『私に気づいて…』

レス381 HIT数 81791 あ+ あ-


2011/06/20 01:28(更新日時)

24歳の私が書く、初めての小説です。


完全な素人ですので表現力不足などはご了承ください。


フィクションですが、内容に不快を感じる方はスルーしてください。


多くの方々に読んでもらい、いつか読者様による感想スレ立ち上げてくれたら嬉しいな…





🍀プロローグ


2010年12月15日(水)…

午後2時…


こんな時間まで何かをすることもなく、ただ起きているだけの私…


洗濯物は3日に一度くらい。彼氏の作業着は夜中にやる。今日の朝9時くらいに干したけど、終わったらまた布団の中に潜る。


暖房使うと電気代もったいないから布団から抜け出せない。


最近は外に出ない…というより、出れない。出たくない。


いつからだろう…




誰とも会いたくないんだ…

No.1485902 (スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿制限
スレ作成ユーザーのみ投稿可
投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.251

よく【惚れた方の負け】と聞くのだが、当時の私は負けていたのかもしれない…。【負け】というより、カズくんより一歩引いていた生活をしていた。




いつもカズくん優先にしてた。


それはカズくんの笑顔を見ていたいから…。



たまにしか怒らなかったカズくんだが、もうカズくんを怒らせたくなかった…。






カズくんは嘘ばかりつく人だったが、私はそれでもカズくんを信じた。いつかカズくんが正直な人になってくれると信じて…。




【信じられると嬉しいし裏切れない、だから信じる】


この言葉を頭の隅に入れ、私はカズくんを信じ続けた。

No.252

出産予定日も近づいてきた3月上旬。



3月9日の予定日を過ぎても陣痛の兆候は見られなかった…。



初産だから多少予定日を過ぎても私は何とも思っていなかった。



そんなのんきに過ごしていた3月17日の夜、眠りにつこうと布団に入ったら腹部が軽く痛み出した。



まだまだ痛みは軽いし大丈夫だろうと様子を見ながら寝ていたのだが、時間毎に増す痛みに急に不安に襲われた…。



寝ていたカズくんも私を心配してくれて、産婦人科へ入院する荷物を車に詰め込み、2人で深夜に産婦人科へ向かった。



まだまだ子宮口は狭く、すぐに赤ちゃんも産まれないのでカズくんは家に帰っていった。





私は定時間毎にくる痛みで眠れなかった。



明け方につれてその痛みは耐えられないものになっていく…。



それは私が今まで経験したことのないもの。



うめき声をあげ、冷や汗をかいては一旦おさまる痛み…合間に眠気が襲うが、それは再度くる痛みにかきけされるのだ…。

No.253

私がいた陣痛室には先にもう一人の妊婦さんも陣痛と闘っていた。


その妊婦さんは2回目の出産だそうで陣痛には慣れていた。私みたいにうめき声なんてあげていない。





日付は3月18日。


朝7時に朝食が配当された。



お腹は空いていなかったが看護婦さんは食べろと言うので少しづつ頂いた。



食べているときにも陣痛は襲ってくる…そのたびに口に入れたものが痛みに耐えきれなく口からボロボロ落ちてしまった…。




それを見ていた看護婦さんが『あんたしっかりしなさいよ!!そんなんじゃ母親になれないわよ❗』と私に活を入れた…。




出産ってこんなにツラいものだったなんて…。



さらに時間が経ち、痛みも表現できないものへ変わる…。



うめき声だった私が、今度は絶叫するほどになってしまった…。




昼になっても子宮口はまだ小さかった。



私の絶叫があまりにもうるさく、看護婦さんも手に追えないほどになってしまっていた。看護婦さんは私の母親を呼んだ…。それと一緒にカズくんも来てくれた…。



「あんたうるさいわねぇ💦陣痛は痛いものだと思えば少しは楽よ!!」



…母親は私に気丈に振る舞い、さりげなく出産費用を渡してくれた…。そして少ししたら帰ってしまった。


(お母さん…ありがとう…。)






カズくんは私のとなりに寄り添ってくれた…。



大好きなカズくんが隣にいてくれるだけで心強かった…。

No.254

そして午後1時には、一緒の陣痛室にいた妊婦さんが無事に赤ちゃんを産んだ。オギャーオギャーと元気な赤ちゃんの声が聞こえた…。




(私も早く産んで痛みから解放されたい…。)





午後3時ごろに、わたしはようやく分娩室へ移動できた。




そこからが地獄のようだった…。



痛みがピークになり、その度に絶叫していた私は汗が止まらなく、疲れはて、意識が遠退きそうになっていた。




(もうこんな痛みがまだ続くなら死んでしまいたい…。)




たまらず看護婦さんに無痛分娩をお願いしたら、『もうすぐ産まれるんだし我慢しなさい❗そんな痛みも経験しないで赤ちゃん産もうなんて母親になれないわよ❗最近の若い娘は…。』と言われてしまった。




(もう本当死にたい…)

No.255

叫び声をあげる力も無くなってしまった私は、半分、生きている心地がしなかった…。





午後5時すぎ…

ようやく先生が分娩室に来てくれた。




子宮口は全開、間もなく赤ちゃんが産まれるらしい…。



1分間隔を切った陣痛…、そのタイミングで助産婦さんは『いきんで下さいねー。』と言う。




(『いきむ』って何…?)



