最後のラブレター
私の都合の良い男たち。
働くクラブの常連の、たっちゃん、雅也。
ナンパで知り合ったショウゴ。
昼間働く会社の荒川さん。
合コンで知り合った、なべさん。
同じく合コンで知り合った康弘。
ショウゴ、なべさん、雅也は私と同じ感覚の遊び人。
『俺を都合の良い男に使ってくれ。』
自らこっちも遊びだよと告知。
だけどかかるお金は全て皆彼ら持ちo(^o^)o
当たり前だよね( ̄。 ̄)
あとの三人は三股だ。
人生真面目すぎたらつまらない。
自分がよければこんな恋愛も最高に気持ちいいよ?
たくさんチヤホヤしてくれる。
女も上がるよ☆
・・・
あなたに出逢うまでは、そう思っていた
- 投稿制限
- 1人につき1レスのみ
私の働くクラブの客層は、
年齢幅が広い。
じいさんにあたったら、山菜とりの話や盆栽の話や興味のない話ばかりしてくる。
興味のない話は面倒だけど…
『ユキちゃんだっけ?家の電話番号おしえてや』
と、まだまだ家電の番号から聞いてくる人もいる。
『あ、うちは家に電話ないんですぅ。ごめんなさぃ。でも今日は楽しかったなぁ~』
このように、楽な特典もある。
そして《ユキ》とはお店の源氏名で、本名は
篠原幸子。
幸子…
サチコ…
昭和な名前だよね…!何度親を恨んだことか( ̄ー ̄)
まあ親と言っても、片親で父親は私が5歳の時に女を作って家をでた。
後に離婚届が郵送されてきて、ママはすんなり離婚届を区役所へもっていった。
ママにも好きな人がいたみたいだから丁度よかったのかもね。
愛って深いようで時にはなかいものなんだね。
ところで今日は客が少ない。
給料日前だもん。
何だかんだ言ってこの仕事は性にあっているし、母親も水商売だから全く抵抗もなかった。
仕事を終えて、ビルから出る。
そして近くのコンビニの前が康弘との待ち合わせ場所。
『おまたせ~』
私は康弘の車に笑顔で乗り込んだ。
康弘は大人しい性格なので、コクりと頷くだけ。
体はガテン系で、服のセンスもそこそこ。
顔はひとことで言うなら猿顔?
『どこの焼き肉食べに行く?』
『◇◇◇かな?遅くまでやってるよ』
『あのさ、さっちゃん…』
『なに?』
『…焼き肉食べたらホテル行かない?』
『………だめ!
今日…アレだし…』
『そっかそっか、うんわかった。急にごめんな』
私だって、彼氏全員といっつもかっつもセックスさせているわけじゃない。
だいたい泥酔してわけがわからなくなった時だけ。
私のペースじゃだめな男は全然去ってもよし!
疲れたあとの焼き肉は格別だった。
『さっちゃん美味しい?』
美味しそうにお肉を頬張る私を、康弘が微笑ましく見つめ問いかける。
ちなみに彼は28歳だ。
年上で落ち着いた性格の彼は私をとても可愛がってくれる。
『うん!めちゃくちゃ美味しい~たまらん!』
私が言うとしばらくして
『…さっちゃんさぁ、明日仕事休みだよね?
昼間、映画でも観ない?』
(明日は、荒川さんとデートだ。)
『…あ~休みだけど、実家に帰る用事があるの…
映画観たかったなぁ~ごめん…』
『…そうか、そういう理由なら仕方ないね…』
康弘は本当に残念そうだった。
たまに私にも僅かながらに良心があるみたいで、こんなにズルくていいのだろうか?と思う瞬間もある。
でも止められなかった。
翌日の午前11時。
♪♪♪♪♪
携帯が鳴った。
電話『もしもし!』
電話『もしもし?篠原ちゃん?着いたよ~』
今日デートする約束の荒川さんから、迎えにきたよの電話がきた。
私は、化粧をナチュラルに決めて家の前に出た。
『おはよう~』
私は笑顔で、荒川さんの助手席に乗り込んだ。
『おはよ!』
と、荒川さんは言い私の頭をくしゃっと撫でる。
彼は私が昼間勤める会社の上司。
役職は主任だ。
年齢は34歳。そして背が高くてひょろっとしている。
ちょっとエラの張った童顔で犬顔。
女性には誰にでも優しいタイプ。
みんなに見せる優しさが、私だけのものにならないかとモーションかけたら、あっけなく落ちて告白してくれた。
映画館に着き、ドリンクとポップコーンを荒川さんが買ってくれた。
『この映画は3シアターか。』
荒川さんがその方向に向かった先に、見覚えのある男が視界に入った。
(なべさんだ…!)
