『私に気づいて…』

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2011/06/20 01:28(更新日時)

24歳の私が書く、初めての小説です。


完全な素人ですので表現力不足などはご了承ください。


フィクションですが、内容に不快を感じる方はスルーしてください。


多くの方々に読んでもらい、いつか読者様による感想スレ立ち上げてくれたら嬉しいな…





🍀プロローグ


2010年12月15日(水)…

午後2時…


こんな時間まで何かをすることもなく、ただ起きているだけの私…


洗濯物は3日に一度くらい。彼氏の作業着は夜中にやる。今日の朝9時くらいに干したけど、終わったらまた布団の中に潜る。


暖房使うと電気代もったいないから布団から抜け出せない。


最近は外に出ない…というより、出れない。出たくない。


いつからだろう…




誰とも会いたくないんだ…

No.1485902 (スレ作成日時)

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No.301

そのまま40分くらいコールを鳴らし続けた。



(浮気相手がいても、これじゃ連絡もとれないだろうな…)

と、ひそかに笑ってしまう自分がいた。




ようやくカズくんが電話に出てくれたのは深夜1:30過ぎ。



向こうも観念し、今から家に帰るからと約束してくれた。



帰ってきたカズくんの手にはコンビニの袋…


中身はポカリ、リポD、ヨーグルト…



さりげなくそれを私にくれたカズくん。





なんなの?


こういう小さい優しさが余計に私を混乱させるんだよ…



私のこと嫌いなんでしょ?

偽りの優しさなんていらないよ!






……カズくんのばか。

No.302

家に帰ってきたカズくんを見るのは久しぶり。



しかし、そんな小さな優しさがあってもカズくんはすぐに家を出ていってしまった…



「オレはウメちゃんを見るから、ハナちゃんはお前でがんばって。ウメちゃん連れて実家帰るわ。」



「あっ…そう。」



外にはカズくんの父さん…あのクソ親父が車でカズくんを迎えに来ていた。




よくこんな深夜に…

愚息を迎えにくるよな…

嫁の私は高熱で苦しんでるのに、息子を実家に連れて帰れる神経がイカれてる…


普通だったらさ、

嫁が体調不良の日ぐらいは家に帰ってやれとかさ、

言うでしょ。


ってか毎日家に帰ってやれって言うのが筋なんじゃねえの!?


