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Best Friend
不登校のリナ。
男勝りなメイ。
嘘吐きなエリ。
恋愛依存性のミキ。
ミキに憧れていたアキ。
人の顔色を伺ってばかりの私、ユカ。
全て学生時代の実話です。
初投稿になりますが宜しくお願い致します。
中学三年生、初日。
進級に伴うクラス替えで盛り上がっていた私達の仲良しグループ。
私はA組。リナはB組。ミキ&ユキはC組。メイはD組。
ミキとアキは同じクラスになれたけど、私、メイ、リナは見事にバラバラ。
「なんだよこれ。絶対仕組まれてるじゃん。」
キレ気味で力強く主張したメイ。
仕組まれているとは、先生が意図的に私達を分散させたかも知れないと言う事。
だとしても無理はなかった。
何故なら私達のグループは服装や頭髪などで学年一悪目立ちしていたからだ。
「私のクラス話しかけにくそうな子ばっかりだよー。やだなー。」
私もクラスに話しやすい相手が居なく、新学期早々憂鬱になったのを今でも覚えている。
「ねぇねぇ。リナ、一年と二年もB組で、またB組なんだけど。ウケない?」
リナに至っては殆ど学校になんて来ないから誰がどのクラスかなんて関係ないらしい。
最近ではSNSでの公開が当たり前のようだけど、私達が女子中高生の時は皆プリクラ手帳を持ち歩いていた。
友達や彼氏と撮ったプリクラを貼ったり交換して貰った物をアルバムのように貼って時々見せ合いっこする。
お小遣いの大半はプリクラに消えたと言っても過言ではない。
今思い返せば馬鹿げた話だけれど、プリクラが沢山あればステイタスになるような気さえしていたんだ。
だけど。
あの時五人揃って撮ったプリクラが最初で最後。
リナは相変わらず学校を殆どサボっていたし、ミキとユキは同じクラスになった事もあって二人で結束力を深めていった。
そして、極々自然な形で私とメイは仲良し二人組になった。
そもそも、多人数の女子が皆平等に仲良くだなんてあり得ない話だ。
「次の授業でまた返事書くねー。」
「分かった。ユカの返事早めに聞かせて。読めば分かると思うからー。」
授業中にメイに手紙を書いて休み時間に渡すのが私の日課になっていた。
折りたたまれた手紙を机の下に広げて見る。
“そーいえば、体育の時エリに話しかけられて一緒にペア組んだ。私も友達いないから話しかけやすいと思われたっぽい!
そしたら、放課後プリ撮りに行かない?だって。奢ってくれるっぽいけど、どーしよー。ユカも来ない?笑”
“今数字。超つまんなーい!あ、放課後の事だけど私はやめとく!話した事なくて気不味いし!奢ってくれんならいいんじゃん?あ、撮ったやつ今度ちょーだいね!”
教科書で隠しながら書いたメイへの返事。
正直私はエリに関わりたくなかったんだ。
エリに対するイジメは学年中の女子、私もよーく知っている。
中二の時にミキと同じクラスだった私は昼休みに二人で女子トイレに向かった。
そしてテニス部やバレー部の女子達が狭い女子トイレの中でエリを囲う場面を偶然目撃したからだ。
昼休みのチャイムが鳴ると、私達は女子トイレに自然と集まるようになっていった。
仲良しだから集まっていた訳じゃなく、皆携帯をいじったり化粧を直しに来ていただけだったのだと今になって思う。
「あ、りょーちゃん?うん。今昼休みだから大丈夫っ。」
折り畳み携帯を開くや否や彼氏らしき相手と連絡を取るミキ。
りょーちゃんって初めて聞く名前だな。
どうやら中二の時付き合ってた先輩とはもう破局したらしい。
そしてその横で消えかけた眉毛を書き足すアキ。
よく見るとミキとアキ、二人の持ち物が何もかもお揃いである事に気付いた。
携帯ストラップ、ポーチ、化粧品のメーカーまで完全に一致している。おまけにお揃いの革のブレスレットにはお互いの名前が彫ってある。
だけど、その事には触れずに私は手紙の件をメイに尋ねてみた。
「そう言えば昨日あれからどうなったー?」
「そうそう。それなんだけどさー、これ見てよ。」
そう言ってメイが取り出したのは切り分けていないプリクラのシートが、ざっと12〜13枚ほど。