なべさんとは、合コンで知り合った小さな宝石会社の社長さん。30歳。
本名は渡辺さん。
最所、誘われてご飯を数回一緒に食べてなべさんのマンションへ行った時に関係をもった。
その後も、暇な時は一緒にいて体の関係を持つ。
要するにセフレだ。
彼は、週の半分は合コンしている。
芸能人なみに綺麗な人を探してるんだって。
私にかなり失礼だよね(笑)
私は美人じゃないし、平凡な顔だと思う。
でも女評論家のなべさんが言うには、笑った時にできるエクボと、キメ細かな白い肌が、とてもいいと言ってくれた。
なべさんが言うにはね…
なべさんは、私より若そうな背の高い綺麗な女の子といた。
私の視線に気づいたのか、ぎょっ!とした目で私を見る。
荒川さんも見る。
私は素知らぬ顔で通り過ぎた。
映画館に入り席に座り、私はポップコーンを荒川さんに持ってと言った。
『トイレに行くの忘れてた。行ってくるね!』
上映まで時間があったので、私はトイレへ。
トイレに行く途中すぐに携帯を見た。
メールが8件、着信3件。
メールには、さっき映画館に居た
なべさんからもあった。
〔彼氏か?〕だって。
マメだよね…デート中なのに。
まぁ私もだけど…
そして他のメールにも返信をした。
めんどくさ…だけど、これがなくなったらなくなったで燃え尽き症候群になるかも(笑)
着信は、明日会う予定の彼氏Cの
たっちゃんからだった。
たっちゃんは彼氏の中で一番焼きもちやきだし束縛が激しい…
私はたっちゃんに電話した。
電話『もしもし!』
たっちゃんは待ってましたというような声で出た。
電話『あ~たっちゃん?街で買い物してて着信わからなかった~』
電話『そうなの…?ほんとに男といたりしないよね?』
電話『あはは~いるわけないじゃない!』
電話『夜は会えない?』
電話『…うん。愛とこのあと飲みに行くし。…明日ゆっくり会おうよ』
電話『そっか…。ナンパされるなよ!また夜電話する。』
こんな感じで、たっちゃんとの電話を切った。
めんどくさい奴だけど、一番私にのめり込んでくれてるのかもしれない。
ちなみに《愛》とは中学からの大親友。
…愛といることにしている。
二人とも好きな芋焼酎を買ってきたので
私がグラスに注ぐ。
その時、荒川さんの携帯が何度も鳴った。
『…でないの?』
『…あ、ああ実家の母さんだから』
荒川さんは挙動不審だった。
前から思ってたけど、荒川さんって職場が同じってのもあるけど頻繁にデートもしないし、私に干渉もしない。
私以外にも女の人いるのかもね…。
もちろん私も彼に干渉はしない。
『じゃ~乾杯!!』
『おぅ!乾杯!』
私達はまったりとお酒を飲み出した。
お酒が回ってくる前に、お互いシャワ
ーを浴びた。
そしてそのあとも呑む。
クラクラっと酔って来た時、荒川さんが私に唇を重ねた。
手を握ってきた。
やがて優しいキスから激しいキスに変わる。
荒川さんは私をお姫様だっこして寝室へ連れていった。
私の服を脱がせ、体中にキスをしてくる。
愛撫が長い…
『…好きだよ…』
セックスの時しか彼からこの言葉は出ない。
私の足のつま先まで舐めて、一番感じる場所を舌で愛撫し始めた。
『ああ……』声がでる。
『…俺のも舐めて…』
私も酔っていたので、美味しいと言いながら彼の固いモノをくわえ舐める。
そしてひとつになった。
酔ってる時のセックスは気持ちいい。
そして、荒川さんも激しくツイテくる。
『もっとして…』と私からも腰を振る。
『ハァハァ…』荒川さんも声が漏れていた。
『じゃん!!』
私は赤のギンガムチェックのビキニ姿をたっちゃんに披露した。
『まじかわゆい~!!』
たっちゃんはデレデレして私の肩を抱いた。
『ウォータースライダー滑ろうよ~!!』
私はたっちゃんの腕を引っ張った。
『おぉ~!滑ろうぜ~!!』
ヒュー、ザッパーン!