親としてさ。



まったく本当ダメなクソ親父なことで…。




カズくんはウメを連れて、クソ親父の運転する車で実家に帰って行った…



ウメは起こされて不思議そうな表情をしていたが、久しぶりのパパに会えて嬉しそうだった…

No.303

次の日の昼。



カズくんはウメを連れて帰ってきた。



しかしカズくんの表情がおかしい…



ぜったい何かあると私は直感でわかった。




「どうしたの?何かあったの?」



「う……うん…」



「どうしたの?話さなきゃわからないでしょ?」



「昨日さ…ウメちゃん連れて実家帰ったじゃん…。ウメが家帰ってから泣いちゃってさ…」



「そんで?」



「ウメちゃん…全然泣き止まなくて、夜も寝てくれなかったんだ…」



「あぁそう…。ウメ、カズくんの実家嫌いなんじゃん?」



「うーん…。それでさ、ウメの鳴き声がうるさくて、お父さんがうるさい!眠れないじゃないか!って怒っちゃってさ………」




カズくんは泣いていた。



実の父親に、自分の娘の鳴き声でうるさいと怒鳴られたため、府に落ちない様子のカズくん。



カズくんは泣いているが私は心の底から怒りが沸いた。



孫の鳴き声がうるさい⁉

そのせいで寝られない⁉


はぁ⁉⁉⁉



あいつは本当に人の親か⁉



そんなクソ親父がいる家じゃウメもさぞ悲しかったろうに…


ウメ…そんなクソ親父のいる家が嫌いなんだね…ウメもわかるもんね…ごめんね…ママ、熱でも1人で面倒見ててあげればよかったね…



後悔と怒りに私の心は支配された。

No.304

「ウメちゃん、寝てないし疲れてるから布団で休ませてあげて…」


と、カズくんはウメを私に預けた。




こんな可愛くてまだまだ赤ちゃんなのに、怒鳴るなんてサイテーだな、あのクソ親父…。




ウメを渡され、カズくんはどっか行くんだろうなーと思っていたがカズくんは家を出ようとはしてない。



「どうしたの?」


「えっ…まぁ……。なんかハルちゃん、熱出たり、子供2人の面倒見たりで大変だってわかったから、ちゃんと家にいようかなって…思って…」



「まぁそれが普通でしょ。今までのことは反省したの?また私が怒ったからって家に帰って来なくなるのはダメだからね。」


「うん、わかってる…ごめんね…。」




少しカズくんが反省し、わかってくれたような気がして私は嬉しかった。このまま昔のように普通の生活が送れることを信じた…。



でもさ、少し頭ひねればさ、父親に自分の娘を怒鳴られてバツが悪くなって家に帰ってきただけのことなんだよね…


浮気相手の家に毎日停まるのも実質不可能なこと…男が女の家に毎日停まるのは情けないし、実家にも行きづらくなったから帰れるのは本来の家。



私はそれでも快くカズくんを受け入れた。



ただ、子供たちのためにも、形だけでも仲の良い夫婦に戻りたかったんだ…。

No.305

しかしカズくんとの暮らしは長続きしない…。



私が疑いすぎたのも確かに悪かったんだ…。



家に帰ってきたカズくんではあったが、やはり夫として、パパとして、健全な人間像を求める私。







さりげなくカズくんのケータイを見る。




やはり怪しい証拠がまたあった。




私は尋常でないパニック思考回路になり、また怒りを抑えきれずにカズくんに怒鳴ってしまった。



「なんなのこれ‼⁉なんでまた浮気なんてすんの⁉⁉」



カズくんは悪びれる様子もなく、面倒臭そうな表情で私をあしらう。

No.306

「また大声で怒鳴って…。そういうお前が嫌いなんだよ…わかってよ…」




「浮気されて怒らないわけないでしょ‼あんたわかってんの⁉不倫でしょ⁉相手は何歳よ‼なんなの⁉」




冷静さを失った私はかなり動揺し、自分の言ってることすら何だか訳がわからない…。





「相手は…学生じゃん。コミュニティサイトで知り合ったから。今の俺等の関係について、女側からの意見とか聞いてみたかったから…まぁ結論は俺がすべて悪いんだけどね。」



「学生の女の子にそんなん聞いたって解決できると思ってんの⁉お前どこまでバカなん‼⁉お前に姉ちゃんいるんだから姉ちゃんに聞けよ‼しかも誰に聞かなくてもお前が悪ぃんだよ‼💢根本的にお前おかしいんだよ‼」




「いちいちうるせーんだよ‼そんな言われる筋ねーよ‼もうこんな家いたくねーよ‼出てくよ‼‼」





カズくんもキレて家を飛び出した。

No.307

家を飛び出したカズくんを追いかけ、腕をつかみ止めた。



「あのさ、どっか行くのは構わないんだけど浮気した証拠、あんたのケータイちょーだい。これから離婚するのに必要だし。」




私はもうカズくんとは仲良く暮らせないと悟り、離婚を覚悟したのだ。




「うっせーんだよ‼腕離せよ‼」



「そのケータイがなきゃお前から慰謝料取れねーだろうがよ‼‼よこせよ‼」




「マジしつけーんだよ‼」




………バキッ‼





カズくんはケータイを真っ二つにへし折った…




証拠隠滅。




その残骸を下に投げ捨て、私に背を向けスタスタ歩いていくカズくん…。




奴が証拠隠滅のために自らへし折ったケータイも証拠になるかなと、私は残骸を拾った。




「おめえ何してんだよ‼」



歩いていったカズくんが焦って戻ってくる。




「自分で証拠隠滅のためにケータイを折ったのも証拠になりそうじゃん✨👍」




「バカ言ってんじゃねえよ‼‼」




カズくんは私からケータイの残骸を奪いあげ、そのままどっか行ってしまった…。


どこまでも憎たらしい男よ……




(…………死ね❗)

No.308

それからカズくんは私に姿を見せなかった。



もちろんカズくんから連絡はない。



もうそんなことすら私は気にならなくなった。




ただお金は家に入れてほしいな…と、生活費の心配をしていた。







数日後、カズくんから来たメール…



『市役所から離婚届もらってきて書ける場所書いといて。そしたらそれちょーだい。』





離婚には前向きな気持ちになってはいたが、いざ離婚届をもらいに赤子2人を抱えながら市役所に行ったら複雑な気持ちになった…

No.309

…私は将来が不安で仕方なかった。



これから子供2人をかかえてどうやって生活していこう…




まず、あのローンが馬鹿にならない車をどうにかしなくては…



もし私が働きに行けても、1歳と生後2ヶ月の子供たちを引き受けてくれる保育所なんてない…




私の親…は共働きだから子供の面倒は見てもらえない…

No.310

車を売るにあたって査定をつけてもらったのだが、残りの残債の方が上回り、残高を一括で払わなければ売れないようだ…



そんなまとまった金なんてあるわけない。




苦しすぎるが車は手放すことはできなかった。




月7万円強のローンに保険を合わせると、8万5千円はぶっ飛ぶ。







こんな借金しながら子供2人を育てていけるのだろうか…







いや、車を持ってたら母子手当てなんて申請できないんじゃ……





かといって実家に行っても親は子供の面倒を見れるわけじゃない…

No.311

「あんたはこれから一生かけて子供の面倒を見る必要はない。

まだまだ若いんだし、いくらでもやり直せる。



今回の結婚は1つの経験としてこれからは失敗しないようにすればいい。





…子供の親権はカズにやっちゃいなさい。

あの男はこれで2回目の失敗になるんでしょ?これで野放しにしたらまた女作って…犠牲者が増えるだけ。


ウメもハナちゃんもカズの子に間違いないんだし、子供渡して責任取らせなきゃ!

じゃないとまた同じことの繰り返しになるだけよ。



それに将来、ウメもハナちゃんもカズみたいになったら困るでしょ?