いきむことを、具体的にどうしていいかわからずに、よくドラマ等で見る出産シーンを思い浮かべ、かたち的にいきんでみた。



「もっと強くいきんで下さいねー。」



「いきむって…何したらいいんですか…?」




息を切らしながら助産婦さんに聞く。




「お腹の下の方に力を入れるんですよー。はい、次の陣痛でいきみましょうねー。」

No.256

❗❗❗💦



自分なりにいきんでみたが、赤ちゃんは少しだけ出てきた感じがする。




「はい、次の陣痛で赤ちゃん産まれますからねー。」



❗❗❗‼‼‼💦



そのとき、先生が「ちょっと狭いから切りますねー。」と言ってきた。




『ジョキンっ』という音とともに、ズルッと赤ちゃんが産まれた…。



それは痛みからやっと解放された瞬間で、とてつもない達成感と安堵感が募った。



赤ちゃんも元気よく泣いてくれた。




「はーい、可愛い女の子だよー。」




まだ少し血のついていた赤ちゃんを見てビックリした。




本当に小さい赤ちゃんが、精一杯震えながら泣いていた。




こんなにも力強く赤ちゃんは産まれてきてくれたのだ…。



自分の産んだ初めての赤ちゃんは本当に小さく感じた。



陣痛は酷だったが、赤ちゃんを見るなり、産んでよかったと心から感じることができた。

No.257

赤ちゃんを見て一息ついたと思ったら、先生は先ほど切った部位の縫合を始めた。


周囲に麻酔が打たれるのも痛かったが、その麻酔が効く前に縫われいたので泣きそうになった。






入院は5日間。



毎日カズくんは私と赤ちゃんを見に病院に来てくれた。



しかし後になって発覚したのだが、私が入院中にカズくんは元嫁さんと連絡を取り合っていたのだ。何の用事かわからなかったが、出産し、入院中の大切な時にコソコソやられたのは残念だった…。

No.258

退院日にはカズくんが迎えに来てくれた。



春の兆しが降り注ぐ日だったが、まだ少し風は冷たく感じた。




赤ちゃんの初めての【お外デビュー】にはちょうどいい天気だったろう。






産まれてきた赤ちゃんはカズくんに似ていた。目が一重なところがパパそっくり。


あれだけ苦労して産んだ赤ちゃんが私に似ていなくて少し残念な気もした…。




それと同時に『今度は私にそっくりな赤ちゃんが欲しい』と思った。



あんなツラい陣痛は2度とゴメンだと思っていたが、私に似ている子供が欲しくてたまらなかった。




それにしても私の第1子はカズくんに似すぎていて笑えた。



誰がどう見ても『パパ似ですねー。』と口を揃えて言うのだ。

No.259

5日ぶりに家に帰宅したが、体はまだ自由が利かなかったが、掃除に洗濯と私は頑張った。家にいるとやるべきことはたくさんあるのだ。



市役所に出生届も出しに行かなくちゃ…。



赤ちゃんの名前はすでに決まっていた。



カズくんが名前の響きを考え、私が漢字をあてはめた。



※仮に、仮にです!
赤ちゃんの名前を【ウメ】とします。




産まれてきたばかりのウメに3時間ごとにミルクやらオムツを代えるのだが、夜も眠れないのがツラい。まぁこれも2ヶ月くらいの辛抱だ。



幸い、ウメは無駄に泣いたりせず、多少の騒音でうるさくてもスヤスヤ眠ってくれた。なんて手のかからない子なんだろう。

No.260

ウメの風呂は、カズくんが進んでやってくれた。



慣れた手つきでウメの体を洗ってくれた…。



それを見る度に私の心は少し痛んだ…。




(きっと元嫁さんとの子供も毎日風呂入れてあげてたんだなー。)




(お願いだから、元嫁さんとの子供さんとウメを照らし合わせないで…カズくん。)




それにカズくんは私よりウメの面倒を見てくれた。



仕事から帰宅すれば、ウメに寄り添ってくれていた。



(そんなに赤ちゃんが好きだったんだね…)

No.261

赤ちゃんが産まれたという知らせを受けたカズくんの両親はすぐさま駆けつけた。


産まれてすぐにカズくんが連絡をいれた。



入院2日目、他の親戚のだれよりも早く赤ちゃんを見に来た。カズくんのお姉さんも来てくれた。



カズくんのお姉さんはすごく大人しそうな女性だった。1歳半の男の子の息子さんも一緒にきてくれた。旦那さんは新潟でお留守番のようだ。




退院して2週間ほど経ってからもカズくん両親とお姉さんはウメを見に来た。



結婚してから何にもなかったが、赤ちゃんが産まれたとたんに会う機会が増えた。






(孫が産まれた途端に頻繁に来やがって…)




私は心の中でカズくん両親を嫌っていた。

No.262

私の両親と顔も合わせないのに、産まれたウメに会いに来るカズくんの両親が憎らしかった。



孫が産まれたのだから『今からでも構いませんので私の両親と会っていただけませんか?』と、下から丁寧にお願いしても『今さら合わす顔なんてない』と言われてしまうのだった…。




