まったら、すごく嬉しい。
「お願いします。本当にさくらさんは良い子だから、ぜひ、その会社に入れてあげてください」と人事課長にお願いしたそうだ。
人事課長は、熱い人で、高岡さんの話を聞いて、ものすごく感動した。
元同僚から、これだけ言われるなら、よっぽど良い子に違いないと思ったらしい。
不覚にも、私も感動した。
あの高岡さんが、そんな風に思ってくれていたのか・・・。
胸が苦しくなった。
目に涙が浮かんで、泣かないようにするので、いっぱいになった。
高岡さんが、なぜ、そんな事を言ったのか、考えた。
高岡さんの代わりに、私が辞める事になったから、だろうか?
違うな、違う。
高岡さんはそんな人じゃない。
自分が罪悪感を感じたから、それを帳消しにしたいからと言って、私を応援するような人じゃない。
高岡さんは、そのまんまの人だ。思ったままを行動する人。率直な人だ。
だから、本当に私を心配して、応援してくれてる。
なぜだろう?
あんなに怒っていたのに。
ふっと、アイの事を思い出した。
そうか、そうかもしれない。
アイが中絶して、悩んでいて、ずっと傷ついていたと聞かされた時、
自分はどう思った。
アイのそばにいたのに、ずっと自分は気づかなかった。
そんな自分が情けなかったし、悔しかった。
それに、相談してもらえなくて、そんなに私は信用されてないのか、頼りないのかと、落ち込んだ。
高岡さんも、同じ気持ちだったのだろうか。
そう思うと、そんな気がしてくる。
思い出そうとした。
実際、どうだったのか。
伊藤さんと佐々木さんが寝たかもしれない、と知った日。
ショックで、思い出せない、その日に、
私と高岡さんはどんな話をして、
私は高岡さんを怒らせてしまったのか。
思い出そうとした。
・・・ダメだ。思い出せない。
その日の記憶は、無い。思い出せない。
けど、もっと考えてみた。
そうだ!田中さんから、佐々木さんが不倫してるのかもと聞いて、高岡さんは面白がっていた。
倫理感で、高岡さんから批判されてると思っていたけど、それは違う。
だって、高岡さんも不倫を面白がっていたのだから。
そういえば、高岡さんは言っていた。
私が、仕事の相談を社長や長瀬さんにして、自分にはしなかった、と。
やっぱり、そうなのか。
2年以上、一緒にいながら、私は佐々木さんの相談を高岡さんにしなかった。
だから、高岡さんを傷つけてしまったのだろうか・・・
高岡さんは、飲み会とか、何かあると、私を必ず誘ってくれていた。
もっと私と親しくしたかった・・・ってことか。
私はそれに気づかなかった・・・ってことなんだろうか。
そう思うと、そんな気がしてくる。
けど、真実は分からない。
本人に聞いて確かめたい!という衝動に襲われたが、
お店でお酒をかけられた事件を思い出すと、躊躇してしまった。
あれだけ高岡さんに嫌われてると思ったのに、また何かしようだなんて・・・
そう思うと、怖くて、動けなかった。
そうやって、答えの出ないことを、あれやこれやと考えていくうちに、
佐々木さんに相談すれば、いいじゃん・・・!
と、突拍子もないことが頭に浮かぶようになった。
高岡さんの事は、佐々木さんにずっと相談してきたし、佐々木さんになら答えが出せるかもしれない・・・と。
ずっと忘れていた携帯の番号。
思い返す。
まだ覚えてた。
もちろん分かってる。知ってる。忘れるはずがない。
電話してみようか?
なんとなく、ぼんやりと、佐々木さんに電話して聞いてみよう、
と思っていたけど、
佐々木さんと別れてから、もう1年近くたっていた。
実際は、もう私との携帯は解約してるだろう、
電話しても、出ないだろう、と思っていた。
2-3日、そんな事で悩んでいると、
急に、もう思い切って電話してみれば良い!と割り切った気持ちになった。
グズグズ悩んでるのが嫌になった。
昼休み、佐々木さんへ電話した。
別れてから、初めての電話だ。
プッシュホンを押した。
きっと、すぐにアナウンスが流れると思った。
この番号は使われてないと。
けど違った。
呼び出し音が鳴ってる。
慌てて、電話を切ってしまった。
切っちゃったよ!ヤバイ!
これだとイタ電になってしまう!さらに焦った。
これは、もう一回掛けなおして、間違えましたと謝らないと・・・。
掛け直した。
すぐに電話にでた。
「はい。もしもし?」男の人の声だった。
けど、佐々木さんなのか、誰なのか分からない。
「もしもし・・・えっと・・・この番号は、佐々木さんの携帯ですか?」
思い切って、聞いた。
「そうです」
佐々木さんだ!
まだこの携帯、使ってたんだ!!
「もしかして、さくら?」
「うん。あの・・・お久しぶりです。・・・ごめんね、仕事中だった?」
「ああ、ちょっと待って。話せるところに移るから」
しばらく待っていた。ドキドキした。
本物だ!どうしよう!
いやいや、今日の電話は高岡さんの事を聞くためだ、それ以外は無い!
「もしもし?」
「もしもし、佐々木さん、ごめんね。移動させちゃって」
「いや、大丈夫だよ。ん、それで、どうしたの?」
「あのね・・・。私、11月から再就職したの・・・」
「それ、この間、聞いたよ。社長がいい会社に入れて良かったなって言ってたぞ」
「え?佐々木さん、今、(社長と)一緒に仕事してるの?」
私と別れた後は仕事切ってたけど?
「高岡さんとな。ほら、去年一緒に仕事してただろ?あれと同じのを、今年もしてるんだ」
仕事を私のせいで減ったのかと思ったけど、前と同じなんだ。
ホッとした。
「そっか。良かった。・・・私、ずっと連絡してないけど、みんな元気にしてる?仕事は順調なのかな?」
「うん。この間、一緒に飲みにいったけど、さくらの話をしてたよ。・・・というか、もう一度、電話していいか?」
「あ、ごめん、仕事あるよね?私もう、お昼休み終わっちゃうから、仕事終わってからでいいかな?定時には上がれるし」
「ああ、それじゃ・・・、俺がそっちに行く。〇〇駅だよな?少し遅れるかもしれないけど」
え???こっちに来るって。
会うの?
思っても見なかったが、
佐々木さんに会うことになってしまった。
一番の心配は、自分だった。
佐々木さんと会って、普通の状態でいられるか、冷静でいられるのか、
全く自信が無かった。
けど、久しぶりに会ってみたい衝動にかられた。
携帯を解約してないこと、
電話の声で、私だとすぐに分かったこと、
そして、何よりも、私に会いにくるって言ったこと、
私は、もしかして、まだ佐々木さんに想われているのだろうか?
それを知りたかった。
どうしよう?私はどうすれば良い?
そうだ!崇さんとの関係の様にすれば良いんだ!
一筋の光が見えたような気がした。
そうだよ!
お互いの気持ちは分かってるけど、
ハッキリと気持ちを言わない。
中途半端な友達としての関係で入ればいいんだ!
そう思い込んだ。
定時に仕事を上がった。
少し遅れるという佐々木さんを駅で待っていた。
1時間ほど遅れて、佐々木さんは来た。
最初に見たときは、佐々木さんだと気づかなかった。
久しぶりに会った佐々木さんは、
とても痩せていて、
顔もゲッソリしている。
気づいた時はショックだった。
胸がすごく痛い。
改札口を出て、ニコニコ笑いながら私の共にきた佐々木さんへ
「どうしたの?そんなに痩せちゃって」と言ってしまった。
「そうかな?俺、痩せた?・・・たぶん、最近、仕事忙しいせいだな」
という佐々木さんを見ると、
思わず言ってしまった言葉に配慮が足りなかった自分を情けなくなった。
「そっかそっか。痩せた方が男前だね!」と元気付ける言葉をわざと言った。
どうしたの?と心配するのは、私じゃない、奥さんの仕事だよね。
>> 391
ダブル不倫で
1年が経ちました
やっぱり馬鹿な
事をしていました
今は反省しています
彼から彼の
目の前から居なく
なりた…
リンゴさんへ
悩みを読みました。
辛そうで、気の毒になりました。
私は人に何か物を言えるような人間では無いのですが、
続きを読んでもらえれば、
どうやって諦めて、心の整理をつけたのか分かると思います。
それが正解か否かは、未だに分からないですが、
参考にしてもらえれば、嬉しいです。
>> 392
さくらさん こんばんわ。更新を楽しみにしてます。ゆっくりがんばってください。
更新を待ってる皆様 ごめんなさい。
応援しているみんながいると…
ゆりさん
応援していただくと、すごく励みになります。
ありがとうございます。
「さくらは、あまり変わってないね」と言われた。
「え!それって、どういう意味!!」とちょっと怒ったふりして言った。
「いやいや、別に悪い意味じゃないから」
慌てて訂正する佐々木さんを見てると、
中味は、昔のままだな、変わってないんだと思った。
「嘘。怒ってないよ」と笑いながら言った。
駅前のお店に入った。
真向かいに座ると、顔がよく見える。
やっぱり痩せてるな。
けど、さっきみたいに胸は痛くならない。
普通に会話ができた。
最初は、お互いの近況の報告だった。
それから、人事課長から言われたことで、
社長と高岡さんの状況を知りたくなったと説明した。
佐々木さんの話では、
また高岡さんに仕事を任せる様になったのは、長瀬先輩が理由だった。
長瀬先輩は、事務所を立ち上げてから、
不安定な仕事よりも安定したの方がいいと、路線変更したという。
必然的に、長瀬先輩の仕事は、高岡さんに任せるようになった。
そして、社長と高岡さんと佐々木さんの3人で飲みに行ったときに
社長は、「仕事が落ち着いたから、さくらちゃんに戻ってきてくれと頼みたい」と話していた。
その話を聞いて、心が弾んだ!
私も、戻れるものなら、戻りたい!!
今の会社は、仕事はつまらないし、職場は冷たくて、嫌だ!
けど・・・。
ちょっとだけ、課長の顔が浮かんだ。
課長は信頼して、私を入れてくれたのに、すぐに辞めたら・・・
一瞬、そう悩んだが、やっぱり戻りたい気持ちのほうが強い。
けど、高岡さんが反対したという。
「さくらちゃんは、せっかく(ウチよりも)大きな会社に入って安定した職種を選んだから、呼び戻したら、さくらちゃんが可哀想」だと。
それを聞いて、また迷った。
高岡さんの真意が、分からない。
本当に私を心配してくれてるのか、それとも戻って欲しくないから、そう言ってるのか。
前のように、戻ってからも、ずっと無視されるのは辛い。
・・・話を聞いて、余計に悩んだ。
その後、佐々木さんから、今の会社の事を聞かれた。
相談、というより、私は愚痴ばかり話していたが、
それをよく聞いてくれた上、
適切なアドバイスまでくれた。
昔のような感覚に陥って、安心して、なんでも本音で話していた。
佐々木さんが、「もう帰らないと」と言った。
「え!そんな時間?」と見ると、3時間以上は話し込んでいた。
けど、まだ10時台だ。
もう少し話していたい。
というより、仕事の話ばかりで、まだ何も話してない。
佐々木さんは、コートを着て、
帰り支度をしている。
もう終わりなのか・・・。
そう思ったら、急に寂しくなった。
「もう一軒、飲みに行かない?」と誘った。
「いや。もう、この時間でも俺の方は終電になるから、また今度な」
「え?終電って、まだ10時台だよ?」
「ああ。俺のところの路線は、12時台で終わるんだよ。早いだろ?田舎なんだよ・・・」と笑いながら言った。
思い出した。
そっか、引っ越してたんだ。
子供さんの為に、東京から離れて、家を買ったんだ。
「そっか。空気の良いところに家を買ったんだったね」
急に現実を見た気がした。
昔とは違う。
やっぱり、時は流れてる。
落ち込んでいる私を見たせいか、佐々木さんは焦った様だ。
「連絡くれれば、いつでもさ、俺は来るから。
ほら、今日も来ただろう?いつでも相談にのるから」
そう言いながらも、足は早々と駅に向かう。
「携帯を持ってたのは、さくらから電話がきても、大丈夫なように解約しなかったんだ」
嬉しい言葉だけど、今の私には、言い訳してる様にしか思えない。
「時刻表で、電車の時間を調べたんだ」
そう聞くと、
私と付き合ってた時は、帰る時間を気にしたことなんて、無かったのに・・・
と悲しくなった。
駅の改札口で、切符を買ってる佐々木さん。
本当に帰ってしまうんだな・・・
と思ったら、いてもたってもいられなくなった。
佐々木さんの腕を掴んで、「こっちに来て」とひっぱった。
そのまま、駅の裏側に連れていった。
「どうしたの?」と優しく聞く佐々木さんに
「ギュッとして」と言った。
「もっとギュッと抱きしめて!」
佐々木さんは、ギュッと抱きしめてくれた。
温かい。
なんで私はこの人を手放したんだろうか。
そんな事、言うまでも無い。
分かってる。
全部、自分の弱さのせいだ。
加害者としての責任の重さを、はっきりと自覚した時、
私は重さに耐えられずに、逃げ出した。
それを、決断できない佐々木さんのせいにした。
全部、自分が悪いのに。
けど今は違う。
全部、分かってる。
けど・・・
本当に私は受け止められるか。
分からない。
「もっと、強く。強く。ギュッとして」
佐々木さんはギュッと、強く、強く抱きしめた。
佐々木さんは、私を抱きしめながら、
私の耳に添って髪をかき上げて、指で毛先をくるくると回していた。
本人は気づいてないけど、
何か考えてる時の佐々木さんの癖だった。
何を考えてるんだろう?