あんたにとってはお腹痛めて産んだ子たちだけど、子供たちを産んだことは忘れなさい…。」





これはすべて母親に言われた言葉になる。




頭がおかしくなるほど私には理解しがたい発言だった。

No.312

実の孫にあたるのだから少しは援助してくれたり面倒見てくれることを期待していたが…





私の母親はウメとハナちゃんのことが可愛くないのかな…




『将来、カズみたいになったら困る』って…






子供はみな純粋無垢で愛しい。



ウメもハナちゃんも私は心の底からいとおしい。




だけど…私のお母さんはカズの血が流れているウメとハナちゃんを心の底から愛せないでいたのだろう…





お母さんの娘として、ウメとハナちゃんの母親として、私は複雑で悲しい気持ちになった…。






なにより…



ウメとハナちゃんを産んだことを忘れることなんて…できないよ…





忘れるわけないじゃん…






あんな可愛い2人の娘…








忘れるなんて…産まなかったことにするなんて…







私の記憶からウメとハナちゃんはいつまでも消えない…










今でも…





あれから毎日、あなたたちのことを想っています。






あなたたちのことを思い浮かべると…

眩しいほどの笑顔のウメがいて、まだ寝返りもできないハナちゃんがいて…






今でもあのときの記憶のままだよ…




あなたたちの成長はずっとあのときのまま…

No.313

そしてさらに追い討ちをかけるように、郵便受けに一通の郵便が届いた。



私の記憶にない、キャッシングの利用通知…




あわてて自分の財布を見たが、カードが一枚足りない。






カズだ…。








あいつが私の財布からカードを盗り、勝手に金を借りたとしか思えない。






カズに鬼電して確認したら、あっさり犯行を認めた。



「暗証番号?お前が考えそうなやつで当たったよ(笑)」




カズは悪びれる様子すら見せなかった。




上限の満額…と言ってもそこまで大金ではないのだが、私にとってはまた借金が重なり、ますます子供を育てるには難しい状況だった…。





私は子供をカズに引き渡す決意を自分の中で燃焼できないまま、そうさせざるをえない状況に納得せねばならなかった…。




カズも『子供の面倒見れないんなら俺が引き取るよ』と言っていた。




カズも子供だけは愛しているようで、そこだけは救いだった。

No.314

離婚届を書き上げ、カズの仕事場に直接持っていった。




パチンコ屋で仕事しているのだから、ホールに行けばカズはいるだろうと思った。




私が離婚届を生身でカズに渡したから他のアルバイトのスタッフや常連客に注目を浴びたが私は構わなかった。



仕事先で浮気した糞野郎に少しでも恥をかかせたかった。




化粧もバッチリし、容姿は悪く言われたことのない私はパチンコでバイトしてる現役の女の子より自信はある。(言い過ぎですね、ごめんなさい。)



そんな私が表情を一切変えずにカズに離婚届を第三者に見えるように押し付けたから野次馬はビックリしただろう。




私の昔の職場でもあったから、知っている昔の上司が何とも言えない表情をしていた。





これだけの行動でも、少しだけスカッとした気持ちになれた。

No.315

この離婚に関しては、私は自分に非がないものだと思っていた。というかそれが当たり前だ。




当然、カズから慰謝料をもらう気でいた。





「慰謝料?なんで俺がお前に払うの?」




「当たり前でしょ❗💢浮気した上に人のカードで借金作ったくせに‼悪いのはあんたなんだよ‼」





「はっ⁉⁉
確かにそうだけど、俺がそうしたのはお前に昔『あんたと結婚しなきゃ良かった!』って言われたからだし。
お前がそんなこと言わなきゃ良かっただけ。あんなこと言われたら家に帰りたくなくなるしお前なんか好きじゃなくなる。

だから離婚原因はお前なんだよ❗」






離婚原因は私である…と一点張りするカズはすでに人間として通用しないようだ。






こんなやつと離婚できて本当に良かったと思えた。








こんなやつと浮気するような女は惨めだな…


カズの次の犠牲者になるだけなのに…。



言葉巧みに女を騙し、むさぼりとれるだけ金を吸いとられ、ちょっと気に障ることがあればすぐに捨てられる…。



追記、低身長でダサい。







そんな男でよければどーぞどーぞ。

No.316

時は5月に入った。



カズに離婚届を突き付けてから、あいつから一向に連絡がない。




もちろんカズから給料も渡されない…。




家賃滞納、車ローン滞納、付け加え税金滞納…




明日食う金も底を尽きてきた…。




金もなければウメもハナちゃんもこれ以上私が面倒見ることなんてできない…。




カズに電話しても『引き取りには行くから…』の口約束のみ。





私は生活に限界が見えた。

No.317

「あのさ、少しくらい金入れてくれない?これじゃ子供たちにご飯食べさせていけないんだけど。」



「は⁉なんで離婚したのに給料渡さなきゃなんねぇの⁉」



「この子たちの親権はあなたよ❗この子たちの食べるご飯買う金くらい出せないわけ⁉」



「いまアパート借りたりするのに金いるから渡す金ないし。」



「あっそ❗でも私もこれ以上面倒見る金ないの‼そんな無責任なことばっかり言って…あんたんところの親に渡してきてもいいの⁉」



「勝手にすれば⁉⁉💢」






私も頭にきた。




明日暮らす金もない私はそれだけでストレスが溜まり、冷静な判断なんてできないでいた。




とりあえず早く働きに行かなきゃ…それしか頭になかった。

その間、子供たちを見てくれるカズの両親の家へ預ける…その程度しか思っていなかったのが失敗だった。




その夜、カズの実家へ連絡し、『これから伺います』とだけ伝えて、ウメとハナちゃん、そして私の母親を連れてカズの実家へ向かった。

No.318

「息子も息子なら親も親よねえ。×が2個つくのにまだ懲りないなんてね…。


親はガツンと言えないのかしらね…。


今回は子供引き取るのに、金もかかるだろうに、アパートなんか借りちゃって…。

親は実家に帰ってこいとも言わないもんかね…。


少し生活が落ち着くまで実家に住ませるもんじゃないのかね…。





車でカズの実家に向かっている道中に母親と話す…。




「まぁ…ウメとハナちゃんには辛い思いをさせるだろうけど…


これもこの子たちの人生よ。


女の子なんだし、ある程度成長したら実の母親に会いに来るわよ。



ハナちゃんはまだ生まれたてで性格はわからないけど、ウメは剽軽(ヒョウキン)でいつもニコニコしてて人当たりいい子だからウメは絶対大丈夫!


ウメはいい子よ!


