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闇の中の天使

No.76 13/02/19 20:56
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫74


まだみんな食堂にいる、そう思って入った教室には園田佳奈美が一人だけいた。
声をかけようと近付きかけたが、私はその足を止めた。

園田佳奈美は、雑巾で私の机を何度も拭いていた。
カタン…
私は近くにあった椅子に触れてしまい、小さな音を立ててしまった。
園田佳奈美ははっと振り返ると、私の姿を見て大きな目を更に大きく見開いた。
私は笑顔を作って、「園田さん、何しているの?」と近付いた。
園田佳奈美は、何も言わず視線を足下に落とした。
私は机に近付いた。

そこには、消えかかってはいるが‘成金出て行け!’とマジックで書いてあった。
「この席には…」
園田佳奈美が呟くように言った。「この席には、以前は私が座っていたの」
「ここに、園田さんが?」
「そう…、あいうえお順で…、あなた…曽根崎さんが転校してきたから私は一つ隣の席に移ることになったの。でも、それを知らない上級生たちは、まだここが私の席だと思っていて…だがら…」
「上級生が、こんなことを書いたの?」
園田佳奈美は黙って頷いた。

あの蛙の死骸は、‘成金出て行け’と書いた人物の仕業だと思ったが、反省文が無くなったことや、トイレで水を掛けられたこと、教科書などを切り刻まれたことは、私と知ってやったことだ。
虐めの加害者は、最低でも二組いる、私はそう思った。
「園田さん、あなたはこの高校に転校してきてからずっと虐められていたってこと?」
園田佳奈美は静かに頷いた。そして「舛崎先生が、転校してきたばかりだから慣れるためにクラス委員長になるようにって、そう言った時からエスカレートしていったわ」と言った。
「この高校は、家柄とかは関係なく転校生は虐めの対象になるってことね」
園田佳奈美は「そうかも知れません」と言った。
「守ってあげる」
私がそう言うと、園田佳奈美はやっと顔を上げて、不思議そうに私を見た。
「私が、あなたを守ってあげる」もう一度、園田佳奈美の大きな瞳をしっかり見つめて私は繰り返し強く言った。

廊下の遠くから、ざわざわと声が近付いてきた。
ランチタイムは終わりの時間になろうとしていた。
私は園田佳奈美の手から急いで雑巾を取ると、掃除用具のロッカーに入れ、席に戻り、机の中から午後の授業の英語の教科書とノートを出して、消えかけた机の文字を隠した。

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