『私に気づいて…』

レス381 HIT数 81790 あ+ あ-


2011/06/20 01:28(更新日時)

24歳の私が書く、初めての小説です。


完全な素人ですので表現力不足などはご了承ください。


フィクションですが、内容に不快を感じる方はスルーしてください。


多くの方々に読んでもらい、いつか読者様による感想スレ立ち上げてくれたら嬉しいな…





🍀プロローグ


2010年12月15日(水)…

午後2時…


こんな時間まで何かをすることもなく、ただ起きているだけの私…


洗濯物は3日に一度くらい。彼氏の作業着は夜中にやる。今日の朝9時くらいに干したけど、終わったらまた布団の中に潜る。


暖房使うと電気代もったいないから布団から抜け出せない。


最近は外に出ない…というより、出れない。出たくない。


いつからだろう…




誰とも会いたくないんだ…

No.1485902 (スレ作成日時)

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No.151

しばらく動かしていなかったためか、エンジンがなかなかかからない…。



なんども真治はキック?で頑張っていた。



初めてまたがるバイクに私は興奮した。


真治の後ろに…ぴったり密着するような体勢で…。



スピードを上げると共に真冬の冷たい風が容赦なく吹き付けるが、初めて乗るバイクに私は夢中で寒さも平気だった。



バイクに乗って風を切るのがなんとも心地よかった。




真治は常に私に新鮮さをくれた。

No.152

家出7日目…


そろそろ着替えが欲しいと思っていたので、親になんの連絡もなしに家に取りに行こうと思った。




お昼過ぎ…


1週間ぶりの実家には親の車はなかった。



玄関も鍵がかかっていた。



(家には誰もいないな…。)



そう思って安心して家に入った。



玄関をあがり、廊下を歩くと奥の部屋に電気が点いているのに気づく…。




それと同時に兄が現れて…



私は激しく殴られた。

No.153

兄は一言もしゃべらずに私をひたすら殴ってくる。



強烈な痛みが私を襲う、しかし私の頭の中は【???】だった。


なんでいきなり殴られるのか理解できなかった。




痛みでわたしがうずくまると兄が

『お前なに親に心配かけてんだよ!』


と言う。




私は兄をキッと睨んだ。




こんな暴力を振るってくる兄貴もキライだし、親もこんなときだけしか私を心配できないのが憎かった。



だから家出したんだ…。




親に心配かけてる?