昔のあんたにそっくりで…誰にでも笑顔で…
本当、あんたにそっくりでこんなに可愛いのにね…


カズがパパじゃなければ良かったのにね…








母親は下を向いて泣いていた。




本当はウメもハナちゃんも可愛く思ってくれてたんだね…





私が男見る目なかったのがいけなかったんだよね…









お母さん…



お母さんの言うことを聞かずに結婚してしまってごめんなさい…。

No.319

お母さんが本当は孫が可愛いと思ってくれていたことに私はウメとハナちゃんを産んで良かったと思えた。



でも…


もうすぐこの子たちは…






私の手から離れてしまうのだ…








ウメは車に乗ってこれからどこかに行けると思っているようでニコニコしている…。



ハナちゃんは大人しく寝んねしている…。





私も生活のために仕事に行かなくてはならないのだが、この子たちを手離すことを冷静に考えたらなんて私は酷い母親なんだろうと気付く…。




いや…


母親と名乗る資格もなくなってしまうのではないのだろうか…





とりあえず生活の確保のため、子供の面倒が見れるカズの実家に渡すだけ…






いや、本当にそう言えるのだろうか…




本当はもうウメとハナちゃんに会えなくなることくらい、わかってたんじゃないのか…






このときは子供たちと離れることは寂しいと感じなかった。




金を稼がなくては…明日から行く仕事でほぼ頭がいっぱいだった。その不安で寂しさがかき消された。





それにカズは慰謝料は払わないと言ったが、カズが作った借金は『俺が借りたってゆう証拠がないだろ。だから俺が返済する義務はない。』と言われたために私が支払う、そのかわり子供たちとはいつでも会える約束をしたのだ。

No.320

そんな中、まだ数回しか行ったことのないカズの実家に着いた。



都内のマンションで、ロビーへ入るには住人がロックを解除しなければ自動ドアが開かないシステム。



まずカズの両親が何号室に住んでるのか知らなかったし…これじゃ入れない。



ちょっと困ってたら中から住人が出てきて都合よく自動ドアが開いたからそれに便乗してロビーへ侵入できた。




エスカレーターに乗り、降りてすぐ左にある玄関がカズの実家。






母親がピンポンを押す。





中から何も状況を知らないカズの母親が出てきた。





私とウメとハナちゃん、それに顔合わせすらドタキャンされて今さら合わす顔がないと言われた私の母親がスタンバっている。

No.321

私「こんばんはー。突然お邪魔してすいません…。」



カズ母「こんばんはー。ウメちゃんにハナちゃんも…どうしたの?」




玄関先で話は進む。





私の母「こんばんは。夜分遅く突然おしかけて申し訳ないです…。実は…」





―私の母親はあくまで丁寧に、下から申す―






私の母「お宅の息子さんが離婚したのはいいんですが、お金を渡してくれないらしいのでハルカと子供たちが生活できないでいます。

親権はそちらにあります。

ですが息子さんは子供たちを引き取りに来ないで、ハルカもお金がないから働かなくてはいけないのです。

うちも共働きですので面倒が見れないのですが、こちらに非があるのを承知で今日は子供たちをこちらのお宅に引き渡しに来ました。」






カズ母「はぁ……。」






奥の部屋にいたカズの父親が顔を出さないまま怒鳴ってきた。



「俺はな!そんな話なら聞かないからな!!」




いい歳こいた大人(定年退職したメタボ親父)がこんな事を言うのだろうか…





カズ母「すいませんねえ…うちの者はガンコでして…」

No.322

また奥から怒鳴り声が聞こえる。


「だいたいな!カズだってアパート探したりしてるんだから引き取れるわけないだろ❗そんなこともわからないでバカじゃないのか‼」







(あー、だんだん殺意が沸いてくる…)








カズ母「でも…急に来られてもねぇ…。」




私「だってあの人(カズ父)定年退職してるんですよね?面倒見れるんじゃないですか?それに今日子供たちを置きに来ることはカズから許可もらったし。」





カズ母「えっ?あの子が?」





私「そうですよ。勝手にしろって言ってたから。」






カズ母「まったくあの子ったら…。」





私「そうやって甘やかして育てたからあんな男になったんじゃないんですか?だいたい今回で2度目の離婚ですよ⁉

親として何とも思わないんですか⁉

親として一度でもガツンと叱ったことあります⁉


前の嫁さんも苦労してますよ⁉あなたたちは真実を知ってますか⁉カズは親にも平気で嘘ついて自分を正当化してるんですよ⁉


今回だって借金はするし、ハナちゃん産まれる前から浮気はするし❗

だいたい自己破産してたなんて知ってたら付き合ってもなかったけど‼






カズ母「息子を悪く言わないで‼‼」






パチンっ❗







私はカズの母親からビンタされた。





「さっきから聞いてれば好き放題言いやがって‼」





ドスっ❗





奥から出てきたカズの父親から腹部に蹴りを入れられた。






私の母親のいる目の前で…。

No.323

私は今まで我慢していたものが一気に込み上げ、理性を失った。











「てめぇらいい加減にしろ‼ふざけんじゃねぇよ‼‼」







私は無意識にクソババアの胸ぐらを掴んだ。




クソオヤジは私に蹴りを入れたらスタスタとまた奥へ消えてった。





「おい‼逃げんなよテメェ‼こっち来いよ‼‼てめぇら人に手ぇ挙げたんだから傷害罪で警察呼んでやってもいいんだぞ‼‼逃げんなよ‼‼」










「やめなさいハルカ‼」







私の母親が止めに入る。






「あんたがここで手を出しちゃダメなの❗こっちは子供たちを預けに来た身よ❗


ここは頭を下げてでも…


私だって悔しいわよ❗」









母親は泣いていた…。










ウメもハナちゃんも…

状況がわかるのか…


可哀想なくらいギャンギャン泣き叫んでいた…。

No.324

「ハルカ…手を離しなさい…。謝りなさい。」





私も悔しくて悔しくて涙が溢れた…。




…クソババアから手を離す。



「申し訳なかったです、すいません…。」








私の母「うちのハルカが申し訳ないことをしました、すいませんでした。


でもですよ?うちのハルカの気持ちもわかってやってください。今までどれだけ悔しい思い、辛い思いをしてきたかを…。


こんな獰猛な娘ですが、そちらの息子さんを信じて結婚し、裕福な生活はできなかったかもしれませんがこの子なりに幸せにやってたんです。


ハルカはお宅の息子さんを最後まで信じていましたが、結果、浮気をされたんです。それがどれだけ悔しいことだかわかりますか?