私の両親も『孫が産まれても向こうの両親は会おうとしないで💢』と激怒していた。





そんな私の母親は、産まれてきたウメを心から愛してるようには見えなかった…。


私の母親からしたら初孫にあたるのでとても喜んでくれると思っていたのだが…ウメの容姿はカズくんにそっくりなので、それが母親には気にくわなかったのだろう…。



『はるかに似たら大きな二重のお目目になってたのに💢あんなカズに似ちゃってさ💦…』




私の心は痛んだ。


実の母親に、一生懸命産んだ我が子を批判された…。



『きっとウメも将来はカズやカズの親に似て非常識な性格になるだろうね…』



母親はどこまでウメをけなすのだろうか…




見た目は確かにカズくんそっくりだが、まだ性格や将来なんてわかりっこないのに…。



まだまだ無垢な可愛い赤ちゃんなのに…。






実の母親に何と言われようがウメは私が産んだ娘。私だけがこの子を守っていかなくちゃ…ね……。

No.263

このころ、生活は本当にキツキツだった。



何より車のローンが高い。



それに去年、私がフルでバイトしていたからその分の税金が高すぎた。



ガソリンなんて入れる金ない…。


いっそ車を売った方がいいのかと感じたが、売ったところで差額がついてローンが残り、一括で払えないから無理だった…。



とてもウメのミルクやオムツや服などを買う余裕がない…。



自分たちの食事も危なくなっていた…。



米は買う余裕もなく、カズくんのお姉さんの新潟から譲ってもらったりして何とかしのげた。




ウメのオムツなどは、私の母親が助けてくれたのだった…情けない…。




母親はあれだけウメをボロクソに言うのだが、孫は孫……ウメに必要なものを買ってくれるのだ…。

No.264

こんなに生活が厳しいのだから、カズくんの両親に仕送りするのも命取りになる…。



私はカズくんに仕送りをするのを止めてもらうように頼んだ。


『うちの生活が苦しいのはわかるけど、兄弟で俺だけ仕送りしないわけにもいかないし…』



そりゃそうだ。



しかし現実問題、自分たちの生活が苦しいのに、それを強いられても仕送りをする理由などあるのだろうか…。こっちは乳のみ子だっているのに…。



それにカズくん両親はさりげなく裕福な生活をしているのに…。



ついこの間は新車を購入したらしく、さっそくそれに乗ってウメを見に来たのだし…。




数日して、カズくんは『仕送りはしなくても大丈夫になったよ。』と言っていた。





(よかったー、これで少しは生活楽になれるかな…)

No.265

ウメが産まれて1ヶ月が経ち、ウメはとても太くなった。ミルクをよく飲んでくれるのだ。



ちょうどお宮参りをする時期なので、私の母親はウメのために立派な着物を用意してくれた。



もちろん、カズくんの両親は呼ばなかったし、向こうもお宮参りについては何にも言ってこなかった。





生後100日のお食い初めのときだって同じだった。



うちの両親は祝ってくれたが、カズくん両親は何も連絡なし…。



孫のイベントのときはうちに来なかった…。別に一緒に祝ってほしくなんてないが、それはそれでムカついた。




それでもウメはすくすく成長していった…。

No.266

日に日に太っていくウメは、昔見た私のアルバムの中の【私】に似ていた…。



色白でコロコロ太っていて、いつもニカニカの眩しい笑顔を振りまいていた、昔の写真の【私】…。



それがお目目が一重になっているだけの目の前にいるウメは私の分身と言えばいいのだろうか…。




ウメはこのころは本当にいつもニコニコしていて、私が喋りかけるといい反応を見せてくれたのでたまらなく可愛かった。




ウメの4ヶ月検診のとき、診てくれた先生が『この子は運動発達が著しいねー。』と言っていた。



私にとっては初めての赤ちゃんなので何とも思っていなかったが、ウメは4ヶ月で腹這いになり起き上がろうとしていた。



5ヶ月ではハイハイもでき、すでに補歩器で遊ばせていた。



つかまり立ちもすぐできてしまった。



しかしここからの二足歩行にウメは悪戦苦闘していた。

No.267

専業主婦になり、毎日ウメの面倒を見るようになっていくうちに感じたのだが…夏になっても生理は来なかった。



ウメは完ミなのでそろそろ生理が来てもおかしくなかったのでまさかとは思っていたが…





また妊娠していた。




予定日は来年2月。




ということはウメが1歳の誕生日を迎える前に新しい命が誕生することになる…。




生活が厳しかったが、妊娠したのも嬉しかったので次の出産に前向きでいた。



ウメの子育てが一段落して…またバイト復帰して……また妊娠してバイト休むよりは合理的かなと思った。

No.268

そして秋になり、ウメの離乳食も進んでいた11月のこと…




カズくんの元嫁さんが養育費が欲しいと言ってきたそうだ。



この期に及んで今さら何ですか…と思った。



こっちだって生活厳しいし…。




カズくんが元嫁さんと連絡を鈍っていたので、私はたまらずカズくんのケータイを取り上げ、怒りのまま元嫁さんに電話をかけた。




ープルルルルーッ…ガチャ、




「あっもしもしー、初めまして、カズの今の嫁ですが養育費払えません、うちも赤ちゃん産まれたんでー。

ってか借金作ったのそっちなのに今さら養育費もらおうとかって何なの⁉💢」




「はっ⁉⁉何の話⁉💧借金って何⁉⁉」




元嫁さんは突然の私からの電話と、私の言っていることが何なのか理解できないでいるように感じた。



私も『??』と感じ、電話口でちょっと沈黙が続いた…。



それに気付いたカズくんがすかさずケータイを取り上げ、通話を切ってしまった。



『勝手なことすんなよ❗元嫁のことは俺が片付けるからお前がしゃしゃりでるなよ❗』



『カズくんがもたもたして連絡しないから私がしたんでしょー❗だいたい元嫁さんは借金作ってきたのに養育費ももらおうなんて図々しいのよ❗その借金でカズくんは自己破産したのにさ💢』