違うよ…


心配されてないと思ったから家出したんだ。




兄を睨み付け、私は無言で自分の荷物を用意しはじめた。

No.154

『おまえ!人の話聞いてんのかよ❗』



また兄が殴る…。



用意した荷物が無惨に散らばる…。




そのとき部屋の奥にもう一人だれかがいた。



いとこのお姉ちゃんだ。



いとこのお姉ちゃんが兄貴の暴力を止めに入ってくれた。



しかし兄貴は殴ることを止めてはくれなかった。




そのとき玄関のドアが勢いよく開いた。



『はるか⁉帰ったの⁉⁉』


お母さんだ…。

No.155

お母さんが兄貴を止めてくれた。



私は殴られた痛みから泣き出してしまった。




『こんなお兄ちゃんが家にいるから帰りたくないんだよ‼』



私はこのときの感情を精一杯叫んだ。



『とりあえず…落ち着いて話をしよう。』



母親に言われコタツに座り、私が思っていることを吐き出した。



その中で親戚のオバチャンなどが来てくれた。



親戚中で家出した私を探してくれてたみたいだ。



このとき、私は自分のしたことの重大さに気づき出した…。

No.156

『みんな心配してるんだし帰ってきなさい…。』



その言葉に私は首を横に振る。



正直、みんなに迷惑かけたと気づいても全く家には帰る気持ちになれなかった。


こんな兄貴と一緒にいたらいつか殺されてしまいそうな気さえした。



私は親に、いま住ましてもらっている家があること、真治のことを話した。



そりゃあ親としてみればそんな場所に私が住むことは快く思わない。



それでも私は真治を信頼していたので、しばらく家には帰りたくないと主張した。




今日は必要な荷物を取りに来ただけ…そしたらいきなり兄貴に激しく殴られた。だからこんな家、余計に帰りたくなくなった…

と母親に言った。

No.157

頑なに家には戻ってこないことを母親に訴えた。



長い話し合いの中で母親は私の意見を承諾してくれた。



『じゃあ…しばらくはその人のお世話に甘えるしかないわね…。』



私は嬉しかった。



『だけどこれだけは約束して。連絡はちゃんとしなさい。』


『わかった…。』




きっと親不孝者だが、また真治と一緒にいれることのほうが良かったのだ。



こんな兄貴とおさらばできることにも笑みがこぼれる…。



さっさと自分の荷物を支度し、真治に迎えに来てもらってアパートに帰った。

No.158

『学校はどうすんの?』



『しばらくは行かなくていいって。お母さんが学校に言って担任の先生に相談だか何だかするみたい。』




『ハルはそれでいいの?』


『………

わかんない…。』





心のどこかで不安がありながらも、そんなことどうでもいいや!!考えたくない!!っという甘えた気持ちになっていた。



今まで積み上げてきたものが崩れてしまったのだ。



必死に中学受験をしたのは何の為だったのだろうか…。



何のために近場の進学校に入学したのだろうか…。



ただ私は現実から逃げたかっただけだったのだろうか…。



まだまだ幼かった16歳の少女が悩んでも解決策なんて見いだせずにいた…。

No.159

真治のアパートに私が飼っていたインコも連れてきた。



真治は意外にも動物好きだった。私のインコをとても可愛がってくれた。



そういえば…

毎日かかさず私がインコの餌や水を変え、家族は世話を手伝ってはくれなかった。もちろん、私が欲しくて買ってもらったインコだったから毎日わたしがしてただけで…。


私が家出してた間、だれかがこのインコの世話をしてくれてたわけだよね…?



…私はちょっとだけ家族の有り難みを受け止めた。

No.160

真治との楽しい毎日は続いた。



母親とも必要な連絡は取っていた。



しかし真治は相変わらず仕事に行かなかった。私が行かないでって言ったせいだけど…。

でも私は(お金…よく大丈夫だったな)って思っていた。



しかし1月も終わりに近づくと、さすがの真治も金が底をつく危機感に気づき始めていたみたいだった。



『昔、友達に貸した金を返してもらってくる。』


そう言って出掛けた日があった。



真治がアパートを留守にしている間、光熱費徴収のオッサンが支払いの請求に来たこともあった。滞納してたようだった。



真治はついにはバイクも売ってきてしまった。


これは私なりに結構ショックだった。



初めて乗ったバイク…

まだまだ乗りたかったな…。

No.161

その頃、母親から一報があり、

『あんた、アパートかどっかに住む?そしたらお兄ちゃんとも顔合わせなくて住むし、うちの近くのアパートに住んでもらったほうがお母さんは安心だわ…。』


そんなこんなで、アパートを探すために母親と不動産に出向いた。


実家から一番近くの物件にした。しかしここはアパートではなくマンションだった。家賃も安いわけではない。



『お母さん…もっと安いとこでいいよ…。』


『そお?お母さんはここが気に入ったけど💡』



このときはお母さんも借りる物件に半同棲してくれるものだと思っていた。

No.162

マンションの契約が終わり、引き渡される日が来るまで真治のアパートで過ごしていた。



3学期はとっくに始まっていたが、まだ1日も出席していない…。


確かテストもあったような…。



そんな中、私とお母さんとお父さんで学校に行った。


職員室の隣の、狭い部屋に通された。


担任の先生と長脚を挟み、面談が始まった。

No.163

『まずハルカさん…


2学期の期末試験と今回の試験は未受験です、ふつうならこの時点で2学年へは上がれません。


しかしハルカさんの1学期の成績、2学期の成績がかなり優秀で申し分ない。点数に置いては未受験のテストを含めても平均点を上回ります。受けた試験でかなり点数を貯金できたからです。それにハルカさんは勉強すれば優秀なのはわかっています。なので校長の方にも2学年への進学の許可をいただきました。