「これさ、全部奢りだったんだよね。」
「え、まじで?めっちゃあるじゃん。」
プリクラは1枚400円。2人でワリカンしてプリを撮っても1度に多くてせいぜい4枚くらいが予算的にも平均だ。
「メイー。後で私にもちょーだい。」
眉毛を書き足していたアキの声がした直後。
「あ、居た居た、メイちゃん!」
女子トイレの扉の隙間から、ひょっこり顔を覗かせたエリ。
「ごめんね。邪魔しちゃって。」
やたらと低姿勢のエリはそう言って脇に抱えていた学生カバンからビニール袋を取り出した。
逆さまにするとバラバラと何かが大量に落ちてきた。
全部大手メーカーのアイシャドウ、チーク、マニキュアなどの化粧小物だった。
「お兄ちゃんの元カノの物なんだけど、メイちゃんと皆も良かったら貰ってくれないかな?」
そう、これが私達に対して吐いたエリの最初の嘘だ。
この日を境に私達のグループと共に行動する事が増えたエリ。
他の皆は物を貰ったり、奢って貰えるからラッキーぐらいにしか思っていなかったかも知れないけれど、私は正直複雑な心境だった。
過去にイジメを目撃してスルーした事も気に病んだが、それだけじゃない。
友達を、メイを奪われてしまうかも知れないという焦りを感じていたから。
そして、その予感は的中した。
考えてみれば同じクラスの友達な居ない者同士、化粧品から放課後のマックまで奢ってくれるような存在なのに仲良くならない方が不自然だ。
そんな状況で私はサボリ魔のリナにメールを打った。
“今年で中学最後だし、リナもたまには学校おいでよ!”
友達を気遣ってるフリして、裏を返せばただ自分が一人になりたくなかっただけ。
私は一人になりたくなくて、いつも周囲の事ばかりにアンテナを張っていた。
リナにメールを送信した数分後に、新着メールを二件受信した。
“アド変しました!登録よろしくネ!ミキ”
“アキだよ〜!アドレス変えたから登録よろしく!”
リナの返信かと思いきやただのアド変報告メール。
送信先を確認すると、一瞬混乱したけどすぐに分かった。
miki_aki_best_friend@×××ne.jp
aki_miki_best_friend@×××ne.jp
名前を前後に入れ替えただけのお揃いのメールアドレスだ。
了解!と打ち込み送信ボタンを押すと、なんとなく面白くなくて携帯をカバンに放り込んだ。
なにもこんな所で仲良しアピールしなくても、と心の中で悪態をつきながらも当時はミキとアキ、メイとエリのような関係が羨ましいと思っていた。
たけど外からは仲良さそうに見えたって、本人同士にしか分からない問題だってある。
これは、双子みたいと噂されていたミキとアキ達にとっても例外ではなかった。
ある日の朝、私の教室の前でミキが一人で立っていた。
いつもはアキも一緒だけど今日は風邪かサボリかで学校を休んでいるらしかった。
一人になりたくないという気持ちは私もミキも、きっと同じだったのかも知れない。
「ねぇ、ユカ。ちょっといい?」
深刻そうな面持ちのミキ。
「うん。何かあった?」
一応、聞き返しながらも概ね話の内容が予想が出来てしまった。
こういうテンションのミキは昔から決まって男関係の相談だ。
「なんかぁ、最近りょーちゃんが冷たいんだぁ。」
ほらね。
話の内容は半分以上愚痴だったけど、要約するとこうだ。
りょーちゃん、ことリョウヘイという年上の彼氏。プリクラで見る限り茶髪でチャラそうなイマドキ風な高校生。
そんな彼氏が付き合ったばかりの時に比べて好きだよと言ってくれなくなった事、放課後にするデートの回数、メールの回数が減った事が不満である。
と、まぁここまではよくある話。
大人になった私がアドバイスをするならば回数で愛情を測るミキにも問題はあるとお説教したいところだけれど、今回のミキの相談内容はいつもより少し複雑だった。
付き合った当初のラブラブ期を通り過ぎただけに過ぎないと思ったが、ミキは不満げに続けた。
「それでね、この前アドレス変えた後にりょーちゃんからこんなメールがきたの。」
そう言いながら折り畳み式携帯を開きメールボックスを私に見せるミキ。
“了解!こっちがミキだよな?”
