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レス112 HIT数 31970 あ+ あ-


2015/05/05 01:32(更新日時)

友人に物語を書いてみたら?と勧められていたが、なかなか筆が進まない…
携帯小説で地道に書いていけたら友人にも読んでもらえるし良さそうと思った。
自分のペースでツラツラ書くフィクション。面白くなかったらごめんなさい

No.1991936 (スレ作成日時)

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No.1

私は今、好きでもない男と歩いている。
(何か話してよ…)
男は照れた感じを出してうつむいたままただ歩いている。
母のお気に入りで、付き合う事を半ば強制されて、嫌々会ってみた。
「あの…」
「はい!」
大声にビビる。
「今日会ったのは、母に言われたからで私は貴方に興味ないんです。ごめんなさい」
母は多分私の方が好意を持っていると嘘をついている。「え…」と言ったきり固まった男の顔からは獲物を逃がした情けない顔がぶらさがっている。毎度こういう顔を見ているのでため息が出る。
母が男を騙して私に引き合わすのは、これで何回目だろう。
「本当にごめんなさい」
私は再度謝った。
考えてみれば私に落ち度はない。しいて言うなら、親にこういう事は止めるよう説得出来なかった事だろうか。しかし、40過ぎておばさんに手伝ってもらわないと彼女も作れない男もどうかと思う。

No.2

「どうしてもダメですか?」
「はい」
私はハッキリと告げてその場を去った。
こういう事はちゃんとした方が良いのだ。
じゃないと後で面倒な事になる。
「見て。修羅場だ修羅場(笑)」
若い子達が騒いでる。
キャイキャイしてて可愛いものだ。あの男も、どうせなら若い子狙えば良いのに。
「わっ見てるよ」
男が彼女達を見たらしい。
「気持ち悪い」
「行かない?」
彼女達にもフラれている。
あの男の悪い所は、なんでも人任せな所。
きっと私にしたように、悲しそうな目をして見つめてみたのだろう。若い女の子がすれば可愛いだろうが、オッサンのそれは不気味以外の何者でもない。いくつになっても自分は若いままだと勘違いしているのか、はたまたそうすれば今まで生きて来れた程の楽な人生だったのか…吐き気がする。

No.3

とにかく私は男を置いてその場を去った。
まっすぐ家路に着くと掃除やらなんやら、やりたかった事をやる。「全く無駄な時間だった…」と愚痴をこぼした。しばらくして母から連絡があり「楽しかったでしょう!」と自信持った感じで言って来るので、つまらなくてすぐに帰ったと伝えて切った。会話のないただの散歩、しかもほぼ初対面の人となんて何が楽しいものか。
男がいない事を可哀想とパートのおばちゃんに言われた事あるけど、私はいなかった事で寂しい思いをした事がない。友達もいるし家族もいるし、異性だけが人間関係の全てになってしまう奴の方が、よっぽど寂しい奴だと思う。

No.4

私はテレビを着けた。
(そういえば見たかった映画があったんだっけ。あんな面倒がなかったら観に行ったのに。男と映画観ると、すぐ体触って来るし、ずっと喋りぱなしの奴もいたし、ゆっくり観れないから嫌なんだよなぁ)
男が欲しいと毎日のように言っている友人がいるが、あんな面倒なもの、なぜ欲しいのか疑問だ。男が優しいのはセックスするまでだし、その後もベッタリ男はだんだんストーカーっぽくなっていくし、ろくな事ないが…
(付き合った事ないんだろうな)
私は結論に至った。
私も好きな人とは付き合った事ないので人の事は言えないけど…
いつも親や世話好きなおばさんの影に隠れた男ばかり…
好きだと言われた事もないが、なら止めようと言うと決まって「え…」と固まる。付き合いたかったくせに憎まれ口をたたく男。おばさん達に持ち上げられて、自分はどんなワガママを言おうと女が来る、なんでも自分の思い通りになると思っている男。
そういう男に限っておばさんは良い人だと言って聞かない。若かった頃うっかり信じてえらい目にあった。それからは、そういう人に対して嫌悪感しかわかなくなったが、私は世話好き女にやたら世話を焼かれる。
…ほっとけないらしいがほっといて欲しい。

No.5

(一人になりたいな…どこかに行くとすぐ声かけられるし、ゆっくり出来ない…安心出来るのは部屋だけか…)
私は話しかけやすいとよく言われる。優しそうとか…私の何が人にそう思わせるのか?
(勝手に決めつけやがって)
良いイメージかもしれないが、思い込みで私の全てを知ってます顔をするおばさんと男が多すぎる。
(大体見た目で全てを判断されても…人の事全部分かったら逆に怖いだろ。なんで「君はこういう人のはずだ」と決めつける。会ったばかりのお前に何が分かる。おとなしそうな奴に限って思い込みが激しいんだよ。なんで私は気が弱いくせに主張の強い男にばかり好かれるんだろ。ウザイとハッキリ言うべきなのかな)
つきまとわれる事はよくある。怖いが相談出来ない。相談すると主婦はモテていいだの人の気も知らないでいい加減な事言うし、独身女性が一番良いアドバイスをくれるが、なかにはヤキモチやいてキレる奴がいるし。
つーか最近しつこい男増えてないか?

