ハラキリ

レス0 HIT数 156 あ+ あ-


2024/09/03 19:29(更新日時)

「手の込んだハンバーガーを食べたいんじゃない。ご飯と味噌汁がほしいんだ」

そう言うと毛むくじゃらのウェイターはその場でそのハンバーガーを食べ始めた。

「あいにくだけど」

ウェイターは口をもぐもぐさせながらハンバーガーを持っていない方の手で僕の肩をポンポンと叩いた。

「そんなものはウチにはない」

「いやあるね」

僕は引き下がらなかった。何故なら僕はここの常連だから秘密のメニューを知っているからだ。そこに" ライス & ミソスープ " が存在していることも知っている。そしてオーダーする時には必ず " 手の込んだハンバーガー "を注文する必要がある。勿論、このハンバーガーも通常のメニュー表には存在しない。

ところが現れたウエイターはこの上なく失礼でおまけに客の頼んだ料理を食べ始めてしまう。全く世も末だと思った。以前、ここに勤めていたスタッフは皆んな辞めてしまったのだろうか。あの時、僕に嬉しそうに配膳してくれた、あのキュートな女の子はもういないようだった。

アメリカ生活で心身ともに疲れた僕にとってご飯と味噌汁がいかに重要なものなのか、当然、このウエイターには理解できない。僕は日本人なんだ。やっぱりアメリカの文化なんて合わない。

僕が席を立つとウエイターは向かいの席に座った。そして外を眺めながらくちゃくちゃ食べ続けている。

「君は恥ずかしくないのか」

僕は思わず声を荒げた。あまりにも態度が酷いせいか、今この店には一人も客がいない。こんな店、もう二度とくるものか。

するとウエイターは退屈な顔をしながら僕を見上げた。

「なぁ、おい。今日は何の日か知ってるか?分かる訳ねーか。そう、俺の命日さ。死ぬんだよ。今日というか、あー、これからだな。だからこれが最後の晩餐なんだ、ブラザー」

ウエイターは懐から拳銃を取り出して笑いだした。

「日本は良い国だと思うぜ。本当に」

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No.4130743 (スレ作成日時)

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