優しさ
今までの人生を振り返ります。今までずっと色々な過去を思い出して泣いてきたので…。
もう色々な過去に振り回されず生きていきたい。
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父は無口でお酒を飲むと口が軽くなりベラベラとよくしゃべる。職業酒屋。
母はパートをしていて普段からよく喋りとても気が強く、姉や私は小さい頃からよく叱られ、縁側で正座をされられたりと…とにかく怖かった。
姉は8歳上のとても温厚で優しい人だ。小さい時は何をするにも姉の後ろをついて回ったぐらい私は姉ちゃんっ子だった。
私が中学3年生になった時に姉は結婚をして家を出た。私は見ず知らずの男に姉を捕られた悔しさで、心から祝福してあげられなかった。
中学3年にもなると学校では話題が‘彼氏’の話題がちらほら…。
その頃私にも意識している人がいた。その相手は母のパート先のバイトのお兄さん。トモユキ。私より3つ上で中卒。中学卒業してからブラブラしていたらしいが、あまりにもだらだらしているのでトモユキの母が仕事を見つけてきて面接まで約束してきてしまったらしい。お金もないのでしぶしぶ面接に行ったら受かってしまい今の職場にいる。
でもその職場で仕事の面白さを知ったようで真面目に働いていた。
私はトモユキの顔が見たくてよく母の職場に行っていた。
ある時、母が夕飯を食べていた時にトモユキの話になり「なんかお兄(母はトモユキをこう呼んでいた)って趣味でギターをやってるんだってさぁ。」と話をしていた。
何を思ったか私は、その年のお年玉でギターを買った(笑)
当たり前に何も弾けず、何からやればいいのかわからない私は、買ってから一度も触る事もなく放置(笑)
ただギターを持っていればトモユキと近くなった気がしていた。
しばらくしてから、いつものように母の職場へ顔を出した時だった。
母が「この子なんでか知らないケド、ギター買ったのよ。でも一度も弾いてなくてさ(笑)」
と職場の人に話をしていた時に
「あぁ!そうだ!お兄に教えてもらえばいいじゃない。年も近いし!ねぇお兄!」
「いいっすよ。」とトモユキが言った。
「ぅええぇぇぇ???!!!いいの???」と心の中で叫んだ。(笑)
「いつがいい?」とトモユキに聞かれ、私は「いつでも。」としか答えられず。
母が「何照れてんの?(笑)バカだねぇ」と母がゲラゲラ笑っているそばで、トモユキが
「じゃあ…今日仕事終わったら暇だから、今日にする?」と聞いてきたので「はいはい。いいわよ~。」と母が答えてた(笑)
私は母より先に家に戻り、急いで部屋中の掃除をした。
母と一緒にトモユキが来た。私の家に若い男の人が来るなんて初めての事だったので、何も知らされていない父は「??!!」な感じの顔をしていた(笑)
来てさっそくギターを触り始めるトモユキ。
「いいギター買ったんだね。とりあえずコードを教えるから。」と挨拶も早々にギターをやり始めた。
トモユキは足がものすごく長くて、足を組みながらギターを弾いてる姿にドキドキした。しばらく弾いてから「じゃあコード教えるからギター持って。」とギターを渡され、いざ弾こうと思ったが、私の指が短くて弦が押さえられず(笑)
トモユキは「(笑)キツそうだなぁ。でも慣れだから頑張って。」と私が届かない弦を抑えてくれながら、ギターの練習を1時間ぐらいした。
夜7時ぐらいになり、母が「夕飯出来たケド。お兄も食べていきな~。」と言われ、みんなで夕飯を食べる事になった。
夕飯を食べ終わりトモユキが
「じゃあ復習したら俺帰るからもう1回やろう。」
と言ってきたので「えぇ↓疲れたからちょっと休憩。少し話しようよ。」と私は言った。
トモユキは割とよく喋る人だった。趣味や好きな音楽など、たわいもない話をしていたら…
「俺泳げないんだよ(笑)」
「私も!だから水族館大好きなの!」
「泳げないと水族館って関係あんの?(笑)」
「あるよ~!泳げなくても水の中にいるみたいっしょ?(笑)」
「おぉなるほどねぇ!水族館行きてぇなぁ。…今度行く?」
「えっ…うん!行きたい!!」
ってな感じで予想以上の展開で今度遊ぶ事になった。
その日は携帯とメアドを交換してトモユキは帰っていった。
私はどんどんトモユキに想いを寄せていった。
それからトモユキとは毎日メールをしていた。
そんなある日トモユキから
「水族館どこ行きたい?」とメールが入っていた。
私は「八景島水族館に行きたいなぁ。」と返した。
「今度の日曜日に行こう。」
私たちは初めて出かける約束をした。
日曜日が待ち遠しくて、まだ覚えたてのメイクを何度も練習したり、服を何日も前から選んだりしてた。
その当時、親友だったマイにトモユキとデートをする事を伝えた。
「え??よかったじゃん!頑張って落としてこい!(笑)」とすごいエールを送られたのを覚えている。(笑)
日曜日当日。
地元の駅で待ち合わせをしていたので、支度をして家を出た。
母から「変な事したらぶっ飛ばす。」と言われ、少しビビッていた(笑)
駅に着くと10分前。駅前の店のショーウィンドウの前に立って服装をチェックしていると…
「おぉ、大人っぽいな。中3には見えん(笑)」
とトモユキに声をかけられた。
トモユキはロングコート姿で私を待っていた。その当時の私は148センチと小さく(今も大して変わりませんが(笑))178センチのトモユキは大人っぽくドキドキした。
「んじゃ、行くべ。」
トモユキと私は八景島へ向かった。
ト
八景島に着くと、さっそく水族館のチケットを買った。
「うわぁ!!すごいキレイッッ!!!」
大きな水槽の魚たちを、感動しながら見ていると
「この魚食えるヤツだ、うまそう(笑)」
と、トモユキはなんともまぁムードのない言葉を連発(笑)
「この魚は〇〇だなぁ。」と魚屋さんだったトモユキは色々魚の事を知っていて、教えてくれた。
水族館を出てお昼を食べ、午後は遊園地で色々な乗り物に乗ったり、お土産屋を見て回った。
当時、中3の私の門限は7時半。時間もそろそろ近づいてきたので帰る事にした。楽しい時間はあっというまで、なんだかここに来た思い出を残したくてトモユキに
「プリクラをとりたい。」と言った。
ふたりとも緊張していて出来上がったプリクラは、顔が強ばっていた(笑)
帰り際、トモユキがイルカの人形をプレゼントしてくれた。
それからトモユキとは学校が終わってからよく会うようになっていた。
季節は春。
私は高校1年生。うちの学校は中高とエスカレーター式だったため、高校受験もせず高校を迎えた。
私は新しい制服をトモユキに見せたくて、母の職場に顔を出した。
「おぉ!高校かぁ。制服かわいいなぁ。行けなかったから楽しめよ!」
トモユキが言ってくれた。
その日の夜、トモユキに「夜桜見に行かない?」とメールを入れた。
「いいよ。」返事が帰ってきた。
さっそく母に、門限の時間を延ばしてほしいとお願いをした。
母は「お兄がしっかり送ってくれるなら。」と了承してくれた。
夜桜を見に行く日、いつも通りトモユキの仕事が終わるのを待って近くの公園へ行った。
私はこの日、はっきりさせたい事があった。私はよくトモユキと遊ぶけど、トモユキが彼女がいるのかとかは全く知らなかった。私たちの関係もはっきりさせたくて、私の事をどう思っているのか、それとなく探りを入れようと思っていた。
夜桜を見ながら「お兄って彼女いるの?」と聞いてみた。
「彼女いたらこんな事出来ないっしょ?(笑)」と言われた。
私はしばらく沈黙してから…
「私たちってどんな関係なの?」と聞いてみた。
トモユキはしばらく黙って…
「…ん~。付き合ってみる?俺と。」
と言われた。
嬉しくて嬉しくてドキドキした。この日、私に初めて彼氏が出来た。
それからトモユキとは何度もデートを重ねた。
付き合って3ヵ月目ぐらいの時に、マイから「彼氏と初めてHした。」と聞かされた。
私はその時、トモユキと手はつなぐけどキスすらしていなかった。
その数日後に母にトモユキと付き合っている事を伝えた。
母は「やっぱりねぇ。まぁいいんじゃない。仲良くしなさい。」と言われた。
母がその日に「じゃあお兄呼んで、夕飯うちで食べようって伝えて。」と言われ、さっそくトモユキを呼んだ。
トモユキが来て、母は「よろしく頼むね。」と伝えていた。
母公認の付き合いになってから、トモユキはよく私の実家で夕飯を食べていた。母はトモユキを気に入っていたらしく、自分からよく夕飯を誘っていたぐらいだ。
いつものように、夕飯をうちで食べる約束をしている日。
学校でマイから「そろそろキスぐらいしたら?」と言われた。
「そんな事言わないで。変に意識しちゃうでしょ!!」と私が言い返した。
その日の夕方、トモユキと駅で待ち合わせをして実家に向かっている最中、変に意識してしまってうまく話せなかった。
トモユキが異変に気づいたのか
「なんか変じゃね?どしたの?」と言われた。
「…友達が付き合って少し経ったんだからキスぐらいした?って聞かれて…」と言ったら、
「あ~…なるほどね。…でも俺怖いんだよ。」
「なにが?」
「お前の母ちゃん。変な事したらぶっ飛ばすって言われてるし…(苦笑)」
なんじゃそりゃ(笑)と思った。
「付き合ってんだからそれぐらいすると思ってるよ。」
「そっかなぁ。俺平気?ぶっ飛ばされない?(笑)」と聞いてきたので
「大丈夫っしょ(笑)」と言ったら…
いきなりキスされた。目も閉じるのも忘れたぐらい早かった(笑)
「結構我慢したよ?俺(笑)…でも徐々に深めていこうな。」
と頭を撫でられてまたキスをされた。すごく幸せだった。
それから私は、トモユキをどんどん好きになっていった。
友情や家族よりも、愛が1番と思っていた。友達とも仲良かったが、トモユキを最優先に考えていた。今思えば依存だ。
トモユキも私の気持ちに答えるように、私を最優先に考えてくれた。喧嘩もよくしたが、やはり私にはトモユキ以外考えられなかった。
付き合って半年ぐらい経った日、私は初めてトモユキと結ばれた。高校1年生の夏、またひとつ大人になった気がした。
トモユキと付き合って1年が過ぎた頃から体に異変を感じた。
私のお腹にはトモユキの赤ちゃんがいた…。
…私はどうしようとも考えず、真っ先に産みたいと思った。
トモユキに話をしたら「マジ?!…俺絶対幸せにするよ。」と言ってくれた。
その日の夜、母に話があると持ちかけた。
母は予想していたのか
「家じゃなく外で話をするから、お兄に伝えて。」と言われた。
夜に母とファミレスに向かった。トモユキはもう来ていて、母と私が着いて注文をすると…
「お腹の中に俺の赤ちゃんがいます。まだまだ未熟者ですが、どうか娘さんと結婚させてください。」トモユキが言った。私も「お願いします。」と言った。
頭を下げていた2人に母が「無理に決まっているでしょ?お兄はまだバイトだし、あんたいくつだと思ってんの?まだ高2だよ?」と言われた。
私は「どうしても産みたいんです!授かった命だから…。だからお願いします!」と頭を下げた。
その瞬間…ファミレスに置いてあるナイフを投げつけてきた。
「絶対に産ませない。あんたたち自身が子供なのに、産ませられるわけないでしょ!!!!」
私が言葉を出そうとした瞬間…
「…わかりました」とトモユキが言った。
えっ…??諦めるの??絶対幸せにするって言ったじゃない…。
「お金を用意するから産婦人科に行ってきなさい。」母は言い残し、私を引っ張りファミレスを後にした。
母に「お父さんには黙っていなさい。こんな事言ったらお父さん悲しむから。」と言われた。
…私は大切な赤ちゃんを犠牲にした…
しばらくトモユキと連絡をとらないようにしていた。あれだけ信用していただけに、ショックで声すら聞きたくなくなっていた。
1ヶ月経った頃、学校の帰宅途中にトモユキが待っていた。
トモユキが「…ごめん。本当にごめん。守れなくてごめん。」
泣きながら謝ってきた。私も泣いた。
赤ちゃんごめんなさい…。
「ちゃんと責任とるから。お前とちゃんとやり直して結婚するから。そうしたらかわいい赤ちゃんを作ろうな。」と言われた。
この頃から私の人生がおかしくなっていたのかなぁ…。
自分で自分自身の人生をおかしくさせたんだね…
それからの私たちは変わっていった…。
喧嘩をするたびに赤ちゃんの話が出てきて、私はトモユキを責め立てた。トモユキも赤ちゃんへ対する罪悪感などない素振りや行動を見せてきた…。
そしてある日、大喧嘩になり、私たちは別れた…。
トモユキと別れてから、私はトモユキのいない寂しさに襲われ、夜眠れなくなっていった。夜中起きていて、朝にやっと眠りにつけるような体質になってしまった。
学校も度々遅刻をし、挙げ句の果てには学校を多々休むようになった。
いつものように学校を遅刻し、学校の近くの駅でブラブラ1人で歩いていると、1人の男が声をかけてきた。
「すいません…今暇ですか?」
私はナンパが大嫌いで、声をかけられても無視をする。でも、この時はなぜか振り向いてしまった。
「なに?」
これが私とマサとの出会いだった…。
「…いやぁ~暇かなと思って(笑)」その制服って〇〇女子の制服でしょ?チョーお嬢様じゃん。お嬢様がなにサボッてんの?
