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闇の中の天使

No.52 13/02/19 19:52
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫51


「おかえりなさいませ」
「ただいま帰りました。佐伯さん、英語の授業、完璧でした」と報告した。
「そうですか。今日もこれから宿題をなさって、その後は英語のレッスンですよ」と言った。
そうか、今日は月曜日だ。
おば様にも、ただいまの挨拶をすると、部屋着に着替えてからすぐに私は宿題の数学の問題に取り組んだ。
前の高校よりも内容が少し進んでいる。
私は解答に行き詰る度に、ソファーで本を読んでいる佐伯さんに声をかけて教えてもらった。
佐伯さんの教え方は、とても上手で私はすぐに理解することができた。
「終わりました」
ノートを手に、佐伯さんはじっと見てから「ここは間違えていますよ」と言って教えてくれた。
「それでは、明日の予習を致しましょう。由香里さん、明日の授業の教科書を出してください」
私はこれまでどれだけ普通、いや怠慢な高校生活を送っていたのだろうと思った。

佐伯さんの教え方は、まさに教師のようで無駄がなく、勉強ってこんなに楽しかったんだ…、私をそう思わせるほどだった。
予習が終わると、英語のレッスンに入った。
初歩的なRとLの発音から丁寧に身振り手振りで教えてくれた。
「さあ、そろそろ夕飯の時間ですね」
その言葉を合図に、英語のレッスンは終わった。
佐伯さんは優秀な家政婦でもあるようで、すでに下準備を終えていたのだろう。すぐに夕食がテーブルに並んだ。
「おば様、佐伯さんの食事はどうされているんですか?」
「さあ…、自室でとっているのでしょう」
「なぜ、一緒に食べないのですか?」
おば様は、箸を箸置きにそっと置くと、私の方を向いて「ゆかりちゃん、いくら仲良くなっても、人それぞれ、距離をおかなくてはいけません。その距離は人によって違いますが、佐伯さんはこの家の家政婦であり、あなたの教育係りです。家族ではないのですよ」
「そうですか…」
「あなたは優しいのね。でも、こうした距離感が、他人との関係をうまく保ち、長続きをさせるのです」
「分かりました」
私の返事を聞き、一度、頷くとおば様は再び箸を持って、食事を続けた。

「学校は、どうでしたか?」と、おば様が聞いた。
「同じクラスの三人の名前を覚えました。一緒にお昼を食べました」
「そうですか」
「あの高校には、部活が無いのですね」
「そうです。秀でてスポーツなどを得意とする者は、それに見合った高校や大学に行くものです」
「なるほど…」

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