メリーさん
メリーさんの本名は中山唯。
高校二年生。
この世にやり残した事がある唯は、「メリーさん」という役職をしながら、滞在時間を稼ぐ日々…。
しかし、メリーさんは物腰が柔らかすぎて、誰も怖がってはくれない。
そんな中で出会った男の子と、トイレの花子さんの力を借りて自分を殺した犯人を探す。
そこで見えてきた真実とは……。
※コピぺ
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メリー「私メリーという者ですが」
男「はあ・・・」
メリー「悪いんですが、今からそちらにお伺いしてもよろしいですか?」
男「罰ゲームか何かですか?」
メリー「いえ、個人的な用件というか、仕事なんです」
男「そうっすか・・・いいですけど別に」
メリー「有難うございます。15分ほどで着きますので宜しくお願いします」
そう言って電話は切れた。
電話を掛けた方から切るというマナーを守ってるなと思いつつ、自称メリーさんを待つ事にした。
そしてピッタリ15分後にもう一度、着信音が鳴った。
男「もしもし」
メリー「私メリー。今、あなたの後ろにいるの」
振り返るとそこには、ずぶ濡れで携帯を手にし、正座してる女がいた。
男「・・・・」
メリー「…驚かないんですか?」
男「驚いてますよこれでも。でもあまりに普通なんで」
そこに正座していたのは街中で見かけるような女、というか女の子と言った方がいいだろうか
スカートを履いているが今、流行のレギンスが見えている。
服装はzipper系とでも言うのだろうか
女の子の服装はよく分からない。
「メリーさんってあれですよね。妖怪というか幽霊の・・・」
「はい、そうです。あのメリーさんです」
「どう見ても日本人にしか見えないんですけど」
ロングの黒髪が雨に濡れて、黒々と光っている。
まさにカラスの濡れ羽色といった感じだ。
メリーさんは黒々とした瞳でこっちを見ている。
「ああ、これは役職なので私に割り振られたのがメリーさんなんです」
「職業なの・・・?」
「はい、ちなみに生前は中山です」
死んでからもいろいろあるんだなと僕は思った。
「それで中山さん、どうして家に?」
「あ、メリーでお願いします。今日ここに来たのは、あなたに驚いてもらう予定だったんですが・・・」
驚いてませんでしたよね・・・と下を向いてメリーさんは落ち込みだした。
「仕事って言ってたけど驚かすのが仕事なの?」
「はいそうなんですけど、まぁ自分の為ですね。説明すると長くなります」
メリーさん曰わく、死後はこんな仕組みらしい。
死んだら成仏するか、この世に残るか、選ぶ事が出来る。
成仏するを選べば、死後の世界とやらに行けるらしい。
この世に残るを選べば、まだ留まる事が出来る。
しかし、その場合、ある条件があるのだ。
『役職に付き、人を驚かせること』
有名な妖怪から地方の噂まで、ピンからキリまである役職のどれかに割り振られ、人間を怖がらせる事でこの世の滞在時間を稼ぐらしい。
「私に割り当てられたのが、メリーさん。一人驚かすごとに14日間の滞在期間がもらえます」
「結構シビアな世界だな」
「有名な妖怪になるほど、報酬期間も少なくなります。トイレの花子さんなんて一人あたり、三日ですよ」
「切ないな花子さん」
この世に留まる事を選んだ人は大抵、この世に未練があり、果たせなかった事、恨みを晴らすためなどに、必死で人を驚かすのだという。
「そこであなたに驚いて頂きたいんです。形だけでいいんで」
「はぁ・・・形だけでいいんですね?」
「いいんです」
後ろを振り向くようにと促すメリーさん。
しぶしぶ後ろを向くと、携帯の着信音が鳴り響いた。
「もしもし」
「私メリーさん。あなたの後ろにいるの」
すぐ後ろから聞こえる声と、携帯から聞こえる声が、ほんの少しズレて、おかしな感じだ。
そして振り向くとさっきと同じ姿勢のメリーさんが
アイコンタクトを取ってきた。
驚けという合図なんだろう。
「それより濡れたままで平気か?」
「あ~ちょっと寒いですけど、平気です」
「ちょっと待ってろ」
そう言って一階へと下りる。
タオルを取りにだ。
女の子はいたわれ。
親父から毎日のように言われていた言葉だ。
たとえ幽霊であっても、女の子なのだ。
右手にマグカップ、脇にバスタオルを抱え、自分の部屋へ入ると
メリーさんがベットの下を覗いていた。
ドアが開く音に気付いたのか、慌てて最初に座っていた位置に戻り
何もなかったかのような顔で、お帰りなさいと言った。
「何してたの?」
「いっいや!そのっ男の子の部屋に入るのは初めてでして、やっぱり、あ、あ~いうものがあるのかなと思いましてっ」
声が裏返っていたり、
ごにょごにょと後半は聞き取りづらかったが、
文字通りタオルを投げてやる事にした。
甘いな。
俺の隠し場所は、カギ付きの引き出しの中だ。
しかも一枚の板の下。
その上、特殊な開け方をしないと燃えてしまう。
ベットの下など馬鹿のやる事さ。
それはさて置き、片手のマグカップをメリーさんに差し出す。
「あったかい紅茶」
「ありがとうございます。ご親切に、どうも」
ここで、この紅茶が高いだの有名だのとは言わないのがコツだ。
純粋に感想を聞きたいがためだ。
紅茶好きの血が騒ぐ。
髪をタオルで拭きながらメリーさんは続ける。
「実は、驚かすのはあなたが初めてなんです。
いつもは最初に電話した時に断られてしまって・・・・」
それはそうだろう、いちいち断りを入れずに強引に来ればいいだろうに。
律儀な奴だな。
承諾するのは僕か、よっぽど寂しい奴だろう。
「それで・・・どうしたら驚いてもらえるようになると思いますか?