「サボッてないし。今から行くとこ。ってかお嬢様じゃないし。あんた誰?」
「俺、マサ!〇〇大学の2年!かわいいね。」
「下手くそなナンパの仕方だね(笑)それじゃ。」
「うわうわ~。冷てぇ~!(笑)ちょっとだけ話しようよ!」
マサは一方的に喋り出した。マサはお笑い系みたいで、よく喋りよく笑わしてくれた。
私がちょっとずつ笑う姿に、マサは…
「おぉ!ぜってぇ笑った方がいいよ!マジかわいい!」
「…ありがとう」
マサはとても優しく誠実そうで、人とのコミュニケーションが上手かった。でも…私のタイプではないし、私にはとてつもなく重い過去もあったので、男の人と付き合うのが、怖かった…。
マサとは1時間ぐらい喋って
「あっ!学校行く途中だったんだっけ?ごめんね!」
「ううん!今日はもういいや(笑)」
「じゃあ飯でも行く?」
マサとご飯を食べに行った。食べている最中もずっと私の笑顔を、絶やさないようにしてくれていた。
優しいマサは、とてもお兄ちゃんみたいに接してくれた。
私は…
「ってかなんで私に声かけたの?」
「…なんかつらそうだったから声かけちゃった。今にも死にそうな顔してんからさぁ…(苦笑)これは正義の味方の俺様が助けなくては!と思ってね(笑)」
私は涙をこらえた…。私は何も言っていないのに…。
「…なんかあったら連絡して?いつでも行くから」
マサが言った。私は笑いながら
「正義の味方だもんね(笑)」
マサから連絡先を教えてもらって、少し話してから別れた。
しばらく、マサとはメールだけの日々だった。マサは毎日必ずメールをくれる。その態度や、メールの内容を見る度に私は、マサにどんどん惹かれていく。でも私には誰にも言えない過去を背負っている。
当時の私は、幼稚園の先生になりたかった。でも自分の赤ちゃんを守り抜く事すら出来ない私が、他の子供たちを守る事なんて出来ないと諦めていた…。
ある時マサから一通のメールが届いた。
「付き合ってほしい。」
いつものおちゃらけたメールではなく、真剣な様子が文字から伝わってきた…。
私は…「会って話がしたい」と送った。
「今から行く。」
マサのメールが届いた時には、夜中の2時を過ぎていた。
マサの家から、私の家まで車で飛ばして1時間ぐらいの所にあった。
2時半を過ぎた頃、マサからメールで「〇〇あたりに着いたんだけど、どこらへん?」とメールが来たので、私は電話をした。
「もしもし?そこらへんにいて?今からそっちに行くから。」
「夜遅いし近くまで行くから、場所教えて。」
数分待っていたら、マサから
「着いたよ。」とメールが入った。
私は親が寝てるのを確認し、家を出た。
マサは車の中でタバコを吸いながら待っていた。
「来るの早くない?(笑)」
「チョーすっ飛ばしてきちゃったよ~(笑)事故るかと思った(笑)…でも会いたかったから…」
マサは言った。
長い間、沈黙が続いた。車のCDからは、‘ゆず’が流れていた。
「…すいませ~ん(笑)俺告ったんすけど~!…まさかフラれた感じ?(😱←みたいな顔してた(笑))」
「(笑)……あのね、私には言えない過去があって…男の人と付き合うのが怖いんだ…」
「…そっか。」
マサは何も聞かなかった。
「でも俺、思ってる以上に想ってるよ?つらい過去も全部含めて好きになったつもり。怖いなら触れない。ゆっくり俺と前に進もう?」
私は泣いて頷いた。
この人となら前に進める気がする。そう思った。それが間違いだと気付くのは、それから半年ぐらい先の事になる。
マサと付き合い出してからも、マサは優しかった。私がいつでも笑えるように色々喋ってくれていた。マサは約束通り、私には一切触れないでいてくれた。私は幸せだった…。
半年を過ぎた頃、私の誕生日が近づいてきていた。季節は冬。私ももうすぐ高校3年になる。
マサは「なんか欲しい物ある?」と聞いてくれた。
「なんもいらない。だから誕生日は一緒にいてほしい。」と私は言った。
誕生日の前日は学校だったので、学校に行き、帰りは学校まで車で迎えに来てくれていた。
私は私服を用意していたので、トイレで着替えてご飯を食べに行った。
夜、初めてマサの部屋に行った。
マサは一人暮らしだった。男の人なのにすごく綺麗に片付いていてびっくりした。
「適当にくつろいで。今コーヒー入れるね!」
と、マサはキッチンへ行った。
コーヒーを飲みながらテレビを見た。
「そろそろ風呂入ろっか。先に入っておいで。」
マサに言われたので、私は
「ありがとう」と言ってお風呂に言った。
お風呂から上がったら、マサはテレビを見ていた。
「風呂上がりいいねぇ!スッピンもかわいい~(笑)じゃあ俺も入ってこよ~かな」
マサがお風呂に入った。私はテレビを見ながら、マサの優しさを噛み締めていた。
マサがお風呂から上がったら、私は寝ていた。
マサが「おーい。時間だよ~。」と私を起こした。
「ごめん!寝ちゃった?…」
私が起きたらマサの部屋は暗く、テーブルの上にはケーキとロウソクがたっていた。
寝ぼけていた私は、理解するのになかなか時間がかかった。
「ハッピーバースデー。」マサが言った。
私はやっと理解して、嬉しくて泣いた。
マサが「泣かない~(笑)はい!プレゼント!」とプレゼントをくれた。
プレゼントを開けたら、かわいいカバンが入っていた。
「…かわいい。プレゼントなんかよかったのに。ありがとう。」
「いやそれは俺の気持ち。大したモンじゃないけど、使って。」
マサが「俺、結婚したいんだ。本気で想ってる。今は学生同士だし、まだ先の話になるんだけど…でも本当に愛してる。ずっと一緒に居て?」
マサの本気な気持ちを聞いた。素直に嬉しかった。本気で一緒にいたいと思った。
だから、私は頷いて「うん。」と言った。
この日、私とマサが初めてひとつに結ばれた日だった…。
後に起こる事など知りもせず、幸せの絶頂に浸っていた。
私は、マサの腕枕の中でマサの話を色々聞いた。お父さんが亡くなっている事や、実家の話、学校の話。今までは、バカ話や趣味の話ばかりだった。
マサの真剣な話を聞いて、またマサの事を知れた気がしていた…。
マサに裏があるなんて思いもしなかった…。
私が朝起きたら、マサはもう起きていた。
なんだかマサが不機嫌そうな顔をしていた。
「…おはよう」私が言った。私はマサより遅く起きた事に、怒っているのだと思い
「ゆっくり寝過ぎちゃってごめんね…」と声をかけた。
マサが「…ううん。それよりそこ座って。」と言ってきた。
私は何もわからず座った。
マサが私の携帯をテーブルの上に置いた。
「男のアドレス全部消して。」と言われた。
「中見たの?」と聞いた。
当時私はバイトをしていた。バイトの男の子の連絡先や店長の番号が入っていた。バイトの人からはシフトを代わってほしいとかしか、メールした事がなく何故消さなければいけないのか、わからなかった。それよりも携帯を勝手に見られた事に腹が立っていた。
「なんで消さなきゃいけないの?何もやましい事してないし。それに人の携帯を勝手に見る方がおかしいよ。」
マサは「…消せないの?俺とずっと一緒にいるって言ったじゃん。」と言ってきた。
私は嫉妬だと思った。私も結構嫉妬深い。なんとなく気持ちがわかってしまった。
「…わかった。でも心配しないで?本当になにもないから。」と言った。
マサは「わかった。勝手に見てごめん。」と言ってきた。
それから何日かは、変わらず優しいマサだった。
マサといつものようにデートをしている時だった。車を駐車場に停め、ブラブラとショッピングをしていた。
マサが「見たい服屋がある。」と言うので一緒に見に行った。
マサが色々服を選んでいた時に、私もマサの似合いそうな服を選んでいた。私に1人の男の店員さんが話かけてきた。
「こちらの服なんかどうですか?彼に似合うと思うんですが…」と服を勧めてきた。
私は「あ~似合いそうですね」と返した。
その時、私は強く腕を掴まれた。ビックリしていると、マサがすごい勢いで引っ張り店から出た。
店員さんも唖然としていた。
「ちょっと何?!」私はマサに言った。
マサは無言で、私の腕を掴んで引っ張りながらどこかへ向かっている。
車を停めてある駐車場に着いた。
私は「…どしたの?帰るの?」と聞いた。
「…乗れ。」
私はわけがわからず車に乗った。
私が乗った瞬間に、太ももからすごい痛みを感じた。見るとマサが思いきりつねっていた。
「…痛っ。ちょっとやめて!痛いから離して!!」
マサの手をどかそうとしても、男の力には勝てず…。
マサが「お前俺の彼女だろ?ずっと一緒にいるって約束したじゃんか。何男と喋ってるんだよ!」
私は「…ただ…マサに似合い…そうな服…を…探し…てて…もぉいいかげん…離して…痛い…」
泣きながらマサに訴えた。
マサは「…ごめん!…男と喋ってる姿見てたら…ついカーッとなって…ごめんな?痛いよな…」
私の太ももをさすりながら、何度も謝ってきた。
「…私はただマサに似合う服を探してて…」私は泣きながら言った。
「ごめんな。でもすげぇ不安だったんだ…。俺、だめだ…。…もう二度としない。だから…許してほしい…」
マサは泣きながら謝ってきた…。
私はこの時、マサが泣いていたし‘もうしない’と言った言葉を信じてしまった。
この日を境に、マサはどんどんエスカレートしていった…。
道を歩いている男の人と目が合ったと、髪を引っ張りながら引きずり回され、コンビニの店員さんも男だとキレ、お腹を蹴られた。
マサは暴力を加えた後、必ず泣きながら謝ってきた。でもマサは、絶対顔を殴ったり叩いたりしなかった。だから周りからは気付いてもらえなかった…。私も気づかれないようにした。もし誰かに、気付かれて何かされたらもっとヒドイ事をされる…。
別れ話も、したくても出来なかった。本当に怖かった…。
ある時、マサと電車ででかける事になった。
私は道を歩く時には、必ず下を向くようにした。これで目を合わす人もいない…。
ホームに着き、マサが話しかけてきた。私は下を向きながら話をしていた。