不安を打ち消す様に、ギュッと強く抱きしめた。
顔を上げると、佐々木さんと目が合った。
そのまま唇にキスをされるのかと思った。
けど違った。
おでこにキスをした。
「ちゃんとしたキスをして。」
おでこから、目や耳や頭・・・いろんなところにキスをした。
けど、唇にはしてくれない。
何分、ここでこうしてるのだろうか。
はぁ~・・・
大きな溜め息をつきながら、またギュッと私を抱きしめた。
佐々木さんの気持ちがはっきりとわかった。
もうダメなんだ、と。
「なんで!口にキスしてくれないの!」
悲鳴に近い声を上げた。
ダメだという事を信じたくなかった。
「もう帰ろう・・・。」
今度は、佐々木さんが私の手をつないで、改札口まで歩いた。
佐々木さんから、切符を渡された。
「どこまでだか分からないから、適当に買ったけど」
さっき、切符を買う時に、私の分まで買ってくれたようだ。
定期券を持ってる。
けど、「ありがとう」と言って、切符を受け取った。
この優しさが好きだった。
佐々木さんは、上りのホームだ。
私は下りだから、ここでお別れだ。
「俺は本当にさくらの事が心配だった。
だから、いつでも電話してくれ。
相談でも愚痴でも何でもいい。
携帯はこれからも解約しない。
さくらの為に持ってるから」
別れ際に言われた。
それは、キツイ。
それは、キツ過ぎるでしょう・・・佐々木さん。
その優しさは罪だよ。
結局、会いに来てくれたのは、同情だったんだ。
なんだよ。期待しちゃったじゃん。
向かい合わせのホーム。
上りのホームから、佐々木さんが見てる。
早くいなくなりたい。
あまりに自分が」惨めすぎて、目を合わせられない。
早く電車きてくれ。
私の方を先に帰らせてくれ。
けど、佐々木さんの電車が先に来た。
電車の中で軽く手を上げた佐々木さん。
行ってしまった電車を見送るのが、
こんなに辛いとは思わなかった。
主です。
読んで下さってる方、ありがとうございます。
勝手言って申し訳ないのですが、
佐々木さんの話はここで終わらせてください。
実は、少し前に佐々木さんを見てしまいました。
本当に久しぶりで・・・。
ハゲてたり、デブだったり、老けたりしてくれれば良かったのですが、
全く、昔と変わらない姿で。
ちょうどこの日記で、最後の別れを書いてる時だったので、
当時の気持ちを思い出してしまって、
書くのがしんどかったです。
佐々木さんとは、この先、会うことは無かったですが、
電話は何度かしてます。
気持ちが落ち着いたら、書きたいと思っていますが、
旦那の話にうつりさせて下さい。
勘づいてる方もいると思いますが、旦那は、この日記の「課長」です。
クリスマスが過ぎて、今年も終わろうとしてる時
会社の昼休みに、同僚のともちゃん(既婚女性)に「話したいことがあるの」と呼ばれた。
ともちゃんと一緒にいたのは、男性社員のタケ君とカズ君。
例のキス事件で、次長と一緒になってふざけた男たちだ。
あの事件以降は、話したことがなかった。
ともちゃんから「今日さ、課長の様子、どう?」と聞かれた。
「え???いつもと変わりないと思うけど・・・」
思い返してみた。
課長は得意先への年末の挨拶廻りが終わり、
今日は社内で事務仕事をしていたが、暇そうだった。
「課長、どうしたの?」
「それがさ・・・」と言って、
ともちゃんは、チラっとカズ君を見る。
カズ君に話が変わった。
「俺たちさ、クリスマスイブの日に、課長の家のクリスマスパーティに行ったんだよ。その時に・・・ 」
カズ君は思い切ったように
「課長の奥さんから、俺、誘われたんだ」
「はぁ??誘われたって?
どういうこと・・・って。もしかして、あれを?」
「うん。」気まずそうにうなずく。
「え、でもさ、それって。
課長の家でしょう?で、課長もそばにいたんだよね?
あり得ないでしょう。酔ってたとか、冗談じゃないの?」
「違うよ。アレはマジで誘われた。しかも、課長の見えないところで。絶対にアレは本気だった」
夫の部下を自宅で誘うか・・・。
あり得ないだろう。
こいつ、AVの見すぎじゃねーの!
到底、信じられなかった。
「え?で、どうしたの?奥さんとやっちゃったの?」
「んな、わけないだろ!」と一喝された。
それにしても、すごい話だな・・・。
ともちゃんが、また話を始めた。
「でね、その話をね、カズが今朝、課長に話したんだって」
「え!!!なんでそんな事、言ったの!」
あんた、バカじゃねーの!
課長に、自分の奥さんが、俺を誘ってきたって告げたって、
あんた、いったい・・・。
頭がクラクラしてきた。
「いや。だって俺なら、絶対に教えてもらいたいって思うから。課長も、あんな奥さんだって、知りたいと思ったんだ」
「で、課長は何て言ったの?」
「俺のカミさんなんだから、お前には関係ないって。俺が選んだんだからって」
情け無さそうに言う。
ともちゃんが、「それってさ、課長、すごく奥さんを愛してるんだよ。なかなか言えないよ」と感心して言ってる。
ああ、それで、課長と席が一番近い、私に様子を聞いてきたのか。
「いや、俺はあの奥さん。どこが良いのか、分からない。だってさ、いつも家にいないんだぜ。俺たちが泊まりにいくと、いつも帰ってこないで、朝帰りする。結婚してるのにさ、信じられないだろ!」
カズ君は一気にまくし立てる。
けど、結婚してるともちゃんは、
「夫婦はさ、いろんな形があるから。課長の言うとおりだよ。課長がそれを認めてれば、それで良いんだよ」と説得していた。
ちなみに、このカズ君は、私と同じ年齢だ。
後々に、誕生日も4日違いと分かって、
この先、そこそこ話せる仲になった。
課長が、社長をはじめ、幹部クラスの人たちと一緒に帰ってきた。
一緒にご飯を食べに行っていた様だ。
午後の仕事中、こっそり様子を伺ったが、全然、気にしてないように見える。
ともちゃんの言うように、
浮気する奥さんでも、自分で選んだから、本当に良いのか!
こんな人、初めてみたな・・・と思った。
>> 407
ぱんださん
ありがとうございます。
気持ちをくんで頂いて、嬉しいです。
けど、ごめんなさい、旦那の事は、
思いあって、結婚したわけではないので、
期待ハズレな結果になると思います。
課長から、
「さくらさん。年賀状出すから、住所、教えて」と言われた。
そっか、年賀状って、会社のお世話になった人に出さないといけないのか!
前の会社では、誰にも出したことがない。
その必要がなかったからだが、大きな会社ではするのは当然。
常識知らずだな・・・私。
紙に住所を記入して、課長に渡した。
「今から出しても、1日には届かないから、ごめんね」と謝られた。
「すみません・・・課長。私は誰にも出していないのですが、どなたに書けばいいですか?」と恥を忍んでたずねた。
課長は、丁寧に教えてくれた。
家に帰って、早速、年賀状を作成した。
家に和紙が余っていたので、和紙を使って折り紙のように折りたたみ、
オリジナルの年賀状を作成した。
けど、課長からは年賀状は届かなかった。
年明け早々。
課長の手元に、課長の自宅で行ったクリスマスパーティの写真が置かれた。
写真をみながら、パーティに出たメンバーで、盛り上がっている。
カズを誘惑したという、例の課長の奥さんって、どんな人だろう?
好奇心が沸いた。
すると、課長が「写真みる?」と言って、私に渡してきた。
ワクワクしてみると、一目で分かった。この人だ!
写真の中で、ひときわ目立って、色っぽい女の人がいた。
胸元が大きくひらいた服を着て、そして下はミニスカート。
写真の全てに同じ顔してる。
口は口角をあげて、目は上目使い、顔の角度は全部一緒。
とられてる、と意識した顔だった。
うわー、きつい!ぶりっ子じゃん。
課長、こんな人が奥さんなんだ・・・。
カズが誘惑されたと騒いだのも、納得できる人だった。
課長に「俺の奥さん、誰か分かる?」と聞かれた。
この人でしょう?と、そのぶりっ子女を指差した。
「なんで、分かったの?」と課長が驚いていた。
カズを誘惑した人だから、とは、さすがにいえない。
なので、「課長って、巨乳好きでしょ・」
と、からかうように言ったら、
課長は無言で、席に戻った。
やばい、言っちゃいけなかったの・・・???
少し間を空けて、課長から「なんで、本当に分かったの?」と
真面目な顔をして言われた。
そっか・・・。
課長、平然とした顔をしてるけど、やっぱり奥さんのことを気にしてるのか・・・。
同情した。
なので、自分の分析を教えた。
「課長って、男らしいタイプじゃないですか。だから、女性らしいタイプが好みなのかと思って・・・」
オブラートに包んで、そう言った。
課長は、男性社員に人気があった。
常に、上司、部下から声をかけられ、仲良くしている。
社内にいるときは、ひっきりなしに電話がかかってきたが、
ほとんどが営業所の男性社員からの相談で、常にアドバイスをしていた。
けど、女性から電話がかかってくることはないし、
本社の女性社員とも全く話さない。
せいぜい話す女は、私くらい。
なので、女性は苦手なんだ、と思っていた。
「課長の奥さんって、29歳ですよね?30近くになっても、ミニスカをはけるのは、相当、女として頑張ってる人だと思いますよ」
嫌味に近いことを言ったが、課長は分かってない。
「そうなんだ。けど、俺が、ミニスカ好きだから、カミさんが履いてるんだと思うよ」
おい、おい、おい。
課長、思い切り勘違いしてるよ。
結婚してまで、男の趣味に合わせる女はいないよ!
自分が好きだからミニスカ履いてるのに、それも、分からないのか・・・。
さらに同情した。
「課長の好みに合わせてくれるなんて、本当に良い奥さんですね~」
と、心とは裏腹な言葉をいう。
この人、奥さんのこと、分かってないんだな。
「私が思ったのは、ホラ、奥さん、写真全部、同じ顔してませんか?」
と説明した。
写真を見比べる課長。
「あ!本当だな」。
「で、口角が上がってるでしょ?それって、練習しなきゃ、できないんですよ。
何もしなければ、口角は下がってるままで、口を上げる練習をしてるんです」
「で、たぶん、奥さんは顔の角度も気にしていて。ほら、全部、(写真の角度は)同じでしょう。この角度から、写真にとられるのがキレイに写ると分かっていて、とってるんですよ。・・・・・こういう風に自分が一番に見える写真をとってもらいたい人って、自分にかまって欲しい人なんですよ。甘えん坊で、自分に注目して欲しいっというか・・・」
言いながら、こりゃマズイ、
このまま話したら、悪口になってしまう!と焦った。
けど、課長は、
「そうか・・・
そういえば、毎日、鏡をみて口角を上げる練習をしてるな・・・」
と納得していた。
「課長の奥さんって、B型じゃないですか?」と話を変えた。
課長は、「なんで分かったの!」と驚いていた。
「写真で、血液型まで分かるの?」と。
分かるわけがない。
単純に、課長はA型。
A型の人はB型の事がよく分からないという。
だから、Bだと思った。
悪口になりそうでも、血液型にすりかえれば、
それだけで本人ではなく血液型の性格だからと言い訳にできる。
「あのさ、この子はどういう子だと思う?」
と、写真の他の女の子を指差した。
奥さんとは、全く正反対のタイプ。
一番後ろの端にいて、前の人が邪魔でハッキリとは写ってないけど
服装はロングスカートにセーターぽく、
体の線を隠してる服装だった。
「この人は、癒し系ですよね。たぶん大人しくて、前には出ない。すごく優しい人じゃないですか?」
「そうだよ!よく分かるね。カミさんの親友なんだけどさ、
この子に似合う男って、どんな奴だと思う?」
「んーーー。年上がいいんじゃないですか?仕事バリバリできて、決断力のある人ですかね?」
「いやー。驚いた。当たってるよ・・・・。実はさ、この子、上司と不倫してるんだよ。もう7年くらいかな。今回のクリスマスパーティは、この子に彼氏をつくってあげたいと、カミさんが計画を立てたんだ。それで社内の独身男を誘ってパーティをしたけど、うまくいかなくてね」
「それって、その女の子が、彼氏が欲しいと言ったんですか?」
「いや。カミさんがクリスマスイブに一人は可哀想だからって。なんとかしてあげたいと計画を立てたよ」
うわ、キツイ。それは上辺だけの心配だわ。
本当に友達が心配なら、自分はもっと引いて、彼女を目立つように気を使うはず。
そんな気遣いは、どこにも無い。
「うーん。それじゃ、無理ですよね。本人に別れる気がなければ、周りがどうしようと終わらないでしょ」
「もし、ウチの会社だったら、誰ならいい?」
「部長でしょう!」
「部長って、妻帯者じゃないか!」
「そうですよ。それぐらいのレベルの男じゃないと、無理だって事です。たぶん、その不倫男の方からは、絶対に手放さないですよ。癒し系で、自分を全部、受け入れてくれる子なんて、早々いないでしょう。でも、彼女は受身で、自分からは別れない。だから、その不倫男以上じゃないと、ダメですよ」
きっぱりと断言した。
人の恋愛はよく分かるのに、自分の事はなんで分からないのか・・・。
「じゃあさ、俺は?俺さ、カミさんよりも、その子の方が気が合うんだ」
カミさんよりも気が合うって・・・。
私に不倫を勧めろというのか!
「課長は、ダメですよ」
「え?何で?俺、気が合うと思うけど」
「そういう問題じゃなくて、課長だったら、浮気しますよ!」
訂正です。
課長が、その子と結婚したら、浮気しますよ!
です。
「俺、結婚してから浮気した事ないんだけど・・・」
課長は、面白がっている。
「いや、絶対しますよ!今までしてなかったのは、奥さんのお陰ですよ」
「課長って、新しいものとか、好きじゃないですか。そういう人は、安心しちゃうと、つまらなくなって、他に目が向くものですよ。彼女といたら、刺激が欲しくなるはず。昔、そう思って、浮気したことないですか?」
「いやー。するどいね!・・・若い頃は、(浮気)したな。けどさ、今は仕事が楽しいし、落ち着いてるから」
「いやいや、人間の本質なんて変わらないですよ。課長の奥さんは、課長には理解しにくい人だから、他に目が向かずに、課長の家庭は上手く言ってるんですよ!」
断言した。
それから課長に、血液型の本を貸す約束をした。
今の血液型の本は、A型の筆者が書いたものが主流になっているが、
もっと前に出された本で、B型の筆者が書いた本を、持っていた。
こちらの方が、的確な性格診断で面白い。
その次の日、朝一に課長から話しかけられた。
「今日、10時に会議あるから出席して」。
「え?!なんの、会議ですか?」
急な事なので驚いて聞いた。
「さくらさんに、この間、アイディアだしてもらっただろ。俺、年末は忙しくて読めなかったけど。企画書を読んで、良い内容だったから、立ち上げる事にしたから。立案者だし、会議に出て。もうすぐ会議が始まるから、準備しておいて!」
と言って、サッサとどこかへ行ってしまった。
アイディアって、だいぶ前に提出した、企画書のことか!!