No.6

結局その日はレンタルビデオで1日過ごした。こういう時間が一番安らぐ。
次の日は普通に仕事をして、レイトショーを観た。
私は映画が好きだ。一人でゆっくり観るのも、映画館の大スクリーンで観るのも好きだ。映画を見ていれば幸せ…これはマズイのだろうか。私は生活出来る仕事があって、趣味を楽しめれば幸せなのだ。無理に男をみつくろわれても迷惑なのだが、ハッキリ言っても賛同されない。
誰もが異性がいなければ寂しい訳じゃない。少なくとも私はそうなのだ。パートのおばさんにはやせ我慢に聞こえてしまうみたいで口惜しい。
私は映画が終わると適当に夕食を買って帰る。料理は嫌いなのだ。
帰って風呂入って夕飯食べてテレビを見て1日を終えられれば、とりあえず良い1日なのだ。

No.7

今の私には付き合っている男が5人いる。どいつもおばさんに押し付けられただけで好意はない。相手も黙って一緒に歩ければ満足なのか、それ以上を求めて来ない。いや、私から切り出してくれるのを待っている感じだ。
と、電話がなる。メールだ。
「松崎さんとはうまくいってるの」
「まずまずですかね」
「次のデートはいつ?」
「決まってないです。先輩、私やっぱり彼とは合わない気がします。この前のデートだって、先輩がお膳立てしたんじゃないですか。彼は本当に私と付き合いたいんですか。おとなしい人だし、断れなかっただけだと思います。私も一緒にいても楽しくないし」
「あなたがリードしてあげればいいじゃない」
「好きでもない人に気をもたせる事をするのは、やっぱり抵抗があります。それに私には付き合っている人が」
「その人とすぐ結婚する訳じゃないんでしょ」
「それはまぁ」
「じゃ松崎君とも付き合ってあげてもいいじゃない?良い子なんだから」
女性の先輩だが、とても押しが強い。
「先輩はなんでそんなに彼にこだわるんですか。彼はただの後輩ですよね。もう40過ぎて立派な大人なんだし、自分で交際したい人に声かけられるんじゃないでしょうか。いつまでも先輩の後ろに隠れてるだけじゃ、彼の為にも良くないと思います。大体、先輩がいるなら私は必要ないと思うのですが」

No.8

私は一気にまくしたててみたが
「それとこれとは話が別よー。私は結婚してるしね」
……なんか急に丸投げされた気がする。
唖然としながら、それでも負けずに言ってみる。
「私別れたいんですよね。まぁ私達の事たし、先輩に言わずに勝手にしていいんでしょうけど」
先輩からの返事はない。
その後もなんの音沙汰もなくなった。慌てたかな。
私には男の肩を持つおばさんが数人いてみんな私とコンタクトをとりたがる。この前なんて、おばさん同士で自分の男の方が私に合うはずだと言い合ってケンカをしていた。男は二人してそれぞれおばさんの後ろで立ちすくんでいるだけだった。
私にとっては、どちらも休みの日には家に引きこもってゲームかネットしてるだけの、オタクをバカにしながらオタクと同じ事をしているつまらない男でしかないのだが。

No.9

私は一人が好きだ。友達と過ごす時間が好きだ。
けれど話しかけやすいといつも周りに人がいる。孤独な人にとってはうらやましいかもしれないが、私にとっては迷惑だ。
「なんだこれ?」
新聞に変わった広告を見つけたのは、いつもと変わらない休みの日の朝だった。
(何でも屋みたいなものかな?(片付け屋)か)
最近は部屋を片付けられない人とかいるし、そういうのの専門家か。
(私も家事苦手なんだよね。部屋も散らかってるし。頼んでみたいけど。いくらぐらいするものなんだろ)
料金は書いてないって当たり前かな。
新聞を捨てようと立ち上がった所で
「やっぱり」
私は番号を確認して

No.10

電話をかけるとすぐに相手は出た。
「はい。片付け屋です」
私は頼みたいが料金が気になっている事を伝える。
初回なので料金は半額だった。それでも1時間5000円は高い。私は断ろうとしたがその前に話だけでも伺いたいと言われた。そして私は、片付け屋の仕事の内容を知った……。

私は依頼する事にした。
片付け屋は女主人一人でやっているらしく、後日私の部屋で料金や時間、内容など詳しく話し合った。片付け屋の仕事とは簡単に言うと身辺整理だ。人間関係を整理するのを手伝ってくれると言えば分かりやすいだろうか。

No.11

女主人は笹原といった。
「さて、私の話を聞いて頂いた上で、まずお客様が片付けたい人を教えて下さい。まず名前、それと会社の住所ですが、これは同じ職場なので分かりますよね」
「本当にいなくなってくれるんですね。私の前から」
「ええ。どう消えるかは教えられませんが、確実にお客様とその方との接触はなくなります」
片付け屋は、面倒な人間を片付けるという仕事らしい。
私としては、これほど有難い事はない。
いなくなってくれれば日々の生活の安心と安定は約束される。ただ騙されてるのではないかという気もしていた。
こんな上手い話があるはずがない。
「私どうにも不安なんですが。出来れば、成功報酬という形に出来ませんか」
「良いですよ。」
断られるだろうと思ったが、意外にすんなり話が通った。
「ただし、入金されない場合はそれ相応の罰を受けて頂きます……宜しいですか」
笹原は声のトーンを低くした。私は頷いた。
「では成功したらここに振り込んで下さい。それでは一週間後をお楽しみに」

