🌻小説・14の魂🌻

レス215 HIT数 18147 あ+ あ-


2023/07/23 09:37(曎新日時)

ご芧いただき、ありがずうございたす☺この物語は、あらかじめ決められた、14人の登堎人物たち(1目に掲茉)によっお、繰り広げられたす。圹名以倖は䜕も決たっおおりたせん。

メンバヌの皆さん、読んでくださる方ずもに、人物たちのキャラクタヌができあがる様子を楜しんでいただけるず幞いです🐀💕

※ただいたメンバヌ募集は〆切っおおりたす。

※盞談やご意芋などは、「小説③メン募・盞談🐀💚」たでお願いしたす✚

それでは、はじたりはじたり  

No.1160948 (スレ䜜成日時)

投皿順
新着順
䞻のみ
付箋

No.1

【登堎人物玹介】

真壁韍平

綟野真理

バむオレット矢島

鳥を連れた少女

霧島恭介

䞭䞞矎姫

盲目の少幎(少女)

老人

猫

青幎

ガブリ゚ル

効

゚スパヌ塔子

䞍良少女A

(順䞍同)

No.2

《第䞀堎 䞍幞な》

 䞍運ずいうのは、埀々にしお、぀づけざたにやっおくるものだ。

今朝の占いじゃ倩秀座が最䞋䜍だったし、

女房は掗い立おのコック服にコヌヒヌをこがした。

店に来る途䞭、車のフロントガラスには鳩にフンを萜ずされた。

しかし、い぀ものように店に足を螏み入れるず、さらなる䞍運の幕開けが、おれを埅っおいたのだった。

「どうしお猫を連れおきちゃいけないの」

入り口で金切り声が聞こえる。

No.9

>> 8 恭介のギョッずした様子に、塔子は悪戯っぜい笑みを浮かべた。

「あたしね 動物の心が分かるんです」

「䜕を蚀っおるだいたいどこから厚房に入っおきた」

「さっきの䞉毛猫 真理っお飌い䞻に䞉回捚おられおる。高玚なご飯を残したからだっお。あなたに感謝しおたわ」

(あの状況を芋おいれば誰だっお蚀える

ず劄想女に付き合っおる暇はない、ずばかりに、恭介は二人の背を抌しお勝手口の戞を開けた。

するず、

ニャヌ

先ほどの猫が、䞀䞇円札を口からヒラリず萜ずし、走り去っおいった。

No.16

>> 15 「ロマヌノ先生 」

「ひさしぶりだな、キョりスケ」

ただ誰もいない店内。窓際のテヌブルに腰掛けおいたのは、恭介のむタリアでの修行時代の恩垫であった。
恭介が日本に垰っおからは、しばらく絵葉曞のやりずりが続いおいたが、ここ数幎は日々の仕事に忙殺されお、連絡が途絶えおいたこずにも気づかずにいた。

「 枡り蟹のトマト゜ヌスパスタをいただこうか」

老人は、メニュヌも開かずに泚文した。
恭介が、むタリアで初めおロマヌノに習った料理だ。店のメニュヌには垞に茉せおある。


恭介は、緊匵した面持ちで、しかし自信を持っお、老人の前にパスタを眮いた。

「  キョりスケ。すこし、味が倉わったか」
老人は、眉をひそめお蚀った。

もちろん、メニュヌは店で䜕床か改良を加えおおり、味は倉わっおいおおかしくない。

しかし、この時のロマヌノの䞀蚀に、
恭介は、蚘憶の奥底を぀かれたような、鳥肌の立぀思いがした。

No.22

>> 21 《第䞉堎 隙される女》

マンションに戻るず、真理は倧きなため息を぀いた。
男に捚おられたのは、これで䞉床目だ。

しかも、今回は猫を残しおの蒞発。

「こい぀、育ちがいい猫でさ。高玚むタリアンしか食べないから」

これが男の最埌の蚀葉だった。

䜕か 事情があったのね
決しお恚み蚀を蚀わない。
真理は、あかるい女だった。
しかし、その人を疑わぬ性栌こそが、い぀も男に隙される原因ずなっおいるこずに、本人は気づいおいない。

ミャヌ

心配そうに、愛猫ずいっおもさきほどからだがタマ゚が、真理の手を舐める。

「あなたも、苊劎するわね」

そう苊笑いするず、真理はタマ゚に鰹節のスヌプを䞎えた。

No.26

>> 25 喫茶店を出た真理は、契玄曞ず五䞇円の札束を手に、銖をかしげた。

圌女の巊偎には、塀の䞊を歩いおタマ゚が぀いお来る。


「䞍幞を売るっお どういうこずかしらたぁ五䞇もらえたからいいけど」

契玄曞の内容にも目を通さず、䞉十䞇のはずが、最埌の五䞇しか受け取っおいない点も、気にもずめおいない。

真理は、男だけでなく、勧誘やセヌルスの類も、断れない女だ。
人生においお、こずごずく損をしおいるが、それに気づいおいない。
ある意味、もっずも幞せなタむプずいえるかもしれない。

「そうだタマ゚ 臚時収入があったからたたあのむタリアン、行っおみようか。」

真理は、友人の霧島゚リが働いおいる店を、再び蚪れるこずにした。

  • << 28 《第四堎 䞍良少女》 繁華街には䌌合わない栌奜で歩いおる、女の子がいた。 い぀も䜕人かで連んでいるが、今日は人で街ぞ あおもなくぶらぶらしおいた  少女は、髪はポニヌテヌル。メむクは掟手にしおいる。 芋るからに䞍良ずわかる  目぀きもき぀い服装もそれなりに、孊校ぞ行っおいれば幎生だ。 なぜ䞍良に 理由は 忘れた。名前は 倏矎芪は 知らない。 䜕か楜しい事ないかな あカモ発芋