滞在期間を稼がなきゃいけないんです」
「次に服装だ。なんで流行の最先端なんだ」
「幽霊がオシャレしちゃいけないんですか?女の子の楽しみなんですよ?」
女の子という単語に弱い僕。
オシャレしたいのは仕方ないと妥協する事にした。
「驚かす時に笑顔もやめた方がいい」
「じゃあどういう顔してたらいいんですか」
「恨めしそうな顔で驚かせばいいじゃないか」
「恨めしくないですもん」
「直す気あんのか!」
その後も小一時間、欠点の克服に勤めたが、
どうにも引き下がる事はなく、結局は今のままでいく事になった。
正直、疲れたので、話題を変えることにする。
「ところで、何でこっちに留まってるんだ?」
「あ・・・それは・・・・」
しまったと思った時にはもう遅かった。
なんてデリカシーの無い事を言ってしまったのか
「それが思い出せなくて」
「は?」
「私が死んだのは確か交通事故なんです。
事故のショックで忘れてしまったのかも。
でも何かやらなきゃいけないと思ってたんで、ここに留まったんです」
「でもそれじゃ、ずっと用事を済ませられないじゃないか」
「断片的には覚えてるんですけど、雨の日の事故でした。
私はなぜか浮かれてて、それで・・・」
メリーさんの目に涙が滲んできた。
やはり地雷を踏んでしまったようだ。
後先考えず、僕はこう言った。
「良かったら手伝うよ」
「ありがとう」
笑顔でそう言った後、彼女の頬を涙が流れた。
髪の毛から垂れた水かもしれないけど、
柄にもなく、ドキッとしてしまった。
その時、一階の玄関が開く音がした。
親が帰ってきたのだろう
「あ、そろそろ私は帰ります。これ以上お邪魔しちゃ悪いですし」
「ああ、また連絡してくれ」
「はい!それでは」
立ち上がるとメリーさんは窓の外へ消えていった。
僕は彼女のために頑張って、果たせなかった事を見つけてあげようと思った。
残ったマグカップとタオルを片付けようと立ち上がると、スーッとメリーさんが帰ってきた。
「あ、それとお茶ごちそうさまでした。
アールグレイですよね?
