ねんねして

2000年12月25日

この聖なる日に私は女の子を産んだ


それはまさに

神様からの贈り物で


私が産まれた意味

私が生きてきた意味を

この子は持って来てくれた


こんな私でも

世界に認められたような

そんな誇らしい気持ちにもなった


小さな小さな命を

とても愛おしく思った

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夫が娘に

『愛美(まなみ)』

と言う素敵な名前を考えてくれた


「たくさんの愛を知って、たくさんの愛を与える子になって欲しい」

そう言って夫は

小さな愛美を眩しそうに見つめる


そんな光景を見て

改めて本当に幸せだと感じた


今まで生きてきて一番の幸せを

この時に実感して胸が心地よく高鳴った


幸せだ

この家族を守りたい

真実を守りたいと思った

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産院に義親が来てくれた

「まぁ！お姉ちゃんの小さな頃にソックリね！」

そう言ってキラキラした目で

お義母さんが愛美を見つめている


お姉ちゃんと言うのは

夫の２歳年上の姉のことで

まだお姉さんは未婚なので

義親にとって愛美は初孫だった


それからは抱っこしたり

何枚も何枚も写真を撮ったり

お義母さんは愛美にベッタリだった


私は眠りたかったけど

こんなに喜んでくれてるのに

私が休むわけには行かないよね


主役は可愛い愛美だし

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お義母さんとは逆で

お義父さんは居心地が悪そうに

「ここは病院なんだから、そんなに騒いじゃ駄目だろう…」

そう言ってお義母さんを咎めても

「何言ってんの！こんなに可愛い孫ちゃんなんだもの、ほらあなたも抱っこしてみなさいよ！」

って、お義母さんに

無理やり愛美を抱っこさせられていた


初めて愛美を抱いたお義父さんは

とてもぎこちなくてビクビクしていて

「こ、こんなに軽かったかな、何だか怖いよ」

と、少し恥ずかしそうに笑っていた


これもまた

とても幸せな光景だと思った


お義父さんもお義母さんも

愛美の誕生を喜んでくれている


それがとても嬉しかった

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「じゃあ退院したらお家にお邪魔させて貰うわね、あなたはゆっくり体を休ませなきゃ駄目よ」

そう言って義親がやっと帰ってくれた


結局は３時間も見舞っててくれて

外はスッカリ真っ暗になっていた


疲れた…

「ゆっくり体を休ませなきゃ駄目よ、かぁ…」

お義母さんの言葉を独り言で言ってみる


疲れたけど

愛美が可愛いから仕方ないかな


きっともう少ししたら

仕事帰りの夫も来てくれるはず


そう思いながらも

疲れていたせいか私は寝てしまった

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「市井さん、ご飯ですよ～」

私は看護師さんの声で目が覚めた


私は２時間ほど寝ていたみたいで

愛美もオムツが濡れたのか泣いていた


愛美のオムツを変えて

愛美を抱っこしてあやしながら

「パパ遅いね～」

時計と真っ暗な外と携帯電話を交互に見た


携帯電話は光ってないし

夫からの連絡も来てないみたいだった


定時で仕事が終われば

とっくにお見舞に来ても良い頃なのに


既に時計は７時になろうとしていた

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夫に電話をしてみると

「………」

まだ仕事中なのか夫は電話に出なかった


夫にメールを送ってみる

『お疲れ様、まだ仕事中かな？
今日は来れそうにないの？
お義父さんとお義母さんが来てくれたよ』

メールを送って再び外を見ると

チラチラと雪が降り始めていた


少しでもいいから

夫が愛美に会えたらいいなって思ったけど


着信もないし

メールの返事もないし

お見舞いの時間も過ぎてしまった


私が夫に会いたかったんだな

何の音沙汰もない携帯電話を握ったまま


無性に夫に会いたくなった

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