マサはそれが気に入らなかったらしい…。私は線路の方に向かって突き飛ばされた…。あと2センチぐらい前にいってたら、線路に落ちていただろう…。
私はこの時、頭の中で何かが弾けた…。次の瞬間…
私は駅の改札に向かって思いっきり駆け出していた…。
私は急いで改札を出た。
私は自慢じゃないが足は速い。取りあえず駅前のタクシー乗り場まで、ひたすら走った。
私はタクシーに乗ると「〇〇駅までお願いします」と言った。
窓の外を見るのが怖かった。だから下だけ見ていた…。
私の頭の中は、意外と冷静だった。
「自分の家の近くで降りたら、車で先回りして待ってるかもしれない。…そうだ。お姉ちゃんの家に行こう。」
私はお姉ちゃんの家に電話をした。
「…もしもし。お姉ちゃん?」
お姉ちゃんが電話に出た。
「おぉ!どしたの?こんな昼間に。」
「今から遊びに行ってもいいかなぁ?」
私は、お姉ちゃんに気付かれないように話した。
「別にいいけど~。ぢゃあ駅まで迎えに行くよ!」
私は、タクシーを降りお姉ちゃんの家の最寄り駅まで行く事にした。
擦りむいた膝がジンジンする…。
駅に着くと、お姉ちゃんが待っていた。
「久しぶりだね!今日旦那もいるけど…」
お姉ちゃんが言ってきた。
「うん。全然いいよ!ごめんね?いきなり押しかけちゃって…」
そう言えばお姉ちゃんの旦那さんに会うの、結婚式以来だなぁ…。
「ただいま!妹がきたよ。」
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」
旦那さんが出迎えてくれた。
お姉ちゃんともあまり会っていなかったので、色々話をした。なんだかとっても癒された…。
辺りが暗くなってきた頃、
「そろそろ帰ろうかなぁ。」
私は言った。
「もう遅いから、送っていくよ。」
お姉ちゃんの旦那さんが言ってくれた。
私自身も、マサが待ってるんじゃないかと怖かったので、甘える事にした。
実家に近づくにつれて、また恐怖が戻ってきた。マサの車が停まっていたらどうしよう…。
実家の前に着いた時、辺りを見まわしたが、マサの車はなかった…。
「じゃあまたね。またおいで!」お姉ちゃんが言ってくれた。
私は実家に戻り、マサにメールを送った。
「耐えられない。別れよう。さよなら。」
その後すぐに電源を切った。その日の夜は、何故か優しかったマサを思い出した…。どうして蹴られたり殴られたりしたのに、怖い思い出じゃなくて、楽しかった思い出ばかりが出てくるのだろう…。一睡も出来なかった。
朝になり、学校へ行く支度をした。
母は「あら珍しい。時間通りに学校に行くなんて。いつもちゃんと行けばいいのにね~。」と言われた。
時間になり、外に出たら…
マサの車が停まっていた…。マサは車の中で、毛布にくるまりながら私を待っていた。
私はすぐ家に戻り、学校を行くのをやめた…。
マサの顔を見たら、恐怖が一気にフラッシュバックしてきた…。
「…苦しい…」
玄関先で倒れ込んだ。
母が慌てて走ってきた。私はそのまま救急車で運ばれた。
病院の診察結果は…
‘過換気症候群’だった。いわゆる過呼吸。
とりあえず休んでから、帰宅していいとの事だった。
帰る時に母は…
「…あんたなんかあったの?」と聞いてきた…。
「…」
「言いたくないならいいわ。とりあえず学校は休みなさい。」
そう言われ、ほっとした…。今、外には出たくない…。
家に着くと、マサの車はいなかった…。
家に着いて、携帯の電源を入れた。
友達から「今日もサボり?私も抜けるからご飯食べよ~」
とメールが入っていた。
とりあえず友達に電話をした。
「もしもし?今日はサボりじゃないんだよね。ぶっ倒れた 笑」
気付かれないように、明るく話した。その時…キャッチが入った…。マサだ…。
マサの電話には出なかった。友達と電話を切った途端に、また電話が鳴った…。ゆずの着信音は、マサだ…。
その後、ずっと鳴っていた…。
私は電話に出た…。
「もしもし…。」
「…俺。やっと出た。」
マサの声のトーンは低い。落ち込んでるようだった…。
「…俺別れないよ?だって結婚するって言っただろ?一緒にいるって言ったじゃんか!!」
マサは話しをしている間に、だんだんとイライラして怒っているようだった。
「…なんで何にも言わねえんだよッッ!!」
ガシャーン!!!
電話の向こうで何かが割れた音がした。その音でまた私は、怖くて体が震え始めた。
「…もう殴ったりされるのは…嫌だから…。怖いの…マサが…」
「…一緒にいるって約束したのに…。今から行くから話をしよう…。」
「私は…」
プチッ…ツーツー…
一方的に切られた…。…どうしよう…。
今日は家から出たくない。家から出なければ…大丈夫…。
マサから電話が鳴った…。出ないでいると切れた。
私の部屋の窓から、マサの車が停まる所が見える…。マサはいつも同じ場所に停めていた。
私はおそるおそる窓の外を見た。
…マサの車だ…。
今日は外に出れない…。
私はまた、携帯の電源を切った…。
もう嫌だ…。私は、浮気もしていないし、自分なりにマサを愛していた…。なのに、マサの暴力は収まる事はない。むしろどんどんエスカレートしていくばかり…。
…私を心から愛してくれる人は、この世の中にいるのだろうか…。
自分自身の精神状態が、カタカタと崩れ始めていった…
その日は1日中、外には出なかった。早く帰ってほしい…。そう願いながら一晩明かした。
朝早くに、もう一度外を見た。
…まだいる…。家には帰ってないみたい…。
それからマサは、3日間ずっと外で私を待っていた。その間、携帯を入れれば、すぐに電話がなる…。
母が部屋に入ってきた。
「…もういいかげん話しなさい。」私に言った。
私は今までの事を少し話した。母は話を一通り聞いた。その後、私の携帯の電源を入れるよう言った。
私の携帯の電源を入れたら、案の定すぐにマサからかかってきた。
マサはずっと1日中電話をかけ続けているんだろう。私の家の前から…。
母が無言で電話を取った。
「やっと出やがったなこの野郎!!てめぇ!いいかげんにしろよ?ぶっ殺すぞ!早く家から出てこい!!!」
マサが物凄い剣幕で、叫んでいるのが聞こえた。私は体が震え始めた。
母が「…どうも。娘がお世話になっております。」
そう一言言った。
「あぁッ?!」
マサはまだ気づいていないようだった。
母は「私の娘が何かご無礼な事しましたでしょうか?」
マサはやっと気づいたのか
「…いえ。」と言った。
「娘から話を一通り聞いたのですが…。このままそこに居らっしゃるおつもりでしょうか?」母が言った。
「…娘さんとお話できるまでは…」マサが言った。
「わかりました。後日、娘をそちらに行かせるように致します。…ただし、娘1人で行かせる訳には行きませんので、警察の方などに付き添って頂いて…」
「!!…いや…それなら…今娘さんと電話を変わって頂けますか?…話がしたいので…」
母はわかりましたと言って、電話を渡してきた。
私は「…もしもし」と電話に出た。
マサは泣きながら「…ごめんな、また俺…もうこんな事しないからもう一度やり直そう…俺にはお前しかいない…」
「…もう怖い…別れてください…お願いします…」と私は言った。
「…わかった。でも俺待ってるから…ごめんな…」
マサはそう言って電話を切った。
私は別れられた事で、ほっとしたののと怖さで泣いた。
母は私が泣き止むまで、背中をさすってくれた。
マサはきっと警察が怖かったんだと思う。マサのお父さんは亡くなっている。お母さんは田舎で、独りで暮らしている。お母さんの事をいつも心配していた。迷惑かけたくなかったんだろう…。
私はしばらく泣いて、母に
「ありがとう…」と言った。
私は母がいなければ、もっと酷い事になっていただろうと思う。私は母に感謝した…。
私はそれから、大きな音で過呼吸になるようになった。もちろん若い男の人が怖くて、目も合わせられなくなっていた…。夜になると怖い…眠れないと色々思い出すから…。
マサから、あれ以来連絡はなかった。マサと別れてから、男の人とは付き合えずにいた。
でも私も少しずつだけど落ち着いていた…。
私が高3の時に、私は就職する事に決めた。大学も考えたが、私は中学から私立に行っていたし、うちもそんなにお金があるわけじゃないのを知っていた。幼稚園の先生の夢はあったけど、やっぱり過去が気になり諦めた。そのかわり、人のお世話をしたい。
私は看護助手の面接を受ける事にした。
私の受けた病院は、地元では、たぶん1番大きい大学病院。
面接なども本当にしっかりしていて、受かるかすごく心配だった。
私は面接に受かった。ものすごく嬉しくて、早く仕事がしたくなった。
18歳の春。
新しい職場に、新しい人達。やっていけるか不安もあったけど、それ以上に楽しみだった。
でも仕事内容は、想像以上に大変だった。私の科は、呼吸器外科。いわゆる、癌病棟だ。
初めての仕事だったし、プレッシャーもあった。患者さんのお世話も、苦ではなかった。
ただ…職場の人達は、物凄い怖かった。
私と一緒にやっている先輩の助手さん。とてもベテランさんで、最初は心強かった。
でも、仕事を覚え始めると…違った。
先輩がミスをすると、私がやったと言われた。私は驚いたが、ベテランさんだしミスをした事を言いたくないのだと思い、私は謝った。
すると、それからミスする毎に、すべて私に押し付けてくるようになった。挙げ句の果てには、私の事を「何も出来ない、ミスばかりで疲れちゃう」と影で笑って話していた。
私が、仕事をし始めて3ヵ月経った頃、あまりにもミスが多いために上の人から呼び出された。
「3ヵ月経つのに、初歩的なミスが多くて…少し困りますね。」
「すいません…」私は言った。
「色々、苦情も出ていますし…少し気持ちを改めてください。」
私は、上司と少し話をして仕事に戻った。
自分の職場へと戻り、休憩所に入ろうとすると…
「だめなんだよね、あーいう子。生理的に受け付けない 笑 」
先輩の声が聞こえた。すると、1人の看護師さんの声も聞こえてきた。
「今日はどんなミスすんの?」
…言葉が出なかった。