『とりあえず、もうこの件は俺が片付けるから、はるチャンは安心して…。』



『わかった…。』




私はカズくんを信じようとしていたが、電話口で聞いた元嫁さんの『借金って…??』の反応が気にかかって仕方なかった…。

No.269

私はどうしても元嫁さんのあのときの反応が気になり、カズくんのケータイから元嫁さんの番号をメモし、カズくんの仕事中に元嫁さんに電話をかけた。




カズくんの両親が元嫁さんについて何か言っていたが、『あの子はちょっと精神が異常でね…話がわからない子なんだよ。あの子がちゃんと子育てできるのか不安でね…。』と、ボロクソに言っていた。




しかし、電話に出てくれた元嫁さんは至って普通の女の子だった。私より1つか2つ歳上で、話し方からして落ち着いてしっかりした女性に感じた。










そして私は元嫁さんから本当の真実を聞かされた…。

No.270

元嫁さんが言うには、カズくんとカズくんの両親はとんでもなく嘘つきみたいだ。



話を聞くと、元嫁さんもカズくんとの結婚生活はかなり厳しかったようだ。元嫁さんもカズくんの給料の詳細はわからず、毎月の生活費には苦労していたらしい…。


しかし子供も産まれ、元嫁さんは苦しいながらも頑張ったらしい。


そんな中、カズくんが新しい車を買いたいと言ってきたそうだ。生活費が足りないのに新しい車を欲しがるカズくんを元嫁さんは止めたらしい。当たり前のことだが。



しかしカズくんは車を買い、それにつけるセキュリティも無断で取り付けたらしい。セキュリティで30万もしたそうだ。


そのくせすぐに盗難…。


ろくに生活費もくれないカズくんに元嫁さんはしびれを切らし、離婚したらしい…。




そして私がカズくんから聞いた、元嫁さんの作ってきた借金の件…


これは実はカズくんが自分で作って来たものらしい。パチンコで負けては金を借りてきたんだと思うよと元嫁さんが教えてくれた。いろんな金融会社に手当たり次第に借りていたらしい…。

No.271

メッチャ騙された‼‼



興奮がおさまらず、まだ頭の中で話の整理もつかず、私は怒りに満ちていた。








カズくんの言ってたことは全部嘘だった‼




悪いのは元嫁さんじゃない‼


カズくんじゃん‼‼‼








元嫁さんを悪者にしたてあげ、自分はさも被害者かのように、かつ自分のことを棚に上げて私に笑顔を振りまいていたカズくんが許せなかった。



かといって嫌いになれなかった…。




私はカズくんに惚れていたからかな…。




今となってはこんな男に惚れる理由なんて何一つないのだが…。

No.272

私はたまらずカズくんの親に怒鳴り付けてやりたかったが、あいつの親とは話したくもなかったので、まだ話のわかりそうなお姉さんに電話をかけた。




カズくんが今まで嘘をついていたことを私は赤裸々にお姉さんに喋った。




『えー。カズがそんなことを…。それは酷い…。カズ病気なのかな…いくらなんでもその嘘はないよ…。』


お姉さんも絶句していた。



お姉さんと話が進むにつれ、また色々なことがわかった。




まず兄弟で親に仕送りなんかしていない。そんな話なんてないと…。

今まで仕送りとしてた金は全部パチンコでスっていたのか…そんな想像、怖くてできなかった。



それにカズくんの兄さんは、カズくんと折半して車なんて買ってないらしい…。そもそも兄さんは免許も持っていないみたい…。



そして兄さんは子供なんていないし結婚もしていないらしい。



カズくんが一人暮らししてた場所に、家族全員で住んでたなんてあり得ない、あそこには住んだことなんてない…と言っていた。




借金の話をお姉さんに伝えると、お姉さんも絶句していた…。




『ちょっと待ってね。その話はあまりに深刻だから、うちのお父さんに相談してみるわ。そんなカズとハルカさんも一生いるには辛すぎるものね…。何か変わるわけではないと思うけど、とりあえず待っててね。』


と言われた。




数日経って、カズくんのお父さんから電話がきた。


『その件については、私たちが何とかするから、ハルカさんは何もせずに待っててくれ。』




???



カズくんの言葉にそっくり…。

No.273

カズくんのお父さんが待っててくれと言うので、私は待った。



しかし連絡なんて来なかった。




放置されてムカついたので、私は元嫁さんと何度も電話していた。




元嫁さんもカズくんとの苦労は耐えなかったと言う。



カズくんに新しい彼女ができたと聞いてはいたが、結婚し、赤ちゃんができたとは聞いてなかったようだ。




『カズもダメな人間だったけど、新しい彼女と一緒に上手くやっていってるもんだと思ってたけど…やっぱりダメだったみたいね…。』


と言っていた。




元嫁さんが作った借金ではないし、離婚原因はカズくんだから当然養育費は求めていたらしい。…当たり前だ。


だから毎月養育費を要求していたことになる。だからカズくんはたまに元嫁さんと連絡を取り合っていたわけか…。




なんだか元嫁さんと話をしていくうちに意気投合してしまった。





最後に元嫁さんは私にこう忠告してくれた…



『あいつら家族はホントあてにしないほうがいいよ。私も離婚するとき、待ってくれって向こうの親父に言われたけど結局何もしてくれなかったもん。あと、お姉さんは話のわかりそうな人だけど、結局は役に立たないからね。あいつら家族は全員嘘つきだから。』