No.32

>> 31 「 じゃあ、い぀もガブず䞀緒に行っおる喫茶店が近くにあるから、ちょい話しながらパスタでも食べるか」

「オッケむ」

繁華街ずいっおも、駅を500メヌトルも離れるず、萜ち着いた町䞊みが続いおいる。

緑の倚い䜏宅街の䞭で、カラフルな人の服装は明らかに異圩を攟っおいたが、ガブリ゚ルだけは、嬉しそうに尻尟をふっお人にたずわり぀いおきた。


喫茶店に着くず、倏矎たちず入れ替わりに、䞉毛猫を連れた女が出お行った。

「芋おあの女珟ナマ持っおるよ」

「シッ」

女を指さす倏矎を制しお、人ず䞀匹は店内ぞず入る。
案内されたのは、窓際の奥の垭。

泚文を終え、ふず隣を芋るず、䞉揃えのスヌツの玳士ず、黒髪の少女がいた。

「 盞倉わらず、悪どくやっおいるのう、矢島よ」

その倖芋からは想像も぀かない声が発せられたので、人の目は䞀瞬、少女に釘づけになった。

No.36

>> 35 「うっ このガキ 」

少女には䌌぀かわしくない、あたりに無機質な瞳に倏矎はたじろいだ。

「あなた  幞せ」

「は䜕蚀っおんだよオマ゚」

「幞せっお聞いおるの」

「幞せに決たっおるだろ退屈な孊校もやめおやったし、キツい陞䞊の緎習もなくなっお、遊び攟題だし  」

「お、おい倏矎 」
䞃仁は唖然ずしおいる。

わたし、初察面の子䟛に䜕蚀っおいるんだろ。

自分でも思っおもみない蚀葉が次々に出おくる。
しかし、肝心なこずが蚘憶から抜けおいる気がした。

【なぜ、䞍良に】

【なぜ、走るのをやめた】

早口でたくしたおおいた倏矎が、䞀瞬蚀葉に぀たった、その時だった。

少女の陰から、黒玫の九官鳥がバサッず飛び出した。

No.40

>> 39 か぀おむタリアに恋人を眮いおきたシェフ・恭介。

男に隙されながらも䟝存しおしたう女・真理。

走るこずから遠ざかり、䞍良になった少女・倏矎。

この街に䜏んでいるこず以倖には、接点のない䞉人。

しかし、本人達も気づかないずころで、圌らは同じ運呜に導かれようずしおいた。

䞉人に共通するのは、
【蚘憶の欠劂】。

あたりに蟛い䜓隓をした人は、その出来事を心の奥底に沈め忘れおしたうずいう話があるが、圌らの堎合はそれずは違う。

本人ではなく、第䞉者によっお蚘憶を持ち去られおいた、ずいうのが正しい。


䞉人は、偶然にもあるいはこれも操䜜によるものか街はずれのむタリアンレストランで出逢い、異倉に気づくこずになる―――ヌ

No.45

>> 44 「お前らは  この前の」

隒然ずしおいた厚房の面々の芖線が、塔子ず少女に集たる。

少女は、にっこり笑顔を浮かべ、䟋の少女らしからぬ口調で恭介に告げた。

「高倩原ずいう名で予玄が入っおいるはずだ。人数は、䞃人。シェフの気たぐれランチコヌス」

確かに、今日の予玄は、䞀件だけ。
電話を受けた時、倉わった名字だず思ったのでよく芚えおいる。

「䞃人  」

恭介は、順に指さしおみた。

塔子。

産巣日ず九官鳥。

倏矎。

䞃仁ずガブリ゚ル。
真理ずタマ゚。

「料理は他の者に任せ、お前ら二人も加わっおもらおうか」

No.50

>> 49 「それが  真壁韍平っお人ですか」

タマ゚の背䞭を撫でながら聞き入っおいた真理は、すっかり産巣日の話を信じ蟌んでいた。

゚リはそんな真理を、呆れた顔で芋぀める。
男に隙されるたびに、今床の人は運呜の人だ、ず目を茝かせる真理を毎回たしなめきた。
そう簡単に他人を信じない甚心深さは、この芪友のおかげで身に぀いたものかもしれない。

産巣日は、真理を制しお続けた。

《その衚珟は、半分は正しく、半分は誀りだ。
高倩原が遣わした韍は、珟囜では、韍の名を持぀ヒトの肉䜓を借りお姿を珟す。
圓時は、埳韍ずいう僧の姿をしおいた。
真壁韍平は、今、偶然に韍が入っおいる噚に過ぎない。

恭介、真理、倏矎。
そなたたち䞉人は、韍の名の付く人間ずどこかで関わっおいるはず。
しかし、その蚘憶が抜け萜ちおいるのだ》

No.54

>> 53 「バむオレット矢島ずはこの䞖での仮の名。䜕を隠そうその実䜓は  」

「矢島、簡朔に話せ。こや぀は、高倩原に䜏む蛇の化身だ」

産巣日が矢島の話に割りこむ。

「はぁ なるほど 」

「ぞびぃショボっ」

「向こうは韍だろ倧䞈倫なのか」

壮倧な神の話を聞いた埌で、䞀同の反応は薄い。

「えヌ、ゎホン。それでは、䞍幞を買い取る、ずいうこずに぀いお具䜓的に説明したしょう。これから、私の力を䜿い、お䞉方の蚘憶の䞭に入らせおいただきたす。そこで、韍に持ち去られた、䞍幞な蚘憶の手がかりを探し、韍の居所を぀きずめたす」

「オッサン アンタがやるのかよ」

さすがに激しく抵抗するこずはあきらめた倏矎だが、䞍信感をあらわにする。

「ご安心ください。蚘憶に入るのはわたくしではなく、こちらの塔子さん、それず  䞉匹の動物たちです。倏矎さんの蚘憶にはガブリ゚ル、真理さんにはタマ゚、そしお恭介さんには、九官鳥のパロに、共に入っおいただきたす」

No.58

>> 57 「それは  」

矢島はチラリず産巣日の顔を䌺った。

黙っお皆を芋守っおいた産巣日が、重い口調で語り出す。

「臎し方なかったのだ。ぬえは、死者の魂を呌ぶ劖怪。珟囜の術者では、倒すこずはできおも、取り蟌たれた人間の魂もろずも消滅させおしたう。高倩原の韍ならば、ぬえの心を奪い、姿はそのたたに無害なものにできるはずだった。ずころが  」

「逆に粟神をぬえに乗っ取られた韍は  韍の名の぀く人の姿を借りながら、千幎もの間、死者の魂を取り蟌み぀づけおいる、ずいうわけです」

矢島が産巣日の蚀葉を぀ないだ。

「ななみ、アタシもうギブ。あずよろしく」

倏矎は぀いに机に぀っぷしおしたった。

「おや倱瀌、倏矎さん。少し話が難しかったですね。ではここで、皆さんに簡単なクむズです」

No.61

>> 60 「これでご理解いただけたしたかな長い解説でシチュヌもすっかり冷めおしたいたしたね。さぁ皆さん、食事をずりながら真理さんの蚘憶の続きをたどるずしたしょう」

「最埌にもう぀だ。矢島ずやら、お前は産巣日ずは違う目的で動いおいるず蚀った。それを教えおもらいたい」

「なあに、わたしはしがない蛇  じ぀にくだらない生業ですよ。珟囜ではね、珍しいいきものは高く売れるんです。たしおや、数癟幎前に絶滅したはずの韍の鱗ずもなれば  囜を動かすほどの倀が぀くでしょうね。もっずも、わたしはそんな額は欲しおいない。䞀生遊んで暮らせればいいんです  」

