愛してはいけない
新学期の始まり。
僕は新しくこの学校に赴任してきた。
まだ教師に成り立てで、初めての教壇に立つことが不安な気持ちもあるし希望もある。
教室の中へ入り、挨拶をした。多分無難な挨拶をしたと思う。
あまりにも衝撃で記憶がとんでいた。
君は、あの頃の君にそっくりだったよ。君は君なの?
一人一人名前を呼ぶ。
君を呼ぶ番がきた。
『佐伯…佐伯澪』
『はい。』
やっぱりだ。
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日曜日もサッカー部の練習がある。
もう少しで、地区の大会がある。練習場所は今日はフットサルコートもある場所だ。高校生だか、まだ保護者の協力が必要で、移動は保護者の方達だった。
僕がサブコーチを始めてから、サッカー部は少し人数が増えた。
一年生が増えたのだが、皆経験者で、レベルも高いこども達。監督は50代半ばの、爽やかな、とても50代には見えない。
僕がコーチとして来た事を、監督も保護者も、選手達も喜んでくれた。
今日は昼ご飯も持参で丸一日。練習試合もある。
皆が昼飯を食べている間、フォーメーションを決めたり、監督と話しながらコンビニのパンを食べていた。
練習試合とは言え負けたくない気持ちは、選手も僕たちも同じ。
僕なりに自分の意見も伝える。
監督は、息子位の僕の話しを尊重しながら聞いてくれた。本当に素晴らしい人格者だ。いつか僕に引き継がれるかもしれないこのチーム。監督から沢山いろんな事を教わらなきゃ…。
サッカーの事になると、俄然、本気になる僕はいつにも増して力が入る。
休みがない毎日でも、僕は全然不満もなくてサッカー出来る喜びを噛み締めていたんだ。
夕方、練習も終わりふと携帯をみた。ピカピカ光っていてメールが入ってる事を教えてくれていた。
里沙からだ。
【僚💓昨日はありがとう😌今日はこれから夜勤だよ😣初夜勤。私頑張ってみるね。またメールします💌】
返信しなきゃ…
返信しないとまた不安になるよな…
なかなか文字が浮かばない。
とりあえずアパートに帰ろう。
帰り道、コンビニで弁当を買った。
(腹減ったな。弁当やだな…来週は実家に帰ろう。)
アパートに着き、空腹だけを満たす為に弁当を貪った。
満腹になり、里沙へのメールを読み返した。
(これから夜勤か。頑張ってるんだな、里沙…)
【返信遅れてゴメンな!夜勤中かな。無理はするなよ。今日は一日サッカーでした。おやすみなさい】
僕はほとんどメールをしない。男同士もメールよりは電話する。携帯電話には秘密なんて全くない男だった。
昨日までは。
澪のアドレス…。僕の…
秘密。
月曜日。
僕は、慌ただしく教室へ向かった。
ざわついた教室に、澪がいた。
目が合う。
僕と澪の関係。
先生と生徒。
でもお互いに恋愛感情がある。話がしたい。
澪と一緒に過ごしてみたい。そんな気持ちが沸き上がる。
今日も、帰りは8時を過ぎていてまたコンビニ弁当だった。
メールが入っていた。
普段からメール着信音はならないように設定してある。学校ではもちろん電源は消してある。
だからいつもメールに気がつかない。
澪からのメールだ。初めての。
【お疲れ様です😄今日何回も目が合ったね。うれしかったな😆先生…私、会いたいな。】
すぐに返信があった。
【わかった👍約束だよ。】
僕は、実家に行く予定を変更し澪と会う事になった。
練習は地区大会に向けて本腰が入る。
去年は惜しくも優勝を逃し県大会への道に繋がらない。今年は、必ず!
