以心伝心

梅雨真っ只中のある日の夜中だった

寝ていた私の耳もとで携帯のﾊﾞｲﾌﾞが激しく鳴る

「もしもしゆうすけ？」

彼からの電話だった。
もう彼とは2ヶ月会っていない。
電話で話すのも2週間ぶりだった。


翌日
家に遊びにきた由香は夏休みみんなで沖縄に行かないかと親が提案していることを話した。

「やっぱゆうくん忙しいよね??
大地はゆうくんに合わせるって言ってるんだけど...」

• 共感0

私達の母親は大学で知り合い
私達が生まれた後も交流があり
私達も小さい頃から仲が良かった。
学校も一緒で友達として10数年間一緒にいたが
中2の春、私と由香は誰もいない放課後の教室に呼び出され、ゆうすけと大ちゃんに
それぞれ告られて今に至る。
親達も最初驚いていたが
とても喜んでくれている。

受験生となり、大ちゃんは進学校が受かり
由香も同じ高校を目指していたが挫折をしたらしく私達と同じ高校へ進学した。


「ゆうすけかー
今度聞いてみるね!!
親にも言っとく」

• 共感0

午前12時すぎ

俺は事務所を後にし、
終電で帰る途中
みおんに電話した。
かれこれ2週間はしてないか
久しぶりに会いたい。
大地もみおんが可哀想だと
頻繁にメールが来る
他人の彼女心配するより
自分の彼女を心配しろって話だ

学校も1ヶ月以上行っていない
単位やばいな
でもまずはｺﾝｻｰﾄを成功させないと。
それから映画やﾄﾞﾗﾏの撮影
雑誌の取材など
やっぱり仕事優先になってしまう。

みおん、ごめん。

• 共感0

小学校を卒業した春休み
俺らは親も含め8人で遊園地へと出かけた
8割親達とは別行動で、俺ら4人は2時間待ちのｱﾄﾗｸｼｮﾝへと並んだ。
さすが春休みだ
途中腹が減ったので
じゃんけんで負けた大地と由香が食べ物を買いに行き、俺らはひたすら並んでた
その時だった
前に並んでたおじさんに事務所を紹介された。
ｽｶｳﾄってやつか
住所と電話番号を書いた紙を渡されたが、興味もなく、きっと悪いおじさんだと思い
誰にも言わないまま
中学校へ入学した。

それから何ヶ月かたち、学校の帰り、たまたま1人で歩いてたみおんに声をかけ一緒に帰った。
みおんは突然ｽｶｳﾄの時の話をしだした。
俺が興味ないし、絶対悪い人だと思うよ
と言うと

「勝手に決めつけないで、親にも話してさ、もしかしたら自分の道が開けるかもしれないよ？」

その言われた言葉がしばらく離れることはなかった。

• 共感0

家に帰るなり無我夢中で電話番号と住所が書かれた紙を探した。

ない...
一晩中探したが見当たらない

翌朝
母親から例の紙を渡された

「洗濯する時ｽﾞﾎﾞﾝのﾎﾟｯｹに入ってたわよ
事情はみおんちゃんから聞いたわ
お母さんが連絡しといたから今度の日曜日事務所へ行きなさい。」


事務所へ行く当日
普段乗らない電車を乗り継ぎ
道に迷いながらもなんとかついた

中に入り
俺は話を聞いた
これからﾚｯｽﾝが始まる
最近は部活気分だった

• 共感0

ﾚｯｽﾝは週に3日
日曜日に1日中やり、平日は学校帰りにそのまま事務所へ行く生活がしばらく続いた
土曜日は時々TV番組のｴｷｽﾄﾗなどで出演していたが、基本休みだったので遊べた

その間に俺はみおんと付き合った
あの時のみおんの言葉で前向きになれ
大地も前から由香に伝えようと思っていたらしい
4人でいる時は本当に素の自分でいられ、理解しあえる仲になっていた
大地とは大の親友で
みおんはたった1人の大事な彼女
由香とも相談しあえて、本音で話せる仲で
みおんと大地が話していても
嫉妬とか喧嘩になることはなかった。

そして俺達は高校へと進学した。

• 共感0

高校生になった私は運良く由香と同じｸﾗｽになった
ゆうすけとは別のｸﾗｽになってしまったが
休み時間になると由香とゆうすけのｸﾗｽに遊びに行ったり2人で帰ったりもした

夏休みになるちょっと前だろうか
ゆうすけにCDﾃﾞﾋﾞｭｰの話がきた。
同じ時期に事務所に入った翔太君と2人でCDﾃﾞﾋﾞｭｰするらしい
しかし翔太君は中学の頃からTV出演が多く、ゆうすけよりも知名度が高い。
学校でもすでに話題になっていた。