しかしこのまま欠席を続けたら出席日数が足りず2学年へは上がれません。


これから学校に出席し、残りの期末テストを受けなければなりません。





そんなことを先生は話していた。

No.164

『しかし、今回の家出の件…

ハルカさん、あなたがどれだけ親御さんに迷惑かけたか…親御さんだけではなくたくさんの人があなたを心配した。もちろん先生も。

どんな理由があろうとみんなに迷惑がかかる家出は良くないことだよ。


家出をするまえに誰かに相談してください…。友達でもいい、先生でもいいから。


しかし、学校側にも問題があったようだね…例のあの子だよね?それに関してはこちら側で十分に対策を整えておきます。


留年生をハルカさんと同じクラスにしてしまったのもこちらの責任です。少なからずとも影響があってしまったことは問題です。


でもあの子も悪気があったわけじゃない、ああいう子なんだよ。しかしこれからは一切関わるなとかじゃなくて普通に接していく程度でいいと思う。先生もあの子が傷付かないくらいに言っとくから。


ハルカさんが明日からでも出席できるような環境を整えとくからね。


No.165

『それと…


家庭環境も問題があったようですね…。


なにもすべてお子さんが悪いとは限りません。


お母さん…少しでもハルカさんの変化に気づいていましたか?気づいてあげられなかったとしたらそこに問題があります。

わたしも気づいているように、ハルカさんは素直に思ったことを言えない生徒です。人に物を頼まれたら断れない性格なようです。

心の中に思っていることを口に出せないお子さんは、大人が思っているほど以上にいい子を演じてしまいます。周りに気を遣って生活してます。それはそういう環境で育ってたからではないでしょうか?

毎日の会話の中で少しづつ心の声を聞いてあげられませんか?



それとお父さん…教育はお母さんに任せっきりですよね?それは非常に良くないです。お年頃の娘さんだからといって疎遠にしてはいけません…

No.166

先生は私だけでなく、お母さんお父さんにも説教をしてくれた。



そしてうちの兄貴の件に対しても、先生はお母さんお父さんに注意してくれた。

お母さんとお父さんは、ただただ先生の話を聞き入れていた。



ただの担任の先生なのに、ここまで話してくれるんだ…



ちょっとした金八先生のように思えた。

No.167

マンションに入居できる日が来たので、私は母親と電気屋や家具屋に行っては必要な一式を購入していた。


母親はすべて新しいもの、そして冷蔵庫なんかはファミリー向けのでかいやつを買ってくれた。



台所の小物は可愛いキティちゃんので揃えたりした。


しめて合計いくらかかったのだろうか…。



恐ろしくて聞けなかったなぁ。

No.168

私が新居へ引っ越しの準備で忙しい中、真治はついに金がつきたのかアパートを出ることにした。



私も合間を縫っては真治のアパートの片付けを手伝った。


ほんのわずかな期間だったが真治と過ごした部屋を去るのは私を寂しい気持ちにさせた。


真治は実家へ帰るみたいだ。

No.169

真治は原付きも持っていたが、それを実家まで持っていくのを私が手伝った。


持っていくというか、乗っていくのだ。



真夜中、交通量が少ない道を選び、真治の運転する車の後ろを追って私は原付きを走らせた。


もちろん無免許だ。



このとき、無免の罪悪感にかられながらも悪いことするって楽しいかも…と思ってしまった。


45分くらいの道のりをひたすら走った。



ただ真冬の夜のバイクは予想以上に寒かったー。

No.170

そして2月のある日…


私はマンションで暮らし始めた。



それと同時に学校にも登校した。



お母さんは…マンションには一切来てくれなかった。


だから毎日自炊や掃除やら買い出しにも行くことになった。


弁当も毎日作った。



どうせ母親が来ないのなら…


私はマンションに真治を呼んだ。



また2人の生活が始まった。



このことが母親にバレたらまずいことはわかっていた。



私はなんて悪い子供なんだろう…



真治はマンションに入り浸ってしまったが、独りで夕飯食べるのも寂しかったし一緒に買い物行くのも楽しかったしちょうど良かった。


生活費は親がいくらかくれた。


私が学校に行ってる間は真治は実家へ帰っていた。

No.171

久しぶりの学校…



クラスの女子の視線が痛い…。


そいつらの間で私に関するイヤな噂話が流れていた…。



しかし私に手を差しのべてくれる優しい子もいた…。




そう…






あのギャルだった。






『さっきアイツらがさぁ➰

ハルのことヤリマン➰➰とか変な噂流してたんだょね💥💥

はっ⁉💢勝手に変な噂作んなしっ❗って言っといたょ❤😄まじアイツら最低じゃね-⁉💢』





あー


ギャルも捨てたもんじゃないな…



こういうときのギャルの友情って熱いんだな…



なのに私は………




私はギャルに

(勝手に迷惑ぶっちゃってゴメン…。今はすごく感謝してる、ありがとう😢)