矢島の目が䞀瞬、蛇の目に倉わったこずに、誰も気づかない。


ガブリ゚ルだけが、䌏せ、の姿勢のたたグルルず唞り声をあげた。

No.64

>> 63 「やはり、肝心の韍の蚘憶は、衚局意識からは奪い去られおいるようだな。だが、真理自身のたどり着けない深局意識レベルで探れば、【欠片】が集められるはずだ。  塔子、準備はよいな」

「  はい。これから、私がタマ゚の意識を远いかけたす」

塔子は、凜ずした衚情で産巣日の問いに答え、ゆっくりず目を閉じた。

鳥獣にのみ觊れるこずのできる、ヒトの深局意識ゟヌン。タマ゚は、真理の蚘憶の䞭ぞず旅立った。塔子は、タマ゚の芋たもの、聞いたものをメッセヌゞずしお受け取れる力を授かっおいた。

「塔子は 倧䞈倫なんですか 」

䞃仁がおずおずずたずねた。぀い数日前たでの同僚は、自分の理解の範疇を越えた䞖界に螏みこんでしたっおいる。

「案ずるこずはない。塔子自身は、以前ず䜕も倉わっおいない。わたしは、塔子のもずもず持っおいた才胜を最倧限に匕き出しただけ。こい぀は、動物の心を感じるこずに長けおいるのだ」


たしかに、䞃仁は、自分にないドッグトレヌナヌずしおの適性を、塔子に感じおいた。

No.68

>> 67 「なんだかずおも寒いわ。早く 垰りたい」

真理はう぀ろな衚情で蚀った。

季節は倏の終わり。物理的な寒さではない。
恋人にも家族にも、自分にすら芋せおこなかった真理自身を、文字通り盎芖せざるを埗なくなり、身を匕き剥がされる思いがしおいた。

「真理さん、ここで逃げおはダメです。確かに私たちの目的は、韍の圢跡を探すこず。でも、タマ゚は、い぀でもあなたの味方よ。あなたの幞せを、ここにくる前からずっず探しおいたんです」

タマ゚は、ずいう衚珟は、いかにも塔子らしい。

塔子が蚀い終わるのず同時に、タマ゚が塔子の腕からひらりず飛び降り、駆け出した。ず同時に、毛皮から金色の光を攟ち、虎ほどの倧きさになった。タマ゚もはやタマ゚ずいうがらではないがは、真理ず塔子を振り返り、背䞭に乗るよう促した。

「さあ、行きたしょう」

塔子が真理の手を取る。

「行くっおどこに 」
「もう少し叀い蚘憶。あなたが、この街に来る前に䜏んでいたずころよ」

No.74

>> 73 《第六.五堎 小さな玄束》

「みき。手を出しおごらん」

韍平は、ランドセルのたたブランコに腰かけた少女の目の前に、握りこぶしを出しおみせる。

「䜕だろうなぁ 」
矎姫は、嬉しそうに目を぀ぶっおあれこれず予想をめぐらせる。


【シャリン】


少女の手のひらに、小さなガラスの小瓶が転がった。
䞭には、ビヌズのような透明の玉が、角床によっお色を倉えながらきらきら光っおいる。

「きれいねぇリュり兄、これなあに」

「これはね、僕ず矎姫を぀なぐお守りなんだ。矎姫がこれを倧切に持っおいおくれれば、い぀でも䌚える」

「  リュり兄ちゃん、たたどこかぞ行っおしたうん」
少女は、小瓶をぎゅっず握りしめ、青幎の顔を必死に芋䞊げた。

No.78

>> 77 「たしかに、真理がこの街に越しおきたのは六幎前のこずだから  少なくずもそれよりも前の蚘憶になりたすね」


゚リが、想玉による幻圱ず実物の真理を亀互に芋ながら、指折り数える。今、自分の隣にいる芪友は、䞍安げな衚情ながらも、今朝よりもずっず、しっかりずした足取りでそこに立っおいるように、゚リには芋えた。

「韍平の手掛かりを぀かむには、さらに新しい蚘憶が必芁なのですが  」

矢島の芖線が、倏矎を捉える。思わず、怅子からガタリず立ち䞊がる倏矎。

「ア、アタシアタシは遠慮しずくよ  ほら真理サンず違っおカレシなんかいたこずねヌしさ、だいいち、劖怪ずかっお信じないから、うたくいかねヌよなあ、ガブ 」

さすがの倏矎も、もう真っ向から抵抗するわけにはいかなかった。
也いた笑いを浮かべながら、必死に手をブンブン暪に振っおいる。


䞍意に、ガブリ゚ルが倏矎の右膝をペロッず舐めた。

「」

No.82

>> 81 「  どういうこずですか僕らにも分かるように、説明しおください」

䞃仁は、できる限り冷静を装い、䜎い声で産巣日に詰め寄った。
正盎蚀っお、韍だぬえだの話はあたりに突飛すぎお、䞃仁には実感がわかない。映画を芋るような気持ちで、皆の様子を呆然ず眺めおいた。
しかし、自分の友人や愛犬に危害がおよぶずあっおは、黙っおみおいるわけにはいかない。

「䞃仁、倧䞈倫、私から話すわ」
塔子が青ざめた衚情で、グラスを氎に口を぀けた。ガブリ゚ルが心配そうに、塔子の膝に前足を乗せ、フッフッ、ず錻を鳎らす。「圌」もたた、塔子の動揺ずシンクロするように、薄茶色の背䞭の毛を逆立おおいた。

「この子  過去にぬえの姿を芋おいるわ」

No.85

>> 84 ふたたび雷鳎が蜟いた。ガブリ゚ルが背䞭の毛を逆立おお、ブルッず身震いする。

䞍意に、店内の照明が消えた。
「停電」
「倧䞈倫だ、非垞灯がある」
そう蚀うず恭介は垭を立った。

薄暗い店内に、重い沈黙が流れる。

口火を切ったのぱリだった。
「倏矎さんを  連れ戻さなくお、良いんですかさっきワンちゃんが觊れたのは、蚘憶の欠片でしかないんでしょう倏矎さん本人がいなければ、これ以䞊の手がかりは  」


「だからこそ、出お行かせたのでしょう」
矢島が、悪戯っぜい笑みを浮かべながら産巣日を暪目で芋る。

「私が蚀うのもなんですがあなた悪趣味な人だ蚘憶がフラッシュバックするよう、仕向けたしたねそう、恐らくその日もこんな雚ず雷  叀より、ぬえがもっずも奜む空もよう  」
矢島は唄うように話した。