水しぶきが気持ちいい。
『たのしい~!!』思いっきり叫び私達は子供のように何度もウォータスライダーを滑った。
二人とも満足し、更衣室へ行った。
私は水着のままメールチェック!
康弘から着信やメールがあった。
休みの日なのに会わない言い訳を私は考えていた。
愛とプールで泳いでた…と言った。
いつも、康弘は『俺達付き合ってるよね…?』と不安がる。
大人しい性格だからその分私を冷静に見ている。
来週は、康弘に会おう。
月曜日は夜の仕事もある。
昼の仕事が終わり家でダラダラするも、20時から出勤だ。
私は夜の仕事は本気じゃないので同伴は滅多にしない。
ただ行くのが面倒だったので、ナンパで知り合ったショウゴに電話した。
電話『もしもしー』
ショウゴが出た。
電話『もしもし?何してた?』
電話『仕事終わってぇ今パチ屋』
電話『勝ってるの?』
電話『不調…ってか何さ?店まで送ってほしいのかい?』
電話『いや、ショウゴの声が聞きたくてさっ』
電話『あはは!幸子が電話してくる時なんて送ってほしい時かお腹すいた時だろ』
電話『そんなことないよ!』
電話『…いいよ!迎えに行くよ。
今家かい?』
よかった…。
ショウゴが迎えに来てくれるみたい(^◇^)
ショウゴが迎えにきた。
私は笑顔で助手席に乗り込む。
『ショウゴありがとぅ!!』
『いえいえ…いやぁ相変わらず魅力的だねぇ』
『何いってんの(笑)』
『ほんとにだよ。幸子みたいな可愛い子、絶対彼女にできないよ。
誰かにとられるんじゃ…とか浮気されるんじゃとかそわそわするもん』
『考えすぎでしょ』
『可愛い女は絶対浮気するんだって。
だから俺は幸子の都合のいい男でいいんだ』
持ち上げてるんだか、なんなのかわからない会話をしていた。
ショウゴとは、ゲームセンターで友達とプリクラを撮ってる時、そのあとナンパされて知り合った。
29歳、バツイチ子持ちらしい。
細見の長身で顔も整ってるしなかなかのいい男。
トラックの運転手をしていて仕事が終わるのが早い。
『着いたよ。じゃあ幸子、店に行くほど今日は金ないけどさ、今度何かご馳走するし欲しいもので買えるものは買ってやるよ』
『…もぅ、いっつも甘えてばかり。頼りになるなぁ』
そして、私達はチュッとキスをして別れた。
仕事に入る前、お店系列の美容室でヘアメイクをした。
鏡に写る私。
男遊びを始めてから、確実に色っぽくなったような気がする。
女って楽しい。
綺麗になれば自信も上がる。
そして私はお店に入った。
30代の店長が
『ユキ、最近綺麗になったね。
3番テーブル入って。指名だよ』
店長に綺麗になったと言われてテンションが上がった。
そして指名客の元へいく。
『あ~雅也さん…』
『ユキちゃん久しぶり♪』
雅也さんは、この仕事を始めてからずっと指名してくれてるお客さん。
38歳の既婚者だけど、好きなものは何でも買ってあげるから
お互い都合の良い関係になろうとお店以外でも親しくなった。
建設会社の社長さんで、今まで色んなものを買ってもらった。
その代わりセックスはしなきゃならないけど、雅也さんは渋くて味があるし何とか受け入れられた。
まあ、お酒が入ってる時が多いいが。
もちろん体の関係なしでもプレゼントをくれる客もいるが、雅也さんのプレゼントとは比べ物にならない。
『雅也さん元気でしたか?
