嘘道
死ぬ時に私は私の生きた道を我が子に話せるだろうか…
きっと…いや…絶対に無理だろう
誰にも話せない私の過去
私の中の闇
誰かに聞いて欲しくて…
新しいレスの受付は終了しました
私は両親が大嫌いだった
何をしたって私が叩かれる
4つ年下の弟は、何したって叱られる事は無い
調子良く私にちょっかいを出してきて、私はそんな弟を払い退ける
そして弟が泣くと私が叩かれる
ずっとそうだった
私は邪魔でトラブルメーカーだと母親がいつも言う
私は望まれない子供なんだと思っていた
中学を卒業したら、高校は遠い所に進学しよう
そう決めていた
私の父は地元一大きな会社を経営している
いわゆる大富豪って奴で…
でも、愛人と言われる女が沢山いて…
母としては、気分が良い筈も無く…
毎晩毎晩、夫婦喧嘩が耐えなかった
母はいつもイライラしていて、思い通りにならない歯がゆさで私に八つ当たりをする
弟はいわゆる「世継ぎ」って奴で…
大切に大切にされていた
私は幼い頃から、そんな事情が何となくわかっていて、家にいるのが苦痛でたまらなかった
早く家を出たいと常に思っていた
中学を卒業して私は寮がある高校に進学した
私立のいわゆる進学校って奴
勉強が大嫌いだったけど、家を出たい一心で頑張り、ギリギリ合格した
親元さえ離れてしまえばこっちのモノだと考えていた私は非常に甘かった
朝から晩まで勉強、勉強…
元々勉強嫌いな私には、ここもまた地獄
どちらに転んでも地獄なら、死んだ方がマシ
そう思って、ある日の深夜、寮を飛び出した
とりあえず近くの駅に行ってみた
私の高校から少し離れた所に、ワルで有名な高校があった
駅には、その高校のワル達が屯していた
うちの高校には、こんな奴等みたいなのは1人もいない
凄く衝撃だったし、怖かった
だけど、凄く輝いて見えた
格好いいって思った
そんな中の1人が私に声を掛けて来た
何してるの?
……寮を…飛び出して…来ました
寮って?A校の子?
……はい
何で?
……何もかも嫌になりました
そっかぁ~
で?何処行くの?
……わかりません
じゃ、一緒に行く?
……何処ですか?
良い所だよ
怖い気持ちと、期待と…ドキドキしながら付いて行く事にした
着いたのは、アパートの1室
名前は?
……雅です
頭良い子ちゃんなんだね
可愛い
同じ年代の人間に、バカにされたのか、本音なのか…
来なきゃ良かったかも…って思った
何だか私ヤバい所に来てしまったかも…
しばらくして、彼等はビニール袋を取り出した
袋の角をクルッと結び、ひっくり返した
そして、その袋の中にリアルゴールドの瓶に入った液体を流し入れ吸い始めた
彼等はその液体を「ネタ」と呼んでいた
「ネタ」を吸うと嫌な事何もかも忘れてしまうらしい
でも、その「ネタ」が恐ろしい物である事はすぐにわかった
雅ちゃんも吸わない?
気持ち良いよ~
彼等はよだれを垂らし、完全に呂律が回っていない
私は逃げようとした
おい、お~い
雅ちゃん、見ちゃったよね?
帰さないよ~
殺しちゃうよ~
イヤ!怖い!
誰か…助けて…
怖くて怖くてたまらなかった
だけど、完全にラリってる彼等に、理性や常識など通用する筈も無く…
私は叩かれて…
服を剥ぎ取られた
ただ、恐怖と痛みと…
気がついたら、彼等の近くで、裸の私がいた
股からはタラタラと血が流れ、痛みで動けない
私が、こんな形で大人になるなんて…
私が嫌な事から逃げたばかりに…
私は汚い女になってしまった
死にたい!
嫌だ!
もう嫌!
どうやって逃げ出したなんて覚えていない
必死だった 結局私の帰る場所は、寮しか無かった
仕方なく机に向かい勉強を始めようとした
だけど、何も手につかない 「死」しか思い浮かばない
きっとこの寮生のみんなが「純潔」な少女であろう…
汚れた、こんな女の存在を知ったら、軽蔑するだろうな…
私の居場所って… そう考えていると
ピ~ピ~ピ~♪ 携帯が鳴った
知らない番号…
誰…?