練習を終えて、アパートに戻り軽くシャワーをしたあと着替える。
服は普段、スーツかジャージだから無頓着だった。
(高校生とデートか…。)
とりあえず、パーカーに綿パンを履きアパートを出た。
(服買わなきゃだな…)
澪との待ち合わせ場所に着いた。澪が来ていた。
『飯付き合ってほしいんだけど…いい?』
何だか、僕は無神経だよな。でも毎日コンビニの味には飽きていて、今日も腹が減っていたから、嫌われたかな…
澪が恥ずかしそうに、
『これ。私が作ったの。美味しいかわかんないけど。』
澪は僕に手作り弁当を作ってくれていた。
僕の胸がぎゅーっとなった。
胸の奥が熱く…
何故だかまた涙が出てきた。
中を開けたら、から揚げが入っていたんだ。
澪は知ってたんだよね。
僕が優のから揚げが好きだった事。
僕は、ボロボロ泣いた。
泣きながら食べていた。
澪は…きっとそんな僕をみて、始めから多分…気がついていたんだね。
でも僕は、馬鹿だからまだ気がつかなかったんだ。
僕は、過ちをまた犯す。
僕たちは、堂々とはデートは出来ない。
澪がアパートに来たいと言った。
見せたいものがあると言った。
アパートは寝るだけの場所で、洗濯が干しっぱなしだ。それでもいいと言う。
アパートに着くと澪は珍しそうにキョロキョロしていた。
『先生…割と片付いてるね。もっと汚いかと思った。これ…お姉ちゃんの日記。渡すか迷ったの。でも泣いてる先生みて渡す事にした』
日記には、僕たちの事や癌を告知された事、僕への思いが沢山、書かれていた。
最後の方は、力がなく弱々しい字になっていた。
【僚…私ね、乳癌になったの。綺麗な身体見せられない。ごめんね。】
【乳癌ってね、全身に転移しやすいんだって。怖い。僚はこんな私、やだよね】
優の叫び声が沢山沢山かかれた日記。
泣き虫な僕は、まだ涙が残っているみたいだ。
澪を抱きしめていた。強く強く抱きしめた。
澪にキスをした。何回も何回も。
澪が泣きながらキスをする僕に…『先生…先生は私を愛してはいないよ。お姉ちゃんをまだ忘れてないんでしょ!』
そうなんだ。
全ての澪の行動は、僕を試していた。
姉を思うからこそ、僕が優に対してどの位好きだったか。優とはキスすらしていなかった事の意味。澪は知りたかったのだろう。
僕は、本当の過ちを犯すところだった。
僕は、優と付き合ってた時よりは大人になり、優にキスすら出来ないでいた高校生の僕じゃない。
日記をみなければ、澪が教えてくれなければ今ここで澪を抱いていたかもしれない。ただ欲望だけで…しかも優の身代わり。
あれから一年半がたった。
僕はどうなったか…。
優が残してくれた日記はまだ手元にあるが、もう僕は泣いていない。
結局里沙とは別れた。
僕たちの高校は初の県大会出場が決まり、勝ち進めば全国大会に行ける。
毎日が忙しかった。
里沙からは時々メールが入る。嫌いになったわけじゃない。
でも里沙に嘘をつき通す事が出来ず、全てを話した。
前から里沙は、ぼくの中に優がいて忘れて欲しかったけど、地元に帰った事でダメだって思ってたと話してくれた。
ずっと里沙は傷ついていたんだね。
里沙は今大学病院で看護師を続けている。
突然、新潟に行った時も覚悟していたみたいだ。
里沙が頑張ってくれてるだけで、気持ちが楽になる。
県大会では、毎年優勝候補の高校が、初戦敗退。
地区大会優勝で、浮かれ気分の選手に、渇をいれた。
皆が、どうせ勝てないと言う気持ちをどうしても変えさせたかった。
弱小とは言わないが、毎年県大会出場して優勝争いをしてるチームとはちがい、地区大会優勝は奇跡的だったから、勝つ事になれていない。
勝つ事。
それしか上を目指す方法はない。僕が高校生で味わったプロへの憧れと、一握りの選手しかプロとして活躍できない現実。
経験してるからこそ、熱い気持ちが沸き上がる。
県大会、初の優勝。
奇跡だった。
1月に全国大会が始まる。
僕は、この一年~ほとんど自分の時間はなかった。
監督は今年いっぱいで定年を迎える。
監督人生を、全国大会出場という形で終えられる事が出来る。
皆が【勝つ事】を信じて戦って来た事がなにより嬉しいだろう。
