わたしの過去
これから私の過去の恋愛を書いていきます🌼
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トモ君は私にはとても手の届かない存在だった。
毎朝わざとトモ君の登校時間に合わせて、玄関で「おはよう」と言う事が楽しみだった。
挨拶程度しか話した事がない…
トモ君はモテるのでよく女の子から話しかけられる。それを見るとどうしてもモヤモヤする。
私はその時初めて嫉妬という感情を知った。
7月。
私はトモ君に彼女が出来た事を知る。
終業式の日、トモ君は2年生の先輩と手を繋いで下校していた。
嫉妬で押しつぶされそうだった。心がモヤモヤしてどうしようもない。カナの前で泣き出してしまった…
新学期が始まり、交遊関係も広がって来る。
ある日突然3年生に話しかけられる。
3年生「ねぇねぇ花火にいたよね?」
私「あっハイ。行きましたが…(?)」
3年生「俺も行ったんだけど、君隣りにいたよね?覚えてない?」
私「暗かったし、ちょっとわからないです…」
3年生「そっか。俺存在感ないんだな(笑)」
ちょうどその時チャイムが鳴り、昼休みが終わり、3年生は「じゃあね~」と言って教室に戻って行った。
これがタカシとの出会いだった。
それからよくタカシと廊下ですれ違う。
決まって私に話しかけてくる。いつの間にか仲良くなってた。
ある日、いつものようにタカシと廊下で話していた。
タカシ「今日一緒に帰らない?」
私「いいよ」
私は特に何も考えずに一緒に帰る事にした。
そして帰り。
タカシと私の家は逆方向。
タカシは私を家まで送ってくれると言う。
学校から私の家までは徒歩20分。
20分間色々な話をした。お互いの好きなタイプの話で盛り上がった。
私の家の前に着いた。
タカシ「俺と付き合わない?」
本当に突然だった。
私「……」
告白されたのも初めてだし、タカシが私のことを好きだったなんて気付かなかった。ビックリして言葉も出ない。
タカシ「俺じゃ嫌?」
私「ごめん。ビックリしちゃって…。少し考えさせてくれる?」
タカシ「うん。わかった。じゃあ俺帰るわ。また明日ね。」
私「送ってくれてありがと。気をつけてね」
タカシは帰って行った。
私は家に入るなり、すぐにカナに電話した。
私「カナどうしよう。告白されちゃった」
カナ「えっ!!でもやっぱりタカシ君はエミのこと好きだったんだね。私はわかってたよ!で、どうするの?」
私「こういうの初めてで正直戸惑ってる。どうしよう…」
カナ「タカシ君の事嫌いじゃないなら付き合ってみたら?付き合ってくうちに好きになっていくかもしれないし」
気持ちの整理がつかないまま、電話を切った。
数日間は夜も寝れないくらいタカシの事ばかり考えてた。
数日考えて結論が出た。付き合ってみよう。そう思って帰りに玄関でタカシを待った。
タカシ「どうした?」
私「話あるから一緒に帰ろう」
学校の近くの公園に行った。ブランコに座った。
私「この間の返事なんだけど…。あれから考えたんだけど、私で良かったら…。」
緊張してこれ以上言葉が出なかった。
タカシ「えっ!いいの?付き合ってくれるの?」
私「うん。」
私はうなずいた。
こうして私中1、タカシ中3の秋から交際が始まった。
付き合って2ヶ月たった頃、終業式を迎え、冬休みに入る。
楽しみにしているクリスマスだ。
私は12月になってからずっとクリスマスを楽しみに待っていた。毎日ワクワクドキドキしていた。
まだ中学生だった私はお金が無くてロクなクリスマスプレゼントを買えない…
悩んだ挙句、クッキーを作る事にした。
お菓子作りも初体験だ。
お母さんに教えてもらいながら一度練習のために作ってみた。
3歳年上の兄に食べてもらった。
兄「うまいわ。でもこれ誰にあげんの?友達?」
タカシは兄の事を知っていた。という事は兄もタカシの事を知っている。恥ずかしくて兄には言えなかった。
私「うん。まぁね」
適当にごまかした。
23日の夜、私はタカシにあげるクッキーを作った。
タカシはこんなもので喜んでくれるかな…
不安と期待で胸がいっぱいだった。
24日は二人で街に行った。手を繋いでブラブラ歩く。周りはカップルだらけ。
クリスマスだという実感が沸く。
初めてタカシとプリクラを撮った。
夕方、ケーキを買ってタカシの家に向かった。
タカシの家には誰もいなかった。緊張する。
タカシ「ハイ。これ」
タカシがプレゼントをくれた。開けて見るとクマのぬいぐるみ。
私「可愛いね。ありがとう!私のはプレゼントとは言わないかもしれないけど…」
クッキーを差し出した。
タカシ「えっ?これエミが作ったの?すげぇ。」
私「食べてみて」
タカシは一口食べた。
タカシ「うめぇ。ありがと。かなり嬉しいんだけど」
タカシは喜んでくれた。
タカシ「こっちおいで」
タカシは自分の上に座れと私を呼ぶ。
私は照れながら近付いた。
タカシ「エミ大好きだよ。ずっと一緒にいような」
私「私もタカシが好き。離れないでね」
タカシは私を抱き締めてくれた。そして初めてキスした。
これが私のファーストキス。
一気にタカシとの絆が深まったような気がした。
そして新学期が始まり、2月。
バレンタインだ!!
カナも好きな人にあげるというので一緒に買い物に行き、うちで一緒に作る事になった。
カナの好きな人はタカシの友達。何回か4人で遊んだ事がある。
出来上がったチョコを二人で味見し合った。
この頃は何も考えず、悩みもなく毎日ただ楽しかった。大好きなカナと毎日一緒に過ごせて、大好きな彼氏もいる。満たされた日々だった…。
3月。
タカシ達3年生の入試だ。
タカシは公立の工業高校を受けた。
その数日後には卒業式。
タカシと別々の学校になる。でも家は近いし、その時は特に心配はなかった。
合格発表。
タカシは落ちた。
私立の普通高校に行く事となった。
なんて慰めたらいいかわからない…
でもタカシは特に落ち込む様子もなく、普段通りだった。
カナの彼氏、ケンタもタカシと同じ高校に入学した。
5月。
タカシはバイトを始めた。居酒屋だ。
当然バイト先には女の子もいる。高校も共学だけど、バイトで違う高校の子と知り合うのが私は嫌だった…。不安だった。
その不安が的中する事になるとは…。まだこの時は気付いてなかった。
バイトは学校が終わってから17~22時。週4回くらい入ってた。
私の門限は19時。
バイトがある日は会えない。
中学の時は毎日一緒に過ごしてたのに…。
まだ子供だった私は我慢出来ず、次第に不満を募らせていく。
8月。
花火だ!私達の出会いのキッカケ。
花火の日はシフトを入れずに一緒に花火に行ってくれた。
私は浴衣を着た。
花火やお祭りの時だけ私の門限は22時になる。
いつもより長く一緒に居れる事が嬉しかった。
花火が終わって、タカシの家に行く。
タカシのお父さんとお母さんに初めて会う。二人とも優しく、いい人だった。
そして私達はこの日、初めて一つになった。
付き合って10ヶ月、私中2、タカシ高1の夏だった。
この日の事は今でも鮮明に覚えてる。痛かったけど、幸せだった。タカシとの愛を再確認した。
夏休みも終わり、普段の生活が始まる。
3日前、元気だったカナの元気がない。
何だか痩せたようだ。
カナに何があったのか聞いた。
ケンタの浮気が発覚したそうだ。
カナが街に行った時、ケンタが年上っぽい女性と腕を組んで歩いていたのを見たそうだ。
問い詰めたら、その女性はケンタのバイト先、コンビニで働くフリーターの18歳の人。
カナは落ち込み、ご飯も食べずに寝たきりだったそうだ。
カナの心配をするのと同時に私自身も不安になる…。
タカシのバイト先にも年上の綺麗なお姉さん達がいるはずだ。中坊より大人で綺麗な女性の方が魅力がある…。
その不安をタカシにぶつけてしまった。
私「ケンタ君浮気してたみたいだよ…。タカシは浮気とかしないよね?」
タカシ「するわけないじゃん。俺はエミだけだし。」
私「でも綺麗な人いっぱいいるんでしょ?誘われたら遊ぶでしょ?」
私はしつこく聞いてしまった。
タカシもしつこい私にキレた。
タカシ「俺の事そんなに信用できない?どうすれば信用すんの?バイト辞めろって事?急に勝手に疑い深くなって意味わかんねぇ」
私「だって不安になるじゃん!何で怒るの?こっちが意味わかんない。もういい。」
私はタカシの家を出て自分の家まで泣きながら帰った。
付き合って11ヶ月。
初めての大喧嘩。
数日間会わなかったし、電話もしなかった。
休日にタカシがうちに来た。
タカシ「何で電話してこないの?もういいって言ってたけど、別れるって事?」
私「タカシだって電話してこないじゃん。別れたいのはタカシじゃないの?」
本当は仲直りしたいのに…。モヤモヤした気持ちが残り、素直になれない…。
この日も別れはしなかったものの、喧嘩したままバイバイした。
一週間連絡も無い。
このまま自然消滅かな…
不安がよぎる。
私は門限を破り、タカシが働く居酒屋へ向かった。
居酒屋へ着いた時はまだ21時。ここで待ってればタカシが出て来る。
1時間半待った。
タカシが出て来た。
声をかけようとしたら、女も一緒に出て来た。女はタカシの服をつかんで少し遅れて歩いてる。
女は背が高くてモデル体型。とてもスタイルがいい。見た感じ年上だ。
タカシと女は居酒屋の向かいにあるコンビニに入っていった。
二人は何か買って出て来た。
大きな声で喋ってる。女はキャピキャピしてる。
手を繋いで、女の車まで歩いて来る。私が呆然としている間に二人は車に乗り込んだ。
どこに行くんだろう…
私は自転車。車を追いかける事はできない。
その日は諦めて帰った。帰るしか無かった。
休日、タカシの家に行った。
チャイムを鳴らすとお母さんが出て来た。
タカシ母「エミちゃんどうしたの?タカシと一緒じゃなかったの?」
私「えっ?タカシ君とはしばらくまともに会ってません…」
タカシ母「え?だって今朝早くエミちゃんと映画行くって出かけたんだよ」
私「そうですか…。ありがとうございました。お邪魔しました」
確信した。タカシはあの女と浮気してる。
怒りが止まらない。不思議と涙は出てこない。
地元には映画館が二つある。でも一つは小さくて潰れそうな映画館。私は怒りまかせに、もう一つの映画館に向かった。
映画館の前で待ち伏せする。
映画が終わったようでたくさんの人が出て来る。
その中にタカシとあの女を見つけた。また手を繋いでる。
怒り狂っていた私はそのまま二人に近付いた。
私「ちょっとどういう事?やっぱり浮気してんじゃん。俺を信じろって言ったの誰?あんたでしょ?」
タカシ「違うんだって。浮気なんかじゃない…」
私は女に向かって「あんた誰だか知らないけど、どういう事なの?」
女「だってさぁ、この子(タカシ)可愛いから。ついつい手出したくなっちゃって。エッチも最高だったよ。じゃあ私は帰るね。タカシまた明日(バイトで)ね~」
女は笑顔でそう言って帰っていった。
女の言葉で全てがわかった。体の関係まである。
私「あんたあの女が好きなわけ?」
タカシ「違う」
私「じゃあ何でこんな事すんの?」
タカシ「あっちが誘って来るから断れなくて…ごめん」
私「謝って済む問題じゃないでしょ?ふざけてんの?」
タカシ「だからごめんって…」
私「もういいよ。どうせあの人の方が綺麗だし、大人だし、スタイルもいいし、私なんかかなわないよね。あんな人が誘って来たら誰でも誘いにのるよね。お幸せに。もう別れるから」
と言って私はその場を去ろうとした時、タカシが私の手を掴み、離してくれない。
私「離して!触らないで!」
タカシ「やだ」
無理矢理抱きよせられた。私は力いっぱいタカシを突き飛ばして逃げた。
付き合って1年。
私達は別れた。
タカシから何度か電話が来てたが、お母さんに「居ないって言って」と言い、避けていた。
何事も無かったかのように毎日学校に行き、時間が過ぎて行く。
私の学校はすぐ噂がたつ。私達が別れた噂はすぐに広まった。
辛かった。
別れてから2ヶ月。
またクリスマスがやってくる。
去年はあんなに幸せだったクリスマス…
今年は寂しさしかない。
カナには新しい彼氏がいたので、私は家族と過ごした。
大晦日。
両親が初詣でに行くというので私も行った。
ここでもまた去年を思い出す。去年したお願いは叶わなかったなぁ…。
「家族が健康で過ごせますように」
今年はそうお願いした。
帰ろうとしたその時、タカシを発見した。
複雑だ…。
タカシは男友達4人、女友達2人と来ていた。笑いながら話してる。
私のことなんてもう忘れたんだろうなぁ…
悔しいやら寂しいやらで何とも言えない気持ちになった。
「もう忘れよう」私はそう決めた。
冬休み中、カナが彼氏と別れた。
カナと街に行った。
地元にはナンパスポットがある。街にあるゲームセンター前の階段。
そのゲームセンターにカナとプリクラを撮りに行った。
ゲームセンターから出た時、高校生らしき男二人に声をかけられた。
男「何してんの?暇だったら遊ばない?」
カナと私は迷ったが、遊ぶことにした。
ゲームセンターに戻ってゲームしてファミレスに入った。
二人の名前はアツシとヒデユキ。
アツシはカナを気に入ったようで、ヒデは私を気に入ったようだ。
ファミレスで色々話した。
なんと二人はタカシとケンタと同じ高校の同級生。ビックリした。
私とカナの元彼だと知って二人もビックリしてた。
アツシ「ケンタもタカシもチャラいよな~。」
ヒデ「かなりチャラいね。いっつも違う女連れてるよな」
アツシ「そうそう。ケンタは女妊娠させたとかで中退して結婚するかもしれないらしいよ」
カナの顔がくもる…
帰り際、カナはアツシに告白されて付き合うことになった。カナは自暴自棄になっていた。
帰りの電車の中、カナは異常に明るく振る舞って来る。ずっと話している。
私「カナ大丈夫?」
カナ「何が?全然大丈夫だよ。彼氏もできたし嬉しいよ。エミもヒデ君と付き合えばいいのに」
カナの顔は引きつっている…
電車を降りてカナとバイバイして自宅に帰った。
カナが心配だ。
カナのことばかり考えていた。
新学期が始まり、カナは元気そうで安心した。アツシとの惚気話を聞かされた。
幸せそうで良かった。
カナ「そうそう、日曜日、ヒデ君も誘ってエミも一緒に遊ばない?」
私「いいよ」
日曜日は地元の大きい公園に行くことになった。
日曜日。
カナとアツシはラブラブだ。常にくっついて二人の世界に入ってる。
ヒデと私も二人きり。
私は何を話していいかわからない。
ヒデが過去の恋愛の話を始めた。
ヒデ「俺長続きしないんだよね~。二人しか付き合ったことないけど、一人は3日で別れたし、もう一人は1ヶ月だったんだよね。エミちゃんはどう?」
私「私はタカシしか付き合ったことないから…。1年付き合ったけど浮気されて別れた。」
ヒデ「え~浮気?こんな可愛い彼女いんのに?タカシ贅沢だな」
私「浮気相手すごい綺麗な人だったし…仕方ないかもね」
ヒデ「仕方なくないしょ。俺がタカシだったら絶対エミちゃん大切にすんのに」
ヒデはさりげなくアピールしてきた。
ヒデに電話番号を聞かれて教えた。
それからヒデは週に3回は電話してくる。
話も合うし楽しかった。
あっという間に春休み。
ヒデと二人で遊ぶことになった。
ヒデは自転車で25分かけてうちまで迎えにきてくれた。
後ろに乗せてもらう。
ちょっとドキドキした。
海を見に行こうということになり、海に向かう途中、コンビニでジュースを買った。
そのコンビニに偶然ケンタ(カナの元彼)がいた。お腹の大きい女の人と一緒だった。
ヒデ「ケンタ~?」
ケンタ「ヒデ!元気だった?」
ケンタは彼女を妊娠させたため、高校を中退していた。
ケンタ「あれ?もしかしてエミちゃん?」
ヒデ「そうだよ!デートしてんの(笑)」
ケンタ「二人付き合ってんの?」
ヒデ「付き合ってはいないよ」
ケンタ「良かった~。タカシがさぁ、エミちゃんのこと忘れられなくて、馬鹿みたいに女の子と遊びまくってんだわ。タカシに連絡してあげて?」
私「もう別れたし、関係ないから」
ケンタの女「早くいこうよ」
ケンタ「うん。じゃあエミちゃん気が向いたらタカシに電話してやってね」
忘れかけてたのに…
思い出してしまった。
ヒデと海に向かった。
春の海はまだ寒かった。
ヒデ「寒くない?俺があっためてあげようか?(笑)」
ヒデは優しくて気さくな人だ。私を元気づけようとしてくれる。
ヒデ「まだタカシのこと気になる?」
私「気になりはしないよ」
ヒデ「だったら俺と付き合ってくれない?俺初めて会った時からエミちゃんの事好きだった。」
私「でもまだ気持ちの整理ちゃんとできてないし…。私と付き合っても面倒臭いと思うよ」
ヒデ「そんなのいいって。エミちゃんは俺が幸せにする」
私「ありがとう」
中3になる前の春休み、ヒデと付き合う事になった。
ヒデと付き合う事になったとカナに報告したら凄く喜んでくれた。
カナも幸せそうなので、私はケンタに会った事は言わなかった。
ヒデの家と高校の間に私の家や私の学校がある。
バイトをしてないヒデは毎日のように私に会いに来てくれた。
毎日幸せだった。
幸せすぎて月日がたつのは早い。
あっという間に半年たった。
まだキスすらしてない純愛だった。
本当は好きじゃないのかな?と不安になった私はヒデに聞いてみた。
私「ヒデ私のこと好き?」
ヒデ「大好きだよ。どうしたの?」
私「………まだチューとかしてないからさ、好きならしたくなるもんだと思ってたから不安になって」
ヒデ「何不安になってんのさ。俺はエミが大好きだし、何も心配しなくていいよ」
ヒデは私をギューッてしてくれる。
ヒデの心はあったかい。
幸せを感じる…。
12月。
クリスマスだ!!
