両想いだろ?
ねぇ。
オレのこと、好き?
オレは、大好きだよ。
だからさ~
オレのこと、好きになってよ。
- 投稿制限
- スレ作成ユーザーのみ投稿可
>> 150
……
気付かれた……?
……………
……
オレはゆっくり、振り返った。
そこには。
オレの…
大好きな人、
……澪夏ちゃんが、
立っていた。
「………干潟…くん…」
澪夏ちゃんが、オレの名前を口にする。
「え?知り合い!?」
澪夏ちゃんと一緒にいた友達?のひとりが、澪夏ちゃんに聞いている。
その顔は、かなり驚いた様子だ。
そりゃ、そうだよな…。
こんな非常時に、冷静に考えてるオレもどうだって話だけど…
けど。
澪夏ちゃんは、どう答えていいのか…
いや…、そんな事以上に、なんで今、オレがここに…澪夏ちゃんの目の前にいるのか……
きっと…澪夏ちゃんは、何がなんだか分からねぇはずだ……
そんな澪夏ちゃんの気持ち考えてたら。
オレ…
澪夏ちゃんの顔、見れなくなっちまって。………
澪夏ちゃんから、目を逸らしてしまった。
>> 151
「ねぇ、澪夏、紹介しなさいよ。」
澪夏ちゃんと一緒にいたもうひとりの友達が、言う。
「え…!?紹介って…!?」
澪夏ちゃんが驚いている。
そんなやりとりが聞こえてきたオレは、また、澪夏ちゃん達を見た。
すると、そのもうひとりの友達?が、オレの方を見ながら、
「澪夏に、こんなイケメンの知り合いがいたなんてね。」
もうひとりの友達とは、明らかに違う反応だ。
妙に冷静っつうか。
……………
「彩矢…!ちょっと…」
澪夏ちゃんの反応を無視するみたいに、
彩矢と呼ばれた友達は、オレに近づいてきて、
「こんばんは。あたし、澪夏の同僚で成田彩矢。あ…、こっちは、同じく同僚の田中千尋。」
握手を求めてきた。
オレは、断る理由も見つからないまま、彩矢っていう人の握手に応えてた。
「もう…!彩矢は、相変わらずだね~」
もうひとりの友達、千尋さん?が呆れたように、澪夏ちゃんに同意を求める。
「あ…、………」
答えに詰まる澪夏ちゃん…。
「仕方なくない?澪夏が、紹介してくんないから。で。干潟?くん?だっけ?」
彩矢って人が、またオレに話しかけてきた。
「あ…、はい…」
「澪夏とは、どんな関係?」
「!?」
どんな…って…!
「うちで…!お父さんのところで…、バイト…してたのよ…。」
このホテルにオレが来て。
予想外の出会いをしてから、
殆ど返す言葉も無くしてたような澪夏ちゃんが。
初めて、まともに喋った答え。
>> 152
そのまともに喋った答えが……
オレは、
……………
オレは、ただのアルバイト。
…って事。………
これが、この答えが、やっぱ。
現実なのか……
「でもさ、おじさんとこで、バイトしてる子が……、なんで、ここに?」
千尋…さんの、あまりにストレート疑問に、オレは一瞬、息をのむ。
オレと澪夏ちゃんの顔を交互に見る千尋さん…。
どうする…!?
「あっ!干潟…くんは!」
え…
澪夏ちゃん、今度は何を言い出す気?
「…干潟くんも!明日、…友達の結婚式が、あるのよ…!」
「え…!?そうなんだ~」
千尋さんは、びっくりしながらも。
澪夏ちゃんの答えに、何の疑いも感じてないようだ。
オレ。
どんだけ、澪夏ちゃん困らせてんだ……
オレは、澪夏ちゃん困らせたくて…、こんなとこまで来たのか…?