いつものチンザノにする?』
『うん、ユキの顔みたら元気湧いてきたよ』
『嬉しい!じゃ…乾杯!!』
『…ユキちゃん今日アフターしてもらえる?
最近ほしいものある?』
『欲しいものというか…美味しいお寿司が食べたい!』
『よし、まかせて!』
そして私の肩を抱いてきた。
雅也さんにタクシーチケットをもらい、私はちょっぴり酔っぱらった状態で自分のアパートへ帰った。
その前に、明日の朝の食パンを買うために近くのコンビニへ言った。
パン…食パン…
あ、あった。
私は、買い物カゴに食パンを入れた。
その時…
『あのぅ…すみません』
私と同い年くらいの男性に声をかけられた。
背が高くて爽やかなイケメンだった。
悪くない…
ナンパだよね?
酔いながらもそう思っていた。
『なに?』
私は小声で言った。
『あ、これ食パン…』
は?同じもの買いましたね、みたいなきっかけ作り?
『あ、はい』
そして彼は食パンを私に渡して、何だか笑いをこらえているようだった。
その時気がついた。
私は買い物カゴなんて持ってなかった。
食パンを手にとり、隣にいた彼のカゴをうっかり自分のカゴだと思い入れたんだ。
私は一気に恥ずかしくなった。
『は~…ごめんなさい…』
彼は笑っていた。とても優しい顔で。
『いいですよ!』
そして彼はレジへ向かった。
私は彼の後ろに並び、彼は会計を終えたあとも私に微笑んでいた。
はぁ…なんて勘違い女だ。痛々しいよね。
これが、あなたとの始めての出逢いだったね。
今でも、しっかりと私の脳裏に焼き付いているんだ…
結局その日も朝方まで眠れなかった。
そしていつものように出勤の支度をする。
冷蔵庫には俺に欠かせないアイスコーヒーが入っているはずが、買い忘れで入っていなかった。
仕方なくまた、あのコンビニで缶コーヒーを持ちレジに並んだ。
前に並んでる女がてこづっている。
『…あ!ありました~!お願いします』
ポイントカードを探していたみたいだ。
…
でもこの透き通った声。
昨日の子?
昨日とはうってかわって自然で、肩下までのストレートの髪の毛に
淡いブルーのカーディガンに膝あたりで揺れるスカート。
後ろ姿を見ても違うかな?
その時彼女が振り返った。
あ!
化粧は薄いが昨日の子だ。
童顔なのですぐにわかった。
彼女は気づいてなかったが…
可愛いな…
メイクを薄くするとあんなに変わるものか…
俺はしばらく考えこんでいた。
その日も仕事が終わると夜がくるのが怖くなる。
俺は孤独を紛らわすために、同僚の三原を飲みに誘った。
大衆居酒屋で二人で飲んだ。
最所は仕事の話をしていたが
しばらくして恋愛の話になった。
『でも杉本ならすぐにでも彼女できるじゃん?
男から見てもイケメンだしな』
『いや…そんなことないって。
誰でもいいってわけじゃないしな(笑)』
『…だよな。でも俺、今の彼女はかなり本気でさ。一緒にいて飽きないんだよ。
大事にしてやりたいって始めて思ったかな…』
酒に弱い三原は、レモンハイを呑みながらしみじみと語った。
『…うらやましいな。幸せになれよ!』
俺は祝福しつつも、ますます虚しくなりその後、数杯呑んで、三原と別れた。
自宅に着くとため息が出た。
母さんが生きてる頃はどんなに辛いことがあっても、ここまで孤独に怯えることはなかった。
たった一人がいなくなることって
重いことなんだな…
母さんは亡くなる直前
『くじけそうになった時に読みなさい』
と、一通の手紙を俺にくれた。
淡いブルーの封筒を俺は、引き出しから出してみた。
あの子のカーディガンの色と似ているな。
中身は、震えた字でこう書いてある。
《かけがえのない涼太へ
お母さんは、本当はもっと
涼太と一緒にいたかったです
でも、もう天国へ行く日が
近いみたいです
涼太をおいていくなんて
こんなに悲しいことはありません
でもね約束する
お母さん、ずっと涼太を見守っている
そして、ずっと涼太のことを愛しています
人生って悪くないよ
辛いことばかりではない
幸せを感じる時もたくさんある
負けないで
強く生きて
涼太、お母さんの子供に生まれてきてくれてありがとう》
強く生きてか…
母さん情けない俺でごめんなさい。
母さんが思ってたより俺は弱いみたいです。
俺は悲しくなりつつも、やっぱり手紙を読むと少しあたたかい気持ちになれた。
『なんで?生活費は全部俺が出すよ?