No.12

「はぁ…」
私はなんとも言いがたい思いがした。
「不安に思う事はありませんよ」
「そうですね、やっと落ち着いた暮らしが手にはいるんですしね」
一応笑顔を作った。

それから一週間、何事もなく過ぎた。口やかましく結婚しろだの、今の男が気に入らないなら良い男がいるだの、余計なお世話を焼くパートに頭を悩ませている事を除けば。私が消して欲しいのは、この女だ。
人の世話を焼きたいが要領が悪いオバサン。
女の仲間が作れず、男にばかり構っている女。
汚ならしい中年女。
毎日続く余計なお世話は、だんだんと怒りから憎しみに変わり残酷な願いを私に望ませた。
「私、まだ結婚する気ないので」
私はいつも通りの言葉を、今日はこの女の目を刺すように見つめて言った。

No.13

「そんなキツイ目しなくてもいいじゃなぁい?私は良かれと思って言ってるのよぉ?ねぇ……」
女が腕を掴んできた。ヘラヘラとして薄気味悪い。
私は激しくその手を振りほどこうとした。しかし凄い力で女は掴んでくる!離さない!相変わらず顔はニヤニヤしている!気持ち悪い。
っとそこに人が来た。女はパッと手を離す。そしてそそくさとその場を去った。死ねばいいのにと思った。

「小林さん、どこ行ったか知らない?さっきから見当たらないんだけど?頼んでいた仕事ほっぽっていなくなっちゃ困るんだよなぁ。まぁいつも仕事してないけどさ」

No.14

店長が愚痴をこぼしながらさまよっている。
「小林さん?」と私は考えるふりをした。小林とは私に絡んでいた女の事だ。
私は腹を立てていたので、告げ口してやる事にした。
「あの人いつも仕事してないですよね。おしゃべりばかりして付き合わされる方の身にもなって欲しいですよ。こっちは仕事しながら相手してやってるんですよ。普通気がついて話すの止めますよね。でもあの人って、こっちが忙しければ忙しいほど邪魔してくるんだから。店長からも言ってくれませんか?仕事しろって」
私は腕を組み、怒りをあらわにしてやった。
「そうだな……長い事やってくれてるけど、いまだに何も出来ないし。これでサボるようになったらおしまいかなぁ」

No.15

「おしゃべりも立派なサボりになってますけどね、あの人の場合」と私は真顔で付け足した。「手が完全に止まってますから」
「でもね、知ってるとは思うけど、あの人すぐにパニックになるでしょ。辞めてくれと言ったところで素直に辞める人なんかじゃない。なんとか居座ろうとすると思うんだよね」
「面倒な人ですからね。でも、ご主人がいるんだから、そんなに必死に働く事もないんじゃないですか」
「子供も自立したって言ってたしね。でもあの人と結婚する人ってどんな人だろうね」
私は乾いた笑みを浮かべた。
「頭のおかしい男でしょ」
店長とざっくばらんに話している間に戻って来るだろうと思っていたが、遂に小林は帰って来なかった。
それから数日、小林は完全に姿を消した。
警察が来たりちょっとした騒ぎにはなったが、結局小林が見つかる事なく一週間が過ぎた……
一週間が過ぎたある日、窓辺に猫がやって来た。可愛らしい姿に癒され、部屋に入れてやると首輪に紙が挟まっていた。取ってやり、なんとなく広げてみるとこう書いてあった。

No.16

「ね、いなくなったでしょ」
笹原の字だった。

10月最初の日曜日。
私は駅のホームを走っていた。
電車を待っていたら「あの!」と声をかけられた。どこどこに電車は止まりますか?と聞かれた。
止まりますよと答えた後、男は隣に立ち「今度待ち合わせしませんか。一緒に会社行こ?」と小声で言われた。
変な人かなと思って別の場所に移動すると「なんで逃げるの?」「これ俺のアドレス」と言いながら追いかけて来た。

No.17

私はホームを走り回り、来た電車にギリギリ飛び乗った。
残念そうに男が見送っていた。

それから1ヶ月、男はつきまとい続けた。
最初は黙って隣に立ってきた。
同じ電車に乗り、小声で何か言っていた。
次は少し離れた場所からこちらをじっと見てきた。
これもよく分からなくて無視。
次はいつ知ったのか私の通勤途中の道に現れた。
私が通り過ぎても何も言わず下を向いている。
「なんなのよ。お化けか?」
私が小声で言って通り過ぎても黙っていて、その後視線を感じて振り向くとこちらを見ていた。
「怖」
私はぎょっとして逃げ出した。

