愛してはいけない
新学期の始まり。
僕は新しくこの学校に赴任してきた。
まだ教師に成り立てで、初めての教壇に立つことが不安な気持ちもあるし希望もある。
教室の中へ入り、挨拶をした。多分無難な挨拶をしたと思う。
あまりにも衝撃で記憶がとんでいた。
君は、あの頃の君にそっくりだったよ。君は君なの?
一人一人名前を呼ぶ。
君を呼ぶ番がきた。
『佐伯…佐伯澪』
『はい。』
やっぱりだ。
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いろんな感想があると思いますが、私にとってほっと安心できた結末で良かったです🎵 納得できましたよ😊
そして、後編も今楽しみにお気に入り登録して読んでます💕 ランランさんを応援してます✨ 頑張って下さいね❤
いや~よかったです☺
各人の色々な心情を表すエピソードがもっと知れたらもっと共感できるなぁ😚と思う所はあります。
が、私はタラタラと長~く続く小説をあまり好まないので、主さんのように簡潔にさっとした流れ、好きです。
分かるなぁ。
澪ちゃんとその両親の気持ち…
詳しく描かれてない分、自分の経験と照らし合わせてこんな風に思ってるのかなぁと色々と思い巡らしました。
洋画によくある、後はあなたのご想像にお任せしますってバ-ジョンですね✨
性描写は濃く書いてあるとそれ目当ての楽しみになってしまうので(笑)、ピュア感漂いながらも大人の恋愛に足つっこんだ内容がよかったです!
登場人物の顔や姿に情景、ばっちし頭の中に浮かびました☺👌
🍀
恋愛の勉強ですか。
小悪魔さんはなかなか手厳しいですね。
独身を貫く事が一途と考えるのが正しいなら、僚は一途じゃないでしょう。
でも、そこは僚の性格だし僚は私みたいな詰めが甘い人間なんでしょうね😅
まぁツッコミ所も沢山あるのはお許しくださいませ。
けど、手厳しいから勉強になりました~😌
どーもです。
🍀すみませんm(__)m
ご期待に添えない結末を迎えてしまいました。
何分初めてだったので。
貴重なご意見本当に本当にありがとうございましたm(__)mm(__)m
出直してきますm(__)mm(__)mm(__)mm(__)m
追加ですが、優を好きな気持ちは変わらない僚ですが澪を妊娠させた事での責任もあり、そう思おうとしています。澪には一生かくさなければならない気持ちです。僚は一途すぎるんです。最後は丁寧に書くべきでした😫
楽しみに読んでたけど、最後は読める締めで残念💔
大切にしてたとは言え、未成年の親が、しかも色々あったのに、こんなに簡単に許すわけないし💦
更には、優への愛情も澪に出会うためだったかのような文章が…💧
最後に、もう少し、優への想いが欲しかったなぁ。
詰めが甘いというか、面倒になったかのような最後はガサツな内容が残念でした😔
🍀感想やダメ出しありましたらよろしくお願いしますm(__)mm(__)m
小説は初めてだったので、全く自信なく。
激しい性描写をあえて書かなかったのであまり面白い内容ではなかったかなって反省もあり。
よろしくお願いしますm(__)m
僕が優を愛して、優を亡くし、優の妹の澪を求めた時…
優の身代わりだと始めは思っていたけど、そうじゃない。
初めから、澪に出会う為に沢山沢山遠回りして来た、初めから澪と結ばれる運命だった。
だから沢山の試練があったのに、こうして今…結ばれる事が出来た。
今は、
そう思う。
愛してはいけない…
それがそもそも、僕の勘違いだったのだろう。
🌸🌸🌸完🌸🌸🌸
二年後
僕たちは幸せに暮らしている。
澪は大学を休学して育児に専念している。
僕は相変わらず、学校とサッカー部に力を注ぎあんまり育児に参加出来ない。
変わった事と言えば、毎日澪が家にいるから連絡しなくても不安にさせないで良いし、コンビニ弁当じゃない事。
そして僕の分身みたいなチビがいる。
チビには大好きな中田英寿から名前をもらいたかったけど、澪に大反対され、悩んだ結果
『結登(ゆうと)』と名付けた。僕たちを結び付けてくれた奇跡のこ。
僕は大切な二人に出会えた事を心から感謝している。
澪は少しだけ、強くなり僕は頭が上がらないけど、愛している。
僕は…
澪を愛してはいけないと思っていた。
優の妹、そして教師と生徒。
でも、赤ちゃんが僕たちを結びつけてくれた。
奇跡を運んでくれた。
あのとき、僕が酔っ払って理性を無くし、澪を抱いた事は許されないかも知れない。
でもハッキリしない僕に、神様が…もしかしたら優が苦手なお酒を飲ませ後押ししてくれたのかも。
僕たちを結び付けてくれた赤ちゃん。
僕は澪を愛しする事を許してくれたのだろうか…。
『妊娠?!』
僕は余りにも突然で、25歳の僕には衝撃的だった。
たった一回、しかも酔った勢いでの関係でだったから信じられない気持ちもあった。
『私…産みたい。僚君のこどもだから。』
『僕の…こども。』
僕は、産みたいと言ってくれた澪に感謝した。
『澪…本当に産んでくれるの?僕たち、一緒になれるんだね』
澪が泣いていた。
後でわかった事。
この時、澪は本当に本当に悩んでいて、僕が澪から離れようとしているのではないか、連絡しちゃいけないのではないか、産んでもいいのか…
でも、母親になりたい。強くなりたい。そう思い直し僕に話す決意をした。
あのとき冷静に見えたのは、僕がおろして欲しいと言っても泣かないように頑張ってたって、苦笑いして話してくれたんだ。
僕は
澪と、澪の家の近くのカフェで待ち合わせをした。
久しぶりの澪。
『元気だった?大学に今行ってないって具合悪いの?』
澪はしばらく黙っていた。
言い出しにくそうな雰囲気だった。
『澪…?』
『私…妊娠した。少し前からつわりみたいな感じで。検査薬で反応がでたの。』
澪は冷静な感じに見えた。
はっきりとした別れは告げないまま、僕は澪との繋がりを切る事も出来ずに一ヶ月過ぎた。
時々メールや電話をしてはいたが、澪も大学生になり忙しい様子だった。
何日かぶりに電話が来た。
『澪…大学はどう?』
『うん。大学…休んでる。』
??