『向井コーチ、俺達を支えてくれてありがとうございます。先生が勝つ大切さを教えてくれました。正直甘いもの禁止にはビックリしたけど(笑)けどこれから頑張るからよろしくお願いします』
キャプテンの金田から言われ、本当にうれしかった。
もう少しで、本番だ。
キックオフ。
試合は前半から押され気味だった。相手のFWがかなりのテクニックがあり、何度かゴールのピンチにあった。
キーパーの長谷川は徐々にペースを乱していくのがわかった。
DFの選手達に僕は、精一杯聞こえる声で、
『守れー!!!』
皆が、一回戦を突破したい気持ちが強かった。
前半戦は何とか、点はきめさせずにいたがどうみても劣勢だ。
監督が皆に一言だけ言った。
『お前達は、皆同じ高校生だ!気持ちで負けるな。』
後半開始から5分…
相手チームの点が入った。
ほんの一瞬だった。
僕たちの思いは届かず、試合終了となった。
皆が泣いていた。悔し泣き。頑張ってたから出る涙。
僕は、皆を沢山沢山褒め、胸を張って帰ろうと言った。
卒業式を迎えた。
僕は今は澪の担任でなく、一年担任だった。
サッカー部の三年生とは兄弟のような感情すらあり可愛くて仕方ないこども達。
そして
澪が卒業する…。
二年間で僕は、優を思い出とする事が出来た。
あの時、僕がもしも澪を抱いていたら…
きっと全てを無くしていたに違いない。
卒業式が終わると、サッカー部の三年生が僕に花束をくれた。それと寄せ書き。
僕は皆に一人一人握手をした。本当に僕は、サッカーを続ける事が出来てよかった…。プロへの道は歩まなかったけれど…こうしてサッカーと繋がりがありこのこども達に出会い、沢山の思い出が出来た。
夜遅く、ようやくアパートについた。
寄せ書きを見ていた。
それから、澪にメールを送る。
【卒業おめでとう。明日話したい事がある。予定大丈夫か?】
澪からの返信は、僕が疲れて寝てしまい翌朝みた。
こんな時…起きてるべきだよな。本当に無神経さはかわらない男だ。
【大丈夫だよ。何時頃にしますか?】
はぁ~。
澪はきっと返信を待ってただろうな…。
急いで、返信した!
待ち合わせの場所に早めに着いた。
当分はサッカー部の練習もなくて、時間に余裕もあるし少し服の研究をして、今日は気合いが入った。
澪が来た。
『久しぶりだね。ちょっと歩こうか…』
3月とはいえまだ寒さが残る。僕たちは二人で初めて外を歩いた。
場所は信濃川が流れる川沿い。きちんと整備されていて万代橋を見渡せる。
ベンチに座った。
ようやく僕たちは、先生と生徒では無くなった。
二年間の待ち時間は長いよいでいつの間にか過ぎていた。
澪はもう二年前のあどけない、幼い澪ではなかった。
元々、切れ長の大きな瞳にはマスカラがつけられ、化粧をしていた澪に、僕はドキドキしていた。
優の面影を探していた二年前の僕はいなかった。
佐伯澪という、一人の女性を愛していた。
答えは…
『…もちろん。』
恥ずかしそうに目を見て答えてくれた。
僕たちは正式に恋人になった。
澪と、卒業旅行に行く予定をたてた。
もちろん澪のご両親に挨拶をしてから。
旅行は、澪が行きたがっていた東京。僕が住んでいた近くを見に行きたがっていた。
僕はご両親に会う事になった。
きちんと話せば大丈夫だと…そう思ってた。
僕は澪の彼氏として、会いに行ったが、澪のお母さんはものすごく悲しい表情だったんた。
『僚君…いいえ向井先生。あなた…優の妹。そして教え子とそんな関係になるなんて。どうして澪なの?』
僕は、予想もしていなかった。いやただ浮かれていただけだ。澪の気持ちを確かめた後、もう全てポジティブな感情だった。
けれど無理もない。
優のお母さんからしたら、大切な優を亡くし、まだ哀しみは癒えないのにその優の彼氏が、優の妹の澪と付き合ってる現実を受け入れる事ができるはずもない。
僕は、旅行を取りやめる決断をした。
澪は少し残念そうだったな…。けれど、きちんと大切にしてる姿を、澪のご両親にわかってもらいたかったし、いずれは結婚を申し込むつもりだから。
僕は、澪を大切にしたかった。