出ようか出ないか迷っているうちに止まった
誰?
私は恐る恐る掛けてみた
プルプル…♪プルプル…♪
もしも~し、雅ちゃん?
俺、わかる?
わからない…
俺、さっきいた誠だよ
誠…
さっきの悪い奴等の1人 最初に私に声を掛けて来た男
…何?
雅ちゃん大丈夫? 痛かった? 俺、心配で…
私の携帯を勝手に取って、番号を見たのだろう
恐ろしい…
でも、何だか口調が優しいし、この人はあの男達とは違うかも…
私は馬鹿だ
普通なら、絶対に会わない
だけど、あの時の私は、自分に優しくしてくれる人間に…
男に…
そして罠に…ハマってしまった
私は急いで誠のいる駅にに向かった
駅に着くと、誠がくわえタバコに携帯をいじっていた
私の存在に気づくと、携帯をパッとたたみ、私の髪を撫でた
雅ちゃん…ごめん
俺…
雅ちゃんを助けたかったのに…
いいの…もう…
私を優しく抱きしめる誠に、すがる様に泣いた
俺はネタもあんなこともしない
俺は、あいつらとは違うから…
誠は優しかった
誠の優しさに、私は人に初めて心を許した
でも、間違っていたんだ
何もかもが…
かろうじて学校には通った
そして寮に帰り、19時の点呼後に誠の家に行く
朝6時に寮に帰り、7時の点呼後に学校に行く
そういう生活になった
同じ寮の人間は、私みたいな落ちこぼれに興味など全く無い
私が何処にいようが、何をしようが、例え死んでたってどうでも良い
だから私には、都合が良かった
誠の家は父子家庭で、父親は自営業をしており、現場が遠いと車や民宿に寝泊まりしている様で、たまに帰って来る
まぁ1人暮らしみたいなもの
私は新妻気分で誠の身の回りの世話をした
ご飯も毎日作った
夜は同じ布団に寝る
もちろん肉体関係があった
誠の父親はたまに帰って来ては、テーブルの上に少しばかりのお金を置いて出て行く
ほんの少し…
何かとお洒落を気にするこの年代の男の子には足りる筈も無い金額
食費のほとんどを私が出す様になっていた
それに加え、誠はバイクを友人に譲ってもらうと言い出し、結局そのお金、そして維持費まで私が出す事になった
私の小遣いは月8万円
食費くらいなら何とか出す事は出来たが、バイクとなると桁が違う
この時点でもかなり親に頼っていたのに、その時私は全くわかっていなかった
親には頼みたく無い
誠の為のお金は、私が自分で稼ぐ…
少しづつ私は闇の世界に落ちて行く事になるのだ
私は街の路上から更に奥に入った所にいた
普通の高校生なら絶対に踏み入れない場所…
電話ボックスには無数の貼り紙
餓えた男と金を求めた女達がさまよう場所…
私は100円ショップで揃えた化粧品で慣れない化粧をし、ビルの階段で相手を待った
しばらくすると、50代くらいの男が近より、指を3本立てた
私は、「うん」と頷き男の後を付いていく
元々汚れた身体の私だから、後ろめたさなど微塵も無い
ホテルに入り、3万円を受け取ると、無言でシャワーを浴びて、男に抱かれた
自分のしている行為を頭で考えると、吐き気がするので、無になりきる
男は私の身体に貪りつき、男の部分を私の中に入れた
気持ち良いなんて全く思わない
早く行為を終わらせて、早く誠に自分の成果である現金を渡したい
それしか考えていなかった
約1時間ほどで、行為が終わり、男と別れた
そんな事を2、3回すると、ある程度のお金が貯まる
これで誠が喜んでくれる
最初はそうだった
誠は私が現金を渡すと、本当に喜んでくれた
屈託の無い笑顔は、本当に爽やかで、可愛いくて…
高校球児にひけを取らない程に感じた
私は誠の笑顔に…
誠は容易く入る現金の魔力にハマり
どんどんと道を外れて行った
私は学校が終わり点呼を終わらせると、毎晩の様に街に繰り出し、自分の身体を現金化して行く
週末なんて、1晩で10人の男に身体を売った
それを受け取る誠の笑顔を見る事
それだけが私の生き甲斐
誠はバイクのランクのどんどん上げ、数ヶ月後には数百万する高級バイクを乗りこなす様になっていた
街に数台しかいない誠のバイク
後ろに乗れるのは私だけ…
誠のレベルを上げたのは、この私
誠は私が1番大変な存在で、私がいなきゃ生きていけない…
この優越感、たまらない
そして、簡単に入る現金…
やめられない
私は…
とんでもない暗闇を突っ走っていると言う現実に、全く気付かなかった
ある日、私はいつもの様に自分の身体を現金化して、その成果を持って誠のアパートへと行った
が…
あれっ?