No.18

こんな事が数日、約2ヶ月続いた。
会う度男は私が通り過ぎる場所に立っていて私は(気持ち悪い)と思いながらも関わらないようにしていた。
怖かったのもあるし普通じゃない気もしたからだ。
「それって貴方に気があるんじゃないの。若いっていいわねー」
たまたま昼食を一緒の時間に取った先輩には、こんな風に笑われた。
「怖いわね。防犯ブザーでも持ったらどうかしら」
こんな風に優しい言葉をかけてくれる先輩もいた。
私の尊敬している女性だ。いつの間にか側に来て庇うように言ってくれた。
「そうですね」
その先輩は嫌な女の先輩に当たる為か、嫌みを言った女はうつむいてうなずいた。
悪い事した奴って大抵うつむいている。
子供っぽいなと思いつつ、私は尊敬している桂木という先輩と話ながらその場を去った。嫌な女は一人で昼食をとり始めた。

No.19

仕事の帰り、あの男がまた立っていた。物欲しそうな男の目に怒りを覚え、睨み付けると瞳がそわそわとうろたえだした。付きまとえば好意を持ってもらえるって、自分に自信があるのかないのか分からない。
男は私の側に来て、私の顔をのぞきこんできた。私は目を合わさず歩き去った。男はついてきた。

No.20

「あの、なんですか」
私はたまりかねて男に向き直って言った。
「着いてこないで欲しいんですけど」
男は悲しそうな顔をして見つめてくる。
私は吐き気がして「捨ていぬかよ」と吐き捨てた。
私は走って帰った。

男の付きまとい行為は続いた。私はある時、ハッキリと迷惑だと言ってやったが止めない。ただ悲しそうな顔をするだけ。きっと今まで、そんな顔をすればなんでも許される人生を送って来たのだろう。

No.21

男は見た目から30後半から40くらいだった。何も言わずに付きまとい行為を続ける男は何が望みなのか?先輩に言われた通り私に好意があると思って良いものか?
(勘違いだと言われればそれまでだし。)
「着いてこないでよ!」
私はまた悲しそうな顔をしながら追って来る男をなんとか撒こうと走り回った。
会社からの帰りにあるこのやりとり、いつまでこんな日が続くのだろう。誰かなんとかして欲しい。
その時、あの片付け屋の事を思い出した。
「もしもし」
家に帰ってすぐにもらった連絡先に電話する。
すぐに「はい、片付け屋でございます」と相手が出た。
私は「助けて下さいっ」と悲鳴のような声を出してしまった。
それほどに追い詰められていたのだ。

No.22

私は一旦落ち着いてもう一度言った。
「仕事を頼みたいんですが、相手の名前も何も分からないんです。ずっと付きまとってる男がいて、怖いし腹も立つし、もうどうにかなりそうなんです」
どうしても感情的になってしまう。辛いのに誰にも分かってもらえないのが怖くて仕方ないのだ。
明日も明後日もあいつのあの悲しそうな顔が追いかけて来ると思うと気分が悪くなる。
すると片付け屋はサラッと言った。
「では相手の身辺調査をした後に片付けるという事で宜しいでしょうか。料金は少々かかりますが」
私は喜び勇んで
「はい。宜しくお願いします」
(随分簡単に言うけど、前回の事もあるし、大丈夫。今はあいつをなんとかしたい)
前回の時に感じた恐怖は何処かに飛んでいた。
「調査が終わった時点で、今回は明細と相手についての情報を一旦お渡しします」
「笹原さんに会えるんですか」
もう一度会って話した方が良いかもしれない。
「いえ、ご自宅に郵送します。その時に調査の代金の振り込みと、もし本当に片付けるのを希望される時は、その分の振り込みをされて下さい」

No.23

「調査が終わったらすぐに片付けてもらえませんか」
私は早くなんとかして欲しかった。
「関わりがあったのに忘れているかもしれないとか、気になりませんか?」
「嫌がらせしてくる相手が知り合いかどうかが問題ですか?」
「なかには気が変わる方がいるんですよ。けれどそこまで仰るならそのまま全額振り込んで下さい」
淡々とした口調で言われた。
「分かりました」
「報告書はどうしますか」
「え?」
「先ほどの話だといらないかもしれないと思いまして。それなら明細だけお送りしますが」
私は迷ったが、一応もらっておく事にした。知りたくはないが後で気になるかもしれない。
私は、住所を伝えて電話を切った。
直後電話がなった。知らない番号だったので出なかったが、その後何度もかかってくるので、5回目くらいに出てみると無言だった。

No.24

>> 23 しばらくして報告書と明細が届いた。
「男の名前は桑原 敦。年齢は46才。フリーター。貴方との接点なし。長年恋人なし」
他にも細々と書いてあった。
私は気持ち悪さや吐き気の他に怒りも込み上げてきた。付きまとってる理由は何にしても、相手に恐怖を与えるかもしれないと思いやる気持ちのない者に、恋愛する資格などない。
「片付けを希望される場合はこの金額。希望されない場合は報告書の金額だけを振り込んで下さい。確認され次第片付けに入ります。同意されない場合は、振り込みは結構です」