No.274

待っても連絡をしてこないカズくんのお父さんに『いつまで待ってればいいですか?』とメールを入れたが、『いま状況を確認してるからもう少し待ってくれ』と言われた。





状況はわかりきってるじゃん‼




親なんだから息子にガツンっと言えないの⁉

多額の借金作って自己破産して、それも知らないで結婚した私は何なの⁉

しかもそれを元嫁さんに擦り付けて‼





私はもう、あのクソ親父はほっといた。




私は怒りがおさまらず、仕事から帰ってきたカズくんに真実を言い、

「すべてがバレてるんだよ⁉こんなこと知ってたら私はアンタと結婚しなかった‼

アンタなんかと結婚するんじゃなかったわよ‼‼‼」



と怒鳴ってしまった。





そうしていても、ウメやお腹の赤ちゃんはどんどん成長していくのだった…。

No.275

私はとんでもない男と結婚してしまった…。



まるで結婚詐欺にでもあった感じだ。




しかし今は子供も産まれ、お腹には赤ちゃんもいる…。生活もかなり苦しいが、私は離婚だけはしたくなかった。子供たちのために。


カズくんは救いようのない人間だが、私は一生この男に付き合っていこうと思った。この先またどんなことが起こるかわからないが、きっといつか幸せになれる日がくることを願って…。

No.276

あのクソ親父とは連絡が途絶えたが、カズくんのお姉さんとは引き続き連絡を取り合っていた。



「うちのお父さんも忙しくてなかなか話が進まなかったみたいでごめんなさい…。私でよければいつでも相談に乗りますから気軽に連絡くださいね…。」




元嫁さんはカズくんのお姉さんも役に立たないと言っていたが、私にはまだ手を差し伸べてくれる優しい味方になっていた。



(でも嘘ついちゃって。あのクソ親父は定年退職して毎日が暇だってこと、私は知ってるんだよ…)







…そして時は流れ、年も明けた。



赤ちゃんは2月に産まれる予定なのだが、年が明けてからカズくんは毎日のように残業があるからと帰りがとても遅かった…。


とても大きくなったお腹でウメを風呂に入れてあげるのがツラかった…。いままでは毎日のようにカズくんが風呂に入れてあげてたのにな…。


週に一度ある休日も、急にシフトが入っちゃって出勤になったと、休みがない日も増えた。



カズくんの勤務先のパチンコ屋には私の友達もたくさんいたから、嫌な予感は頭によぎったが大丈夫だろうと気にしないようにはしていた…。

No.277

そこのパチンコ屋は、残業は給料が発生するシステムになっている。



しかし翌月のカズくんの給料はいつもとたいして変わらなかったようでカツカツの生活だった。



この頃、どうしようもないくらい貧乏だった。もうさすがに毎月毎月、私の母親にオムツだのミルクだの買ってもらうことが気にさわり、自分たちのお金で買っていたからだ。



お腹の赤ちゃんのために栄養のある食事を捕りたいのだが、ウメにはひもじい食事なんてさせたくなかったのでウメだけには栄養のあるものをあげ、私は白米しか食べなかった。


ときにはストレスと過度の空腹で、気づいたら無意識に米を炊き、ひたすら白米だけを暴食していた…。そんな自分が情けなくなり、我に還ったら涙を流しながら白米を食べていた…。



(お腹の赤ちゃん…ママ、白米しか食べれてあげられなくてごめんなさい…。)

