アジサイの咲く頃

毎年、訪れる梅雨には気分は憂鬱になる

そんな俺の気分をソッと癒してくれる花

アジサイ･･･

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哲の住みかは、町外れのオンボロ屋敷

真夜中に激しい雨が容赦なく降り続いている

寝苦しいのか、哲は何度も寝返りを打っていた

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翌朝には、雨も上がり太陽がギラギラ眩しかった
寝不足気味な頭で哲は車を走らせていた

向かうは毎年、訪れるアジサイ寺

一年前に別れた彼女と訪れた、おもいでの寺だ

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静寂

哲は、ゆったりと歩いては
立ち止まり･･･

アサガオと彼女、葵の笑顔を重ねていたのだった

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アサガオ⁉


なぜ　今、アサガオなんだ⁉

葵と出会った朝に見たアサガオが眩しかったからなのか

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一年前のことが、つい昨日のことのように次から次へと思い出されて哲は胸が締め付けられそうだった


あの時、繋いだ手を離さなければ･･･

もう少しだけ葵の気持ちに寄り添ってあげてたら･･･

後悔してもしきれない、自業自得とはこの事だなと哲は己れの愚かさに腹立たしさを感じていた

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どれくらいの時間、寺に居ただろうか

車に戻ろうと歩き始めた時
哲の前に眩しい真っ白なアジサイが姿を現したのだった

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葵の声がしたような気がした


『ね、私が白いアジサイを見たと言ったでしょ？』

哲が、声のするほうに目をやったとき
そこには微笑む葵の姿が・・・

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哲は吃驚して『久しぶりだね』と葵のほうに近づいた瞬間・・・・・

あたりが一瞬にして靄がかかったようになったのだ

哲の視界から葵の姿が次第に遠くに行ってしまう(どうしたことか？夢を見ているような気分だ)

頭がぼんやりしながらも哲は懸命に葵の名を呼び続けた

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霧の中のアジサイ


葵の姿は何処に・・・

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それっきり、葵には会うことはなかった


何故ならば、葵は数日前に急死したのだから。。。


終わり

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