こういう事にあまり親が口を出すのも良くないことだと思いますが、親あっての子供です。あなた方は息子に無関心なのか甘やかしてるのかわかりませんが、都合のいいときだけ息子をかばい、都合の悪いときだけ知らないふりをする…。


あまり他所の息子さんを悪く言うつもりはありませんが、子は親の鏡です。ああいう話の聞かない父親なら仕方ないようですね。


自分の子供は養護するが他所の娘に手を出す・蹴るなどの暴力を振るったのは事実です。

うちの娘に謝ってください❗








クソババア「そうですね…すいませんでした。」

No.325

クソババア「でも…ガンコなのよ…。うちのお父さんもカズも。」







私「ガンコって言わねえよ❗話の聞けねぇただのワガママなんだよ‼頭わりぃのか⁉⁉」






私の母「やめなさい、ハルカ。」





私「………。」






私の母親「そういうわけで、ハルカも明日から仕事を始めます。お願いするのも変な話ですが、どうか子供たちをよろしくお願いいたします。」




クソババア「そうですね…。わかりました。」







私の母「ウメはもう何でも食べる、いい子です。よく人の話も聞きますし、ダメな事もわかってます。とてもいい子です。

どうか頭ごなしに怒るのはやめてください…。







私「ハナちゃんは風呂に入れましたがウメはまだです。2人ともご飯もまだです。これがハナちゃんのオムツで…哺乳瓶はこの袋に入ってます。」

No.326

クソババア「ハナちゃんは可愛いわねぇ、おめめパッチリで美人さんだわ。うちのお姉ちゃんにそっくり。」






(カズの姉ちゃん、一重だったぞ…)






クソババア「ウメちゃんはママにそっくりねぇ…。」







ウメ一重。わたし二重。


カズが一重。





ウメは不細工だが愛嬌あっていつもニコニコしてるから最高に可愛い。







私「ウメは可愛くないんですか?ウメの一重はお宅の遺伝ですよ?一重でも可愛いです。

ハナちゃんは誰が見てもママ似だねって言います。


前の嫁さんの子供はカズそっくりで、離婚した後も会ったりプレゼントあげてたそうですね。


うちの娘たちには誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントすらくれないのに…。


お宅の車のナンバーなんて前の嫁さんの子供の誕生日だし…。


そんなに私の娘たちが可愛くないんすか?







私の母「やめなさいったら!」






私は精一杯クソババアにメンチを切らした。






私の母「それじゃあどうか子供たちをよろしくお願いいたします。」


私「よろしくお願いいたします。」





深々と下げたくない頭をさげ、ウメとハナちゃんを置いて玄関を出た。

No.327

あれだけキレて気持ちも落ち着いてなかったので、ウメとハナちゃんにきちんとバイバイすることができなかった。




玄関を出るまでウメは終始泣いていた…。





ウメはあの家が大嫌いだったのに…





ごめんね…






涙と鼻水でグチャグチャになったウメの顔が別れ際の記憶に鮮明に残っている…。


ママ…行かないでって、そう言ってるような気がした。







帰り道、母親と2人で静かに話す。





「ウメは…可愛かったね…
本当に…


いい子だよ。」






母親の言葉に涙が止まらなかった。






「でもあんな親だったから納得したね。親が親だからカズもダメだったんだね。
話も聞けない父親なんて初めてだわ。


次に付き合うんだったらまず親を見極めなきゃね。ハルカがまた間違わないように、お母さんが見てあげるわ。









「とりあえず、ハルカも明日は朝早いんだから今日のことは忘れて早く寝なね。」










家に着いた。





私は1人ぼっち。


ガランと静かな部屋…。


もうここにウメのはしゃぐ声やハナちゃんの泣き声も響くことはない。


無造作に散らばっているウメのおもちゃ…


ウメとハナちゃんのベビーベッドや服…



ウメの遊びかけの、おもちゃが…






もう辛くて悲しくてこれ以上は…

涙でケータイがにじんで見えます。


フィクションではありますが、だいたいは真実です、お詫びします。

No.328

🌱第5章🌱 【バツイチの生活】







次の日、早朝に起きて私はお父さんの職場に出た。


自営の内装業。


ほかの業者の男たちに混ざり、作業着を身にまとい、汗を流す仕事はあの悲しみを一時的に解放してくれた。



しかしふとした時に思い出してしまうと、たとえ仕事中でも目から大粒の涙が落ち、それは止まらなかった。



仕事中、1日に3回は涙を流していた。






「お前、昨日向こうの親父に腹蹴られたんだって?大丈夫か?」



「キ●タマ蹴り飛ばしたくなったよ(笑)」



「そりゃ痛えな(笑)」





仕事中、お父さんは私に気遣ったりしてくれたが、それは笑いでかき消された。



無理にでも笑わなきゃまた涙が落ちるから…。

No.329

ウメとハナちゃんがいない家に住み続けるのは言葉では表現できないほど寂しく、切なく、虚しい。




それにこの家に住み続ける理由もない。




光熱費だってかかるし、私の親も実家に帰ってこいって言ってくれた。





ウメとハナちゃんがいなくなってから1週間もしないうちに私は引っ越しを済ませた。



もちろん業者に頼まず、車で地道に運んだ。






元旦那にウメとハナちゃんの必要な衣類や小道具、おもちゃや寝具を取りに来させた。


元旦那はついでにテレビや冷蔵庫なども持ってった。


あとの片付けやそうじ、いらないゴミの処理はぜんぶ私がやった。




「ウメとハナちゃんは?」

「今はお父さんが見てくれてるよ。」


「元気なの?」


「元気だよ。」


「いつでもウメとハナちゃんに会わせてくれるんでしょ?」


「んん、まぁな。」






いつでも会いたくなったら子供たちに会わせてくれる約束、それを今一度確認できて安心した。







「じゃあな、お前も頑張れよ👍」



自分が欲しい荷物を積み込んだ元旦那は別れ際に私の頭をグシャグシャっと撫でてった。






(もう…何考えてるんだかわからないよ…)