その後、何も言われないからボツになったと思ってた。
佐々木さんの事もあったし、すっかり忘れてた。
準備して・・・って言われても、何を準備したらいいのか・・・。
なんだよ!もっと前に言ってくれよ!
課長が、「おい!カズ。お前、今日は暇だろ!お前も会議に出ろ」
とカズに話してるのが、聞こえた。
そうか、カズも出席するのか。
慌てて、カズの方へ行き、
「私も出席するんだけど、何か準備したらいいの?」と聞いた。
大雑把に説明すると、
「あの人(課長)も困ったもんだよな。まぁ、必要なものあったら、事前に話してると思うし、何も持たなくてもいいと思うよ」
会議に行くと、ともちゃんもいた。
私の提案は、営業ツールとしてホームページをもっと活用できないのか、
そのアイディアをいくつか出したものだった。
ともちゃんは、IT部で、ホームページの担当者として呼ばれていた。
カズは、書記係り。ホワイトボードにみんなの意見を書いていた。
他にIT部の課長もいて、計5名で話し合いをしていたが、
途中で、ともちゃんとカズが議論し始めて、2人の激論に発展してしまった。
課長は止めることもなく、面白そうに、議論を聞いている。
たいした内容じゃないから、小1時間もあれば終わるといっていたのに、
数時間もかかっていた。
会議が終わった時、ちょうど昼休みが終わる時間だった。
会議室をでると、東さんに会った。
東さんは、私の3つ上の女性で、
入社した時に最初に声をかけてくれて、
それ以来、東さん、ともちゃんを含めて、4人でご飯を食べていた。
「ずいぶん会議、長かったね。待ってようと思ったけど、あまりに帰ってこないから、先にご飯食べちゃったんだ。ごめんね」
東さんが、話しかけてきた。
3人で話している所を、カズがジッと見てるのが気になった。
なんだろう?
けど、時間がないから「急いで、ご飯を食べに行こう!」とともちゃんと2人で昼食に行った。
就業時間が過ぎて、帰ろうとした時に、カズに話しかけられた。
「あの会議の内容って、さくらさんのアイディアなの?」
「そうだよ」
「ふ~ん・・・・。」
ふ~んの言い方が、なんか変だった。
「え??何か、あるの?おかしかった?」
「いやいや、内容はおかしくなかったけど」
奥歯に物が挟まる様な言い方を続ける。
・・・もしかして、
カズは、社内のみんなが帰るのを待ってるのかな?
やっぱり、そうだった。
ほとんどの人が、帰ってしまうと、やっとカズは話し出した。
私は、会議でともちゃんと激論していたし、ともちゃんの事だと想像していたが、
違った。東さんの事だった。
「東さんと、仲が良いの?」
「仲が良いというか・・・部署が違うから深い付き合いはしてないけど、お昼は一緒に食べてるよ」
「ふ~ん。あの人(東さん)さ、表裏が激しいよな」
「え?そうなの??・・・そこまでは知らないけど。・・・何かあったの?」
「知らないんだったら、いいけど」
歯切れが悪い。
「え!何なの。そこまで聞いたら気になるじゃん!教えてよ」
「・・・あのさ、歓迎会の飲みの時。泥酔して、タケとキスしたじゃん。で、写真とって、送ったのさ、あれ、東さんがやらせたんだぜ」
ビックリした。
「え?!東さんが、何で!だって、私には、『部長が強引にやって、止められなかった、ごめんね』って謝ってきたよ」
「そうなんだよ・・・。あの人さ、嘘付くの上手いんだよ。課長にもそう言って、罰を逃れたんだぜ。俺たちは、正座したのに」
「え?え?どういう事。最初から教えて」
歓迎会の時。
次長に一気飲みをさせられて、トイレで吐いていた私は、
自分で、「すみません、飲みすぎたので帰ります」と言ったらしい。
次長や他男性たちは、了解したが、東さんだけは納得いかない。
「自分の歓迎会なのに、先に帰ろうとするなんて、社会人として失格。みんなでお仕置きをしましょう」と提案。
カラオケボックスで、カズに、「この子、犯しちゃいなよ!」というが、カズは拒否。
同じく一気飲みさせられて、倒れていたタケを起して、無理やりキスをさせて、写真を面白がって、撮っていた。
次長は、途中で帰ったらしい。
次の日、タケは全く覚えてなかった。(私と同じように)
「お前、こんなことしたんだよ」と言って、写真を見せていたら、
東さんが、「写真、見せて」と言って持っていき、
それを社内メールに載せて、ばら撒いた。
・・・というのが、真相だった。
とはいえ、カズも、悪いことをしたと思っていたし、
私自身も、飲みすぎた自分の責任だと思っていたので、
これ以上、どうこうするつもりは無かった。
けど、聞いてよかった。
東さん、要注意人物だった。
すぐに、問題が発生した。
課長から、資料を作って欲しいと頼まれた。
去年の数字がいるからと、去年の資料をデスクに置いて作成していたら、
東さんが、「ああ。ここにあったの、この資料。ごめんね、これって1冊しかないから、ちゃんと戻してね」と言われた。
「あ、まだ使ってるんです」というと
「私は、いつも使ってるの!!だから、1冊しかないって言ってるでしょ!」とキレ気味に怒られた。
「あ、すみません。では終わったら、貸してください」と言って、渡そうとしたら、
課長が止めた。
「俺が、この資料を使って、仕事を頼んだんだ!!文句があるなら、俺に言え」
厳しい表情で、東さんに言う。
東さんは、キィと課長を睨みつけて、行ってしまった。
やぱい・・・どうしよう!
すぐに、資料を渡しに行った。
散々、課長を罵倒していた。
こりゃ、マズイ!
と思って、ともちゃんに相談した。
すると案の定、ともちゃんに散々、課長と私の悪口を言ってたらしい。
「課長に、ひいきされてる!」
ひいきって、小学生かよ!!!
突っ込みどころ、満載だったが、
資料の件だけじゃなく、私が会議に参加したのも面白くなかった、とのこと。
東さんは一度も会議に参加したことないのに、
入社して数ヶ月の私が参加するなんて、おかしい!
「会議って、必要な人が参加するのであって、入社の年数とは関係無いのに」
呆れて私が言うと、
「私もそう話したんだけどね」と、ともちゃんも困った様に言う。
「もし何かあったら、知らせるから」と約束してくれた。
しばらくたってから、
自分のデスクで仕事をしていると、
IT部の課長がやってきて、
「さくらさんって、水商売をやってたの?」と聞かれた。
「えー!やってませんよ」
そんな風に見えるのかと、ショックだった。
その後、人事課長からも同じ事を聞かれた。
「さくらさんさ、ホステスなんかやってないよね?」
「え!やってませんよ・・・。さっきもIT部の課長から、言われたんですが・・・。誰がそんな事を言ってるんですか?」
「仙台の阿部(所長)だよ。いや、俺もさ、さくらちゃんの前職場に電話で確認してるしさ、おかしいなとは思ったんだよ。分かった。阿部にもう一回、確認するわ」
阿部所長・・・?電話で2-3回話しただけなのに、なんで???
すると、人事課長との話を聞いてたカズが
「それって、東さんが噂を流してるんじゃないの?」と言う。
人事課長は、「なんで東さんが・・・?」と困惑した顔をしていた。
カズも、そう思う?と思いながら、カズを見ると、
カズも私を見ていた。
二人で目配せしてると、それに気づいた人事課長が、
「なんだ!!お前ら二人、見つめあって。もしかして、できてるのか!!」
と、デカイ声を張り上げた。
人事課長・・・・・・人情味があって、熱く、良い人だけど、興奮すると声が大きくなるのが欠点だ。
フロア全体に聞こえるような大声を出されて、恥ずかしい。
「ち、違いますよ」と慌てて訂正すると、
カズは「俺なんて、さくらさんに相手されるわけないですか」
お前、そんな事を言ったら、私に話がふられるじゃないか・・・。
思った通りだ。
人事課長から、「さくらさんは恋人がいないのか?」
「好きな人はいないのか?」を追求されるはめになった。
素直に、『好きな人はいたけど、12月にふられた』と話すと、
人事課長が、
「よし!!俺が、さくらさんの相手を見つけてやる!
本社には独身男は少ないけど、ウチの営業所は、良い男はいっぱいいるから。どんな奴がいい?あいつは、どうだ。山形の・・・」
カズも一緒になって、「山形のあいつは、彼女いますよ!」
「ダメか・・・、じゃあ、あいつは?」
すると、部長も話しに加わってきた。
部長は、人事課長の後ろのデスクに座っているので、
今までの話を聞いてた様だった。
「横浜の小野(所長)はどうだ!あいつは、彼女いないだろう」
「いや、あいつは今、取引先の受付の女の子を狙ってて、通いつめてますよ」
「なんだと!取引先の女の子を狙うなんて、ダメじゃないか!!」
無茶苦茶な話になった。
夕方、横浜の小野所長は、本社に呼ばれて、部長にこっぴどく怒られていた。
ともちゃんに、事情を話し、
もしかしたら東さんに変な噂を流されてるかもしれない
と相談した。
「分かった。上手く、聞いてあげるわ!」
次の日。話を聞きだしてくれた。
案の定、東さんが営業所に嘘の噂を流していた。
私の前職は、水商売で、課長がお客さん。
私は課長の愛人になり、今の職に就いた。
というもの。
私だけじゃなく、課長にも嫌がらせしてるのか!!
驚いた。
けど、こんなにすぐにバレる嘘をついて、なんてバカな人なんだろう!!
腹が立って、「ちょっと、私、東さんに文句を言ってくるわ!」と言うと、
ともちゃんに慌てて、止められた。
「あの娘も可哀想なんだよ。さくらちゃんがさ、男性社員に人気があるから、嫉妬してるんだよ。私からきつく叱っておいたから、今回は許してあげて、ね」
「人気あるって、周りの席の人たちと、しゃべってるだけじゃないですか。そんな事で、嫉妬して、嫌がらせするなんて、おかしいですよ!!」
「さくらちゃんが言ってるのが正しいって、私は分かるよ!私はね、結婚してるから、さくらちゃんの事が分かるんだけどね、あの娘には分からないんだよ」
「え?なんで、結婚してると分かって、してないと分からないんですか?」
「ん・・・。さくらちゃんさ、自分が何故、好かれるのか、分かってる?」
「え?私、好かれてるって思ってませんよ。ただ仲良くしてるだけで・・・。けど、それは職場の人だからで。別にぶりっ子して、好かれようと思ってませんし」
「そこなのよ!あなた、自然体なのよ!飾ったり、カッコ付けたりしないの!!
だから、周りの大人たちはね、素直な子だから、カワイイって思うの。可愛がられるのよ。自分で、分かってないでしょう?」
ん・・・・・・。そんな事、思ったことない。
「私は、もう結婚してるから、あなたのそんな所がカワイイって思えるけど、
あの娘(東さん)は、適齢期なのに、まだ結婚してなくて、焦ってる。だから、素直な態度をとる、さくらちゃんの事が、腹立たしい気持ちになるのよ!!」
褒められてるのか、けなされてるのか、よく分からなかったが、
思い当たる事は、たくさんある。
前職の高岡さんや田中さんも、そうだった。
何故か、少し年上の独身の女性には、あまり好かれないが、
結婚してる女性には、可愛がってもらっていた。
納得できる様な、できない様な話だった。
「これ、内緒ね。東さんって、家族で宗教に入ってるの。親は、東さんの彼氏に、宗教に入らないと結婚はさせないって言ってるの。けど、彼氏は嫌がってるのよ。あの娘は今、両親と彼氏の板挟みになって、悩んでいるから、こんな嫌がらせもするんだと思うの。可哀想なのよ。だから、許してあげて」
そんな話は関係ないじゃん!と思ったが、
ともちゃんが熱心に庇うので、私の怒りも冷めた。
宗教の事はよく知らないけど、
他人に嫉妬したり嫌がらせしたら罰が当たると、言われてるんじゃないのか?
いいのか、それで?
それにしても、
自分の性格でダメなところがあるなら、直したいと思うけど、
素直なところが嫌われてると言われたら、直しようが無いじゃないか!
なんか凹んでしまった。
バレンタインデーの日。
私の唯一の男友達の森君と、飲みに行くことになった。
アイやサツキ等の女友達には、もう恋愛相談はしてなかった。
女の子の方が、優しい。同調し、気持ちを汲んでアドバイスしてくれる。
けどアイに相談して、重い気持ちにさせてしまったので、言えないなと思っていた。
その点、森君は気がラクだ。自分とは切り離して相談にのってくれる。
佐々木さんにふられてからは、森君とよく会って、話を聞いてもらっていた。
その森君が意外な話をしてくれた。
「俺もさ、大学時代の4年間、不倫してたんだよ」
「え!マジで!!そんな話、聞いてないよー!誰と?」
「俺さ、バイトしてたじゃん、女の子のいる店で」
「ああ、水商売で、ウエイターしてたよね?」
「そこのママさんと、できてたんだよ」
「嘘!気づかなかったわ~。けど、そうか!だから大学時代に彼女つくらなかったの?『彼女欲しい』と言いながら、いなかったもんね」
「いや・・・、そういうわけじゃないよ。俺の場合、完全な遊びだし」
「え?遊びで、4年間は長くない?」
「ん・・・お金、貰ってたからな。ズルズルといったんだよ」
「お金って!!・・・そうか、お給料がイイって言ってたモンね」
「いやいや、給料は貰ってたけど、それとは別に。エッチが終わると、2-3万くらい貰えるんだよ。俺、一人暮らしで、金が無かっただろ。すごい助かったんだ」
唖然とした。それって、女の子で言えば援助交際?
「え、でも4年間も続いてたなら、情はわかないの?きっぱりと切れられたの?」
「うん、大学終わるまでだと思ってたしな。向こうも、そう思ってたと思うよ。まぁ、金の切れ目は縁の切れ目っていうじゃん」
あまりにアッサリとした付き合いに、驚いた!!