物件も何件か探してて…』
康弘が話してるのにさえぎって
『やなものはやなの!!
勝手に決めないでよ!! ママを一人にはできないの!!』
私は一人暮らしなのに、康弘にはママと住んでいると嘘をついていた。
同棲なんかしたら今の楽しい生活がくつがえされる。冗談じゃない。
『…そんなに怒んなくたっていいだろ!
俺達付き合ってるんだよ?』
『とにかく反対だから!』
『…さっちゃん他にも男いるんだろ?』
私はドキっとした。
『…いないよ。康弘だけに決まってるでしょ?』
『怪しすぎるよ!休みも合うのに滅多にあわないし!
だから俺とずっと一緒にいてよ!』
普段大人しい康弘が大きな声を出したので、びっくりした。
『私は一人の時間も欲しいの!
好きなら尊重して!』
『…そうゆうの自己中って言うんだよ!』
『はっ?』
『…だってさっちゃん、わがままで自己中じゃないか』
『……ほんとーーにめんどくさいな!!
だったら別れようよ!!
安心できる彼女作ればいいじゃん!!』
『すぐに別れるとかいうなよ!浅はかだな!』
『…もういい。バイバイ!』
私はカチンときて、その店を出た。
きっとお会計を済ませたら、康弘のことだから追ってくる…
外へ出て少し歩いた。
お店の方を振り返ったけど、康弘が追ってこない。
姿が見えない。もしかして帰ったのだろうか…
康弘の私への気持ちってこんなにちっぽけだったの?
携帯を見たけど康弘からは連絡もなかった。
自宅まで距離があるのに!
最悪!
私は自分から勝手に店を出たというのに、康弘に電話した。
トュルルトュルル…
出ない。あんな喧嘩でシカトしてるの?
その時、携帯が鳴った。
たっちゃんからだった。
『…もしもし』
『おぅ幸子~何してた?』
『今日ね、会社の女の子が美味しいイタリアンのお店行こうって誘ってきて行ったんだけど、友達彼氏が迎えにきて帰っちゃった…』
とっさに嘘をつく私。今の癖は嘘をつくことなのかもしれない。
『よし!迎えにいってやる!どこにいる?』
幸いに、たっちゃんが迎えにきてくれることになり、私はしばらく待ちぼうけしていた。
たっちゃんを待っている時、携帯をいじっていたら、康弘からメールがきた。
〔さっき、幸子が俺をめんどくさいって言ったけど、こっちだって幸子はめんどくさいよ。
自分のことしか考えてないし、俺のこと好きだなんて思えないよ。
さっき幸子が別れたいと言ったとき、浅はかだと言ったけど、たしかに別れた方がいいかもね。
お互いわかりあえないから。〕
…
…
別れのメール?
康弘ってこんなに女々しい人だったの?
…と思いながらも、悪いのは全部私。
嘘のかたまりだもん。
見抜いた彼は、まともな人間なんだよね。
自分が悪いのに、私は何だかむしゃくしゃしていた。
その時、たっちゃんの車がきた。
私は無表情で助手席に乗り込んだ。
『あれ?幸子、元気ないね?』
『うん…会社の人といたら疲れちゃう』
『…そっか。
幸子の家に車置いて飲みに行くか?』
『うん!!行く!!』
私にはたっちゃんもいるし…他にもいる!
康弘を失ったくらい全然余裕!
よし!今日はガンガン飲もう!
やがて私の家に着き、車を置いて徒歩5分で着く焼き鳥屋で飲むことにした。
店につき、のれんをくぐった瞬間、家庭的な雰囲気のお店に何だかほっとした。
『たっちゃんは何か食べるの?