中学最後のクリスマス。
恥ずかしいけど、カナと一緒にマフラーを編むことにした。
お母さんに教えてもらいながら編んだ。
クリスマスはヒデと一緒に海に行くことになった。
ヒデ「やっぱ寒いね~真冬だからな。エミにくっついちゃお」
ヒデは私をギュッてしてくる。あったかい。
私「付き合い始めたのもここだったよね。もう9ヶ月もたつんだ~。早いね」
ヒデ「そうだね~。あの時よりももっとエミのこと大好きになったよ」
私「私もヒデ大好き。」
ヒデと初めてキスした。唇はすごく冷たかった。
ヒデ「実は俺ファーストキスなんだけど(笑)」
私「えっ!知らなかった!なんか嬉しいね」
ヒデ「エミのファーストキスも俺だったら良かったのに(笑)」
私「ほんとにね~」
ヒデ「プレゼント持って来たよ!開けてみて」
指輪だった。ペアリング。
私「これどうしたの?高かったしょ?」
ヒデ「そんな事ないよ。頑張ってバイトしたから」
バイト?だってヒデはいつも私と一緒にいてくれたのに…バイトする時間なんてないはず…
私「何のバイト?」
ヒデ「俺の親戚が新聞販売店やってて、そこで朝刊配達やってた。この時期は寒いよ~。」
タカシと別れた原因を知ってるヒデは私と過ごす時間を取るためと、浮気を心配させないために一人でやる新聞配達を選んだのだ。
私「ありがとぅ~。大変だったよね?ほんとありがとう」
ヒデ「全然余裕!エミのためだったら何だってできるよ!」
ヒデは私のマフラーも喜んでくれた。
私は指輪を大切にした。ほぼ毎日つけていた。
幸せなクリスマスも終わり、現実に引き戻される。
入試だ。
私は公立の普通高校とヒデやタカシが通っている私立高校を受けた。
入試の朝、ヒデが電話をくれた。
ヒデ「頑張れよ!エミなら絶対大丈夫だから。」
緊張がほぐれた。
精一杯やった。
落ちても悔いはない。
カナは私と同じ公立高校と私立の商業高校を受験した。
結果…
私もカナも落ちた…。
私はヒデやタカシが通う私立の普通高校へ。
カナは私立の商業高校へ行く事となった。
カナと離れる…。
寂しくて二人で泣いた。
ヒデに会って報告した。
私「落ちちゃった」
ヒデ「そっか…。残念だったね…。でもエミ頑張ったじゃん!頑張った事に意味があるんだから」
私「そうだよね。元気出た!」
ヒデ「じゃあエミ俺と同じ学校だよね?めちゃ嬉しいんだけど」
私「私もだよ~。一緒に学校行ったりできるね」
私はカナと離れたのは残念だったけど、ヒデと同じ学校に行ける事は嬉しくて仕方なかった。
タカシも同じ学校だという事はすっかり忘れていた。
4月。高校に入学した。
私もピッチ(PHS)を買ってもらった。ヒデとメールできるのが嬉しい。
知らない人がいっぱいいて緊張する。
同じ中学だった“リサ”と同じクラスになり、いつも一緒にいるようになった。
高校はほとんどの人がチャリ通。
私の家から学校まではチャリで15分。
ヒデの家からは40分かかる。
ヒデとの付き合いも1年を過ぎ、順調そのもの。
日に日にヒデの事が好きになる。
タカシの事などすっかり忘れていた。
昼休み、ヒデと話していた。
そこにタカシが…。
タカシ「エミじゃん!ここ入ったんだ~!知らなかった。連絡してくれれば良かったのに」
あの気まずい別れから1年半。タカシは普通に話しかけて来た。
私「うん。もう関わりもないし、連絡する必要もないと思って」
私は冷たい態度をとった。
タカシ「冷たいなぁ。俺ずっとエミの事忘れられなかったのに。つーか、ヒデと知り合い?」
タカシは私とヒデが付き合ってる事を知らなかった。
ヒデ「俺エミと付き合ってるんだ。去年の春休みからだから、もう1年過ぎたよ。そういえばタカシに話してなかったな」
タカシ「彼女いるのは知ってたけど、エミだったの?何で?マジありえねぇ」
私「そういう事だから」
タカシはキレた。
タカシ「お前ふざけんなよ?俺がどんだけ苦しんだと思ってんの?ケンタから聞いてだだろ?何普通に裏切ってんの?」
ヒデ「エミを裏切ったのはお前だろ。お前よりエミの方が苦しんだんだよ」
タカシはヒデに手を出した。ヒデもやり返す。殴り合いだ。
先生に止められて、私達3人は職員室で絞られた。
教室に戻る時
タカシ「お前ら上手くいくと思うなよ。壊してやる」
タカシはそう言って先に戻った。
授業が終わり、ヒデと帰る。
ヒデ「今日はごめんね」
私「いいよ。タカシが悪いんだし、気にしないで」
ヒデ「タカシが何しようとしてんのかわからないけど、俺が守るから」
私「うん」
正直この先不安だった。タカシは何する気だろう…
6月。
私は週に2回だけガソスタでバイトを始めた。
月に25000円ぐらいしか稼げないけど、私にとっては大金だった。
ある日、バイトが終わってヒデにメールする。
私【終わったよ。今から帰るね】
すぐに返事が来た。
ヒデ【お疲れ~。気をつけて帰りなよ】
帰ろうと店を出て歩き出した。
ピッチが鳴った。
電話だ。知らない番号だった。
私「もしもし?」
相手は「お疲れ~」と電話のむこうで言っている。
同時に後ろから「お疲れ~」という声が。
タカシだ…。
誰から私のバイト先と番号を聞いたのか…。
怖くなって私は走り出した。
すぐにタカシに追いつかれて腕をガシっと掴まれた。
私「何?」
タカシ「冷たいじゃん。一緒に帰ろうよ」
タカシは何となく酒臭い。少し酔っているようだ。
私「いい。一人で帰るから」
タカシはついてくる。
タカシ「エ~ミちゃん。俺まだ好きだよ~。エミじゃなきゃ無理。色んな女と付き合ったけど、エミ以外無理。ヒデとなんか別れて、ヨリ戻そうよ~」
私「私はヒデが好きだから。タカシの事はもう何とも思ってないし、付き合えない」
タカシ「ちょっと来い」
腕を強引に引っ張られて、公園へ。
私「やだ!放してよ!」
タカシ「絶対放さねぇ」
タカシの力は強い…。腕が痛くなる程だ。
そこは中学の近くの公園。タカシとの思い出の場所。
タカシ「俺らよくここで話したよな?覚えてる?」
私「覚えてるよ」
タカシにまた腕を引っ張られる。痛い。
私「やめてって言ってるでしょ!」
タカシ「……」
公園近くのタカシの家に連れてかれた。
タカシのお母さんがいるようだ。
タカシの部屋に連れ込まれて、ベッドに倒された。
ここはタカシと初めてエッチした場所。
嫌な記憶がよみがえる。
私「やめてよ!いい加減にして!」
取り乱した私はわざとお母さんに聞こえるように大声で叫んだ。
お母さんは来ない…。
タカシ「無駄。母さん風呂だよ」
タカシは強引にキスしてきた。私はタカシにビンタした。
タカシはビックリしたようだが、逆に刺激を与えてしまったらしく、強引に服を脱がされ、下着を取られて、アレをそのまま入れられた。
タカシはすぐにイッた。
タカシ「ごめん。中に出しちゃった。赤ちゃん出来てたらいいね。」
タカシは笑顔で言った。
私はタカシを突き飛ばし、さっさと服を着て家を飛び出した。
泣きながらひたすら歩く。後ろから車が来てるのにも気付かず、クラクションを鳴らされた。
道の真ん中を歩いていた。
このまま事故で死ねたらいいのに…
もう死にたい…
ヒデに顔会わせられない…
こんな汚ない私…死んだ方がマシだ…
どこに向かうわけでもなく、ひたすら歩いてた。どこを歩いたか全く覚えていない。
深夜になっても帰宅しない私を心配して、両親が探してくれていた。
私はいつも帰宅するとヒデにメールする。
ヒデもメールが来ない事を心配して何回もピッチに電話していた。
嫌な予感がしたそうで、家電にもかけてくれてた。兄が電話に出て家にも帰っていない事を知り、ヒデも私を探してくれてた。
そんな大騒ぎになってるとは知らず、私は歩道橋に座り込んでいた。
飛び下りようかと思ったが、家族やヒデと一生会えなくなる…。でも合わせる顔もない…。
悩んでいた。
「エミちゃん?」
誰かが呼んでる…
「エミちゃん?」
アツシだった。
アツシはカナとは別れたが、私と同じ高校で、ヒデの親友なので時々話す仲だった。
アツシ「こんなところでどうしたの?具合でも悪いの?」
アツシの声を聞いた瞬間、大泣きしたのを今でも覚えてる…
アツシは乱れた服装で何も持ってない私を見て何かあったんだと悟ってくれて、ヒデに連絡してくれた。
ヒデはすぐ来てくれた。
ヒデ「エミ!心配したんだよ?」
ヒデはいつものようにギューッと抱き締めてくれた。
ヒデに申し訳ない気持ちや色々な感情が入り交じり、大声で泣いた。
ヒデ「何があったの?」
私「……」
ヒデ「話したくないなら話さなくていいよ。大丈夫だからね。今日は遅いし、お父さんもお母さんも心配してるから帰ろう?」
私はうなずいた。
ヒデが私の家に私が見つかった事を連絡し、私を家まで送り届けてくれた。
寝れない…。
怖くて怖くて仕方ない。
気持ち悪い…。
私は深夜に思い立ったように風呂に入り、体の隅から隅まで何度も何度も洗った。
結局朝まで寝れなくて、学校も行きたくなくて休んだ。
とにかくヒデに謝ろう…
メールをしようとピッチを探したが、無い。
タカシの家に鞄ごと忘れてきたのだ。
どうしよう…
鞄の中にはヒデや友達とのプリクラが貼ってある手帳も入ってる。
財布もだ。
朝ヒデがうちに来た。
ヒデ「エミ?今日は休むの?」
私「うん…。ごめん。本当にごめんね。」
ヒデ「ん??」
私「私汚くなっちゃった。生きる価値もない。死んだ方がいいよね」
ヒデ「……何言ってんの!エミが死んだら俺だって家族だって友達だってみんな悲しむよ。そんな事言うなよ」
ヒデはまたギューッてしてくれる。やっぱりヒデはあったかい…。
私はタカシの事は何も言わなかったが、ヒデはタカシの「壊してやる」という言葉を思い出し、この時全てを悟った。
ヒデは学校に行った。
タカシ「ヒデ~おはよ。これ彼女の忘れ物」
タカシは私の鞄をヒデに渡した。
ヒデはこの時確信したらしい。
ヒデはキレてタカシに殴りかかった。玄関で大喧嘩。ガラスも数枚割る程だった。
リサも見ていたらしく、後から聞いたら物凄い喧嘩だったらしい。
先生に止められ、ヒデとタカシの親も呼び出された。
ガラス弁償。次喧嘩したら二人とも停学だと言われ、厳重注意で終わった。
ヒデが帰りにうちに寄ってくれた。
鞄も持って来た。
ヒデ「エミ?大丈夫?守ってあげられなくてごめん。ほんとごめん」
良く見るとヒデの顔は腫れている。目の上も切れてた。
私「顔どうしたの?」
ヒデ「ムカついて我慢できなくてアイツ殴ってやった。したら殴り合いになっちゃって…」
私「私のせいでごめんね」
ヒデ「エミのせいじゃない。悪いのはエミを守れなかった俺だから。もう二度とこんな事にならないようにするから」
私「これからも一緒にいてくれるの?」
ヒデ「当たり前じゃん。俺は何があってもエミのそばにいる」
ヒデ…ありがとう。
ヒデがいなかったら私はもうこの世にいなかった。
一週間は学校を休んだ。
バイトは辞めた。
ピッチから携帯に変えた。
鞄も捨てて、あの時の下着も捨てた。
あの事件以来、初めて学校に行く。
噂になってないか心配だった。
ヒデが私の家まで迎えに来てくれて、ニケツして学校に行った。
玄関でタカシと会った。
私は鳥肌がたって気持ち悪くなった。
タカシ「お二人さん。おはよう。エミもう大丈夫なの?赤ちゃん楽しみにしてっから」
ヒデ「お前いい加減にしろよ?」
タカシ「はいはい」
タカシは先に教室へ行った。
あれから約3週間…。
生理予定日を過ぎても生理が来ない…。
まさか…
ほんとに妊娠したんじゃ…
悩んで悩んで思い切って妊娠検査薬を買ってみた。
結果は陽性…
妊娠してしまった…
全てが終わりだと思った…
どうしよう…
あんな男の子供なんていらない…
意外と冷静だった私は本屋へ向かった。
妊娠の本を読んだ。
赤ちゃんは生きている…私が中絶すると罪もない赤ちゃんが死ぬんだ…
私のせいだ…
人殺しだ…
私も一緒に死のうかな…
まだ15歳だった私。
悩んで悩んで目の前が真っ暗になった。
気付いたら誰かが私を呼んでいる…
知らないオバサンの顔が目の前にある…
オバサン「お姉ちゃん!お姉ちゃん!しっかりして!大丈夫?」
私はオバサンが乗ってた自転車にぶつかったらしい。
私がフラフラ歩いていたのでオバサンは避け切れなかったようだ。
オバサン「どこか痛くない?病院行く?」
私「いいえ。大丈夫です」
オバサンは名前と住所と電話番号を書いた紙を私にくれて、タクシーを呼んで家まで送ってくれた。
帰宅後、出血…
血の量が多い…
お腹も痛い…
流産??
私はお母さんが帰宅してから全て話して病院に連れて行ってもらった。
医師「流れてますね。」
流産してた。
自転車にぶつかったせい?
私が中絶しようと思ったのが赤ちゃんに伝わったから?
私のせいで赤ちゃんごめんね…
ヒデにも正直に話した。
ヒデも泣いた…
終業式前。
学祭だ。
お祭り気分では無かったが、出席した。
高1の時に中退したケンタが奥さんと子供を連れて学祭に来た。
ケンタ「エミちゃんじゃん。〇〇(高校名)入ったんだね。タカシと仲良くしてる?」
ケンタはあの事件を知らない。
私「赤ちゃん可愛いね…」
流産を思い出して正直辛かった。
ケンタ「もうすぐ1歳なんだよ~。早いよな」
私「そうだね。じゃあまたね」
私はケンタの子供を見るのが辛くて、早くその場を離れたかった
夏休みに入った。
いつの間にかヒデとも1年4ヶ月。
まだエッチはしてない。
というかまだできそうもない…
エッチなんかしたらあの事件が鮮明によみがえる…
ヒデには本当に申し訳ない…
ヒデの事は大好きだけど、ヒデと私じゃ釣り合わない。
こんな汚い私にヒデは勿体ない…
そんな気持ちが芽生えてきた…
ヒデと花火大会に行く。二回目だ。
花火が終わった後は公園で話した。
私「ヒデ…別れよう」
泣きそうになるのを堪えながら言った。
ヒデ「何で?俺の事嫌いになった?」
私「……そうじゃないけど…」
ヒデ「なら俺は別れない。絶対離れない」
私「私なんかと付き合わなくたってイイ子いっぱいいるよ」
ヒデ「やだ。俺はエミがいい」
私「こんな汚い私でいいの?」
ヒデ「エミは汚くなんかない。そのままでいい。俺はエミが好きなんだから。エミが俺の事大嫌いにならない限り、絶対離さないから」
私はまた泣いてしまった。
新学期になった。
ヒデ達3年生は進路の最終決定をしなきゃいけない時期だ。
ヒデは悩んでいた。
大学進学…
ヒデの行きたい大学は市外。電車で1時間半くらいかかる。
通う人もいるが、その市の大学や専門に進学する人の7割は学校近くの学生寮やアパートで暮らす。
ヒデはこんな不安定な私を残しては行けないと悩んでいた。
ヒデ「俺さ、〇〇大学行こうと思うんだけど、こっちから通おうと思ってるんだ」
私「通うの大変じゃない?朝だって早いし、通学だけで疲れちゃうよ?」
ヒデ「だってエミ残して行けないし。心配だし、俺寂しいし。エミは寂しくない?」
私「寂しいけど…」
ヒデ「だろ?エミは俺がいないとダメだから(笑)」
私の事をここまで考えてくれてる…。嬉しかった。
- << 70 ところがヒデのお父さんが自宅通学に反対… 「せっかく進学するんだから、通学に時間をかけるのは勿体ない。その時間を勉強にあててもいいし、バイトしたっていいし、サークルに入ってもいいし。有意義に過ごしなさい」と言われたそうだ。 ヒデからお父さんの話を聞くと、お父さんは頑固で一度言い出したら絶対に意見を曲げないらしい…。 ヒデも何回も説得したが、ダメみたいだ…。 私「あっち住みなよ。私は大丈夫だから」 ヒデ「でも…」 私「学費や生活費出してくれるのはお父さんなんだし、お父さんの言う通りにした方がいいよ。ヒデも学校の近くで一人暮らしした方が楽だよ」 ヒデ「……うん。そうかもしれないけど…」
>> 67
ヒデ「俺さ、〇〇大学行こうと思うんだけど、こっちから通おうと思ってるんだ」
私「通うの大変じゃない?朝だって早いし、通学だけで疲れちゃうよ…
ところがヒデのお父さんが自宅通学に反対…
「せっかく進学するんだから、通学に時間をかけるのは勿体ない。その時間を勉強にあててもいいし、バイトしたっていいし、サークルに入ってもいいし。有意義に過ごしなさい」と言われたそうだ。
ヒデからお父さんの話を聞くと、お父さんは頑固で一度言い出したら絶対に意見を曲げないらしい…。
ヒデも何回も説得したが、ダメみたいだ…。
私「あっち住みなよ。私は大丈夫だから」
ヒデ「でも…」
私「学費や生活費出してくれるのはお父さんなんだし、お父さんの言う通りにした方がいいよ。ヒデも学校の近くで一人暮らしした方が楽だよ」
ヒデ「……うん。そうかもしれないけど…」
正直ヒデと離れて暮らすなんて考えられなかった。
本当は凄く嫌だった。
でも大学は将来に関わる大切な時期。我儘言ってヒデを潰したくない…
ヒデ「本当に俺がいなくても寂しくないの~?エミ寂しがり屋なのに?」
私「大丈夫!私意外と強いから(笑)」
私は強がった。本当はヒデの言う通り、人一倍寂しがり屋だ…。
ヒデが行くのは地元で一番人気の教習所。
当然生徒数も多い。
毎年この時期は高校3年生で溢れてる。
違う学校の子と簡単に知り合える。
実は私の兄は教習所で知り合った子と付き合ってる。
出会いがゴロゴロ転がってる。
兄の事があるから私は不安だった。
ヒデは浮気なんかする男じゃない。
でも私達の出会いはナンパ…。
可愛い女の子に言い寄られたら…コロッといってしまうかもしれない…。
それに私は汚い女…。
こんな女は実際捨てられて当然…。
不安だ。
モヤモヤする。
落ち着かない。
ヒデだけは失いたくない…。
私は馬鹿だ。
自分で勝手に不安になり、疑い深くなって嫉妬するようになる。
私「教習所なんて行かなくていいよ」
ヒデ「何で?ドライブとか楽しそうじゃん!」
私「ドライブなんてしなくていいよ」
ヒデ「急になしたの?何でそんな怒ってる?」
私「何でもない」
私は可愛くない女…。
ヒデは浮気なんかした事ないのに…。タカシの浮気の記憶が蘇る…
ヒデは教習所に通い出し、その話題が多くなるが、私は不機嫌になってしまう…
そんな自分が大嫌いだった。
ヒデ「今日ね~学科の時アツシの女友達と偶然一緒になって…急に話しかけられてビックリしたさ。」
その女友達がアツシの事が好きらしく、仲を取り持とうと思ったらしい…
不安しか見えていない私は当然気に入らない。
私「ふ~ん良かったね。女友達できて。大学行っても可愛い女の子たくさんいるだろうね?私のことなんか忘れちゃうんだろうね。そんなんだったら辛い思いしたくないし、大学行く前に別れてあげるよ」
言いたくもないことを言ってしまった…
ヒデ「エミは俺もタカシみたいに浮気すると思ってんの?」
私「男なんて綺麗な女が誘って来たらついていくじゃん」
ヒデ「それタカシのことじゃん。まだ引きずってんの?」
温厚なヒデを怒らせてしまった…
翌朝。
ヒデからメールが来た。
ヒデ「しばらく距離置こう」
私「わかった」
こんな自己中な私…
愛想つかされたのかな…
やっぱりヒデは私には勿体ない…
このまま別れようかな…
付き合って1年7ヶ月。
私達は距離を置くことになった。
学校で会ってもお互い話しかけなかった。
友達みんなに「別れたの!?」と聞かれる…
勿論タカシにも私達は別れたように見えていた。
タカシは昼休みに私の教室に来た。
タカシ「お前ら別れたの?俺のせい?」
私「違うよ。タカシには全く関係ない事だから」
タカシの顔も見たくない。浮気、レイプ、妊娠、流産の記憶が蘇り、苦しくなる…
タカシ「お前顔色悪いけど大丈夫か?」
私「だからタカシと私はもう他人なんだから気にしないでって言ってるでしょ!」
タカシ「そっか。ごめん」
タカシは居なくなった。
帰り、鞄の横に何かはさまってる…
ノートを破いたような紙きれ。
小さく折り畳んであるので開いて見た。
タカシからだった…
「あの時は本当にごめん。自分の気持ちばっかりだった。お前の気持ちなんか全く考えてなかった。冷静に考えたらかなり酷い事した。許してとは言わないけど、また友達から仲良くしたい。」と書いてあった。
私達が別れたと思い込んで隙間に入り込もうとしてる。
私はすぐにそう思って、手紙をくしゃくしゃにして捨てた。
今日は一人で帰った。
ヒデと遊ばないから帰っても何もする事がなく、また悩むだけだと思い、コンビニに酔って雑誌を立ち読みしていた。
そこにまたタカシが来た。本当にしつこい。
タカシ「手紙読んだ?」
私「捨てた」
タカシ「……ヒデお前と別れるって言ってた。ヒデがアツシと話してるの聞いた。好きな子できたらしいよ」
私「それほんと?いつ聞いたの?」
私は焦った…。
タカシ「さっきだよ。アイツは結局口先ばっかの男なんだよ。1年半も付き合っててわかんなかったの?」
タカシは真剣な顔で言う。
私はコンビニを出てカナに電話した。
カナの声が聞きたくなった。
カナとは違う高校に通う事になってから、あまり会えてない。
カナ「は~い。エミ?どうした?」
カナは元気そうだ。
私「少しでいいから会えない?」
カナ「いーよ!今日は真っ直ぐ帰るからうち来て」
私はカナの家に急ぐ。
久々の再会でカナに抱き付いた。
カナ「なかなか連絡できなくてごめんね。実は今ヤバくて…」
私「??」
カナ「私妊娠してるかもしれない…。」
私「えっ!嘘!彼氏は何て?」
カナ「彼氏に話したら堕ろせって…」
カナは今にも泣き出しそうだった。
私「はっ?ありえない。私が彼氏に話す」
自分の状況も忘れてカナの彼氏に腹がたつ。
カナ「いいよ。私遊ばれてたのかもしれない。男ってみんなそうだよね。ケンタも浮気したし、アツシは浮気ではないけど、面倒になったから私を捨てた。今の彼氏だってそう。妊娠って言葉出したら急に態度変えたんだよ…。もう男なんて信用できない」
私「そうだね…。私もヒデと別れるかもしれない。他に好きな子できたらしいよ…。タカシの事もあるし、男なんて信用するもんじゃないね…。」
カナ「えっヒデ君と別れるの?好きな子って何それ。信じらんない」
私「別にいいんだ。好きな子できたならもういい。多分教習所の子だし。私とヒデじゃ釣り合わないんだよ。それより赤ちゃん…どうするの?」
カナ「まだ彼氏以外には話してないんだけど、中絶は絶対したくないし、一人で育てようと思ってる。そのうち親にも話すつもり…」
カナとバイバイした後、カナに彼氏の話を聞いてやっぱり男は信用できないと思った…
何で男は簡単に女を裏切るんだろう…
12月。
とうとう冬休みに入る。
またクリスマスがある…。
去年のクリスマスは幸せだった。
私はまだペアリングをしたまま。もう外そう。クリスマスを境に付けなくなった。
この2ヶ月で私は4kg痩せた。ガリガリだ。
友達や親も心配してくれる…。
1月。
3学期が始まるが、3年生の登校日は1月末まで。2月は丸1ヶ月休みになり、3月1日が卒業式。
ヒデも4月には大学生になる。きっと3月末には引っ越してしまう…
もう二度と会えないかも…
急に寂しくなった。
きっとヒデは私から離れた方が幸せになれる…。
でもこのままでいいのかな…
私はヒデにメールする事にした。
私「元気?最近どう?」
ヒデ「何かあったの?」
絵文字もないそっけないメールが帰って来た。
私「好きな子できたんだってね。それなら言ってくれたっていいのに」