いい大人がこんな姑息な手を使って、いじめみたいな事してるなんて…。なんだか、バカらしくなってきた。こんな人をかばっていたなんて…。
私は、休憩所の中に入った。
「…ッ!!…おつかれ~」
先輩と看護師さんは驚いて、急いで話を変えてた。
私はしばらく休憩所に座っていた。
看護師さんが突然…
「〇〇さんてそろそろ死ぬと思うよ~。」
「マジ?じゃあまたベッドメイキング入るのかぁ。量多くなるなぁ。あと2日待ってって感じ 笑」
私は絶句してしまった…。なんて頭の悪い人達なんだ…。
私は祖父や祖母を癌で亡くしている。裏でこんな事を言われていたら…。
そう思ったら頭に血がのぼってしまった。
「…死ぬとか言ってんじゃねぇよ。家族がどんな思いで、看病してんのか知ってんの?それと、さっきの話聞こえてんだよ。バカじゃねえの?いい大人が。やめてほしかったらやめてやるよ。」
…吐き捨てるように言って、私は病院を出てきてしまった。
今になれば、私も途中で仕事を投げ出した事はよくなかったと思う。でもどうしても我慢できなかった。
出てきてしまったが、どうしたらいいのだろう…。実家に帰れば、きっと母は私の心配をするだろう。
私は実家には帰らず、親友のマイの家に向かった。
マイも就職をし、1人暮らしをしていた。最近会っていなかったので、急に会いたくなった。
マイに電話をかけた。
「もしもし?元気?チョー久しぶりじゃん!」マイが出た。
「おぉ!久しぶり!ってかマイ。仕事は?今休憩?」
マイは「辞めちゃった。今夜の仕事してんの!そーいう自分はよ? 笑」と聞いてきた。
私は事情を話した。マイは、それなら一緒に住む?と言ってくれた。
そして私は、マイの家に住む事になった。
マイは、中学の時に仲良くなった。お互い団体行動が苦手だった。そんな繋がりか、気がつけば、よく一緒に喋ってた。
マイは、美人だ。私とは、性格も全然違う。
性格は違うのに、一緒に暮らす事は苦じゃなかった。
マイと住み始めて一週間が経った頃、母から電話がかかってきた。
「もしもし?!あんた何やってんのよ!仕事抜け出して、しかも行ってないんだって?」
「…ごめん。」私は言った。
「とりあえず職場に電話しなさい。」
私は職場に連絡をした。
上司は、あまり怒っている様子はなく、心配だったと言ってくれた。
上司に理由を話すため、上司と会う約束をした。
私は上司と会って、何故そんな事をしたのか理由を聞かれた。
今まで、あった事を話した。
上司が「…やっぱり。あの人いつもそうなんだ…。だから新しい人が入ってもすぐ辞めちゃうんだよ。…違う科にするから戻ってこれない?」
私は「お気持ちは有り難いのですが…」と言った。
いくら嫌だったとはいえ、会社を勝手に抜け出すのはよくない。
上司は「…うん。わかった。」と言ってくれた。
私は上司に何度もすいませんでしたと、頭を下げ別れた。
家に戻って一息ついていたら、マイが話しかけてきた。
「仕事どうするの?」
「う~ん…。」私が悩んでいたら…
「うちの店で働けば?」
マイが言った。
マイは、私の過去を知らない。
「…うーん…コンビニで働こうかな!」私は言った。
「え~!絶対楽しいよ!時給いいし、タダで酒飲めるしぃ、タダでカラオケも出来るしぃ!変な人いないし!大丈夫!一緒にやろ~!!ねっ!今からママに電話するから!」
「えっ…うん…。」私は気があまり乗らなかった。マサの傷は少しずつだけど、癒えてきた。でも…
その間にマイは、ママに電話をしていた。
「人足りないし、今日面接来てだって!」
「…う~ん」
私が生返事をしていたら、
「ねぇ!一緒に働こうよ!変なお店じゃないし!お願い~」
「…うん。わかった。」
私はそのお店で働く事にした。
私はその夜、いつもより濃いめの化粧をしてマイと一緒にお店に向かった。
私自身、夜のお店で働くなんて考えもしなかったので、変に緊張していた。
お店はスナック。なかなか広く、キレイなお店。
「おはようございまぁす!面接の子連れてきましたよ~!」
マイがママに言っていた。
「…よろしくお願いします。」
私の緊張はピーク。
「いらっしゃい。よく来てくれたね!マイでかした!かわいい子じゃない!」
奥からママが出てきた。ママはすごくキレイな人で、40歳ぐらいの若いママ。
「この子ならOK!今日から働いちゃう?」
私がビックリしていると…
「うちのお店は常連さんばっかりだし、お店の外では会わせない。そういうの基本的に禁止してるの。触ってきたりするようなお店じゃないから安心して。」ママが言った。
私は少し安心した。
マイは「今日から働いちゃいなよ!私も出だし!」
私は「…じゃあよろしくお願いします。」と言った。
「よし!じゃあ名前どうする?源氏名を使う子もいるし、自分の名前を使う子もいるよ?」
「…ん~。どうしよう」私が悩んでると、ママが…
「じゃあ、エリちゃん!あなたエリって顔してる!笑」
「じゃあエリでお願いします!笑」私は言った。
私はもうひとつの名前を持つ事で、妙な安心感があった。エリというもう1人の私でいると、マサに怯えていた自分を忘れる事が出来る気がした。
その夜から、仕事を始める事になった。今までの自分を、エリと言う存在で掻き消すために…。
スナックの仕事は、思った以上にとても大変だった。お客さんへの気配り。常に笑顔。でも、とてもいい勉強だと思った。
スナックは、年配の人達がくるお店だと思っていたが、若い男のお客さんもいた。マイや私は、他の女の人よりも飛び抜けて若い。だから若いお客さんが来ると、よく席に着かされた。
店外デートや同伴、アフターは禁止だったが、マイはママやチーママに隠れてよくお客さんと、会ったりしていた。そういう事もあり、マイは結構お客さんと付き合っていた。
ある日、若いお客さんの団体がお店に来た。マイと私は、いつものように席に着いた。
その中にサトシくんという、ちょっと大人しめな感じの男の子がいた。サトシくんは以前、ここのボーイさんをしてたらしい。
私はサトシくんの隣に座った。
サトシくんはマイが席に立ったり、トイレに行ったりしているのを目で追っていた。
「マイに気があるんだ」と思った私は、マイと場所を変わった。
その日、家に着いてからマイは…「サトシくんてどう思う?」と聞いてきた。
私は「優しそうだよね。感じも悪くないし…。なんで?」
「番号もらったんだけど…今までのタイプの人とはちょっと違うから…」マイが言った。
マイは基本的に、ちょっと軽そうな男の人が好みで、付き合ってきた人もそんな感じの人ばかり。確かにマイのタイプではなさそうだ。
「ん~…連絡して遊んでみよっかなぁ」マイは言った。
「まぁ今の彼氏と別れてからにしなよ~」と私は言った。
私はその時、これから何年か先に起こる事態など知らずに、マイの話を軽く聞いていた。
それからしばらくして、マイは彼氏と別れて、サトシくんと付き合う事になった。
私はもちろん応援していた。
マイと暮らし始めて2ヵ月ぐらい経った頃、久しぶりに父から連絡が入った。普段、私に連絡もしてこない。
私は、なんだかわからず電話に出た。
「もしもし?どうしたの?」
父は「お母さんが出て行った。」と言った。
私は突然の事で、訳がわからなかった。
とりあえず近々、実家に帰る事を約束して電話を切った。
その日の仕事は、なかなか手につかなかった。
とりあえず、私は実家に顔を出した。
玄関を開けてビックリした。目に飛び込んできたのは、部屋の汚さ。ホコリまみれで、とてもじゃないが人が住める状態じゃない。
部屋の中から父が出てきた。
「…おかえり」
「ただいま。っていうか、どうしてこんな昼間から家にいるの?仕事は?」私は言った。
「仕事クビになって…」と言われた。
とりあえず少し掃除をして、父の話を聞いた。
母は、私がマイと住み始めた頃から出て行った事、父は私と暮らしている頃から仕事をしていなかった事、母に私には仕事をしているようにして。心配かけてしまうと言われていた事など…。
私は唖然とした…。自分の事ばかりに気を取られていて、家庭が崩壊していた事にすら気づかなかった。
父は昔から何も出来ない人だ。インスタントコーヒーすら作れない。家の事や父の身のまわりの事は、母が全てしていた。
私はなるべく早く実家に帰る事を父に約束し、とりあえずその日は帰った。
実家から帰る途中、母に連絡を入れた。
「お父さんとはもうやっていけない。お母さん、違う人と住んでいるから」と言われた。
なんだか寂しかった。母に置いていかれたような気がして…。私は、母に実家に帰る旨を伝え電話を切った。
私は帰ってから、マイに話そうとした。そしたら、マイから話があると言われた。
「大屋さんに今月末で出て行ってくれって言われちゃった…」
私は理由を聞いた。
実はマイの住んでいた家は、夜の仕事をする人はダメだったらしい。それが大屋さんにバレたそうだ。それをサトシくんに話したら、サトシくんの実家に住ましてくれるとの事。それでスナックの仕事も続けていくと話をされた。
私も事情を話して、実家に帰る事を伝えた。
その夜、ママに話をしたら「大変!早く帰ってあげなさい。またいつでもおいで。」と言ってくれた。私の無理なお願いを、聞いてくれたママに感謝した。
私は最後の仕事をして、実家に戻った。
父と2人の生活が始まった。父に仕事を探してほしいとお願いした。私も実家に戻り、2日間かけて掃除をして、すぐに仕事を探した。
私はすぐ仕事が決まり、カフェと飲食店のバイトを掛け持ちで週6日働き、家事もした。
その後、しばらくして父も仕事に就いた。
仕事も慣れ、実家での父との2人暮らしも慣れてきた頃。
私がカフェでバイトをしていた頃、若い男の人と40歳代ぐらいの女性の2人が店に入ってきた。
「いらっしゃいませ!こちらへどうぞ!」
私は席に案内すると若い男の人が私をじーっと見ていた。
その人が私の人生を大きく変える人だったなんて…。
話の途中ですが…
この物語は実話です。でも話の中に出てくる人物は、ほぼ偽名です。
でも、私自身の名前が思いつかず、名前を出さないようにしてきました。
読みにくいでしょうか…?