私はお腹パンパンだからお酒だけにするね』
『そっか、じゃあ…俺は食い物もちょい頼むわ』
『うん、私は久々にどぶろくでも飲もうかな~♪』
『おお!行くねぇ(笑)』
私は、どぶろくを頼み、一気に飲んだ。
そして、おかわり。
また、おかわり。
『…ちょい幸子飲みすぎじゃない?』
『いいの!!』
私はすでに。目の前がくらくらしていた。
それでもまだ、どぶろくを飲んだくれた。
『…おい、幸子大丈夫か~?』
たっちゃんが酔っ払いの私の手を強く握った。
『ふふ』
私は、すっかり酔っ払いで足が絡んでいた。
ピンヒールをはいていたので、尚更歩きにくい。
それなのに、酔っぱらって頭の中は支離滅裂。何だか走りたくなり
たっちゃんの手を払った。
『おい幸子~危ないよ!』
『風が気持ちいいよ~!!』
私は走り出した。
そして、コケて体のバランスを失う。
『うわぁ!あああああ~!』
次の瞬間、地面に左膝を強打した。
『幸子!大丈夫か!』
追い付いた、たっちゃんが慌てて私を心配する。
『…大丈夫だよ。ちょっと擦りむいたくらいだよ…』
正直、かなり酔ってたので痛みがよくわからなかった。
『立てるか?』
たっちゃんが、私を両手で抱える。
そして私のアパートに無事ついた。
『わぁ♪お魚さん綺麗だねぇ♪』
『でしょ?水族館好きになった?』
パパが私に優しく聞いた。
『うん!! サチコ、すいじょっかん好き!!』
『そうかそうか!
あっ…次はイルカのショーだ。席に座れるかな?
急ごう!』
私はパパの手を握って、一緒に走った。
『パパ、イスあった?サチコ、イルカさん見れる?』
生憎、席は空いてなかった。
『イスはなかったけど、パパが肩車してあげるよ!』
『ぃやったぁ~♪』
パパと初めて見たイルカのショーは
すっごく楽しかった。
幸せだった。そして、ただただパパが大好きだった。
その日、家に帰り
『パパ!また、すいじょくかん連れていってね!』
『あ…う、うん!もちろんだよ』
その会話を最後に、パパの姿を見なくなった。
ママが泣いていた。
泣いていたから『ママ、泣かないで』
と言って私も泣いていた。
でも、いつか帰ってくる。
毎晩、玄関の前に座りパパの帰りを待った。
優しいパパと話がしたい。
抱っこしてほしい。
一緒にご飯が食べたい。
でもパパは帰らなかった。
一人っ子の私は、ネコのヌイグルミを抱きながら毎日泣いた。
眠れば、パパが帰ってくる夢を見るんだけど、目覚めた現実にパハはいなかった。
幼い私の心には根深い傷がついた。
パパが帰ってこなくなってから
ママはまだ5歳だった私に
『パパはお仕事で遠くへ行ったの』
と聞かされていた。
だから、いつかは帰ってくると信じてた私も何年たっても帰らぬパパの存在
に、私にはパパはいないと思うことにしようと何度も心を痛めた。
中学に上がった時、ママは自分でスナックを営み始め忙しくなった。
私も思春期で、いつも酒臭いママに反発して喧嘩することもたくさんあった。
ある時、親子喧嘩の弾みでママにパパはどこへ行ったの?