ヒデ「は?誰がそんな事言ったの?」
私「ヒデがそう言ってたのタカシが聞いたって」
ヒデ「またタカシ?俺の事は信じないくせにタカシの事は信じるんだな」
私「そういうわけじゃないけど、事実なんでしょ?」
ヒデ「もういいわ」
私「別れるって事?」
その後ヒデから返事は来なかった。
あっという間に1月が終わり、3年生は休みに入った。
別れるなら別れるって言えばいいのに…
中途半端なまま終わるのかな…
3月1日。
卒業式だ。
私達の高校は3年生とその保護者のみの出席で、1、2年生は休みになる。
本当にお別れなんだ…
そう思うと泣けてくる。
でも今更どうしようもない…
3月中旬。
ヒデからメールが来た。
ヒデ「今日学校終わったら時間ある?」
私「あるよ」
何だろう…。別れ話かな…。でもそれでスッキリするならキッパリ別れた方がお互いの為になる。忘れるキッカケになる。そう思って別れを覚悟した。
学校が終わり、公園で待ち合わせした。
ヒデが先に着いてた。
ヒデ「久し振り」
私「うん」
ヒデ「俺エミの事忘れようと思ってた。でも卒業式の日にタカシが『お前ら完璧に終わったんだよな?俺はこっちで就職するし。俺がエミもらっていいよな?アイツまんまと俺の嘘信じたし』って笑いながら話してきて、ムカついた。やっぱり俺はエミを忘れるのは無理だって思った。タカシなんかに渡せないって思ったんだけど…。エミはどう?もう続けていく気ない?」
私「私はもうヒデに嫌われたと思って忘れようとしてた。好きな子できたってのもタカシの嘘だったんだね…。疑ってごめんね。私は今でもヒデが好きだよ」
3月でヒデと付き合って2年。
この1年は色々あったし、すれ違いもあったけど、とても濃い1年だった。
ヒデはもうすぐ引っ越してしまう。
でもきっと大丈夫。
色々乗り越えて来たんだもん。
中距離だって乗り越えられる。
そう信じる事にした。
3月末。
ヒデが引っ越す前日。
ヒデの家で荷物をまとめるのを手伝った。
私が一昨年のクリスマスにあげたマフラーもあった。
荷物をダンボールに詰め終わり、部屋の物が少なくなった。
なんか寂しい。
私はヒデに抱き付いた。
私「行ったらやだ。寂しい…」
ヒデ「俺だって寂しいよ…」
私「私達なら大丈夫だよね?絶対離れないよね?」
ヒデは何も言わずにキスしてきた。いきなりでビックリした。
いつもより長いキスをした。
いつの間にか横になってる…
ヒデが私の胸に手を置いた。
ヒデ「あっごめん…」
ヒデはすぐに手を離した。
私「ううん、いいよ」
そのまま最後までした。
交際2年。初めて結ばれた。
いつかこの日が来た時、レイプの事を思い出さないか不安だった…。
でもヒデだから大丈夫だと信じて体を許した。
愛されてる…。
そう感じた。
引っ越し当日。
ヒデはお母さんの車に荷物を載せて引っ越す。
出発する時にメールすると約束した。
お昼を過ぎてもメールは来ない。
夕方やっとメールが来た。
ヒデ「もう引っ越し完了しちゃった」
私「えっ何で行く時メールしてくれなかったの?」
ヒデ「だってエミが寂しがると思ったから(笑)泣かれたら俺も寂しくなって行けなくなるもん」
私達は毎日メールする事を約束した。
ヒデは大学に入学し、私は高2になった。
月日がたつのは早い。
ヒデがそばにいないのは想像以上に寂しかった。
今まで以上に友達と遊んでいたけど、友達はみんな彼氏持ち。みんなの彼氏は地元にいる。
そばに彼氏がいないのは私だけ…
余計寂しくなる。
ゴールデンウィークにヒデは帰って来た。
1ヶ月ぶり。
1ヶ月はかなり長かった。
ヒデはお母さんの車を借りてドライブに連れてってくれた。
毎日会ったが、4日間は早い…。
ヒデが帰る時、駅まで見送りに行ったけど、また泣いてしまった。
駅で号泣…。
恥ずかしさもなかった。
次帰ってくるのは夏休み…。長いなぁ…。
ヒデは車を買う為にバイトしたいと言い出した。
私はヒデを信じて快く承諾した。
もう疑わない。
ヒデは浮気なんかしない。
そう自分に言い聞かせた。
7月上旬。
学校が終わって、校門を出た時、知らない女が話しかけてきた。
女「〇〇(名字)エミってあんた?」
私「そうですけど…」
全く見覚えがない人だった。コテコテのギャル車に乗り、腕と太股にはタトゥーが入っている。
女「私、タカシの彼女なんだけど」
私「タカシの彼女さんが私に何の用ですか?」
女「はっ?とぼけんなや。あんたタカシの元カノだろ?」
女はタバコの煙を私にかけてくる。
私「そうですけど、もう一切関わりもないので安心してください」
女「関わってるとか関わってないの問題じゃなくて、タカシの部屋にあんたの写真とかプリクラとか昔の手紙とかあってウザイんだよね。私は気に入らない元カノは許さないんだわ」
嫌な予感がする…
私「それは私にはどうにもできないので、タカシに捨てるよう言ったらどうですか?」
女「こらぁクソガキ。あんまりナメてると痛い目あうよ」
女は吸ってた煙草を私の腕に押しつけてきた。
私「痛っ!」
私は女の手を振り払った。
女は私の胸倉を掴み、張り倒して来た。
先生が騒ぎを聞き付けて女を追い払ってくれた。
怖い…
何で私がこんな目に合わなきゃならないの…
タカシなんてもう関係ないし、大嫌いなのに…
こんな時ヒデがそばに居てくれたら…
泣きたくなる…
煙草の火傷跡は今も私の腕に残っている。
この跡を見る度、当時を思い出す…
それからすぐにカナから連絡があり、カナの家に行った。
赤ちゃんが生まれたのだ。
赤ちゃんは小さくて可愛くて…
流産した事を思い出す。
私はこんな可愛い子を中絶しようと思ってたんだ…
自分が恥ずかしくなったと同時に、旦那がいなくても出産したカナを尊敬した。
私がとても小さい人間に思えた。
学校祭。
私の学校は学祭用のクラスTシャツを作る。皆、そのTシャツにポスカで友達同士でメッセージを書いたり、彼氏の名前を大きく書いたりする。
私も友達にメッセージを書いてもらい、「ヒデ」と書いた。
クラスの男友達にも書いてもらったけど、「タカシ」という名前の男友達がいて、それが誤解を招き、大変な事になるとは…
この時は思いもしなかった。
学祭にはあのタカシの彼女が来た。
また私を睨み付けて来る。
目を逸らした。
タカシ女「お前いい加減にしろや。Tシャツ!何それ?タカシ来たの?」
私「来てない。これクラスの友達」
タカシ女「ふ~ん。あんたちょっとこっち来てくれない?」
私「嫌です」
タカシ女「いいから来いや!ここで暴れるのとあんたがおとなしくあたしらについてくるのどっちがいい?」
脅された。
明らかに柄の悪い彼女たち…
周りは引いてる…
仕方なくついてった。
学校の裏側。
ほとんど誰も来ない。
タカシ女「あんたさ~生意気なんだわ。この間の仕返しさせてもらうね。」携帯を取られて真っ二つに折られた。ジャージも切られてパンツ丸見え状態…
タカシ女「すっきりしたわ~。二度とタカシの前に現れんなよ」
笑いながら去っていった。
携帯も壊され、友達に着替えを頼む事もできない…
どうしよう…
パンツ丸見えだし、このままじゃ出ていけない…
誰かに見つかるのも嫌だ…
なんでこんな事されなきゃいけないのかもわからず、泣きながら過ごした…。
息が苦しくなってきた。吸っても吸っても苦しい…
1年生の男の子が通りかかった。泣きながら苦しんでる私を見て話しかけて来た。
男「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
私「…苦しい…助けて」
余裕がなかった。手足もしびれて動けない…。
彼は焦ったようで、先生を呼びに行こうとしたのか、離れて行こうとする…
私「いか…ないで…」
一人にされるのが嫌だった。死んじゃうかもしれないと思い、怖かった…。
彼は私をお姫様抱っこして保健室まで連れてってくれた。
苦しくてジャージが破けてる事も忘れていた。
軽い安定剤みたいなものを保険の先生から貰い、少し休みなさいと言われて横になったら寝てしまった…。
気がついた。
先生「大丈夫?何かあったの?」
先生は心配そうな顔をしている。
私「ちょっと色々あって…」
さすがにジャージ切られたとは言えなかった。
先生は着替えのジャージを貸してくれた。
先生「さっき1年生が運んでくれたんだよ。覚えてる?後でお礼言っときなよ」
先生は彼の名前とクラスを教えてくれた。
私は正直苦しくていっぱいいっぱいであまり覚えていない。顔もうっすら思い出せる程度。全く知らない子だった。
次の日。
昨日の子にお礼を言おうと思い、探した。彼の名前は“ユウヤ”だ。
私「昨日は迷惑かけてごめんね。助けてくれてありがとね」
ユウヤ「いえ。もう大丈夫ですか?」
私「うん。多分」
……
折られた携帯のデーターは飛んでしまった…。
幸いヒデの番号は覚えていたので、新しい携帯ですぐに連絡した。
もう夏休み。
ヒデが帰って来る。
楽しみで仕方ない。
夏休み。
ヒデが帰って来る日まであと2日。
ガッカリするメールが来る…
ヒデ「バイトの休み、バラバラでしか取れなくなったから帰れないかも…。ごめんね」
私「え?何で急に?花火は?」
ヒデ「無理かも…」
毎年行ってた花火…今年はいけない…。
ガッカリだ…。
何で急に帰れないなんて言うんだろう。酷い。
カナは赤ちゃんがいるし、高校の友達はみんな彼氏がいる…。
つまんない。
寂しい。
ヒデは私が酷い目に合ったのも知らないくせに…。
バイトばっかり。
きっと私に会いたくないんだ。
スネた私はメールを返さなかった。
花火当日。
やっぱりヒデは帰って来ない。
どうしても会いたくて我慢できない私は、ヒデのアパートにアポ無しで行って、ビックリさせようと思った。
電車の中でドキドキしてる。
ヒデビックリするかなぁ。喜んでくれるかなぁ。
ヒデのアパートの最寄り駅に着き、足早に歩く。
部屋にヒデはいなかった。仕方なく外で待つ。
1時間後…。
ヒデは帰って来た。
女と一緒に…。
私は反射的にヒデをひっぱたいて走り去った。
話も聞かずに…。
急いで地元へ向かう電車に乗り、泣きながら帰った…。
電車だし、ヒデから何度も電話が来てたので、携帯の電源は切った。
地元の駅に着いた。
もうすぐ花火が始まる。
私は家に帰りたくなくて泣きながら街をブラブラ一人で歩き、ベンチに座った。
一人で花火みるのもいいかな…。
その時、誰かが隣りに座った。横を見るとユウヤだ。
ユウヤ「また泣いてるんすか?大丈夫?」
私「大丈夫。何でもないから」
ユウヤ「あんまり無理するとまた体調悪くなっちゃいますよ。誰かと待ち合わせっすか?」
私「ううん。一人で見るのもいいかなぁって」
ユウヤ「一人じゃ寂しくないっすか?」
私「まぁね。でも誰もいないから。やっぱ私帰るわ。またね」
急に寂しさが押し寄せてきて耐えられなくなった…。
ユウヤ「待って」
腕を掴まれた。
私「?」
ユウヤ「俺で良かったら一緒に見よう」
私は一人でいる寂しさに耐えられず、ただ誰かそばにいて欲しくて、ユウヤと一緒に花火を見た。
ユウヤは何も聞かず、励ましてくれて、帰りも家まで送ってくれた。
そしてユウヤは自分のアドレスと番号を私に教えてくれて、いつでも相談のるからと言ってくれた。
でも私のアドレスや番号は聞いて来なかった。
帰宅後、携帯の電源を入れる。センター問い合わせしてメールを確認する。
ヒデから4件のメールが来てた。
ヒデ「さっきの何?何で手あげんの?」
ヒデ「何で電源切ってる?何で逃げんの?」
ヒデ「メールでいいから返事して」
ヒデ「何で怒ってるかわかんない」
最後のメールにカチンときた。
何で怒ってるかわからない?
私が花火楽しみにしてるの知ってて断って、女といたくせに?
やっぱり浮気しない男なんていないんだ。
私はこの思いを電話でヒデにぶつけた。
ヒデと一緒にいた女は大学の友達。彼氏にフラれ、復縁の事をヒデに相談していたというのだ。
でも数ヵ月会ってない私よりそっちを優先する意味がわからず、私もかなり怒ってしまい、すれ違う…
醜い言い合い…
大喧嘩になった。
そしてヒデが信じられない言葉を発する…
「めんどくせぇ」
私は耳を疑った。
今のヒデが言ったの?
私の聞き違い?
いくら怒っていたとはいえ、ヒデがそんな事言うなんて…
私はそのまま電話を切った。
あまりにもショックだった。
ヒデは変わってしまったのか…
もう私が知ってるヒデじゃない…
たった数ヶ月で遠くに行ってしまったようだ。
色々な事を思いだし、さらに落ち込む。
私を必要としてくれる人なんていない…
みんな裏切る…
もういい。
私が死ねばみんな喜ぶだろう。
私はカッターで腕を切った。血がにじみ出る。何回も切り付けた。
不思議と少し気持ちが落ち着いたような気がした。
夏休みも終わりに近付いた頃、工事現場の横を通った。
見覚えのある顔が…
タカシだ。
休憩中でコーヒー飲みながら煙草を吸っていた。
タカシ「エミ!」
私「久し振り。彼女とは順調?」
タカシ「彼女?彼女なんかいないけど」
私「え?タカシの彼女だっていう女に色々されたんだけど…」
タカシ「は?誰よ?」
私は彼女の特徴を伝えた。何度も告られて付きまとってくる奴らしい。
勝手に私に嫉妬して仕打ちしてきたのだった…
タカシ「お前ヒデと会わないの?帰って来てるって話聞いたけど」
え?何それ…
帰って来てる?
聞いてない。メールも来てない。
ヒデの家に行った。
お母さんが出て来て家に入れてくれた。
ヒデの部屋に向かう。
やはりヒデは帰ってきていた。
ヒデは誰かと電話していた。
私の顔を見て焦って切った。
また女か…
私「何で帰って来てる事言わなかった?」
ヒデ「エミにひっぱたかれた意味がわからんから」
私「あの女だれなの?」
ヒデ「だから大学の友達だって」
ダメだ…。何度話しても同じ事の繰り返し…。私が信用するか、もうきっぱり別れるかするしかないんだ…。
ヒデ「腕なした?」
私「何でもないよ」
ヒデ「見せろよ」
腕を掴もうとしてくる。
私「やだ。触らないで」
私はいつの間にかヒデにも本音を話せなくなっていた…。
タカシの女と名乗る奴からの仕打ちも、腕の傷の訳も、何も話さなかった。
ヒデ「お前変わったよな。俺に何も話してくれないし」
私「変わったのはヒデだよ。大学で何かあったの?おかしいよ」
ヒデ「何もない」
ヒデは何か隠してる。私はそう思った。
すれ違いばかり…。
いくら話してもわかりあえない…。
私「何か隠してるでしょ?浮気してんの?」
ヒデ「そんな事するわけないじゃん。まだ疑ってんの?俺はそれどころじゃねーんだよ。いちいち詮索すんなよ。お前といるの疲れた。もう別れて」
ヒデ…やっぱり変わった…。
私「私ももういい。ばいばい」
私は涙をこらえながらそう言ってヒデの家を出た。
また呼吸が乱れてくる。苦しくなりそう…
私はすがる思いでユウヤに電話した。
私「苦しい…」
ユウヤ「え?今どこ?」
ユウヤはたまたま近くの友達の家にいて、すぐに来てくれた。
ユウヤ「大丈夫?苦しい?病院行く?」
心配してくれる…
優しくされれば、される程涙が止まらない。
私「もう死にたい…」
本音を漏らした。
ユウヤ「何で?何があったのか話してみ?吐き出せば楽になるよ」
私はタカシとの事、ヒデとの事を全て話した。
誰でもいいから聞いて欲しかった…。
ユウヤは黙り込む。
さすがに引かれたかな…。
年下の子にこんな話しするなんて私どうかしてた…。
私「ごめん。こんな話。引くよね」
ユウヤ「そうじゃなくて。歳も1コしか違わないのにそんな重い物背負ってたんだって思ったら俺まで辛くなって来て」
私「ごめんね…」
ユウヤ「あんまり頑張りすぎちゃダメだよ。この世にいらない人間なんて一人もいないよ。俺でよければいつでも話聞くから」
ユウヤは野球部。
男らしい。
年下なのに頼れる男…。
ユウヤに感謝した。
家に帰った。
ユウヤのおかげで少し冷静さを取り戻していた。
兄も最近様子がおかしい私を気にしてくれていた。
兄は地元では結構有名なヤンキーだった。
顔も広い。
兄「お前ヒデユキとまだ付き合ってんの?」
私「今日別れたよ」
兄「今日?今日まで付き合ってたのか?」
私「そうだけど…」
兄「アイツ、ホストやってんだよ。ヤバイ奴らとつるんでんだよ。もう絶対近寄るな。連絡来ても無視しろ」
ホスト?ヤバイ奴?
何で…?
ヒデはヤンキーだったけど一途で優しくていつも私の事を考えてくれてたのに…
私「何でホストなんかやってんの?」
兄「そこまでは知らないけど、とにかくもう近付くなよ」
何か訳があるに違いない…
納得いかない…
理由を知りたい。
私はアツシに連絡してみた。
ヒデと仲がいいアツシなら何か知っているはずだ…
何回か電話したけど出ない…。
深夜アツシから電話がかかってきた。
アツシ「エミちゃん。ごめんね。こんなつもりじゃ無かったんだ…」
私「何が?どういう事?」
アツシ「俺女妊娠させちゃって、中絶費用稼ごうとしてホスト始めたんだけど…。辛くて…。それで辞めたいって話したら、変わりの奴紹介したら辞めさせてくれるっていうから…。ヒデの番号教えた」
私「何でそんな事すんの?ヒデには関係ないでしょ?今すぐ何とかしてよ!」
アツシ「ごめん…。本当にごめん」
そう言ってアツシは電話を切り、その後アツシが電話に出てくれる事はなく、数日後には解約されていた…
私にはどうする事もできず、お兄ちゃんに話した。
私「ヒデはアツシにハメられたんだよ。お願い。ヒデを助けて」
ヤ〇ザの友達がいるお兄ちゃんなら何とかしてくれると思った…
兄「……。悪いけど俺は関わりたくない。もう忘れろ」
私「お願い。私もバイトして〇〇君(ヤ〇ザの友達)にお金払うから」
兄「やめとけ。お前は関わるな」
兄は首を縦にふってくれない…。
私はヒデにメールした。
私「さっきはごめん。話があるんだけど」
ヒデ「もう無理。エミとは別れる」
私「別れてもいいから最後にもう一度だけ会いたい…」
ヒデ「だからもう無理だって。顔も見たくねぇ」
何もできない…。
無力な私…。
ヒデは私を助けてくれたのに…
ヒデとはこの日を境に連絡が取れなくなった
3年生になった。
ヒデとは連絡がとれないまま…
一度前に住んでたアパートに行ったが、空き家になってた…
ユウヤは夏の甲子園に向けて頑張っている。
毎日練習が終わったらユウヤからメールが来るのが日課になっていた。
ユウヤ「明日練習終わったら少しでいいから時間ある?」
私「あるよ」
次の日。
ユウヤはユニフォーム着たまま、汚れた格好できた。
私「お疲れ」
ユウヤ「ほんと疲れたわ~。」
ユウヤ「もし甲子園行けたらどうする?」
私「すごいと思う!」
ユウヤ「そしたら何かご褒美ちょうだい」
私「いいよ。何か欲しいものあるの?」
ユウヤ「付き合って」
私「どこに?」
ユウヤ「俺と」
ビックリした。
ユウヤが私を好き?
何で?
ユウヤは私とは付き合わない方がいい。
汚くて面倒な女だから…。ユウヤには幸せになってほしい
返事をはぐらかしたまま、バイバイした。
県大会の準決勝まで行ったが、負けてしまった。
ユウヤは頑張った。
褒めてあげたい。
でも付き合う事はできない。
私のこんな人生にユウヤを巻き込むわけにはいかない…。
ユウヤは私の目の前で泣いた。
よっぽど悔しかったんだろう…
私もそっと抱き締めた。
夏休みにはまた花火がある。
高校最後だ。
カナの赤ちゃんも1歳過ぎたし、カナ誘って一緒に行こうかな…。
ユウヤに誘われた。
ユウヤ「甲子園は無理だったけど、頑張ったんだから花火くらい付き合ってよ」
ユウヤと一緒に行く事にした。
ユウヤにリクエストされてたので浴衣を着て行った。
ユウヤ「めっちゃ可愛いじゃん!似合う」
会場の方まで行ったので混んでてはぐれてしまいそうだ。
ユウヤに手を引かれ、ドキドキしてしまった。
この時気付いた。
私はユウヤを好きになりかけてる…
ダメ。絶対にダメ。
自分の気持ちを押し殺そうとしていた。
ユウヤは純粋で可愛い。
自分の事はあまり話さないユウヤの事が気になる。
もっと知りたい…。
花火が終わった後、ぼんやり海を眺めていた。
ユウヤ「この間も言ったけど、俺エミちゃんと付き合いたい」
私「ダメだよ。ユウヤにはもっといい人が見つかるよ」
ユウヤ「何で?エミちゃんは俺の事嫌い?年下は無理?」
私「そういう事じゃなくて。こんな汚い女やめなさいって言ってるじゃん」
ユウヤ「俺は全部受け止めるよ。全部含めてエミちゃんじゃん。じゃあ決まりね」
私は断れなかった。
情けない。
ユウヤは練習が終わってから毎日会いに来てくれる。
2学期が始まってからも同じだった。21時に終わるのに、疲れた顔もせず、会いに来てくれた…。
私も進路の最終決定の時期…。
ユウヤと離れたくない気持ちが強くなる…
私の希望の大学はヒデが行った大学の近くにある…。
通おう。
中距離なんて無理だ。
もう同じ失敗はしない。
ユウヤを大切にしよう。
ユウヤに話した。
凄く喜んでくれた。
素直に喜べるユウヤはやっぱり可愛い。
愛しくて仕方ない。
私は推薦で大学に合格した。
残り少ない高校生活…。
色々な事があったなぁ。
勿論楽しい事もあったけど、傷つく事の方が多かったかな…。
前を向かなきゃ。
大学入学する時には今までの私とサヨナラしようと決めた。
クリスマスも大晦日もユウヤと過ごした。
「来年も一緒に過ごそうね」と約束した。
2月。
私は教習所に通い始めた。
そこで思いがけない人と出会う事になる…。
ヒデの弟…。
何度か会った事はあったが、高校も違ったし、話をした事はない。
むこうから話しかけて来た。
ヒデ弟「エミちゃんだよね?兄貴と付き合ってた…。」
私「ヒデの弟だよね?」
ヒデ弟「兄貴から連絡とかくる?」
ヒデは私と別れた後、しばらくは実家にマメに連絡してたようだが、最近は全く来なくて、かけても留守電ばかりらしい…。
年末年始も帰って来なかったようだ。
ヒデがホストやってる事は知らないようだ…。
言おうか迷ったが、その日は言わなかった。
ヒデの弟とはよく学科で一緒になってた。
もう卒検も近くなり、ホストクラブで働いてる事を言おうと決めた。
私「あのさ、この間言いそびれたんだけど、ヒデホストやってたよ。今は知らないけど、私と付き合ってる時からやってたみたい」
ヒデ弟「ホスト?何で?兄貴が?」
私「詳しくは知らないけど友達に利用されて始める事になったみたいだよ…」
ヒデ弟「……。変な事になってなきゃいいけど…」
家族ともほとんど連絡取らないなんて何かあったんだろうな…と私は思った。
私が心配しても何もならないし、考えないようにしようとしていた。
卒業式。
友達もそれぞれ進学、就職してバラバラになる。
高校生活を振り返るとカナ以上の友達はできなかった。
だから泣くほど寂しい思いはしなかった。
こうして色々あった高校生活は幕を閉じた。
大学入学。
ユウヤと付き合って8ヶ月になってた。
今でもヒデがどうしてるのか少し気になってた。
私は金曜日だけ居酒屋のビラ配りのバイトをし、終電で地元に帰る。
大学で仲良くなった子はアヤ。アヤは大学の近くに住んでいる。
ある日、学校帰りにアヤと近くのマックに行った。ガラス張りなので外が見える。
見覚えのある横顔が目に止まった。
ヒデ??