No.25

私は迷わず全額振り込んだ。振り込みに行く途中、あの男にまた会った。男は私を見つけると電柱に隠れるようにした。そうして私をじっと見ている。
「なんなの?」
すれ違い様にこぼした私の言葉に、ハッとした顔をして私を見直した。
「何か?」
「あの…」
「はい」
男は結局うつむいて黙りこくってしまった。
「あのね、黙ってれば察してくれるって思ってるなら大間違いですよ」
「なんで…」と男はそんなはずはないとでも言いたげな顔をして言ってきた。「なんで…」
「私は貴方じゃないんだから、貴方の考えている事が全部分かるはずがないでしょう?」

No.26

男はうつむいて黙りこくる。
これでよく社会生活が送れるものだ。
世話好きオバサンに世話焼かれているのだろうか。
なんにせよ、もうこんな面倒な奴に関わるのはごめんだ。
何も言わないなら、何も言わずに消えるが良い。
私は汚い物を見るような目をしてるつもりでその場を去った。
少し歩いた時、男が「あー!!!!!」
と叫んでいるのが聞こえた。
私が驚いて振り返ると、私と目があった男がまたうつむいた。
そうしていれば、誰かがなんとかしてくれる。
構ってもらえる。そう思って生きて来ましたという感じ。バカじゃなかろうか……腹が立って仕方なかった。なんて他力本願なんだ……私がこの手が殺せたら、どんなにいいだろう。

No.27

「さよなら」
私は挨拶として言った。
「なんで…?」
小さく聞こえたその声に
(まだ言うか?)と思いながら無視した。
(明日にはいなくなるかな)
私はうっすら笑みを浮かべながらその場を去る。
(勝手に私を良い人だと思ったんだろうけど、私はこういう女よ。見た目が可愛ければ、優しい人と勝手に思うんだから男ってバカよね。なんで自分の思い込みが分からない訳?世の中の女全てが自分に惚れるとでも思っているのかしら。正直あんた不細工だし服シミだらけで汚いし、デブだしあり得ないから)
私は色々言いたい事を飲み込んで帰った。何も言わないなら黙ったまま消えるがいい。

3日後には男は姿を表さなくなった。
それが消去されたからか、諦めたのかは分からない。けれど消えた事には化わりないので、私はスッキリした気持ちで仕事に向かった。

No.28

「彼氏とはその後どうなってるのかしら」
「え?」
「だから、結婚はまだ?」
ある日突然話しかけてきたのは大して仲良くもない職場の先輩だった。
「付き合ってる人、いるんでしょ?
もうどのくらいになるのよ。結婚はしないの?」
「今は予定ないですね」
「結婚したくないの?」
「そんな事はないですよ」
結婚なんて面倒な事したくないが、そうとも言えないのでごまかす。
「今の彼氏が嫌なら良い人紹介するよ。同じ職場の人なんだけどね」
乗り出すようにして急に鼻息荒くするオバサンに嫌悪を感じながら「でもまだ付き合ってますよ?」
「別れればいいじゃない」
「そんな事言われても…」
と言葉を濁す。
正直大して好きではない男だし別れられたら楽だとも思う。
しかし相手の男が納得しないだろう。今の彼氏を紹介してきた先輩オバサンも。

No.29

「とにかく連れて来るから!」
先輩…いやオバサンは勝手に話をまとめようとする。人の話聞かないんだから。
「結構です」
(これ以上、男増やしてたまるか)
私はその時は仕事もあったし去る事が出来たのだが、帰りに捕まってしまった。
「うわ…」
(出入口で待ってるよ)
「あのね!この人なんだけどね」
(また冴えないオッサンだな。気が弱い男は大抵ババアに引率されんだな)
男は目線は下だが、ニヤニヤしていて気持ち悪い。
「どう?この子なんだけど」
(オバサンの力借りないと彼女も作れないのかよ)
「この人真面目で優しいのよ」
「はぁ」
(ていうか、この見た目でオッサンで、真面目と優しい以外に良い所ないだろ。つうかこいつ真面目と優しい以外に何もないから彼女出来なかったんじゃないのか。つまんなそうな男の匂いプンプンなんですけど?)

No.30

私は言いたい事をどう伝えるべきか悩む。
イライラしてはいるがそのまま言うのはマズイ。しかしこのままだと付き合う事にされてしまう。
「私、彼氏いますけど?」
「でも別れるでしょ。この人なら間違いから」
「別れるなんて言ってませんけど?」
「でも別れた方がいいわよ。この人の方が絶対いいから。すぐに結婚してくれるわよ」
そんな悩み事はないし、オバサンに相談してもいない。
「結婚焦ってませんけど?」
「でもしたいでしょ」
「誰でもいいわけじゃないし」
「誰でもいいじゃない。してくれれば」
「あなたはそんなに気持ちで結婚されたんですか」
男は黙ってうつむいている。付き合えれば何でもいいのか。
「私の事はいいからこの人ね」

No.32

オバサンは、自分の事になるとはぐらかす。
(家庭が上手くいってないのかな)
そのうっぷんをここで晴らしているのかもしれない。それともこの男に気があるのか。
自分では相手にしてもらえないから、若いのに声かけてまわっているのかもしれない。
私に自分を重ねて、この男との恋愛を楽しみたいのだろう。