>> 153
「だったら、ちょうど良くない?」
それまでただ黙って見ていただけの彩矢さんの言葉に、その場にいた全員の視線が彩矢さんに集まる。
「ん?あ、干潟くんも一緒に飲もうって事よ。」
「え?」
澪夏ちゃんが、彩矢さんを凝視する。
「あ~!いいね~そうしよう?」
千尋さんが、にこにこ笑いながら、答える。
オレには、なんの選択肢もねえ。
正直…
もう逃げ出したかった…
自分のしでかした事から…
けど。そんな独りよがりの願いを叶えるような選択肢は、
やっぱ…どこにもなくて。
>> 154
澪夏ちゃんの顔…
見る事ができねえ……
会いたくて。
もう一度、会いたくて…
来たのに……
澪夏ちゃんを、苦しめてる………
「って言っても。澪夏は明日、大切な式があるからね。そんなに長くは飲まないけど。」
彩矢さんはそう言った後、歩き出した。
一瞬間をおいて、千尋さんも慌てて歩き出す。
澪夏ちゃんは………
小さくため息をついた後。
「……行こう。」
オレに対して言ったのか…
それとも、自分に言い聞かせたのか…
分かんねぇけど。
彩矢さんと千尋さんの後を歩き出した。
気持ちはぐちゃぐちゃのまま、何の整理もつかないオレは、
3人の後を追った……。
>> 155
たどり着いた先は、ホテルの中にあるラウンジ。
それぞれに、注文して。
澪夏ちゃんは、ジュースを、彩矢さんと千尋さんは軽めのアルコールを。
オレは、…
どうすっかな…
ちらっと、澪夏ちゃんがそんなオレに目をやる。
…………
そんな澪夏ちゃんの仕草に、なぜだかイラついたオレは、ビールを頼む。
それぞれの飲み物が運ばれてきて。
「じゃ、とりあえず、乾杯!」
彩矢さんの一言で、全員が乾杯した……。
「干潟くんって、彼女いるの~?」
唐突に振られた千尋さんの質問にオレは、どう答えていいのか分かんねえ…
「いるに決まってるでしょ。」
オレが答える前に、なぜか彩矢さんが返事した。
「え?」「え?」
オレと千尋さんが同時に、反応する。
「あ…、」
「え?いるの~?」
また、オレと千尋さんの言葉が被る。
「いませんよっ…」
オレは半分、投げやりに答える。
>> 156
オレの真向かいに座る澪夏ちゃんに目を向けると、
目を伏せたまま、コップに添えられたストローをゆっくりと回していた。
「千尋。そんな事聞いてどうすんの?」
彩矢さんが横目で、千尋さんを見る。
「ん?だって、干潟くん、イケメンだし。彼女いないんだったら、彩矢にお似合いかな~って思って~」
澪夏ちゃんが、ストローを回す手を止めた。
「何それ。彼女いないからって、干潟くんにだって選ぶ権利あるでしょ。それに。」
それに…?
「なに?」
「年上の女は、ね?干潟くん。」
年上の、女…
「…別に、イヤじゃないですよ…」
「そう?あたし、澪夏と同い年だよ?」
澪夏ちゃんと……
「三つぐらい、大した差じゃないわよ~」
呑気な口調で、話す千尋さん。
>> 157
三つぐらい…
大した事じゃ、ねぇか……
オレは…、その大した差じゃねぇ事を超えられなかった……
「すいません…オレ、ちょっとタバコ吸ってきます…。」
耐えられなくなったオレは、席を立つ。
オレ…
マジで、なにやってたんだ……
澪夏ちゃんにとって、明日は、すんげー大切な日…
そんな大切な日の前日に…
オレ…は………
澪夏ちゃんを傷つけてる……?
「どこ行くの?」
背後から、声がして振り返った。
彩矢さん…?
「タバコでしょ?…こっちよ。」
>> 158
ホテルの中にある喫煙室だった。
オレは、そんな場所がある事さえ知らずに、外へ出ようとしてた。
「それとも、外の方が良かった?」
彩矢さんが、オレの横でタバコに火をつけながら、言う。
「……?え…」
「フッ…。冗談よ。」
横目でちらっと見る。
この人…
なに、考えてんだ?
オレの事、茶化してんのか?
「明日。友達の結婚式って、嘘でしょ。」
「!!」
オレは、吸ってたタバコを落としてしまう。
な!?なんで…!!
慌てて、タバコを拾おうとしてしゃがみこんだ。
「そんなに、動揺して。」
しゃがみこんだまま、オレは下から彩矢さんを見上げた。
すると、タバコの煙を吐きながら、笑ってる。
…!!
「澪夏に会いに来たんでしょ?」
「!?………」
オレは、ゆっくりと立ち上がった。
>> 159
「だったら…。なんすか?」
強気な発言ってやつじゃねぇ…。
半分は、ヤケクソ……
それでも、オレは彩矢さんの顔から、目を離さなかった。
改めて彩矢さんを見る…
ヒールを履いているとはいえ、180を超えるオレの身長と、そこまで差は感じねぇ。
澪夏ちゃんとは、大きく違うな…
「若いわね。」
「え…?」
「って事。…かな。」
「言ってる意味、分かんないんすけどっ?」
何が言いたいんだ…!