何かあったんだ!
僕は、それ以来自分勝手に澪を抱いた事で自分を責めていた。
次に会ったらどうしたらいいかさえもう…
4月になり、また学校やサッカー部が忙しくなっていた。
監督が退職したから、僕は若いながらに監督となった。新一年が入ってきた。
今年は、去年の実績から部員が一気に増えた。
県外からの部員(生徒)も何人かいてかなりのレベルだった。
忙しさを理由に、澪との連絡をしていなかった。
澪もあまり連絡もなかった。
僕と付き合っていける女の子は多分いないだろう…と思う。まぁ経験が僕はあまりないし積極的に恋愛できないからはっきりとは言い切れないけど、僕が女の子なら、こんな彼氏嫌だろうな…
酒の勢い?
その通りだよ。
僕には澪を愛する資格なんて、これっぽっちもないんだよ。
澪は恥ずかしそうに布団に潜った。
『澪…ごめん。』
『謝らなくていいよ。私は初めてが僚君でよかった…』
『澪…ごめん。』
澪の身体は、白くて細くて僕の体重をかけたら苦しそうだった。
正直、裸を全てみたわけじゃない。僕はただ欲望で、やけくそだったのかな。
大切にするつもりだった。
初めての時は優しく優しくしようと、考えていた。
こんな風になるなんて…
澪の中で、僕は果てていた。
本当に、僕はいつもサイテーなんだ。
大切にしなきゃいけないはずなのに。
澪が泣きながら、僕に謝ってきた。
僕は、何が何だかわからなくて…僕が謝らなきゃなのに。
澪の傍に行く。
澪を抱きしめていた。
僕は、理性を失い…
キスをしながら澪を押し倒した。首筋にキスをしなが手を挙げそのまま澪の胸を触る。
澪は抵抗しなかった。
僕は、澪を抱いた。
澪は初めてだった。
僕は、一人でコンビニに行った。
ビールを買い、アパートに戻った。
一人で呑めないくせにビールを一気に飲み干した。
悔しかった。
教師として澪に再会しなければ、よかった…
澪が優の妹じゃなきゃよかった…。
僕が澪を、好きにならなければ…。
アパートのチャイムが鳴った。
フラフラしながら玄関に行くと、澪が立っていた。
『僚君…ごめんね。お母さんひどい事言ったよね?』
澪を中に入れた。
愛する事…
それは自由…。
けれどあのとき、初めて出会った時が教室だった。
そして教師という立場で澪を好きになってしまった。
やっぱり愛してはいけないのだろうか。
僕は、気持ちを貫く事を諦めた。
高校三年の卒業の後、優を亡くしてから愛する事が出来なくなったけど、澪を愛する事が出来た。
それは優の妹だから?
優に似ていたから?
澪のお母さんに言われた事が心に響く。
僕の澪にたいする気持ちに自信が無くなっていた。
もしかしたら…
やっぱり澪の中に優を見つけたり、どこか探しているのかもしれないと。
愛してはいけない人なのかもしれない。
僕は澪から離れた。あんなに待ち続けた。
意気地無しな僕は、もうここにはいられない。
澪…
あまりにも強く厳しい態度を見て、僕は辛くなった。
僕には、今澪を愛する資格があると自信があったからだ。
優を愛した気持ちは間違いなく本当だし、思い出になるまでに何年もかかった。
でも澪への思いは、誰にも非難されるものではないと思っていたから…。
僕は必死に、今の気持ちを伝えた。
それでも許してはくれなかった。
やっぱり
愛してはいけないのだろうか……
澪は席を外させ、僕とお母さんと二人だった。
『向井君…あなたは本当に優の事では感謝してました。でもね、それはそれ。澪は担任だったのよ。あなたは間違ってる。常識ではおかしいわ。そして、私はあなた達を認めません。』
『あなたは、教育者としてこんな事はしちゃいけないの。まだ澪は未来があるのよ。澪の幸せを考えるなら澪と別れてください。』
新潟に着いた。
夜は更に肌寒い。さっきまでの暖かさはなく同じ日本なのに…といつも思う。
パーキングに停めた車に乗り澪を送る。
家に着いた。
車の中でキスをした。
僕だって帰したくない。
澪とまだ一緒にいたかった。
澪が
『お母さん!』
僕は慌てて車から降りた。
すみません。遅くなりました!
と言うと、
『向井君…ちょっといいかな。中にどうぞ』
早々に帰りの新幹線に乗る。
『澪…今日はありがとう。楽しかった?』
『うん。先生…あっ僚君。今日はあっという間だったけどずっと一緒で本当に嬉しい。』
澪が笑った。隣の座席に座る澪をみた。
僕たちは手を繋いだ。
澪の小さな手が緊張していた。僕も…。
好きな子に触れる事が、澪に触れる事が幸せだった。
『僚君…私、帰りたくない。』
僕たちは日帰りで、朝から東京へ行った。
新潟はまだ肌寒いけど、東京に着くと気温は20度近い。
着ていた上着はいらない位で、気持ちも明るくなる。
澪は人の多さに驚いていた。僕が住んでいたのは山手線にのり最寄駅から歩いて15分位だった。
二人で横浜まで移動した。
中華街でランチを済ませたあと、桜木町まで移動した。僕の好きな動物園がある。新潟は動物園がないから、澪も珍しそうにしていた。
でも時間はあっという間に過ぎて行く。
帰る時間だった。
僕は、旅行を取りやめる決断をした。
澪は少し残念そうだったな…。けれど、きちんと大切にしてる姿を、澪のご両親にわかってもらいたかったし、いずれは結婚を申し込むつもりだから。
僕は、澪を大切にしたかった。
何年かかるかな…
僕は澪の彼氏として、会いに行ったが、澪のお母さんはものすごく悲しい表情だったんた。
『僚君…いいえ向井先生。あなた…優の妹。そして教え子とそんな関係になるなんて。どうして澪なの?』
僕は、予想もしていなかった。いやただ浮かれていただけだ。澪の気持ちを確かめた後、もう全てポジティブな感情だった。
けれど無理もない。
優のお母さんからしたら、大切な優を亡くし、まだ哀しみは癒えないのにその優の彼氏が、優の妹の澪と付き合ってる現実を受け入れる事ができるはずもない。
答えは…
『…もちろん。』
恥ずかしそうに目を見て答えてくれた。
僕たちは正式に恋人になった。
澪と、卒業旅行に行く予定をたてた。
もちろん澪のご両親に挨拶をしてから。
旅行は、澪が行きたがっていた東京。僕が住んでいた近くを見に行きたがっていた。
僕はご両親に会う事になった。
きちんと話せば大丈夫だと…そう思ってた。
『久しぶりだね。ちょっと歩こうか…』
3月とはいえまだ寒さが残る。僕たちは二人で初めて外を歩いた。
場所は信濃川が流れる川沿い。きちんと整備されていて万代橋を見渡せる。
ベンチに座った。
ようやく僕たちは、先生と生徒では無くなった。
二年間の待ち時間は長いよいでいつの間にか過ぎていた。
澪はもう二年前のあどけない、幼い澪ではなかった。
元々、切れ長の大きな瞳にはマスカラがつけられ、化粧をしていた澪に、僕はドキドキしていた。
優の面影を探していた二年前の僕はいなかった。
佐伯澪という、一人の女性を愛していた。
【卒業おめでとう。明日話したい事がある。予定大丈夫か?】
澪からの返信は、僕が疲れて寝てしまい翌朝みた。
こんな時…起きてるべきだよな。本当に無神経さはかわらない男だ。
【大丈夫だよ。何時頃にしますか?】
はぁ~。
澪はきっと返信を待ってただろうな…。
急いで、返信した!
