―迷風荘―
一風変わった激安ボロアパートで起こる珍住人や珍事件に翻弄、巻き込まれてゆく青年の物語。
主人公…明彦(二三歳)
※誤字、脱字、解り難い文章等があるかもしれませんが💧よろしくお願いします🙇
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「~んけ~んぽ~ん!」見事に大家に勝った。
「いやぁ参った参った」迷風荘の大家は不毛な頭をペシッと扇子で叩くと満面の笑みで悔しがった
(いや…今…完全に後だしで負けたぞ…)
明彦は腑に落ちない感覚で、チョキのままの二本指で鼻の頭を掻いた。
「じゃ…約束どうり!勝った君わぁサービスで家賃は半額ぅ!」
「はは…本当にいいんですか?」乾いた愛想笑いでハゲた大家に応える。
(二万二千円の半額だから一万千円!?随分半端な値だな…)
明彦はモヤモヤとした気持ちを抱いたまま、昭和な造りのボロアパート『迷風荘』を見上げ、夏の汗を拭った。
うまい話にはトゲが……無いことを祈る。
蝉が何匹このアパートで鳴いているのか見当がつかなかった。
木造二階建ての震度3クラスで倒壊しそうなボロ造りだ。
周りの住宅は小綺麗な家々が立ち並び、このアパートの茶褐色が妙に浮いていた。
「もう入居はしてもいいんですよね?」
そう質問すると、ハゲた大家は扇子をパタパタとさせながら言った。
「102号室だから、一階の奥から二番目の部屋だよねぇ…」
「何か出るかもしれないけど、がんばってね」
そう告げるとツルツルの頭がキラリと輝いた。
「…………」
「何か出るって何が出るんですか…?」
半分猜疑心を抱きながら大家を見る。
「まぁ大丈夫だろ…うんうん」
軽い口調で一人納得すると大家はカブにまたがり逃走した。
「あの!ちょっとぉ」
「あの大家…」
「絶対何か隠してる」
スーパーカブのシフトチェンジの音が遠ざかると仕方なくため息をついた
バックを肩に掛けると、迷風荘の門へと続く、石造りの階段を登っていった。
建物はぼろいが、周辺の整備はされているようだった。花壇があり、芝生の敷き詰められた庭らしき所もある。
庭からの景色は上々。
様々な色の屋根、林が眼下に広がり海が見える。
入道雲がわた飴のように水平線から突き出ていた
「ふう…なかなかいい眺めじゃん」
汗の染み込むポロシャツが夏の風でほんの少し体を冷やしてくれていた。
「ドサッ」
明彦は、六畳一間の部屋の中央で鞄を置いた。
トイレや風呂はついていない。かろうじてキッチンはある。
チャンネルがダイヤル式のテレビもオプションでついていた。
迷風荘の住人は裏手にある共同トイレを使い、風呂は銭湯に行かなければならないのである。
「明日、荷物が届くんだったな…」
レトロなテレビの電源を入れようとブラウン管に顔を近づけた瞬間、背筋が凍り、目を見開いた。
真っ暗なブラウン管に反射した自分の顔の横…正確には後ろ側に誰かが立っているのだ。
「シャキーン!」
咄嗟に振り向いた時には、刃物を首筋に突き付けられていた。
「………!?」
冷や汗が頬を伝う。
「戦なら死んでるわね」
(くの一?)
時代錯誤の女忍者に首を斬られそうになっていた。明彦は言葉が出ず、パニックを起こしていた。
フッと軽く嘲笑うと忍者刀を腰の鞘に納め、煙り玉を床に叩きつけた。
「ゲホッ!ゲホッ!」
涙目で窓から顔を出す。「ふざけんな……」
思わず口からこぼれた。
と…今度は上から何かが落ちてきた。
「ガツンッ!」
頭に石のような感覚の物体が落下してきた。
「痛っ!」
自分の頭を経由して、地面に転がった物体を見る
「手榴弾!!」
「ちょっとぉー!!」
素早く後方へダイブし、頭を抱えた。
「…………」
爆発はなかった。
煙り玉で姿をくらました銃刀法違反女の仕業か…
常識外れの出来事に困惑するが、窓から恐る恐る上を見上げた。
「新人さん…いらっしゃい」
ニッコリと笑う中年の男性(?)が真上からそう言葉を発した。
「手榴弾って!悪戯ですか!?」
少し怒った口調で言った
「怒った?それは信管ぬいてあるから大丈夫💜」
(オカマ?)