近くの大学に通っているんだからここにいても不思議はないが…。
違うかもしれない。
きっと違う。
そう言い聞かせた。
今のヒデを知るのがこわかった…。
アヤとはよく恋愛の話しになるが、レイプや妊娠、流産の事は話さなかった。
軽蔑されるのが嫌だったから…。
アヤは美人でスタイルもいい。
背も高く、モデルみたいだ。
アヤと一緒にいるとよくナンパされる。
でも今は彼氏はいないらしい。
金曜日バイトの日。
私はチラシを配っていた。4時間黙々とチラシを配る。
ここは繁華街。居酒屋やキャバクラ、ホストクラブなどが数多く存在する。
ユウヤは私のバイトのことを心配してくれていた。
GWになり、ユウヤとデートする。
実はまだキスすらしてない。もう9ヶ月も付き合ってるけど…。
私の過去を聞いて遠慮してるのだろうか…。
でも不満は無かった。
ユウヤとは金曜日以外、少しの時間だけでも毎日会うようにしていたし、おはようメールとおやすみメールは欠かさなかった。
ユウヤはあまり口には出さないけど、私に対する愛情は伝わって来る。
私もユウヤが大好きだ。
GWも終わり、アヤが一人暮らししてる家に泊まる事になった。
アヤと語り合うのが楽しみだった。
アヤ「私彼氏できたんだよ」
私「えっおめでと~!いつから?相手誰?」
私は嬉しかった。
アヤ「一昨日。このアパートに住んでる人なんだけど、エミにも会って欲しくて、これから来てもらう事になってるんだ。黙っててごめんね」
アヤは恥ずかしそうに言った。
数分後、チャイムが鳴った。
ドキドキする。
彼氏とは…
ヒデだった……
ヒデ…。
やっぱりマックで見たのはヒデだったんだ。
人違いなんかじゃなかった…。
私「ヒデ!?」
ヒデを見た瞬間思わずそう言ってしまった…。
アヤ「あれ?知り合い?」
ヒデ「同じ高校の後輩。俺地元〇〇(市)だから」
ヒデは私と付き合ってた事は言わなかった。
だから私もアヤを傷つける事になると思い、言わない事にした。
三人でお酒を飲む。
ヒデは外見も変わったけど、中身まで変わってた。
話す内容が昔とまるで違う…。
ずっとアヤにくっついてる。
二人の馴れ初め話を聞いてるうちに、苦しくなってきた…。
まただ…。
苦しい…。息ができない…。吸っても吸っても苦しい…。
動けなくなり、手も痺れてこわばる私を見てアヤが救急車を呼んだ。
親に連絡してくれると言って、アヤは私の自宅に連絡した。
病院に着いた頃には少し落ち着いていた。
ベッドに寝かされ、看護師さんに少し休みなさいと言われ、少しお酒が入っていたのもあり、少し寝てしまった。
怒鳴り声で目が覚めた。
カーテンの向こうで怒鳴り声が聞こえる。
兄だ。
その時父は単身赴任、母はちょうど夜勤で居なかったので、兄が高速を飛ばして来てくれたのだ。
兄「お前どんだけエミを振り回せば気が済むんだよ!?」
ヒデ「すいません…」
兄「すいませんじゃねーだろ!2年以上付き合った女裏切っといてまた女か?よくエミの前に出て来れたもんだな」
ヒデ「……。」
兄とヒデは一端外に出ていった。
アヤ「エミ気がついた?大丈夫?」
私「アヤ色々ごめん」
アヤ「エミ、ヒデと付き合ってたんだね…。二人とも何も言わないから気付かなかった。私馬鹿だね」
私「黙ってて本当にごめん…言えなかった…」
アヤ「……。2年って長いね。もう連絡とか取って無いの?」
私「もうずっと連絡なんて取ってないよ」
アヤ「もう自信無くなった…」
兄とヒデが戻って来た。
兄「エミ帰るぞ」
私は再度アヤに謝り、その日は自宅に帰った。
帰りの車の中。
兄「エミあいつの事まだ好きなのか?」
私「好きじゃないよ。私にはユウヤがいるんだから」
兄「そうだよな。アイツ土下座までして俺に謝って来た。色々事情あったみたいだな。でももうあの世界にドップリ浸かってる。もう絶対に関わるなよ」
私「……うん」
事情…。
なんだろう…。
でももう気にしない。
それより私とアヤの仲が壊れてしまうんじゃないかと心配だった…。
学校に着くと一番先にアヤに謝った。
私「おはよう。迷惑かけてごめんね」
アヤ「……」
無視されてしまった。
ヒデに何か聞いたのか…。
自業自得だけど…。どうしよう。
帰宅途中、アヤの事で頭がいっぱいだ。
ユウヤに会いたくて早く帰った。
地元の駅に着いてユウヤにメールする。
ユウヤは練習中だ。
メールが返ってくるわけがない。
とりあえず家に帰った。
大学の友達から一通のメール。
“マイ”だ。
マイ「アヤから聞いたけど、あんた最低だね。もう話しかけないでね」
??
私は意味がわからなかった。どういう事?
私「確かに私最低かもしれないけど、アヤから何聞いたの?」
マイ「そんなの自分が一番わかってんじゃないの?いちいち聞くな。人の彼氏寝取ったくせによく学校来れるよな。ずうずうしいし、未練がましい」
寝取った?私が?
そんな事してない…
私「アヤの彼氏は私の元彼だけど、未練なんかないし、寝取ってなんかない」
マイ「嘘つき。ほんと呆れる。最低。もう学校来るな。顔も見たくない」
マイはアヤと高校から一緒で、アヤの事を信じ切っている…
私はまた不安定になり、近くにあったハサミで腕を切った。
切っても切っても満たされない。
血が滲み出て来る。
携帯が鳴ってる。
もうどうでもいい…
泣きながら何十回も切り続けた…
少し冷静になった時、携帯を見た。
アヤからのメールだった。
アヤ「直接言おうと思ったけど、言えなかったからメールにした。エミの過去はヒデから全部聞いた。何で過呼吸になったかもわかった。同情はするけど、住む世界が違う。正直汚い。もう近寄らないで」
もう終わりだ…。
本当に死んでしまいたいと思った。
「汚い」…
自分ではよくわかってる。
でも他人に言われるのがこれほどショックだったとは…
薬箱をあさる。
何でもいいから大量に飲めば死ねると思い、頭痛薬として飲んでる病院から処方された鎮痛剤を50錠くらい夢中で飲んだ…
意識が遠のく…
死ねる…
みんなバイバイ。
ユウヤの声で目が覚めた。
5時間くらい眠っていたみたいだ。
母は帰宅してたが、呼んでも返事がないので部屋で昼寝してると思っていたみたいだ。
そこでユウヤが来たので部屋にあげたそう。
ユウヤは私の部屋にあった鎮痛剤を飲んだ後と水、腕の傷を見て全てを悟ったようだ。
ユウヤ「大丈夫?良かったぁ~」
ユウヤが抱き締めてくれた。
ユウヤ「何かあったの?」
私「うん。色々とね…。もう私なんか死んだ方がいいと思って…」
ユウヤ「ごめん。ここまでなる前に気付いてあげられなかった…。ごめんね。」
私「ユウヤのせいじゃないよ…」
ユウヤ「いや俺のせいだよ。一番そばにいるのは俺なんだから」
ユウヤと話してると少し落ち着けた。
明日もう一度アヤ達と話してみよう。
前向きになれた。
次の日。
学校に行った。
私「アヤ。本当にごめん。もう話したくもないかもしれないけど、少しだけ話聞いてくれない?」
アヤ「……」
マイ「うわぁ。懲りないね。あんたの言い訳なんか聞きたくもない」
そう言ってアヤとマイは離れていってしまった。
それからしばらくアヤとマイとは話せない毎日が続き、学校で私の噂が広まった。
後ろ指さされて偏見の目で見られる毎日…。
耐えられずに毎朝、学校に行く前には吐き、体に力が入らなくなり、とうとう登校拒否になってしまった…
学校に行かないまま夏休みに入ってしまった。
学校を辞めようか悩んでいた。
母もそんな私を気分転換に連れ出してくれた。
ユウヤも3年生なので野球は引退。時間が出来て、夏休みは毎日ずっと私のそばにいてくれた。
夏休みも終わり、まだ学校へ行かない私。
学校から家に連絡が来た。
両親とも話し、学校を辞める事にした。
学校に荷物を取りに行った。
短い大学生活は終わった。
その日、アヤからメールが来た。
アヤ「学校辞めたんだってね。私エミに嫉妬してた。ヒデはエミの事全部知ってて。羨ましくなった。ヒデももう夜の仕事辞めて地元に帰るみたい。私振られたんだ。良かったら一回ヒデに連絡してやりなよ。元気でね」
と書いてあり、ヒデの番号とアドレスも書いてあった。
アヤとは仲良くはなれなかったけど…喧嘩別れで終わらなくて良かった。
ヒデに連絡する気はさらさら無かった。
私は学校を辞めてしまったので働こうと思い、仕事を探した。
人と関わる事が苦手になってしまった私は、接客業は避け、工場の面接を二つ受けた。
1社は落ちたが、1社は採用してくれて仕事が決まった。
8~17時で日曜日と隔週土曜日が休みだ。
新しい環境で不安もあったけど、楽しみでもあった。
両親もユウヤも喜んでくれた。
12月。
仕事にも慣れて来た。
ユウヤの就職も決まり、特に問題もなく落ち着いた日々を過ごしていた。
ユウヤも地元の別の工場に就職した。
日勤と夜勤の交代制。日曜と隔週土曜が休み。
私の仕事は日勤のみだからユウヤが夜勤の週は会えないけど、日勤の週と週末は会える。
もうすぐユウヤも社会人。
このまま順調にいくと思ってた。
ユウヤと付き合って1年4ヶ月。
ユウヤは野球ばかりでバイトしてなかったのでお金がない。
クリスマスプレゼントはお互い用意せずに一緒におそろいの携帯ストラップを買いに行った。
一応形だけでもとユウヤのストラップは私が、私のストラップはユウヤが支払いをした。
その後割り勘でファミレスで食事をしていっぱい話をした。
その後DVDを借りて、二人で私の家に行った。
母がケーキを出してくれた。
ケーキを食べながらDVDを見ていた。
DVDが終わった。
ユウヤ「そろそろ帰るね。家着いたらメールすんね」
私はなんだか急に寂しくなった。
私「もう帰っちゃうの?」
ユウヤ「?」
私「もう少し一緒にいて」
ユウヤ「わかった。いいよ。甘えん坊エミになった!」
ユウヤが私にくっついてきた。私もギューってした。
ユウヤ「ごめん。もう我慢できない。チューしていい?」
私「いいよ」
いきなりキスしてくるのではなく、聞いてくるとこがユウヤらしい。
キスすらしなかった1年4ヶ月。
高校生の男の子なのに珍しい。大切にされてると実感出来た日だった。
12月末。
仕事も正月休みに入った。
31日の夜からユウヤと初詣に行った。
神社はかなり人が多かった。
はぐれないように手を繋いで歩く。
お願い事はもう決まっていた。
“ユウヤとずっとずっと一緒にいられますように”
“ユウヤの仕事がうまくいきますように”
そう願った。
帰ろうとしていた時。
人混みの中に…
ヒデ??
すぐに人に紛れて見えなくなった。
アヤがメールで言ってたように、ヒデはこっちに帰って来てるのか…?
人でよく見えなかったし、人違いかもしれないと思い、気に止めてなかった。
正月休みも終わり、平凡な毎日に戻る。
何ごともなく仕事をし、ユウヤと会う毎日。
平凡ながら毎日幸せだった。
その幸せは長くは続かなかった。
また精神的に不安定な日々を送る事になるとは…
- << 152 ある日。 ユウヤとバイバイしてから家に帰ると、家の前に誰か座ってる…。 ヒデ? ヒデ「久し振り。兄貴に金返しに来たんだけど、兄貴いないみたいだから待ってた」 私「……」 正直会いたくなかった。ヒデと会えばまた心が崩れるから…。 ヒデ「元気だった?アヤと色々あったんだよな?なんかごめんな」 私「もう気にしてないからいいよ。ヒデに謝られても困る」 ヒデ「だってそれで大学辞めたんだろ?アヤからも聞いたし、兄貴からも聞いた。」 私「そうだけど…。でも今幸せだから本当にもう気にしてないから」 兄が友達に送られて帰って来た。 ほろ酔いだった。 兄「ヒデ?どうした?」 ヒデ「お金を返しに来ました」 兄「あ~もういいのに。それより飲みに付き合って。エミも行くぞ」 私は断ったけど、酔っ払った兄に無理矢理連れて行かれた。
- << 153 近所の居酒屋に行った。 兄はかなり上機嫌。 ヒデに色々聞き出していた。 兄「もうこっち引っ越したんだろ?」 ヒデ「はい」 兄「新しい彼女できたんだって?」 ヒデ「え?できてないっすよ」 兄「だってお前彼女の名前彫ったって聞いたけど」 ヒデ「いや、彼女じゃないんで…」 兄「ちょっと見せろよ。俺も入れっかな」 兄はヒデのジャケットを脱がせて、腕を出させた。 ヒデ「やめてくださいよ~。恥ずかしいし」 ヒデの腕を見て唖然とした。 私の名前が入ってた…。 なんで? 意味がわからない。 ヒデも気まずそうに私の顔を見る…。 兄「エリ?誰だそりゃ~」 相当飲んで、酔っ払っていた兄は読み間違えた。 兄「俺今日彼女んち泊まるわ~」 そう言い出して彼女に電話して迎えに来てもらって、行ってしまった…。 居酒屋の前に取り残された私達。 気まずい…
- << 154 来る時は三人でヒデの車で来たので、私は歩いて帰ろうと思った。 私「じゃあ私も帰るね。ばいばい」 ヒデ「待ってよ。送ってく」 いいと言ったのに、20分も説得されて仕方なく車に乗った。 ヒデ「さっきの…。勝手に名前使ってごめん」 私「……」 ヒデ「困るよな。エミはもう彼氏いるし…。でも俺決めたんだよね」 私「?何が?」 ヒデ「あっちにいた時は自分を見失ってた。色んな女とやった。アヤとも真面目に付き合ってたわけじゃないんだ。お前とは全然違うんだよ」 私「だから何が?」 ヒデ「俺はお前じゃなきゃダメだってわかった。他の女をお前と重ねて見てた。これは一生変わらない。だから名前まで彫ったんだ」 私は何て言っていいのかわからなかった…。 私じゃなきゃダメ? 結局は捨てたくせに?
- << 155 私「自分勝手すぎるでしょ。今更何なの?遅いよ」 ヒデ「ごめん。でも本当にこの気持ちは変わらないし、どうしようもない。彼氏いても俺は俺で頑張るから」 私「迷惑だからやめて。私にはユウヤいるから」 そのままバイバイした。 不安だ…。 今のヒデなら何するかわからない…。 ユウヤとの仲を壊されたくない…。 ユウヤを不安にさせるのが嫌で、ユウヤにはヒデと会った事は言わなかった。 悲劇の幕開けだった…。
- << 156 次の日の朝。 1通のメール。 「おはよ~!今日も仕事頑張れよ。夜また会いに行くから」 知らないアドレスだった。 ヒデだ…。 きっとアヤから聞いたんだ…。 私は無視した。 仕事が終わり、ユウヤの家に行った。 そこでまたメール。 「もうそろ行くね!」 ユウヤ「誰?」 私「…カナ」 嘘をついてしまった。 家に帰るとやはりヒデが家の前にいた…。 ヒデ「遅いよ~!彼氏といたの?」 私「ヒデに関係ないじゃん。迷惑だからメールも待ち伏せもやめて!」 ヒデ「いいじゃん。俺の勝手じゃん」 私は無視して家に入った。 その後も真夜中までヒデはうちの前にいた。
>> 148
正月休みも終わり、平凡な毎日に戻る。
何ごともなく仕事をし、ユウヤと会う毎日。
平凡ながら毎日幸せだった。
その幸せは長く…
ある日。
ユウヤとバイバイしてから家に帰ると、家の前に誰か座ってる…。
ヒデ?
ヒデ「久し振り。兄貴に金返しに来たんだけど、兄貴いないみたいだから待ってた」
私「……」
正直会いたくなかった。ヒデと会えばまた心が崩れるから…。
ヒデ「元気だった?アヤと色々あったんだよな?なんかごめんな」
私「もう気にしてないからいいよ。ヒデに謝られても困る」
ヒデ「だってそれで大学辞めたんだろ?アヤからも聞いたし、兄貴からも聞いた。」
私「そうだけど…。でも今幸せだから本当にもう気にしてないから」
兄が友達に送られて帰って来た。
ほろ酔いだった。
兄「ヒデ?どうした?」
ヒデ「お金を返しに来ました」
兄「あ~もういいのに。それより飲みに付き合って。エミも行くぞ」
私は断ったけど、酔っ払った兄に無理矢理連れて行かれた。
>> 148
正月休みも終わり、平凡な毎日に戻る。
何ごともなく仕事をし、ユウヤと会う毎日。
平凡ながら毎日幸せだった。
その幸せは長く…
近所の居酒屋に行った。
兄はかなり上機嫌。
ヒデに色々聞き出していた。
兄「もうこっち引っ越したんだろ?」
ヒデ「はい」
兄「新しい彼女できたんだって?」
ヒデ「え?できてないっすよ」
兄「だってお前彼女の名前彫ったって聞いたけど」
ヒデ「いや、彼女じゃないんで…」
兄「ちょっと見せろよ。俺も入れっかな」
兄はヒデのジャケットを脱がせて、腕を出させた。
ヒデ「やめてくださいよ~。恥ずかしいし」
ヒデの腕を見て唖然とした。
私の名前が入ってた…。
なんで?
意味がわからない。
ヒデも気まずそうに私の顔を見る…。
兄「エリ?誰だそりゃ~」
相当飲んで、酔っ払っていた兄は読み間違えた。
兄「俺今日彼女んち泊まるわ~」
そう言い出して彼女に電話して迎えに来てもらって、行ってしまった…。
居酒屋の前に取り残された私達。
気まずい…
>> 148
正月休みも終わり、平凡な毎日に戻る。
何ごともなく仕事をし、ユウヤと会う毎日。
平凡ながら毎日幸せだった。
その幸せは長く…
来る時は三人でヒデの車で来たので、私は歩いて帰ろうと思った。
私「じゃあ私も帰るね。ばいばい」
ヒデ「待ってよ。送ってく」
いいと言ったのに、20分も説得されて仕方なく車に乗った。
ヒデ「さっきの…。勝手に名前使ってごめん」
私「……」
ヒデ「困るよな。エミはもう彼氏いるし…。でも俺決めたんだよね」
私「?何が?」
ヒデ「あっちにいた時は自分を見失ってた。色んな女とやった。アヤとも真面目に付き合ってたわけじゃないんだ。お前とは全然違うんだよ」
私「だから何が?」
ヒデ「俺はお前じゃなきゃダメだってわかった。他の女をお前と重ねて見てた。これは一生変わらない。だから名前まで彫ったんだ」
私は何て言っていいのかわからなかった…。
私じゃなきゃダメ?
結局は捨てたくせに?