と聞いたら
『女の人ができてママとあんたを捨てた』
と言った。
ママは、感情的になり
『まあママにも好きな人がいたからよかったんだけど!』
と言ったけどそれは意地になって言ってるのか本当なのかはわからなかった。
ママから詳しい話を聞き、あの優しいパパが私とママを捨てたなんて
とにかく信じられなかった…
そして定期的に私は、パパの夢を見ていた。
仕事に行こうとシャワーを浴びようとするも膝を曲げた瞬間、物凄い激痛が走る。
とてもじゃないけど仕事には行けないと思った…
湿布を張りたくても湿布もない。
こんなとき一人暮らしだと、どうしたらいいかわからない。
友達や彼氏たちの顔が浮かぶ。
でもこんな時間…まだ忙しい。
結局ママに電話した。
仕事柄、まだ寝てるみたいだったけど
どうしても来てほしいとお願いした。
何だかんだ言ってママとは仲がいい。
そして二時間くらいたって、ママが部屋にきた。
歩くことができず床にへばりつきドアをあけた。
『あ~んた、どうしたのさー』
ママが呆れた顔で私を見る。
『…思いっきり転んじゃったの~』
『乱れた髪して、さては昨夜泥酔でもして転んだな?』
ママに見透かされた。
『とにかく転んだの!痛すぎる…湿布持ってきた?』
『うん、どれ?見せてごらん』
ママは私の左膝を見た。
『…幸子、あんたコレまずくない?』
『え…?』
『ママも詳しくはないけど腫れがひどいし、ママの車で病院行こうよ』
ママの一存で病院で見てもらうことになった。
いつもと変わらない日常。
仕事も5年目。まずまずスムーズにこなせるようになってきた。
患者の病状を把握し、リハビリのプログラムを立てる。
症状が重い患者ほど、リハビリの効果が出ると俺も嬉しくなる。
リハビリ室からは、外来がチラッと見える。
今日は割りと空いてるのかな?
その時中年女性の声が響いた。
『がんばれ!ママの肩を潰してもいいからあと少し、がんばれ』
チラッと見ると、若い女性を引っ張るように脇腹を抱えている。
娘さんなのかな?
…
その怪我をしている若い女性に見覚えがあった。
あの子じゃないか??
コンビニで俺のカゴに食パンを入れてきたあの子…
『い~たあい…』
あ…、あの透き通った高い声。
やっぱりあの子だ。
俺は、不謹慎なことに人様が怪我をして苦しんでいるのに胸が高鳴った。
昔から純粋だとか単純だとか言われるけど、もしかして彼女がリハビリをする位の怪我だったなら、接触がもてる。
何なんだ?
この気持ち…
寂しいからなのか?
男に苦労しなさそうな水商売の女じゃないか。
確かに俺は自他共に認める単純な男だが、こんなになんだろう…
ズキッとかハッとか思うことってなかったように思う。
俺は午前中テキパキ仕事をこなし
休憩の時間に婦長の藤原さんに
『今日って入院患者増えました?』
と聞いた。
『あ、うん。ふたりね。』
『えっ!男性?女性?』
『…なに杉本くん(笑)珍しいね。えーっと70代の男性と20代の女性!
女の子、杉本くんと同い年くらいじゃないかな?
嬉しい?』
藤原さんはイタズラな顔で教えてくれた。
…あの子なのかな。
その答えが出るのは早かった。
その日の夕方、二階に入院する患者さんで、怪我が落ち着きまずは病室からのリハビリを開始し、一日目を終えた。
その患者さんの病室を出て階段へ向かった時、その先にあるエレベーター前で母親に車椅子を押され、左足全体をギブスで固定してるあの子をみかけた。
眉間にシワをよせ落ち込んだ顔をしている。
あの子が入院するみたいだ…
でも辛そうな顔に、胸が高鳴った自分を愚かに思った。
愚かに思いつつも彼女のあとを静かに追ってしまった。
《202号室》
その6人部屋の病棟に彼女が入り、ちらっと覗くと
入り口側の左側のベッドだった。
視線をその病室に入院してる人の名前が書かれている場所を見る。
《篠原幸子》とあった。
翌日、その日もいつものように仕事をする。
変わらない毎日だけど、その日から誰かとすれ違うたびにドキッとしてた。
そして、休憩の時間になりその前に二階のロビーの自販機でコーヒーを買おうとした。
コーヒー中毒みたいで時間があれば
この自販機に向かってしまう。
すると…
彼女、篠原幸子が自販機の前に杖をついていた。
俺の心臓は一気に脈拍が上がる。
どうやら、ドリンクを買ったが片足を固定されてるため、とりにくいみたいだ。
俺は、思いきってドリンクをとってあげた。
胸がドキドキするも冷静を装う。
『はい!』
彼女に渡した。
『あ、ありがとうございます!!』
あの透き通った高い声で彼女が言った。
そして
『…あれ?どこかで会ったことあります?』
どうやら微かに覚えているようだ。
俺は覚えてるくせに…
『…いや、どうでしょう?』
首を傾げた。
『ううん!ある…!