「えっとさ、旦那さんに悪いとか、罪悪感を感じたりしなかったの?」
「しないよ!どちらかと言えば、逆だな!見つかるかもしれないと思ったら、スリルがあって、興奮した」
「マジで!!って事は、見つかる場所でしてたって事?」
「だいたい、お店の事務所でエッチしてたよ。旦那さんは店の経営者だからさ、いつ来るのか分からない。そんなスリルがあったから、4年間続いたと思う。無かったら、たぶん続かなかっただろうな」
「ごめんごめん、俺さ、さくらが悩んでるから、自分の不倫話が何か参考になえばいいと思ったんだけど、全然、さくらとは違うよな」
「いやいや、いいよ。なんか勉強になったよ!」
お金とかスリルとか、考えた事も無かった。
「お金を貰うのってさ、そんなに割り切れるもんなの?」
「俺は、そう思ったけどね」
「ふーん、そうか。いや、佐々木さんに、家賃半分だそうかって言われた事あったんだけど、佐々木さんは割り切ろうと思って、そう言ったのかと思ってさ」
「いや、俺にはその男の気持ちは分からないけど。まぁ、女の子が本当に困ってるからサポートしようっていう気持ちもあるからな。なんとも言えないな。・・・・っていうか、本当にごめんな。またその男の事、思い出させちゃって。悩みを聞いてやろうと思って来たのに、逆になっちまった」
「今日、一緒にいてくれるだけで、充分だからさ」
本当に、森君はイイ奴だ!
「逆に、こんな日に私と一緒にいてもらって、良かったのかなって思ったよ」
「今、付き合ってる子もいないしな」
「好きな子はいないの?」
「ん・・・、会社のさ、先輩が良いんだよ!男並みに仕事バリバリできて、性格は爽やかでカッコイイの。俺、憧れてんだよな~」
「告白しないの?」
「いや・・・無理っぽいよ。あんな素敵な女性なら、彼氏いるだろうしな」
「そうだよね、素敵な人には恋人がいるもんね」
「そうだよ。誰かイイ人、現れないかな。俺も、一途な恋がしてみたい」
二人で飲みすぎて、気づいたら朝だった。
慌てて、帰る。
けど、家に戻ったら、遅刻する。
そのまま会社に行った。制服があるから、前日の服装でも大丈夫だろう。
始業時間の1時間以上前に着いた。
てっきり私が一番だと思ったら、社長がいた。
コーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。
すると「おはよう!今日は早いね!」と、声がした。
ともちゃんがいた。
みんなの机を拭いて、周っていた。
「え!当番があるんですか?」と驚いて聞いた。
「ああ、私が自主的にやってるだけだから、大丈夫よ。ほら、キレイにすると、みんな気持ち良く仕事ができるでしょう」
「私も、手伝います」
みんなの机を、一緒に拭いて周った。
「いつも、朝早く来て、机を拭いてるんですか?」
「そうよ。社長か私か、どちらかが一番ね」
机を拭くだけじゃなく、観葉植物の葉を拭いたり、花を買って、いけたりもしていた。
スゴイ・・・。誰にも言われてないのに。
飲み過ぎて、朝帰りして、遊んでいた私とは大違いだ!
これからは、朝早く来て、ともちゃんを見習おう!
3月後半~4月にかけて、新入社員の研修があった。
地方の研修センターで、10日間ほど、泊り込みで教育をする。
課長は、営業マンの教育係りだったので、私もサポートとして同行した。
帰ってくると、本社の事務員の女の子が1人増えていた。
その子はすごく可愛かった。
顔が小さく、背も小さく、華奢で、童顔。アイドルみたいな顔をしていた。
東さんは、その子の教育係りをしていたが、
男性社員から、ちやほやされている女の子が気に入らないらしく、
仕事を教えず、聞かれても無視、イジメていた。
そして、その女の子は、すぐに辞めてしまった。
お昼ご飯を一緒に食べている時に、
東さんがその子をバカにした。
「あの程度の事で、やめちゃうなんて、本当に子供よね。ちょっとカワイイからって、今までチヤホヤされてきたから、根性が無いのよね」
ムカついた!
今まで、我慢してきた事もあって、喧嘩になった。
「それって、東さんがイジメたからでしょう!」
「そうよ、イジメたわよ。それのどこが悪いのよ!!私が入った時だって、誰からも教えてもらわなかったけど、私は一人で乗り越えたのよ!」
こいつ、開き直ってる。
「自分がイジメられたなら、逆にそうならない様に庇ってあげればいいじゃん。
同じ事されたから、同じ事するなんて、それこそ大人のやる事じゃないでしょ!」
「あんたはね、課長とか部長にね、可愛がられてるから、そんな風に言うのよ!!私の部署をみてごらん。誰も庇ってくれる人なんていないんだから!!」
「東さんの上には、係長がいるじゃないですか?係長に相談しなかったんですか?」
「そんな事、言えるわけないじゃない。イジメられた、なんて言ったら、バカにされるだけでしょ!!あんたは、世の中を分かってないのよ!」
圧倒されて、黙ったら、
いつもはクールな堀さんが口を開いた。
堀さんとは、毎日、一緒にお昼を食べている4人のメンバーのひとり。
「係長は、相談に乗ってくれますよ。そんな事を言うなら、相談すれば、良かったのに」
東さんが、グッと黙ったのがわかった。
ともちゃんも、「自分がイジメられたからと言って、イジメるのはダメだよ・・・」
みんな私の味方になった。
負け惜しみなのか、なんなのか、東さんが、「私、知ってるだから!あなたと課長の関係を!!」と叫んだ。
私は「あのね。私が、課長の愛人だって、話でしょ?それ、人事課長に聞いて知ってますよ」と話した。
「けど、仙台の阿部所長に確認して、東さんが嘘の噂を流したって、もうバレてますよ。人事部も、ウチの営業部も、みんな知ってますよ」
東さんが青ざめた顔をしている。
見て、ザマーミロ!と思った。
「違うわ!私が言いたかったのは、課長は、あなたの事を女としてみてるってことよ!見る目が違うのよ。あなたも、気づいてるでしょ!!気づいてないとは言わせないわ」
課長が、私を・・・?
全然、思ってもみなかった。
すると堀さんが、「それって思いっきり、妄想じゃん?東さん、ヤバイよ、病院行ったら?」
クールに、ズバッと言った!
「妄想じゃない!!私は洞察力があるって言われるもの!!絶対、違う」
言い張ってる、東さん。
話が全然、通じない。
東さんとは、もう関わりたくない!
口を利くのも嫌だ!
そう思って、露骨に無視する態度を出していたら、
ともちゃんが心配したのか、色々と教えてくれた。
東さんの部署には、他に2人の女性社員がいるが、
この2人が仕事を、東さんに押し付けて、自分たちは仕事をしない。
その事を、ともちゃんが気づいて、次長に何度か相談したが、
次長は聞く耳持たずで、全く改善しようとしない。
2-3ヶ月、様子を見て、社長に相談しようと思っている。
といった内容だった。
ともちゃんは、東さんに同情的だったが、
その話を聞いても、私は同情なんて、さらさら沸かない。
だからといって、嫌がらせする理由じゃない!!と思っていた。
そんな話を2人でしていたが、結論はでない。
明日から、大阪への出張があったので、私が戻ってから話をしよう!
という事になった。
大阪では、年に1度の展示会があり、それに出展することになっていた。
本社からは、課長と私の2人で行く。
『課長は女として、私をみてる』と東さんに言われたのが、気になった。
まさか、本当にそうだったとは、この時は気づかなかった。
展示会は4日間だったが、準備の為、
前日の午後に新幹線に乗り、夕方に現地に着いた。
大阪営業所の所長が、車で迎えにきていた。
準備は全部、営業所の人たちが終わらせてくれていて、
やることは何も無かった。
課長と営業所のみんなで、お好み焼き屋さんに行った。
「大阪に入ると、みんな、ここで飯食うんだよ」
その後、近くのバーで軽く飲みに行った。
ホテルは、高層の有名ホテルで、出張でこんな所に泊まっていいのかと驚いた。
「展示会の時だけだよ。朝、早いから。一番、近いホテルに泊まるんだ」
そっか!今回だけか!ラッキー!!
朝、ホテルのレストランで、ビュッフェスタイルの朝食をとった。
高層階で景色は良いし、料理も美味しそう!!
テンションがめっちゃ上がった!
とりあえず、お皿いっぱい、てんこ盛りに料理をよそった。
「よく、朝からそんなに食えるな」と課長に呆れた様に言われた。
「あれ?課長は食べないんですか?」
「俺、朝はコーヒーだけ」
「ふーん。もったいないですよ。こんなに美味しそうなのに」
バクバク食べてると、
「やっぱ、俺も食おうかな」と言って、料理をとりに行った。
展示会の初日。
一斉にお客さんが入るのかと思いきや、全然来なかった。
緊張して、待っていたが、空振り。
お昼ごはんを交代で、食べに行く時に、
斜め前のブースに気づいた。
あ!この会社。昔、佐々木さんが働いてたところだ・・・。
どんなの展示してるんだろう?
通り過ぎる時に、気になって、チラっと見るようになった。
この日は、大阪の所長と課長と3人で、ご飯を食べに行き、
居酒屋に行った。
すると、課長が所長に説教?のような事を言い始めた。
大阪の営業マンのひとりに、あまり仕事のできない人がいる。
今日も、展示会で鈍くさい動きをして、所長がイライラしていた。
もう少し、大目にみてやれ!との話だった。
所長と別れて、ホテルに戻ると、課長に「飲みなおさないか?」と言われ、
ホテルのバーで、飲んでいた。
バーは、ホテルの最上階にあった。
キレイな夜景が見える。
ソファが個々に並べられ、真ん中にはグランドピアノが置いてあった。
窓際のソファに案内されて、課長から、少し離れて座った。
こんな雰囲気の良い場所、久しぶりだな・・・
「何、考えてるの?」
課長に聞かれて、我に返った。
「こんな場所、久しぶりだなって思って」
「俺も、ピアノバーに来たのは、久しぶりだよ」
「え?課長は去年も、このホテルに泊まったんじゃないですか?」
「ここには、来なかった。・・・男同士で来たって、おかしいだろ?」
と笑っていた。
「去年は、(展示会の仕事は)男性社員だけだったんですね?」
「いやいや、いたよ。女の子も」
そういって、本社の2名の女の子の名前をあげた。
「この展示会の仕事、人気あってさ、去年までは、公平にってことで女性社員で決めてたんだよ。今年は、受付で、きちんと話ができる子が良いってことで、部長がさ、さくらさんを選んだんだ」
「え!そうだったんですか!・・・私、恨まれてますね」
嫌な汗をかいた。
またこれで、ヒイキされてると思われるのか!
「まあな、本社の女性社員は、意地悪だからな」と軽く笑っていた。
笑うなんて、冗談じゃない!
嫌がらせを受ける身にもなれ!
ムッとしていたら、課長が慌てて、
「いや、もうそんな風にはならないと思うよ」と言った。
「この間の、幹部会議で、女の子の人事異動をすることになったんだ。まだ決定ではないけど」
本社のできない女性社員を、地方の営業所に飛ばして、
営業所のできる女子社員を本社に連れてくる、と言った話だった。
「それって、もしかして、本社の女子社員を辞めさせたいから・・・ですか?」
「そうだよ!ウチの本社の子たちはプライド高いから、地方に行くなんて、嫌がるだろう。で、自主的に辞めてもらう。ウチは営業所の子が優秀だから、異動してもらう子には、かなりお給料も上げるし、手当てもつける」
裏で、こんな話が進んでいたのか!!驚いた!!
「私も飛ばされるんですか?」心配になって聞いた。
「さくらさんは、大丈夫だよ。会議の時、部長が仕事を頑張ってる!と褒めていたから、異動にはならないよ」
ホッとした。
「ともちゃんと、堀さんは?」
仲良しの2人が気になった。
「ああ、ともちゃんは、社長のお気に入りだからな、大丈夫だろう」
そうか!
社長は、朝早く来て、みんなの机を拭いてる姿を知ってるもんな。
「堀さんは飛ばされると思うよ」
「え!!何でですか?良い子だと思うけど」
「あの子の格好がな・・・。スゴイだろ、あの指と、ピアス」
堀さんは、かなりの数のピアスを耳に付けて、派手な爪をしている。
外見か!
帰ったら、社内で、そんな格好をしないように伝えないと!!
「東さんは?」
東さんは、当然、飛ばされるだろう・・・と思っていた。
あれだけ、意地悪してるもん。
「東さんは、主任になると思うよ!」
主任って、なんで!!!昇格じゃん!
「なんで!東さんだけが昇格するんですか!!」
「あそこの部署って、東さんだけが仕事してるだろう。特に、他の2名の女の子たちは、仕事しないでサボってる。押し付けられてるのに、文句を言わずに黙って頑張ってるからさ、あの子の評価は高いんだよ」
東さんから『あなたは世の中を分かってない!』と言われた事を思い出した。
そうなのか!『上司に相談しろ!』と言った私は、間違いで、
何も言わずに、仕事をしてる方が評価される・・・東さんが正しいのか!!
悔しかった。陰でイジメても、バレなければ良いのか・・・。
ともちゃんの事を思い出した。
ヤバイ!社長に、相談しようとしてる。
言いつけた!と捉えられたら、評価が下がる!
「課長、この話が内緒なのは分かってるんですが・・・、ひとりだけに話して良いですか?」
課長は怪訝な顔をしてる。
ともちゃんが社長に相談しよう、としている事を話した。
「それはマズイな。社長まで、その話がいくと、今まで何も対応してなかった事になるからな」
え?何の対応もしてなかったんじゃないの???と思った。
「違うよ。次長はさ、注意をしていたんだ。けど、あの子たち(本社の事務員)は、変にかしこいから、労働基準法で、自分たちが解雇にならないことが分かってるんだよ」
「でも、仕事サボってるわけだし・・・」
「仕事は能力差があるから。時間内にできなかったといえば、それまでなんだ。遅刻とか欠席が多いとか、はっきり分かる内容じゃないと、解雇にはできない」
狐と狸の化かし合い
・・・そんな言葉が頭に浮かんだ。
私には、この会社は、無理だ
ピアノの生演奏もあり、課長は楽しんでる様子だった。
私は、今の話で頭がいっぱいになって、楽しむどころじゃなかった。
展示会の2日目。
今日こそ、お客さんがいっぱい入るかと期待していたが、
またもや期待ハズレ。
毎年、最終日の日曜日に、いっぱい来るよ!と言われて、慰められた。
大阪の所長は、昨晩、課長に叱られたので、
営業マン男の子に厳しく言うのは止めていたが、
イライラしてるのは分かった。
私は大阪の所長が好きだった。もちろん、恋愛じゃなく、人間的に。
この人だけが、本社に来た時に、本社の女の子の名前を全員、覚えていて、
話しかけている。この気遣い、スゴイ!と思っていた。
最年少で所長を任されたと聞いて、なるほど納得の人だと思っていた。
反面、自分ができる人だから、できない人の気持ちが分からない。
だから、イライラするんだろうな・・・とも思っていた。
所長と営業マンの間に入って、両方に気を使いながら仕事をしていくうちに、私は営業所の方が、性格的に向いてるかもな・・・と思い始めた。
以前、営業所の事務員さんが急にやめた時に、私が代わりに仕事をした。
仕事内容は分かってる。
・・・そうだ、飛ばしてもらおう!