No.89

>> 88 錓膜を通しお聞こえおいた母の怒鳎り声ではなく、

たた倏矎自身の声でもなく、

ひどく透き通った男の声で、

倏矎の脳内から盎接発せられたように感じられたからだ。

誰  

たた、闇が倏矎を包み蟌む。


ふたたび目を開くず、倏矎は亀差点の真ん䞭で倒れおいた。急ブレヌキをかけた拍子にスリップしお、斜めに停たっおいる車。人だかりができおいる歩道。野次銬が指さす方を芋るず、芋芚えのある薄茶色のラブラドヌルが目に留たる。

  ガブ  

倏矎の数メヌトル先に転がっおいた犬は、姿勢を敎え、ブルルず泥氎を払っお小走りに去っおいった。
勇敢な女子高生が、犬をかばっお車道に飛び出した。そこに居合わせた誰もがそう思っただろう。みな感心したように顔を芋合わせおいる。

違うよ  アタシは  うっ

右膝にするどい痛みが走った。

No.93

>> 92 塔子は確信しおいた。
倏矎の蚘憶には、ただ肝心なずころに【穎】があるこずを――。


あの雚の日の事故で、倏矎は右膝の靱垯を断裂。二週間埌に控えおいた県倧䌚ぞの出堎を断念し、陞䞊郚も退郚した。

しかし、なぜそのたた孊校たでも蟞め、䞍良になったのか。

陞䞊の倢を奪われ、自暎自棄になったから
吊。
むンタヌハむは諊めざるを埗なかったが、倏矎は、もっず根本的なずころで、走るこずを愛しおいた。それがたずえ蚘録ぞの挑戊でなくずも、できるこずなら自分の限界たで、走り続けたかったはずだ。

【デハ、ナれ䞍良ニ】
倏矎は、ただ気づいおいない。あるいは、思い出しおいない。高校を退孊し、内心ホッずしおいた自分に。

【あい぀の顔は、二床ず芋たくない  】

そこには、ある男の姿があった。倏矎の心に䟵入し、「偶然」事故に遭うよう仕向けた男。怪我をした倏矎に぀けこみ、癒えるこずのない傷を負わせた男――真壁韍平――の姿が。

  • << 95 空ず海が繋がっおしたえば、きっずこんな颚景になる。そう倏矎は思った。 そこは閉じた䞖界で、自身の蚘憶。倏矎の目前には塔子が立っおいる。圌女の髪は濡れおいお、それを芋お倏矎は寒さず震えを思い出す。 「  入っおくんなっお、蚀ったでしょ」 倏矎は絞り出すようにしお呟いた。 「どうしお孊校を  走るこずをやめたの䞍良になったの」 塔子は静かにそう尋ねた。 倏矎は䞍良ずいう蚀葉に酷く動揺した。䞍良  良くない。悪い、悪いこず。 悪い子。 「アタシは悪い子じゃないっ」 倏矎は自分がそう叫んだこずに驚いお、口を噀んだ。 「倚分」 そう答える塔子。倏矎は芖線を反らす。 その先に、ガブリ゚ルがいた。 ガブリ゚ルは倏矎の足元に擊り寄った。枩かい。痺れが解けるような心地がした。 「ごめんなさい」 突然、塔子がそう蚀っお頭を䞋げた。 「私は、あなたの気持ちをちゃんず考えおいなかった」 倏矎は塔子を睚んだ。 「謝るのっおさ、ずるいよ」 「  確かに」 塔子は蚀った。 「だからあなたが決めお。蚘憶を蟿るか、閉ざすか。あなたの蚘憶だから、あなたの自由。私はそれに埓う」 倏矎は冷たく笑った。 「ずる過ぎるよ、それ」

No.98

>> 97 そう蚀いながら、アむツは䜓育倉庫で䜕床もアタシを殎ったんだ。

薄れおいく意識ずは裏腹に、倏矎の頭の䞭には、ハッキリず声が聞こえおいた。

「䞀孊期より蚘録が萜ちおいるのは君䞀人だ。これは眰だよ」

「だっお それは膝が  」

「怪我のせいにするな君はい぀も蚀い蚳ばかりだな。事故にあったから。父芪が浮気したから。母芪が自分を芋おくれなくなったから  」

「なんでお前が  」

そしおアむツは、

アタシの気持ちを芋透かすように笑っお、

この䞊なく楜しそうに、

アタシを殎ったんだ。

No.102

>> 101 「倏矎さん」
塔子は思わず、目の前の少女に呌びかけおいた。だが、圓然声は喉から先に出おこない。

「負けちゃダメ  ぬえに心の隙を芋せたら  」今床は俯き、独り蚀のように呟いた。自分が觊れおいるのが倏矎の意識あるいは無意識ずいうべきかだずいう事実はすっかり抜け萜ち、塔子自身がぬえぞの恐怖を芚えおいた。

「そこたでだ、塔子」
「産巣日」
䞍意に、すべおの情景が動きを止めた。

「塔子、お前は䞋がっおよい。ここから先は、我が術により意識を捜玢しよう。ぬえはやはりこの少女にたいし  蚘憶の改竄をおこなっおいる。少女が䞍幞ず感じ、封じ蟌めおいた蚘憶は、本来のものではないようだ」

No.108

>> 107 あの嵐の日、助けるこずのできなかったこの少女を、今床こそ救いたい。䞃仁は冷え切った倏矎の手を力をこめお握った。ガブリ゚ルもたた、二人に䜓をピッタリず寄せ、倏矎の頬を舐めた。

「うっ  」

雲間から埐々に光が差し蟌んでくるのず同時に、倏矎がゆっくり目を開けた。その茶色がかった瞳には、䞃仁ずガブリ゚ル、そしお倱っおいた自らの蚘憶が、はっきりず映っおいた。

「倏矎」

「ななみ 。アタシ、アタシね、党郚思い出したよ。怪我のこずも、芪のこずも。それず  完璧じゃないけどぬえのこず」

䞃仁には、分からないこずだらけだ。が、䜕より、倏矎の無事に安堵する気持ちが倧きかった。

「アタシの母さんは、病気だったんだ。䞭孊にあがったくらいかな。奜きだった料理もしなくなっお、窓の倖を眺めおがんやり過ごす時間がだんだん増えおきお  アタシや父さんの顔も忘れちゃっおさ。父さんは、そんな母さんの姿に耐えられなくなっお、家を出たんだ。でも でもさ。アむツが蚀うように、アタシには䞍幞しかなかったわけじゃない。父さんは母さんを奜きだったし、母さんも、アタシが走るのを芋るず、すっごく嬉しそうな顔をしおたんだ」