No.330

すでに母親の資格なんてなくなった私…それでも子供たちが心配でたまらない。



眠れぬ夜を経験したのも人生初。




不安で、寂しくて、会いたくて…。








もはや子供たちを心配する権利さえ自分にはあるのかと…毎晩、自分との葛藤に苦しんだ。






ウメとハナちゃんと過ごした家を離れるのも、また違う寂しさが沸く。




キレイに掃除し、何もなくなった部屋、リビング、台所…




この家にはもう何もないが、ウメがニコニコして遊んでる姿や、まだまだ小さいハナちゃんが目に浮かぶ。とても鮮明に。



ウメのまだ日本語の言葉にならない声やキャッキャ言ってる声…


ハナちゃんのミルクを欲しがる泣き声…




何もかもこの家に思い出として詰まってる…




私は決して忘れることのない思い出とともに、最後の玄関の扉を締め、鍵をかけた。






『ここは私とウメとハナちゃんが過ごした証の家』

No.331

仕事を始めて2週間くらい経った頃であろうか…





私のイトコのお姉さんが見てしまったらしい。





駅前のお店でウメとハナちゃんと元旦那を…。






元旦那の隣には知らない女の子がいたらしい。








後ほど知ったことになるが、その女の子は仕事先のバイトの子だったらしい。







まだ離婚して2週間なのに!

あんな悔しい思いして離婚したのに!

こっちは元旦那の作った、払いたくもない借金かかえて仕事してんのに!

手離したくない子供を悔しい思いして手離したのに!



ウメとハナちゃんに会えなくてどれだけ辛いか、寂しいか、心配してるか…

この思いの積はきっと私にしかわからないだろう…





なのにノウノウと知らない女と私が産んだ子供たちを平気で並んで歩かせる元旦那が許せない!


またそれがよく頭に想像つくのだ。





悔しい❗



すごく悔しいよ❗





気が狂いそうになるほど悔しい思いをした…。

No.332

ウメ…



ごめんね…



きっと混乱してるよね…





ママがいなくなったり、

寝る家が変わったり、

一緒にいてくれる人が変わったり、

今までいなかったパパと生活したり、

今度は知らない女の人と歩かされたり…




ウメもママ以上に辛い思いしてるんだよね…





本当にごめんね…ウメ…。













ちょっとパパを叱ってあげなくちゃね。

No.333

元旦那の仕事先…私の昔の仕事先の友達と連絡を取り合い、いま元旦那がどこに暮らしているのかが判明した。




それは駅の程近くのアパート。





元旦那に何のアポイントメントもなしに、そのアパートの前で待ち伏せしてやった。






ちょうど昼下がりの午後。



この日は元旦那は休日。





しばらく待っていると…


どっからか歩いて来たよ…あの女ったらしが…。




両手にはオムツやトイレットペーパーなどの日用品の袋をぶら下げてアパートまで歩いていく元旦那。






そこにウメとハナちゃんの姿はない…。

No.334

「ちょっと待って✋」





「あっ…なんだハルカか。」





「あんたマジ最低っ‼‼」




ビッターン❗









私は容赦なく元旦那に平手打ちを喰らわせた。





「目ぇ覚ませ‼‼

アンタもう新しい女と一緒に暮らしてるの⁉

すぐそこの店でウメとハナちゃんと知らない女を歩かせてたんだってね‼仕事先の女の子だってことも知ってるんだからね‼



アンタ…ウメとハナちゃんが可哀想だと思わないの⁉

きっとウメ混乱してるよ⁉


新しいママを作るにしても早すぎでしょ⁉


そんなに新しい女すぐ作らなきゃダメなの⁉







「………。


……ごめん。」




「謝るんなら私じゃなくてウメに謝って‼」




「そうだね…。

でも一緒には暮らしてないよ。」




「じゃあ今ウメたちはどこにいんのよ⁉」



「いまアパートでお父さんが見てくれてる…。」




「あんなヤツ1人で大丈夫なの⁉あいつウメ嫌いなんでしょ⁉ウメが泣くとイライラしてんだしさ‼」




「………。仕方ないけど見てもらってる。」




「…私はねぇ‼

……私は…


……私は



子供たちが心配でたまんないんだよ❗



ハッキリ言ってあんたに親権渡したくなかったよ❗


お前が責任とって借金払うんなら子供たち手離さなくて済んだのに‼悔しいよ‼

No.335

「あのさ…ハルカ……」



「んだよ⁉💢」




「今さら無理なのかもしれないけど……



また昔みたいに一緒に暮らせないかな…





元旦那の目からは涙が落ちた。








(………はぁ⁉💧💧

………コイツ…

もう新しい女にフラれたのか?
)