鍵が掛かってるじゃん…
トントン♪
誠?いないの?
誠は外出する時だって鍵なんて掛けたりしない
何だか物凄く嫌な胸騒ぎがした…
…誠?
いないの?
私はドアに耳を当て、中の様子に聞き耳を立てた
少しだけど、声が聞こえた
……誠の声じゃなくて、女の声が…
……誠
私は一瞬にして状況が読めた
誠はアパートの中で、別の女の身体を楽しんでいる…
私と言う女がいながら、誠は別の女を、壁越しに抱いている…
きっと私の呼びかけすら聞こえないくらい、2人はお互いの身体を楽しんでいる…
私はショックで、へたり込んだ
それから自分が何をしたのかなんて覚えていない
気が付くと、寮の自分の部屋にいた
携帯には「着信アリ」が20件くらい
全て誠だった
結局私は、誠にとって金の成る木だったんだ…
もう何もかも、どうでも良い
学校にも、寮にも、実家にも、そして誠の家にも
私の居場所なんて無い…
私は再び寮を出て、あの場所に向かっていた
「あの場所」
…そう
自分を現金化出来るあの場所…
唯一、自分の存在を認めてくれる闇の街…
ここが私の居場所になった
そんなある日
私はいつもの様に、この街で餓えた男を探していると、見慣れた姿を目にした
同じクラスで、わりと成績も良い、いわゆる優等生…
…美沙さん?
美沙さんじゃない?
…………雅さん
美沙さんなんかが、こんな所で何してるの?
雅さんこそ…
私は………
何て言ったら良いのか、わからなかった
しばらく黙っていると、
お腹空かない?
美沙が言った
私達はとりあえず、少し離れたファミレスに入る事にした
私は雑炊♪
んじゃ、私はがっつり唐揚げ定食♪
デザートも頼もうか♪
今まで、美沙と話した事なんて数回しかない
美沙がどんな子かなんて知らなかったし、優等生には一切興味なんて無かった
だけど、そんな美沙が何故こんな街にいるのか…
不思議でならなかった
そんな中、美沙が口を開いた…
雅さんって、何だか私と同じ匂いがしてたんだ…
私、居場所が無いんだよね…
何処にも…
雅さんは?
私は…
自分がどう生きて行ったら良いのかがわからない…
誰も信用出来なくて…
お金とか、セックスだとか、そんな事なんてどうでも良いのだけど…
自分でも、何でこんな事してるのかわからない…
…そっかぁ
一緒じゃん!
何だか雅さんとは仲良くなれそう!
雅って呼んでも良いかな?