悪寒を押さえ込み、続けて言った。
「信管って…なんで手榴弾持ってるんですか!止めてくださいよ!」
「怒った顔…なかなか可愛いわね♪」そう言ってオカマの男はにんまりと笑った。
「調べてあげるから、上がってらっしゃい」
「は?何を調べるんですか?」
意味の分からない誘いにいいしれぬ恐怖感が込み上げる。
「べつにとって食おぅっわけじゃないわよ❤」
そう言って窓から顔を引っ込めた。
「とりあえず…無視はできないな…ご近所さんだし…あぁ厄介だ…」
愚痴を呟きながら、警戒心を抱きつつ真上の部屋へと向かった。
階段を上がるなり、待ってましたとばかりに入口を開けられた。
ネグリジェをきた男がニヤニヤと笑う。
「やばい…犯られる」
そう直感した。
適度な間合いをとりつつ近づいた。
「あら…いい男じゃない❤中に入って」
隙を無くすように近づき…部屋の内部を覗いた。
「え!?」
予想外の内装に度肝を抜かれた。
コンピュータがところせましと並べられ、居住空間など無いような部屋だった。
床は配線や本や怪しい器具が落ちていて歩き難い。
「あの…」
「ここに座って」
この迷風荘の住民について質問しようとしたが遮られた。
オカマのおじさんは装置をいじると、タッチパネル式のキーボードを慣れた手つきで素早く操作した。
昼間なのに薄暗い室内を見渡す。「壁がコンピュータでできた部屋」印象はそれだった。数着のキラキラとラメ入りのドレスも装置に掛けられている。
「あの…刀を持った女」「名前は?」
また遮られた…。
「明彦です」
「あっくんね❤あたしはジョセフィーヌよ」
そう言ってペンライトのような物で瞳の中の瞳孔に光を当てられた。
「……NOT FIND…… 」
ジョセフィーヌは画面を見るや顔を曇らせた。
「あなた新型かしら?」ジョセフィーヌはまじまじと明彦の身体を見た。
「はぃ?」
(何を言っているんだ…)
「HUMATEX…あなたを生産した会社よ」
「ヒューマ…テクス?」
ジョセフィーヌは頭を無造作に掻くと、コンピュータに向かい、何やら大量に入力し始めた。
「私は人間ですよ」
困惑の表情が浮かぶ。
「ふふっ」
ジョセフィーヌは鼻で笑った。
「外見はね………量産型では無さそうね」
「第五居住区に送られた日本Typeのヒューマンレプリカよ」
ジョセフィーヌはチラりと横目で見て言った。
「レプリカ?」
「今のあたしのデータベースではあなたの性能は調べられないわね」
顎に指をあて女性っぽい仕草をした。
「エアステーションで労働するんでしょ」
「はい…明日から仕事です」
「ここの住人も大体があなたと同じ仕事だから、上手く付き合っていきなさいね」
そう言って椅子から立ち上がると部屋の窓を開けた。
ジョセフィーヌは窓から顔を出すと煙草に火をつけ、煙を細く吹き出した
真夏の風景。青い空、どこまでも続いていそうな海からは入道雲が突き出ていた
……が、その風景が一瞬にして消え、満天の星空へと変わっていった。
「ここが地球じゃない事ぐらいは…知ってる?」「地球じゃない……地球はどんな所なんですか?」明彦は目を輝かせた。
ジョセフィーヌは遠くを見つめながら言った。
「こんな場所よ…大昔の日本って国は…」
「もっとも、その頃の日本をモデルに作られた居住区にあックンとあたしが居るわけ、火星だけどね…」
明彦に向き直り、煙草をふかした。
「風景は全部ホログラフだし…昆虫は居るけど、レプリカ監視用の小型飛行カメラよ」
「現在の地球は?」
明彦は遥か彼方の星…地球の大地を想像した。
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