オバサンは私に付きまとうようになった。
男は犬のようにオバサンの後を付いてまわっている。
彼女を作る為とはいえ、オバサンの力を借りないといけないのか。それともオバサンに連れまわされているのか。嫌と言えないのかもしれない。
しかし、いい歳したオッサンがオバサンの後を付いて歩いてあるのは、誠に情けない光景だ。
彼の場合、気が弱いを通り越している。友達もいないとオバサンが言っていた。
人とコミュニケーション取れないのに、彼女だけは欲しいか。
その他人任せな所が嫌いだと言ってやったが、オバサンに私になんとかしてやって欲しいと言われてしまった…

No.33

「彼氏でもない歳上の男性の面倒をみるなんて重いです!」
イライラした私は、ある時オバサンにはっきりと言った。
「あなたがみればいいのよ!」
オバサンもムキになっている。なぜ、そんなに必死なんだろうか。男は、黙ってうつむいている。
「付き合いたくないんです。いい加減にしてよ」
私の腕を掴んで離さないオバサンに、私は半泣きで怒鳴る。
オバサンは構わず男に私の手を握れと促す。明らかに嫌がっていると分かるくらい暴れているのに男は私の手を握ってきた。オバサンは満足そうに笑っている。

No.34

私はキレた。
オバサンも男も許せなかった。
なんでこんなオバサンに付き合う男を決められなくちゃならない。
この男も、私が好きならどうして助けようとしないのだ。
(自分勝手な奴ら!)
自分達が満足すればそれでいいのだ。オバサンは男が喜べばいい。男は私と付き合う為にオバサンを利用している。
私は思いっきり爪を立ててやった。ありったけの憎しみと怒りをこめて。男は口を開けて、手をじっと見ている。

No.35

男が「痛いです。止めて?」と言ってきた。
「じゃ離して下さい。このオバサンが無理やり私の手を差し出したの見てましたよね?」
「だって」
男は自分は悪くないという風に言った。
この男の為にやってるんじゃないか。結局オバサンは利用されてるだけなのか。
「私が好きなら私の嫌がる事しないで下さい」
「でも……」
「何ですか?」
「あの」
「離して下さい。大声出しますよ。掴んでいるのはあなたですよね?」
私が強めに言うと、男はやっと離した。うつむいて「分かりました」と言って。
オバサンもうつむいている。
(利用されてる事に気づかなかったのだろうか)
自分を頼りにしているとでも思っていたのか?好き好んでオバサンの相手をするオジサンなんているわけないだろう?本当にオジサンならまだしも、この40代前半かと思われるくらいの男なら、若い女の子と付き合えるという特典がなければ子持ちのオバサンと関わりたいとは思わないだろう。

No.36

私はうつむいている男を睨み付けた。
男は黙ってうつむいている。私はここぞとばかりに文句をまくし立てた。男は唇を噛んで黙っている。
ひとしきり言い終わると私は一旦落ち着いた。ここまで言われて、まだ私と付き合いたいならただのバカだ。
するとすかさずオバサンが
「終わった?じゃ付き合えるわね」と言ってきた。
なぜそうなる。言えば気が済むのはアンタだけだよ。
男がニヤついている。
バカだったか。
「まだ分からないんですか?」
私はまた付き合いたくないという事をまくし立てた。
何回言えば分かるだろうか。
それとも気が済むまで言わせようという魂胆か。しつこい。
(このババアは、付き合うと言うまで離さない気だな。)

No.37

そんな時、別の先輩が声をかけてきた。
「そろそろ仕事してよ」
最もな意見だ。
「はい」
まだ話が終わってないけど、私はその場をとりあえず去ろうとしたが
「これ、彼のメアドだから」
「入りませんて」
「そんな事言わないで。ね」
無理やり渡されたメアドをとりあえずしまって仕事に戻った。
背後から「良かったね」と言っている声が聞こえる。
「本当にバカだな」
小声で言ったが聞こえたようで二人してうつむいている。
私は構わず仕事をした。メアドは後で捨てればいいや。

No.38

「あのさ」その日の帰りまたあのオバサンに声をかけられた。「彼と会う日決めない?」
「それは私と彼で話す事じゃないでしょうか」
私は冷ややかに言った。
「いつが空いてるのか教えて」
「なんであなたに?」
「いいから。今度の日曜日がいいんじゃないかしら。そうしなさいよ。それがいいでしょ」
男が走って来て、オバサンの後ろでニヤついている。
「無理です」
「なんでよ」
「なんであなたが決めるんですか?」
「じゃいつ空いてるの?」
オバサンは、なんとしても約束をとりつける気だ。