待ち合わせの場所に早めに着いた。
当分はサッカー部の練習もなくて、時間に余裕もあるし少し服の研究をして、今日は気合いが入った。
澪が来た。
卒業式を迎えた。
僕は今は澪の担任でなく、一年担任だった。
サッカー部の三年生とは兄弟のような感情すらあり可愛くて仕方ないこども達。
そして
澪が卒業する…。
二年間で僕は、優を思い出とする事が出来た。
あの時、僕がもしも澪を抱いていたら…
きっと全てを無くしていたに違いない。
卒業式が終わると、サッカー部の三年生が僕に花束をくれた。それと寄せ書き。
僕は皆に一人一人握手をした。本当に僕は、サッカーを続ける事が出来てよかった…。プロへの道は歩まなかったけれど…こうしてサッカーと繋がりがありこのこども達に出会い、沢山の思い出が出来た。
夜遅く、ようやくアパートについた。
寄せ書きを見ていた。
それから、澪にメールを送る。
後半開始から5分…
相手チームの点が入った。
ほんの一瞬だった。
僕たちの思いは届かず、試合終了となった。
皆が泣いていた。悔し泣き。頑張ってたから出る涙。
僕は、皆を沢山沢山褒め、胸を張って帰ろうと言った。
『向井コーチ、俺達を支えてくれてありがとうございます。先生が勝つ大切さを教えてくれました。正直甘いもの禁止にはビックリしたけど(笑)けどこれから頑張るからよろしくお願いします』
キャプテンの金田から言われ、本当にうれしかった。
もう少しで、本番だ。
キックオフ。
試合は前半から押され気味だった。相手のFWがかなりのテクニックがあり、何度かゴールのピンチにあった。
キーパーの長谷川は徐々にペースを乱していくのがわかった。
DFの選手達に僕は、精一杯聞こえる声で、
『守れー!!!』
皆が、一回戦を突破したい気持ちが強かった。
前半戦は何とか、点はきめさせずにいたがどうみても劣勢だ。
監督が皆に一言だけ言った。
『お前達は、皆同じ高校生だ!気持ちで負けるな。』
県大会、初の優勝。
奇跡だった。
1月に全国大会が始まる。
僕は、この一年~ほとんど自分の時間はなかった。
監督は今年いっぱいで定年を迎える。
監督人生を、全国大会出場という形で終えられる事が出来る。
皆が【勝つ事】を信じて戦って来た事がなにより嬉しいだろう。
県大会では、毎年優勝候補の高校が、初戦敗退。
地区大会優勝で、浮かれ気分の選手に、渇をいれた。
皆が、どうせ勝てないと言う気持ちをどうしても変えさせたかった。
弱小とは言わないが、毎年県大会出場して優勝争いをしてるチームとはちがい、地区大会優勝は奇跡的だったから、勝つ事になれていない。
勝つ事。
それしか上を目指す方法はない。僕が高校生で味わったプロへの憧れと、一握りの選手しかプロとして活躍できない現実。
経験してるからこそ、熱い気持ちが沸き上がる。
あれから一年半がたった。
僕はどうなったか…。
優が残してくれた日記はまだ手元にあるが、もう僕は泣いていない。
結局里沙とは別れた。
僕たちの高校は初の県大会出場が決まり、勝ち進めば全国大会に行ける。
毎日が忙しかった。
里沙からは時々メールが入る。嫌いになったわけじゃない。
でも里沙に嘘をつき通す事が出来ず、全てを話した。
前から里沙は、ぼくの中に優がいて忘れて欲しかったけど、地元に帰った事でダメだって思ってたと話してくれた。
ずっと里沙は傷ついていたんだね。
里沙は今大学病院で看護師を続けている。
突然、新潟に行った時も覚悟していたみたいだ。
里沙が頑張ってくれてるだけで、気持ちが楽になる。
日記には、僕たちの事や癌を告知された事、僕への思いが沢山、書かれていた。
最後の方は、力がなく弱々しい字になっていた。
【僚…私ね、乳癌になったの。綺麗な身体見せられない。ごめんね。】
【乳癌ってね、全身に転移しやすいんだって。怖い。僚はこんな私、やだよね】
優の叫び声が沢山沢山かかれた日記。
泣き虫な僕は、まだ涙が残っているみたいだ。
澪を抱きしめていた。強く強く抱きしめた。
澪にキスをした。何回も何回も。
澪が泣きながらキスをする僕に…『先生…先生は私を愛してはいないよ。お姉ちゃんをまだ忘れてないんでしょ!』
そうなんだ。
全ての澪の行動は、僕を試していた。
姉を思うからこそ、僕が優に対してどの位好きだったか。優とはキスすらしていなかった事の意味。澪は知りたかったのだろう。
僕は、本当の過ちを犯すところだった。
僕は、優と付き合ってた時よりは大人になり、優にキスすら出来ないでいた高校生の僕じゃない。
日記をみなければ、澪が教えてくれなければ今ここで澪を抱いていたかもしれない。ただ欲望だけで…しかも優の身代わり。
僕たちは、堂々とはデートは出来ない。
澪がアパートに来たいと言った。
見せたいものがあると言った。
アパートは寝るだけの場所で、洗濯が干しっぱなしだ。それでもいいと言う。
アパートに着くと澪は珍しそうにキョロキョロしていた。
『先生…割と片付いてるね。もっと汚いかと思った。これ…お姉ちゃんの日記。渡すか迷ったの。でも泣いてる先生みて渡す事にした』
澪が恥ずかしそうに、
『これ。私が作ったの。美味しいかわかんないけど。』
澪は僕に手作り弁当を作ってくれていた。
僕の胸がぎゅーっとなった。
胸の奥が熱く…
何故だかまた涙が出てきた。
中を開けたら、から揚げが入っていたんだ。
澪は知ってたんだよね。
僕が優のから揚げが好きだった事。
僕は、ボロボロ泣いた。
泣きながら食べていた。
澪は…きっとそんな僕をみて、始めから多分…気がついていたんだね。
でも僕は、馬鹿だからまだ気がつかなかったんだ。
僕は、過ちをまた犯す。
すぐに返信があった。
【わかった👍約束だよ。】
僕は、実家に行く予定を変更し澪と会う事になった。
練習は地区大会に向けて本腰が入る。
去年は惜しくも優勝を逃し県大会への道に繋がらない。今年は、必ず!
