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No.21 12/06/20 23:24
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あ+あ-

***** 


はじまりは、付き合って2ヶ月の頃だったと思う。

手料理を振舞いたいというチサトの申し出を断る理由などなく、僕は彼女の部屋で、好物のハンバーグが出来るのをほくほくと待っていた。

ところが、「これでも結構自信あるんだよ」などと張り切っていたくせに、調理を始めて5分後に聞こえてきたのは、「あ、痛い」。

その情けない声に、どうした? と台所に来てみれば、ドラマなみのベターさで、彼女は指を切っていた。

探さないとわからないくらいの、小さな傷だったのに。

「あっ、ほらここ……」

そう言って、彼女が薬指の先を見せるから。

気がついたら、僕は彼女の手を掴んで、指を歯でくわえ、傷口をぺろぺろと舌で舐めていた。

ああ、今度こそ、大切にしようと思っていたのに――!

甘美な香り、濃厚な味。

僕はもう自分を止められなくなり、深くその指を口に含んだ。

彼女が戸惑ったとしたら、おそらく一瞬だけだろう。

言いえぬ快楽が指先から襲い掛かり、彼女の全身の力を奪うのに、三秒とかかりはしない。



吸血鬼に血を吸われたら、誰もそれに抗えはしないのだから。



崩れそうになるチサトの腰を抱きしめて、シンクに押さえつけ、僕は尚も、その指を吸い続けた。

小さな傷に牙を当て、傷つけるたびに血が溢れ、傷つけるたびに彼女はあえいだ。

そうして、存分に血を吸っておいて、僕は泣いた。

その場にへたり込んで、ごめん、ごめんと、情けなく泣いた。

それでも彼女は、荒くなった息をどうにか整えてから、僕の前に膝をつき、優しく抱きしめてくれた。

「いいの。大丈夫、大丈夫だよ」

以来、彼女は吸血の虜になった。

虜に、させてしまった。

今度こそ、大切にしようと思っていたのに。



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