この日をきっかけに、お互いを「美沙」「雅」と呼び合う様になった
美沙の両親は学校の先生で、「偏差値」と「学歴」にこだわっていた
美沙が何を悩み、何を望んでいるかなんて全く興味なんて無い
ただ、良い成績を取りさえすれば良いのだ
両親にとって美沙はロボットと同じ
学校が終わり、塾に行き帰って再び勉強をする
美沙の心には、ブラックホールの様な大きな穴が空いてしまった
逃げ場の無い心の闇…
自然とこの街に吸い込まれて行ったのだ
餓えた男達とセックスしたって、何も変わらない
変わらないけど、何処かで親に反抗したい気持ち…
甘ったれかもしれない
だけど私達は、こうする事しか生きていると言う事を実感出来なかった
私に出来た初めての親友
幼なじみと言われる友人は地元に何人かはいたけど、私とは違う
普通の家庭に産まれて、当たり前の様に大切にされて…
羨ましかった
私は親によって友達を格付けされて育った
親は友達を見ている訳では無く、友達の親を見て格付けする
相手の親が大卒のエリートなら、ランクA
高卒のサラリーマンなら、ランクB
家の従業員なら非人扱い
最低だ
だから私は、親友と言う心から全てを分かり合える友達なんていなかった
いつも何かの違和感がある付き合い…
そんな私に、初めて出来た親友、美沙
自分と同じ様な境遇で、同じ様な悩みを抱えていた
美沙はまるで私そのもの
美沙と私は毎晩の様にあの場所に繰り出しては、色々な男達に買われた
そんな感じだから、私達の噂はあっと言う間に闇の世界に広がっていった…
ある日、私達がいつもの様にあの場所で餓えた男を偵察していると、1人の男が声を掛けて来た
君達だよね?可愛い2人組って?
…はい?
私と美沙は顔を見合わせた
絶対に悪い話じゃないと思うんだけど、ちょっと時間あるかな?
興味半分、恐怖半分、怖いものみたさって感じで、私達は男の後を付いて行った
着いた場所は、ネオンがキラキラ輝き、眩しいくらい綺麗な店
黒服と呼ばれる男が、私達に頭を深々下げて案内する
店の中には、綺麗な女性の写真が数名飾ってあり、その女性目当ての男達が並んでいた
私達は、店の奥にある事務所に通された
君達、大学生かな?
戸惑った私の横で美沙が何の迷いも無いかの様に答えた
はい!大学3年です
なら大丈夫だな!
君達、可愛いし、スタイルも良さそうだから、家の店で働いてみない?
あんな所で待ってたら、危ないよ!
それよりも、家の店で働いた方が安全だし、何かあっても僕達がいるから!
体験入店も出来るから、もし良かったら、今日からどう?
嫌ならもちろん無理にとは言わないけど…
…美沙、どうする?
私は美沙に問いかけた
美沙は私の顔を見ると、ニコっと笑い、頷く
そして、すくっと立ち上がり、
よろしくお願いします!
と言って頭を下げた
私も慌てて立ち上がり
頭を少しだけ下げた
良かった!
お客さんが付いたら、まずはコースを聞いて
60分と90分と120分があるから
ほら、壁に貼ってあるでしょう
60分コースは12000円
そのうち4000円は僕が「落とし」として貰うから、自分達の取り分は8000円
90分コースは16000円で落としが7000円
120分コースは20000円で落としが9000円だから
出来るだけ、自分のお客さんを掴める様に頑張って!
何かあったら、ベッドの所にあるブザー鳴らしてね!
そう言って、私と美沙は別々の個室を案内された
しばらくすると、1人の男が部屋に入って来た
こんにちは、可愛いねぇ♪
ハッキリ言って気持ち悪い
デブで脂ぎってて、体臭もキツイ
最初の客がこんな奴だなんて
私は別にお金に困ってるわけじゃない
何で好き好んで、こんな奴とやらなきゃいけないのか…
そう思ったが、今更逃げ出す訳にもいかず…
仕方なく仕事をこなした
男は満足した様で、また来るね!
絶対にまた真樹ちゃんを指名するからね!
と言って帰って行った
真樹ちゃん…
私がとっさに考えた源氏名
美沙の源氏名は、涼
私達がこれからこの道で生きて行く上での新しい名前…
あの日から私達は女子高生と風俗嬢の二足のわらじを履く様になった
もちろん周りには絶対にバレない様に、私は寮の点呼後に店に入り、美沙は塾に行くと嘘を付いて店に入る
店の人達は、まさか私達がA校の子だなんて思ってもいないだろうし、学校のみんなも、まさか私達がそんな店で働いているだなんて思ってもいないだろう
もちろん両親も…
私達は、秘密を持つと言う事に変な優越感を感じていた
きっとこれが脳内麻薬って奴なのかもしれない…
絶対にバレたく無いから、学校の授業は誰よりも真面目に受けた
わからない所は、積極的に先生に聞いた
美沙も、絶対に成績が下がらない様に、頑張っていた
そして夜は店に入り、化粧をし、セクシーな下着を身にまとい、誰よりも艶っぽく、自分の色気を出しきる
そんな生活が半年程過ぎて、私達は高校2年生になっていた
そろそろ進路を決めなきゃいけない時期…
大学に進学するか…専門学校か…
就職…………まずその道は断たれるだろう…
美沙の成績は相変わらず良い
私は、何とか中の下といった感じで…
ねぇ、美沙はやっぱり国立狙い?