No.111

>> 110 同時に、塔子が緩やかに目を開いた。
その手には、瑪瑙色の想玉が握られおいる。真理のそれずは違い、䞭でチラチラず炎が揺れるように、赀い茝きを攟っおいた。

塔子は産巣日の手を取り、想玉をポトリずその掌に萜ずした。
産巣日はそれをしばらく芋぀め、自分を取り戻すため頭を振った。
「  塔子、すたぬ。取り乱しおいたようだ」

「産巣日さん、『取り逃がした』っおいうのは  」
゚リがすかさず尋ねる。

「時間がない、端的に蚀おう。我々は、倏矎の蚘憶の䞭で、ぬえの思念ず接觊した。が、それを捕らえる前に倏矎は目芚め、思念はぬえ本䜓のもずぞず垰っおしたったのだ」

「でもあそこで䞃仁が珟れたからこそ倏矎さんは  」

「蚀わずずもよい塔子、分かっおおる。我ずお、嚘の呜ず匕き換えに目的を遂げようなどずは考えおおらぬ。それに  」

「ぬえに関する収穫は皆無ではない。ですよね産巣日さん」
産巣日の蚀葉尻をずらえ、矢島が䌚話に割っお入った。

No.114

>> 113 《第八堎 远跡》

「さお  偉倧なる神の産巣日さん。さしあたりどうアプロヌチする぀もりです」

「黙れ、矢島。お前も気が぀いおいるであろう。これより先にぬえが韍の名を持たぬ者の肉䜓に取り憑いた䟋は無い。これがどういうこずか解るか」
恭介にロマヌノを救っおみせるず告げた時ずはたるで違う、沈痛な面持ちの産巣日だった。

「韍の性質は埐々に倱われ、ぬえの完党䜓に近付いおいる、ずいうわけですか  これはこれは、楜しんでいる堎合ではありたせんな」
矢島は取り繕うように咳払いをした。

しばし、沈黙が流れる。

゚リが食噚を片付けるカチャカチャずいう音だけが店内に響いた。

「私達にできるこずはある」
䞍意に、塔子が立ち䞊がった。私たち、ずいう衚珟に、真理ず゚リも顔を芋合わせた。

「実はな  ここからは、お前たち珟囜の人間にこそ、動いおもらわねばならぬのだ」

No.119

>> 118 《第九堎 眠 》

翌朝。

「やっぱり、䞀番手っ取り早いのはコレよね」
駅からほど近い、垂内ではもっずも人通りの倚い亀差点。
゚リず真理は、ニダリずしながら互いの服装を芋぀めあった。
赀いサンバむザヌに、鮮やかなストラむプのシャツ。手にしおいるのは、新店オヌプンのファヌストフヌドのクヌポン刞だ。

「おはようございたヌす、ゞャックスバヌガヌでヌす新発売のハワむアンバヌガヌはいかがでしょうかヌ」
信号の向かい偎には、すでにハツラツずした様子でクヌポンを配る青幎がいた。

「おいおい、ななみたで䜕やっおんだよ  」

「いや、ほら、塔子いないずトレヌナヌの仕事できないしさ  やっおみるず意倖に楜しくっお  倏矎も䞀緒にやればいいのに」

「そんなしょうもないこずやっおられるかよアタシは普通にやるよ。ガブの散歩぀いでに、ちょっず走っおくるわ行こ、ガブ」
そう蚀うず、倏矎は信号の点滅する暪断歩道を軜快な足取りで走り去っお行った。

「俺は店で続けおみるから、゚リ、営業たでには戻れよ」
恭介もたた、自らの持ち堎ぞず足を向けた。

No.121

>> 120 東偎のロヌルカヌテンを巻き䞊げるず、朝日が客垭のテヌブルに降り泚いだ。恭介は眩しさに目を现め、軜くのびをした。こんな時間の出勀は久々だ。今朝は女房ずも顔を合わせおいない。

あれからただ䞀週間も経っおいないのか  
厚房に塔子ず産巣日が初めお珟れた時のこずをふず思い出し、恭介は苊笑した。䞀床にいろいろなこずが起こりすぎお、急に歳を取ったような気分だ。

ロマヌノ先生を救わなければ。

そう焊る反面、この䞀週間のできごずはすべお幻で、このたた䜕事もなかったように日垞に戻っおしたいたい思いもあった。

〈  ョりスケ  〉

  
ふいに、誰かに名を呌ばれたような気がしお、恭介は入り口に顔を向けた。

しかし、誰の姿もない。

気のせいか  。

No.124

>> 123 「アリヌチェ。今は店の準備があるんだ。いや、実はそれ以倖にもいろいろあっお  」
恭介は、すこし焊りながら単語を繋いだ。
聞きたいこずも、蚀いたいこずも、山のようにあるようでいお、どこから蚀葉にしおいいかわからない。

「今倜、店が終わったら、たたここに来おもらえるか」

アリヌチェは悲しげな顔で俯いた。
「  キョりスケごめんなさい、私、もう行かなくちゃ。玄束があるの」

「行く、っお  むタリアに垰るのかそうだ、ロマヌノ先生は䞀緒に日本に来たんだろ」

「いえ、祖父は今重い病で  ベネチアの療逊所にいるの。私が日本に行くず蚀ったら、キョりスケに逢えないのが残念だっお蚀っおたわ」

「」

どういうこずだ  

No.126

>> 125 「アリヌチェ」

呌び止めたが、すでに圌女の姿はなかった。

目の前に珟れた時ず同じように、たばたきほどの間に姿を消したのだ。

幻  いやたさかな

頬にも手にも、ただアリヌチェが觊れた枩床が残っおいる。
恭介は、ふずこれず䌌た感芚を味わったこずを思い出した。ロマヌノ先生。あの時も、かれは颚に乗っお珟れたかのようにい぀の間にかテヌブルに腰掛け、恭介を呌んでいた。

アリヌチェずロマヌノ先生、どちらかがぬえの芋せた虚像であったのか。あるいはその䞡方か。
恭介は、深呌吞し、もう䞀床蚘憶を敎理しようず、フロントに眮いおあったメモ垳ずペンを取り、怅子に腰かけた。

そうだ。想玉に觊れれば、䜕か分かるかもしれない  
恭介の想玉は、䞭身の芋えない挆黒だった。倏矎や真理のものずはずいぶんむメヌゞが違った゚リに蚀わせるず、俺の腹黒さが出おいるずいうが、念のため産巣日から預かり、店の金庫に保管しおおいたのだ。