練習を終えて、アパートに戻り軽くシャワーをしたあと着替える。
服は普段、スーツかジャージだから無頓着だった。
(高校生とデートか…。)
とりあえず、パーカーに綿パンを履きアパートを出た。
(服買わなきゃだな…)
澪との待ち合わせ場所に着いた。澪が来ていた。
『飯付き合ってほしいんだけど…いい?』
何だか、僕は無神経だよな。でも毎日コンビニの味には飽きていて、今日も腹が減っていたから、嫌われたかな…
今日も、帰りは8時を過ぎていてまたコンビニ弁当だった。
メールが入っていた。
普段からメール着信音はならないように設定してある。学校ではもちろん電源は消してある。
だからいつもメールに気がつかない。
澪からのメールだ。初めての。
【お疲れ様です😄今日何回も目が合ったね。うれしかったな😆先生…私、会いたいな。】
月曜日。
僕は、慌ただしく教室へ向かった。
ざわついた教室に、澪がいた。
目が合う。
僕と澪の関係。
先生と生徒。
でもお互いに恋愛感情がある。話がしたい。
澪と一緒に過ごしてみたい。そんな気持ちが沸き上がる。
とりあえずアパートに帰ろう。
帰り道、コンビニで弁当を買った。
(腹減ったな。弁当やだな…来週は実家に帰ろう。)
アパートに着き、空腹だけを満たす為に弁当を貪った。
満腹になり、里沙へのメールを読み返した。
(これから夜勤か。頑張ってるんだな、里沙…)
【返信遅れてゴメンな!夜勤中かな。無理はするなよ。今日は一日サッカーでした。おやすみなさい】
僕はほとんどメールをしない。男同士もメールよりは電話する。携帯電話には秘密なんて全くない男だった。
昨日までは。
澪のアドレス…。僕の…
秘密。
サッカーの事になると、俄然、本気になる僕はいつにも増して力が入る。
休みがない毎日でも、僕は全然不満もなくてサッカー出来る喜びを噛み締めていたんだ。
夕方、練習も終わりふと携帯をみた。ピカピカ光っていてメールが入ってる事を教えてくれていた。
里沙からだ。
【僚💓昨日はありがとう😌今日はこれから夜勤だよ😣初夜勤。私頑張ってみるね。またメールします💌】
返信しなきゃ…
返信しないとまた不安になるよな…
なかなか文字が浮かばない。
日曜日もサッカー部の練習がある。
もう少しで、地区の大会がある。練習場所は今日はフットサルコートもある場所だ。高校生だか、まだ保護者の協力が必要で、移動は保護者の方達だった。
僕がサブコーチを始めてから、サッカー部は少し人数が増えた。
一年生が増えたのだが、皆経験者で、レベルも高いこども達。監督は50代半ばの、爽やかな、とても50代には見えない。
僕がコーチとして来た事を、監督も保護者も、選手達も喜んでくれた。
今日は昼ご飯も持参で丸一日。練習試合もある。
皆が昼飯を食べている間、フォーメーションを決めたり、監督と話しながらコンビニのパンを食べていた。
練習試合とは言え負けたくない気持ちは、選手も僕たちも同じ。
僕なりに自分の意見も伝える。
監督は、息子位の僕の話しを尊重しながら聞いてくれた。本当に素晴らしい人格者だ。いつか僕に引き継がれるかもしれないこのチーム。監督から沢山いろんな事を教わらなきゃ…。
里沙は東京に帰って行った。
里沙からは何度か、結婚したいと言われた事があるし、里沙はサバサバしてるように見えて淋しがり屋だから僕も結婚を意識してはいた。
澪と出会ってしまわなければきっと結婚していただろう。
澪とはアドレスを交換した。
澪を送り、急いでアパートに向かった。
里沙は僕なんかの為に、僕の好きなオムライスを作ってくれていた。
6時にはアパートを出て駅まで送らないといけない。
『僚…私ね、やっぱり一緒にいなくちゃいけないようなきがしてならないよ。なんか不安なの。私~こっちで仕事見つけるつもり』
里沙をこんなに不安にさせた僕が悪いのに、でも僕は里沙に話せない。
これは僕は浮気者なのだろうか…
『里沙…昨日話したけど、僕はもう少し頑張ってみたい。離れていても近くにいても変わらないよ。また僕が東京に行くよ。』
こんなその場しのぎな言葉だけど、今を乗り切らないといけない…。
僕は澪を送る事にした。
『先生…またこうやって会える?』
澪はあどけない顔で僕をみた。
『…あと二年か。卒業しなければ付き合ったりは出来ないんだよな。僕は先生になったばかりだし、澪はまだ高校生だ。お互いが気持ちがかわらなければ付き合ってください。』
正確なんてない。
僕はこれが正しいかはわからない。
でも教師として…
精一杯
未成年の女の子に対して…
精一杯
の、言葉だった。
時間はもう3時を回っていた。僕はふと里沙が心配になった。
里沙は夕方の新幹線に乗る。昨日は泣いていたし、僕は涙に弱い。
なんて澪に言おう。
『ちょっと電話してくる』
と言って携帯の電源を入れた。何件もメールが入っていた。
里沙に電話をかけた。
『僚…まだ終わらないの?私夕方には帰らなきゃ。僚…駅まで送ってほしいんだけど。あとお昼は食べたの?』
『里沙…ゴメン。もう少しかかる。間に合うようには帰るよ。お昼はまだだよ』
里沙は何も悪くない。里沙は僕をずっと支えてくれた大切な人には代わりはない。
『日記はお母さんが閉まっていたんだけど、担任が決まってから気になって読ませてもらった。澪はね、お姉ちゃんがずっとうらやましかった。だから先生を試した。あのキスされた日に…』
そうだったんだ!