そうだね…親は…そう言ってる…雅は?
…わからない
そっかぁ…ならさ、同じ大学行かない?
無理だよ!美沙がランク落とすって事になるよ!
美沙は美沙のレベルの大学に行かなきゃ!
違うよ!雅が頑張って、ランクを上げるんだよ!
K大なんてどう?
K大!?無理に決まってんじゃん!
決まってない!!私達は、2人で1人なんだよ!
一緒に頑張って、同じ大学行こう!
こうして私は、美沙の言葉に押されて、K大を目指す事になった
店には、しばらくは就職活動があるので、週1しか出勤出来ないと言った
そして美沙と同じ塾に入り、塾から帰宅してからも寮に帰り、夜中まで勉強をした
両親も私がK大を目指すと言ってからは、毎日の様に応援メールが届いた
勉強は大嫌いだったけど、美沙と同じ大学に入りたい一心で頑張った
ハッキリ言って、私はこの時期の記憶がほとんど無い
ただ、週末だけは私があの店で輝いていられた
しばらく店に行かないと、私の女の部分は敏感になり、セックスに対する快感を感じた
そしてこの時期に初めて絶頂を知った
高校3年生になり、最後の3者面談の頃には、私の成績は美沙とさほど変わらないくらいに上がり、K大も夢では無いと言われるまでになっていた
この有数の進学校で、上位に君臨する私と美沙
先生達は私達の事を、学校の鏡だと言った
…学校の鏡かぁ
ふふっ、そんな学校の鏡が、風俗で働いているなんて先生達が知ったら、きっと腰を抜かすだろうなぁ…
無性におかしかった
その気持ちは、美沙も同じ
あからさまに、不良をやってる人達とは違う
私達はそんな優越感に浸っていた…
春になり、そんな私達の高校生活も終わりを告げた…
美沙は卒業式で卒業生代表の答辞を読んだ
私と美沙は先生達に生徒の鏡だと見送られた
そして、K大に入学した…
私は今まで窮屈に感じていた寮を、美沙は実家を離れ、あえて2人で新しい生活をする事となった
美沙、よろしく!
雅ぃ~!よろしくぅ~!
大学の学部こそ違ったけど、私達は希望通り同じ大学に入学する事が出来、そして寝食を共にする事となった
夢にまで見た生活
夢にまで見た自由
しかし、1度踏み入れてしまった蛇の道から抜け出す事など出来る筈も無く…
私達はやっぱり闇の道へと自然に足が向いてしまう…
キラキラとしたネオン
餓えた男達は金を求めた女の餌食となる…
眠らない街…
私達にはそういう場所が落ち着く
自分の身体をお金に換える事で、自分を満たす
だけどお金に換えた所で、金の使い方を知らない私達は、何に使うわけでも無く…
そうしているうちに、知らず知らずのうちに、自分の身体が数百万、数千万と怖いくらいに化けていっていた…
普通の学生なら、絶対に持たないくらいの大金…
何だか、飽きてしまった
そして、他の刺激を求めてしまう…
人間と言うのは、実に欲深い生き物か…
ねぇ~、美沙~、今日店行く?
…う~ん、何だか飽きちゃったんだよね…
雅は?行く?
私も…飽きた…
だよね…
何か他の刺激が欲しいって言うの?
何か無いかなぁ?
そうだね…
私達は、部屋でゴロゴロしながらそんな事を話していた
しばらくして、美沙がパッと立ち上がり、私に言った
競争しない?
競争?
そう、競争!
競争って何の?