シンプルな返事だけど、この言い回しはミキとアキの両方のアドレスを知ってる者でないと普通は出てこない。
「ミキの彼氏とアキが繋がってるかもって事?」
私の言葉にミキは深く頷いた。
だけど証拠もなく問い詰めて友情関係にヒビを入れたくないのでどうすればいいか分からないという相談だった。
うっかり、こっちがミキだよな?なんて本人に確認しちゃうくらいだから彼氏の携帯を見てしまえば話が早い気もするが、バイトを理由に直接会う事は難しいみたい。
うーん。
「彼氏がダメならアキの携帯見れたら早いんだけどね。」
友情関係にヒビを入れたくないと言っていたからまぁ無理だろうと何気なく呟いた言葉。
意外な事にミキは否定する事なく小声で身を乗り出した。
「アキにバレない方法、何かないかな?」
お互い完全に悪ノリだったけど、あまり会えない彼氏よりもアキの方がずっと接触する機会も多く、手っ取り早い。
こうして密かに始まったアキの携帯盗み見計画。
休み時間の度話し合いを重ねた結果私とミキと考えた作戦、それは。
「電池切れそうだから携帯貸して作戦!」
作戦と言う割には普通過ぎてショボいけど。
「さっきから二人で何話してんのー?」
私達の様子を脇目に見ていたメイとエリにも携帯盗み見作戦に至るまでの経緯を伝えた。
協力者は多いに越した事はない。
「もし貸してって言って拒否られたらどうする?」
「番号教えてって聞き返されて操作させてくれないかも。」
色々なパターンを想像して四人で入念に話し合いを繰り返したのにも関わらず、アキの携帯を覗き見るチャンスはすぐに訪れる事となった。
それは忘れもしない。
午後の授業がない日の放課後、女子トイレの鏡の前で私達が時間を持て余していた時の事だった。
「とりあえず、化粧終わったら皆でコンビニ行かない?」
「賛成!つーか、化粧してんのミキだけだからね。」
「あー腹減ったー。」
「ちょ、メイ。その動きおっさんみたいだから!」
「ヤバッ、電池なくなりそうだったの忘れてた。誰か充電器貸して〜。」
笑い声が響く女子トイレだったけど、このアキの一言で一瞬しん、と静まり返った。
「あ、私持ってるよ。」
私はカバンから充電器を取り出して近くのコンセントに差し込んだ。
私達はミキに目配せしていたけれど、その事に気付かずにアキは充電器に繋いだ携帯を無防備に置き去りにしたまま個室のトイレへ用を足しに行った。
今しかない!と目線で訴えている周りに背中を押され、ミキは自分の化粧を中断してアキの携帯に手を伸ばした。
メールボックスを開いて間も無くして、アキの疑惑に黒判定が下された。
“今日もりょうすけが夢に出てきたよぉ。いつ別れるの??”