「バカ言ってんじゃないよ‼‼

無理っ‼」





私は元旦那の胸ぐらを掴み、再度平手打ちした。





「アンタみたいな旦那はもうウンザリ‼


しかも離婚して1ヶ月も経ってないのに意味わかんねぇし‼


そういうことは離婚する前に気づくべきだったね‼

バカか⁉」





「………そうだよね…。


やっぱ上手く行かなくてさぁ…。


今さらハルカの大切さに気付いたよ…。



ハルカの言う事、聞いとくべきだったね…。」





「とにかく‼

ウメとハナちゃんを泣かせるような事したら私が許さないからね‼‼






私は都合のいい女になんかなりません✋

No.336

元旦那にキツくあしらい、気丈に振る舞って御灸を据えてやった。





これで少しはアイツも反省してくれただろうか…







ほんの一目だけでいいからウメとハナちゃんに会いたかったが、あのクソオヤジがいるみたいだし私はすぐ帰った。




会いたいときに会えるんだし💡…









でもね…


正直不安でしかたなかった。






ほんの数週間、1ヶ月間会えなくて…



ウメが私のこと忘れてしまうのではないだろうか…







ウメ…


ハナちゃん…










あなたたちのママは
わたしだけだよ。










忘れないでね…

No.337

それから数日後。


元旦那から連絡が来た。



あいつから連絡してくるのは初めてのこと。





聞けば、保育園で使うウメの赤白帽子がどこに売ってるのかわからない…そうだ。




ウメに会いたいのもあって一緒に買いに行くことにした。






元旦那はクソオヤジが乗ってる車で来た。








ウメは大人しく助手席でシートベルトを着用してる…可愛い(♥´∀`♥)








「ウメー❤

元気してた?💡ママだよ🍀わかるかな?💦」





助手席に座ってるウメを私は抱きかかえた。






久しぶりの愛する我が子。





その温もりは変わらず、あたたかい。







ウメは表情が曇っている…混乱してしまっているのだろうか…







でもウメを抱いている私の体を、ウメもピタッと両手で私を抱きかかえてくれて、それは離さない。






(ウメ…

とっても寂しかったんだね…


本当にごめんね……

)





ちょっとウメの髪型が変わったことに気付く。




「俺がウメちゃんの髪切ったんだよ。うまいでしょ?」



「うん…ちょっと印象変わったね、ウメ。ちゃんとご飯は食べさせてるの?」




「ウメは本当よく食べるね💦ちゃんとバナナ一本は食後に食べさせてる😄」



「そう…ならよかった…。」




ハナちゃんはアパートでクソオヤジとお留守番だそうだ。







私はウメを抱っこしたまま……お互い離れたくなかったのが理由だけど……助手席に乗り、車は近くの商店街へ走らせた。

No.338

ウメと一緒に買い物した時間はあっという間に終わった。



赤白帽を試着させたウメの姿は少し成長したようにも見え、また、この姿を毎日見守ってあげることができない劣等感が募った。








買い物が終わって別れ際、ウメを車の助手席に座らせたのだがウメは始終寂しい顔をしていた…。




(ママ…行かないで……)




そんな表情をウメは見せた。




私は泣きそうになった。





「ウメ、ばいばい…またね…。」





元旦那が運転する車は走り去ってしまった。







ウメはウィンドウ越しからずっと寂しそうな目で私を追っていた…。






(ウメ…ごめんね…

また…


会えるからね……)