もし読んでくださっている方がいらっしゃったら、ご意見を頂けたらと思います。よろしくお願いします。m(_ _)m
「…なんでこの人、じっと見てくるんだろ…」私は思った。
「…あの~俺の事覚えてます?」
「すいません…」
私は全然思い出せなかった。
「小学校で一緒だった、大田です。」
「…大田?…あっ!もしかしてリョウちゃん??」
これがリョウちゃんとの再会だった。リョウちゃんは、小学校の時に引っ越してきた。背が小さく、色黒で、お猿さんみたいな子だった。
再会した時は、背も高くなっていて、短髪で、爽やかな感じになっていて全く気付かなかった。私は私立の学校へ進学したため、公立に行った子達とは疎遠になっていた。
「元気だった~?」
「うん!!」リョウちゃんが言った。
話していると、お店が混んできたので、とりあえず注文を聞いて仕事に戻った。
私がレジに立っていると、リョウちゃんが会計に来た。
「ごちそうさま。」声をかけられた。
会計を済ますと、私に小さな紙を渡してきた。レシートだった。
「またね。」リョウちゃんは、そう言うと帰っていった。
レシートの裏には、連絡先が書いてあった。
私は夜までバイトだった。
「夜のバイトの休憩時間にでも、メール送ってみようかな?」
私はなんとなく思った。小学校の時は、それほど仲が良いわけでもなかった。不思議と何か惹かれるモノがあった。今になってみれば、一目惚れだったのだろう。
「こんばんわ!番号ありがとうね!今日はリョウちゃんが店に来て、ビックリしちゃったよ!」みたいな感じでメールを送った。
返信がすぐに来た。
「こっちこそビックリしたよ!」
それから、たわいもない話をメールでやりとりした。
「今日バイト何時まで?」
「10時半までだよ」私は言った。
「迎えに行くよ!俺の新品の愛車で 笑 どっか行こうよ!」
私は、嬉しい半分少し怖かった。車の中でも何度か殴られたりしたから…。
バイトが終わり、店から出るとリョウちゃんは車の前で待っていた。
「お疲れ様!」
「お疲れ様!どこ行こうか?」
リョウちゃんは言った。
私は「じゃあ…海がいいなぁ。」
「夜の海かぁ。いいね!気持ちよさそう!乗って!」
行きの車でリョウちゃんは、色々話してくれた。今は社会に出て働いてる事、今もずっと社会人野球をしてる事など。私は、怖いなんて気持ちはなくなり、楽しくて海まで1時間ぐらいかかる道のりを短く感じた。
海に到着した。夜の海は真っ暗で、何もかも引きずり込んでしまうような、すごい感覚を感じた。
「…真っ暗だね。」私は言った。
「うん。外出て座ろうか。」
リョウちゃんは外に出た。
「真っ暗だけど気持ちいいねぇ。…引きずり込まれちゃいそう。」私はトモユキやマサを思い出しながら言った。
リョウちゃんがタバコに火をつけ、口を開いた。
「…俺、実は会う前に一度見かけてるんだ。声かけようと思ったんだけど…」
「嘘?声かけてくればよかったのに!いつ?」私は聞いた。
「ずいぶん前だなぁ…。高2ぐらいの時かな?…でも声とかかけられる雰囲気じゃなくて…」
……マサだ……
私は一瞬で思い出して、苦しくなってきた。
それを見たリョウちゃんは、「大丈夫?」と言いながら背中をさすってくれた。
しばらくして苦しさがおさまってきた。
「…ありがとう。大丈夫。ごめんね。」私は言った。
「なんかあったんだね、やっぱり。…声かければよかったなぁ。何か少しでも出来たのに…。ごめんな。」
私の背中をさすりながら、リョウちゃんは言った。
私はその気持ちが嬉しくて泣いた。
「泣かないで…。」そう言って、リョウちゃんは私を抱きしめた。
私は、不思議と怖いと思わなかった。むしろ、リョウちゃんの匂いがやけに落ち着いた。
「…気晴らしにカラオケでも行っちゃう?!」
リョウちゃんは私の顔を覗き込み、優しく微笑んだ。
私はその笑顔に安心して、頷いた。
私たちは付き合ってない。けど、リョウちゃんは帰りの車で何度も何度も私の髪を撫でてくれた。
その度に、私はドキドキした。
カラオケに着いて、歌を歌った。
リョウちゃんはケツメイシを歌っていた。
しばらく歌っていたが、急にリョウちゃんが歌うのをやめた。
「…」
「どしたの?」私は言った。
「…やばいなぁ。」リョウちゃんは言った。
「なにが?」
「…すげぇ好きかも…」
私は困った。確かに私は惹かれていた。でもやっぱり…怖かった、男の人と付き合うのは…。嬉しいはずなのに…。
私はマサの事だけを話す事にした。
私は思い出すと過呼吸になる…。でも話さなければ前に進めないと思った。リョウちゃんと付き合いたい。ちゃんと向き合っていきたいと思った。
リョウちゃんはただ、背中をさすりながら話を聞いてくれた。
「…つらかったね。怖かったろ?…寝れなかったら毎日一緒に居る。苦しくならないように、思い出させないように毎日笑えるようにするから。」
そう言いながら背中をさすってくれていた。
嬉しかった。こんな弱い私を受け入れてくれた事が…。
…でも私には言えない事がもうひとつだけあった。トモユキとの間に授かった子の事は言えなかった…。
寝れずに過ごす毎日の中で、たまに寝れると夢に出てくる。産婦人科の病院の中から、赤ちゃんの声が聞こえてくる。ゆっくり近づくと、赤ちゃんのかわいい泣き声が「…殺さないで」と叫ぶ声に変わる。その声を聞いて私は「私は殺人者だ」と自覚する。
私はリョウちゃんに殺人者だと知られたくなかった。…やっぱり言えない。
最低だと思った…。
それでも私は、自分が幸せになりたくてリョウちゃんと付き合うようになった。
リョウちゃんは私を想い色々な所に、連れて行ってくれた。
私は幸せを感じていた。ずっと一緒に居たいと思った。
付き合い出してから、2ヵ月ぐらい経った日。
リョウちゃんといつものように、デートをしていたらリョウちゃんが「プリクラをとりたい」と言った。
プリクラをとり、私は嬉しくて携帯に貼ろうと思った。リョウちゃんに話すと「俺も貼る」と言ってくれた。
帰りの車の中でプリクラを貼っていた。お互い汚れるのが嫌だから、電池パックの中に貼る事にした。
私は貼っているのに、リョウちゃんは貼らない。あれだけ一緒に貼ると喜んでくれていたのに…。
私は聞いた。
「なんでプリクラ貼らないの?」
「えっ…?…うん!車暗いし、家帰ってから貼る!」リョウちゃんは言った。
不思議に思ったが、リョウちゃんは確かに目が悪い。私は、特に何も気にしなかった。
次の土日の話をしていた時に
「今度どこ行こうか?」私が聞いた。
「あっごめん。俺、今度の土日に岐阜に行くんだよ。」
リョウちゃんは小学校の時に、岐阜から引っ越してきた。
「そっかぁ。じゃあお土産楽しみにしてる!笑」
なんて呑気な事を言っていた。
その日、リョウちゃんが家に呼んでくれた。きっと、体の関係を持つと予感した。でも、リョウちゃんは実家暮らし。
前にお父さんは、単身赴任していてお兄さんは、同棲していると話していた。家にいるのは…お母さん1人だ…。
彼氏の親に会った事のない私は、緊張していた。
「大丈夫!俺の母ちゃんは何も言わないから。」リョウちゃんが言った。
「わかった。じゃあお邪魔します。」
リョウちゃんの家に着いた。
「ただいまぁ!彼女連れてきたぁ」リョウちゃんがドアを開けた。
「お邪魔します。」私が入った。
中からお母さんが出てきた。
「リョウ、おかえり。」
「彼女連れてきたから、部屋になんかお茶でも持ってきて。」
「初めまして!…」言いかけた時、
「うん、わかった。」お母さんが遮った。
なんだか変だと思った。お辞儀をして、リョウちゃんの部屋に入ろうとした時、お母さんと目が合った。
…今一瞬だったけど…睨んでいたような…
私なんかしたかなぁ…
リョウちゃんは気づいてないようだった。
部屋に入り、リョウちゃんに聞いてみた。
「そうかぁ?そんな事ないと思うけど…」
その時、お母さんがお茶を持って部屋に入ってきた。
「いらっしゃい。いつもリョウがお世話になってます。仲良くしてやってね。」
お母さんは、優しく言ってくれた。
私の勘違いだったんだ。優しいお母さんでよかったと安堵した。
「こちらこそよろしくお願いします。」
しばらくお母さんと会話していたが、お母さんは
「いけないっ!電車に間に合わなくなっちゃう。じゃあゆっくりしていってね。」
どこかへ出掛ける様子だった。
「お母さんどこかへ出掛けるの?」
「あぁ。毎週、親父の所に行くんだよ。だから2人で暮らしてても、ほぼ1人暮らしみたいな感じ 笑」リョウちゃんは言った。
私は、家族みんなが仲いいのが羨ましかった。
「じゃあ、お母さん行くから。戸締まりしっかりね!ご飯ちゃんと食べてね!何かあったらすぐ連絡してね!すぐ帰ってくるから!」
色々リョウちゃんに言っていた。心配性なんだなぁと、思った。
お母さんが出掛けてから、しばらく話をしていた。
リョウちゃんがいきなり抱きしめてきた…。「今日泊まる?」
私は「うん。」と頷いた。
リョウちゃんが「シャワーあびてくる。一緒に入る?」と聞いてきた。
私は「私は、後でいいよ。リョウちゃん先に入ってきて。」
リョウちゃんがシャワーを浴び、戻ってきたので私も入った。
シャワーを浴びながら私は、緊張していた。でも付き合ってるんだし、こうなるのが自然なんだろう。
シャワーから出て、リョウちゃんの部屋へ戻った。
リョウちゃんは、ベッドの中で携帯をいじっていた。
私が入ってきたのに気づくと、私をベッドの中に呼んだ。