と心の中で礼を言った。




ギャルと一緒にいるのが嫌で学校に行きたくないこと…ギャルには伝わっていたのだろうか。担任の先生から伝わっていたのだろうか。


そうでないにしろ、ギャルは私に優しくしてくれた…。



友達…大切にしなきゃってホントに痛感した。

No.172

相変わらず私はクラスの女子からは煙たい扱いをされたが、ギャルがいたから乗り越えられた。



クラスの女子もギャルには逆らえないみたい。


ギャルにはそういう強いオーラがあった。



まぁ…歳も上なことですし。




終業式までの短い期間ではあったが、きっとギャルがいなかったら私はまた登校拒否でもしていただろう…。

クラスの女子の冷たい視線に耐えられない…なんて。



わたしはどこまで弱い人間なんだろ…。




そんな私のそばにいてくれたギャル…


今では感謝してるよ!

No.173

3月に入り、終業式も終えたら春休みがくる。



春休みの間は毎日真治と過ごした。



真治はどっから稼いできたのか知らないが、一緒にゲーセンやドンキに行ってはかなりの金を使っていた。


深夜を通り越して翌朝までゲーセンにいた。

このとき真治にスロットを教わったのだ。

大花火、ネオプラ、キンパル、巨人の星、アラジン、…今となっては懐かしい4号機たち。

ほぼスロットで景品をGETして遊んでいた。


おかげで部屋はあっという間にゲーセンの景品だらけ…。



それでも当時は楽しかったし。

No.174

2学年…新学期。



新しいクラスでのスタート。



ここから高校生活やり直そうと思った。




新しいクラスメートは人が良さそうな子ばかりで安心した。



まぁ始業式早々、遅刻したけどね。



ゲーセン入り浸りすぎたんで朝起きれず(笑)

No.175

真治と楽しく過ごし、高校2年生はあっという間に終わった。



勉強は昔ほどやらなくなったせいか、成績はガタ落ちした。



勉強が嫌いになったというよりはテスト期間が嫌いになった。


母親に「勉強してるの!?」と言われ続けられたテスト期間…

マンションに住み、母親がいなくなってもその口癖が妙に耳に残ってしまい私にストレスを与えた。



それに【いい成績を出さなきゃ!】という自分自身へのプレッシャーも逆効果になり、焦れば焦るほど気が散って勉強に集中できなくなってしまった。



勉強は怠ってしまったが少し興味のあった部活動の体入をしてみたり、思いきり学園祭に力を注いだりした。


これまで帰宅部だった私が夜遅くまで学校に残り、時には汗をかき、泥まみれになって帰った日もあった。


高校2年生は自分にとって青春したなぁと感じた年になった。

No.176

そして高校3年生になった。



なんだかんだ一緒につるんできたあのギャルの姿はなかった…。


また留年になったらしく、学校を辞めたみたいだった。


別の高校へ編入したみたいだったが、たまに電車で会ったときは言葉を失ってしまうほど進化した姿に変わっていた。


まず制服がない高校で私服で通学してたのだが、服装もヤバかったがそれ以上に肌の色にびっくりした。


いままで白い肌だったギャルが真っ黒に変貌していた。


一体この短期間に何回焼きに行ったのだろうか…。


髪の毛は色を抜きすぎたのか、艶のあったストレートヘアがひどくパサついた髪になってしまっていた。付け加え、ピンク色のエクステ…。


そして原色をふんだんに取り入れたカラフルな服装…。何重にも重ねたアクセが絶え間なく揺れている。


極めつけはでかすぎるテンガロンハット…。それで電車に乗って学校行くの?;


