キスミー!

レス11 HIT数 2288 あ+ あ-


2014/02/13 22:35(更新日時)

それが恋であることを、利木(りき)おりえは重々承知していた。
そして同時に、その恋は決して成就しないということも、理解していた。
むしろ、成就させてはいけないものであると。

たった一度の過ちが招いた、迷惑な恋だった。

彼の手が私を捉え、強く抱きしめてくれたなら…
乱暴にキスを。
舌を絡め合い、そのまま熱い唇は首筋へ、鎖骨へ、胸元へ…


…ああん♡


「利木さーん!株式会社アソウさんから電話!」

ふぉっ!?Σ(OωO`)

「待たせちゃダメよ!外線2番」

「はーい!」
慌てて受話器を取り上げる。
「大変お待たせいたしました、利木です。はい、いつもありがとうございます。はい、はいーー」

彼女の妄想は、走り出したばかりである。





※注意※

この物語には、そこそこ生々しい性描写が含まれます。
そして、既婚の上司と主人公との関係がストーリーの筋となりますが、この物語は、不倫をテーマにしたものではありません。

No.2058724 (スレ作成日時)

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No.1

事件は、大型連休を目前に控えた、ある雪の日に起こった。

明日から仕事はない。
つまり、今日はなんの杞憂もなく酒を飲める。

そんな開放感が招いた悲劇であった。

「やってしまったのね。私としたことが(-ω-`;)」

利木おりえはクラクラする頭をベッドで抱え、覚めつつある酔いと、増幅する自己嫌悪の中で、昨夜の出来事を思い返していた。

No.2

酔っていたのは間違いない。
だから、四次会まで店を渡り歩いた後に、おりえは歩いて帰るなどと言い出した。

火照った肌を、仄かな雪の気配が掠める。
「一人で歩かせられるか」と、上司の丈市(たけいち)が、上着のポケットに突っ込んで隣を歩いていた。

その肘になんとなく腕をかけた自分の心情は…残念ながら、覚えていない。
そして、なんの話をしていたのかも。

歩けば歩くほど、街は賑わいから離れていく。
大通りにさえ、ほとんど車の往来はない。

「ほら、そろそろタクシーのるぞ」
丈市が言う。
「うーん、でもタクシーなんて…」
おりえは、自分と、丈市の肩の間から後ろを振り返った。
「全然来ませーー」

No.3

グイッと、いきなり強い力で抱き寄せられた。

「ひぁっ!?」

視界が丈市の服で埋まる。
お互い分厚い上着を着ているのに、彼の腕がきつく肩を抱きしめるのを感じた。

その胸に顔面を押し付けられ、おりえは苦しくてもがいた。
丈市の右手が彼女の後頭部を押さえつけ、無理やり上を向かせる。

「んっ…!」

こんなに強引なキスを、おりえは知らなかった。

唇を貪り、やがてこじ開けるように、彼の舌が捻じ込まれる。

目を閉じるどころか瞬きすら忘れて、おりえは完全にされるがままだった。

乱暴にぐちゅぐちゅと口の中を掻き回されて、ふと解放されたときーー

おりえは、驚いて見開いていた目を、彼の唇に向けて目を伏せた。

「…もう、一回…」

No.4

きやー!!(///ω///;)

おりえは我に帰り、ガバッと布団に潜った。



初めて参加した、会社の忘年会だった。

上司と腹を割って語り合えたことや、初めて「利木」と呼び捨てにされたことに浮かれて、つい飲み過ぎてしまったのだ。

この夏、印刷物のデザインを学びたいという目標を胸に、おりえは印刷会社に転職した。

27歳はさして若くもないのだが、大卒を取らない小さな会社で、しかも印刷業界ともなると、20代というだけで若い。

一方、直属の上司である丈市は40歳。

今まで部下を付けなかったという彼は、おりえの存在に少々戸惑いながらも、彼女のわからないことを丁寧に教えてくれていた。

研修期間を終えれば、おりえは丈市と完全なチームとなり、売り上げを上げていかなくてはならない。

おりえは、燃えていた。

丈市のために、はやく一人前になって、彼をサポートするのだ!



そんな矢先の、出来事だった。

人通りのなくなった大通りで、2人は何度も何度もキスをした。

一体、次はどんな顔をして会えばいいの…(・ω・;)

だが、少なくとも今日から1週間は会社は休みで、顔を合わせることはない。

その間に、きっと思い出になっていくだろう。
忘れようと、おりえは何度も自分に言い聞かせた。

No.5

年が明け、休みが終わり、いよいよ業務再開の日。
出社して、コーヒーを入れながら社長や上司に挨拶をする。

おりえは経理の女性社員にコーヒーを運んだ。
「明けましておめでとうございます」
「おめでとう。忘年会の日、丈市くんと4次会まで行ったって?」

ビクッ Σ(OωO`)

いきなり広まっていた。

「あなたお酒強いわねー」
「い、いえ…むしろ完全に酔ってて、上司を連れ回してしまいました…すみません」

こんな小さな会社で、不順な恋愛がばれたりしたら、どうなるのだろう。

…まあ、まだなんの役にも立たない私なんて、クビでしょう(´・ω・)
おりえは怯えた。

「やりたいことがあるの!(`・ω・´)」
目を輝かせて言ったおりえ。
転職を決めたとき、応援してくれた親。
友達。
前の職場から背中を押してくれた仲間。

「上司との不倫がばれて、クビになりました」?