No.278

こんなにカズくんは残業してるのに給料がいつもと変わらないなんておかしい…。



そう感じ、私はそこのパチンコ屋で働いている友達に連絡してみた。




「いまバイトの子が不足してて毎日忙しいのは事実だよ。でも週に一度の休みは働いちゃいけない規則になってるから…そこは出勤にならないと思う…。」







嫌な予感は現実のものとなっていく…。




また週に一度の休日に急に出勤になったと、カズくんは朝から深夜まで帰ってこなかった。




その日に私はパチンコ屋に電話してやった。



ープルルルーッ…ガチャッ


「お電話ありがとうございます。○○○、○○店でございます。」


「あっもしもしーお疲れ、私だよ△△さん、久しぶりだね✨あの、マネージャーに代わってくれます??」



「あー久しぶり!!元気してた?いまマネージャーに代わるね!」



♪♪♪~……



「お電話代わりました、◇◇です。」



「あっもしもしお疲れ様です。○○の家内です、いつも○○がお世話になってます…あのお聞きしたいのですが、本日、うちの○○は出勤してますでしょうか?」


「あー○○くんは今日は定休日のはずだよ。出勤してないけどどうかした?」



「あっ…いえ…そうでしたか…ありがとうございます。それだけなんで、お騒がせしました。お疲れ様です、失礼します…。」






私の嫌な予感は確信へと変わった。

No.279

深夜に帰宅し、風呂に入っている間にカズくんのケータイをチェックしてみる。



怪しいメモリーは…

ない。



怪しい着信履歴も…

ない。



怪しい発信履歴も…

もちろんない。



怪しいメールも…

見当たらない。




証拠が見つからない。




半ば諦めかけたが、もしかしてと思い、メール作成した際の文章のコピーを張り付けにしてみた。



出てきた❗




怪しい匂いが満載のメアドが。




メモリーに登録できない相手とカズくんはメールをし、証拠はすべて消し去っているように見せかけたが携帯は真実を語る…。



今度はメール作成し、「あ~わ」の予測変換をさぐってみた。



出てきた出てきた、怪しい文章…。



【○○○ちゃん】


【俺も】


【大好きだからね】


【楽しかったね】


【ディズニーランドは】


【厳しいなあー】

No.280

込み上げる怒りを抑え、とりあえずこの日は大人しくカズくんに振る舞った。



次の日、パチンコ屋の友達に連絡をした。



「あのさぁ、○○○っていう子、そこで働いてる?」


「ああ、○○○っているよ、バイトの子。バツイチで子持ちだけど。」



「うちのカズがその子と怪しい関係にある気がするんだけどさぁ、実際どんな感じ?」


「ああー、言われてみればそんな感じかも。この間は早番終わって2人で一緒に帰ってたし、前の飲み会ん時なんてラブラブでべたべたしてたよ。カップルみたいだった。」



「そう…教えてくれてありがとう…。」



「まぁあの2人は同い年でお互いバツイチだからね、話も合うんじゃないの?ハルちゃんには申し訳ない話だけど…。この間の遅番のときなんて終わってから駐車場で2人で一緒にいるのをマネージャーが目撃したからヤバい感じだったよ。」


「うん、わかった、ありがとう…。」




証拠なんていくらでもあるじゃないか。




カズくんは仕事先で堂々と浮気して遊んでいた。


まぁパチンコ屋には可愛い女の子の入れ代わりが激しいから予想できなくもないことだが。



カズくんはイケメンでもないし、身長も低いし…どうして浮気なんかできるのか…。


それはカズくんが嘘の話を造り上げ、自分を美化し、相手を魅了する話術とあの笑顔があったからだ。相手をだますテクが磨かれているからだ。



……まだこんな小さいウメもいるし、私は臨月になるのに。

No.281

すべての真実を知り、だが私は冷静にカズくんに問う。


「あのさぁ、カズくん浮気してるでしょ?全部知ってるんだからね。休日出勤してた日も本当は仕事なかったってマネージャーに聞いたし、○○○ちゃんって子とも仲良くしてることも教えてくれてた。」




「………。」




「黙ってないでなんか言えよ❗オメエこんな小さいウメもいるのに、私も臨月なのになに浮気してんの⁉なに他の女と遊んでんの⁉残業とか嘘ついてないでウメを風呂に入れてあげたら⁉⁉アンタ父親失格だよ⁉⁉これじゃあ元嫁さんとの子供もガッカリじゃない⁉⁉合わせる顔なくなるよ⁉⁉テメェ人間としてサイテーだよ‼」





「……。

だって…お前が『俺と結婚するんじゃなかった』って言った日あったじゃん?そのときからお前が好きじゃなくなった。好きな気持ちがなくなったから…。

家に帰りたくなくなった…。





「だからって浮気していいわけ⁉⁉オメエはどこまで都合いい人間なの⁉たいしてイイ男でもないのによく浮気なんてできるよな❗またどーせ嘘つきまくって女騙したんだろ⁉⁉オメエがいたらどんだけ騙される女が増えると思ってんだよ❗私だけで止めとけよ❗これ以上女泣かすなよ❗テメー最低だよ‼」



「……ごめん…。ちゃんと帰ってくるから…。だけどハルちゃんが家にいたら帰りたくない…。」


「じゃあ私は実家に帰らせていただきます❗」





…という流れで私は実家に帰った。

No.282

それはお腹の赤ちゃんが産まれる2週間くらい前だったと思う…。




私はウメを連れて実家で暮らし始めた…。



それでもどこかで私はカズくんを心配していた…。



ちゃんと仕事終わったらすぐに帰っているのか…。



たまらずパチンコ屋の友達に状況を聞いたりもした…。




私も…

情けない女だ…。

No.283

私とカズくんはすれ違いの生活になったわけだが、メールだけで繋がっていた。



今日のウメの様子はどう?

とか、


ハルちゃんのお腹は大丈夫?赤ちゃんは大丈夫?

とか…。




気になるんなら一緒に生活してもいいんじゃない?って思うが、相変わらず私に会いたくないようだ。




それでも私の身体は心配してくれるカズくん……




カズくんは一体なにを考えているの?



もう私のこと嫌いなんでしょ?


だったら私の身体の心配なんてしないで…



変に期待しちゃうじゃない…




また昔のように楽しく笑いあって2人で過ごす家庭を私は想像してしまうのだった…。




(昔みたいに幸せな2人に戻りたいなあ…)

No.284

だんだん産まれそうになるお腹をかかえ、私はカズくんにメールした。



『お願いだから昔のように2人で生活しよ…。こんな離ればなれの生活なんて嫌だよ…。ウメだってパパに会えなくて可哀想だよ…。もうカズくんのことは何にも文句言わないからさ…私、カズくんの全部を受け止めるから…。どんなカズくんでも構わないから…。もう怒ったりしないから…。』



『また俺が嘘ついても怒ったりしないの?そんなわけないでしょ…。あんなにボロクソに言われて、俺だって気持ちの整理がつかないからお前と一緒に生活するなんてムリだね…。』






私は堕ちた…。

もうどうしたらいいのかわからなかった。



ウメのために、子供たちのためにパパと一緒に生活しなきゃいけないのに…。



でも私が真実を探り、すべてを知ってカズくんを怒鳴り散らし、生活環境をめちゃくちゃに壊してしまった…。




(真実なんて知るもんじゃなかったのかな…知っちゃマズかったのかな…)