たまに連絡とって遊んだりはしたが、2人同士でいても私はどうも浮いてしまった。

No.177

進路も考えなくてはならない3年生…。



私は小さい頃からの夢があった。


婦人警察官になること。



白バイに乗る女性警察官に憧れていた…。



白バイは大型二輪免許…


免許がほしくて教習所に通った。まずは普通自動二輪。

倒れた状態のバイクを起こし、それに股がった私に教官は言った…

『おまえ足とどかないからやめちまえ。』



わたし…足は短いけどさ💧身長も小さいし。小学校卒業してから3センチも伸びてないし。


たしかに足は地に着かなく、かなり不安定でいつバイクが倒れてもおかしくなかったのだ。



パンチパーマのイカつい教官に圧倒され、免許は断念してしまった。




わたしって根性ないなぁ…

No.178

白バイに乗れなくとも、警察官にはなりたい。



どこかの大学に行く気はあったが、オープンキャンパスに行ってもいまいち実感が沸かなく興味も出ない…


そんな初夏を過ごしていた。




(あれ?そういえば生理が来てない…)

No.179

真治と一緒にドラッグストアに行き、初めて妊娠検査薬を買った。



マンションに帰って検査薬を使ってみたが、クッキリ陽性が出てしまった…。



こんなこと母親に言えるわけなかった。



真治はいまだに定職に就いておらず、私に産んでほしい気持ちはあったみたいだが現実的には厳しい。



もしこのまま過ごしても卒業前にはお腹が大きくなってしまい、余儀なく退学させられてしまうかもしれない。


もちろん母親に相談したところで産むなと言われるのは目に見えていた。



安易に産んでも、そのさき一生面倒が見れるのだろうか…金銭的問題の不安は消えることはないだろう…。


産んだあとに後悔しても遅すぎる話。いちばん可哀想なのは赤ちゃんだ。



産んでから面倒が見れなくなる…そうなるよりは…

赤ちゃんには本当に申し訳なかったが私は中絶の方法を選んだ。

No.180

真治と一緒に地元から離れた産婦人科へ行った。



古くからある産婦人科みたいで木造建築のその病院はどこか懐かしく、私の不安を取り除いてくれた。



診察台へ上がる恐怖はあったものの、おじいちゃんの先生だったので幾らか気持ちもやわらいだ。



そして初めて見る、わたしのお腹を写したエコー写真…


すでに3ヶ月ほど経過していたので、初めて見たわたしの赤ちゃんは想像以上に大きかった。





わたしはショックを受けた。





中絶するとは決めたものの、わたしのお腹の中で一生懸命生きていた赤ちゃんの力強さが写真を通じてひしひしと伝わった。

No.181

手術する日程を決め、その日はすぐ帰宅した。




マンションに帰って、しばらくお腹の赤ちゃんのことを考えた。




わたしの目から熱いものがが頬を伝う…。





あらためて自分のしてしまった過ちを悔やんだ。





なんて軽率だったんだろう…。




いつもは避妊していたが、あの日はなぜか避妊をしなかった。まさかその日で赤ちゃんができるとは思わなかった。




未熟なわたしのせいで育てることのできない命…



悔やんでも悔やみきれなかった。


妊娠して中絶するとき、傷つくのは女性というが、実際いちばん傷つくのは赤ちゃんだと思う…。




外の空気に触れさせてやることもできず、見させてあげることもできず、感じさせてあげることもできず…



本当にごめんなさい。

No.182

それから一週間後、再び真治と産婦人科を訪れた。



朝の8時…
複雑な心境のなか人工中絶手術が始まった。



診察台に横になり、オバチャン看護婦さんが点滴の針を慣れた手つきで刺す。



『これは全身麻酔ですからねー。10秒数えてくださいねー。』



『……。』



『声に出して数えてくださいねー。』



『いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅ……』



ここで私は意識を失った。


この後のことはまったく覚えていない。




気がついたら別室に寝かされていて隣には真治がいた。



『大丈夫?立てる?』



『まだフラフラする…。』


麻酔が覚めきらないままだったが体の痛みとかはなかったのですぐ帰った。





昼下がりの夏の陽射しが私の肌をジリジリ照りつけた。

No.183

帰宅してからもしばらく安静にしなくてはいけないと先生に言われていたが、なにもする気が起きなかった。


ベッドに横になり自分の腹を擦りながら考えた。



(わたしの赤ちゃん…どこに行っちゃったんだろう…)