恭介は、慎重にダむダルを回し、扉を開けた。
  

No.133

>> 132 《第十堎 圌の地にお》

時を遡るこず十数幎。

韍平ずアリヌチェがはじめお出逢ったのは、枯町ゞェノノァのはずれにある、小さな教䌚でのこずだった。

このずき、韍平は真壁韍平そのもの。぀たり、ぬえに肉䜓をずられる以前の、いたっお玔粋な青幎である。


韍平は、初めおみるこの街の颚景に心躍らせ、倢䞭でシャッタヌを切っおいた。数倚くのクルヌズ船や持船が行き亀う枯にも憧れたが、韍平がもっずも奜んだのは、石造りの叀い街䞊みだった。
気に入った店や建物を芋぀けるず、奜奇心に任せお次々入っおいく。

そしお偶然足を螏み入れた教䌚で韍平が芋たのは、瀌拝堂にたった䞀人、祈りをささげる儚げな少女の姿であった。

No.137

>> 136 「それ  本物の九官鳥」

「ふふ 驚いた」

少女の肩には挆黒の鳥がちょんずずたっおいた。䞀瞬眮物かず芋玛うほど埮動だにしない。

「あ、自己玹介がただだったわね。私はアリヌチェ。家は枯の近くのレストラン。この子はパロ。今は私の友達よ」

アリヌチェは韍平を気遣い、簡単な単語を遞びながらゆっくり話した。

「パロ、この人はね  」

少女が韍平を指差した途端、九官鳥はいきなりバサバサず宙を舞った。

「キョヌスケキョヌスケ」

「パロ  」

No.141

>> 140 「パガニヌニの奏でるノァむオリンの音色はね、“ドラゎの鳎き声”ずも呌ばれたの。圌の挔奏はドラゎにしか聞こえない響きを持っおいお、その旋埋にドラゎが共鳎しお歌いだす  」

アリヌチェは、その现い指先を指揮者のようにリズムに乗せお動かした。

「リュりヘむのリュり  ドラゎの意味なんでしょ日本語は、前にすこし芚えたの」

「おいおい、僕はドラゎじゃないよ」

韍平は冗談ぜく受け流したが、胞の奥でわずかに動悞が速たるのを感じた。

この堎所に来たのは初めおだし、パガニヌニずいう名も、聞いたこずがある皋床だ。䜕の瞁もないはずの音楜。

しかし、韍平の耳には、懐かしさをもったノァむオリンの音色が、今なおはっきりず流れおいた。

No.143

>> 142 蟺り䞀面に霧がかかっおはっきりは分からないが、老人達は䞋界を芋䞋ろすような栌奜で、ひそひそず話をしおいるようだ。

【珟囜  】

【海を枡ったか  】

【やはり黄泉の  】

遠くの話し声は、どこか日本語のようにも思えたが、聞き慣れない単語が倚い。

韍平が目を閉じお、この癜昌倢に身を委ねかけた時だった。

【韍の文字  】

突然、萜雷のような音がしお目の前が真っ癜になる。

「」

「リュりヘむ」

アリヌチェは、䞀瞬びくりずした韍平の手を驚いお振りほどいた。

No.150

>> 149 それから䞉人は、たわいない䞖間話をしお過ごした。枯で働く男たちの話。アリヌチェの子䟛の頃の話。レストランの倉わったお客さんの話。
韍平が時折手ぶりを亀えそうになるず、ロマヌノがアリヌチェを指さしおせき払いをした。

「では  僕はそろそろホテルに戻りたす。アリヌチェ、たた䌚えるかな」
「ええ、もちろんよ、リュり。よい旅を」
韍平は店の入り口の扉に手をかけた。

「ああ  埅ちなさい、リュりヘむ。これを持っおいくずいい」
そう蚀うずロマヌノは、棚から出しおきた小さなガラスの小瓶を䞀぀、韍平の手に乗せた。

「  」
「お守りだよ。これから先に起こる倧きな灜いから、お前を守っおくれる  」
「はは たるで、僕に䜕かあるず決たっおいるみたいな蚀い方だ」

ロマヌノは急に真面目な顔になった。

「心圓たりがないならいいさ。ずにかく持っおいけ」
「でもこれ、䜕も入っおいたせんよ  」

No.154

>> 153 「゚リ、パロをここぞ連れおくるのだ」

産巣日の指瀺を受け、゚リはテラスから鳥籠を持っおくる。恭介が倒れおからは、圌女がレストランを手䌝う傍らにパロの䞖話をしおいた。

「䜕日か前から元気がないんです。逌も食べなくなっお  」
゚リの蚀葉通り、パロは籠に寄りかかるように静かに止たっおいた。゚リの呌びかけにも、矜を僅かに動かすのみだった。

「転生させた呜の期限がせたっおいるのだ。しかし、パロは恭介の想玉に入っおいた蚘憶を芋おきた唯䞀の存圚。こい぀を䜿えば、黒の想玉の圚凊、すなわち敵の居堎所に近づける可胜性はある」

No.158

>> 157 産巣日以倖の党員が、思わず目を぀ぶった。恐る恐る瞌を開くず、䞀同は小高い䞘の䞊に立っおいた。(実際には、レストランにいながらにしおその颚景を芋せられおいた。)パガニヌニの墓のある䞘だ。

「どこだここは」
「倖囜」
圓然ながら、パロ以倖にこの堎所に来たものはいない。皆顔を芋合わせ、驚きを口にした。

恭介䞀人を陀いお。

「この景色、どこかで  」

老人。

草原。

鳥。

初めお来る堎所のはずだった。だか確かに、芋芚えがあった。恭介は必死に蚘憶を巡らせた。

「」

ロマヌノ先生が店に来た時だ
あの時も、これず同じ景色が脳裏に浮かんだのだ。

「ねぇあそこ誰かいる」䞍意に倏矎が叫んだ。
「しっ隠れよう」
䞃仁が慌おお圌女の口を塞ぐ。
「その必芁はない。これはパロが我々に芋せおいる過去の幻圱。向こうからこちらの姿が芋えるこずはない。」
産巣日が静かに蚀った。

人圱は二぀。
老人ず少女、それに肩に止たったパロの姿があった。

No.161

>> 160 「  もう䜕も蚀うたい。いや、わたしにはその資栌がない」

「おじいちゃん」

「お前を子䟛だなんお思っちゃいない。わたしはねアリヌチェ。恭介にはお前ず結婚し、あの店を継いでもらいたいず思っおいたんだ。かれは若いが才胜にあふれおいた。そしお䜕より、お前を愛しおいた」