課長に頼んでみよう!!
斜め前のブースを、チラっと見るのが癖になっていた。
あれ?あの人、昨日はいなかったのに・・・。
スーツを着た、男性がいた。
暇だったので、チラチラと見ていた。
30歳前後かな。もしかして佐々木さんの知り合いかな。
そんな事を漠然と考えていた。
その日の夜は、課長と2人きりだった。
「どこに食べに行きましょうか?」
「そうだな。ホテルのレストランは高いし、駅前にでも行ってみるか!」
2人で歩きだした。
前2日間は、所長が車を出して、お店に案内してくれたので良かったが、
今日は、自分たちで探した。
駅前に着いたが、あまりお店がない。
とりあえず、回転寿司に入った。
営業所への異動の件を相談したかったが、
ゆっくり話ができるようなお店では無かった。
せっかく部長が本社に残してくれると言うのに、自分から営業所にいきたいとは・・・・・・よく考えれば、かなり失礼な話だ。
たぶん、昨晩はバーでお酒が入って、気分が高揚したからこそ、
課長は、人事の話を私に漏らした・・・。
今回も、課長にお酒をたくさん飲ませて、ご機嫌になった時に相談した方が良さそうだなと思った。
「あまり飲めそうな場所ありませんね」
「そうだな・・・」
お店を探しながら、話していた。
「昨日のバーに行きますか?」
「うーん、あそこは高いだろ・・・」
課長は気乗りしない様だった。
仕方無い・・・、相談はまた次にしよう。
コンビニの前を通ると
「酒を買っていく」と課長はお酒とつまみを買ったので、
私も買い物をした。
ホテルで、課長の部屋の前を通って、
「お休みなさい」と挨拶をすると
課長が「部屋で、一緒に酒、飲んでいくか?」と言われた。
え??部屋で・・・
と、ちょっと引いたら
「まだ早い時間だし、一人で飲むのも、つまらないだろ」
別に、どっちでもいいよ・・・という雰囲気で、
誘ってる感じはしない。
迷ったけど「じゃあ、一杯だけ付き合います」と言って、
課長の部屋に入った。
とりあえず、長居したらダメだなと思って、
お酒を飲みはじめて、すぐに、
「実は、昨日の話を聞いて、考えてたんですが・・・営業所に異動したいんです」
と話した。
「え?さくらさんは、異動にはならないって、昨日、話しただろう?」
課長が理解できないって顔をしている。
「それは分かってるんですが、営業所の方が向いてると思って」
課長が、すごく嫌そうな顔をした。
「そういう目的で、異動するわけじゃないだろ」
怒った様に言う。
ヤバイ!直球過ぎたな!!
言い方を変えた。
「いえいえ、実は・・・今日の所長と営業マンを見て思ったんですよ。あの2人、上手くいってませんよね?」
今いる事務員さんは、もうすぐ退職する予定で、今は新しい人を探している。
けど、後任の事務員さんでは、2人の間に挟まれたら、荷が重いのでは?
営業所を心配しているから!
そんなニュアンスで話していたら、
課長の機嫌も直った。
「そうだな・・・あの二人は、相性が悪いからな」
納得しながら、
「けど、事務員の異動は普通は無いからな。(借り上げ)社宅や赴任手当てがつかないけど、いいのか?」
お給料の事など、具体的な話を聞いていくうちに、
課長も「営業所が落ち着くまでの短期間の出張扱いなら、良いかもな・・・」
*短期の出張ではなく、「長期間の出張扱い」の間違いです。
残りのページが少ないので、このまま続きます。
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課長と話すのは、ここまでかな。
後は、決定権を持つ部長に交渉しよう。
部長に交渉する前に、大阪の所長の賛成も得ておいて、所長からもプッシュしてもらおう・・・。
そんな風に考えて、この話は切り上げた。
面倒な話が終わって安心した。
課長と一緒にお酒を飲んで、雑談していた。
以前の仕事のクライアントに、すごい『女の好き』の男性がいた。
30代後半にして、×3。
自ら和製イタリア人と言って、とにかく女の子がいたら声をかけまくる人だ。
「課長って、その人に似てるんですよね」
「俺、嫌だよ、そんな×3の奴なんて!!前から思ってたけど、君さ、すごく失礼だよね。前にも俺の事、絶対、浮気するって言っただろ」
「いえいえ、これが理に適ってるんですよ!その人も、新しい事が好きなんです。新しい企画があると、面白がって、すぐに試してみよう!ってノリノリなんです。課長だって、営業でも、常に新しい事にチャレンジしようって、おっしゃってますよね。・・・・ほら、車でも、すぐに乗り換える人は浮気するっていうじゃないですか!」
「う・・・ん」納得いかない、けど言い返せない課長。
たまにこうやって課長をからかうけど、面白い。
「けど、俺が浮気したのは、高校生の頃なんだぜ。大人になってからは、してない」
「ええ!!高校生で浮気なんてするんですか!!」驚いた。
課長は訝しげに
「普通、若い頃の方が、浮気するだろ・・・」
「いや、普通はしないですよ!大人になって、恋愛に慣れてきた頃にするもんです」
「大人になって、する方が、バカだろ!」
「バカはバカですけど。でも若い頃って、好きな人ができると夢中になりませんか?・・・・・そういえば、高校生の時の彼女って、私に似てるって言ってませんでしたか?その時に浮気したんですか?」
詳しい話を聞くと、唖然とした。
高校時代、同級生と一緒に、処女を何人奪えるかの競争していたという。
1度やったら、それきり連絡はしない。
相手から連絡があっても、徹底的に無視する。
いわゆる『処女のやり逃げ』を何人もの女の子にしていた。
浮気相手と一緒にいるところを、本命彼女に見つかってしまい、ふられた。
けど、許してもらってからは、改心して、浮気は止めた
・・・という話。
年上の男性の『武勇伝』話は、過去に何度も聞いたことあるけど、
ここまで酷い話は、初めて聞いた。
課長は、昔、モテていたとは思っていたけど、こんなだったとは。
アイの事を思い出した。アイは、今でも男性不振になって苦しんでる。
「課長、最低ですね!女の子の最初って、すごく大切なんですよ!!」
「なんだよ!女の子だって、バージンなんて早く捨てたいって思うだろ!」
男の童貞と、同じ様に考えてるのか・・・。
アイの最初の男も、こんなんだったんだな。呆れてしまった。
「その女の子たち。絶対に後悔してますよ!課長がはじめてなんて、思い出したくも無い。人生の汚点ですよ!」
「なんだよ・・・。俺が初めてなのは、汚点なのか・・・」
課長は凹んでいる。
「そうですよ!少しは反省した方がいいです!!」
強きでガンガン責めた!
「なんだよ。俺のせっかくの思い出に・・・。お前に聞かれたから、素直に答えただけだろ。
もういいよ、お前、もう(自分の部屋に)戻れ!!!」
そういわれて、時間を見ると、すでに夜中の2時!
しまった!!居過ぎた!
「すみませんでした」と謝って、
自分の部屋に戻った。
展示会、3日目。
あいにくの雨。
人も少ない。
課長が、「お前たち、今日は客が少ないだろうから、もう帰っていいぞ!」と言って、来たばかりの大阪営業所の人たちを返した。
今日は、課長と私の二人きり。
けど、課長はブースにはいない。
初日から、そうだ。
得意先のお客さんを案内するのは分かる。
けど、それ以外でも、いつもブースにはいない。
何やってるんだ??
お昼ご飯を一人で食べに行ったときに、メキシコ料理店を見つけた。
メニューは豊富。価格も安い。ショーもあるという。
この店だったら、変わったものが好きな課長も喜ぶだろうな!
今日の夜ご飯は、このお店を勧めてみよう!
斜め前のブース。佐々木さんの前の会社。
昨日のスーツ姿の男性は、今日もいる。隣りの女性とずっと雑談をしていた。
いいな。私も隣りで話してみたいな・・・。
すると、課長が、そのスーツの男性に話しかけていた!
もしかして、ウチの会社と取引あるの!!!
戻ってきた課長に早速聞いてみた。
「いや、取引は無いよ。けど、何か営業チャンスが無いかと思って、いろんなブースを周ってた」
たくさんの名刺を見せてくれた。
「そうだったんですか!!」
ここに、いない間も課長は仕事してたんだ。
「本社に戻ったら、あの会社に営業に行きますか?」
「ああ、行くつもりだよ」
じゃあ、展示会が終わっても、あの人(スーツの男性)に会えるチャンスはあるんだ!
ウキウキした。
けど・・・大事な事を聞かなくては!
「あの人、結婚指輪してましたか?」
「いや、見てないけど」訝しげに言う。
そうか・・自分で確かめるしかない。
でも、私も名刺交換すれば、仲良くなるチャンスがあるんだな!!
今日はブースに私ひとりだから、離れられない。
明日の最終日がチャンスだ!!
仕事が終わって、早速、昼間に見つけたメキシコ料理店の話をした。
案の定、課長も面白がって、そのお店に行くことに。
食べていると、舞台の上で音楽に合わせてダンサーが踊りだした。
途中、ダンサーが「みなさんも一緒に!」と誘うが、誰も反応しない。
なんだか可哀想になって、「ハイ!私、いきます」と言って、舞台の上で、一緒に踊っていた。
すると課長も一緒に入ってきて、踊った。
それどころか、ギャグを飛ばして、お客さんを盛り上げている。
最終的には半分以上のお客さんが舞台に上がって、一緒にダンスをして、店が一体となって、楽しんでいた。
>> 441
真美さん
最初から読んでいただいて、ありがとうございます。
ちょっと更新が微妙になってます。
<読んで下さってる皆様>
更新が遅くなって、すみません。
続きを書きたい気持ちはあるのですが、
実は今、微妙な状況になっていて、
この先を書いていいのか悩んでいるところです。
旦那(ここでは課長)が、この日記を読んだそうです。
旦那は、かなりショックを受けていました。
当時でも、佐々木さんの事は、話していたんですが、
ここまで気持ちがあったとは思っていなかった様です。
とりあえず状況が落ち着くまでは、
続きを書くのは遠慮させてもらいたいです。
たぶん小説の様に捉えていて、
続きが気になる方もいると思うので、
誠に申し訳ないのですが・・・。
結論が出たら、またお知らせします。
とりあえず、このスレッドは残り60も無いので、
空けておきますので、お好きにお使いください。
4月から仕事を再開するのですが、
それまでは時間に余裕があるので、
私宛にコメント頂けたら、お返事もできますし・・・。
>> 443
まるさん
ありがとうございます。
あんまり内緒にしておく気がしなかったです。
本当の話しですし、旦那には当時、佐々木さんの事を話してましたから。
こんなにショックを受けるとは、思ってみなかったです。
佐々木さんの事は、この続きに電話で話して、気持ちのけりをつけたので、今は気持ちはないですが、ここで終わると、そう思いますよね。
>> 445
まるさん
再び、ありがとうございます。
ちょっと進展がありました。
昨晩、旦那と話しました。
少し前に『久しぶりに佐々木さんを見て、動揺してる』等と
文章に書きましたが
それを読んで
まだ未練が残っていて、
もしかしてこの先、会いに行って、浮気するんじゃないか?
と心配していたみたいです。
確かに、旦那の不安はもっともだなと思ったので、
これについては、何も言い訳できずに、信じてもらうしか方法が無いです。
あとは、旦那から『男目線』からの意見を聞きました。
旦那や佐々木さんや他の男性が、このときの私をどう見てるのか等、
私にとっては思いがけない話で、驚きましたが、ためになりました。
自分の欠点も分かったので、なんだか良かったです。
旦那は、頭の整理はついたと言ってたので、あとは気持ちの問題かなと。
タイミングを見て、この話を続けていいか、頼んでみますね。
- << 449 旦那さんも複雑ですね😅知らなくていいことまで知ってしまったから💧 でもここで自分の気持ちを全部吐き出して、過去を昇華できるといいですね。 気長に待ってます😄
atuさん、真実さん、まるさん
ありがとうございます。
旦那の方から、「この日記、どうするの?」と聞かれました。
「どうしたらいい?」と聞き返したら、
「あとは、俺の話しだから、続きを書いていいよ」と言ってもらえました。
こういうところが、器が大きくて良いなっと思って、結婚したんですよね。思い出しました。
のろけて、すみません^^;
夫婦仲は、元に戻って一安心なんですが、
私の方が旦那に言われた事で、ちょっと凹んだというか、混乱して…
この日記を書いてる意味が分からなくなりました。
この時に自分が出した結論も意味がなくなって、もう一回、考え直さないといけないかなと。
atuさん、真美さん
早速、ありがとうございます。
真美さん、お名前を間違ってごめんなさい🙇
午前中は健康診断に行って、待ってる間にレスをしたので、名前の確認しないで載せてしまいました。
そうですよね。
私も、他の方の文章を読んで、そこで終わっちゃうの😹と悲しくなるので、気持ちは分かります・・。
けど、この文章で、えらそうに「最後を読んでください」みたいな事を言ってしまったので、これから先を書くのが申し訳ないのと、
違うなと思ってるのに、書けるのか不安で😔
>> 455
atuさん
気にして頂いて、ありがとうございます。
旦那と、しょっちゅう、この当時の話しをするようになりました。
この時に知らなかった事、気持ちは、お互いにあるもので…結果、話しができる様になって、良かったなと思います。
ポン助さん、atuさん、読んで下さってる皆様
待っててくれて、ありがとうございます。
小説みたいに読んでくださってるのですね!