“今度会う時絶対別れるから。辛い思いさせてごめんな。大好きだよ”
気が付くと画面に向き合いながらミキの目から涙がボロボロと零れ落ちていた。
「ミキ、大丈夫?」
私の問いに応える事なくガチャンと間抜けな音と共に個室から出てきたアキに目掛けて、盗み見していた携帯を投げ付けたミキ。
「何でもかんでも、人の真似してんじゃねぇよ!!」
怒りながら、泣きながらミキはアキの頬を強く平手打ちした。
「何で好きな男まで真似すんの!信じらんない!ふざけんな!!」
今までに聞いた事のない声を荒げながら睨みを利かすミキ。
アキは俯いたまま弁解すらしなかった。
「ねぇ、何とか言いなよ。」
「何黙ってんの?」
当事者でもない私達が野次を飛ばす。
当然アキは応えようとはしなかったけれど、この時に一番凄まじい野次を飛ばしていたのはエリだった。
「友達裏切るなんて最っ低。死ねば?」
相変わらず黙り込んでいたアキが啜り泣き始めるとミキは呼吸を整えながら冷静に言い放った。
「泣きたいのはこっちだよ。友達も彼氏も一度に居なくなったんだから。」
ミキとアキの携帯にぶら下がるお揃いのストラップが、とても痛々しく私の目に映っていた。
次の日からアキは学校に登校してくる事はなかった。
双子みたいと言われていた二人だったけど、お揃いだったものはアキがミキに買い与えた物だけで殆どはアキがミキの持ち物を真似ていただけだと判明した。
女の私達から見ても童顔で可愛かったミキ。女受けも男受けも良く付き合う男には昔から苦労していなかった。
そんなミキを一番近くで見ていたアキは、憧れを抱いたのかも知れない。
今回の件に限ってはたまたま好きになった人が同じだったのか、はたまた隣の芝は何とやらで手を出してしまっただけなのか、真相はアキにしか分からない。
「それにしてもアキちゃん酷いよね!ミキちゃんが可哀そう。二度と学校来るなって感じ!」
あの日からあからさまにアキを強く否定するようになったエリ。
エリだけを棚に上げてはいけないけれど、当事者以外の私達が一斉にアキを責めた事は間違いだったと思う。
今更こんな事を言っても綺麗事かも知れないけれど。
***
更新が滞っておりましたが、またマイペースに更新していく予定です。
途中で失礼致しましたm(_ _)m
「それでアドの名前を前後入れ替えれば届くからってアキの方が誘ったらしいんだ。」
「えー!学校行ってない間にそんな事があったんだー!急にアキに着拒されたからマジ焦ったし!」
久しぶりに登校してきたリナはオーバーリアクションで今回起った騒動の話を聞いていた。
当初は自殺でもするんじゃないかってくらい落ち込んでいたミキだけど、完全に吹っ切れたのか元彼の話を普通に話せるようになっていて、新しい男の人と連絡を取るまであっさりと復活していた。
自業自得だけど、短期間で男を乗り換えているミキを見てしまうと仲間を外れ不登校になってしまったアキが少し不憫だと今だから思ってしまう。
「正直男も結構クズだよね。悪いけど彼氏とか何がいいのかサッパリ分かんないわ。」
横からそう吐き捨てたのはメイ。
メイは昔から男受けだの彼氏だのに一切興味を示す事はなかった。
その一方で私は、恥ずかしながら同級生の男友達と周囲にも公認で恋愛関係に発展していた。
私の初恋の相手タケダこと、通称タケ。
小学生の時からよく一緒に遊んでいた男の子だった。
中一中二はあまり関わり合う事がなかったけど、クラス替えで再びタケと会話する事が増えた事がきっかけだ。
同じクラスの女子達の間で私が浮いていた事もあり、正直かなりメンタル面で助かっていたと思う。
チビでバカで足が早い事だけが取り柄だったタケは中三の時にそれなりに男らしくなっていて、私は返事のメールを待ちながら乙女モードに浸っていたりもしたが、交際中は甘ったるい雰囲気にはならずお互いに貶しあいながら友達の延長線上のような付き合いをしていた。
正直、タケ自身も友達の延長線くらいにしか思っていなかったと思う。
この頃メイとエリはかつてのミキとアキのように二人で結束力を深め、相変わらずリナは学校をサボりっ放しで休み時間はミキと絡む事が自然と増えていった。
放課後ミキがデートの時には私もタケやタケの男子グループに混ざって過ごし、時折メイとリナに近況報告のメールや長電話。
恋も友情も、私はきっと上手くやれている。
そう信じて疑わなかった、はずだった。
「あ、それブルガリのキーリングじゃない?また彼氏に貢がせたのー?」
「もー!違うよー。マサさんのやつ借りてるだけっ。」
ミキはマサさんという車持ちの年上の男性と新しくいい感じになっていた。
「タケがくれる物なんてうまい棒ばっかりだよー。超羨ましー。」
いつもの女子トイレで恋愛話に花を咲かせていた私とミキ。
その傍らで何やらバンドの話に熱中しているメイとエリ。
「このPV超カッコ良いよね!」
「分かる!しかもサビの時超エロいよね!」
いつの間にか二人はビジュアル系バンドの熱狂的なファンになっていて、メイと話をしていてもバンドの話ばかりで正直ついていけなくなっていた。
会話の中でも戸惑う場面が増え、私達の間に少しずつ微妙な距離感が生まれ始めていた。
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ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
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