No.39

この何を言っても通じない図々しいオバサンはなんなのだ。
男はなぜこんなオバサンに付き従っているのだ?
分からない。
何か、弱みでも握られているのか?
そんな風には見えない。
とにかく寒いし早く帰りたいが会う気もない男とデートの日を決めろと言うこのオバサンはどうしたら引き下がるだろう?
嘘でも会うと言ってやれば気が済むだろうか。
しかし、期待させたと後から文句を言われないだろうか?しつこい男はどうして欲しいのだろう?断るのは許さないし、会うなら付き合えと言うし、好意がないなら会うなと言うし、なら会わないと言えば嫌だと言うしどう生きたらここまでわがままになれるのだ?
幼稚園から成長してないとしか思えない。自分に自信がないくせに嫌われる自分がいる事が理解出来ない。自分に自信ない奴が好かれる訳ないのにそれが分からない。人の好意に甘え過ぎている。
または女を美化し過ぎているのか……。
母親じゃないんだから、男の全てを受け入れられる女なんていない。いると思う奴は、本当に人と付き合った事がないのだろう。女性だけじゃなく、男性とも。人間とまともに付き合えない奴が恋人を作ろうなんて、身の程知らずとはこの事だ。

No.40

私は考えたあげく逃げ出した。
「なんで?!」
オバサンは追いかけて来る。
男もその後ろから追って来る。そのぶっ格好な走り方に寒気がする。
なんでそこまで私に執着するのだ。
いい加減にしてくれ。
もう気が狂いそうだ。
「待って待って!なんでデートくらいいいじゃない?」
このオバサンは、男の母親なのか。
「何がですか?!」
立ち止まり詰め寄る。
「私は、嫌だと言ってるでしょう!もういい加減にして」
「会うだけいいでしょう?良い人だから」
男が追い付いて、困った顔して見ている。
「彼が良い人だったら、なんでつきまとうんですか。良い人はそんな事しないでしょ。追いかけて来ないで下さい」
「付き合ってあげてよ。あなたにピッタリだから」
もう何を言っても通じない。

No.41

もう消えて欲しい。
その時、また思い出した。
あの片付け屋を。知らない間に携帯を握りしめていた。
私は付き合うと言ってやった。
オバサンは「本当に?」としつこく詰め寄ったので、何度も何度も言った。
最後は泣いていた。男はうつむいて、微動だにせずにつっ立っていた。
情けない男…。

その日の夜、私は片付け屋にまた依頼した。
一刻も早く消して欲しいと言ったが二人は無理だと言われた。私は男とオバサン、どちらにするか悩んだ。
悩んだあげくオバサンにした。
「あのオバサンがいなければ、こんなに苦しむ事はなかったんです!」
私は泣き叫ぶと、今夜中に消す事を約束してくれた。
私は祈るように朝を迎えた。あの二人が、また来たらどうしよう。あの一人じゃ何も出来なさそうな男、いやオッサンに、これから付きまとわれるのかと思うと、悲しくて辛くてたまらない。

No.42

朝、会社に行くとあの男が来た。
「なんですか。黙ってたら分からないでしょ?」
私は側に来てうつむいている男に詰め寄った。
「…ごめん」
私はダルくなった。
「私は付き合いたくないんだけど。無理やり言わされたの、側で見てたんだから分かってるよね」
「え…」
驚いている。
目がキョドっている。
「アンタバカじゃないの?なんで分からないのよ」
「バカじゃない…」
「バカだよ」
「バカじゃない!」
「じゃあなんで付き合えると思った訳?無理やり言わされただけなのに」
「だって…えっと」
誰かを探しているようだ。

No.43

多分あのオバサンだろう。
いつもこの男の側にいて、こいつがオロオロするとすぐに現れていた。
しかし今日は来ない。
男はうつむいたままただ立ちすくんでしまったので、私は会社に向かった。

あの後も、職場のあちこちで壁にピッタリと張り付き、こちらを向いてうつむいている男を見かけた。
声をかけて欲しいのだろうが、私は無視した。
ここまでしたら、気のない事に気づくものだが、この男はダメだ。
オバサンに能なしにされたのだろう。
人の好意に甘えている奴が私は嫌いだ。親切を押し売りする奴も嫌いだ。もっと言えば、人に親切にしろと怒りの形相で迫ってくるオバサンが大嫌いだ。
こういう奴は自分が嫌われている自覚のない嫌われものだ。
表面ではみんな褒め称え、裏では悪口大会だ。
だが気づかない。
何故なら、甘えた奴も押し売りするババアも鬼の形相のババアも、みんなプライドが凄く高いからだ。

No.44

プライドが高い女は自分を完璧だと思っている。そんな自分の想いにこそ気づかないバカだ。
そんなバカなババアの言いなりになるのだから、この男はマヌケだ。
「なんだよ」
小声で文句を言ってきた。ムカつく。
「なんですか。もっとハッキリ言って下さい」
私はしっかりと向き直って、力強く言った。
「いや…」
睨み付けてもうつむいてる男には見えないので、仕返しに小声で罵声を浴びせてやった。
驚いて顔を上げたので、思いっきり睨み付ける。
男はまたオドオドしながらうつむいた。
女をバカにしているのだろう。オバサンの悪影響だ。
私はそのまま立ち去り、この男が私に付きまとう事はなくなった。