僕が山本先生と話してから、澪が僕の前に現れた。僕に優の事を聞いた。そして僕は…
彼女はいないと言った時…
僕に近づいてきた。
そうだったんだ。
僕がキスをした時…澪は拒絶しなくてただ静かに目を閉じていた。
お互いが、引き付けあったのかもしれない。
澪…
僕は、僕たちはこれからどうなっていくのか。
あの時…僕が君にキスをしなければ。
多分…
優の妹として接する事ができたんだよな。
人間は間違いを犯す。
いけない事はわかっていても。
僕は、優を失ってからも優を探した。優の存在がどこかにある…だから僕はこの…優がいた場所に戻ってきた。
もうどこにもいないと思っていた。
『日記って、優は日記を書いてたの?』
僕はまだ、彼女がいる事も今、彼女が東京から来ていてアパートにいることも話してはいない。
都合のいい事しか言ってなくて、でも澪の気持ちが離れるのが怖かった。
僕はずるい男だ。
澪は話し始めた。
『お姉ちゃんね。私に、僚みたいな人と結婚しなさい。僚は本当に凄い誠実な人。って。先生はお姉ちゃんとキスした事ないんでしょ?』
『お姉ちゃんの日記があった。あのね私、あの日記を見て先生にずっと憧れてた。担任になって本当にうれしかった。けれど…好きになって本当にいいの?』
『なんか、なんて言ったらいいのか…すまない』
言葉を選ばなければ、と思った。
けれど僕は、嘘が言えない。
波の音。潮の香。
制服を着ていない澪…
嘘は言わない。
『僕が優と出会ったのは高校一年の春。僕の一目惚れだった。ただただ僕は好きでたまらない人だった。優がいなくなるなんて今でも辛い。君は優に似ている。だからキスをしてしまったのかも。けれど…あれからずっと思っていた…僕は君を…澪を愛してしまった。』
澪は何も言わず、ただ聞いていた。
僕は急に不安になった。
僕たちは、車に乗った。
『少しドライブしようか』
僕は当てもないまま車を走らせた。
無言のまま…海沿いを走る。まだ、5月の始め。
日本海は波が荒れやすいのだが、今日は天気も良く波も少ない。
気温も初夏を感じさせる。
ふと海沿いの駐車場に車を止めた。
『降りようか。』
二人で車を降り階段に腰かけた。
目の前には日本海が広がり、佐渡島もうっすら見える。
僕は、澪が隣に座ったのを確かめた後、話を始めた。
『先生…どうしてキスしたの?私、先生が…』
携帯が鳴った。
里沙からだと思った。でも僕は澪の話が気になり、電源を切った。
『先生…いいの?電話。』
『佐伯…この前は急にゴメン。本当に…僕は…自分でもわからない。なんであんな事。僕は君の先生なのに…』
沈黙が続いた。
口火を切ったのは僕だった。
『僕は君のお姉さん…優を忘れられずに今まで生きてきた。ずっとずっと会いたくて…佐伯を見つけた時…優かと思った。けれど優ではなく君は僕の心に入ってしまった。生徒の君が…』
僕はふと景色が目に入った。
ここは学校だ。
(里沙に電話しなきゃ。)
そう思い車に乗り込んだ。
(澪!どうして…)
ふと車から澪の姿を見つけた。
慌てて車から降りた。
『佐伯…どうして…』
あのキスからお互い学校では話は出来ずにいた。
ただ目が何回か合う。
学校では生徒と担任教師だ。
朝、慌ただしく僕は準備をしている。
里沙は僕のジャージをきたまま。
『僚、買い物ってどこでしたらいい?』
『そっかぁ、何にもなくて…。歩いて三分位した所にスーパーあるよ。地図書いて置くから。ゴメン、急ぐから。昼には帰ってくる』
今日は土曜日だけど、朝から昼まで練習がある。
里沙を置いて行くには申し訳なかったが、簡単な地図を書き学校にむかった。
今日の練習は天気も良く気持ちがよかった。
『先生…腹減った~倒れそう』
誰かが言う頃は既に予定を過ぎていた。
『よーし。今日は練習終わりだな!キャプテン号令』
キャプテンが皆と並んで
『ありがとうございました!!』
練習が終わり生徒達が帰り部室の鍵をかける頃には1時を過ぎていた。
ふと携帯を見ると里沙からメールが入っていた。
『明日は休みだから、私夕方に帰るね。僚はサッカーいつ終わるの?見学に行こうかな。』
里沙は何だか、いつもの里沙になっていた。
あの時…
ちゃんと君に話せばよかった…僕の気持ちを。
僕の罪。
これからがはじまりだ。
僕は自分自身、誠実に生きてきた。いつだって、嘘は嫌いだったし、優を好きになって優を失い…里沙に出会って里沙を愛していた。
こんな気持ちになる自分が嫌になる…。
里沙を求める気持ちはもう僕にはなかった。
なのに…
『里沙…あとすこし頑張ってみないか?僕たちはまだ社会人に成り立てだし、里沙は看護師続けて欲しいんだ。なかなか連絡とれず心配かけたけど頑張って連絡する。』
里沙の表情が明るくなった気がした。
正直に言えば、里沙はなんて言うんだろう…あとすこし頑張ってって、これは僕自身の気持ちだな…。
『僚…。私、僚の側にいたいよ。僚だって忙しいのはわかってる。けどこのままじゃ、私たちダメになる。会えなくなってこのまま終わりは嫌。』
僕は…
(どうしたらいいかわかんない。里沙…)
『里沙は病院を辞めたいの?』
里沙は考えながらもうなづいた。
『里沙…ゴメン。寂しい思いをさせたんだね。僕は毎日がクタクタで、明日も朝からサッカー部の練習がある。土日もだ。だから、メールはうれしかったけど読んでそのまま寝てしまったり。でも、まだ僕は余裕がなくて。里沙をこっちに呼ぶ事だって何年か先だと思っていたから…』
僕の一ヶ月前の本心だった。
里沙は駅の近くのファミレスにいた。
何時間もそこにいて、僕からの電話を待っていた。
駅前のパーキングに車を止め、ファミレスに迎う。
里沙は新潟には何回か来ていたけど、一人で来る事はもちろん初めてだ。
里沙は僕を見ると今にも泣き出しそうな表情で座っていた。
僕と里沙は車に乗った。
『ゴメンなさい。ビックリしたよね。』
『うん。何かあったの?』
『僚…メール返信してよ。寂しかった。仕事も辛いし話したい事沢山あるんだよ。』
里沙は僕のアパートは初めてだった。座るなり、仕事の話を始めた。
『私、看護師の仕事は好きだよ。でも先輩が怖い!』
看護師として大学病院に働き始めてまだ一ヶ月。
慣れない仕事、命を扱う仕事の重圧感。更に先輩からの教育。研修やら勉強会やらで毎日寝る時間もない。