ベッドに入ると、リョウちゃんは「やっとひとつになれる。」と言って、私を抱いた。
リョウちゃんの腕の中は、心地よくて幸せだった。
私を抱いた後、タバコに火をつけ腕枕をしてくれていた。
私はふと思い出した。
「リョウちゃん!プリクラ貼って。」
「…え?…うん。」リョウちゃんは目をそらした。
…リョウちゃんの様子が変だ。家に帰ってから貼るって、言っていたのに…。携帯見られたくないのかな…。なんだか怪しい…。
「…リョウちゃん。携帯貸して?」
「…なんで?」
リョウちゃんの目が泳いでる。
「中身じゃないよ?私がプリクラ貼ってあげる。」
私は半ば強引に携帯を取った。電池パックを開けた。
知らない女の子とリョウちゃんが、肩を組んで幸せそうに笑ってるプリクラが貼ってあった。
…やっぱり…
…自然と涙が落ちてきた。
「…なにこれ…」
「ごめん…前の彼女とのプリクラ剥がすの忘れてて…でも浮気じゃない。信じて。」
私は信じられなかった。ずっと黙って、リョウちゃんの話を聞いていた。
リョウちゃんが「彼女と別れ話してまだ、あんまり経ってなくて…」
「…別れ話したのいつなの?」私は聞いた。
「先週ぐらい…あっ…」
私とリョウちゃんは、付き合って2ヵ月経つ。浮気されたのではなく、私が浮気相手だった…
私は、その言葉で一気に頭に血がのぼった。私はキレて、リョウちゃんを問い詰めた。
リョウちゃんは彼女と遠距離をしていた。別れ話をしたが、彼女が納得してくれず、会いに来ないと別れないと言い出した。彼女の住んでいる場所は…岐阜…。
それだけではなく、彼女の名前はアミ。アミは…リョウちゃんのイトコだった…。
…信じられない。イトコと恋人同士になるなんて…。しかも、私に内緒で岐阜まで会いに行こうとしてたなんて…。
「…別れる」私は言った。
「待って!本当に俺はどうかしてたんだ!ちゃんと行って別れてくる!絶対!だから待っていてくれないか?」
「無理です…私には耐えられない。気持ちがないにしろ、まだ付き合っていたなんて…。しかも相手がイトコなんて…信じられるわけないでしょ!」
私はリョウちゃんの携帯を投げつけた。
…バキッ!
リョウちゃんは突然、携帯を真っ二つに折った。
「ちゃんと終わらせる。携帯も新しいのに変える。二度と嘘はつかない…。二度と、他の女とも2人で会わない。だからもう一度チャンスをくれ。絶対悲しませないから。」リョウちゃんは言った。
リョウちゃんは、元元彼女と別れた時に、アミに相談していたらしい。アミに突然、前からリョウちゃんの事が好きだったと告白をされ、その時の感情でOKをしたと言った。それからアミと会ったのは、1度だけ。体の関係もない。そう言った。
私は、リョウちゃんの言葉を信用した。
ただ、そのかわりすぐには信用出来ない。女の子とは2人で会わないでほしい。嘘はつかない。そう約束させた。
リョウちゃんは私を抱きしめて「…ありがとう。愛してる。絶対幸せにするから。…俺、結婚したいと思ってるんだ…。」
私の付き合ってきた人は、すぐに「愛してる」「結婚」「幸せにする」の言葉を口にした。
私もその言葉を聞くと、私は愛されてると思った。
私は、またリョウちゃんに抱かれた…。
その後、リョウちゃんは岐阜に行った。岐阜に行ってちゃんとケジメをつけた後、新しい携帯を買いたいと本人が言った。
私は岐阜に着いたら、公衆電話から電話をするよう伝え、リョウちゃんを送り出した。
岐阜に着き、リョウちゃんはしっかり約束を守っていた。
私の信用を一生懸命取り戻そうとしてくれていた。
私にも、それは伝わってきていた。
リョウちゃんは無事、アミと別れて私の元へ帰ってきてくれた。私は複雑だったが、嬉しかった。
それから、リョウちゃんとは上手くいっていた。ただ…私には一つ悩みがあった。
それは…リョウちゃんの性欲が強い事。
岐阜から帰ってきてから、毎晩のようにリョウちゃんと過ごす事が多かった為、毎晩必ずだった。
ひどいのは、休みの日。1日通して、体を求めてくる。1日3回は当たり前。
私は正直、性行為に関してあまり知識がなかった。興味もたいしてなく…。性行為を重視していなかった。
でもリョウちゃんは性行為=愛情表現だったため、一度断ったら「俺はこんなに愛してるのに…俺は愛されていない…」とひどく落ち込んでしまった。
それからなかなか断れず、悩んでいた。
そんな日が続いていたある日、私の携帯が鳴った。ミサキだ。
ミサキは中、高と仲良かった友人。
久しぶりで驚いたが、嬉しくて電話に出た。
「もしもし、ミサキ?元気?」
私は勢いよく電話に出た。
「うん!元気!元気!」
そんな会話をしていたが、ミサキから結婚をすると聞いた。
「実は…妊娠してね…で、式もやるから来てもらおうと思って。」
私は心から祝福した。ぜひ行かせてもらうと言い、電話を切った。
私の同級生も結婚かぁ…。なんだか家庭に入って落ち着くんだ。なんかいいなぁ…私もいつか…暖かい家庭を築けるのかな…。
私は、ミサキの事をリョウちゃんに話した。
リョウちゃんは「俺たちも早く一緒になって幸せになろうな。」
そう言って私を抱きしめた。
ミサキの結婚式に参加した。
ミサキは、キレイで幸せそうに笑っていた。私も幸せな気分になった。
クリスマスに近づいたある日、リョウちゃんからクリスマスの相談を受けた。
「クリスマス、どっか泊まりがけで遠出しようか。」
私達は、旅行パンフレットをいっぱい持って色々な所を探した。
私は夏より冬が好き。雪が降ると、走り回りたくなるぐらい大好きだった。
私は「那須高原がいいなぁ」
そう言った。
那須高原の温泉を、リョウちゃんが予約してくれた。
私はクリスマスが来るのが待ち遠しかった。
クリスマスの前日。私達はお互い仕事を休み、朝早くから出掛ける事にした。
朝方、リョウちゃんからメールが来た。「行くぞぉ~!」
私は、メールを見て思わず笑った。
急いでリョウちゃんの車へ向かった。
リョウちゃんと車内では笑いが絶えず、那須までの距離も全然遠く感じなかった。
那須に着く頃、いつのまにか雪景色に変わっていた。
私は雪を見て、大騒ぎ。
リョウちゃんはそれを見て、微笑んでる。
こんな関係がいつまでも続きますように…私は心の中で思ってた。
温泉に着くと、そこは老舗の高級旅館のようだった。
とても静かで、キレイな場所。
部屋に着く頃には、夕方になっていた。
リョウちゃんが部屋に着いて倒れ込んだ。
「お疲れ様。ありがとうね」
私はリョウちゃんに言った。
リョウちゃんは私の腕を引っ張って、そのまま押し倒した。
「リョウちゃん?!お風呂も入りたいし、後にしようよ?!」
リョウちゃんは「嫌。今お前を感じたいの」そう言ってやめてくれなかった。
私は、仕方なくその行為に応じた。
行為が終わると、お互いお風呂に入る事にした。
お風呂は、そんなに広くはないが、露天風呂は雪が積もっていて、雪見風呂だった。
お風呂から上がり、リョウちゃんと一緒にご飯を食べに行った。
リョウちゃんはビールが好きだ。私は、お酒があまり得意じゃないのでお茶をもらった。
ご飯を食べ終わった頃、リョウちゃんはほろ酔いになっていた。
部屋に戻ると、リョウちゃんは鞄の中をゴソゴソと何かを探していた。
「どしたの?」
「…ん~…あっ!あった!…じゃじゃ~ん!」
リョウちゃんは私に、黒い小さな箱を渡してきた。
よく見ると、箱にGUCCIと書かれた文字。
「クリスマスプレゼントと結婚指輪!」
私はビックリして「結婚指輪?!」と聞いてしまった。
「結婚しよ!俺も二十歳になって職にもついてる。…幸せにしたいんだ。」
「なにより…俺のそばにいてほしいんだ。」リョウちゃんは、真剣な顔でいった。
私は嬉しかった。とても幸せで涙が溢れてきた。私ももうすぐ二十歳になる。…幸せになりたい…。
「ありがとう。よろしくお願いします。」そう応えて、リョウちゃんに抱きついた。
そのまま…私はリョウちゃんに抱かれた。この時は、苦痛だとも思わなかった。幸せを感じていた。
腕枕をしてもらいながら、リョウちゃんに「…でも結婚指輪より、普通婚約指輪とかが先なんじゃない?笑」
リョウちゃんは、しまったぁ!と笑っていた。私も笑ってた。
私はこの時、この指輪を一生大事にすると心に決めた…。
クリスマスも終わり、私達は日常に戻った。
私は、母に会ってほしい人がいると連絡をした。
母の仕事は年末が忙しいので、年明けにしてほしいと言われた。
リョウちゃんも、自分の両親に言った。お父さんがいる時に、一度連れておいでと言われたらしい。
大晦日。
私とリョウちゃんは、年明けに初詣をするために夜中、神社へ向かった。
リョウちゃんと幸せになれますように…
そう願った。
帰りの電車の中で、私は突然のめまいに襲われた。
リョウちゃんが途中で降り、ホテルを探した。でもどこのホテルもいっぱい。唯一、駅前のビジネスホテルが空いていたのでそこへ入った。
しばらく横になっていると、体調も少しよくなってきていた。「ビックリしたよ。大丈夫か?」
リョウちゃんが心配そうにみている。
「ありがとう。大丈夫。」
「なんでめまいなんか起こしたんだろ?風邪かな?」リョウちゃんが言った。
そういえば、生理が1週間ぐらい遅れている…。
リョウちゃんにその事を伝え、検査薬を買ってきてほしいと言った。
リョウちゃんは、急いで買いに行った。
リョウちゃんが戻ってきて、検査薬を試した。
…陽性…。
結婚したいと話をしていた矢先の事だった。
嬉しかった。…でも、また母に反対されてリョウちゃんが諦めてしまったら…。