私は何が正しいのかそうでないのかわからなくなり道を見失いそうになっていった…。

No.285

カズくんと離れ離れの生活を続けていた2月25日、早朝…




お腹が痛む…。



陣痛の始まりだ…。



経産婦なら早めに病院に行かなくてはならないので、まだ隣でスヤスヤ寝ているウメを起こさないように部屋を出て、私は母親に朝6時に病院へ送ってもらった。



ウメと離ればなれになるのは初めてだったので不安な気持ちと寂しい気持ちが入り混ざる…。



病院へ着き、内診した看護婦さんが昼頃には産まれると教えてくれた。




前回のお産は恥ずかしいばかりの記憶しか残っていなかったので、今回はどんなに苦しい陣痛でも声はあげずに耐え抜こうと目標を持った。





でもね…

こんな苦しい陣痛に耐えても、やっぱり夫…カズくんには傍にいてほしかったよ…






私は涙が止まらなかった。


それは痛みから来るものではなく、淋しさゆえの悲しい涙だった…。

No.286

私は陣痛に耐えながらもカズくんに連絡を入れ続けた…



(お願い…来てカズくん…。私とカズくんの赤ちゃんを2人で迎えようよ…)




不安と痛みに耐えながらも赤ちゃんが産まれる時間の昼を回っていた。




まだ子宮口が全開にならないでいた…




夕方になり、外は真っ暗な闇につつまれる…




私は夜の7時頃にようやく分娩台にあがれた。

No.287

先生も分娩室に入り、お産が始まる…



助産婦さんの『はい、いきんで!!』と言われたときだけ今まで我慢していた声が思わず出てしまった。



そんなバタバタしてた中にカズくんは駆けつけてくれた。



カズくんが分娩室に入るための着替えを済まし、いざ分娩室に入ってくれて来たときには…




赤ちゃんは産まれていた。


カズくんは赤ちゃんとの対面に間に合わなかった。





私は1人でお産をした。




あんなに心細かった気持ちが、1人でお産を済ませたことにより強靭になっていたような気がした。




(カズくんがいなくても…


私は…





頑張れた…)

No.288

分娩室に入ってきたカズくんはすでに産まれていた赤ちゃんを見るなり、すぐに


「オレ、もう用ないから帰るわ。」



と言う。




「えっ⁉もう帰るの?…💦」



「帰るよ。赤ちゃんも産まれちゃってたし。じゃあね。」





私は言葉が出なかった…。




まだ分娩台で胎盤の処置を施す前にカズくんは帰っていった。




(カズくんは私の体の心配なんかしてないんだね…赤ちゃんだけ無事に産まれたか見に来ただけなんだね…)



私は少しずつカズくんに冷めていくような感覚がしていた。

No.289

次の日、カズくんは見舞い(?)に来てくれた。



正確に言えば赤ちゃんだけを見に来ただけなんだよね…。




赤ちゃんの名前がまだ決まってなかったので、私はカズくんに問う。



「あっあのさあ、名前どうする?漢字とかさ…なんか好きな……」



「お前が決めれば?どうせ育てんのお前なんだし、オレ関係ないし。名字もお前のになるんだし。」




「………」





なんて冷たい野郎だ。




もう離婚する気マンマンじゃないか。



離婚するなんてこのときはまだ決まってなかったんだし。




そもそもコイツは父親を放棄する発言をしていた…




それに私は無償に腹が立った。




入院している部屋の窓からは鈍く明るめな灰色の空からチラチラと雪が降っていた…

No.290

カズくんの両親も見舞いに来た。



正直、うざかった。




こんなヤツらに育てられたカズくんもコイツらも、最低だ。





カズくんはぼぼ毎日赤ちゃんを見に来た。




そして毎回、帰り際に私に金をせびってきた。



出産祝い金や、入院費用があることをコイツは知っているのだ。




金をせびるために毎日来るコイツは本当に父親なのか…






だんだん殺意が沸いてきた。

No.291

退院し、私はカズくんとの住まいに戻った。



自分ちの方が子供たちのミルクや布団や風呂などの勝手がいいし、なにより落ち着く…。




しかし私が帰ったことで、もちろんカズくんは仕事が終わっても家には帰ってこない。



ウメと産まれたばかりの赤ちゃんの風呂を私1人でこなすのは想像以上に大変だった。



でも2人とも可愛い可愛い我が子。




…表記が遅れたが、2人目の赤ちゃんも女の子。ウメとは似つかない、二重で鼻筋の通った顔立ち。



2人目の赤ちゃんを見る人は口を揃えて『ママ似だねー』と言う。

No.292

ウメは私の幼少期そのものだが、2人目は今現在の私そのもの。



2人とも間違いなく私の可愛い我が子。






そんな2人目の赤ちゃんには…



【はな】と名付けた。
あえて平仮名で。





あの雪の降った日にそう決めた。


響きは『はな』としていたが当てはめる漢字がなかなか思い浮かばなかった。

そんな中、窓の外の白い雪を見て平仮名に決めたのだ。漢字を当てはめたらその意味だけを記すことになるが、平仮名であれば無限大の想像ができる。…真っ白な雪が教えてくれたこと…。