ねていてもナースコールが聞こえて起きてしまう。
そんな合間に僕にメールしても返信が少ない事で、気持ちが爆発寸前だった。
『僚…。会いたい…』
涙声の里沙。初めてだった。里沙はいつもサバサバしていてマイペースな僕は、正直楽な関係だと思っていた。お互い、仕事が始まり慣れない環境だし里沙は里沙で、看護師として働いていた。
『僚…私、今新潟にいる』
『わかった。迎えに行くよどこにいるの?』
ここの学校のサッカー部は、少ないながらも本気でサッカーに取り組んでいた。
地区大会ではいつも準優勝にはなってるらしい。
県大会には行けないが…。
僕はサッカーになると、普段とは別人になるらしい。コーチとして指導する側は初めてだったから始めこそなかなか入り込めなかったが、一ヶ月もすると僕もこの子供達を強くしたいという思いが強くなっていった。
里沙から何回も着信があり、夜ようやくかけ直した。
それからの僕は、何か吹っ切れたような、また恋愛をしているような気持ちでいた。
サッカー部の練習は朝と夕方。ほとんど毎日で、体力に自信がある僕でも疲れが出る。
授業の準備は手を抜けないし、毎日毎日学校と家の往復だった。
正直毎日来る里沙からのメールに返信する余裕はなかった。
『先生…?』
僕は、僕は…
過ちを犯す。
抱きしめながら、澪の唇にキスをした。
澪は微かに震え、唇は固く閉じていた。
僕は澪の唇に何秒触れていたのだろう。
夢なのか…
優ではないのはわかっている。でも優とキスすらしたこともないのに、優はもういないのに。キスをしている。
抱きしめながら唇を離した。
『先生…澪はお姉ちゃんじゃないよ』
澪はまだ震えていたけど、冷静な口調で言った。
すでに教師、しかも担任の意識が維持できずにいた僕はサイテーな人間だ。
『わかってる。けど、もう少しだけ…』
サイテーな事をしているなに、僕は幸せな気持ちだった。僕の鼓動はバクバクし抱きしめながら幸せを噛み締める程だった。
この衝動的な行動は、きっと罰が来る。それでも良いから…
そうだったんだ。
僕は意識しすぎて、話しかける事が出来ずにいた。
澪が優にしか見えず、気持ちがとめられない…
ただ、澪から『お姉ちゃん』と言われ、お母さんが僕に感謝してるって聞いて、気持ちにセーブがかかった気がした。
けれど、それは一瞬の間だけだった。
澪が僕の近くに来た。
『先生…彼女いるんですか?』
僕は首を横に振っていた。
澪が嬉しそうに笑った。
僕は今、教師ではなく、一人の男になった。
澪の笑った顔が愛おしい…
その瞬間、澪を抱きしめていた。
『向井先生…』
(優…)
一瞬、優に見間違う程だった。『佐伯さん。どうしたの?』
『先生…佐伯優って知ってるよね?お姉ちゃん。』
少し、顔色を伺うように僕に聞いてきた。
『ああ…もちろん。みおちゃん大きくなったな!』
『よかった…。私、先生が担任になってお母さんに話したら、凄い喜んでたんです。向井君には本当に感謝してるって。けど先生、私に何にも聞いて来ないから忘れたのかと思った。本当によかった…お姉ちゃんの部屋に先生の高校んときの写真あるから私凄い親近感あるけど、先生が忘れてたら凹んじゃう』
佐伯澪は、あどけなさもあるまだ子供っぽさが残る。
あの時…
優の通夜であったっきり以来だったが、優に似て切れ長の大きな瞳、笑うと片方だけ出来るえくぼがそっくりだった。
一仕事を終えた僕は、山本先生とたわいもない会話をしながら帰る準備をしていた。
まだ覚える事が沢山ある。
そしてサッカー部の顧問の先生の手伝いがある。
頭はもうパニックに近い。
山本先生が先に帰り、
そろそろ帰ろうとした時だった。
澪が立っていた。
新任で一週間がたった。
僕の、佐伯澪にたいする感情がなんなのか、わからないまま、無難に授業をこなす。僕に向ける生徒達の視線は、先生というよりアニキのような存在のように感じる。まだお互い様子を伺っている。
(それはそうだよな…僕は23歳、生徒は17歳。しかもついこの前まで学生だったんだし。)
男子はなんていうか、反抗期も少し過ぎて、まだ幼い感じもあるし、なんか男ばかりで生きてきたからすぐに仲良くなれた。
女子は…扱いづらい。
佐伯澪はクラスでも、一際際立つ女の子だ。
あれから二年。
里沙とは友達のような、時々恋人のような、そんな関係だった。もちろん…身体の関係もあり初めての女性が里沙だった。
里沙はビックリしていた。
『僚ってもてるタイプなのに意外と奥手なんだね』
里沙に、優の話をした時、僕はまた泣いてしまった。
里沙に話せる安心感もあったしまだ自分の中で、優は思い出ではなかった。
里沙は静かに聞いてくれたけど、やっぱり今考えると泣かなければよかった…。
僕は教師になりたかった。
そして今思えば、何故ここに帰ってきたのか。後悔することになるのに、教師なら東京でも就職があったかもしれない。
念願の教師になり~
初めての日。
優…ゴメン。澪…ゴメンなさい。僕はもうとめられない。
愛してはいけないのに
…
『はじめまして。私、北野といいます。北野 里沙。サッカー部マネージャーしていて、高校んときに一応全国調べた事あってね、向井僚は、背が高いし足も早いしイケメンだからプロ行くかもって分析してました😜勝手にだけど😉』
何だか明るくて、サッカー好きな所が嬉しくて。久しぶりに笑ったよ。
里沙ありがとう
優が亡くなってから、僕はボロボロだった。
学校には行くけど、あとは毎日優の写真を見ては泣いていて、友人も見兼ねて食事をおごってくれたり、コンパなんかも、なかば強引に連れ出された。
何ヶ月かすると、仲間から紹介したい子がいると言われた。
彼女は僕を高校サッカーの時から知っていて、会いたいと言っていると。
サッカーの話しが久しぶりに出たからか、僕は会うことにした。
それが今の彼女。
彼女は初めて会った早々、興奮気味で
握手を求めてきた。
東京に戻ってからも、優への気持ちと、病状が心配できがきでなかった。
周りも心配するくらい、僕は元気もなく気力を奪われた。
また会いに行こう。
新幹線で2時間でつく。
新幹線代はなんとか食費を切り詰めたりして、次に行けたのは二週間してからだった。
優の病室に、何故だか走っていた。
早く会いたい!