>> 148
正月休みも終わり、平凡な毎日に戻る。
何ごともなく仕事をし、ユウヤと会う毎日。
平凡ながら毎日幸せだった。
その幸せは長く…
次の日の朝。
1通のメール。
「おはよ~!今日も仕事頑張れよ。夜また会いに行くから」
知らないアドレスだった。
ヒデだ…。
きっとアヤから聞いたんだ…。
私は無視した。
仕事が終わり、ユウヤの家に行った。
そこでまたメール。
「もうそろ行くね!」
ユウヤ「誰?」
私「…カナ」
嘘をついてしまった。
家に帰るとやはりヒデが家の前にいた…。
ヒデ「遅いよ~!彼氏といたの?」
私「ヒデに関係ないじゃん。迷惑だからメールも待ち伏せもやめて!」
ヒデ「いいじゃん。俺の勝手じゃん」
私は無視して家に入った。
その後も真夜中までヒデはうちの前にいた。
次の日もその次の日もほぼ毎日のように来るヒデ…
メールも来る…。
一度ハッキリ断ろうとメールを返した。
私「今日〇時に〇〇(喫茶店)に来て」
ヒデ「いいけど?デートしてくれんの?」
私はそれ以上メールを返さなかった。
これがいけなかった。
わざわざ呼び出さないで家の前で待ってる時に言えば良かったのに…。
私は馬鹿だ。
自ら幸せを壊してしまう事になってしまった…
もう暖かくなっていた。
4月だった。
季節が移り変わるのは早い。
ユウヤも社会人だ。
私はヒデとの待ち合わせ場所に向かった。
ヒデはもう待っていた。
私「もうほんとに辞めて。迷惑なの。もうヒデの事は何とも思ってない」
ヒデ「別に何とも思わなくていいよ。ただ俺がエミに会いたいだけ」
私「それが嫌なの!」
ヒデ「仕方ないじゃん。好きなんだもん」
こんな会話を繰り返す…
最終的には「わかったよ」とは言ってくれたけど…
本当にもう来ないかな…
まだ納得してないように見えた。
ヒデは約束通りうちに来なくなった。
わかってくれたと思い、すっかり安心しきっていた。
ユウヤの家で遊んでいる時、私はトイレを借りた。
トイレから戻って来ると、ユウヤの表情が曇っている…。
嫌な予感がした。
ユウヤ「エミ、何これ?」
ユウヤは私の携帯を見せながら言う。
私も一瞬で地獄につきおとされたような気持ちだった…。
ユウヤ「ごめん。メール来たから見ちゃった。」
私「違う!誤解だよ」
ユウヤ「何が誤解?最近よくメール来るとカナちゃんだって言ってたけど違うじゃん」
私「ごめんなさい。心配かけたくなくて…」
ユウヤ「エミからデートに誘ったんだろ?ふざけんな」
当然だけどユウヤは凄く怒っていた…。
事情を話したけど、信じてもらえず…。
ユウヤ「アホらし。もう帰って」
突き離されてしまった。
泣きながら帰った。
自業自得だけど、ユウヤに信じて貰えない事が辛かった…。
また私の悪い癖が出てしまった。
自分の腕をカッターで傷つける。
抑えきれない感情を全て腕にぶつけた。
血がにじみ出てくる。
腕を伝ってタラタラ垂れてきた。
私は幸せになれない人間なんだ。
あんなに大切にしてくれたユウヤを傷つけてしまった…。
辛くて辛くて。
そこにまたヒデからメールが来た。
ヒデ「何でメール返してくれない?」
私「それどころじゃない!あんたのせいでユウヤとダメになった!どうしてくれんの!」
私はヒデにイライラをぶつけた。
ヒデ「別れたの…?」
私「そうだよ!全てあんたのせいだから!もう消えてやる」
しばらく返信がなく、数十分…
ヒデ「今エミんちの近くにいるから出てきて」
私「やだ」
ヒデ「いいから!」
仕方なく外に出た。
外に出るとすぐそばにヒデの車があった。
ヒデは私の腕を見て言った。
ヒデ「あんま自分傷つけるなよ。大切な体なんだから」
私「どうでもいいよ。こんな汚い体。あんた一体何考えてんの?エッチしたいならしてもいーよ」
自暴自棄になってた。
ヒデは血が出た腕をギューッと掴んだ。
ヒデ「頼むからもうやめろよ。こんな事してたらお前いつか死ぬぞ」
私「死にたいもん」
ヒデ「お前が死んだら親だって兄貴だって悲しむんだぞ?わかってんのか?いい加減にしろ!」
私「……」
ヒデ「苦しめてんの俺かもしれないけど、俺だってこんなエミ見たくない。辛い」
頭を撫でてくれた。
ヒデ「こんな事で疑ってくるような男なら別れた方がいいよ。アイツはきっとまだ子供なんだよ」
私「……」
ヒデ「俺もエミ裏切ったから人の事言えないけど、エミが振り向いてくれなくてもずっとそばにいるから」
涙が止まらなくなり、何も言わずに家に向かって走った。
次の日の朝。
二通のメール。
ユウヤとヒデだ。
ユウヤ「おはよ。寝ないで考えたんだけど、一回別れよう。俺前から元彼に嫉妬してたし、悔しかった。今はエミの事好きかどうかわからない」
ヒデ「おはよ。大丈夫か?辛いかもしれないけど仕事はちゃんと行けよ。またメールする」
私は普段通り仕事に行った。
ユウヤと別れても毎日は普段通り過ぎていく。
それが不思議だった。
とにかく嫌な事を考えないように仕事に専念した。
職場と家の往復の毎日。
日曜日も親戚がやってる店の手伝いをした。
ちょっとハードだったけど忙しい方が余計な事を考えなくて済むし、お金も貯まるし、一石二鳥だった。
6月末。
市外に住む祖父が入院したと母から聞いた。
祖父は数年前に胃癌の手術をして胃を全摘出していた。
5年再発しなければ安心していいと言われていたが、もうすぐ5年たつという時に再発。他の臓器に癌が見つかった。
あちこちに小さい癌があり、手術できないらしい。
入院した時はすでに末期。
両親と兄と私は病院に向かった。
しばらく会わなかった祖父は痩せて衰弱しきっていた。
まだ68歳。
死ぬのは早すぎる…。
私「じぃちゃん。居なくなったらやだ」
祖父「大丈夫。じぃちゃん頑張るから!ひ孫抱くまで死ねない」
祖父母は祖父の胃癌が見付かるまでは私達の家のそばに住んでいた。通院のために県庁所在地にある、県内で一番大きい病院のそばに引っ越した。
だから小さい頃から可愛がってもらっていた。
辛い。
また腕を切りたい衝動にかられる。
じぃちゃんは私の腕に残る傷跡に気付いた。
祖父「これどうした?」
私「…仕事で怪我したの」
本当の事なんて言えるはずもなかった。
祖父「体大事にしないとダメだぞ」
じぃちゃんはハッキリは言わなかったけど、気づいていたと思う。
私はその日もう腕を切るのは辞めると心の中で誓った。
日曜日の親戚の店の手伝いは親戚が祖父の入院の事を知り、じぃちゃんのそばにいてあげなさいと言ってくれたので、しばらくお休みする事にした。
毎週末はじぃちゃんに会いに行った。
そんな時ユウヤから一通のメールが来た。
ユウヤ「会いたい」
私もユウヤに会いたかったので、平日の仕事が終わった後に会う事にした。
ユウヤ「ごめん。俺が間違ってた。エミが浮気なんかするわけないよな。疑ってごめん」
私「ううん。私が誤解されるような事したから。ごめんなさい」
仲直りした。
久しぶりのユウヤとの抱擁。
深い深いキスをする。
そのまま最後までいった。
ユウヤと付き合って1年11ヶ月。
初めてエッチした。
幸せだった。
7月末。
ユウヤをじぃちゃんの所に連れて行った。
祖父「エミを頼むね」
祖父はユウヤとたくさん話していた。
ユウヤの事を気に入ってくれたようで安心した。
この日の祖父はビックリするほど元気だった。
このまま治ってくれるんじゃないかな?と錯覚するぐらいだった。
8月上旬。
ユウヤの友達の奥さんに赤ちゃんが生まれた。
お祝いを持ってお見舞いに行った。
可愛い…。
私は流産した赤ちゃんを思い出した。
帰り道。
ユウヤ「可愛かったね。いつか俺もパパになりたいな~エミとの赤ちゃん欲しい」
私は嬉しかった。
でもこの願いは叶えてあげられなかった。
ユウヤごめんね…
8月中旬。
一生忘れられない事が起きてしまう…。
ユウヤは友達と遊びに行った。
海…。
ユウヤは波にさらわれた…。
二度と生きているユウヤに会える事はなかった
泣いて泣いて泣きまくった。
今までにないくらい泣いた。
涙も枯れて出て来ない…。
ご飯も喉を通らない…。
私も死にたい…
後を追おうかとも思った。
一緒にいた友達を責めた。
友達だって辛かったはず…。
周りが見えなくなっていた。
19歳の夏
私は大切な人と永遠のお別れをする事になってしまった…。
私も毎日の仕事とじぃちゃんの病院通いで疲れていた。
ご飯もほとんど食べられないので体力もない…。
8月下旬。
私はある事に気づく。
生理が遅れてる…。
ストレスかなぁと思っていたけど、心当たりはある…。
妊娠検査薬を買ってきて検査してみる。
結果陽性。
ユウヤの赤ちゃんだ。
ユウヤからの最後のプレゼント。
ユウヤの分身。
私は産む事を決意した。
家族に話した。
最初は反対されたが、必死に説得して許してもらった。
ユウヤの両親にも報告した。
ユウヤ母「エミちゃんごめんね。父親のいない子にしてしまって…。ユウヤったら無責任に子供残して先にいなくなるなんて…」
ユウヤ父「うちも精一杯協力するから。エミちゃんが産みたいなら産んで欲しい」
快く賛成してくれた。
私はどちらの家族にも了承を得られてホッとした。
赤ちゃんがいるんだからとご飯も少しずつ食べられるよう努力した。
ユウヤのためにも元気な赤ちゃん産まなきゃ!そう思って産休に入るまでは仕事を続ける事にした。
検診の日
エコーで初めて赤ちゃんの姿を確認できた。
愛しくて仕方ない。
ユウヤと私の愛の結晶。
大切に育てようと改めて思った。
- << 177 つわりが来た。 ご飯も食べられなくなり、1日何回も戻してしまう。 仕事も有給を使って何日か休んだ。 気が滅入る…。 ユウヤを思い出して泣いてしまう…。 そんな時励ましのメールを毎日くれるのはヒデだった。 前とは違う。 付き合おうとか言って来ない。 ただ励ましてくれる。 友達に戻れたような感じだった。 先輩ママのカナからつわりの乗りきり方を聞き、無理して食べず、氷水ばかり飲んでいた。
- << 178 妊娠5ヶ月を過ぎた頃からつわりの症状は緩和されてきた。 お腹も少しだけ出てきたが、まだまだ服を脱がなければわからないくらいだった。 まだ胎動は感じず、本当にお腹の中で生きているのか心配だった。 また流産するかも…という不安はあったけど、ユウヤが守ってくれると信じていた。
12月。
じいちゃんもユウヤのいる天国にいってしまった。
ひ孫の誕生を楽しみにしていたじいちゃん。
抱かせてあげたかった…。
じいちゃんが最後に私に言ったのは「ユウヤに会ったら赤ちゃんの事伝えておく」だった。
亡くなる直前はもう話しもできない状態だった。
せっかく赤ちゃんが生まれるのに…。
何でユウヤもじいちゃんも赤ちゃんに会わずにいなくなるの?
寂しい。
辛い。
私はこのたった数ヶ月で大切な人を二人も失った。
心が壊れそうだった。
赤ちゃんがいなければ間違いなく私も死んでいたと思う…
ユウヤが私が死なないようにと赤ちゃんを残してくれたんだと思う。
クリスマス。
ヒデがプレゼントを持ってうちに来た。
なんとベビー布団。
お母さんと一緒に選んだらしい。
まだ性別は聞いていないから黄色のベビーミッキーの布団。
素直に嬉しかった。
12月31日。
この日初めて胎動を感じた。
ポコポコっと蹴られた。
私も嬉しくて話しかける。
私「ママだよ~。元気かな?」
1月2日にユウヤの両親に挨拶を兼ねて、ユウヤに報告しにいった。
私「赤ちゃん蹴ったよ。ちゃんと生きてるよ」
当然ながらユウヤからは言葉は返って来ない。
もう抱き締めてもらう事もできない。
ユウヤが出来ない分、私がしっかり赤ちゃんを守っていくね…
命にかえても守る。
ユウヤの仏壇の前でそう誓った。
1月のある日。
私はベビー用品を見にカナとショッピングセンターに行った。
そこには笑顔で仲良さそうに二人でベビー用品を見る夫婦がいた。
その旦那さんが何となくユウヤと似ていた。
ユウヤと重なる…。
あの時海なんか行かなければ…。
ユウヤだってここにいたのに…。
わかってはいてもなかなか死を受け入れられない私がいた。
カナもシンママ。
私より先輩ママ。
泣きそうな私を見てカナが慰めてくれる。
カナ「エミが泣いてると赤ちゃんも不安になるんだよ。ユウヤ君だって心配でゆっくり休めないよ。エミママ!一緒に強くなろうね」
カナの言葉が心に響いた。
2月。
検診の時に先生から性別が分かったと言われたが、私は生まれるまで聞かない事にした。
男の子かな~。
女の子かな~。
私は健康であればどっちでも良かった。
ユウヤとの大切な赤ちゃんだから…。
そんな時…。
衝撃的な事実を知る事になる…。
ユウヤのお母さんから呼び出された。
ユウヤの家に行くとユウヤの友達もいた。
海で一緒にいた友達だった。
ユウヤ友達「はい。これ」
ピンクの小さい袋を渡された。
開けてみると私の髪ゴム。
ユウヤに貸していたものだった。
ユウヤ友達「言おうか迷ってたけど、やっぱり言わなきゃダメだと思って…」
私「何?」
友達「あの日、ユウヤこれでちょんまげに縛ってて、そのまま海入ったら無くしちゃって…。探してたら…」
友達はそれ以上言わなかったけど、私にはわかった。
ユウヤはあんな髪ゴムのために死んだんだ…。
貸すときに私が「無くさないでよ~」って言ってしまったから…。
私のせいだ…。
あんなゴム無くなったっていいのに。
こんなものいらないからユウヤ帰ってきてよ!!
赤ちゃんには申し訳ないけど、しばらくは泣いて過ごした。
泣くと決まってお腹が張る。
まるで「泣かないで」と言ってるかのように…。
私は小さな綺麗な箱を買って来て、その髪ゴムを入れた。
立ち直れる時が来るまで開けない事にした。
3月いっぱい勤務して産休に入った。
仕事をしないと色々な事を考えてしまう…。
私は本屋に行って名付けの本を買った。
男の子か女の子かわからないから、両方の候補を決めておく事にした。
男の子。
青空(ソラ)
優真(ユウマ)
女の子
星愛(セナ)
優希(ユキ)
優真と優希の“優”はユウヤのユウを取った。
4月。
待望の赤ちゃんが生まれた。
身長47cm
体重2664g
男の子だった。
少し小さめだけど元気な産声をあげて生まれてきてくれた。
比較的安産で、すんなり出てきてくれた。
出産直後は感動したのと達成感とで泣いてしまった。
久しぶりの嬉し涙だった。
私はこの子に“優真”と名付けた。
何となくユウヤに似てるような気がした。
入院中、両親や祖母やユウヤの両親がお見舞いに来てくれた。
兄はヒデと一緒にお見舞いに来た。
ヒデもお祝いをくれて、優真の誕生を喜んでくれた。
家に帰ってからは寝る間もないくらい忙しい。
でも優真が可愛くて仕方ない。
カナとも子供の話をできるようになった。
そんな幸せの中、また大変な事が起きるとは…
思いもしなかった。
優真が1ヶ月を過ぎた頃、母と兄が風邪を引いていた。
私は優真に移らないか心配だったけど、母は「6ヶ月までは母親のお腹の中にいる時にもらった抗体があるから風邪引かないよ」と言っていたし、本にも同じような事が書いてあったのでそこまで心配していなかった。
その夜、優真が咳をした。
寝ぐずり?も酷く、ベッドにおろせば泣き出す。
ずっと抱っこしていないと寝ない。
何かがおかしいと感じた私は病院に連れて行った。
医師は驚くべき言葉を発した。
医師「このまま帰したら命危ないね」
私は固まった。
優真まで死んでしまったら…
私はどうしたらいいんだろう…
ユウヤ…
優真を守って…
心の中でずっと繰り返しユウヤに訴えた。
優真は気管支炎だった。
入院し、小さな体に点滴され、心拍をはかる機械?もつけられた。
私は辛くて仕方なかった。
私のせいだと自分を責めた。
カナに電話したけど出ない…。
一刻も早く誰かに私の気持ちを話したくて、ヒデに電話して泣きながら話した。
次の日。
医師の話では危機は脱したとの事だった。
少し安心した。
ヒデも仕事が終わるとお見舞いに来てくれたが、ここの病院の小児病棟は身内以外は入れない。
母がタイミング良く来たので5分程優真をお願いし、ヒデと話した。
ヒデ「エミの悪い癖。自分ばっか責めるなよ」
私「だって優真喋れないから何かあったら私が気づいてあげないと…」
ヒデ「大丈夫。優真は絶対大丈夫だよ。父親が守ってくれる。優真だってこんな弱っちいママ置いて居なくなったりしないよ」
ヒデの言葉を聞き、なぜか落ち着きを取り戻せた。
優真はその後も快方に向かい、1週間で退院できた。
次の日にはユウヤの家に行き、ユウヤに無事を報告した。
私「ユウヤ守ってくれてありがとう…」
優真との幸せな日々が続いた。
すくすく育つ優真を見てると、ユウヤにも見せてあげたかったなぁといつも思っていた。
目元がユウヤそっくりになってきた。
私の両親もユウヤの両親もとても優真を可愛がってくれる。
パパはいなくなっちゃったけど…
その分私がいっぱい愛情注いで絶対に幸せにしようと心に決めていた。
気付けばヒデは週末になると優真の顔を見に来る。
優真もヒデをわかっているのか、人見知りしない。
私は優真が1歳になる4月から職場復帰する。
私も優真のそばにいたかったし、まだ小さい優真には可哀相な事かもしれないけど、母も仕事をしているので保育園に入れる事にした。
シングルだから仕方ない。働かないと生きていけない。
きっと優真もわかってくれる…
4月。
優真は保育園に通い始めた。
最初の1週間くらいは泣いたけど、徐々に慣れてきた。
優真と同じくらいの子も数人いた。
“ハルナちゃん”という優真と同じ4月生まれで誕生日が3日違いの女の子がいた。
ハルナちゃんのママもシンママ。
23歳で私より2コ年上だったけど、よく話しかけてきてくれていつの間にか仲良くなってた。
子供達も仲良くなり、たまに仕事が終わってからうちで一緒にご飯を食べたりするようになり、お互い良き相談相手となってた。
職場は人事移動で人が少し入れ替わっていた。
今までは同じ部署には10代、20代の人が全然いなくて、歳が離れた人ばかりだったけど、19歳の男性社員が移動してきていた。
他に話す人がいなかったからか、休憩中は私に話しかけてくるようになった。
その男性社員の名前は“黒木”。
愛想が良くて見た感じは誠実そうな好青年だった。
黒木はプライベートな事まで色々聞いてくる。
メールもしつこい。
ちょっとウザイ時もあった。
私が未婚のシンママだと知った時はびっくりしていた。
何で結婚しなかったのかしつこく聞かれたが、ユウヤの事は話さなかった。
5月GW
カナと遊んだ。
カナから思いがけない報告を受けた。
カナ「私結婚する事になったから」
私「え~!おめでと~!!」
自分の事のように嬉しかった。
カナの彼氏は10歳以上年上の大人だ。
きっとカナを大切にしてくれる…。
その反面、大好きな人と一緒になれるカナが羨ましかった。
私の大好きなユウヤとはもうどう頑張っても一緒になれない…
悔しかった。
カナは専業主婦になり、いつ会っても幸せそうな顔をしている。
その約1ヶ月後には妊娠も発覚した。
勿論旦那さんの子供。
カナの連れ子も旦那さんに懐いている。
旦那さんも子供に愛情があるのが見ていてよくわかる。
幸せな家庭…
いや、これが本来の家庭の姿…。
子供が育つ環境…。
私はそんな当たり前の事さえ優真にしてあげられなかった…
自分を責めた。
優真ごめんね…
何度も優真に謝った。
ヒデにもカナの結婚と妊娠を報告した。
ヒデ「カナちゃん幸せだろうねぇ。良かったね」
私「うん。子供も嬉しそうだったよ。なんか優真に申し訳なくなっちゃった」
ヒデ「優真はエミに愛されてんだから幸せだって!俺が優真の父親になってあげようか?(笑)」
私「遠慮するわ(笑)」
冗談を言い合える仲。
ヒデは私が折れそうな時はいつもこうして助けてくれた。
ユウヤが居なくなってから2年がたとうとしていた。
月日が流れるのは早い…。
まだまだ落ち込む事もあるけど…
ヒデやカナなど周りの支えもあり、優真の母親として少しずつ前を見られるようになってきていた。
8月。
また休憩中に黒木が話しかけてくる。
黒木「俺週末海行くんだ~。一緒に行く?」
私「行かない。私海嫌いだから」
海はユウヤの命を奪った場所…
あの日から私は海が大嫌いになっていた。
黒木「何で?海嫌いとか珍しいね。泳げないから?(笑)」
私「そうじゃないけど…海って危ないんだよ」
黒木「あ~そういえば二年くらい前だっけ?死んだ人いるよね」
私「……」
ユウヤの事だ…
黒木「馬鹿だよな~溺れ死ぬなんて。その人俺の小中学校の同級生なんだよ。あんま仲良くはなかったけど」
苦しくなってきた…
また過呼吸…
苦しい…
助けて…
医務室に運ばれた。
2時間くらい医務室で休んでいた。
昼休みになって黒木が来た。
黒木「大丈夫?俺何か変な事言った?」
私「……その溺れた人って私の彼氏だったの。そして子供の父親」
黒木「…えっ…?嘘?ごめん。思いだしちゃった…?」
私「うん。ちょっと辛くなっただけ。大丈夫」
黒木「そっか…ほんとごめんね」
黒木はびっくりしていた。
私もびっくりした。
また発作が起きるなんて…。
情けない
しっかりしなきゃいけないのに
優真の写メを見て気持ちを切り替えて、昼からは仕事に戻った。
その日を境にユウヤの事ばかり考えていた私。
睡眠不足になり、体調も優れなかった。
優真には申し訳ない。
昔は開放的で楽しい事ばかりある夏が大好きだった。
その夏も海も大嫌い。
見たくもない。
でも地元には海があり、嫌でも見る事がある。
海を見るたび苦しくなっていた。
そんな時、優真が初めて単語を喋った。
「まんま」
ご飯の事だか私の事だかわからないけど…
凄く嬉しかった。
私の心はあの日で止まっている。
でもあの時私のお腹にいた優真は日に日に成長している。
優真の成長を目の当たりにする度に時間の流れを実感していた。
9月。
黒木も私が発作を起こした日からユウヤの事には触れない。
罪悪感からなのか、元気がない私を元気付けようとしてくれていた。
睡眠不足と食欲不振。
とうとう私は倒れてしまった。
貧血。
たいした事はない。
医務室で少し休んでいれば良くなった。
その日は早退。
次の日上司に呼び出された。
上司「この間といい、昨日といい、どうしたんだ?夏バテか?育児で疲れてんのか?相談乗るぞ」
この上司には入社当時から良くしてもらっていた。
上司は42歳のバツイチ男性。
離婚当時小学生だった娘を元奥さんに託したそう。
今その娘さんは19歳になり、最近赤ちゃんが生まれていた。
でも娘さんには拒まれ、娘さんにも赤ちゃんにも会えないらしい。
私の事を娘のようで心配だと話してくれた。
時々食事に誘われ、優真も連れて行っていいと言うので、付き合いだし仕方ないので何度か一緒に食事した。
この上司…。
優しい人だと思っていた…。
黒木「佐々木さんとメシ行ったの?」
佐々木とは上司の事だ。
私「行ったよ。色々話聞いてくれた」
黒木「会社で話すのはいいけどメシ行くのとかやめろよ」
私「何で?」
黒木は何も言わなかったが、きっと気づいていたんだろう…
黒木の忠告を聞けば良かったと私は後悔している。
不定期に数ヶ月に一度、会社で飲み会がある。
強制参加だ。
この日は私も母に優真を見てもらい、飲み会に参加した。
居酒屋で久々に飲んだ。
この日はみんな相当飲んでいた。
私も現実から離れて、我を忘れて何杯も飲んだ。
佐々木は酒が飲めないので皆飲んでいる中、一人だけウーロン茶を飲んでいた。
私はタクシーで来たので帰りもタクシー。
パートのおばちゃんと家が同じ方向なので一緒に乗る事にした。
佐々木「お二人さん。送ってくよ。同じ方向だし」
おばちゃん「あら。タクシー代浮くわね(笑)」
おばちゃんと一緒なので私は安心して佐々木の車に乗った。
車に揺られて睡魔が襲ってくる…。
酔っていた私は目を閉じたり、開けたり、意識もうろうとしていた。
そしていつの間にか寝てしまった…。
目が覚めた。
車の中??