No.45

うちの職場には、若さに固執したオバサンがいる。
「アンタは若いんだから、もっと仕事しないと。ほら、これとこれやっといて」
若い人に仕事を任せて、自分はおしゃべりに忙しい。
人の失敗は言いふらし、バカにし、自分は笑ってごまかしている。
まぁよくいる怠け者の給料泥棒だ。
それだけなら何処にでもいるオバサンだが、このオバサンの面倒な所は、とにかく若い娘へのヤキモチが酷い。今から若くはなれないんだし別に誰もアンタの歳なんて気にしちゃいないのに、若いと言わなきゃキレるし若いと言ってもキレる。綺麗と言われりゃキレるし、ブスだと言われりゃキレる。
もう会話が成り立たない。
仕事の話だけしてれば良いかと言うとそうでもなくて「アンタの話はつまらない!」とキレる。

No.46

そんな八方塞がりにされるオバサンと職場が一緒だと、会話したくなくても仕事上交わさなければならない会話がある。
上司からの言伝てが一番困る。
「これ伝えておいてくれる?」
嫌だとは言えないので伝えに行く。
「あの…結城さんがこれをやっておいて欲しいと…」
「え~…」
あからさまに面倒な顔をする。
私は頭を下げて頼むしかない。私が頼む訳でもないのに、なんで私が頭を下げないといけないのか。
「面倒だなぁ」
「お願いできませんか?」
私は再度頭を下げる。
ニヤニヤしながらオバサンは大声で「仕方ないわね!」と言って去っていく。上司はこの人と関わりたくないみたいで、この人に仕事を頼む時は、いつも私任せだ。
だから私は嫌でもこの人と関わらないといけない。
「あんな人と関わらなきゃいいのに」と言われるが、仕事なんだから仕方ない。

No.47

「嫌なら辞めちゃいなよ。他に良い仕事あるよ」
「そんな事で辞めてたら仕事なくなっちゃうよ。何でも思い通りにはならないものでしょ?」
同期との飲み会で交わされる会話。
毎度のガス抜き。
愚痴を聞いてくれる人は本当に優しいと思う。おかげで明日も頑張れる。
(普通に仕事してれば、思い通りにならないなんて当たり前だと思うけど…)
私の前に現れた、自分勝手な男達を思い出す。
自分に惚れない女はいないと思えるのは何故だろう。フラれる事なんてある訳ないと思える、その自信はあるのに、何故声をかけるなんて当たり前が出来ないのか。
「そういえば、彼氏とはどうなってるの」
さてどいつの事だろうか。
「玉木さん。この前紹介されてた……」
以前にも書いたが、私には彼氏と思われる男が5人いる。どれもが別々のオバサンに押し付けられた、断り切れなかっただけの男どもだ。
「ああ、あいつね。付き合った気になってるみたいで、会えば後ろから黙って付いて来るけどそれだけ」
「会話もないの?」
驚いた事に、私と男どもは会話が全くないが、男どもは笑って付いて来るのだ。
うつむいて、黙って少し後ろから付いて来るだけ。私は話す事などないし、男から会話がふられる事もない。
これで付き合ったと言えるならこの世に他人はいなくなる。

No.48

ハッキリ言って全員別れたい。が、全員嫌だと言う。
「付き合ってるうちに好きになれないなら別れなよ。相手に話してみたらどうなの」
同期の女の子が当たり前な事を言った。
「別れたくないって言うのよ」
「でも理由言わないんでしょ」
毎度の話なので、彼女も先に話してくる。
私は別れたくて、何度も相談した。
アドバイスを受け実践してみたが、男共は揃って黙るだけ。
(黙ってりゃなんでも周りが解決してくれるって訳?)
何度繰り返しても子供のような男共に心底嫌気が差していた。オバサンの言う良い人に、良い人はいない。
その後は他愛ない話をして別れた。
あまり遅くなるのは危ない。
というのも、暗い道に最近、変なオバサンが出没するからだ。
まるで痴漢かスリかという程、ピッタリくっついて歩くのだ。何か取られた事はないが、毎度その道に来るとくっついて来る。
全く気持ち悪い。

No.49

その日はオバサンだけではなかった。暗いが、かなり大きなシルエットが見える。相変わらずピッタリくっついて来るオバサンの後を、ドタドタと追いかけている。
私はそぉっと後ろを見てみた。薄ら笑いを浮かべているオバサン。その後ろに、うつむいている体の大きな男。
私は走ろうと思ったが、怖くて上手く動けない。歩くのが精一杯だ。それでもなんとか早足で歩く。
時折振り向いていたら、オバサンが私が気づいている事に気がついた。オバサンの目が泳ぐ。
踏切の所で遂にオバサンが、男に話しかけた。
「あの子可愛いよね」
いきなりなんだろうか。
「声かけてみたらどうなの」
男はニヤけるだけで話そうとしない。

No.50

その後もしつこくオバサンが男に私を勧めていた。男はチラチラとこちらを見ていた。
私はそこを通らないと帰れない。
他の道も知らなかった。
その後数日続いたオバサンと男のつきまといに抗議もしたが聞く耳を持ってもらえなかった。
それどころか、オバサンは私がどこに勤めてるか、彼氏はいるか、どこに住んでて家族は何人か、しつこく聞いて歩いた。
付き合いのない相手に、よくもまぁズケズケと聞けるものだ。付きまとっているうちに、親近感でもわくと思っているのか。
オバサンとは、皆この人のように、図々しいのだろうか。

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