ふふっ、私と雅どちらが沢山の男を手玉に取れるかって競争
より高価なプレゼントを貰うか、より沢山の男をハメた方が勝ち
面白そうじゃない?
そうだね!面白そう!
で、期限はいつまで?
う~ん…、とりあえず3ヶ月って感じでどうかな?
3ヶ月ね!負けないよ!
私こそ!
そう言って、私達は変な競争を始める事となった
私達のルールとして
1.店の客には連絡しない
2.馴染みの男もダメ
3.年齢は20歳~45歳
と決めた
私は、合コンの誘いには積極的にのり、合コンが無い日はクラブに行ったり、ナンパスポットに行ってナンパ待ちしたり…
とにかく、より多くの出会いを求めて頑張った
ゲームを始めて2週間ほどで、私の携帯には30人程の男の名前がメモリーに追加された
真樹ちゃん…
ゲームの中でも私は源氏名の真樹になりきった
「真樹」と「雅」…
2人は全く別の人種…
真樹ちゃん、真樹ちゃんは僕だけのモノ
絶対に浮気したらダメだよ!
わかってるよ!私はヤス君だけだから!
大好き、ヤス君…
…心にも無い言葉を、いとも簡単に並べる
あぁ~!このネックレス可愛い!
…でも、今月ピンチだから、我慢しなきゃ…
何言ってるんだよ!
僕が買ってあげるよ!
…ダメだよ!ヤス君が頑張って稼いだお給料じゃない!
大切に使って!
真樹ちゃんは優しい子だなぁ~
大丈夫だよ!
僕は真樹ちゃんがいるから頑張れるんだから!
これは、そのお礼だよ
えっ…、良いの?
もちろん!
ありがとう!ヤス君、大好き!
男って、本当に単純で馬鹿な生き物…
少し可愛いフリをして、少し甘えるだけで、欲しい物は何だって手に入る
ゲームを始めて2ヶ月半が経った頃には、欲しい物なんて何も無いくらいになっていた
携帯のメモリーは男だけで100件以上になり、毎日毎日ひっきりなしに電話やメールが入る
学生、サラリーマン、医者や政治家、有名人にいたるまで、ありとあらゆる男を騙した
酷い女…
でも、これをやっているのは雅ではなく真樹…
あと半月、あと半月でゲーム終了
美沙には負けられない!
そんなある日…
何だか美沙が元気が無い
美沙…、美沙どうした?
さっきからボーとしてるけど…
…えっ?
…私、ボーとしてた?
うん、私が何言ったって、さっきから上の空って感じなんだけど
何かあったの?
………なっ、何も無いよ…きっ、気のせいだよ
嘘!美沙、私にはわかるんだよ!
何があったの?
私には嘘つかないで!
……………
雅………
…ゲーム辞めても良いかな………?
えっ!?どういう事?
美沙が、ゲーム持ちかけたんだよ!
辞めるって、どういう事?
………ごめん
実は………
言い訳なんて聞きたくない!!
雅!!お願い、話を聞いて!!
聞かなくてもわか…
お願いだから、聞いて!!!
雅!!私……
私…本気で好きだと思える人に出会ったの
もう、何もかもリセットして、私は彼だけの私でいたいの!
わかって!雅!!
初めてなの!人を本気で好きになったの!
ゲームは私の負け…
ごめんね…雅…
裏切り者…
………えっ?
美沙の嘘つき!
私、出て行く!
待って!!雅!!
必死に止める美沙を振りきって、私はマンションを飛び出した!
大学1年の秋…
私はこうして美沙との生活にピリオドを打った
実にあっけない…
美沙と暮らしたマンションを出て、私は1人暮らしを始めた
ねぇねぇ、雅ちゃん、雅ちゃんってA校出身だよね?
って事は、美沙ちゃんと友達?
もし良かったら、美沙ちゃん紹介してくれないかな?
美沙ちゃんって誰?
私、知らなぁ~い
えっ、嘘?
美沙ちゃんってA校出身って聞いたんだけど…
違うの?
がっかりぃ~
私は美沙なんて知らない…そう自分に言い聞かせた
美沙はきっと彼と毎日ハッピーに暮らしてる
どうせ裏切られるのに…
男にハマるって、美沙もただのバカじゃん!