扉を開くと優の家族がいた。ご両親に中学生くらいの妹。
すぐにお母さんが声をかけてくれた。
『僚君…来てくれたんだね。』
『優!僚君来たよ。目を開けて』と、呼吸が荒い優の肩を叩いた。優にはもう目をあける力がなかった。
昏睡していた。
僕は……。優に何もしてあげられなかった。
二日後優は静かに息を引き取った。
棺には沢山の遺品の中に、僕と一緒に写した写真もいれてあった。
同級生の女子はなきくづれている。
僕は涙が出なかった。
なんでだろう…。
涙って枯れることがあるんだね。
優…君をもう感じる事が出来ないんだね。
僕にはもう何も無くなった。
病院の待合室で、うなだれ泣き続ける僕に、優のお母さんは、
『僚君…ありがとう。優は、優はあなたに会えて、あなたにこんなに好きになってもらって本当に幸せです。優は今、自分と戦ってる。まだ生きようと頑張ってるし私たちだって…。
僚君は、あなたの人生をしっかり生きてください。
優には私たちがついてるから大丈夫。』
今、僕はその言葉通り自分の人生を生きている。
教師になり、これからも、自分の人生を…
優…
僕はやっぱり君を忘れる事が出来なかったよ。
君の妹の澪が、僕のクラスにいる。
同じように、あの時初めて優をみた瞬間。澪はあの頃の君だった。
優は、僕に一言
『僚君…ごめんね』
と言った。僕は優を愛おしく今すぐに抱きしめたくなった。
『優、僕もゴメン。もっと早くに気づいていたら…』
僕はかすれた声で震えていて、けど、気づかれたくなくて必死で笑顔を作ろうとした。
後で優のお母さんから、今は肺にも転移していること。抗がん剤治療が彼女には合わず放射線治療にこれからなるけど、多分余命は三ヶ月もつかどうか。
僕はやせてしまった優に、苦しそうな優に~あと三ヶ月しかない優に…
何が出来るのだろうか…
あしたになればまた大学に行く為、東京にもどらなければいけないし僕はずっとずっと考えていた。
まだ愛していた。
5分、10分…
なかなか戻って来なかった。僕はひたすら会えることだけを祈っていた。
しばらくしてお母さんが戻って来て、
『僚君。優に会ってあげてください。』と頭を下げた。
病室のベッドにいた優はベッドをあげて体を起こしてくれていた。呼吸が苦しくて顔色は真っ白だった。
優…
僕は、涙がボロボロと出てきてしまう。
会えた喜びと、なんでもっと早く教えてくれなかったのか、ずっと僕を思ってくれてたのに、心配かけたくなくて僕から離れた優の優しさをその部屋全てから感じ取れたんだ。写真立てには僕が最後に試合した時の写真と、優と二人で照れながら並んで写った写真が飾られていた。
優は、高校生三年生の夏に乳癌になった事。ずっと黙ってたのは乳房を摘出しなければならず、僕や友人には言えなかった事。そして卒業旅行に行けば気づかれてしまうかもしれない恐怖から、僕には会えないと辛かったけど離れる決意をした矢先脳に転移し緊急手術をしたこど。
だから僕には連絡出来なかった事を話しが出来ないかわりにお母さんが教えてくれたんだ
癌って、いつから?
なんでだよ。卒業式から連絡が取れなくなった。
優は看護師になりたいって言っていた。
結局地元の看護大学に推薦で入る事が決まっていたし、なのになんで入院?
僕の不安と疑問がぐちゃぐちゃになっていた。
憲太から病院を聞いて、会いに行った。
でも会う勇気があるか、まだわからない。
癌専門の病院。
病室の近くに行き、名前を確かめる。
ウロウロしていた。
こんな胴体のでかいのがいたら目立つよな。
『もしかして。向井君?向井僚君だよね』
優の母親だった。
ニコニコしていて、僕に近づいてきた。
『優がいっつもあなたの話しするんだよ。サッカー上手くて、学校の先生になるって。優、本当嬉しそうに…』
優のお母さんは涙目になった。
『優さんに会いたいです。会えますか?』
『優ね、今あなたに会える状態じゃないのよ。手術したから、まだ呼吸器つけてるし。けど…今聞いてくるね』
そういうと足早に病室にはいった。
何故、急にいなくなったのか…僕を嫌いになった?