(どんな顔してたのかな…せめて一目だけでも見たかったなぁ…)



(わたし…赤ちゃんに一生恨まれるのかな…)



もう涙がボロボロ落ちた。


自分でもなに考えてるのかよくわからなくなるほど泣いた。



私は1人の命を奪ってしまった。



酷い後悔の念しか残らなかった。



私にバチが当たっても受け止めようと思った。もう次は妊娠できない体になっても仕方ないと思った。



その代わり、もしこの先また妊娠できることがあるのなら…絶対に2度と中絶はしないと心に決めた。




…人の命の尊さを知った、17歳の夏だった…。

No.184

夏休みが終わり、2学期に入る。



そろそろ本格的に自分の進路について決めなければならないのだが、私は自分の道を見失っていた。



警察官について自分なりに調べてはいたが…各県警も警視庁も身長規定が定められていた。


それが154cmやら156cmだった。






わたしの身長じゃ全然足りない…。




わたし…警察官になれないんだ…。




私は一気に大学へ行く気が失せてしまった。




小さい頃からの夢が見事に崩れ去った。



それだけ思い入れがあったのでショックはかなり大きいものだった。




何かを見つけるために…新しい道を探すために大学へ行ったほうがいいと母親に言われたが、中途半端な気持ちで大学へ行くのも面倒くさかった。

No.185

この頃、わたしはマンションを出て実家へ戻った。



兄も落ち着き、もう私に暴力を奮わない約束をしたので実家へ帰っても安全だった。




実家へ戻り、あまり兄とは口を聞かないようにしたが、なにより朝ごはんや夕御飯を自分で作らなくても用意されてるのが嬉しかった。

ちょっと母親の有り難みを知った。



それに母親も昔と比べて【勉強!勉強!!】と言わなくなっていた。とても気持ちが楽になった。






…そのまま年も明け、私はセンター試験も受けることなく過ごしていた。

No.186

自分の将来のことなんて考えてなく、ただその時だけを過ごしていた。



あっという間に3学期になり、高校生活の最後を迎えた。



クラスに私と同じような生徒もいたから卒業後のことも何も心配しなかった。



ただフツーに高校生活が終わり、卒業式も終わった。





しかし…

今もふと考えるときがある…。



もし私が大学へ進学していたなら…


今よりもっとマシな人生を歩んでいたのかな…

No.187

一方、真治はコンビニの深夜バイトをしていた。



たいした給料ではなかったが遊べるくらいの金にはなっていた。



わたしも高校卒業したし、真治にはちゃんとした職に就いてほしい気持ちは日に日に増していくばかりだ。



もし真治がこのままバイトを続けるようなら…




別れも必要かなと思う。






それを真治にも伝えていた。



むしろ伝え始めたのはかなり前からだった。



私が高校3年生になったときぐらい。




『わたしが高校卒業するまで就職しなかったら別れるよ?』




この言葉は真治には届かないまま、わたしは卒業した。




真治はわたしに甘えてしまっているだけなのか…



どんなことがあっても、2人に【別れ】はないと思われているのだろうか…

No.188

ただ私もすっかり真治に依存していた。



決してカッコイイ男ではない。


決して浮気しない男ではない。




古着のTシャツかトレーナーに、UNI●LOのジーパン、ロゴ入りのキャップとN●KEのスニーカー。



それが真治のいつものスタイル。



出会い系のサイトを覗いては女の子とメールのやりとりを繰り返す。




こんなこと書いてしまえば真治に長所はないように感じるのだが、わたしはそれでも真治が好きだった。





一緒にいて楽だから…。



優柔不断な私を引っ張っていってくれる。



ちょっとしたことに包容力も感じる。




ただこれだけ…


これだけで私は真治とずっと一緒にいたかった。




真治は私のことどう思ってるのかわからない。