心の中で呟いた
私はと言うと、相も変わらず色々な男達を手玉に取っては骨の髄まで吸い付くしていた
歯科医師の秀作
彼は大学3年の時から付き合っていた彼女がいた
私と知り合うまでは2人は本当に上手くいっており、彼の仕事が落ち着いたら結婚しようと約束していた
そんな中、友達に人数合わせで誘われた合コンに嫌々出席して、私と知り合った
彼に魅力があったとしたら、歯科医と言う肩書きだけ
あとは、ルックスがまぁまぁなだけ…
私はいつもの様に彼に甘え、ちょっと可愛いらしく振る舞った
たったそれだけなのに、秀作は彼女と別れ、私の元に来た
バカじゃん!
本当に女見る目無いなぁ~
そう心の中で呟きながら、私は秀作に抱かれ、秀作は私に貪りつき、そして果てる
私は秀作から、車と欲しいブランド品、海外旅行をプレゼントして貰った…、そして約半年後、結婚を迫って来たのを期に捨てた
他の男達も一緒…
みんなバカだし
人間なんて所詮こんなもの…
今まで大好きだと思っていた恋人だって、いとも簡単に捨ててしまう…
私は天下を取ったつもりでいた
だけど…だけど…何か………
何か………
虚しい…
何か………
淋しい……
どんなに、男を手玉に取ったって、プレゼントをして貰ったって、愛されたって…
満たされ無い…
美沙がいたら、ちょっとは違ったのかな…?
美沙、あなたはどうなの?
今、美沙は幸せですか?
私は携帯を手に取った
アドレス帳に入っている美沙の番号…
何度も削除しようと思った
思ったけど、削除出来なかった…
美沙…
私は美沙に電話をしようと思った
発信ボタンに親指をかける
押そうか…
押さないか…
やっぱり止めた!
美沙は絶対に、戻って来てくれる…
男と別れて、男なんてくそくらえって言いながら…
だって、美沙と私は、一心同体だもの
それからしばらく経ったある日
私は友達数名で、食堂で学食を食べていた…
あっ、あれ美沙ちゃんじゃねぇ?
友達の裕也が言った
やっぱ、可愛いなぁ~
あれっ?
隣に居るの彼氏かな?
え~っ、美沙ちゃんって彼氏いるんだぁ~
ショック~
おいおい、裕也がデカい声出すから美沙ちゃんが気付いたよ!
こっち見てるし!
あっ、ヤベ!
おいおい!こっちに来るんじゃねぇ?
私は見ないフリをしていた
美沙は私の方にゆっくり近づいて来た
美沙、あっちの席が空いてるよ
彼が言う
うん、先に座ってて、すぐ行くから
美沙は私の顔を真っ直ぐに見つめながら近づき、そして私の前に立った
何?
私は少しふてくされた様に言った
雅……元気だった?
おいおぃ、雅ちゃんやっぱり美沙ちゃんと知り合いだったんじゃん!
ちょっと、うるさい!黙っててよ!
ご心配どうも
私は相変わらず元気ですが…
雅……早く目を覚まして……私…雅の事が…ずっと心配だった…
もう…あんなこと…やめ…
余計なお世話!
あんたに関係無いでしょ!
ご馳走様!裕也、片付けよろしく!
私は食堂を飛び出した
美沙はやっぱりわかって無い!
男なんて皆浮気する生き物
裏切られて、傷付くのは美沙なのに…
好きになったら負けなのに…
私は午後の講義を受けるのをやめ、マンションに帰った
ベッドに腰掛け、携帯を開いた
着信11件、メール25件
翔太、慎之助、上川さん、智人、淳也……
皆どうでも良い奴等ばかり
私を抱いて、満足して帰って行く…
私の気持ちなんて、誰もわかってくれない
お金やプレゼントなんてどうでも良い
美沙だって、結局私を捨てて彼氏を取った…
そして彼氏に捨てられたら、また私の所に帰って来るんだ…絶対に…
人間なんて汚い生き物…
目を覚ますのは美沙の方だ!
恋愛なんてバカバカしい!
私にはそんな物必要無い!