皆さん、どう思って読んでるのか、疑問だったので、答えをもらって嬉しいです。
答えを出さなきゃ!
と思いつつ、
まだ迷ってるんですが・・・
すみません、本当に決断できないです
そこで
昨日、自分で全部を読み返してみました。
以前に読み返した時に、誤字の多さと文章力の無さを痛感して、
書いたものは一切、見ないようにしていたんですが、
改めて、読むと、ホントにまぁ・・・中途半端で。
思っていたことの半分も書けてなくて😥
402で、佐々木さんを駅のホームで見送ってから、
クリスマス過ぎの間の約2週間ほど、抜かしてしまったので、
そちらをこれから書きたいと思います。
最初は、ここで止めるつもりでしたので、
とりあえず『佐々木さんを諦めた』までを完結させたいと思います。
旦那の方は、たぶん足りなくて、
もし書くとしたらパート2のスレッドを立ち上げる事になるので、
このまま感想を書いていただいても大丈夫だと思います。
(402~404の間)
拒否された。
最初は悲しかった。
私は、全部、受け止めるつもりだった。
会ってみて、よく分かった。
私は、佐々木さんが好きだ。他の誰とも違う。
それが、よく分かった。
だから受け止めるつもりだった。
私の弱さも、佐々木さんの弱さも、全部。
けど、拒否された。
胸が締め付けられるほど、悲しかった。
次に沸いてきたのは、怒りだった。
バカにしてる!!
同情するなんて、私をバカにしてる!
お優しい佐々木さんは、未練たらたらの私を見て、同情したんだ。
おまけに、まだ相談してこいと言うのか!!
恋愛は無理だけど、相談なら良い。待ってる。
なんだそりゃ?
悔しい。
本当に悔しい。
けど、嫌いになれない。憎めない。
だって、そこが一番、憧れていたところだったから。
私にはない『優しさ』。
佐々木さんは、みんなに優しい。
私は、反対だ。
好きな人には優しくできるけど、嫌いな人にはできない。
だから、人間として憧れていた。
嫌いにさえ、なれない。悔しい。
だったら、だったら、全部、佐々木さんの都合の良いように振る舞ってやろう!
相談して欲しいのなら、してやろう!
相談にのって、満足できるなら、そうしてやろう!
帰りの電車の中、携帯を開いた。
佐々木さんの番号を登録した。
登録して、虚しくなった。
なんで、こんな事をしてるんだろう・・・。
もう望みさえないのに。
次の日、仕事ではミスばっかりしていた。
課長に、会議の資料を作って欲しいと言われ、
エクセルで資料を作ったが、中の数字が3つも間違えてると指摘された。
何度も確認したのに・・・。
ダメだ、集中力が全く無い。
けど、課長は指摘するだけで、怒りはしなかった。
それが有りがたかった。
たぶん、厳しく怒られていたら、何も仕事が出来なくなっていただろう。
感謝した。
帰り、自宅の最寄り駅の改札を出ると、大雨だった。
傘は持ってない。
タクシー乗り場を見ると、長蛇の列だ。
ダメだ。歩いて帰ろう。
傘を持ってない人が、思い切って雨の中を駆け出す人が多い中、
ひとりトボトボと歩いていた。
走る気力なんて、無い。
しばらく歩くと、
「さくら!!どうしたの?傘、持ってないの?」と横から話しかけられた。
高校時代の友達、亜由美ちゃんだった。
久しぶりだった。
亜由美ちゃんは、〇価学会員だ。
高校時代に、「高校生が集まるイベントがあるんだ!一緒にいこう?」と誘われた。
当時は、何か知らなかった。
待ち合わせ場所に着いたら、私だけだった。
亜由美ちゃんが誘っていたのは、いつもの仲良し女5人グループのメンバーだったのに。
「あれ?私だけ?」
「うん。みんな、都合が悪くなったんだって」
「そっか」
あまり気にせずに、着いていった。
広い畳の部屋に、舞台があった。
その舞台の上で、いろんな催しものが行われていたが、
私が一番、印象に残ってるのは、『地球温暖化』をテーマに発表している人だった。
普段の高校生活ではありえない。
話す内容といえば、テレビドラマや芸能人、ファッション、恋愛話・・・。
若者なら、カッコ悪いと思うこと、真面目に発表してる。
聞いてる方も、無駄口を叩かずに聞いてた。
ちょっと驚いた。
真面目な会合なんだな。良い印象だった。
けど、最後にみんなでお経(?)をあげた。
何十人か何百人が一斉にお経を上げていて、声も揃っているから、
建物がまるで揺れている様な錯覚におちて、圧倒された。
最後に司会の女性が、
「この中には受験を控えている人もいるでしょう。勉強は大事ですが、毎日、お経(?)もあげてください」
と説明していて、驚いた。
疑問だった。
「なんでお経をあげるの?」と亜由美ちゃんに聞いた。
「うーん、これは難しいのだけどね。・・・・・」
と言いながら、宗教的な内容の事を始めたけど、
そうじゃない、そこじゃない、なんで「祈り」なんだ???
祈るよりも、その時間を勉強した方がはるかに効率的だろう、と私は思った。
そう聞くと、亜由美ちゃんは答えに詰まった。
けど、亜由美ちゃんも毎日、お経を上げているという。
なんで?疑問を感じずに、信じれるの?
不思議だった。
- << 465 さくらさん、また再開されたようで、大変嬉しいです💕 何度もお願いしてごめんなさいね😥でも本当に楽しみにしています✨✨✋
その後、勧誘をされるわけでもなく、普通に友達として過ごしていた。
その亜由美ちゃんに久しぶりにあった。
「うわ!びしょ濡れじゃん」
そういって、亜由美ちゃんは自分の傘を私の方に向けてくれた。
「ありがとう。けど、いいよ。どうせ濡れてるから、このまま帰るよ。亜由美ちゃんこそ、私に傘指したら、自分が濡れるよ」
「いやいや、そのままは、よくないよ!風邪引くよ!・・・私の家、近くだから、おいでよ!」
いいよ!と遠慮したが、半ば、強引に連れて行かれた。
高校時代、亜由美ちゃんの家は、2つ隣りの駅だったけど・・・?
「引っ越したの?」
「ん。違うんだ。・・・実はね、私、彼氏と同棲してるの」
すごく嬉しそうな顔をして、言った。
「それなら彼氏に迷惑じゃないの?」と不安になったが、
「この時間は、いないから、大丈夫だよ」
亜由美ちゃんの家は、本当に目と鼻の先にあった。
3階建てのマンション。
部屋に入ると、真っ暗だった。
彼氏はいないみたい。なんだかホッとした。
ラブラブ姿を見るのは、今の私にはキツイ。
「ストーブ付けたから、ここで当たってて」と言いながら、
亜由美ちゃんは、慌しく動き回る。
私のコートをストーブのそばにかけてくれた。
温かいコーヒーも入れてくれた。
テキパキと動き回る亜由美ちゃんを見て、
思わず「すっかり奥さんしてるね」とからかった。
「え!!そんな事ないよー」と顔を赤らめて、嬉しそうな様子。
本当に、彼氏と同棲して、幸せなんだな。
「実はね、3月の私の誕生日に、入籍しようと思ってるの」
「え!!それは、おめでとう。うわ~良かったね!結婚式の日取りは決まってるの?」
「んん。式はまだ決まってなくて。籍だけ、入れようって、この間、プロポーズされたの」
「そっかそっか。プロポーズされたばかりなんだ!!・・・彼氏さんって、もしかして大学時代にボランティアで一緒だったっていう、彼?」
「そうそう!!よく覚えてるね」
「もちろん覚えてるよ。だって、亜由美ちゃん、成人式の日、ずっと彼氏の話ばかりしてたじゃん。・・・・で、彼氏さん、大学卒業してから、どこで働いてるの?」
「卒業してから、2-3箇所、飲食店のバイトしてたんだけど、今はね、配達のバイトしてるよ」
え!?バイトで、結婚するの??
「えっと。亜由美ちゃんは、どこで働いてるの?」
「私はね、就職したことないんだ。家事手伝いって言うのかな?あとボランティアしてる」
はぁ???旦那さんはバイトで、奥さんは無職。
それで、生活するのって、不安じゃないの?
子供できたら、どうするの?
話を聞いてて、心配になった。
「亜由美ちゃんの親、反対しなかった?」
「うん。ずっとね、認めてもらえなくて」
そりゃそうだろうな。
「けどね、彼が、『やっぱり俺は、亜由美の事が一番だから、学会員になる!』って言ってくれたのー」
え!!学会員になるって。
・・・反対されてたのって、それ?
仕事じゃないの?
「彼氏さんは、学会員になるのを嫌がってたの?」
「うーん。嫌って言うのとは違うけど・・・。親にはね、結婚するなら、思想の違う人と一緒に暮らすのは厳しいよって反対されてた」
ああ、そうか。
それはその通りだな。
>> 465
atuさん
いつもありがとうございます。
atuさんのレスで励まされてます🙋
いつでも来てくださいませ。
「けど、亜由美ちゃん、彼氏と付き合ってるの6~7年でしょう?その間も反対されてたら、辛くなかった?よく諦めなかったね」
「ううん。全然。だって、彼はすごく素敵な人だから、絶対に親は認めてくれると思っていた。それに、彼は、絶対に私のことを分かってくれると思ってた」
ビックリした。
そんなに信じてるんだ。
嘘かと思った。
見栄を張ってるのかと。
けど、亜由美ちゃんの顔は自信に満ち溢れて、キラキラしてる。
なんで、そんなに信じられるんだ?
「そっか。そんなに素敵な彼氏なんだね」
「そうなのー!」
亜由美ちゃんの彼氏自慢が始まった。
思えば、成人式の日も、そうだった。
よくこんなに人を信じれるものだと、感心していた、な。
亜由美ちゃんは、あの時から変わらずに、ずっと彼を信じてるんだ、な。
聞いていくうちに、胸がギュウと苦しくなった
>> 467
私もさくらさんと同じで、嫌いな人に優しくできないし😢
誰にでも優しいような人。外づらが良い人って、何考えているかわからない事があるから…
外面の良い人って、弱い人だと思いますよ。
周りを気にして、自分を出せない人なんだと。
可哀想だな・・・って思ったら、きっと怖くないですよ!
>> 470
atuさんは、ママさんだったんですね。
子育て、お疲れ様です
姑とママ友は、「運」ですよね。
仲良くできる人と出会えるのは、宝くじに当たるのと同じくらい難しいかもしれませんね。
外面の良いって、真っ先に思い浮かべたのは、ここに出てくる「東さん」だったんですよ。
弱いっていうより、保身が強いって言うほうが、的確かもしれないけど・・・。
- << 474 東さんは、最悪ですね💦✋あまり、要領が良いとは言えない気もするけど。。 本当に怖いのは、佐々木さんみたいな人かなって思っちゃいますね💦私は。 誰にでも優しくて、本当に優しい人も仲にはいるけど、区別がつかないから困りますね。 実はあれから、この間言っていたママさんに、思い切って本心を打ち明けたら、意外と誤解してる面も多かったみたいで。腹を割って話すことができました。このママさん、もしかしたら亜由美ちゃんに性格近いのかな😃 かえって絆が深まった感じです。本心を打ち明けて、こうゆう事もあるけれど、時にはダメな事もありますよねえ💦人間関係って難しいね。
夜7時を過ぎた。
「あ!そろそろ彼が帰ってくる時間だ」
「え?!そんな時間。ごめんね、そろそろ帰る」
「えー。ウチでご飯食べていきなよ。今日は寒いから、お鍋にするつもりだし、3人で食べようよ」
げ!それは嫌だ!!
彼氏と亜由美ちゃんのラブラブぶりなんて、みたくない!
絶対に落ち込むはずだ。
「いや、ウチでご飯の用意してると思うし・・・また今度、紹介して」
慌てて、コートを着て、帰ろうとした。
見たくない、彼氏が帰ってくる前に早く出なきゃ!
「あ、ちょっと待って、傘を持っていきなよ。・・・はい、これ。捨ててもいいやつだから」
ビニール傘を渡してくれた。
慌てて、亜由美ちゃんの家を出た。
マンションを出るまでドキドキしたが、彼氏とは会わなかった。
ホッとした。
あんなに優しくしてもらったのに、
あんな風に急に出てきて、悪いことしたな・・・。
雨は、さっきよりも酷くなっていた。
どしゃ降りだった。
亜由美ちゃん、彼氏の事を信じてるんだ。
羨ましいな。
そんなに信じられる彼氏なんだ。
・・・・・・。
いや、違うよな?
信じられる彼氏じゃないよな。
だって、6-7年、亜由美ちゃんの親に反対されてても、その間、何もしなかったんだもんな。
最近になって、やっと学会員になったんだもんな。
・・・・・・。
なんで、何も見えない未来、この先の事を、理由も分からずに信じられるんだろう。
「信じる」って、おかしいよな。
信じることは良いこと、疑うのは悪いことって、よく言われるけど、
現実には、信じて騙されて損したなんて、よくある。
信じた人の方が悪いとも言われる。
だから、騙されないように、自分で考えて、人を疑って、自分自身で自分を守っていく。
現実世界では、こっちの方が大切だ。
そうやって生きてきた。
もう騙されるのはごめんだ。
だから疑う、だから信じない様にする。自分を守るために。
けど、結果はどうだ?
何の保障も無いまま、ずっと信じてきた亜由美ちゃんは幸せになってる。
私は相変わらず、不信感を抱いたまま。いやそれ以上に、強くなった。
信じるって、なんなんだろう?
>> 474
atuさん
良い人みたいで、良かったですね(*^^*)
亜由美ちゃん似だったら、純粋で良い人です!
大人の付き合いで、本音を出せる人なんて、なかなかいないですもんね。
そっか、外面が良いというのは、愛想があって、優しくて、要領が良い人の事なんですね!
確かに東さんは頭は良いのに、要領が悪いので違いますね。
それなら、サツキがそうです!
サツキは私に内緒で佐々木さんを口説いてましたけど、
実は、この後に、旦那と二人きりにわざとして、サツキを試したんですけどね。
佐々木さんは、損してるタイプですよ。
愛想がなくて、表情がなくて、何を考えてるのか分からない。
雰囲気が俳優の佐々木蔵之介に似てたので「佐々木さん」という名前にしたんですけど…。
あんなイメージで分かりますか?