ゆうすけのｸﾗｽにはたくさんの人だかり
ゆうすけはみんなのゆうすけになろうとしていた。


夏休みに入り、ゆうすけはCDﾃﾞﾋﾞｭｰと共にｺﾝｻｰﾄも決まった

初登場1位

最初は知名度は低かったがたちまち翔太君と並ぶ程の人気者となった。

高校に入り、由香は大ちゃんと同じ塾に通い始めた。
また、ｱﾙﾊﾞｲﾄも始めたらしく最近はなかなか会っていない。


暑い日が続く
ﾘﾋﾞﾝｸのｿﾌｧでﾎﾞｰっとしていた
何も考えたくない
誰とも連絡とりたくない
その時、1週間ぶりに携帯が鳴った
由香からだった

• 共感0

私は由香の家へ行き、思いっきり泣いた
由香は何も言わずに
ただ隣にいて頭を撫でてくれている
気づいたら翌朝になっていた

「おはよう
お腹すいたでしょ
これ、朝ご飯だって
由香のお母さん作ったから食べて良いよ」

私のお母さんには由香のお母さんが電話で伝えておいてくれたらしい
私、泣き疲れて寝ちゃったんだ…

私はご飯を食べて由香と由香のお母さんにお礼を言って家を出た
気持ちが大分すっきりした
黙って由香ん家に泊まったことお母さんに謝らなきゃ
お母さん怒ってないかな

「ただいま」

恐る恐る家へ帰った
お母さんはいつもの笑顔だった

「おかえりー
お昼どうしよっか
久しぶりに2人で外食にしない？」

私達は近くのﾚｽﾄﾗﾝへ行った
あまりお腹はすいていなかったが私は大好きなﾊﾟｽﾀとｹｰｷを食べて帰ろうとした時のことだった

「ねぇみおん
少しは頼りなさい？
」

突然言われたたった一言で
私はまた泣きそうになったが

「大丈夫だから
私、幸せだよ」

と言い、お母さんと家に帰った。

その日の夜、ゆうすけから電話がきた

• 共感0

「もしもしみおん？」

ゆうすけだ
ゆうすけの...声だ。
あれっ、声が出ない
そのまま20分がたち、ゆうすけが喋り出す

「みおんに会いたい」

「みおん、行きなさい
ゆうすけくんの所に」

隣でお母さんが微笑んでいる
私は何も言わずに家を飛び出した
小さい頃4人で遊んだ公園へ


時刻は夜中の1時すぎだった
ゆうすけ！
私は彼に抱きついた

震えている私の身体を彼は優しく包んだ

「ごめん、みおん」

私は首を振る
ゆうすけは喋り続ける

「俺さ…
宿題やってないわ
勉強教えてくんねーかな？」

「なんだ
それだけで真夜中呼び出すとか…ばか！」

2人は大声で笑った

私は言った

「みおんの夏休み
ゆうすけにあげる！」

「ありがと」

「だからみおんのこと離さないで」

「ばか。離さねーよ」


2人はあついｷｽをかわした。

• 共感0

夏休みが終わり、私はゆうすけの為にﾉｰﾄを買って黒板の字を2人分写し金曜日にゆうすけの家に届け日曜日に取りにいくのが日課となった。

仕事が夜からの時などは学校に来ていたみたいだったが
学校中が大騒ぎとなるので
遅刻したり早退したりして
別室で授業を受けるようになった。

私とゆうすけが付き合っていることはみんな知っていた
面白がる人もいたが
由香や周りの友達が一緒にいてくれたので嫌な思いをすることは少なかった
また、冬には生徒会に立候補し、見事生徒会長となった

ゆうすけも仕事は順調でｺﾝｻｰﾄやﾄﾞﾗﾏ出演なども決まり、また仕事の合間をぬって登校し、ﾃｽﾄも受け、無事進級した

由香も1年後期は成績学年1位となり大地と同じ大学へ行くと張り切っていた

• 共感0

「マジで？楽しそうじゃん
俺も行く」

答えは予想外だった
えっ仕事は？
と言いそうになったが
私は聞かなかった
いや、聞けなかった

翌日由香に伝え親達とも相談した結果
沖縄旅行は8人で8月のお盆休みを利用して2泊3日で行くことになった。
今まで周りの目が気になってお互いの家で過ごすことが多かったので
ゆうすけと出掛けるのは本当に久しぶりだった


夏休みに入り旅行当日
私達はお昼の便で沖縄へ行った
飛行機の中では
ゆうすけの隣に大ちゃんが座り、その後ろに私と由香が座った
貴重な時間だと
ゆうすけはすぐ寝たみたいで
暇そうにしてた大ちゃんに由香がちょっかいを出していた姿がとても印象的だった
由香も大ちゃんとは久しぶりに会うみたいで
すごく楽しそうにしている
3人の顔を見ているとなぜかほっとする
ﾎｰﾑって感じだ。

沖縄に着き、ﾁｪｯｸｲﾝしたﾎﾃﾙは2部屋とり、私達と親達とで分かれた。
少し奮発し、海が見えるｽｲｰﾄﾙｰﾑを借りた。
何部屋もあり、ﾄﾞｱを閉めれば2人だけになれた

私達は夕飯まで少し時間があったので温泉に入りに行った
混浴は少し抵抗があるということで
それぞれ女湯と男湯に分かれてだったが…

• 共感0

かれこれ1時間以上入っていて
途中親達の話にも参加させてもらった
ゆうすけのお母さんとも沢山話した
ゆうすけのお母さんはすごく優しくて
本当に言い人だった
ゆうすけ達を待たせるのも悪いと思い、出ようとしたが
いつもみおんちゃん待たせてるんだから
たまにはゆうすけ待たせるのも良い案だわと
ひきとめられ、休憩も交えながら結局2時間位温泉に入っていた

温泉からあがり、部屋に戻るとゆうすけ達は何か話していた。
尋ねてもこたえてくれないまま
4人は夕飯の場所へ向かった
夕飯はﾊﾞｲｷﾝｸﾞだった。
ﾄｲﾚに行ってくるとゆうすけは席をたち、
3人でｶﾆをむくのに格闘しながらも
ｻﾗﾀﾞからﾃﾞｻﾞｰﾄまで
ひたすら食べた

「そういや、ゆうすけは？」

いつまでたっても戻ってこないので
大ちゃんが探しに行くと
同い年位の女の子達に囲まれ
無理矢理大ちゃんが引っ張ったが結局自分達の席に来てしまった
正体がﾊﾞﾚてしまい
部屋の番号までﾊﾞﾚてしまった
私は何も知らない
ただの女友達のﾌﾘをしたが
気分的に落ちてしまい
部屋に戻るなりもう疲れたからと寝た

• 共感0