私は、もし反対されても絶対にこの子は産む。シングルマザーになったとしても、絶対諦めない。そう決意しながら、リョウちゃんの所へ戻った。
「…リョウちゃん。赤ちゃんが出来た。私…産みたいの。」
リョウちゃんは、泣いていた。
「マジで嬉しい…。絶対幸せにするから…。どんな事してもお前らを守るよ…」
泣きながら、抱きしめてくれた。
私も嬉しくて泣いた。
元旦、私の妊娠発覚。
年も明け、まずはリョウちゃんのご両親に話す事にした。
リョウちゃんの実家には、お父さんも戻ってきていた。初めて会う。緊張する…。
リョウちゃんと実家に向かい、挨拶をした。
リョウちゃんのお父さんは、とても真面目な人で、優しい印象だった。
「親父、母ちゃん。…俺、結婚したいんだ。…お腹の中には、俺の子もいる。…だから結婚させてください。」
リョウちゃんは、土下座をして頭を下げた。私も、一緒に頭を下げた。
「えっ?リョウ!ちょっと待って!今ビックリして…」
お母さんが言った。
「リョウ。頭を上げなさい。」
お父さんは言った。
リョウちゃんと私は、お父さんを見つめた。
「まだ社会人になりたてで、2人で頑張れるのか?子供を育てるのは、とても大変な事だぞ?」
リョウちゃんは「絶対幸せにする自信がある。」言い切った。
リョウちゃんのお母さんが、私を見つめながら言った。
「あなたはどう?」
「結婚したいです。リョウちゃんでないと、だめなんです。」
私は言った。
「わかった。…しかしリョウが結婚かぁ。まだ向こうの親御さんに報告していないのか?」
お父さんは聞いてきた。
「明日、行くつもりです。」
リョウちゃんは答えた。
「リョウの事、よろしくお願いしますね。私たちもリョウが挨拶に行った後、ちゃんとご両親にご挨拶させていただきます。今は体冷やさないように、暖かい格好でゆっくりしてください。」
リョウちゃんのお父さんは、にこやかにそう言ってくれた。
リョウちゃんのお母さんは、どこか少し寂しそうな顔をしていた。
その日は、リョウちゃんの家に泊めさせてもらった。
残るは…うちの両親だ…。
そう思っていた矢先、リョウちゃんは体を求めてきた。
「…ッちょっと待って!リョウちゃんのご両親も居るし…お腹の赤ちゃんも…」
「俺の両親に認めてもらって、俺嬉しいんだ。早く一緒になりたい。夫婦になりたい…そう思ったら、愛し合いたくなって…」
リョウちゃんは言った。
私は‘愛’という言葉に弱い。私は、拒否出来なかった。
次の日、母と父に連絡を入れた。母は、父に会うのが嫌そうだった。なんとか説得し、夜に来てもらうことにした。
私の実家に行く時間になった時、リョウちゃんのお父さんが口を開いた。
「仕事のパンフレットと、源泉徴収を持っていきなさい。後、菓子折りと…」
私は「いや、そんな…いいですよ」
「そうでもしないと上手く丸め込めないだろう?まだ十九のお嬢さんを傷つけてしまったんだし。」お父さんが言った。
…傷?子供が出来る事は傷なの?しかも丸め込むだなんて…そんな言い方しなくても…。
私はなんだかショックだった。
リョウちゃんを見ると、お父さんの話に深く頷き「さすが親父!」と言っていた…。
この頃に、気付いていれば…。
私とリョウちゃんは、私の実家へ向かった。リョウちゃんと私の家は、歩いて5分ぐらいの所にある。
私は「ただいま。」
実家の玄関を意気込んで開けた。
部屋に入ると、母は和室。父はリビングに居た。
「初めまして。大田涼一と申します。これ、つまらないものですが…」
リョウちゃんは、緊張しながら喋っていた。
席に着くと母が
「同じ小学校の同級生なんですって?うちの娘が、お世話になってます。」にこやかに話している。
父が「で、お話しは何でしょう。」切り出した。
「…実は娘さんと結婚させてください。お腹には僕の子がいます。絶対幸せにします。お願いします。」
リョウちゃんは、頭を下げた。
私も「お願いします。」と深く頭を下げた。
「…そんな事だと思っていたわ。」母が口を開いた。
リョウちゃんが源泉徴収と会社のパンフレットを出して
「これが僕の勤めている会社です。それで少ないですが…これが僕の源泉徴収です。」
差し出した。
母が会社のパンフレットを見ていた。父は何も見ずに…
「俺は娘が決めた結婚相手なら反対するつもりはないよ。ちゃんと2人で頑張りなさい。」
そう言ってくれた。
「…許してくれるの?」私は、母と父の顔をみた。
「お前がそう決めたんだろう?」父は言った。
母も「もう大人だしね…」そう言ってくれた。
リョウちゃんは「ありがとうございます!」
そう言ってまた頭を下げた。
私も深く頭を下げた。
「たまにはみんなでご飯でも食べようか。」母がご飯の支度をし始めた。
私も手伝おうとキッチンへ向かった。
母に「あんた悪阻は?大丈夫なの?」言われた。
「うん。全然ない。」そう言って一緒にキッチンに立った。
リョウちゃんは、とても愛想がいい。人懐っこい性格で、すぐうちの両親もリョウちゃんを気に入
り、打ち解けた。
「あんた、成人式はどうするの?」
母親に聞かれた。
「一生に一度の事だし、やりたいなぁ…。」
私は答えた。
「俺も一緒の場所だし、一緒に行こう。はしゃがれてなんかあったら大変だし。笑」
リョウちゃんは笑顔でそう言った。
それから少し経ち、私は病院へ向かった。リョウちゃんは仕事だったので、私一人で向かった。
初診で、いっぱい記入する所がある。
‘過去に流産、人工中絶した事がありますか?’
私はまた思い出した。少しずつ過呼吸も治ってきていたのに…。胸が苦しくなってきた…。
「ごめんね…」そう小さく呟いて、記入した。
診察を待っている間、過去の赤ちゃんを思い出していた…。
怖くて…苦しくて…。
名前を呼ばれ、診察室に入った。
人生で二度目のエコー写真。前の赤ちゃんより、少し大きく真ん中がピコピコ動いている。
「順調ですね~。」
先生が言った。
先生は優しい女の先生だった。エコーを見て嬉しかったけど、何故あの時産めなかったのか…。どんどん後悔していった…。
私の曇った顔を見て、何かを察し
「…水子神社って知っている?」先生が言った。
「…いえ」
「水子神社は、安産祈願やご事情で産めなかった赤ちゃんをお参りする所なの。私は産婦人科医になってから、毎月行ける時は行っているの。とても静かで心が落ち着くわよ。」
そう言ってくれた。後で聞いた話だが、私はかなり顔色が悪かったらしい…。ストレスを貯めすぎて、お腹の赤ちゃんに何かあってはよくないと思い、私に水子のお話しをしてくれたらしい。
私は家に帰り、水子の事や水子神社の場所を調べてみた。
私の家から近い所だと…鎌倉…。
このままの気持ちだと、産まれてくる赤ちゃんも可哀相だ…。何か少しでも、変わるかもしれない。
気づいた時には、私は電車に乗っていた。
鎌倉に着いた私は、すぐに水子神社へ向かった。
緊張しながら神社に入ると、神社の中は子供のお地蔵様が立っている。
供養先に向かった。色々な人がいた。私と同じ思いをした人、子供を早く授かりたい人、様々だろう。でも子供を想う気持ちは一緒で、みんな悩みを抱えながら生きてるんだと思った。
今まで私は、私だけが悩んでいるかのような考え方だった。
間違った考え方を、改めようと思った。
初めての赤ちゃんは、私の都合で産む事すら出来なかった。それは、決して許される事ではないけど、その子に恥じぬよう生きていこう、そう決意した。
そう決意してからは、気持ちが穏やかになった。
家に帰ってから、リョウちゃんにメールをした。
「お腹の子、順調だって。」
連絡を待っていたかのようにすぐ返事が来た。
「本当に?!よかったぁ!お疲れ様!仕事終わったら行くね!」
私はリョウちゃんが帰ってくるのを待った。
夜9時過ぎ、私の実家にリョウちゃんが来た。
「お疲れ様!これ、赤ちゃんのエコー写真。」
私はリョウちゃんに、エコー写真を渡した。
「うわぁ!…初めて見た、って当たり前だけど 笑 …小さいなぁ」
リョウちゃんはエコー写真を、見つめていた。
「あっ!バイトの事なんだけどさぁ。赤ちゃんに何かあると心配だから、辞められないかな?俺、頑張るからさ!」
リョウちゃんは言った。
「すぐには無理だけど、店長に聞いてみるよ。」
「あと、うちの親が挨拶したいって言ってるんだけど…どう?」
リョウちゃんが言った。
「うん。早い方がいいもんね。とりあえず親に聞いておくね。」
親同士の挨拶は、その週の日曜日になった。
私は次の日、バイト先の店長に辞めたいと伝えた。
店長はビックリしていたが、笑いながら「幸せになってね」と言ってくれた。
バイトは急には辞められず、とりあえず今月いっぱいでとの事だった。
妊娠してからは、話がどんどんとんとん拍子に進んでいる。こういう状況を、順風満帆と言うのだろう。
親同士の挨拶を控えた前日、リョウちゃんの家で食事をご馳走になった。
「妊婦さんなんだから、いっぱい食べなさい。」
リョウちゃんのお父さんが言った。
「頂きます。」
「そういえばリョウ。結納はしなくていいよな?」
お父さんが突然言い出した。
「結納?なにそれ」
リョウちゃんが言った。
「結納は、簡単に言えばお嫁さんをもらうかわりに向こうの家にお金を渡すんだ。でも、妊娠なんて一人の責任じゃないし、お嫁さんをもらうって言ったって家近いし。いいよな?笑」
リョウちゃんのお父さんが言った。
「あぁいいよいいよ。」
リョウちゃんと、聞いていたリョウちゃんのお母さんは頷いていた。