何でこんなとこにいるの?
頭が痛い。
クラクラする。
外を見ると街外れの公園の駐車場。
隣には……
Tシャツとパンツしか履いていない佐々木が寝ている…。
佐々木の横には大量のティッシュ。
何??
嫌な予感がした。
私は下半身丸出しだった。
一瞬で何があったか理解した。
やられたんだ…。
私は服を着て鞄を持ってそのまま逃げた。
不思議と涙も出て来ない…。
タクシーを呼んで帰ろう。
??
財布がない…
>> 222
きっと車の中に落としたんだ…。
でも取りに行くのも嫌…。
携帯を見るともう午前3時だった。
母に電話するわけにもいかないし…
ここからうちまで車で30分かかる。
歩いて帰れる距離ではない。
なぜかヒデに電話した。
やっぱり出ない…
もう寝てるだろうな…
バス停の前のベンチに座ってボーッとしていた。
その時ヒデから電話がきた。
ヒデ「寝てたよ。こんな時間にどうした?」
私「ちょっと色々あって…迎えに来て欲しいんだけど…」
ヒデ「わかった。今どこ?」
ヒデはそれ以上何も聞かずに迎えに来てくれた。
- << 232 ヒデの顔を見ると一気に涙が溢れ出してきた。 ヒデはコンビニでコーヒーを買ってきてくれた。 ヒデ「どうした?何かあったんだろ?」 私「何も…」 ヒデ「だってこんな時間にこんな所で何してるんだよ?おかしいだろ!」 私「……。」 ヒデ「話せば楽になるよ。もう一人で抱え込むのはやめろよ。何でも相談しろよ」 私「実は…」 私は佐々木との事を話した。 ヒデは「大丈夫。自分を責めるなよ」とずっとギュ-ッとしてくれていた。 ヒデに抱きしめられるとちょっとホッとした。 昔よくギュッてしてくれた温かい温もりを思い出した。
割り込みすみません。
ここにレスしてる人は
何をお読みになられてるのでしょう?
主さんがわざわざ感想スレを
立ててくれているのですから
そちらにレスすればいいのでは?
主さんの更新を楽しみにされて
応援される気持ちも分かります。
私もそのうちの一人です。
ですがレスが入る度に話は
中断してしまうことになるし、
更新されてると思って覗くと他の人のレス‥
個人的な感情ですが苛々します。
他の読まれてる方のことも
もう少し考えてみてください。
主さん、他の方々、
不快な思いさせてすみませんでした。
いろいろ大変でしょうが
あまりご無理をなさらずに。
更新を楽しみにしております。
- << 230 匿名さん🌼レスありがとうございます😊遅くなってすみません😣 感想スレわかりづらいのかもしれません💦私の書き方が悪かったせいです😣申し訳ありません🙇 少しずつ書いていくのでこれからもよろしくお願いします✨
>> 223
きっと車の中に落としたんだ…。
でも取りに行くのも嫌…。
携帯を見るともう午前3時だった。
母に電話するわけにもいかないし…
…
ヒデの顔を見ると一気に涙が溢れ出してきた。
ヒデはコンビニでコーヒーを買ってきてくれた。
ヒデ「どうした?何かあったんだろ?」
私「何も…」
ヒデ「だってこんな時間にこんな所で何してるんだよ?おかしいだろ!」
私「……。」
ヒデ「話せば楽になるよ。もう一人で抱え込むのはやめろよ。何でも相談しろよ」
私「実は…」
私は佐々木との事を話した。
ヒデは「大丈夫。自分を責めるなよ」とずっとギュ-ッとしてくれていた。
ヒデに抱きしめられるとちょっとホッとした。
昔よくギュッてしてくれた温かい温もりを思い出した。
話を聞いて貰って少しだけ落ち着いたので、家に送ってもらった。
みんな寝ていたので静かに家へ入る。
優真の寝顔を見てると優真に申し訳ない気持ちでいっぱいになる…
「こんな汚いママでごめんね…」
寝れなかったので色々考えていた。
優真は父親もいないし、母親もこんなだし、何でここに生まれてきたんだろう…
両親がいて普通のお父さん、お母さんの元に生まれれば幸せになれたのに…
酔っていたとはいえ安易に佐々木の車に乗った事を後悔した…
悔しくて悔しくて優真の横で声が漏れないように静かに泣いた…
仕事辞めたい…
佐々木に会いたくない…
でも優真のために稼がなきゃ…
ここ辞めたら正社員で雇って貰えるところなんてきっとない…
色々な思いで頭が回ら無くなっていた。
こんな時、ユウヤがいれば……
何て声をかけてくれただろう…
月曜日…
仕事に行きたくなくて朝吐いてしまった。
ほとんど寝れていない。
体調も悪い。
でも優真は保育園に行きたがっている…
仕方なく仕事に行った。
会社に着くと朝一から佐々木に会った。
佐々木「おはよう」
私「おはようございます…」
佐々木の顔を見ないようにして震えながら挨拶した。
佐々木「あの後どうしたの?起きたらエミちゃんいなくなってたから」
私は無視して走り去った。
黒木「おはよー」
私「おはよ」
黒木「なんか顔色悪いし元気無くない?」
私「そんな事ないよ」
とにかく何も考えないようにして仕事をこなした。
早く帰りたい…
昼休み、佐々木と黒木がトイレの前で話しているのを見た。
黒木は私の財布を持っている…
まさか…黒木にあの事話したんじゃ…
不安になってきた…
会社に広まったら確実に私の居場所はない。
あぁ…もうやだ…
黒木が私の所に来た。
黒木「はいこれ…」
私の財布を返してくれた。
私「ありがとう…」
バレたんじゃないかと気が気じゃなかった…
黒木「飲み会の後どうしたの?佐々木さんの家行ったの?」
私「……家は行ってないよ…」
体が震える…
黒木「まさかやったんじゃないよな…?」
私は黒木の質問にも答えずそのままトイレに向かった。
吐いた…
少量の血が混じっていた…
吐くものがなかったからだろうか…
涙が溢れ出してくる…
何で?
私何か悪い事した?
何で私ばっかり…?
こんな辛い人生…
私なんか生まれて来なきゃ良かった…
早く迎えに来てよ…
昼休みも終わってしまった。
戻れない…
戻ろうと思うと凄い吐き気に襲われる…
しばらくして私が居ない事に気付いたのか、パートのおばちゃんがトイレに来た。
おばちゃん「エミちゃん?体調悪いの?大丈夫?」
私「大丈夫です。すみません。すぐ戻ります…」
気持ちを切り替えてやっと戻った
仕事に集中しよう…
黙々と仕事をこなした。
帰り
佐々木に会わないよう急いで帰り支度をする。
黒木に呼び止められた
黒木「やっぱり何かあったんだろ?何か変だよ」
私「別に何もないよ!彼氏でもない癖にいちいち詮索しないでよ!迷惑」
八つ当たりをしてしまった…
黒木はそれ以上何も言わなかった。
私は謝りもせずそのまま帰ってしまった…。
私は次の日仕事を休んでしまった…
会社では昼休みの時間。
黒木からメールが来た
黒木「昨日はごめん。体大丈夫か?心配で色々聞き過ぎた。ほんとにごめん」
職場の人と話したくなくて無視してしまった…
その次の日も休んだ…
また昼休みの時間にメールが来た。
黒木「怒ってる?ほんとに悪かった。だからメールだけでも返して」
私「もういいよ。私も言いすぎた…ごめんね」
黒木「自分でもビックリなんだけど…俺エミちゃんの事気になって仕方ない。ほっとけないから色々詮索した…」
返事に困った…
しばらく考えていたけど何て返したらいいかわからない…
考えてるうちにまた黒木からメールが…
黒木「迷惑かもしれないけど、俺エミちゃんの事好きだから」
私「ありがとう…」
散々考えたけど何て返したらいいかわからない…
無視するのは失礼だからお礼だけ返した
次の日は何とか仕事に行った。
ある決意を固めて…
仕事を辞めよう。
退職願を書いて提出した
10月いっぱいでの退職。
やっと一人前として認められてきた頃だった…
仕事に未練はある
でもこのままじゃ…祖父の前で誓ったリスカ卒業…
その誓いを破ってしまう…
それにこんな状態じゃ優真のためにも良くない…
そう考えての決断だった
仕事はまた探せばいい…
でもまた自分を見失ったら…おしまいだ…
まだまだいくらでもやり直せる。
ユウヤの分も優真を幸せにしなきゃ…
今までの自分にサヨナラしようと本気で思った
仕事を辞める事が佐々木にも伝わった
佐々木「エミちゃん。ごめんね。俺のせいだよね?本当にごめん」
私「いいえ。謝らないでください。もういいんです」
顔も見たくなくてすぐにその場を去った。
また吐き気がする…
早く辞めたい…
解放されたい…
人生リセットしたい…
毎日そう思っていた。
黒木「辞めるの?俺がいるから?」
私「違うよ。色々考えて決めた事だから…」
黒木「俺はエミちゃんの力になれなかったね。ごめんね。メールの返事、いつでもいいから考えて欲しい」
付き合うという事は考えられなかった
私は黒木にたいして恋愛感情はない
話しやすい同僚
可愛い弟みたい
その程度。
それに私には優真がいる。
中途半端な事はできない。
キッパリ断ろう
そう決めた
週末
ユウヤの実家に行った。
ユウヤの仏壇の前で仕事を辞める事を報告した。
ユウヤの両親にも話した
ユウヤ母「エミちゃん。頑張りすぎてるんじゃない?なんか痩せたよね…?」
私「ちょっと仕事が忙しくて…」
ユウヤ母「女手一つで優真を育てて…ごめんね。ユウヤがいれば…」
私「私が優真を産みたくて産んだんですから。お義母さんが謝る事なんて何もないです」
ユウヤ母「エミちゃんは今彼氏とか好きな人はいないの?ユウヤの事は気にしないで自分と優真の幸せ考えていいんだよ?」
私「彼氏も好きな人もいませんし、今は結婚は考えていませんよ」
ユウヤ母「もし好きな人が出来ても遠慮しないでね。私達はエミちゃんと優真が幸せになれるなら応援するよ。ユウヤもきっとそれを望んでるから」
ユウヤ母の言葉に涙した。
ユウヤの両親…
優真の事をとても可愛がってくれている…
私の事も良くしてくれる…
優真を産みたいと言った時も喜んで賛成してくれた…
本当に大好きだった。
★お知らせ★
以前に身内が入院してると書きましたが、それはユウヤのお母さんです。先日50代前半の若さで永眠致しました。
小説から外れてしまうのでお母さんの事は感想スレの方に続きを書かせていただきます。もしよろしければそちらも読んでいただきたいです。
★エミ★
10月末までは毎日休まず仕事に行った。
自分なりに気持ちを切り替えていた。
ヒデにも辞める事を話した。
何も言われなかった。
ただ「頑張ったね。偉いよ。もう頑張らなくていい」と言ってくれた。
辞めると決まったものの、一日一日が長い。休日が待ち遠しい毎日。
毎日襲う吐き気と腹痛…
何かの病気かな?と思う程酷かった。
それと同時に就職活動をしなくてはいけない。
子持ちのママができる仕事の幅はかなり狭い
とりあえず有給消化するためにも休みを取って職安に行く。
求人情報誌を買う。
気になった求人がいくつかあった。
エステティシャン
ガソリンスタンド店員
ファーストフード店員
ダメ元で全て面接を申し込んだ
結果ガソリンスタンドだけ採用して貰えた
11月上旬~働ける事になった
問題なのが一つ
保育園は日曜日と祝日はお休み…
この仕事は月に一回しか日曜休みは貰えない…
母に相談すると優真をみてくれると言っていたけど…寂しい思いをさせてしまうかもしれない…
でもシングルマザーはそう簡単に採用してもらえない…
優真のためにも頑張ろう。
将来優真が高校、大学になった時、「お金が無いから働いて」とは言いたくない。
離婚によるシングルマザーとは違って優真には父親はいない。養育費などもない…
母子家庭だから…
と後ろ指指されるのだけは嫌。
優真にそんな惨めな思いは絶対にさせない
頑張ろう!
頑張る気力が沸いて来た
すぐにヒデに報告した
ヒデはあまり喜んでくれない…
「おめでとう」とは言ってくれたけど…顔が笑ってない
ひきつってる。
無理矢理笑ってるようにしか見えない
何で?
喜ばしい事じゃないの?
しばらく沈黙が続く中、優真だけが一人遊びしながら喋っている。
ヒデが口を開いた
ヒデ「エミ昔ならこんな事耐えられなかったよな。でも今は誰にも寄りかからずに一人で頑張ってる。母は強しって事かな…」
私「そうだよ。優真がいるから頑張れる!優真居なかったらもう死んでた」
ヒデ「でももう頑張りすぎるなよ。無理すんなよ」
私「無理してないよ。まだまだ頑張れる」
ヒデ「……もういいって!俺が見てられない。エミも優真も俺が守るよ。」
私「……ん??」
ヒデ「エミはもう優真のそばにいなよ。俺がエミと優真の分も稼ぐからさ」
正直何て言ったらいいかわからなかった…
ありがとうと言えば了承した事になる…
笑いながら冗談で返した
私「え~?いいよそんなの。私そこまで落ちぶれてないから(笑)」
ヒデはそれ以上何も言って来なかった
ヒデが帰ってからもさっきの言葉の意味が気になる…
結婚しようという事なのか…?
プロポーズ?
まさか…そんな訳ないよね…
優真もいるし
ヒデは優真の事もすごく可愛がってくれる…
でも優真はヒデの子供じゃない
ユウヤの子…
他の男の子供を本当の子供のように可愛がれる人なんているの…?
愛情かけて育てられる人なんているの…?
私なら無理…
好きな人が違う女と作った子供なんて…可愛がれない…
ヒデはどういう気持ちで言ったのか…
わからない…
10月末
今日でこの職場とはさよならする
送別会を開いてくれた
でも…そこには佐々木もいた…
私は早く帰りたくて仕方なかった
でもみんなが私のために開いてくれた送別会…
先に帰るわけにはいかない…
黒木が私の隣に座った
みんな酔いも回ってきた頃、黒木がトイレに立つ。
告白の返事をしていない事がずっと気掛かりだった
私も黒木を追って席を立った
トイレの前で黒木を待つ
ドキドキする…
何て言えば傷つけないだろう…
そんな事ばかり考えていた。
黒木が出てきた。
黒木「あれ?トイレ?」
私「ちょっと話あるから来て」
一度外に出た
私「あのさ…こないだの返事…」
私「気持ちは本当に嬉しいよ。でも付き合うわけにはいかない。私には優真がいるから。今は恋愛する気ない…」
黒木「何で?子供いたら恋愛できないの?俺は子供も含めてエミちゃんを好きになりたいんだよ」
私「ありがとう…気持ちだけ受け取っておくよ…ほんとにありがとね…」
そう言って私はみんなの所に戻った
黒木が戻って来ない…
30分待っても…
40分待っても…
どうしたんだろう…
心配になってもう一度外に出た
黒木の姿はない
周りを探すが居ない
慌ててみんなに言いに行く
私「すみません。黒木君いないんですけど…」
みんなで店を出て探した
どうしよう…
事故にでもあってたら…
どうしよう…
どこ行っちゃったの?
こんなのズルイよ…
携帯に電話しても出ない…
早く
早く出てきてよ…
1時間近く探しただろうか…
見付かったという連絡もない…
私は海の方まで来ていた
ユウヤを殺した海…
私が大嫌いな海…
嫌な予感がする…
体が震える…
お願いだから無事でいて…
ユウヤ、黒木を守って…
夢中になって探した
履いていたパンプスのヒールが壊れた…
遠くに人影が見える
座っている
黒木?
急いで駆け寄る
私「黒木?」
こっちを向いた
黒木だった…
私「何やってるの!みんな心配してるんだよ!」
黒木「ごめん…」
みんなに黒木が見付かった事を連絡をした
私も黒木の横に座って海を見る
私「ねぇ。私海嫌いなんだけど(笑)」
黒木「そうだったね…ごめん」
沈黙が続く…
私「さぁ帰ろうか。優真待ってるし」
黒木「そうだね。付き合わせてごめん。最後に一緒に過ごせてよかったよ」
私「何かあったら連絡してきなね」
黒木「ありがとう」
タクシーでそれぞれ帰宅した。
バイバイ。
ありがとう…。
心機一転!!
初出勤の日。
少し早めに家を出て優真を保育園に送り届けた
緊張する…
基本的に勤務は9~18時。
優真の事を考えてくれて早番専門にしてくれた。
休みは月7回。そのうち一度が日曜日。
それ以外は平日となる。
接客業だから仕方ない事
緊張していたけど店長もいい人で同年代の人達が多く、すぐに打ち解けられそうな雰囲気に安心した。
頑張ろう!!
仕事を変えた事で自分でも驚く程前向きになれた。
このまま穏やかな日が続けばいいなぁと思っていた。
同じ早番専門で勤務していたシンママもいた。
彼女はリエさん。
30代前半で小学生2人と3歳の保育園児のママさんだ。
私とリエさん以外はみんなローテーション制。
以前の職場よりはるかに少ない従業員。
そんな中で勤務していると三日目にはある噂を聞いた。
23歳の「原くん」とリエさんが付き合っているという噂。
その時は「ふ~ん。そうなんだぁ」としか思わなかった。
原くんはまだ会った事もない。
正直どうでもいい話だった。
原くんと初めて一緒に仕事する日。
原くんに挨拶をした。
原「あれ?前に会った事ない?」
私「?そうですか?」
全く見覚えがない
仕事に戻る。
後からまた原くんが近寄ってきた
原「思い出した!!エミちゃんってタカシの元カノじゃね??」
タカシ??何て懐かしい名前を…
色々思い出す…
私「タカシと知り合いなんですか?」
原「俺タカシの友達!エミちゃん写真で見たから知ってるよ~」
色々ありすぎてタカシの記憶は薄れてきていた…
一気にタカシの記憶が蘇る…
思い出したくないのに…
原くんは色々聞いてくる。
仕事を教えてくれるというより、雑談がほとんど
原「エミちゃんってシンママなんだよね?離婚したの?」
私「いえ。未婚で出産しました」
原「え~!若いのにすげえな!タカシとはもう戻る気ないの?」
私「ないですねぇ…」
原「彼氏いるとか?」
私「子供産んでからずっと彼氏いませんよ」
原「へぇ~ちゃんとママしてんだね。偉いわ」
こんな会話が続く。
視線を感じる…
リエさんがチラチラこっちを見ている…
みんなには内緒にしてるみたいだけど…きっとあの噂は本当なんだ…
面倒な事には巻き込まれたくない
でも先輩を無視する訳にはいかない…
また何かが起こりそうで嫌な予感がしていた
帰宅後。
ヒデにメールする
私「原くんって知ってる?職場の先輩なんだけど」
ヒデ「名前と顔は知ってるけどほとんど話した事ないし、友達ではないよ」
タカシの友達だという事を言おうか迷ったけど…
タカシの話をするのも嫌なのでそれ以上言わなかった。
日曜日
リエさんも原くんも私も出勤。
客としてタカシが来た…。
ガソリンを入れても帰らず居座る…。
タカシはいつもこんな感じらしい。
タカシ「やっぱエミじゃん!久しぶり!原から聞いたよ~」
私「久しぶりだね…元気?」
タカシ「てゆうかシンママってマジ?知らなかったんだけど!相手誰よ?まさかヒデ?」
私「違うよ。ヒデと別れた後に付き合ってた人」
タカシ「そうなんだぁ。何で離婚したのさ?」
離婚だと決め付けられてる…
いつもそう。
母子家庭だと言うと「離婚」という言葉が出てくる。
きっとこの歳で相手が死ぬとか考えられないんだろうなぁ…
私「離婚じゃないよ。未婚だよ。一人で産んで育ててんの」
タカシ「はぁ!?マジ??よく産んだな!俺が父親になってやろうか?(笑)」
コイツは過去を忘れたのか…?
図々しいにも程がある。
嫌な気分で仕事に戻った
リエさんが寄ってきた。
リエさん「エミちゃんってタカシ君の元カノなの?」
私「はい…中学ん時なのでもう昔の話ですけど…」
リエさん「そうなんだぁ。タカシ君ってエミちゃんみたいな子がタイプなんだね~」
私「それはどうですかね…今はもう連絡とかも取ってないんで、最近の事は知らないので…」
リエさんが変わった
髪型、化粧など明らかに私の真似をしている。
何で?
リエさんってタカシが好きなの?
原くんじゃないの?