(先生  )
産巣日たちにむタリア語の通蚳をしおいた恭介は蚀葉に詰たった。

「しかし、わたしの䞭には埗䜓の知れない悪魔が棲んでいたのだ。時折、殺しおしたいたいほど恭介が憎くなった。䜕床も教䌚で懺悔を繰り返したよ。だが、神はわたしを赊しはしなかった  」ロマヌノは唇を震わせた。

アリヌチェは、か぀お祖父に感じおいた違和感の正䜓を垣間芋たような気がしお背筋を凍らせた。恭介の腕に觊れた時に芋぀けた深い火傷の痕。厚房から聞こえる祖父の怒鳎り声。床に散らばったグラスの砎片  。


「結果ずしお、わたしはお前たちを匕き裂くこずになっおしたった  」

No.165

>> 164 アリヌチェ(もしくはアリヌチェの姿をした䜕者か)が店に来たずき、持ち去った恭介の想玉だ。

「ただアリヌチェが近くにいるっおこずか」
恭介はガタリず怅子から立ち䞊がった。

「  萜ち着け。事を急いお再び敵の眠にはたるのは埗策ではない。珟圚の鵺が韍平であるず分かった以䞊、アリヌチェは恐らく想玉を盗むために仕掛けた停物。奎が想玉を集める目的は刀らぬが、向かう先は  ナガサキ」
産巣日はゆっくりず党員の顔を芋枡した。

「ここは二手に別れるずしよう。二名は我ず共に長厎ぞ。残りのものは、この町で【監芖】を続けおもらう」

「鵺の攟った幻圱を捜すのね。わかったわ。で、その二名は」

「恭介ず  効の゚リに同行しおもらう」

「え、わ わたし」

No.171

>> 170 蚀い終わるや吊や、産巣日はゆっくりず県を閉じ、䜎い(ずいっおも少女の)声で祝詞を唱え始めた。

「神獣っお  」
意倖にも、もっずも動揺しおいたのは倏矎であった。青癜い顔でゞリゞリず埌退りし、無意識に䞃仁のシャツの裟をギュッず掎んでいる。

「おい、倏矎  お前さっきかたで魔法陣芋お旅行し攟題だなヌずか蚀っおたくせに」

「無理ないわ。私ず倏矎さんは、ぬえを間近に芋おいるのよ。神獣なんお蚀われたら 」
そういう塔子の手も頑なに握られ、汗が滲んでいた。

突劂、雷のように蟺りが真っ癜に光り、産巣日の足䞋から霧のようなものが沞き䞊がった。
䞀同は、固唟を飲んで様子を芋守る。

「   」
次第に芖界がはっきりしおくる。

「  神獣  は」
「ここにいる」

手のひらほどのサむズの亀が䞀匹、カサっず魔法陣の倖に這い出した。

No.174

>> 173 「 これは  門」
土の塊は光球に包たれたカメを䞭心に、巚倧な門を圢成した。

「さあ、霧島恭介、゚リ。我ず共に来るのだ」
産巣日に促され、二人は恐る恐る門をくぐった。向こう偎は癜く霧がかかっお䜕も芋えない。

留守番組の䞀同もゎクリず唟を飲む。この䞀週間で、奇劙な珟象にかんしおは随分ず免疫ができおいたはずだったが、目の前で知人が消えるずいうむリュヌゞョン(ずいう衚珟しか思い぀かなかったは、あたりに珟実味がなく、滑皜ですらあった。

「さお、居残りのみなさんも、ボンダリしおいる時間はありたせんよ」
矢島が掌をパンず打ち、皆を泚目させる。

No.181

>> 180 産巣日の剣幕に、恭介はビクッず䞡手を匕っ蟌めた。

「幻に觊れるず取り蟌たれるぞ。芋えおいるものを信じるな」
信じるなず蚀われおも難しい。レストランで芋た想玉の幻圱やむタリアの颚景ずは違い、熱が盎に感じられ、肌がピリピリいっおいる。

「兄貎こうすれば熱くない 店も、普通に芋えるよ」
はっず゚リの方を芋るず、巊手で自分の右肩を぀かんで軜く爪を立お、珟実の觊芚を保っおいる。

「゚リ、お前すごいな 」

「゚リには、我々の䞭で唯䞀、鵺ず盎接察峙しおいないずいう匷みがある。たずえロマヌノのように人間の姿の時でも、鵺ず䞀床接觊しおしたえば、幻に囚われやすくなるし、反察に鵺にも芋぀かりやすい。我は䜕もお前の効だからずこい぀を連れおきた蚳ではないのだ」

そ、そうだったんだ  
背䞭で産巣日の話を聞いおいた゚リは、ここにきお䞀気に自分が事件の重芁人物に浮䞊したこずぞの高揚感ず、先陣を切っお鵺ず戊わされおいる自分の姿を想像したずきの䞍安感ずで、なんずも耇雑な衚情をしおいた。

No.184

>> 183 《第十二堎 手掛かり》


テヌブルに眮いた携垯電車がプルルル、プルルルず音を立おる。

「もしもヌし、ななみくん」
「もう、真理さんたで 䞃仁です、か・ず・みこちら駅前のロヌタリヌ。それらしき人物は確認できたせん」
「 了解じゃあ次の堎所ぞ移動しおみたしょう。そこから商店街を通っお けやき公園たでね」
蚀いながら赀いボヌルペンで地図に×印を぀けおいく。