ずっと抱っこしていたウメの温もりがまだ残っている。





それが余計に私を寂しくさせたのだった……。

No.339

お父さんの仕事は時にはハードだった。



梅雨の6月。

朝からどしゃ降りの雨に撃たれながら材料の搬入は過酷だった。



道具だって半端なく重たい。




お父さんは腰を痛めてるので重い荷物は私が持つ。






荒現場のときには石の裁断の現場で粉塵が舞うなか、視界が悪かったり、むせたりしながらの作業になった。おかげで髪の毛は真っ白。鼻の中は真っ黒。





大手ゼネコンが入る現場では現場監督や若い作業員が私を舐めるように見てきた。

No.340

いろんな現場に行った。





横浜にあるウェディングチャペル、みなとみらいのビル街、中学校、ズーラシア…。



千葉の地下の飲食店、ショッピングモール、市役所、房総半島の先端の海が見える小学校…。




都内の幼稚園、あの有名な早稲田大学、老人ホーム、中学校、工場のプレハブ…。




また鬼怒川に新しくできたホテル三日月や、沼津にある港など、現場は様々だった。

No.341

お父さんの仕事は大変だった。





梅雨が終わり、夏が来る。



暑い。


とにかく暑い。




内装だから風がない。風の循環がない。



グランドオープンするラウンド1の現場なんて窓が一切なく、また材料の搬入が外階段を使って4階まで上ったから死ぬほど辛かった。






しかしそれはやりがいがあり、物を作った達成感が味わえた。





仕事を覚えて一人前になって、将来はお父さんと二人三脚で仕事がしたいと思うようになった。

No.342

私はまだ見習いだから日当は5千円をもらっていた。


お父さんの会社だが、娘だからって高給料はもらわない。ちゃんと働いた分の妥当な給料をもらった。




時々はウメとハナちゃんが頭によぎり、何度も涙を流しながら仕事した。





きっと他のアルバイトの方が稼げたハズだが、他所の会社で仕事ができるまで精神は安定していない。





お父さんと一緒に仕事して汗水涙を流して稼いでも、その金は借金へと消えていった…元旦那の。





それでも、好きなときに子供たちに会えるのを励みに毎日わたしは頑張ったのだ。





…そして7月が過ぎ、8月になる。

No.343

ウメに最後に会ってから3ヶ月も経ってしまった…。



その間、元旦那と連絡は一切してない。





途中で何度も何度も子供たちに会いたくて元旦那に連絡をしようと思ったが、怖くてできなかった…




そりゃあ毎日でも会いたいが、私と会うことでさらにウメが混乱してしまうような気がしたから…。




それに、たまに会うことによって、会えなくなる期間はウメに余計に寂しい思いをさせてしまうような気がしたから…






自分でもどうすることが子供たちにとって一番なのかわからずにいた…。

No.344

それでも…





それでも…







やっぱりウメとハナちゃんに会いたい。






日に日に成長する娘たちを1日足りとも見逃したくはないんだよ…。












そう思い立って私は元旦那へメールをした。






『ウメとハナちゃんは元気にしてる?今度、休みが合ったときでいいから、都合が合った日でいいからウメとハナちゃんに会いたい。連絡待ってます。』




















しかしいくら待っても返信は来なかった…。

No.345

数日後、わたしはたまらず元旦那に電話を入れた。






プルルルー…プルルルー…


「お客様がお掛けになった電話は現在……」







電話のアナウンスをすべて聞き終わる前にわたしは泣いてしまった。







これですべてを悟った気がした…。











もう元旦那には新しい家族ができたのか…




私にウメとハナちゃんを会わせたくないのか…






私に邪魔されたくないのか…












やっぱり電話しなきゃ良かったと後悔するばかりだった。











会いたいときにいつでも子供たちに会わせてくれる…なんて…





また約束破られちゃった。








もとから嘘ばかりつく元旦那だったから私はこれ以上深入りするのも無駄だろうと感じた。












でも…

なんかやるせない。



少し怒りにも似た感情も込み上げた。

No.346

私は…




あの娘たちにとって…





なんだったのだろう…
















私は…




あの娘たちのために今まで何かしてやれたのだろうか…
















私は…



あの娘たちにとって、【ママ】だったのだろうか…












教えて…


ウメ、ハナちゃん。


















私は…




ママは…
















あなたたちの何だったの?…

No.347

私のお母さんは、元旦那と連絡が取れなくなったことに関しては何にも思ってなかった。




「今さらなことじゃない?どうせまた女作ってるんでしょうよ…。ウメたちには可哀想だけど、新しいお母さんができると思えばハルカはウメたちに会わない方が子供たちのためにもなるのよ。


…辛いだろうけど、ウメたちには今後会わない方がいいんじゃない?」









やっぱりそうなのかな…。





私はウメとハナちゃんにとって、ただの産みの親でしかなれなかったのかな…






でも…


そんなことない!





本当はずっとずっと、ウメとハナちゃんのそばにいたかったんだよ。







私はただ普通の家庭を築きたかっただけ…。





それを崩した元旦那が許せない。


でも、そんな元旦那を選んでしまったのも私の責任。





泣き寝入りするしかできないのかな…。

No.348

「でもね、ハルカ…。

ウメもハナちゃんも娘、女の子なんだから、いつかは実の母親に会いに来る日がくるよ。その日までの辛抱だよ。いつになるかわからないけど、絶対ウメたちは会いに来るよ。」





「でもさー、カズが嘘ついて私が悪者にされて離婚したってウメたちに言うかもしれないじゃん⤵そしたらいくら実の母親でも会いに来ないよ…。」




「まぁそうなるかもしんないけど…



でもね、アンタに1つだけ誉めてあげる。

ウメがあんなによくニコニコしてたのは、アンタの育児が良かったからじゃないかなって思う。

あんなにニコニコの赤ちゃんなんてそうそう見ないしさ😄

確かにウメは一重でブサイクだけど、あんだけ笑顔でいたら可愛いもんだよ。

一重じゃなければアンタのちっちゃい頃にそっくりだしね。コロコロした体格、クリンクリンの髪の毛、なによりあの笑顔がアンタと一緒だから。

アンタの育児だけは良かったと思うよ、お母さんは😌





「そうなの?」




「そうだよ😌

それにウメは物覚えもいいし、人の表情もよく見て状況判断もできるし…

でも逆に言えばウメは我慢してたのかもね。

ウメは本当に我慢強かったよ。

ウメはいい子だったよ…。」





なんか母親と話してしんみりする空気は苦手だから私は言葉に詰まってしまった。





でも、お母さんに育児を誉められたのは素直に嬉しかった。



お母さんも心底はウメとハナちゃんが大好きなのだ。




私はそれだけであの娘たちを産んで良かったと思えた。

No.349

私はただひたすらに仕事した。




がむしゃらに頑張った。





女を捨てたように、男に混ざり仕事した。








それは愛するウメとハナちゃんに会えない寂しさを紛らわすため…?









それとも、いつ会えるかわからない子供たちを忘れるため…?










元旦那に怒りを向けられない矛先を仕事で紛らわしてるため…?















違う。














いつかウメとハナちゃんに会える日が来るのを楽しみにしてるから。












アイツの借金をまず完済し、そしたらウメとハナちゃんたちにいつ会えてもいいように貯金するんだ。

















いつか、あの娘たちに会える日を夢みながら…

No.350

そんな中、私は自分の貪欲さに気づく。それは女としての欲なのだろうか…。







(……。


なんか寂しい…。)






その寂しさは娘たちが傍にいない類いではない。









実家に戻って家族と一緒にいても、なんか心安らぐ空間がない。





そりゃそうだ。


高校生のとき、家に自分の居場所がなくて家出した私。



実家に戻っても私は出戻りの身分。肩身が狭い思いをしてた。



自分の飯や風呂掃除、家族で使う日用雑貨くらいは私が用意したが、なんか家族が他人みたいな感じがするほど居心地が悪かった。









私は…


自分の本音、素の自分、ありのままの私をさらけ出せるパートナーが欲しいと思った。



それは私の欲求を満たし、一緒にいて気を遣わない関係の人。

私の家族では満たしてくれない、私だけに愛情を向けてくれる人。

なにより、いつも私の傍にいてくれる人…。


私がいつも笑顔でいられる人…。


今の私に心安らぐ、大切な人が欲しい…。

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