何年かかるかな…
僕たちは日帰りで、朝から東京へ行った。
新潟はまだ肌寒いけど、東京に着くと気温は20度近い。
着ていた上着はいらない位で、気持ちも明るくなる。
澪は人の多さに驚いていた。僕が住んでいたのは山手線にのり最寄駅から歩いて15分位だった。
二人で横浜まで移動した。
中華街でランチを済ませたあと、桜木町まで移動した。僕の好きな動物園がある。新潟は動物園がないから、澪も珍しそうにしていた。
でも時間はあっという間に過ぎて行く。
帰る時間だった。
早々に帰りの新幹線に乗る。
『澪…今日はありがとう。楽しかった?』
『うん。先生…あっ僚君。今日はあっという間だったけどずっと一緒で本当に嬉しい。』
澪が笑った。隣の座席に座る澪をみた。
僕たちは手を繋いだ。
澪の小さな手が緊張していた。僕も…。
好きな子に触れる事が、澪に触れる事が幸せだった。
『僚君…私、帰りたくない。』
新潟に着いた。
夜は更に肌寒い。さっきまでの暖かさはなく同じ日本なのに…といつも思う。
パーキングに停めた車に乗り澪を送る。
家に着いた。
車の中でキスをした。
僕だって帰したくない。
澪とまだ一緒にいたかった。
澪が
『お母さん!』
僕は慌てて車から降りた。
すみません。遅くなりました!
と言うと、
『向井君…ちょっといいかな。中にどうぞ』
澪は席を外させ、僕とお母さんと二人だった。
『向井君…あなたは本当に優の事では感謝してました。でもね、それはそれ。澪は担任だったのよ。あなたは間違ってる。常識ではおかしいわ。そして、私はあなた達を認めません。』
『あなたは、教育者としてこんな事はしちゃいけないの。まだ澪は未来があるのよ。澪の幸せを考えるなら澪と別れてください。』
あまりにも強く厳しい態度を見て、僕は辛くなった。
僕には、今澪を愛する資格があると自信があったからだ。
優を愛した気持ちは間違いなく本当だし、思い出になるまでに何年もかかった。
でも澪への思いは、誰にも非難されるものではないと思っていたから…。
僕は必死に、今の気持ちを伝えた。
それでも許してはくれなかった。
やっぱり
愛してはいけないのだろうか……
愛する事…
それは自由…。
けれどあのとき、初めて出会った時が教室だった。
そして教師という立場で澪を好きになってしまった。
やっぱり愛してはいけないのだろうか。
僕は、気持ちを貫く事を諦めた。
高校三年の卒業の後、優を亡くしてから愛する事が出来なくなったけど、澪を愛する事が出来た。
それは優の妹だから?
優に似ていたから?
澪のお母さんに言われた事が心に響く。
僕の澪にたいする気持ちに自信が無くなっていた。
もしかしたら…
やっぱり澪の中に優を見つけたり、どこか探しているのかもしれないと。
愛してはいけない人なのかもしれない。
僕は澪から離れた。あんなに待ち続けた。
意気地無しな僕は、もうここにはいられない。
澪…
僕は、一人でコンビニに行った。
ビールを買い、アパートに戻った。
一人で呑めないくせにビールを一気に飲み干した。
悔しかった。
教師として澪に再会しなければ、よかった…
澪が優の妹じゃなきゃよかった…。
僕が澪を、好きにならなければ…。
アパートのチャイムが鳴った。
フラフラしながら玄関に行くと、澪が立っていた。
『僚君…ごめんね。お母さんひどい事言ったよね?』
澪を中に入れた。
澪が泣きながら、僕に謝ってきた。
僕は、何が何だかわからなくて…僕が謝らなきゃなのに。
澪の傍に行く。
澪を抱きしめていた。
僕は、理性を失い…
キスをしながら澪を押し倒した。首筋にキスをしなが手を挙げそのまま澪の胸を触る。
澪は抵抗しなかった。
僕は、澪を抱いた。
澪は初めてだった。
澪の身体は、白くて細くて僕の体重をかけたら苦しそうだった。
正直、裸を全てみたわけじゃない。僕はただ欲望で、やけくそだったのかな。
大切にするつもりだった。
初めての時は優しく優しくしようと、考えていた。
こんな風になるなんて…
澪の中で、僕は果てていた。
本当に、僕はいつもサイテーなんだ。
大切にしなきゃいけないはずなのに。
酒の勢い?