『ハルには俺がいなきゃダメ。ハルは俺が必要なんだ。』



こんなことをよく真治は言っていた。




私も真治も、お互いに依存し合っていた。

No.189

真治とは今後どうしていくべきかをゆっくり考えることにする。




だって真治のこと嫌いじゃない。



今までずっと一緒にいたぶん、別れるなんて考えたくなかった。




違う。


別れる【勇気】が見出だせずにいただけ…。




その頃はそんなことも気づかなかった私。





だれかに教えられるまでは…。

No.190

桜が咲き乱れる季節…



私は自動車免許をとりに行く。



通学じゃ面倒くさいし、料金も安い合宿を選んだ。




行き先は那須高原。なんとなく。




かさ張る荷物を片手に新幹線へと乗り込む。



新幹線に乗るのは何回かあったが、独りで乗るのは初。ちょっと心細い。




目的の駅で降り、未知の土地に踏み込む。




合宿先の教習所への送迎バスを探していると、私より大人びた女の子が1人いた。



その子も同じ送迎バスへ乗り込む。



(あの子も今日から合宿かぁ。友達になりたいなー。)

No.191

バスが教習所へ着き、受け付に手続きをするときに私はその子に声をかけた。



とても気さくな女の子ですぐ打ち解け合った。



少し格好が派手な女の子だったが、キャバ嬢をしているとのこと。


合宿中は常にゼブラ柄のストールをまとい、VUIT●ONのアクセポーチを持ち、Di●rのサンダルを履いていた。



私と同い年の18歳だったがその子はタバコも吸っていた。



教習を受ける以外は暇な合宿生活も、キャバ嬢と共に行動することで楽しく過ごせた。



メイクの仕方やアイロン、コテの使い方…私はキャバ嬢から知識をもらった。

No.192

私にとっては気持ち悪い男性教官がいたが、キャバ嬢にとってはいい獲物になっていた。


さすがはキャバ嬢。口がうまい。


その気持ち悪い教官が教習が終わってから、キャバ嬢のためにわざわざコンビニへ行き、値段の高いハーゲンダッツのアイスを袋いっぱいに買ってきた。



『なんかいっぱいアイスもらったから一緒に食べよ-❤』


『えっ⁉全部ハーゲンダッツじゃん💦どうしたの?😅』


『アイスが好きなの-❤食べたい-❤❤って言ったらアイツ買ってくれた👍』


『わたしアイツ気持ち悪いから嫌い⤵』



『そお⁉けっこうイイ奴だよ😄✨』


『…さすがだね💧』




そんな感じで教習期間の2週間はあっと言う間に終わった。



私もキャバ嬢も延期することなく卒業できた。



帰りの新幹線も一緒に仲良く帰った。もちろん喫煙車両で。

No.193

キャバ嬢も私と同じ埼玉から来たので、次の日は一緒に免許センターに行って学科を受け、真新しい免許証をもらった。






それ以来キャバ嬢とは連絡は取っていないが、きっと彼女は今ごろ東京のどこかにいるだろう…



キャバクラで稼いだお金で東京に引っ越し、美容の学校に通うと言っていたキャバ嬢…



高校は中退してしまったから親に迷惑はかけられないと、学費や引っ越し代はすべて自分で出すと言っていた…





わたしはそんな彼女を今でも尊敬している…。

No.194

免許は取れた。


しかし私はこれから何をしたらいいかわからず、方向性を見失っていた。



大学には進まなかったが気持ちのどこかでまだ婦人警察官の夢を諦めきれないでいたのかもしれない。どこかがモヤモヤしていたのは確かだった…。




そのうち、母親が『東京○○○○ー』という予備校?みたいな学校に入塾するのを私に薦めてきた。



看護師や教師、警察官や消防士などの公務員向けの試験、進学を売りにしている学校だ。




電車で20分の場所。週に3日、朝から夕方まで授業は続いた。


授業の内容は意外にもよく理解でき、テストも揚々とこなせた。



勉強はついていけることがわかった私は、もっと自分のファッションに気を遣うようになっていった。私服で週に3日も電車に乗り、自分と同じクラスにはいろんな世代(18~29歳)の男女がいたからだ。