……あっ!コンビニで会った人だ!!』
完全に彼女が俺を思い出した。
覚えててくれたんだ…
『…あっああ!
あの、食パンの…!』
俺は、しらじらしく思い出したフリをした。
『そうそう!!』
そして彼女がくしゃっと柔らかい笑顔を見せてくれた。
俺の心臓は、ドキドキからズッキーンと強く脈をうち始めた。
笑うと、少しふっくらする頬が
色白でキメ細かな綺麗な肌が引き立って、口元にはキュッと可愛らしいエクボが出ていた。
可愛い…
俺は心臓が破裂しそうになりつつも冷静を貫いた。
『…足どうしたの?』
『あ…転んじゃって、膝の骨折れて…明後日手術なんです』
『そっか…
でも、ここの先生腕がいいからさ…必ず良くなるよ』
『はい…でも手術初めてだし何だか怖くて…でも頑張りますね!』
そしてまた可愛すぎる笑顔を見せてくれた。
俺もつられて笑顔がこぼれた。
ニヤニヤしてなかったかな?
『…制服からしてリハビリ室の方ですか?』
『うん!…リハビリに入ったらお手伝いさせていただきます!』
おれはペコリと頭を下げた。
『よろしくお願いします!
それに入院って暇だから、また時間があったら構ってくださいね!』
『あはは!もちろんだよ』
こんな会話をして、その日は別れた。
その夜、俺は気が高ぶっていた。
篠原幸子の可愛い笑顔…
テレビを観ても雑誌を見ても集中できなく、あの笑顔が浮かんでくる。
俺、ヘラヘラしてなかったかな?
私に気がある~って思われなかったかな?
…なんて今は怪我でいっぱいいっぱいだろうな…
よし!終わり!
最近の俺はおかしい。もう考えないぞ。
それでも、あの会話した時のことを思い出す。
…所詮、水商売だし男の一人や二人たくさんいる女じゃないか。
うん、俺のタイプじゃない。
ドクドクドクドク…
自分の想いを否定しつつもドキドキする。
あ…
もしかして、俺のカゴに食パン入れたのって
オマエが買えよ!って意味だったのか?
それで返されたからケチな男として
覚えててくれたのか?
柔らかい笑顔の裏側には
あのケチな人~と思われていたのか?
…俺の思考はハチャメチャになっていた。
俺は翌日、仕事が終わり
また三原を飲みに誘った。いつもの大衆居酒屋に男二人で入る。
俺はビール、三原はレモンハイを頼んだ。
酒のつまみに
揚げ出し豆腐と刺身の盛り合わせ、軟骨の唐揚げなどを頼んだ。
最所は何気ない会話をしていたが
俺は三原に聞きたいことがあった。
『…なぁ、女を好きになる瞬間ってどんな時?』
『はっ?…突然だな(笑)
そうだな…俺の場合…笑顔かな?』
俺はドキッとした。
『笑顔?…例えば、料理が上手いとか
賢いとか趣味が同じとかじゃなくて?』
『…うん。よく女子力アップとか言って色々と自分を高めてる女もいるけどさ…俺は単純に、可愛いな~とか笑顔がいいな~とかから入るね。
女子力はその次だな(笑)』
『そっか…だよな!最所はやっぱり見た目から入るよな』
『なんだよ(笑)…もしかして好きな女でも?』
『あ、いやいや(笑)なんとな~く聞いただけ!』
三原と会話をしながら酒が進んだ。
その夜は楽しい酒になった。
それも手術の前日の夜8時から
手術当日の夕方18時までは絶食みたいで、絶食は初めての経験だ。
そしてそして、夜は21時に消灯らしい!
そんな時間に眠れってかあ~(泣)
入院した当日、怪我で少し熱が出ていたが眠れず
親友の愛と、もう一人の親友、美紀にメールをした。
二人とも驚いていて、お見舞いに行くからねと言ってくれた。
そして、たっちゃんや荒川さんやショウゴから着信があった。
遊び相手のショウゴはスル―し、他の二人にはメールをした。
荒川さんは当然
会社の人だしお見舞いにくる。
たっちゃんも知ったら来るだろう。
私は二人が鉢合わせしないように細心の注意を払わないとならない!
けれど、嫌な予感がしていた。
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