私は、なんだか違和感を感じた。確かにそうだけど…わざわざ私の前で言う事なのだろうか…。なんだかやるせない気持ちだった。
- << 103 でも、私は結婚させてもらうんだからしょうがない。そう思い、作り笑いをしてみんなの話を聞いていた。 親同士の挨拶の日。 私は、夕方から両親と待ち合わせしてお店へ向かった。 そこにはリョウちゃんとリョウちゃんのご両親が待っていた。 「どうも初めまして。大田と申します。この度は、うちの息子が…」 リョウちゃんのお父さんはものすごい勢いで挨拶をしていた。 母は「いえいえ、こちらこそ。川辺と申します。」 と挨拶をしていた。 最初は緊張していたが、リョウちゃんのお父さんがよく喋る方だったので、話題は途切れなかった。 話を聞いていると、リョウちゃんのお父さんは営業職。だからこんなに色々しゃべれるんだなぁと感心していた。 すると突然、 「今回の事では、色々とリョウがご迷惑おかけしまして…。大事なお嬢さんに…順序が逆になってしまいましたが、若い2人の意見も堅いようですし、なんとかお許しを頂ければと思いまして…」 と、頭を下げた。 「いえいえ。リョウくん1人の責任じゃございませんし、私共も出来る限りの事をしてあげたいと思っております。」 母は言い返した。
>> 100
親同士の挨拶は、その週の日曜日になった。
私は次の日、バイト先の店長に辞めたいと伝えた。
店長はビックリしていたが、笑いながら「幸…
でも、私は結婚させてもらうんだからしょうがない。そう思い、作り笑いをしてみんなの話を聞いていた。
親同士の挨拶の日。
私は、夕方から両親と待ち合わせしてお店へ向かった。
そこにはリョウちゃんとリョウちゃんのご両親が待っていた。
「どうも初めまして。大田と申します。この度は、うちの息子が…」
リョウちゃんのお父さんはものすごい勢いで挨拶をしていた。
母は「いえいえ、こちらこそ。川辺と申します。」
と挨拶をしていた。
最初は緊張していたが、リョウちゃんのお父さんがよく喋る方だったので、話題は途切れなかった。
話を聞いていると、リョウちゃんのお父さんは営業職。だからこんなに色々しゃべれるんだなぁと感心していた。
すると突然、
「今回の事では、色々とリョウがご迷惑おかけしまして…。大事なお嬢さんに…順序が逆になってしまいましたが、若い2人の意見も堅いようですし、なんとかお許しを頂ければと思いまして…」
と、頭を下げた。
「いえいえ。リョウくん1人の責任じゃございませんし、私共も出来る限りの事をしてあげたいと思っております。」
母は言い返した。
「そうですか。ありがとうございます。若い2人だし、特にリョウはまだ半人前なので給料も少ないですし、金銭面のバックアップは私共でしてまいります。」
結納の話は、うちの親が断った。なんだか私は昨日の話をふと思い出していた…。
「結納をしない変わりというのもあれなんですが、結婚式を挙げさせてやりたいと思っております。」
リョウちゃんのお父さんが言った。
私は、そんな話聞いていなかったのでビックリした。
「いやでも…本人たちもお金がないですし…」
うちの母が言った。
「そんなに大きな式はしてあげられませんが…私が出します。一生に一度だと思うので、やらせてあげたいんです。」
リョウちゃんのお父さんは言った。
私は式なんて挙げられないと思っていたので、素直に嬉しかった。
親たちの挨拶は、2時間ぐらい食事をして終わった。
うちの両親は住んでいる所が別々なので、各自帰っていった。
「いやぁ緊張したな、リョウ!」
リョウちゃんのお父さんは、リョウちゃんに言った。
リョウちゃんは頷きながら…
「お父さんやお母さんにわかってもらえてよかったよ。」
私に向かって言った。
「飲み直そうか。」
リョウちゃんのお父さんは、そう言いながら次の居酒屋へ足を運んだ。
居酒屋に着き、リョウちゃんのお父さんが突然私に…
「実は頼みたい事があるんだ。結婚式の事なんだが…」
「なんでしょう。」
「出すとは言ったものの、あまりお金がないので式を安めでお願いしたいんだ。」
私は、式の話が出た時にそうしようと思っていたので…
「はい。わかりました。」
と答えた。
その時、リョウちゃんのお母さんが…
「30万ぐらいしか出せないから。」ときっぱり言った。
「それより足が出たら実費でお願いします。」
とも言われた。
私やリョウちゃんが、実費で出せるお金はない。今は赤ちゃんの検診代も、私が貯めたお金から出している。
私はこの時、まだリョウちゃんとも暮らしていなかったので、自分の事はすべて自分の貯金から払っていた。リョウちゃんは貯金0。
「…わかりました。」
私が返事をすると、お母さんはにこやかな顔をしてリョウちゃんに言った。
「物分かりのいいお嫁さんをもらったね。よかったね。」
リョウちゃんはひたすら両親の話を頷いて聞いているだけだった。
居酒屋では、大田家の親戚の誰を呼ぶかなどと話が盛り上がっていた。
私は、まだ親戚にも会った事なく黙って聞いていた。
居酒屋を出て、私は実家へ帰る事にした。
「今日はごちそうさまでした。それじゃ失礼します。」
そう言うと、リョウちゃんのお父さんが
「あれ?帰るのかい?これからみんなでボーリングに行くから来なさい。」
ボーリング?!私まだ安定期にも入っていないし、今日は長く外に居たから帰って休みたかった。そんな気持ちを察してほしくて、リョウちゃんを見た。
リョウちゃんは酔っ払っていて、「ボーリング?いいねぇ!楽しそう!行こうよ!」とはしゃぎながら言った。
私から断る事が出来ず…
「…じゃあ少しだけ。」
とまた作り笑顔をして答えた。
案の定、ボーリングに行ってもボーリングをする勇気もなく1人座ってみていた。
その後、ラーメン屋にまで連れて行かれ家に帰ったのは深夜の2時を過ぎていた。
次の日のバイトは、体調が悪かったけど行かないとお金がなくなってしまうため重い足取りでバイトへ向かった。
バイトの休憩中、本屋に立ち寄り結婚式の雑誌を読んでみた。
‘結婚式でかかる費用の平均額250万’
????!!!!
本気でビックリした。そんな豪華な式をしようと思っていない。でも…、この額は予想外だった。思いきって結婚式をするのを辞めさせてもらうかな、そう考えてリョウちゃんにメールをした。
「今日仕事終わってから話そう。」
リョウちゃんからメールが返ってきた。
リョウちゃんが仕事から帰ってきたので、少し会って話した。
「俺、友達に結婚式やるから来てって言っちゃったよ。」
リョウちゃんが言った。
「えっ?」
「しかも俺だって、結婚式ぐらいしたいしお前のウェディングドレスみたいよ!」
リョウちゃんは言った。
私は、今日本屋で調べた事をリョウちゃんに話をした。
「えっ?そんなかかるの?…でも色んな所探せばあるよ!大丈夫!俺も相談乗るし。」
「??リョウちゃんは一緒に探してくれないの?」
私は言った。
「だって俺仕事あるし。お前が探してきてよ。話聞いて決めるから。」
私はなんだか変な感じがした。一生に一度の事なんだし、一緒に探してくれないのかな…。普通みんなそうしているのかな??私は、昨日の私への態度といい、今日の一言といい不信感を持った。
次の日は、バイトが休みだったのでとりあえず私の姉に相談をした。
結婚式をやる事と、出せる額が30万までだという事を話した。
「…うーん。私の結婚式で300万ぐらいだったからなぁ。でも式だけやって、あとは披露宴じゃなくて食事会みたいな感じにしたら安く出来るかも。調べてあげるよ。」
と姉は言ってくれた。
後日、姉の家に行って私も調べる事を伝えた。
「結婚式の話よりも、成人式大丈夫なの?バタバタしてるから。」
姉に言われるまで、すっかり忘れていた。着付けの予約もしていない。気付けば成人式は3日後に迫っていた。
「早くから予約してる人もいるんだから、すぐ予約取りなさい。」
姉はそう言って、電話を切った。
私は、急いで着付けをしてくれる美容室に電話した。どこもいっぱいだったが、1件だけ予約が取れた。ほっと一安心したが、予約時間が朝の5時。私の式の時間は午後1時。それまで着物を着続けていなければいけない。
赤ちゃんがすごく心配だった。
成人式の着付けの話を、リョウちゃんにすると…
「心配だから、俺車出すよ。」と言ってくれた。
私はそれに甘える事にした。
成人式当日。
朝の4時半に起きて、着付けの会場に向かった。
着付けをしてもらう人に
「お腹に赤ちゃんが居るので、帯を緩めに結んでください。」とお願いした。
着付けは2時間ぐらいだった。初めての晴れ姿に、成人式がどんどん楽しみになった。
実家へ帰ると、父がソファーで新聞を読んでいた。
父に晴れ姿を見せると、とても喜んでくれた。
リョウちゃんも着替える為、リョウちゃんは自宅に戻った。
その間、私は少し寝る事にした。でも横にはなれないので、ソファーに座り帯の下にクッションを入れ、座ったまま目をつぶった。
リョウちゃんとの待ち合わせの時間になったので、私は外に出た。
リョウちゃんの車を、リョウちゃんのお父さんが運転してくれて会場に向かった。
🍀虎ホードさん🍀
読んで頂きありがとうございます。
今、私情で色々ありまして更新できずにいます。
もう少ししたら落ち着くので、それが終わりましたら更新させて頂きます。
もしよろしければ最後までお付き合い下さいm(_ _)m
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