>> 477
もう本編辞められたのですか?
続くようであれば、感想スレなど他に作って会話して頂きたいです。
横レスが過ぎたので…
スレ汚し失礼しまし…
ユニさん、atuさん、チャココさん、読んでいただいてる皆様
主です。
すみません、ついつい私も会話が楽しくて、スレッドでおしゃべりしちゃいました😥
今さらですが、感想・雑談スレッドつくりました。
http://mikle.jp/threadres/1766075/
良かったら、来てくださいませ
どしゃ降りの雨の中、考えながら、歩いていた。
『信じるって、なんだ?』
私は、また間違っていたのだろうか・・・。
・・・・・・。
亜由美ちゃんは、本当に信じてるんだな。
プロポーズされて幸せそうな亜由美ちゃんの顔を思い出した。
また胸がギュウと苦しくなった。
私だって
私だって、本当は
佐々木さんに「奥さんと別れたら、結婚してくれないか」って言われた時、
嬉しかったんだ!!
私だって、言ってもらった時、幸せだったんだ!!
だけど、それは考えちゃいけないって思った。
そんな事、信じちゃいけないって思った。
だから・・・。
だから、感情を隠した。
冷静に「考えてなかった」って答えたんだ。
「だけど、これから考えるね」って伝えたんだ。
その場に、一番合うような言葉を選んで、言った。
それのどこが悪いんだ!
涙が溢れて、とまらなくなった。
この胸の苦しさはなんなんだ!
何で、こんなに胸が苦しくなるんだ!
涙がずっと止まらない。
涙を拭っても、拭っても、止まらない。
・・・・・。
少し頭を冷やそう。
立ち止まって、傘を畳んだ。
ふりしきる雨の中、顔を見上げた。
雨で、涙を全部、流したかった。
ふいに、後ろから人が通り過ぎた。
雨の音で、足音がかき消されて、
後ろに人が歩いてるとは思わなかった。
サラリーマン風のその男性は、怪訝な顔をして、私の顔を見ながら通り過ぎた。
あ!しまった!
こんな雨の中、傘を畳むなんて、危ない奴だと思われた!!
急に我に返った。
が、なんだかおかしくなった。
こんなに苦しいのに、まだ私は人目を気にするのか!
笑い出したくなった。
亜由美ちゃんだったら、この場で、こんな風に考えないだろうな。
ふいに分かった。
そっか、亜由美ちゃんは強いのか。
そっか。強いから信じられるんだ。
高校生の時の『祈り』。
見えないものに何故、時間を割こうとするのか
信じられるのか、疑問だった。
見えないもの。
『人の気持ち』もそうだ。
『未来・将来』もそうだ。
その全部を信じてる。
私は、逆か。信じれないのは弱いから。臆病だから。
そっか。なんだ、簡単だ。
私は、単なる臆病者だったのか。
そりゃ、こんな性格だったら、誰からも愛されるわけが無いよな。
その次の日曜日。
久々に、アイから電話がきて、習い事にいかないかと誘われた。
就職してからは、一度も行ってなかった。
気を紛らわせるのに、ちょうど良いかなと思って、誘いにのった。
サツキも一緒。3人で会うのは久しぶりだった。
崇さんがいた。
いつもの様にからかってくるかと思いきや、なんか元気が無かった。
あれ?どうしたんだろう?
目も合わせない。
私、避けられてるのか?
サツキが崇さんに話しかけていた。
「この間の大会、どうでしたか?」
「うん。優勝したよ」
「え!!!すごいですね!」
あっ!そうか!!忘れてた。
崇さんに『応援に来て欲しい』と言われたのに、返事してないんだった。
青くなった。
平気な顔して、ここに来ちゃったよ。
どうしよう。忘れてたなんて、さすがに悪すぎて、言えない。
その日の夜、みんなでご飯を食べた時、
ビール2杯しか飲んでないのに、記憶を失った。
帰りがけ、崇さんが車を出して、3人の家まで送ってくれるという。
私→サツキ→アイの順番。
実際、近いのは、アイの家だったが、
最後まで残って、崇さんと一緒にいたかったんだろう。
私が一番先に降りるので、助手席に座っていた。
車に乗ってる間に、徐々に酔った頭が冴えてきて、
なんだか隣りに座ってるのが気まずい気持ちになってきた。
崇さんとは、ほとんど会話をしないまま、家の近くのコンビニに着いた。
「ありがとうございました」と言って、車を降りても、
崇さんは返事をしない。
ハンドルに頭をつけて、うつむいている。
何か声をかけた方がいい!
と分かっていたけど、なんて話しかければいいのか分からない。
アイとサツキには、崇さんに応援に誘われた、とは話してない。
今、ここで、その(行かなかった)言い訳をしたら、おかしな事になるかもしれない。
どうしよう?
サツキが、なかなか車を出さないので、不思議そうだった。
「気分悪いんですか?」と崇さんに聞いていた。
「いや、大丈夫」と言って、頭を上げて、エンジンをかけた。
窓は開いていて、サツキとアイが「じゃあね!」と言って、手をふる。
崇さんが車を走らせる直前に、私の方を見た。
今日、初めて目が合った。ジッと見られた。
ドキっとした。
けど、何も言えなかった。
コンビニから家に戻っている間に、ふいに気づいた。
なんだ!!私も同じか!
散々、えらそうな事を言っていたのに、やってる事は同じとは!
また笑い出したくなった。
佐々木さんや崇さんは、相手の気持ちを分かっていながら、ちゃんとその気持ちに答えてあげないのはおかしい!!と力説した。
もちろん、その時は本気でそう思っていた。
けど、今の自分は、どうだ?
崇さんの気持ちは分かっていながら、返事をしてない。
崇さんの気持ちに答えられないといえば、もうこのメンバーでは今まで通りには会えないだろう。
かといって、崇さんの気持ちに答えたら、アイとの関係が悪くなる。
どっちも選べない。
いや、今のままが良いから「選ばない」んだ。
なんだ、私も同じか!
相手の辛い気持ちが分かっていながら、自分を優先する。
なんだ、そっか、私も同じだったんだ。
翌朝、アイから携帯に着信が入ってたので、仕事が終わってから電話した。
「ごめん、電話もらってたんだね」
「昨日はちゃんと家に着いた?」
そっか、酔ってたから、心配して電話くれたのかー。ジーンときた。
「あのさ、昨日のさくら、めっちゃ面白かったよ!!!楽しませてもらったよ」
え??面白い?楽しませる?思い出せない。
「ホントさ、爆笑で」
「え?昨日って、私、何かしたの??」
「やだー。さくら、覚えて無いの?サイコーだったのに」
「何?何した?私?」
「『チューしたい!』って言って、みんなにキスしてたんだよ!」
えー!!なんだそりゃ!
「マジで?・・・ってか、誰にしてた?まさか崇さんにした?」
崇さんにしてたら、マズイよ。
「崇さんにはしなかった。私が最初で、次がサツキ・・・」
良かった、この二人か・・・。
「で、昨日、初めて会った〇〇君」
〇〇君・・・って誰?っていうか、初めて会った人にキスしたの。
血の気がひく。
私の気持ちとは裏腹に、面白がってるアイの会話が続く。
「ホントさ、昨日のさくらには久しぶりに楽しませてもらったって感じだよ!」
ゲラゲラ笑いながら話すアイに、ムカついた。
「そんな話をしに、電話をかけてきたの!私、帰る途中だから、切るよ!!」
と言って、電話を切ってしまった。
切って、後悔した。
アイは、知らなかったから、私をからかったのに。
キスをして欲しがった、と聞いて、自分の気持ちが分かった。
佐々木さんにキスを拒否された。
ショックだった。
酔って本音がでたんだろう。
「キスして欲しかった」と。
酔って、迷惑をかけた。
その〇〇君に、次に会ったら謝ろう。
すぐに、アイから電話があった。
「ごめんね。さくらが酔って覚えてないとは思わなかったの。
何しに電話してきたの!って言われて、私も悪かったなって気づいた。
本当に、ごめん」
いやいや、逆ギレしたのは私の方だし・・・。
「あのね、崇さんにね、クリスマスパーティーをするから、3人で来てって誘われたの。イブなんだけど、さくらは行ける?」
「え?アイは行くの?彼氏はどうするの?」
「いや、聡君(彼氏)はどうせ仕事で遅くなるしね」
ちょっとビックリした。
アイは、今まで彼氏が優先で、イベントでは会った事がない。
どうしたんだろうか?
崇さんと会うのは気まずいけど、アイも気になる。
そういえば、アイは夏の花火大会の日から、なんだか違うような気がする。
「分かった。行くね」
しばらくたった、ある日。
仕事が終えて帰った後、ご飯食べて、お風呂に入った。
のんびりくつろいでいた。
夜8時頃だったと思う。
久しぶりにチエちゃんから電話がきた。
(チエちゃんは、忘れているかもしれませんが、私の高校の同級生で上司と不倫をして会社を辞め、一緒に派遣会社に登録をしてた子です)
「ごめーん。急だけど、これから出て来れない?」
前会社の同期の男の子2人と一緒に遊んでいるが、
誰か女の子を連れて来いと言われている・・・との事。
「いいよ!けど、お風呂出て、化粧も何もしてないから、少しだけ時間くれる?」
「いいのー!ごめん。助かる」
そういって、電話を切った。
チエちゃんとは同じ派遣先で働こう!と盛り上がってたのに、私だけ、別の会社に就職してしまって、なんだか申し訳なく思っていた。
電話をくれて、嬉しかった。
急いで、髪の毛を乾かし、洋服に着替え、化粧をした。
出る直前になって、『この洋服だと、湯冷めして、風邪引くかな・・・』と心配になって、慌てて自分の部屋に戻って、もっと温かい服を探し始めた。
すると、セーターが出てきた。
「あ!これは」
そっか。これまだあったんだ・・・。
佐々木さんのセーター。
もう2年近く前になる。
初めて、ふたりで旅行した日。
あまりの寒さにふるえてたら、佐々木さんが自分の着ていたセーターを脱いで、私に着せてくれた。
「うわ!これ、すごく温かいよ!!ありがとう。・・・けど佐々木さんは寒くないの?一緒にこのセーターに入ったら、伸びちゃうかな?」
「いや、もう一枚、同じの持ってるんだよ」
そう言って、カバンから色違いのセーターを取り出した。
「え!なんで同じの持ってるの?」
出張で、カナダへ行った時、あまりの寒さに買ったセーターだという。
見た目はそんなに厚手じゃないのに温かくて、帰り際に同じものを買った、と。
「さくらが、そんなに気に入ったんだったら、あげるよ、それ」
「え!良いの!けど、佐々木さん気に入ってるんでしょ?」
「いいよ。さくらが持っていたら、俺とお揃いになるだろ。持ってて」
そうだ。あの時、貰ったんだ。
あれから、着てなかった。
すっかり忘れてた。
ギュウとセーターを抱きしめた。温かい。
そうだ。この時、嬉しかったんだ。
佐々木さんが自分の着ていたセーターを脱いで、私に着せてくれた。
その気持ちが、何より嬉しかったんだ。
もう一度、ギュウと抱きしめた。
忘れてた・・・。
そっか。
いっぱい疑って、佐々木さんの事を信じられなくなった。
けど、この時のこの優しさは、間違いなく本物だった。
それが真実だった。
何故、忘れてたんだろう。
旅行の日の事を、もう一度、思い出した。
佐々木さんが自分の一番好きな場所なんだ、といって連れていってくれた。
それなのに私、この日はずっとイライラしてたな・・・。
後で、後悔したな・・・。
何故だっけ?
そうだ、佐々木さん、焼きもち焼いたんだった。
クライアントの男性に。
なのに、いつも「俺がさくらにイイ男をみつけてやる」とか「さくらが本気で好きになった男がいたら、俺はすっぱりと別れる」とか言われて、
なんか嫌な気持ちになったんだ。
カッコつけて言ってるだけだと思ってた。
ふいに、分かった!
今度は、本気で大笑いしてしまった。
バカじゃないの、佐々木さん
本気で別れた女の心配をしてるの?
『心配だから、いつでも携帯に電話して!』。
最後の別れの言葉と、重なった。
マジで言ってるの?マジで心配してるの、私を・・・?
私が幸せになるまで見届けるというのか!
そんな事、全然、私、望んでないのに・・・。
あまりに、人の良すぎる佐々木さんに、笑いが止まらなかった。
本気で、私を見守りたいっていうのか、バカ過ぎる!
最初の日。佐々木さんと寝た日の帰り道。
ホテルから、佐々木さんの車で、家まで送ってもらった。
その車の中で、
「さくらさんって・・・・・・彼氏いないの?」と聞かれた。
間の開いた時、本当は『なんで、俺と寝たの?』と聞きたかったのかな、と思った。
メンドクサイ!!
