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闇の中の天使

No.73 13/02/19 20:51
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫72

日曜日。
いつも通り六時に起きて、ジョギングに出た。後を見ると、トレーニングウェアを着た矢島さんが私と一定の距離を保って走っていた。
帰ってシャワーを浴び、塚田さんの用意した朝食を終えてから昨日の続きを読もうと、本を手にした。そしてしおりの挟んであるページを開いた。
佐伯さんが進めてくれたこの本は、私立高校の吹奏楽部でチェロを弾く男の子が主人公の青春小説だった。とても読みやすくて面白い。
二時間の読書は、あっという間に終わった。私はまたしおりを挟むと、本を棚に戻した。昼食後、予習と復習を二時間してから時計を見た。
佐伯さんから渡されていたスマホを取り出すと、2と発信ボタンを押した。
一回のコールですぐに矢島さんが出た。「由香里さん、何かありましたか?」と、緊張感を携えている声だった。
「矢島さん、これからお時間はありますか?」
「もちろんです」
「では、合気道のお稽古をつけていただけませんか?」
「かしこまりました。すぐに道場へ参ります」

私は道着に着替えると、道場へ入り正座をして矢島さんが来るのを待った。
十五分を過ぎた時に、「失礼いたします」と言って矢島さんも道着姿で現れた。
私は「よろしくお願いいたします」と言って、稽古を始めた。

「矢島さん、高校を休んでいる間、この時間にお稽古をお願いしてもいいでしょうか?」
「由香里さん、佐伯さんが怪我をしたことをご自分のせいだと思っておられるのですか?」
「はい。私がもっと強ければ、佐伯さんに怪我をさせることはなかったと思っています」
「それは、一緒にいながら佐伯さんに怪我をさせてしまった私の責任です。由香里さんに落ち度はありませんから、どうかお気になさらず…」
「いいえ、佐伯さんの怪我のことだけではありません。これから、いつ何があるか分かりません。学校の中では私は一人です。矢島さんも佐伯さんもいません。姿の見えない虐めの加害者を特定するまで、何をされるか見当もつきません。ですから、このお稽古は自分の身を守るためにも必要だと、私は思います」
「分かりました。それでは、明日も今日と同じ時刻に稽古をしましょう」
今夜も夕食後、ピアノのレッスンを一人で済ませた。

月曜日になったが、私は登校しなかった。
一人で、今日の学校での授業時間通りの勉強を自宅でした。


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