言えなーーーーい!!!!(OωO`;)
絶対言えない!!!!
きやーーー!!!!

おりえは悶えた。

悶えながら、黙々とコーヒーを運んだ。

No.6

そうこうしているうちに、丈市が出社した。

「あ…」

いきなり冷たくされたらどうしよう、むしろ裏で暴露されて笑われてたらどうしよう。

おりえの心にそんな不安が渦巻いたが、気まずい気持ちを引きずってきたのは、どうやらお互い様であるらしい。

「あけましておめでとう(^_^;)」
「おめでとうございます(´ω`;)」

そのぎこちない笑顔が交わされた瞬間、おりえと丈市の間で、一つの約束が結ばれた。

あのキスは、なかったことにしよう。

No.7

なかったことなかったこと(-ω-`;)
おりえは心に唱えながら仕事をこなした。

ただ、よかったことは、今までどこかよそよそしかった丈市と打ち解けることができたことだった。

ドラマの話や、仕事のあるあるなど、雑談も増えた。

「新しく始まったドラマ見た?」
「お前、ここ見落としてただろー。ちゃんと仕事しろよ(笑)」
「また枝賀(えが:お局様)に怒られたって?ドンマイ。辞めるなよ?」
「ところでお前、Facebookやってるの?」

え?Facebook?
ふと、おりえの心が騒ついた。
何故聞くの…(´・ω・`)
まあ、やっていないけど。

そんなある日。
残業で、オフィスの人数が徐々に減っていった頃合い。

No.8

丈市とはデスクが隣同士だが、ふと、彼がおりえに「おいでおいで」をした。

二人はたまに、頭の硬いお局様に聞かれると面倒になるような仕事の話を、顔を寄せてすることがある。

そんな流れだと思い、おりえは丈市の方へそっと椅子を寄せた。

おいでおいで。

「???(・ω・ )」
さらに椅子を寄せると。

丈市の手が伸びて、おりえの無防備な手を捕まえた。

えっ…えぇΣ(///ω///`)!?

「これ、自分で塗ったの?」

それは、おりえのネイルアートへの感想だった。
が。

きやー!!(\\\>ω<)ノシ
思わず、おりえは手を振りほどいていた。

おりえの顔は、真っ赤であった…

も、もう!
せっかく人が忘れようとしてるのに!(>ω< ;)

No.9

おりえは考えた。
丈市は、不倫希望なの?

ならば断固拒まなければ、本当に職を追われることになりかねない。

わかっている。
なのに…

握られた手の感触に、指先が疼いた。

抱きしめられ、無理やりキスをされた感覚が、リアルに蘇る。






…あっ。

No.10

******


椅子から立ち上がった丈市が、近づいてくる。

何事かと戸惑うおりえを見下ろしながら、容赦なく迫る。

「え、あの、」

後退りしようと立ち上がったおりえを、丈市が捕まえた。

「や、ちょっと…だっ、だめですよ!ここ、オフィスですよ!」
「誰もいないだろ」
「い、いや…!」

丈市の身体を押し離そうとするが、灰色のスーツの胸に押し当てた手のか弱さを思い知る。
というより、おりえには本気で逃れるつもりがないのかもしれない。

丈市はおりえの頭を抱え込むように抱きしめると、彼女の髪にキスを埋めた。
そして、身を屈めるようにして、そっと唇を耳へ…。

「あふ…!ぅ…!」

彼の気配に、ぞくっと震えた。
耳元で、彼は少し笑ったようだ。

ピチャピチャと、わざと音を立てながら耳たぶを吸われ、おりえは身を捩って逃れようとしたが、叶わなかった。
くすぐったく、やめて欲しいような、続けて欲しいような感覚。

「あ、ん…♡」

丈市の唇が、耳の下の柔らかいところへ押し当てられる。

「うぅっ!」
ビクンと身体が反応してしまう。

そこが弱いと悟るや、丈市は舌と唇を使い、執拗に首を攻め始めた。

獲物を貪り食らう獣のような彼の荒い鼻息が、耳をくすぐる。

「あっ、あ…♡もう…やめてくださ…」

終いに、ぎゅうっとおりえを抱き締めると、彼は耳元で、意地悪な声で言った。

「なんだお前、感じてるのか?」

No.11

******


っっぶふぉ!!!!Σ(OωO`)

おりえは突然、しかしひっそりと、我に帰った。

そこは、静かなオフィスだった。

残業組が、黙々とデスクに向かって仕事をやっつけている。
もちろん、丈市も。

わ、私、今、何を考えて…(///ω///;)

慌てて、おりえはペンを握り直し、仕事を続けた。

まさか、あんな不埒な妄想を…。
一体どのくらいの間?

変な顔、してた?

き、きやー!!!!

おりえは変な汗をかきながら、無理やり仕事を片付けて会社を出た。

そう、この日から、彼女のいけない妄想が走り出したのである。

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