そう思っていると、携帯が鳴った
相手は…
美沙…
少し迷っているうちに切れた
まだ何か言いたい事あるの?
私はムカつきながら、美沙に電話した
美沙、まだ何か用?
お説教なら聞かないから!
違う!
雅、知らないでしょ!
同じ大学の立山香織さん!
誰、それ?
やっぱ知らないんだ…
だから、その立山って子が何なのよ?
自分で友達に聞いてみな!!
雅が早く目を覚まさないからだよ!!
私、雅はこの話知ってて……雅…が…同じ事するんじゃないか……って…心配…だった
でも……雅は……雅は……
腐ってる!!
ガチャ、プープープー…
何なのよ…
立山香織って…?
私は気になって、裕也に電話した
もっしぃ~♪雅ちゃんどうしたぁ~?
裕也、立山香織って子知ってる?
立山香織…
あぁ~、法学部の子じゃね?
トイレで自殺未遂したんだってよ
自殺未遂?何で?
男じゃねぇ~の?
金騙し取られたらしいよ~!
その騙し取った男も、酷い女に騙されてさ、立山って子の金は結局、その女の懐に入ったって聞いたけど
へぇ………そっ…そうなんだ…
雅ちゃん、どうしたの?
う……うん、何でも無い…
雅ちゃんみたいな純粋な子は、騙されやすいから、気をつけなよ~♪
何かあったら、俺達がいるからなぁ~♪
あっ、ありがとう…
じゃ……また…ね
ほ~い♪また明日~♪
私は再び美沙に電話した
美沙………
少し時間無いかな……?
…………良いよ
雅…私んち来る……?
……うん……ごめん
わかった…待ってる
私は約1年振りに、美沙のマンションに向かった
美沙は私が出て行ってからも、あのマンションに暮らしている
今は、もちろん1人暮らしだが、時々同じ法学部の彼が来ている様だ
ピンポ~ン♪
ガチャ
雅…上がって
……うん
マンションの中は、間取りなどもちろんあの頃と全く変わっていない筈なのに、何か違う雰囲気だった…
それは、彼氏が出入りしているからとか、掃除しているとかしていないとか、そんな感じでは無く…
何と言うのか…
妙に爽やかな空気が流れていて…
私達が2人で暮らしていた頃には、こんな空気じゃなかった…
美沙は、コーヒーを入れてくれた
私は、コーヒーを一口飲み言った…
美沙……ごめん…
…聞いた?
……うん
彼女、大丈夫だったんだよね……?
……命はね…
命は…
…彼女、何したの?
……首…吊った
命は…って…美沙言ったけど……
命は助かった…
…だけど、もう大学には戻って来れないかも…
そんなに…?
……うん
自分の名前すらわからないんだって…
私、病院に行ったけど…
体も麻痺してて、これからリハビリするみたいだけど…
もう普通の生活出来ないかも……
…………嘘…
彼女が騙されたって彼は……?
…宮野って人
S大の?
……そう
……私のせいだね
とめどなく涙が溢れた
私は……自分の事しか考えて無かった
私は……自分の快楽の為に
人一人の人生をめちゃくちゃにしてしまった
いや…
きっと一人じゃない
沢山の人達の人生をめちゃくちゃにしてしまっていた
……美沙…彼女の病院…どこ?
雅、行かない方が良い!
高野さん、雅にだけは来て欲しく無いと思う!
高野さんは、今、もう一度生きるって決めたの!
リハビリして、また歩ける様になるって決めたの!
自分の名前や友達の名前、忘れてしまった楽しい思い出…頑張って思い出そうって、決めたの!
だから…雅がするべき事は、お見舞いや謝罪じゃない!
もちろん、死んじゃダメ!
雅がするべき事……
わかるよね!
雅、私だって苦しいんだよ!
自分の消せない過去…彼氏にだって話して無いんだから…
雅一人が、高野さんを苦しめたんじゃない!雅…私も同罪だよ!
今度こそ、私は雅を見捨てたりしない!
雅……頑張って生きていこう!
もう後ろは振り向いちゃダメだよ!
うぅ……美沙…
美沙……
私は美沙の胸の中で、思いっきり泣いた
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