No.195

私はまずギャル服を卒業した。クラスでは私が一番若く、歳上の女性と男性がほとんどだったので落ち着いた服を買うようになった。


クラスの生徒は授業の休み時間を通してみんなでワイワイ盛り上がったり、とても仲良くなった。






そんななか、私の19回目の誕生日を迎えようとしていた初夏の出来事だった…

No.196

そのクラスで親睦会という名の飲み会をすることになった。



秋ぐらいから徐々に試験が始まるので、その前の源担ぎみたいなもんみたいな。



授業の終わりに近くの居酒屋に集合した。集まった人数は15人前後。



わたし、まだ未成年だったが居酒屋の店員に身分証などの提示を求められなかったのですんなりアルコールを注文できた。中には身分証の提示を請求された生徒もいたが…。





みんなでワイワイうるさく飲み明かした。すごく楽しかった。



居酒屋を出て、二次会に参加するメンツは私を含め4人しかいなかった。男女2人づつ。




電車もなくなる時間帯だったので、そのメンツの内の1人、23歳の男の家へ向かうことにした。



男の家へ行くのなら私は正直帰りたかった。




その男の家(実家)には深夜だというのに誰もいなかった。いま両親は旅行中、兄弟は自立しているとのこと。



私は男に興味なかったから、その男の部屋でその男の自慢話や過去の恋愛話を聞いているのがめんどくさかった。


いや、きっと他の2人もそんな話、興味なかったと思う。しかし男は永遠としゃべっていた。



深夜3時、そろそろアルコールも抜けてきてぼちぼち帰る事となった。



その男が車を出し、住んでいる場所が近い人から順に送ってくれた。




…私がいちばん遠かったので、最終的に車内は私とその男、2人きりになった。

No.197

だいたい30分くらい走って私の家に着いた。



『ありがとうございます。助かりました。』



と言って別れた。



家の玄関を開けようとバックの中の鍵を探すが見つからない…


(……!!っうわー鍵ないし😞⤵)



親に電話をかけてみるがもちろん出てくれない。



もうどうしようかと落ち着きのなくなった私の目に止まったものがあった…




あの男の車!



まだいんの!?💧





うちの玄関近くにまだ男の車が止まっていた。





「どうしたのー?」



と男がウィンドウ越しに話しかけてきた。





「鍵ないし…玄関開かないし…💦」




「なんだぁー、それじゃあまた俺んちに行く??」




少し嫌だなーとは思いつつも、このまま朝まで閉め出しを食らうよりはと思い、わたしはまた男の車に乗った。

No.198

とりあえずまた男の部屋に戻り、今度は私の恋愛話をさせられた。




窓から見える空は少しずつ明るく染まっていく…。




私の過去の恋愛話を一通り聞いた男はだまりこくって少し難しい表情をしていた。



過去の恋愛話って言っても、いま付き合っている【真治】の話をしたのだ。



真治はまだ定職に就いておらず、バイトする日々を送っていた…25歳にもなる男がバイトって…💦


正直、真治は大好きだったが、就職してないことが私の気持ちをかなり鈍らせた。



真治は何があっても私たちに【別れ】はないものだと思っている…。真治は甘えている。きっとこの先も私に甘えて就職しないかもしれない…。それじゃあお互いにマイナスだ。この恋愛に終止符を打った方がいいのかもしれない…




そんな気持ちと、まだ真治と一緒にいたいという気持ちが私の中で格闘していた。

No.199

「25歳でバイトってヤバいっしょ!?早く別れるべきだよ!」



男は言う。




(なんだよ💢定職してないお前に言われたくねーし❗)



心の中で呟いたが、男に見せる表情は落ち着いていた。



しかし正直、真治とは別れるべきだという気持ちが心のスペースの半分以上を占めていた。




(やっぱ別れた方がいいんかなー…でも真治は大好きだしなー)



私の頭は混乱する。







「そうだ❗そんなに悩んでるならオレと付き合わない⁉そしたら別れられるんじゃん⁉⁉」




……は⁉なにこの人💢……

No.200

男の強引な言葉に苛立ちを覚えつつある私に、男はまた強引にキスをしてきた…


⁉⁉まじ何なんコイツ…





キスは浅く長く、男の手は私の服へと伸びる…




「エッチしちゃえば別れられるっしょ?それにオレと付き合えるし💡」



男のあまりにも自己チューな考えに圧倒されてしまった。




すでに刻は明け方…2人とも眠さのピークで冷静な考えなんてできなかったのかもしれない…





確かに…コイツと無理やり付き合えば真治と別れられる…



私は本当にバカな女だ…


まわりの状況に身を委ね、また自分を見失ってしまうのか…





男と私が1つに重なった、初夏の出来事だった…。

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