ずっと考えていた。
東京に僕は一人暮らし。
ここには優はいない。
優に何度メールしても返って来ない。
電話はいつも電源が入っていない。
彼女の家に行ったけど、怖くてチャイムが鳴らせなかった。
優の友達に聞いても、わからないと言われた。
ただただ毎日悶々としていた。
東京に来て、一ヶ月。
ゴールデンウイークに実家に帰った。
久しぶりに帰ったから、なんか東京に帰りたくなくて、仲間と毎日遊んでいた。
仲間の憲太が、言いにくそうに…
『僚さぁ…、ずっと俺黙ってて、今も言っていいかわかんないけど、佐伯さんが…』
『は?何!なんかあるのかよ。優が何?』
怒りすら感じる表情だったはずの僕に、憲太は
爆弾を落とした。
『佐伯さん。今入院してるらしい。なんかヤバイみたいだけど、あんま俺も聞いたけどわかんないけど、髪の毛とかなくて癌って事は確か…』
(何言ってんだよ!嘘だろ!いくら憲太でも冗談言うなよ。早く嘘って笑えよ)
凍る体で、声にならなくて心の中で叫んでいた。
卒業したら二人で思い出を作ろう。
卒業しても、遠距離でも、僕は君をずっと好きだ。
二人でそんな内容のメールのやりとり。
僕たちは二年間付き合い、まだキスすらしていなかった。
サッカーもしばらく引退。
あとは受験が終われば、沢山一緒にいられる。
サッカー部はわりと県内では有名で地元雑誌にも取り上げられていて、僕にも、サポーターというかファンみたいなのがいたらしい。
その当時だけど。
サッカーしてたわりに、身長は180センチはあるし目立つからだけだけど、そんな事も優はヤキモチを妬いてくれたよね。
なのに君は、僕の前からいなくなった。
(優…)
(優…)
(僕は君に会いたい。
君に触れたい。愛したい。
ずっとずっと思い続けていたのに。)
『向井君って本当に無邪気だよね。なんか面白い。』
僕たちは自然と惹かれあった。多分僕のスキスキオーラがすごかっただろうな。
付き合ってから、毎日メールした。
部活が終わってから帰ると9時過ぎたりしても、優からもメールが必ず入っていたし。なかなかデートは出来なかったけど、練習を見に来てくれたり試合には必ず弁当を作ってきてくれたよね。母ちゃんには、いらないとは言えず二つ食べたりしたけど、
味は母ちゃんが旨いとは言えず。
でも優の作ったから揚げが最高だった。
三年生になって僕たちサッカー部は全国大会出場に向けて全力で練習した。
結局準優勝で負けてしまったし、その前から僕はサッカーの道ではなく大学への進学を目指していた。
サッカーはどこでも出来る。ずっと続けよう
そう仲間と約束した。
僕は彼女を見てるだけで、何だか気持ちが明るくなった。
学校も部活も楽しかった。
今まで、野郎達とばかり馬鹿なことをしたり、つるんだり騒ぐことが生きがいな僕が、初めて好きになった。
彼女は
佐伯 優
これから僕は、
どうなってしまうんだろう
同じ声
同じ髪質
同じ目元
僕の一方的なサッカー話に君は、
『うん。うん。凄いね。楽しそう』とうなづいてくれた。
『向井君、サッカーはどこのポジション?もちろん日本代表になるんだよね?』
とか、僕をなんか喜ばせてくれたんだ。
僕達の高校は進学校だけどスポーツも盛んだ。
サッカー部は全国大会にも行ってる。
部員は60人もいてレギュラーにはなかなかなれない。
結局僕は日本代表は諦め、教師を目指す事になるとは、この時は考えもしなかった。
初めて話したのは、
なんだったかな。
なんでもいいからきっかけが欲しかった。
僕はサッカー部に入っていた。小学生からサッカーに夢中な生粋のサッカー少年だ。中田英寿に憧れ、必ずサッカー選手になると信じていた小学生時代。
女の子に興味もなく、仲間が大好きで、仲間と一緒なら毎日が楽しかった。母親も父親も僕の好きなようにサッカーをさせてくれた。
僕の話しと言えばサッカーしかなかった。
山本先生が肩を叩いた。
僕は泣いていた…
僕には今の彼女が出来る何年か前に、好きな子がいた。
初めて会ったのは高校一年の入学式。同じクラスの隣の席だった。
優しい雰囲気と笑顔で、一目惚れだった。
君は、僕のすべてになった。
何時間たったんだ…。
いつの間にか、酔ってしまったみたいだ。
僕はあまり酒は得意ではない。新潟は酒処だけど、呑める口ではないしすぐに眠たくなるから楽しめないんだ。
今日は呑めないのに飲まされたし、
(佐伯…佐伯か…みお。大きくなったな。)
(覚えているかな)
あ~会いたい。彼女に…。なんでいなくなったんだよ。チクショウ。
『向井先生!大丈夫?泣いてます?』
まず自己紹介をしたのは、
背は僕より低いが、175センチはある体格の良い、
『山本です。大学は都内の私大です。担当は数学です。地元は山形なんで、まあ近隣です。よろしくお願いします』
もう一人は、小柄で優しそうな
『相田です。えっと…えっと…じっ地元の大学です。担当は国語です。よろしくお願いしますっ。』
ふ〰次は僕だ。
歓迎会では、校長はこう教えてくれた。
『新しく先生になりとまどいや焦りが出てくると思います。そして、いきなり先生と呼ばれる事で勘違いする事もあるでしょう。人を教育するにはまだまだ君達は若い。これから沢山つまづくでしょうが、どうぞ沢山つまづいてください。つまづきが君達を成長させます。そして人生の先輩に沢山聞いてください。君達よりはイロイロ経験されてるからね。あ~あと生徒は生徒だから気をつけてね😅』
校長からの挨拶が終わり、僕たちは新人同士、自己紹介をした。
赴任早々、歓迎会があるようで、仕事終わりに近くの居酒屋に行く事になった。
先生行きつけらしい。
僕の他に、二人新任がいたが大学も違うし学年も違いあまりまだ話しはしていなかった。
僕は二年の担任だ。
僕には、今彼女がいる。
大学のサークルで知り合い付き合って二年。
今は僕は地元の高校に赴任し、遠距離になった。
二年前、恋なんてできないと思っていた僕に、頑張って見ようと思わせてくれた。そして平和な二年がたったんだ…
でも僕はもう過ちを犯す
チャイムがなり、まずは一限は終わった。
君との出会いが、僕の人生を狂わせるなんて思いもしなかったよ。
君は…あの頃の君にそっくりで思わず見てしまう。
授業中も気になるんだ。
君は今何をしているの?
君は僕を覚えてるのかな!
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