花のように可愛らしく、華のある人生を歩み、誰からも愛される心優しい、美しい【はな】でありますように…




ハナちゃん…この子にぴったりな名前を付けたようで私は満足している。




ちなみにウメの本当の名前は【夢采】。読みは〔ゆめな〕。


采という字は手に入れる、つかみとるという意。



どうか大きな夢を持ち、その夢を叶えて成し遂げてほしいという願いをウメの名前に込めました。



私は婦人警察官にはなれなかったが、ウメには夢を叶えてほしく、その漢字を当てました。

No.293

毎日帰ってこないパパ…とは呼べないカズくん。



いつもどこにいたのだか…。




そんなパパなんていらなかった。必要ない。




私は気持ちがモヤモヤしながらもウメとハナの育児に奮闘していた。



ウメはまだ一歳にも満たないが、すでにハナにお姉ちゃんっぷりを発揮していた。



ハナが泣いたらおしゃぶりを持ってきては口元にねじ込んでみたり、ハナが寝んねしてたら頭を乱雑に撫でてくれたり…




そんなウメのお姉ちゃんぶる行動にいつも私は癒された。




ハナが飲み残したミルクを飲んだり、ハナ用のオモチャで遊んでたりはしていたが一歳にもなっていないウメもまだまだ赤ちゃん…。



そんなウメが愛くるしい…



ウメは本当にいい子だ…。

No.294

3月になり、ウメの初節句で私の母親がお祝いをしてくれた。



ウメのために豪華な雛人形を浅草まで買いに行き、飾るのも母親が手伝ってくれた。



夕飯はケンタッキーや寿司やホールケーキを用意してくれて豪華に彩った。




雛人形越しにウメと一緒に写真を撮ったのだが、今ではいい思い出として残っている…。



ウメはきれいな雛人形よりも初めて食べるご馳走やケーキに夢中だった。



もちろんハナはまだミルク。そんなハナはスヤスヤいい子に寝んねしていた。





初節句なので、いちおう向こうの両親に雛人形を飾ったと連絡を入れたのだが全く見に来るどころか、ウメにお祝いもしてくれなかった。



クリスマスも何もプレゼントなし…孫には何もプレゼントをあげないのが普通なのかな…?



いや、元嫁さんとの子供には今でも誕生日プレゼントを送っているらしい…




私の子供には何にも無しですか…。

No.295

3月18日を迎えた。



ウメの一歳の誕生日だ。




この日も私の母親が祝ってくれた。




パパのいない誕生日…ウメは可哀想な子供だ…。



どうせカズくんは帰ってこないのだから、ウメの誕生日パーティーは実家で行った。




ウメは好きなだけ好きなものを腹いっぱい食べて幸せそうだ…。




ケーキの生クリームを鼻につけ、頬張って…始終無邪気に笑うウメ…



可愛くて仕方ない…



お金がないながらも私はウメにプレゼントを買った。アンパンマンのオモチャ。



私はウメの笑顔が今でも好きだ…。

No.296

4月になった。



ハナちゃんはまだ夜中にミルクやオムツで泣くので、夜はウメと別の部屋で寝かせた。



ハナちゃんの泣き声でウメも起きたら可哀想だし。




ウメは1人で寝んねさせた。私とカズくんが寝ていたセミダブルの布団で。これなら寝相の悪いウメでも大丈夫な広さ。



私はハナちゃんと同じ部屋で寝た。ハナちゃんが泣いたらすぐにお世話するために。




わたし1人でこの子供たち…まだ赤ちゃん2人を育児するのは本当疲れる。





そんな疲れが一気に私を襲う…

No.297

ある夜、すごく体が熱く、気だるい感じがした。



いつもなら何とも思わない熱や頭痛だったがこの日は違った。



何気なく体温計で計った熱に自分で驚いた…。




41,1℃…



体温計、壊れてるのかな…


こんな熱なんて出したこともない。


滅多に風邪をひいたこともなく、病気と言えば小学生のときインフルエンザで38℃を出した以来だ。

No.298

日中、スーパーへ行くのも背中にウメをおんぶし、ハナちゃんはベビーカーで徒歩で頑張った。



行きはいいが帰りはスーパーの袋もかさばり、しんどい。




子供たちばかり優先し、自分のことは後回し…



子供たちの風呂も頑張ってこなすが、私も風呂に一緒に入り、最後に自分の体を拭くとすでに冷えきっている…



食事もウメの残り物を食べる…


しかしウメは大食だからほぼ完食し、私は白米のみを食す。



付け加え、頭の片隅で心配している自分が情けないがカズくんの行方…




精神的にも肉体的にも、私は追い込まれていった…



だからこんな高熱が出たのであろうか…




さすがに体を起こすこともツラすぎる…




育児に影響が出てしまう…



なにより、子供たちに移してはいけない…

No.299

1人じゃ満足に育児すらできない自分が情けなかった…


誰かの力を借りなきゃこの子たちは育てられないのだろうか…



しかし本来、子供は夫婦あっての結晶…2人で助け合って子供を育てるものなんじゃないか…




いま家にいないカズくんに怒りが込み上がるが、今すぐにでも帰ってきて私を助けてほしかった…



かなりの矛盾した感情が折り重なり、私は混乱しながら自分が情けなくなり涙を流してしまった…

No.300

こんな熱でツラい日くらい、カズくんにどうしても帰ってきてほしかった。



仕事が終わったであろう時間帯を見計らい、まずメールする、帰ってきて…と。


返事は『帰りたくない、むり。』。



『体調崩して熱が出たから、子供たちに移したくないから帰ってきて育児手伝って…』とメールしても無視された。



少し頭にきて鬼電コール。



……が、まったく電話に出ない。

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