ものすごくおいしかったです」
それだけ言うと、メリーさんは再び窓の外へと消えた。
僕は絶対に見つけてあげようと誓った。
「おはようメリーさん」2コール目で出てそう言うと
「私メリー…ってなんで分かるんですか」
お馴染みのセリフを邪魔してしまった。
「昨日、電話帳に登録しておいた」
着信とともに画面に出る『メリーさん』の文字。
「そ、そうですか・・・私の仕事が・・・」
そう言うとプツンと通話が切れた。
うん、やはりマナーを弁えているなと思いつつ
メリーさんが来てもいいように準備をする事にした。
またずぶ濡れなんじゃないかと思い、バスタオル。
それから紅茶を用意する事にした。
今日はキャンディでミルクティーでも作ろうかな。
時間はあるしと15分をかけてお茶を準備した。
喜んでくれるだろうか。
お茶を持ち、バスタオルを抱え自分の部屋に戻る。
メリーさんはまだ来てないようだ。
お茶を中央のテーブルに置き、ベットに腰掛ける。
照明から吊り下げられたヒモを見ながら、これからどうしたらいいか考えていると携帯が鳴った。
画面を確認すると案の定、メリーさん。
電話に出ずに振り向いてみた。
するとメリーさんは既にそこにいた。
やはりずぶ濡れでベットの上に正座。
ちょっとふて腐れたような顔でこちらを見ている。
まぁ検討はつくが。
電話に出ていた方が良かったのだ。
「もう二回目なんでいいんですけどね」
でも私の存在意義が……とメリーさんは続けて言った。
「悪いんだけど、布団が濡れてしまう」
そこらへんはキッチリしてもらおう。
寝ることが好きな僕にとっては死活問題だ。
「あっごめんなさい!」
すぐさまメリーさんはベットを降り、昨日の定位置へとついた。
やはりいい娘だな。
あらかじめ用意して置いた紅茶とバスタオルを手渡す。
なぜ、この娘はいつもびしょ濡れなのか。
疑問に思った事を素直に聞いてみた。
「傘とか持ってないの?」
「か…さ…?持って…ないですね」
「…?」
なんだろうか今の曖昧な返事はよく分からないが、帰りがけに傘を貸してあげようと思った。
「本題に入りたいのですが」
紅茶を綴りながらメリーさんは言う。
「私はたぶん、これ以上、人を驚かす事は出来ないと思うんです」
うん何となく分かる。
あれで驚ける人間はほとんどいないだろう。
「それで考えたんですが、残りの滞在期間で目的を果たそうかと」
「何日残ってるんだ?」
「死んでからの初回ポイント、1ヶ月分は、ほとんど使ってしまったので
昨日の14日分を合わせると、残り18日です」
18日か……長いようで短い気がする。
そもそも初回ポイントが気になるが、敢えてスルーしよう。
「分かった、その間に目的を果たせばいいんだな?」
「はい、お願い出来ますか?」
僕は二つ返事で承諾した。
「困ってる女は助けろって親父によく言われててね」
「優しいお父さんですね」
正確には困ってる女は不細工でも助けろなんだけど
これは言わずにおこう。
とりあえず明日、学校で事故について調べる事にするか。
「とりあえず、覚えてる事を話してくれるかな。何か手掛かりになるかもしれないし」
「はい、分かりました」
話を聞いて愕然とした。
メリーさんは自分の名前以外、ほとんど覚えていない。
家族のことさえも家族がいたとか、そんな認識しかしていない。
ほぼ記憶喪失と言っていいだろう。
それでも断片的な記憶は残っているようだ。
屋上、川、神社など地名もいくつか出てきた。
この場所を辿ることで目的は見つかるのだろうか。
思ったよりもかなり難しい前途多難だ。
あらかた話し終わると、メリーさんはまた泣きそうな顔になっていた。
これはいけない。
女だけは泣かすな。
これは最優先事項だと言っていた親父に殴られる。
慌てて話題を反らす事にした。
「メリーさんは食事とかどうしてるの?」
「え?え~と別に食べなくても生きて?いけますが、食べる事は出来ます。私は結構、上級霊なので物に触れる事も食べる事も出来るんです」
ほぉ。
いろいろ勉強になるな。
僕もいつかは死ぬのだから、今のうちに仕組みを覚えておくのもいいかもしれない。
その後も他愛もない世間話が続いた。
「ところでその素敵なお父さんは今何をしてるんですか?」
「あ~去年死んじゃった」
「あ…ごめんなさい」
親父は去年、死んだ。
病気だったが、死ぬ直前まで看護師をはべらせて、病室はハーレム状態だった。
そう思うと親父は成仏したのだろうか。
あらかたこの世に残って、妖怪枕返しとか、微妙な役職をやっている気がする。
女の部屋に入り、枕を返して喜んでいるかもしれない。
そう考えると、親父らしくて、可笑しくなってしまった。
「ところでメリーさんはこの辺りで…その……死んじゃったの?」
「そうなりますね、死んだ場所からあまり遠くには行けませんから」
「そうなの?」
「はいちなみに私はN県O市担当メリーさんです。担当場所以外からは出られません」
そういう事か、各地で目撃されている幽霊や妖怪が場所によって姿形が違うのはそのせいか。
つまりメリーさんだけでもかなりの人数がいるという事だ。
ますます、シビアな世界だ。
その後も話は続いた。
メリーさんに一方的な質問ばかりしていたが。
整理するとこうだ。
約一ヶ月前の雨の日に交通事故で死んだ。
記憶はほとんど飛んでいるが、断片的なものは残っている。
屋上、神社、川、クレープ屋などのキーワード。
俺と同じ17歳。
好きな食べ物は蕎麦。
残った日数は18日。
何とかなるか、ならないかは微妙だが
何しろ小さい街だ。
範囲は絞られてくる。
曖昧なヒントしかないのは心元ないが。
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