訳わからない…
同じ職場なのに真似されるのはやっぱりイイ気はしない…
原「リエちゃんってエミちゃんに似てきてない?」
私「そうですね…ちょっとかぶってますね…」
やっぱり原くんも気づいていた
ある日。
仕事が終わるとリエさんに買い物に誘われた。
それぞれ子供を迎えに行ってショッピングセンターで待ち合わせした。
リエさんの子供を見て驚いた。
一番下の子がタカシにそっくり…
まさか…
タカシの子なの…?
そのまま声に出しそうになった
リエさんが私の異変に気づいた
リエさん「どうしたの?」
私「いえ…何でもないです」
一緒にご飯を食べた
やっぱり見れば見る程そっくり…
リエさん「やっぱりそう思う?」
私「え?何がですか?」
リエさん「この子。タカシ君の子なのよ」
私「えぇ!?そうなんですか?」
リエさん「何てね。嘘よ。他人の空似ってやつよ(笑)」
かなりビックリした。
まさかね…
次の日。
原くんは休み。
リエさんと私が上がった時にタカシが来た。
タカシ「リエちゃん。今日いい?」
リエさん「勿論。家?外?」
意味がわからなかった。
タカシとリエさんは「じゃ~ね~」と言って二人でタカシの車に乗り込んで、走り去っていった。
まさかタカシがそこまで酷い奴だったとは…
後から事実を知る事になる…
引いた…
タカシが怖くなった…
仕事を始めて1ヶ月半。
12月も半ばを過ぎた頃。
私が仕事中に、休みだったリエさんからメールが来た。
リエさん「子供達預かってくれない?歯医者行きたいんだ」
先輩の頼みを断れず…
歯医者なら長くても1~2時間ぐらいだろう…と思って預かる事にした。
仕事が終わって優真を迎えに行って急いで帰宅した。
ヒデもうちに来ていた。
リエさんが子供達を連れて来た。
リエさん「お願いね~」
そう言ってすぐに行ってしまった。
ヒデ「なぁ、この子タカシにそっくりじゃね?」
私「私もそう思ってた…」
子供達はご飯に夢中。
すごい食欲だった。
2時間たってもリエさんは来ない。
電話してみても電源を切っているようだ。
子供達はかなり汚れていたのでお風呂に入れてあげた。
湯舟の中を見て唖然…
>> 260
垢だらけだった…
よく見ると下の子二人の腕や太ももに痣がある…
何だろう…
まさか虐待…?
お風呂から出てまたリエさんに電話してみる。
やっぱり繋がらない…
何やってるんだろう…
下の子がソファで寝てしまった。仕方ないので布団を敷き、子供達を寝かせる。
優真は私が添い寝しないと寝ないので、リエさんの子供達はヒデにお願いした。
ヒデが子供の横に寝転がった瞬間「やめて!」と一番上の子が叫んだ。
ビックリして部屋に入ると上の子が泣いていた…
私「どうしたの?」
リエ長女「……」
私「おじちゃん(ヒデ)怖かった?」
リエ長女「……」
長女は少しだけうなずいた。
私「ヒデ何かしたの!?」
ヒデ「するわけないじゃん……俺はそっち行ってるからエミお願い」
長女は泣きながら静かに眠りについた…
>> 261
その後もリエさんに連絡するが繋がらない…。
ヒデ「もしかして虐待されてんのかな…」
私「そうかも…。男の人が怖いみたいだよね…」
ヒデ「リエさんの彼氏…?」
私「じゃあ原くんが…?」
ヒデ「マジかよ…可哀相…」
ヒデは帰ったけど私は明け方まで起きていた。
朝6時頃。
携帯が鳴った。
リエさんだ。
慌てて電話に出た。
リエさん「ごめんね~体調悪くて…寝てた。今から行くよ」
私「わかりました」
子供達を起こした。
長女の目は腫れている…。
リエさん「ごめんね~」
私「いえ、私はいいんですけど子供達は寂しがってましたよ…」
リエさんは一瞬目付きが変わったように見えた…
気のせいだろうか…
いや、気のせいではなかったんだ…
えみです。更新遅くなってすみません⤵
体調を崩して少し入院していました。過労です…
263さん~のお返事は感想スレの方に書きます。
まだ見てくださってる方がいるかどうかわかりませんが、これからまた更新していきます⤴🍀
さっきのリエさんの顔が気になる…
リエさんの長女がなぜ泣いたのか…
下の子二人の痣は何か…
気になる…
心配になる…
児童相談所に相談しようか…?
でももし違ったら…?
葛藤が続く…
クリスマスイブの夜
私は優真とヒデとファミレスでご飯を食べていた。
その時、リエさんから着信が…。
私「もしもし?」
リエさん「今日も子供達あずかってくれない?今からうち来て。」
リエさんは住所を言い、さっさと電話を切ってしまった。
行こうか迷った…
でももし子供達だけが取り残されていたら…。
危険だ。
可哀相だ…。
急いでリエさん宅へ向かった。
リエさん宅へ着いた。
市営団地だ。
チャイムを鳴らすが出て来ない…
三回目を鳴らすと…
長女がドアを開けてくれた。
長女の目は腫れている…
リエさんは?
と聞いても答えない。
そのまま「おじゃまします」と言って中に入った。
私達は驚くべきものを見た…
リエさんとタカシが…抱き合っていた。
行為の真っ最中…
下の二人は部屋の隅で絵を書いて遊んでいる。
私「リエさん!!」
リエ「もう来たの?早いね」
リエさんは冷静だった
タカシ「エミ…!とヒデ??」
リエさんとタカシが喧嘩しだした。
何もかもわかった
一番下の子はタカシの子。
下の二人はリエさんとタカシのセックスを嫌がり泣き喚く…
静かにさせるために虐待
長女はそれを見ているから男の人が怖い…
だからヒデを怖がったんだ…
目茶苦茶だ…
あまりに残酷すぎる…
リエさんを問い詰めたが認めない…
でもこのままじゃ子供達があまりに可哀相…
私達は児童相談所に通報する事を決意した。
リエさんは仕事を辞めた。
原君とも破局したようだ。
リエさんとタカシとはその後一度も会っていない。
二人がどうなったかはわからない……
年末。
リエさんが突然辞めたから忙しい。
私の職場は31日~2日までが正月休みになる。
私は優真を連れて久々にカナの家に行った。
お腹が大きくなっていた。
胎動が凄いと言うカナは幸せそう。
旦那さんが気を利かせて、子供達を外へ連れ出してくれた。
優真もカナの子についていった。
久々にカナと語り合った。
ヒデからのプロポーズ?とも取れる言葉の事をカナに相談すると、連れ子がいての結婚生活を話してくれた。
カナ「ヒデ君なら大丈夫!一回困った事にはなったけど(笑)何だかんだエミ一筋じゃん」
私「うん…でもまだユウヤの事忘れたわけじゃないし…」
カナ「今の状態は二人に失礼だよ。ユウヤ君だってあんたと優真の幸せを願ってるよ。ヒデ君だって優真可愛がってくれるんでしょ?」
私「そりゃそうだけど…」
カナ「結婚はまだ無理でもまた付き合ってみたら?それでも全然いいと思うよ」
カナはいつも私の悪い所もハッキリ言ってくれる。
背中を押してくれる
何でも本音を言い合える親友…
カナだけは本当に一生付き合える友達。
ヒデの事は嫌いじゃない
優真を可愛がってくれたり、辛い時に私を支えてくれる…
感謝してる…
でも…
異性として好きかと聞かれれば答えに迷う…
私の中にはまだユウヤがいる。
優真のたった一人の父親…
でも彼は二度と戻っては来ない…
どうしたらいいんだろう…?
私はヒデに失礼な事をしてるのか…
わからない…
- << 274 帰りにショッピングセンターに行った。 やはり家族連れやカップルが多い 優真をキッズ広場で遊ばせて私とヒデは見守る 私「やっぱり休みだから人多いね~」 ヒデ「だな。セールやってるし。エミは福袋買わなくていいの?昔いっぱい買ってたじゃん!」 私「今年はいいや~。あれパンツのサイズ違うとショックなんだよね(笑)」 ヒデ「確かに…(笑)」 私「……もう22歳かぁ。実感ないよね」 ヒデ「俺なんか24だよ。歳とったなぁ…」 私「ヒデもうそろそろ結婚してもおかしくない歳だよね!彼女作った方がいいよ~」 ヒデ「……そうだな」 ヒデの顔が変わった。 優真が眠くなってきたようでヒデとはバイバイして帰宅した。 私変な事言っちゃったよな…… 謝らなきゃ……
- << 275 その夜。 ヒデに謝ろうと思って電話した。 出ない… 三回電話しても出ない… もう寝たの? 怒ってるの? メールする事にした 私「今日は気に障るような事言ってごめんね。」 1時間待っても返事が来ない… そのまま寝てしまった。 朝起きて携帯を見た。 ヒデからの返事はない。 今日は両親と親戚の家に行き、帰りにユウヤの家に行った。 優真が嬉しそうに遊んでる。 ユウヤの遺影を指差して「パッパ~(パパ)」と言っている。 優真の成長をみんな喜んでいる。 ヒデからの返事はまだ来ない… 無視されている… そう気づいた
>> 272
ヒデに誘われ、初詣に行った。
私が願う事は一つ
「優真が元気にすくすく育ちますように…」
ヒデはあれ以来結婚に関する話はしてこない。
しばらくこのままでいいのか…
今の私には答えが出せない
優真が歩き疲れたとグズり出した
抱っこして歩くが、車までは遠い…
ヒデが手を差し延べてくれた。
優真を肩車してくれた…
優真も目線が高くなって喜んでいる
見渡せば家族連れが多い。
知らない人から見れば私達も家族に見えるだろう…
優真はヒデの事どう思ってるのかな?
ユウヤの写真を見せていつも「パパだよ」と教えているから…
ユウヤがパパだという認識はあるけど、優真にとってヒデは何なんだろう?
遊んでくれるおじさん?
お兄さん?
私の心は揺れていた
>> 272
カナはいつも私の悪い所もハッキリ言ってくれる。
背中を押してくれる
何でも本音を言い合える親友…
カナだけは本当に一生付き合える友達。…
帰りにショッピングセンターに行った。
やはり家族連れやカップルが多い
優真をキッズ広場で遊ばせて私とヒデは見守る
私「やっぱり休みだから人多いね~」
ヒデ「だな。セールやってるし。エミは福袋買わなくていいの?昔いっぱい買ってたじゃん!」
私「今年はいいや~。あれパンツのサイズ違うとショックなんだよね(笑)」
ヒデ「確かに…(笑)」
私「……もう22歳かぁ。実感ないよね」
ヒデ「俺なんか24だよ。歳とったなぁ…」
私「ヒデもうそろそろ結婚してもおかしくない歳だよね!彼女作った方がいいよ~」
ヒデ「……そうだな」
ヒデの顔が変わった。
優真が眠くなってきたようでヒデとはバイバイして帰宅した。
私変な事言っちゃったよな……
謝らなきゃ……
>> 272
カナはいつも私の悪い所もハッキリ言ってくれる。
背中を押してくれる
何でも本音を言い合える親友…
カナだけは本当に一生付き合える友達。…
その夜。
ヒデに謝ろうと思って電話した。
出ない…
三回電話しても出ない…
もう寝たの?
怒ってるの?
メールする事にした
私「今日は気に障るような事言ってごめんね。」
1時間待っても返事が来ない…
そのまま寝てしまった。
朝起きて携帯を見た。
ヒデからの返事はない。
今日は両親と親戚の家に行き、帰りにユウヤの家に行った。
優真が嬉しそうに遊んでる。
ユウヤの遺影を指差して「パッパ~(パパ)」と言っている。
優真の成長をみんな喜んでいる。
ヒデからの返事はまだ来ない…
無視されている…
そう気づいた
仕事が始まった。
いつも通り仕事をこなす。
ヒデからの返事はまだ来ない…
やっぱり怒ってる…
その次の日も連絡は無い
そのまま1週間がたった。
さすがに待てなくなり電話してみる…
すると……
「おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号を…」
えっ!?
解約!?
もう私とは連絡取りたくないって事かぁ…
だったらハッキリ言ってくれればいいのに…
何事もなかったように毎日時間が過ぎていく…
ヒデが来ない週末。
母も兄も気にする。
母「ヒデ君今日も来ないの?喧嘩でもしたの?」
兄「ヒデまたバックレたか?(笑)」
優真も気にする。
優真「ヒ~ヒ~?(ヒデは?)」
連絡が取れなくなったなんて言えなかった…。
ヒデ……
ごめんなさい……
深夜…携帯が鳴った。
ヒデの家電だ!
私「ヒデ!?」
ヒデ「うん俺。連絡出来なくてごめん。」
私「私こそごめんね。携帯解約したの?」
ヒデ「携帯水没した。だから解約して新しいのに変えたんだよ」
私「そうだったんだぁ…てっきり私と連絡取りたくないから解約したのかと思った」
ヒデ「まさか!そんな訳ないだろ。仕事忙しくて連絡遅くなってごめんな」
私「新しい番号とアドレスは?」
ヒデ「あ~今メールしとくよ。エミのアドレスも覚えてるから(笑)」
電話を切って数分。
ヒデからメールが来た。
ヒデ「ほんとごめんね~。俺はエミちゃんが好きだから(笑)いなくなったりしないよ~」
このメールを見てなぜかホッとした私がいた。
2月。
バレンタイン!
職場の男性に安い義理チョコを買った。
父と兄とユウヤの父には少し職場の人より高いチョコを。
優真にはチョコは与えていないので、幼児用ビスケットを綺麗にラッピングした。
ヒデ…どうしよう。
ユウヤにはまた手作りしようと決めていたが、ヒデのチョコは迷った…
結果、ユウヤのと一緒に手作りした。
バレンタインの前日にユウヤの家に行って、ユウヤ父とユウヤの仏壇にチョコを渡した。
ユウヤ父「やっぱりオジサンのは義理かぁ(笑)何年たってもユウヤは手作りだな。羨ましい(笑)」
ユウヤ母「エミちゃん彼氏いないの~?ユウヤに遠慮しなくていいのよ」
また背中を押される…
バレンタイン当日の夜
母に優真をお願いしてヒデにチョコを渡すために待ち合わせをした。
>> 278
私が先に待ち合わせ場所に約束の時間の10分前に着いた。
5分後、ヒデも来た。
いつもは優真もいるけど、今日は二人だけ…
何か変に緊張する
ヒデの様子も何だかいつもと違うような気がした
私が持ってる紙袋…
チョコが入ってる事に気付いているだろうか…?
ヒデ「飯食いに行くか」
私「うん」
ヒデ「いつもエミ仕事と育児頑張ってるんだから今日は呑もう!俺奢るし」
私「えっいいの?じゃあ甘えちゃお」
居酒屋へ行った
居酒屋もカップルが多かった
私は2杯しか飲まなかったけど、ヒデは6杯ぐらい飲んだだろうか…
酔っていた
居酒屋を出て、車を止めた駐車場に向かう
代行呼ばなきゃ
でもまだチョコ渡してない…
駐車場へ向かう途中、駅の前にある広場のベンチに座って休憩した
ヒデ「久々だから飲み過ぎたぁ…!!」
私「ほんとにね。飲み過ぎだよ。大丈夫?」
ヒデ「……ねぇ……エミは誰が好きなの?やっぱりユウヤ?」
私「……やっぱ酔ってる(笑)」
かわしてしまった…
ヒデ「もうエミが俺の事好きになってくれる事はないのかなぁ~俺はエミも優真も大好きなのにぃ…」
私「………ほら!!帰るよ!寒いし。」
ヒデ「そうだね。帰ろう。優真寝てるかな…」
代行を呼んでそのまま別々に帰宅した。
チョコは…
渡せなかった。
あんな事言われた後に、手作りチョコなんて渡したら期待させてしまう…
持ち帰って自分で食べた…
虚しかった
ヒデは次の日の朝、何もなかったかのように普通のメールをくれた。
私はその後もよくわからないモヤモヤした気持ちで毎日を過ごした。
仕事も慣れて来た。
リエさんが辞めてから2ヶ月。
新しい人が入ってきた。
1人は26歳独身のマヤさん。
もう1人は23歳独身の藤原君。
マヤさんとはすぐに打ち解けた。
マヤさんはすごく綺麗なのに彼氏は2年いないと言う。
意外だった。
私が未婚の母だと話した時も引かないで聞いてくれて、安心した。
マヤさんといるとなぜかホッとした。
優しいお姉さんのような感じだった。
藤原君はおっとりしてて、ほとんどプライベートな事は話さなかった。
年下の私にまで敬語を使ってくれていた。
マヤさんとは番号とアドレスも交換し、仲良くなっていった。
4月。
優真2歳の誕生日!
早かったような…
長かったような…
この頃から沢山お話してくれるようになった。
優真の誕生日パーティーをうちでやる事になり、ヒデとカナ一家を招待した。
マヤさんも来たいと言ってくれたので招待した。
みんなに祝ってもらい、プレゼントを貰い、幸せそうな優真…
この優真の笑顔。
優真の成長。
ユウヤにも見せてあげたかったなぁ…
マヤさんとカナの旦那さんだけは飲んでいた。
誕生日会も終わり、泥酔したマヤさんにうちに泊まっていくか聞いたが、帰ると言う。
私が送って行こうとしたけど、優真が眠たそうにしていて少しグズっていた。
ヒデがマヤさんを送っていってくれる事になった。
次の日。
案の定、マヤさんは二日酔いで出勤。
いつものように仕事をこなした。
昼休み、マヤさんはヒデの事をしつこく色々と聞いてきた。
マヤ「ヒデ君とエミちゃんって付き合ってるの?」
私「付き合ってはないですよ。」
マヤ「そうだよねぇ。まさかね。エミちゃん子供いるしね」
私「はい。優真がいるので優真を大事にしてくれて、私も結婚したいと思う人以外は付き合いません」
マヤ「まぁね。子連れの結婚は難しいよね。ちゃんと見極めなきゃすぐ×つくよ」
何だかいつものマヤさんとは違うような気がした…
その次の日。
マヤさんがヒデに送ってくれたお礼をしたいと言ってきた。
断る理由もなく、ヒデに了承を得てからヒデの番号とアドレスを教えた。
この時は深く考えていなかった…
これがいけなかった…
ヒデからマヤさんの事を相談された。
一度お礼として奢りたいからと強引に食事に誘われて行ったらしい。
マヤさんはまたお酒を呑んだ。
またヒデが送って行き、歩けないからと言われてマヤさんのアパートの玄関まで付き添い、帰ろうとしたら…
「パジャマに着替えさせて」と言って来て、マヤさんはそのまま服を脱ぎ始めた。
ヒデがその場を立ち去ろうとすると…
マヤさんに腕を掴まれ、強引にキス…
マヤさんはヒデの事が好きらしい…
大胆なアピール…
メールも毎日くるらしい…
ヒデは好きな人いるからと断ったらしいが、それでもしつこいマヤさん…
どうしたらいいだろうか?
というヒデの相談を受けてモヤモヤした
マヤさんはその後も普通に接してきたので、私もヒデから聞いた事には触れず普通に接した。
昼休み。
藤原君と二人。
いつも仕事の事以外は話さないからかなり気まずい…
藤原君はさっさとご飯を食べて携帯をいじっている…
私も黙々とご飯を食べた。
藤原「あの…」
私「はい…?」
藤原「誰かと何かトラブルありましたか?」
私「えっ?何もないですよ」
藤原「エミさん、サイトに悪口書かれてますよ…」
藤原君はサイトを開いて携帯を見せてくれた。
それは地元のサイト。
私の名前がフルネームで出ていた。
「ヤリマン女」
「きもい」
「しね」
「男に逃げられてシングルマザーお疲れ(笑)」
「ヤリマン女が母親だなんて優真かわいそう」
「〇市のみんな!〇〇エミには関わらない方がいいよ!性病移るよ!」
など連続投稿で悪口ばかりが並べられていた…
だれ……?
何これ…
ヤリマン?
男に逃げられてシンママ?
何で優真の名前知ってるの?
優真の名前までサイトに載せるなんてあんまりだ…
もしこれを優真の保育園の先生やママ達が見たら…?
優真まで軽蔑されてしまう……
どうしよう……
こんな酷い事するの誰?
一気に食欲がなくなり、吐き気がしてきた。
結局食べたものも全部吐いてしまった…
藤原君の話だと一つ一つのレスの投稿時間が1~2分しか空いていない事や文章の書き方から考えて全て同一人物だと言う…
やっと落ち着いてきていた精神状態が一気に崩れてしまった…
昼休みが終わり、元気がない私にマヤさんが話し掛けてきた。
マヤ「何か元気なくない?大丈夫?」
私「…大丈夫です」
マヤ「ならいいんだけど」
マヤさんは普段通り。
そのまま仕事をこなし、優真のお迎えへ…
ビクビクしながら保育園に入る…
あんなサイト…
誰も読んでない
誰も見てない
そう自分に言い聞かせる
優真の笑顔を見ると…
涙が溢れ出してきた
優真ごめんね…
嫌な思いさせてしまうかもしれない…
こんなママでごめんね…
その夜。
ヒデから電話が来た。
ヒデ「言いづらいんだけど…〇〇ってサイトにエミの悪口書かれてる…お前心あたりないの?」
私「知ってる。今日職場の人が教えてくれて見たよ」
ヒデ「職場の人ってマヤさん?」
私「違うよ?ヒデマヤさんから聞いたの?」
ヒデ「うん。今日メール来てて書いてた。」
私「何でマヤさんまで…。そのサイトそんなに有名なの…?」
ヒデ「さぁ…俺は初めて見たよ…こんな酷い事するやつ許せねぇよな」
私「もう誰だっていいけど…あんなの消して欲しい…」
この時…私はマヤさんを疑い始めた。
マヤさんはヒデが好き。
そのヒデは私と仲良くしてる。
マヤさんはそんな私の事が気に入らない。
マヤさんは優真の名前も知ってる。
そう考えるとつじつまが合う…
それに私は他に全く心当たりがない…
きっとマヤさんだ…
私はマヤさんに相談してみる事にした。
マヤさんはもう知ってるし、マヤさんの反応を見たら犯人かどうかわかるかも…
そう思って作戦をしかけた。
私「マヤさん…こんな事誰にも言えないんですけど、マヤさんだけに言います…私サイトに悪口書かれてるんです…」
マヤ「えっ?どこのサイト?」
私「〇〇ってやつです。有ること無いこと目茶苦茶書かれてて…優真の名前まで出されてるんです…」
マヤ「えっ何それ!最低だね!見せて」
マヤさんに携帯を見せた
他の人の新たな書き込みもあった。
[エミって奴知ってるけど、確か子供の父親って死んだんじゃなかった?]