その通りだよ。
僕には澪を愛する資格なんて、これっぽっちもないんだよ。
澪は恥ずかしそうに布団に潜った。
『澪…ごめん。』
『謝らなくていいよ。私は初めてが僚君でよかった…』
『澪…ごめん。』
僕は、それ以来自分勝手に澪を抱いた事で自分を責めていた。
次に会ったらどうしたらいいかさえもう…
4月になり、また学校やサッカー部が忙しくなっていた。
監督が退職したから、僕は若いながらに監督となった。新一年が入ってきた。
今年は、去年の実績から部員が一気に増えた。
県外からの部員(生徒)も何人かいてかなりのレベルだった。
忙しさを理由に、澪との連絡をしていなかった。
澪もあまり連絡もなかった。
僕と付き合っていける女の子は多分いないだろう…と思う。まぁ経験が僕はあまりないし積極的に恋愛できないからはっきりとは言い切れないけど、僕が女の子なら、こんな彼氏嫌だろうな…
はっきりとした別れは告げないまま、僕は澪との繋がりを切る事も出来ずに一ヶ月過ぎた。
時々メールや電話をしてはいたが、澪も大学生になり忙しい様子だった。
何日かぶりに電話が来た。
『澪…大学はどう?』
『うん。大学…休んでる。』
??
何かあったんだ!
澪と、澪の家の近くのカフェで待ち合わせをした。
久しぶりの澪。
『元気だった?大学に今行ってないって具合悪いの?』
澪はしばらく黙っていた。
言い出しにくそうな雰囲気だった。
『澪…?』
『私…妊娠した。少し前からつわりみたいな感じで。検査薬で反応がでたの。』
澪は冷静な感じに見えた。
『妊娠?!』
僕は余りにも突然で、25歳の僕には衝撃的だった。
たった一回、しかも酔った勢いでの関係でだったから信じられない気持ちもあった。
『私…産みたい。僚君のこどもだから。』
『僕の…こども。』
僕は、産みたいと言ってくれた澪に感謝した。
『澪…本当に産んでくれるの?僕たち、一緒になれるんだね』
澪が泣いていた。
後でわかった事。
この時、澪は本当に本当に悩んでいて、僕が澪から離れようとしているのではないか、連絡しちゃいけないのではないか、産んでもいいのか…
でも、母親になりたい。強くなりたい。そう思い直し僕に話す決意をした。
あのとき冷静に見えたのは、僕がおろして欲しいと言っても泣かないように頑張ってたって、苦笑いして話してくれたんだ。
僕は
僕は…
澪を愛してはいけないと思っていた。
優の妹、そして教師と生徒。
でも、赤ちゃんが僕たちを結びつけてくれた。
奇跡を運んでくれた。
あのとき、僕が酔っ払って理性を無くし、澪を抱いた事は許されないかも知れない。
でもハッキリしない僕に、神様が…もしかしたら優が苦手なお酒を飲ませ後押ししてくれたのかも。
僕たちを結び付けてくれた赤ちゃん。
僕は澪を愛しする事を許してくれたのだろうか…。
二年後
僕たちは幸せに暮らしている。
澪は大学を休学して育児に専念している。
僕は相変わらず、学校とサッカー部に力を注ぎあんまり育児に参加出来ない。
変わった事と言えば、毎日澪が家にいるから連絡しなくても不安にさせないで良いし、コンビニ弁当じゃない事。
そして僕の分身みたいなチビがいる。
チビには大好きな中田英寿から名前をもらいたかったけど、澪に大反対され、悩んだ結果
『結登(ゆうと)』と名付けた。僕たちを結び付けてくれた奇跡のこ。
僕は大切な二人に出会えた事を心から感謝している。
澪は少しだけ、強くなり僕は頭が上がらないけど、愛している。
僕が優を愛して、優を亡くし、優の妹の澪を求めた時…
優の身代わりだと始めは思っていたけど、そうじゃない。
初めから、澪に出会う為に沢山沢山遠回りして来た、初めから澪と結ばれる運命だった。
だから沢山の試練があったのに、こうして今…結ばれる事が出来た。
今は、
そう思う。
愛してはいけない…
それがそもそも、僕の勘違いだったのだろう。
🌸🌸🌸完🌸🌸🌸
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