寝たかったのは気分だ、それだけ。
佐々木さんが寂しそうに見えて、可愛かっただけだ。
何か言い訳を考えようと思った時、
ふとそうだ、大人の意見を聞いてみたいな、と思った。
「私、男の人を見る目がないみたいんですよね。彼氏っていうわけじゃ、無いんですけど、少し前にデートをしてた人がいて・・・」
入社して、数ヵ月後。
同じ事務所の高岡さんから、「幼馴染と飲みに行くんだけど、一緒にどう?」と誘ってくれた。
女性は2人しかいない職場。もっと高岡さんと仲良くなりたいと思って、喜んでお誘いを受けて、着いていった。
幼馴染は、男性だった。
最初は、居酒屋へ、次にカラオケへ行った。
高岡さんが泥酔して、幼馴染に抱えられながら、帰った。
その後、その幼馴染の男性から、積極的にアプローチをされて、一緒にご飯を食べに行くようになった。
高岡さんの昔からの知り合いだから、大丈夫だろうと思った。
けど、なんか違った。
『一人暮らしをしたい』と話したら、次に会った時に、間取りの図面を数枚もってきた。しかも二人で住む広さ。ビックリしてると、『俺と、同棲しよう!』。
そして友達に会った時に、『俺の彼女』と紹介された。
『私たち、付き合ってないよね?』『え!!!俺は付き合ってると思ってた。だったら、付き合って』。『考えさせて』。まだご飯を2人で食べに行ってるだけなのに・・・なんか怖くなって、高岡さんに相談した。
すると、高岡さんが、嫌そうな顔をして『私さ、(幼馴染と)寝たことあるんだよ』と言った。
『え!そうなんですか?』と驚いて聞き返すと、
『あの日(最初に会った日)の帰りにさ、私のアパートに来てね。男と女がひとつの部屋にいるのよ。あとは分かるでしょ』と言われた。
驚いて、幼馴染の男性に聞くと
『まさか。あいつを女として見た事なんて、ねーよ』と笑いながら言う。
どっちが真実か、分からない。
けど、高岡さんは私に嘘を付く理由が無いような気がした。
なので、男性が嘘を付いてると思って、振った。
すると、毎日、毎晩、電話をしてくる。
さすがに何時間も電話に付き合ってると寝不足で、嫌になった。
『お前より良い女と俺は絶対に付き合ってみせる!!』と言うので、『幸せになってね。応援してるよ』と返答したら、『それはキツ過ぎるだろ』と言って、大声でワンワン泣いていた。
その泣き声を聞いて、まさか、高岡さんが嘘付いてたの?と分からなくなった。
その話を、佐々木さんにどう思うか、尋ねてみた。
「うーん、確かに高岡さんが嘘を付く、理由は無いな」
佐々木さんが言うのを聞いて、ちょっと安心した。
私の考えは間違ってなかったのか。
「たぶん、寝たのは本当だろうな。けど、男にとっては、そんなに大事なことじゃなかった。たぶん、酔ってた弾みとか。好きな子に指摘されて、嘘付いたんだろうな」
「良かった。もし高岡さんに嘘付かれたら、この先、仕事がやりにくいなと心配してたんですよ」
「その真偽はともあれ、さくらさんは、その男が合わないと思ってたんだろ?」
「話しは合って、面白い人だと思ってたんですけど、なんかスピードが違うんですよね。情熱的すぎて、ついていけなくて」
「それだったら、気にすること無いよ。もともと合わない人だった訳だから」
そう言われて、スッと気持ちが軽くなった。
「さくらさんはさ、男を見る目が無いの?」
「そうなんですよ。最初の彼氏には、浮気をいっぱいされて、最後にはお金を貸したら、それを持って、逃げちゃったんです」
「お金を持って?普通は、その前に気づくだろ」
「いやいや。口の上手い人だったから、気づかないんですよ。私だけじゃ無いんですよ。そのバイト先では、数百万円貸しちゃった人もいるんです。私はお金持ってないから、十数万円で済んだんですけどね」
「十数万って、結構な額じゃないか!」驚いていた。
「けど、良かったんですよ。お金をとられて」
私がそう言ったら、佐々木さんは怪訝な顔をしていた。
「私は彼女だったから、彼が逃げた時に、私が疑われたんですよ。たぶん共犯だと思われて。けど、私もお金を貸していたし、借用書もあったから、なんとか信じてもらえたんです」
私の説明に納得してる様だった。
「そっか、俺が、その時にそばにいたら、守ってやれたのに」
その言葉を聞いて、プッと吹きだしてしまった。
こっちをジロっとみる佐々木さん。
「あ!笑って、ごめんなさい。けど、その言葉は2番目に付き合ってた人にも言われたんで」
2番目の彼は、高校時代の同級生だった。
友達の結婚式で、久しぶりに再会した。
それから、男2人女2人の計4人で遊びに行くようになった。
そのうち、同級生の男の子と2人きりで会う様になり、前彼の事を話すと、同じことを言われ、「俺と付き合おう」とも言われた。
けど、なかなか信じられずにいた。
すると、もう一人の同級生が「あいつの家庭環境は複雑で、あいつは苦労してきた、いい奴だよ」と背中を押され、
また同級生の従弟にも同じ事を言われ、やっと信じて、付き合う気持ちになった。
けど、付き合って一週間後、女の子からの怒鳴り声をあげた電話があった。
「なんていうか、ヒステリーって言うのか、声にならない声で怒鳴りまくられて」
「それは、驚いただろ?」
「いや、おかしなもので、相手が興奮してると、自分の方はクールダウンするんですよ。で、向こうは、私が彼女がいるのが分かっていながら、彼氏を誘惑したと思い込んでいたみたいなので、『もし彼女がいたの知ってたら、付き合わなかったよ』って言ったんです。そしたら、急に変わって。『え?どういう事?知らなかったの?』。で、詳しい話を聞いたら、その女の子、すごく良い人だったんですよ」
「怒鳴り込んで電話する子が良い子なの?」不思議そうに聞かれた。
「まぁ、彼の事、大好きだったんでしょうね。複雑な家庭なのは本当だったみたいで、彼は、病気のおじいちゃんと二人暮らしだったんですけど、その女の子が日中は、面倒を見てるんですって。で、夜は、夜の商売で家計を助けてるって。『私が、彼の為に全部やってあげてるの!!』って言ってたので」
「なんか、その話を聞いてたら、こんなに尽くしてる彼女を騙すなんて、ヒドイ男だ!って腹が立って、その場でもう切ったんですよね。男は、それで良かったんですよ。けど、ショックだったのは、友達に騙された事で」
もう一人の同級生と、同級生の従弟の言葉を信じてしまった。
この二人は、彼に言われて、私を騙したんだろう。
「もう、なんかね、誰の言葉を信じて良いのか、分からなくなって」
後の方の話では、佐々木さんは口を挟まずに、ジッと聞いてた。
聞いてくれてると思ったら、ついつい喋り過ぎてしまった。
なんの反応も無いから、心配になっていると
佐々木さんが「俺がさ、見極めてやるよ!」と言い出した。
はぁ?!
「俺さ、職業柄かもしれないけど、人を見る目はあるんだよ。だから、さくらちゃんに好きな人が出来た時、そいつが良い奴かどうか、確かめてやるよ」
ええ!なんで?
と思ったが、この場だけの言葉だと思ったので、笑って「お願いします」と答えた。
だったら、良い男を紹介してくれた方が良いのにな・・・とも内心は思った。
まさか、この時のこの約束を、本気で果たそうとしてるのか???
セーターを抱きしめながら、昔の事を思い出していた。
ふと気づいた!
そうだ、チエちゃんと約束してるんだった。
慌てて、その佐々木さんのセーターを着て、待ち合わせのファミレスに行った。
チエちゃんと同期の男性2人は、待っていた。
が、私が席に着くや否や、
初めて会った男性に「それさ、男の服だろ?サイテーだな、見せつける為に来てくんのかよ!」と不機嫌そうに言われた。
慌てて「いやいや、お風呂から出たばっかりで、湯冷めするかと思って・・・」と説明すると
チエちゃんが「それ、お父さんのだよね」とフォローに入ってくれた。
「そうそう!お父さんの!!」と冷や汗をかきながら、嘘を付いた。
その後、4人でゲーセンで遊んで、終電前に帰った。
そっか。このセーター、着ると誤解されるんだな・・・。
携帯に登録した佐々木さんの番号。
腹が立って、勢いで、登録した。
どうしよう?ずっと迷っていた。
けど、いいや!残しておこう!
もし本当に佐々木さんが心配してくれてるなら、
今はまだ無理だけど、
いつかきっと、本当に好きな人が出来た時に、
もう心配しなくて、いいよって、電話できたらな。
それに私、このセーター貰ったもんな。
これを貰ったから、もういいや!
クリスマスイブの日。
課長から「さくらさん、今日は何か予定があるの?」と聞かれた。
「今日は、習い事のクリスマスパーティーがあるんですよ!」
早く仕事を終わらせて、定時に上がった。
サツキとの待ち合わせ場所に急いだ。
電車の中でサツキが、「実はね、彼氏ができたんだ」と報告してくれた。
「え!!どんな人?」
「あのね、大学時代の〇〇ちゃんって覚えてる?その子の彼氏の友達なんだ。前に4人で会って、それから付き合う事になったの」
「そっか。良かったね!・・・けど、今日のイブは大丈夫なの?彼氏を優先にしていいんだよ。アイには私から言っておくし」
「いいの。いいの。彼氏は今日は仕事で遅くなるって言ってたから、明日、会う予定だし」
次にアイとの待ち合わせの場所に着いた。
サツキの彼氏の話をすると、アイの反応は違った!
「それって、絶対におかしいよ!初めてのイブでしょ!!今日、会えないなんて絶対におかしい!!本当に好きな子の為には、絶対に休みとって、会うはずだよ」
サツキが不安そうな顔になる。
私がフォローに入る。
「けど、〇〇ちゃんだって、その彼氏だって、サツキのこと知ってるんだし、彼氏が変な事をしてたら、教えてくれるはずだよ。何も言わないなら、大丈夫だよ」
「男同士なんて、結託して嘘付くもんだよ。そんなの信じたらダメだよ」
アッサリ却下された。
どんどんサツキが落ち込んでいく。
アイの言ってる事は、正しいかもしれない。
けど、まだ何も分からない状況で、こんなに不安を煽ってどうするんだよ。
駅についた。
お店は、アイが知っていたので、後をついていく。
「あ!あのお店だよ」
そばにいくと、
暗闇から、人が現れて、「ウォオオオオー」と言って、突然、抱きつかれた。
キャアアアー。三人で、悲鳴を上げた。
アフロヘアのカツラを被った、崇さんだった。
爆笑してた。
「キャアアアーって、何だよ」ゲラゲラ笑ってた。
「どっかの変態オヤジだと思って、ビックリしましたよ」
すると、崇さんと一緒にいた女性が「この子たち?例の3人って?」と崇さんに
聞いていた。
例の3人って?何だ?
「そうだよ」と崇さんが答えると、
その女性が振り返って、「崇さん、あなたたちの事、ずっと待ってたんだよ」と言った。
クリスマスパーティの為に、そのお店を借り切っていた。
すでに20人ー30人がいたので、お店の中はいっぱいだった。
早速、私がチューしたと言う男の人を探そうとした。
謝んなきゃ!
けど、人数が多くて、見あたらない。
アイも、キョロキョロして誰か探していた。
「崇さん。今日って、ヒトミさん、来るんですよね?彼氏も一緒なんですよね?」
「さっき連絡あったから、もうすぐ来るだろう」
「ヒトミさんって、誰?」と私が聞くと
「あれ?さくらは、知らなかったっけ?・・・・ヒトミさんって、最高なんだよ!!女の幸せを全て手に入れた人なんだ!ほとんど海外にいるんだけど、今日は彼氏と一緒にここに来るっていうから。もうすごい楽しみで!」興奮して、アイが教えてくれた。
そっか。なんでアイが来たのかと思ったら、そのヒトミさんに会いに来たのか。
アイとサツキの説明によると、ヒトミさんは、同じ競技をしてる外国人の彼氏がいる。彼氏と共に日本と海外を行き来し、海外の大きな大会にも出場してるという。
「ヒトミさんて、プロなの?そんなにひんぱんに海外に行くなら、大手のスポンサーがついてるとか?」疑問に思って聞いた。
「あいつは、まだそこまでのレベルじゃねーよ」と崇さんが言う。
「え?でも海外に行くって、相当、お金がかかるでしょ?」
するとサツキが「ヒトミさんちって、お金持ちなんだって!親が援助してくれてるんだって、いいよねー」と言う。
えぇー。それって、親のスネをかじってるだけじゃん!
「親がさ、自分のやりたい事に応援してくれて、援助もしてくれて。しかも、ずっと彼氏と一緒なんてさ・・・すごい憧れるよ。ね!羨ましいと思わない?」とアイは、私の思いとは反対の事を言う。
崇さんが「けどさ、あいつ、少し前まで『崇さん、私、出来ない』とか言って、泣きついてきたんだぜ」と少しバカにした様に言うと
アイは、ものすごい顔で崇さんを睨みつけた!
ちょっとビックリした。
けど・・・アイが、男よりも、もっと他に目を向けたと知って、なんだか嬉しくなった。
奥の席で、みんなで座っていたが、アイはヒトミさんが気になるのか、入口近くで待ってるという。
相当、憧れてるんだな。
すると、サツキが「私も!」と言って席を立った。
サツキ、お前もか!
二人がいなくなったので、私がチューした男の人を探そうと思った。
崇さんが「誰か、探してるの?」
「この間、私がチューしたって言う男の人、探してるんです。あんまり覚えてないんですけどね、崇さん、どの人だか、分かります?」
「え?あの時の事、覚えて無いの?・・・そんなに飲んでなかっただろ?」
「うーん、ビール2杯だったんですけどね。記憶失ってて・・・。あとでアイに(キスしたと)聞いたときはショックでしたよ。申し訳ないなって思って、今日は謝りに来たんですよ」
「え?別に謝んなくてもいいだろ。キスって言っても、頬にチュってしてただけだろ」
「頬なんですか?なーんだ、良かった。てっきり口にしたのかと思った」
良かった。頬か!てっきり佐々木さんの事があったから、口にしたとばかり思ってた。
「大会に応援行けなくて、ごめんなさい」と謝った。
「いいよ。仕事、忙しかったんだろ」
「・・・・・うん」とだけ返事した。
その後、ビンゴ大会が始まった。
ゲームをして、盛り上がった。
アイは、ずっとヒトミさんにベッタリして、こっちには戻ってこない。
サツキは、行ったり来たり、他の人と話したり、いろいろと動き回ってた。
なんか、私はうまくその中には入れなかった。
大勢の中にいるのに、ひとりぼっりの気分になって、余計に寂しくなる。
また酔って記憶を失うのが嫌だったので、ほとんど飲まない様にしていた。
パーティが終わって、帰り道。
サツキが言う。「ねえねえ、最初に崇さんに驚かされた時に、そばにいた女の人いたでしょ?あの人さ、誰だか、分かったよ!!」
例の3人、と言った人か!
サツキも、あの言葉を気にしてたんだな・・・。
「え?誰だったの?」
「あの人さ、崇さんの彼女の友達なんだって」
あの人か!
以前、聞いていた。
崇さんの彼女も、友達3人で、この習い事に来ていた。
今はその中の1人だけ続けていると。
その人に、私たちの話をしてたんだ・・・。
ちょっと驚いた。
けど、その人たちとの間にも、いろんな事があったんだろうな・・・と想像した。
そうか、サツキとアイが前に言ってたのは、これかもしれない。
白か黒か、ハッキリしろって私は主張した。
けど、それって違うのかもしれないな・・・と思った。 終わり
*****
ここで、お終いにします。
ちょっと最後の方は足りなくなりそうで、つめて書いたので、読みにくかったと思います。すみません。
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