[え~!!哀れな子(笑)]
[子供可哀相だね。虐待とかされてないよね?逃げた男の子供だから愛せないとか(笑)]
[コイツ私の友達にレイプされた奴(笑)きたね~女だよ!男性陣!顔に騙されんなよ(笑)]
書き込みが増えていた…
マヤさんの顔は…一瞬ニヤけたような気がした…
後々よく考えるとマヤさんはヒデにこの事を教えたはずなのに…
「どこのサイト?」
と知らないフリをした。
明らかにおかしい。
それにサイトを見せた時のあの顔…
絶対ニヤけた。
私はあの表情を見逃さなかった。
やっぱりマヤさんだ。
そう確信した。
帰宅後。
またサイトをチェックする。
また新たな書き込み…
[きっと今頃オドオドしてるよ]
[ここ見ながら悩んで泣いてんのかな(笑)自業自得~]
[もう男作るなよ]
きっとマヤさん…
私がここ見てるっ分かったからこその書き込み内容。
男作るなとは間接的に「ヒデと付き合うな」という意味。
そんな回りくどい事…
馬鹿みたい…
陰湿すぎる…
ヒデが好きなら普通に告白すればいいのに。
何で出来ない?
私に負けるから?
私は負け犬の遠吠えだと思って気にしない事にした。
マヤさんはヒデを誘った。
「エミちゃんの力になりたいから」
と言ってきたらしい。
ヒデはまだマヤさんが犯人だとは思っていない。
ヒデは私に行こうか迷ってると相談してきたが、行って来なよと背中を押した。
ヒデから連絡が来るまで落ち着かない…
二人で何話してるの?
多分マヤさんはいかにもいい人を演じてるんだろう…
もしかして告白とか?
まさかね…
まさか…
私は寝てしまった。
深夜。
目が覚めた。
連絡は来てない。
寝れなくなり、またサイトを見る。
また新たな書き込みが…
[〇〇エミ。19〇〇年〇月〇日生まれ。〇型。一人息子は2歳の優真。優真の父親は〇〇ユウヤ。3年近く前に事故死。そのためエミはシングルマザー。今はヒデと呼ばれる年上男性と交際中。優真も懐いてる。エミは私の旦那の中学高校時代元カノ。旦那の私物にエミの中学時代のプリクラがあったから載せておきます。]
え?
え…?
ほぼ事実…
ヒデと付き合ってるってところ以外は…
怖い…
何でここまで知ってるの?
嘘書かれるのも嫌だけど…
事実を書かれたら書かれたで怖い…
気持ち悪い…
おそるおそる貼付けてある画像を開く…
私だ…
私とカナのプリクラ…
古くて見えにくいけど絶対そうだ…
不安になる…
もう抑えきれない…
段々呼吸が乱れてきた…
まただ…
また過呼吸…
手も足も痺れてきた…
私「た…助けて!」
優真が気付いて泣き出した。
母が部屋に来た。
母「どうしたの?優真泣いてるよ?寝てるの?」
私の返事がない事を不審に思った母がドアを開けた。
母「どうしたの!大丈夫?エミしっかりして!」
私「く…苦しい」
母はポリ袋を持ってきて私の口を覆った。
過呼吸の時は二酸化炭素を吸うと楽になるらしい…
しばらくして落ち着いた。
母が温かいお茶を持ってきてくれて、それを飲むと不思議と少し落ち着けた。
私「ねぇ…お母さん。私…間違ってるのかな?」
母「何が?」
私「優真を産んで育ててる事…優真を不幸にしてるのかな?」
母「どうしたの急に。そんな事ないでしょ。優真はエミを選んでお腹に来てくれたんだよ」
私「でも普通に両親揃った家庭に生まれてれば…こんな汚い母親じゃなければ…」
母「大丈夫。エミは汚くなんかないよ。それに優真の顔見れば幸せかどうかはすぐわかるでしょ。優真はエミじゃなきゃダメなんだよ」
母は私が落ち着くまでずっとそばにいてくれた。
いつの間にか寝ていた。
ヒデからの連絡は無かった。
職場に着くとマヤさんが寄ってきた。
マヤ「見て!また書き込み増えてるよ!」
マヤさんが携帯を見せてくる。
[〇番すげぇな!これ事実?プリ本物?]
[この子〇〇って飲み屋で働いてる子と似てる!まさか子供いるくせに水商売?]
[俺の知ってる風俗嬢に似てる(笑)]
[風俗とかキモっ!まじ引くわ]
目の前が真っ暗になった…
もうだめ…
死んでしまいたい…
あきらかに落ち込んでる私を見て…マヤさんは…
マヤ「コイツら最低だね。エミちゃんも優真も可哀相。ヒデ君だって名前出されていい迷惑でしょ」
私「そうだね…」
マヤ「もう切ったら?ヒデ君自由にしてあげたら?」
自由に…?
私はヒデを縛ってるの…?
確かに私がいなかったら名前なんか出されずに済んだのに…
私はヒデに迷惑かけてるんだ…
頭の中が混乱していた…
私「マヤさんが私の立場だったらどうしますか?」
マヤ「うーん…恥ずかしいから外出られないし、遠くに引っ越すかな…周りに迷惑かけたくないから携帯も解約するかな」
これがマヤさんの願望…
こんな事までして私に遠くへ行って欲しいんだね。
もうヒデには迷惑かけられない。
もうバイバイしよう
私は優真さえいてくれたらそれでいい…
私「マヤさん。私ヒデにバイバイするわ」
マヤ「そっか。でもそれがいいと思うよ。エミちゃんまだまだ若いしね。」
仕事してても帰宅してからも色々と考えてしまう。
もしユウヤがいたら何て言う?
ごめんねユウヤ。
こんなだらしなくて。
ユウヤにも優真にも申し訳ない…
ねぇ…
ユウヤはどう思うの?
私ちゃんと母親になれてる?
それともやっぱり一人で優真を育てるのなんて無理なの?
ユウヤがいてくれたら…
私も優真もどれだけ心強かった事だろう…
パパの存在は大きい…
優真の隣に添い寝して、色々考えながら泣いていた。
ふと優真の寝顔を見る。
ユウヤにそっくり。
もっと強くならなきゃいけないのに…
こんな事ぐらいでヘコんでちゃこの先やってけないのに…
馬鹿で弱い私
こんな自分ともサヨナラしたいよ…
ヒデにメールを送る
私「いきなりごめん。もう会えない。今までありがとう」
このメールを送った直後、すぐにアドレスを変えた。
これでいいんだよね…?
間違ってないよね…?
ユウヤがいなくなってから、いつも支えてくれたのはヒデだった。
気付けばいつもそばにいてくれた
優真の事を本当に可愛がってくれて、父親代わりをしてくれた
色々あったけど、中学生の時に知り合って、一番長い時間を一緒に過ごしてきたのはヒデだった。
私はそれをたった一通のメールで切った。
でもヒデの幸せのため…
優真からヒデまで奪ってしまった。
本当にごめんなさい…
私はそのまま寝てしまった。
朝、携帯を見ると着信が10件もある。
マナーモードにしていたので全く気づかなかった。
全部ヒデ
電話…かけない方がいいよね…
今日は休み。
優真と二人でのんびり過ごした。
優真と遊んでいる時はいいけど、優真が寝るとどうしても色々考えてしまう…
誰もいない家に優真と二人…
見なきゃいいのに…またあのサイトを開いてしまう…
また書き込みが増えてる…
[優真君のママってそんな人だったんだ…]
だれ?
保育園ママ…だよね…?
バレてしまった…
もうダメだ…
優真ごめん…
カッターへ手を伸ばす…
カッターを自分の手首へ当てる
思いきり切れば死ねるだろうか…
それとも包丁でお腹を刺す…?
でも優真の事が頭から離れない…
結局…
どこも切れなかった。
夜もヒデから何回か着信があったけど無視していた。
次の日。
体調も悪く、マヤさんに会いたくなくて…
仕事を休んでしまった。
マヤさんから昼休みにメールが来た。
マヤ「今日どうしたの?何かあった?」
私「ちょっと具合が悪くて…迷惑かけてすみません」
そして仕事が終わった頃…
またマヤさんからメールが…
マヤ「ヒデ君とデートしてくるね」
デート?
嘘でしょ?
よりによってマヤさんなんて…
ヒデ騙されちゃダメだよ…
モヤモヤする
優真の相手をしながら…
夕飯の支度をしながら…
お風呂に入りながら…
優真を寝かせながら…
あのサイトの事ばかり考える…
「デート」というのも気になる…
辛い…
誰かに話したい…
聞いてもらいたい…
携帯を開いて電話帳を開く
すると…
ヒデからの電話
携帯を触っていたので出てしまった
ヒデ「もしもし?エミ?」
私「……」
ヒデ「エミ?聞こえてる?」
私「……ごめん」
ヒデ「犯人わかった。あれ全部マヤさんだわ」
私「そうだよ…。私知ってた」
ヒデ「何で言わなかった?」
私「……証拠がないから…。ヒデは何でわかったの?」
ヒデ「マヤさんがボロ出したから問い詰めたら吐いたよ」
私「もう保育園のママにも知られたかもしれない…。私消えた方がいいかな?」
ヒデ「今から行ってもいい?」
私「えっでももう遅いし…」
ヒデ「待ってて」
電話は勝手に切れた
ヒデがうちに来た
優真も寝て、ゆっくり話が出来る
ヒデ「マヤさんに付き合ってって言われたんだけど、俺はエミが好きだからって断った。そしたらマヤさんエミの悪口言い出して…あのサイトの事とかね…」
私「そっか…もういいよ。あんまり聞きたくないかも」
ヒデ「二度と書き込むなって言っといたから。それともう俺とエミに近づくなってキツメに言ったから…あの人仕事辞めるかも」
私「そんな人の事より…保育園ママに知られたかもしれないんだよね…会わせる顔ないよ…」
ヒデ「……でもさ、もし知られたとしても事実じゃないし、あんなの嘘ばかりじゃん?エミが堂々としてなかったら、余計変に思われるんじゃない?」
私「……うん」
ヒデ「優真だってエミが元気なかったら心配するし。“母は強し”じゃなかった?(笑)」
私「そうなんだけど…私なんかが母親でいいのかなって…。一人で育てていけるのかなって…自信無くしたよ…」
ヒデ「考えすぎ!優真はエミを選んで生まれてきたんだから。自信持ちなよ。母親が嫌いな子供なんていないよ」
私「でも今回のは…さすがに落ちたわ…立ち直れるかなぁ…」
また堪えていた涙が溢れ出してきた。
サイトの書き込みが頭の中をグルグル回る…
周りの人に悪口を言われている自分を想像してしまう…
ヒデ「エミは一人で溜め込みすぎ。ちゃんと吐き出しなよ。俺にでもカナちゃんにでも。」
私「こういう性格だからね…」
ヒデ「もう頑張りすぎるなって。前から言ってるじゃん。もっと頼っていいから」
ヒデの言葉で少し前向きになれた。
あんな嘘ばかりの書き込み…
もう気にしない
堂々としてれば何も恥ずかしくない
優真のため…
頑張ろう
次の日は仕事に行く事にした
仕事に行く支度をする。
昔と同じ…
あの吐き気…
でも私は負けない
弱い私とバイバイしたい
自分に言い聞かせていた
保育園に優真を送り届けたが、特に変わった様子はなく、少しホッとしていた
職場には…
マヤさんが既に来ていた。
挨拶をしても無視され、新人が交代でやってるトイレ掃除が終わっていない。
今日はマヤさんの番。
声をかける。
私「トイレ掃除…してもらえますか?」
マヤ「…あんたがやれば?昨日休んだんだし」
かなり偉そうな感じで上から目線…
しかも“あんた”って…?
仕方なく私がやる事にした。
トイレを見ると明らかに変。
トイレットペーパーと汚物が散乱している。
もしかして…
マヤさん…?
嫌がらせのつもりなんだろうか…
何でこんな目に合わなきゃいけないんだろう…
泣きたくなる…
泣きながらトイレ掃除をした…
今日はマヤさんが先にお昼に入った。
私がお昼に入るのと入れ違い。
正直マヤさんと一緒じゃなくてホッとしていた。
しかし……
更衣室に戻って驚いた…
私のバックが…ゴミ箱に捨てられている
バッグにジュースもかけられていた…
手帳が…破られてバラまかれている…
優真とユウヤの写真も…
ぐちゃぐちゃに破かれていた。
それを見た瞬間…
もうダメだと思った
もう限界だ。
私はそのまま更衣室を出て裏口から店を出た。
どこまでもどこまでも走った…
どのくらい走っただろうか…
ある公園の前にいた。
行くところもない
疲れた…
少し休もう…
公園のベンチに座った
何で…
もう頑張れないかも…
もう生きて行くのがしんどい…
私ばっかり…
こんな不幸な人生…
もう投げ出したい…
どう自殺しようか考え始めた…
周りを見渡し…
あの位の高さじゃ死ねない…
あそこは人の迷惑になる…
「どうかしたのかい?」
誰かが声をかけてきた。
振り向くと見知らぬおじいさん。
80歳くらいだろうか。
小綺麗な感じの人だ。
おじいさんは私の隣に座り、戦争の話をし始めた。
私の死んだ祖父より年上のお爺さん。
かなり詳しく話してくれた。
お爺さんもお兄さんと弟さんを戦争で亡くしたと言う…
家族を亡くした苦しみも話してくれた…
お爺さん「お姉ちゃんは今辛い事があったんだろうけど、そんな辛い事ばかりが続くわけじゃない。今にトンネルを抜ける時が必ずくる。じっと耐える時だぞ」
この言葉は今でも忘れません。
ハッキリと覚えています
私は見知らぬお爺さんに助けられました…
お爺さんはそう言い残して去って行った。
冷静になって携帯を見る…
職場から何度も電話が来ている。
そしてマヤさんからメールが入ってる。
マヤ「とうとう逃げちゃった?バッグどうする?(笑)」
店長の携帯に電話した。
かなり叱られた…
益々落ち込む…
マヤさんが上がったら車を取りに職場に戻らなきゃ…
その時店長に全部事情話そう…
そろそろマヤさんが上がる時間。
マヤさんの車が出て行ったのを確認して職場に戻った。
まずは店長に謝罪しに行く…
私「突然抜け出して申し訳ありませんでした」
そしてマヤさんとの事を話した。
店長「俺が〇〇(マヤさん)から聞いた話と違う。みっともないから言い訳なんかしない方がいい」
信じてもらえなかった…
更衣室に戻るとバッグも手帳も破かれた写真もない。
財布だけが机に置かれていた。
証拠隠滅…
マヤさんが捨てたんだろう…
悔しくて悔しくて…
辛くて…
苦しくて…
帰りの車の中で泣いた…
優真を迎えに行き…
何となく家に帰りたくなくて、遠回りした。
ヒデの家のそばのコンビニに来た。
ヒデにメールする
私「今〇〇の前にいるんだけど…少し会えない?」
ヒデ「いいよ。すぐ行くから待ってて」
ヒデに聞いて欲しかった
全部吐き出したかった…
ヒデ「エミから会いたいなんて珍しいね(笑)今日大丈夫だった?」
私「保育園は大丈夫だった…けどマヤさんが…」
今日あった事を全て話した
話してるうちに段々また悔しくなってくる…
辛くなってくる…
そんな私を見ているヒデも辛そうだ…
優真だけが無邪気に笑う
ヒデに抱っこされて喜んでいた
ヒデが重い口を開く。
ヒデ「もう仕事辞めたら…?」
私「うん…マヤさんがこのままなら…耐えられないかも…」
ヒデ「あの人はきっと辞めないよ。これ以上傷付く前にもう辞めなよ…もういいよ」
私「うーん……」
ヒデ「飯行こうよ!優真腹減ってきたみたいだし」
三人でファミレスに行った。
いつもは私の隣に座る優真がヒデの隣がいいと言い出した。
ヒデの横でお子様ハンバーグを美味しそうに食べる優真。
子供はいいなぁ…
単純。
素直。
私だって小学生の頃までは悩みなんてなかったんだよなぁ…
何で大人って面倒臭いんだろう…
私は食欲が無く、スープだけ飲んだ。
帰宅途中、優真が寝てしまった。
コンビニで求人情報誌を買い、私の家に行く事にした。
家に着き、優真をそのまま寝かせた。
熟睡している
求人情報誌を開く
正社員の求人はあまりない
ほとんどバイトだ。
私「やっぱり転職は無理かなぁ…」
ヒデ「何で?」
私「これバイトばっかじゃん…収入かなり減るし…」
ヒデ「だからもう無理すんなって言ってるじゃん。バイトでいいよ」
私「でもねぇ…」
私の携帯が鳴った。
メールだ。
マヤさん…
メールを開くのが怖い…
体が震える…
マヤ「店長に言わないでね。言ったらまた大変な事になるし(笑)❤」
ハートが不気味…
寒気がする…
ヒデにメールを見せた
ヒデ「これもう脅しだろ。もう行かなくていいって。自分追い込むなよ」
私「でももう店長に言っちゃったよ…。信じて貰えなかったけど…」
ヒデ「だから行くなって言ってんの。何されるかわかんねぇし。もう辞めちゃえよ」
私「辞めろって簡単に言うけど、私はヒデみたいに身軽じゃないんだよ?優真もいるから自分だけの問題じゃないの!」
感情的になってしまった…。
ヒデ「……そんなの知ってるよ。だから前から言ってるじゃん。俺が支えるって。忘れた?」
私「ごめん。忘れてないよ…」
ヒデ「俺の事嫌いならそれはそれで諦めるよ。嫌い?」
私「嫌いじゃないよ。でも恋愛対象として好きかどうかはまだよくわからない…」
私「でもヒデが居ないと困る。都合いいかもしれないけど…」
ヒデ「俺だってエミと優真が必要だから一緒に居るんじゃん。都合いいなんて思ってないし、ちゃんと付き合ってよ?」
私「でも優真はヒデの子供じゃないし、ユウヤの事だってまだ忘れたわけじゃないよ?」
ヒデ「忘れなくていいよ。イイ思い出になるように頑張るから。優真の事だって真剣に考えてるから告白してんだよ。遊びだったら子持ちのエミになんて告らないよ」
「忘れなくていい。イイ思い出に…」
というヒデの言葉。
私はヒデの言葉に甘えて付き合う事にした。
そして転職した。
食品工場のパート。
9~16時で時間も短いし、時給制。
欲張るのはもう辞めた。
意地を張るのももう辞めた。
頑張り過ぎるのももう辞めた。
優真の前で笑顔でいられたら…それでいい
優真が笑顔でいてくれたら…それでいい
仕事も恋愛も順調、親子関係も良好…
そんな幸せな時を過ごし…
正式にヨリを戻してから3年…
私はとうとう二つ目の幸せを掴んだ。
私にとって一つ目の幸せは、もちろん優真が生まれてきてくれた事。
二つ目の幸せは…私の過去を全て受け入れてくれる、そして優真の事をとても大切にしてくれる…
そんなヒデとの結婚。
死ななくて良かった。
生きてきて良かった。
今は心からそう思っている…
-----おわり-----
🍀あとがき🍀
今年6月、ヒデと入籍しました✨
ヒデと出会ってから11年…
11年もの長い間には色々ありましたが、幸せになる事が出来ました😊
この小説を書き始めたのはヒデとの結婚が決まり、過去を整理したいと思ったのがキッカケでした。
浮気、レイプ、流産、友人との行き違い、大切な人の死、大切な命の誕生、サイトでの中傷…
本当に色々ありましたが、全て書き尽くしました。
私が中学生の時から書いてきた日記と自分の記憶を頼りにこの小説を書きました。
私の過去を読んでくださった方の中には引いた方もいらっしゃると思います。
でもこの場を借りて、全てを書き尽くす事により、私の心は整理できました🍀
ヒデと付き合ってからの事を書かなかったのは、特に問題もなく、辛い出来事がなかったからです🍀
🍀現在🍀
優真は5歳になりました😊
顔はユウヤにそっくりらしいです😊
ヒデと仲良くやってます☀本当の親子みたいで二人で遊んでいる姿を見るととてもほほえましいです🌱
ヒデは毎日私と優真のために働いてくれています😊優真を本当の息子のように可愛がってくれて、でも甘いだけではなく、叱る時はちゃんと叱る🌱立派な父親です✨
私は親戚が経営してる会社の内職をやらせてもらっています😊体調の事など考えると今外で働くのは無理なので、仕事をくれる親戚にも、稼いできてくれるヒデにも感謝しています✨
カナは旦那さんと子供達と仲良く暮らしています😊今三人目妊娠中で来年出産予定です✨
ユウヤのお父さんは今一人暮らしです🌱私の結婚もとても喜んでくれました☀今でも時々優真を連れて遊びに行きます✨
優真の事は自慢の孫、私の事は可愛い娘だと言ってくれてます😊
🍀4ヶ月という長い間、ずっと読み続けてくださった皆様🙇本当に有難うございました🙇✨
途中体調が優れなかったり、ユウヤのお母さんの事など色々あって更新出来ない時期もあり、ご迷惑をかけたと思います🙇
こんな至らない主でしたが、いつも皆様の温かい応援レスに元気をもらっていました🍀
完結まで辿り着けたのは皆様のおかげです✨
心優しい皆様が幸せになれますように…🙏心からお祈りいたします🙏✨
本当にありがとうございました🙇
素晴らしい話で感動しました😢
毎日、毎日えみさんの話を楽しみにしていました。
本当に大変な過去だったけど😢
今が幸せで本当に嬉しいです😢
これからは苦労した分、いっぱいいっぱい幸せになって下さい😊
読んでいて、心が熱くなる素晴らしい話でした。
実際の貴方に出会ってみたい😊そう思いました。
素敵なお話を本当にありがとう😊
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えみさん、お疲れ様でした📝
色々本当に大変だったでしょうが、あの知らないお爺さんの言葉…私の心にも響きました😢
今は優馬くんとヒデさんと幸せそうで良かったです☺
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