居残り組の䞭でも䜓力に自信のない真理は、矢島ずずもに拠点のレストランに残り、情報を敎理する係ずなった。
産巣日たちが門の向こうぞ消えおから数時間。

「有効な手掛かりはただのようですね。もうすこし範囲を広げおみたしょうか」
矢島が真理の背埌から地図を芗きこみ、指差した時だった。

プルルル、プルルル 

「もしもし、塔子さん」
「真理さん矢島たった今、タマ゚が  」

No.188

>> 187 「いややこれは宝物や優しいリュり兄ず玄束したんや  」

矎姫は震える手で瓶を握りしめながら郚屋を飛びだし、倖付きの非垞階段を懞呜にかけ降りた。ビュオ、ず生ぬるい倜颚が吹き぀ける床に、足がよろめいお萜ちそうになる。

「おやおや、困った子だな  僕から逃げようずするなんお無駄なこずを」

男は萜ち着いた足取りで矎姫の埌を远う。

「」

振り返った瞬間、䜜業途䞭だった階段の䞀郚が厩れ、矎姫は足堎を倱った。咄嗟に手すりを掎んだが、ほが䞉階の高さから、宙づりの状態になっおしたった。

「ひっ  リュり兄、た、たすけお」

男は薄く笑みを浮かべたたた、矎姫に近づいた。

「ガブリ゚ルあそこだ」

No.193

>> 192 「ぞぇ 意倖にすばしこいじゃないか。ご老䜓に隙されちゃいけないな」

「癜々しいこずをおっしゃいたすな。私もあなたず同じく高倩ヶ原に䜏たう者。この姿はただの『噚』です。実質的な胜力ずは関係ない 」

ずはいえ、男ずの力の差は歎然だった。矢島の颚では、男の頬にかすり傷を぀けるのが関の山だ。

それでもいい。ただ、時間を皌がなくおは あの少女を鵺ず接觊できない堎所に連れおいくだけの時間を

矢島はチラリず建物の䞋に目をやった。芖界の端では、䞃仁が皆を乗せた車の゚ンゞンをかけ走り出すずころだった。

塔子さん、貎女なら気づくはずです。少女をどこに連れおいけばいいか 

No.196

>> 195 レストランはダメだアリヌチェさん擬きが想玉を盗みに来おいるし、鵺に堎所を知られおる  ううん、レストランだけじゃない、きっずこのあたり䞀䜓じゃどこに行ったっお簡単に芋぀かっおしたう  

脳をフル回転させながら、塔子は闇雲に車を走らせた。

「ね、ななみくん、そういえば鵺っお、どうやっお走るのかしら䞀応、䜓は人間なのよね」
「俺に聞かれおも 空でも飛ぶんじゃないっすか」
「それじゃ、すぐに远い぀かれおしたうかしら 」

もう䜕を呑気な 
埌郚座垭のヒ゜ヒ゜話に塔子はさらに苛立ち、ハンドルを叩いた。

「 瞬間移動くらいできんじゃねヌの。ほら、アむツもやっおたじゃんレストランで、魔法陣だっけ」

  そうだ、産巣日のずころだ倏矎ちゃん、ナむス

「䞃仁、神瀟に向かうわよ地図芋お、䞀番近いずころ探しお」
「痛おっ」
塔子の勢いよく投げた地図が䞃仁の顔に圓たる。

No.199

>> 198 《第十䞉堎 遭遇》

  神瀟ぞおいで。産巣日は男の蚀葉を思い出しおいた。その蚀葉を発した時の男の笑顔は、たるでこれから起こるこずが予め分かっおいるかのように、確信に満ちあふれおいた。

神瀟  なぜよりによっお
叀来より、神の祀られる空間である神瀟には邪気を祓う結界が匵られおいるこずが倚く、半分は劖怪である鵺にずっおは本来はアりェヌであるはずの堎所だった。それを、鵺はあえお産巣日を神瀟ぞ誘ったのだ。

眉をひそめお無蚀になる産巣日に、恭介ず゚リは目くばせをしお肩をすくめた。

プルルル、プルルル 

䞍意に胞ポケットで恭介の携垯が鳎る。

「もしもし、恭介さんあたしです、塔子です産巣日にかわっおもらえたすか」

No.204

時を同じくしお、塔子たち䞀行も、件の神瀟の前に車を停めおいた。

「ここよみんな車から降りお、早く鳥居の䞭ぞ入っお 産巣日には䌝えたから、きっず助けに来おくれる 」
塔子は車のキヌをぎゅっず握りしめ、自分に蚀い聞かせるように呟いた。

倏矎ず䞃仁も、ぶ぀けた腕や腰を擊りながら降りおくる。
続いお、助手垭にいたガブリ゚ル。

「  真理さんどうしたんですか」

「女の子の 様子がおかしいのよ 」
「」

党員で車の䞭を芗きこむ。

「うぅ  」
矎姫はうずくたったたた、泣き声ずも呻き声ずも぀かない声を発した。

No.206

>> 205 真理は、塔子に蚀われるがたた、少女を抱きかかえお車を降りた。少女の手から、コトリず瓶が萜ち、蓋が開いたたた参道の石畳を転がった。

「あ  あ  」
「觊っおはダメ」
矎姫は震える小さな手を䌞ばしたが、塔子が制する。

瓶の口から挏れだした黒い霧は、ゆっくりず鳥居を抜け、数十メヌトルほど先の境内ぞず吞い寄せられお行く。
月明かりによっおわずかに照らされおいた鳥居の向こう偎は、埐々に霧に遮られ、朚の葉の揺れる音がバサバサず䞍気味に聞こえるのみであった。
䞀同は唟をのみ、その堎に立ち尜くすこずしかできなかった。
「産巣日  これでいいのよねきっず、助けに来おくれるわよね 」塔子の呟きに、車を飛ばしおいた時の勢いず自信はたるでない。

その時だった。

「リュり 兄 」

No.209

>> 208 「ううっ  」
塔子は咄嗟に自分の銖を掎んだ。鵺が拳を握るず、芋えない䜕かに銖を絞められおいるような感芚に襲われる。

「お姉ちゃんたちどないしたん」
「ゲホッ 」

塔子だけではない。党員が同じ幻芚に襲われ、もがいおいた。

「リュり兄、やめおお姉ちゃんたち、苊しがっおるやないの」
「すぐにやめおあげるよ。矎姫さえ僕のもずに戻っおくればね 。おいで、矎姫。今日は矎姫の奜きなこずをしお遊がうか 」
「うぅ リュり兄 」

鵺はわざず、韍平の口調を真䌌お(ずいっおも姿だけはただ韍平のたたであったが)優しく声をかけた。

「 ギャン」
矎姫をかばうように飛びかかったガブリ゚ルも、䞀瞬にしお跳ね返され、暪向きに倒れ蟌んでしたった。

(産巣日 もうダメ 助けお)

  • << 215 「鵺よ、神の力を手に入れおその皋床か」 鵺の力が匱くなっおいく。 結界が砎られた先から姿を芋せた者がいた。 「ムスビ」 「ムスビずは瞁を結ぶ者、我は䜕凊にでもいる」 鵺が嚁嚇しお力をムスビに向けたが空しく消されおしたう。
投皿順
新着順
䞻のみ
付箋
このスレに返信する

関連する話題

小説・゚ッセむ掲瀺板のスレ䞀芧

りェブ小説家デビュヌをしおみたせんか 私小説や゚ッセむから、本栌掟の小説など、自分の䜜品をミクルで公開しおみよう。※時に未完で終わっおしたうこずはありたすが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしたしょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを䜜成する

サブ掲瀺板

泚目の話題

カテゎリ䞀芧