「さっき、確か、大学…3年って。」
「え?あ…、はい…」
4人で話してる時に、最初に聞かれた事だ。
けど…。
それが、どうしたっつうんだ…
「あなた、澪夏を幸せにできる?」
「は?」
>> 160
彩矢さんは吸ってたタバコを、灰皿の上でもみ消した。
「あなたと澪夏に、何があったかなんて、知らないし。興味もないけど。
今のあなたに、澪夏を幸せにするだけの力があるとは思えないけど?」
………
…………………
「オレには…澪夏ちゃんを幸せにできない……?」
「そう。澪夏、24よ?」
「…分かってますよ」
そんな事…
「澪夏を、いつまで待たせるつもり?」
「え……?」
「あなたが大学卒業して…。そしたら、澪夏はその時、25。でも、だからってすぐ結婚できる?」
「!?……できますよっ!ガキじゃないんですから!」
「…だから。そこが若いって言ってんの。」
「なっ…、何が…!」
「大学卒業したてのあなたに、家族を養っていける?」
「……!」
「今の就職難の中、仮に上手く就職できたとして。
ほんとの意味で、男が社会人になれるのには、最低でも2、3年。…もしかしたら、それ以上かかるかもしれない。」
「……………」
「2、3年経って…。澪夏は、もう30手前よ?
その時になっても、あなたがモノになってる保証なんて、どこにもないのよ。」
淡々と話す彩矢さんに、オレは何も言い返す事ができない。
>> 161
いつのまにか。
オレのタバコは、燃え尽きようとしていた。
オレは静かに、自分の吸ってたタバコを灰皿に置いた。
「……どうせ、オレは…」
彩矢さんは、何も言わない。
「オレは…、ガキっすよ!どうしようもないくらいっ…、バカな…ガキ…ですよ………」
彩矢さんが言うような事、考えてもいなくて……
オレは、……
澪夏ちゃんとオレが楽しいなら。それで……
充分だ…って思ってた………
いつか、結婚できたら。
いつか、家族になれたら。
………そんなふうに、思ってた。
でも、………それだけじゃ、
澪夏ちゃん…、
幸せにする事は、
できねぇ……
>> 162
「でも澪夏…、そんな、ガキなあなたに、惹かれてたんじゃない…?」
え……
「澪夏ちゃん、が…?」
「うん…。あの子…、うーん…、半年ぐらい前からかな?彼との付き合いで、かなり悩んでたんだよね。」
「半年…」
オレがちょうど、澪夏ちゃんちでバイトさせてもらうようになった頃……
「澪夏と彼ってね、もう付き合い長くて。…5年?ぐらいかな~?」
「5年……」
そんなに前から、……
「でさ。その頃、彼の仕事が忙しくなって。あんまり、会えなくなってたみたいで…。
しょっちゅう、喧嘩もしてて。
今年の澪夏の誕生日も…」
誕生日…
澪夏ちゃんの。……
「なんか、…あったんすか…」
「うーん…。彼の仕事が急に入ったとかで…、いろいろ考えてたらしいんだけどね。
…ま、ドタキャンって話で…。」
あの日…
オレが、澪夏ちゃんにサボテン渡した時…
かかってきた電話…って……
>> 163
「澪夏の彼って、年上なの。…5歳、かな?」
「5歳……。そんなに、離れてるんすか…」
「そう。
当たり前だけど、まぁ確かに、課長っていう肩書きもあって~。
経済的にも、ゆとりがあって。」
「…………」
「それに…」
「………、それに、なんすか…?」
「澪夏の事、大事にしてる…。っていうか、……愛してる…。」
……………
……………………
「でも、澪夏にしたら…。そんな彼でも、会えないっていうのは、きっと…つらかったんだろうな…。」
そんな時に。
オレに……
「あなたに出会ったんじゃない?」
………………
「あなたには、彼にはない…何か…魅力があったのね。」
「魅力……オレに……?いや…魅力なんて、なんも…」
>> 164
オレは。
ほんと、なんも分かってなくて。
ただ、ただ…
夢中で、澪夏ちゃんの事、想って。
「澪夏…、口にはださなかったけど…。
本気で、あなたとの事、考えてたんじゃないのかな。」
「そんなワケないっすよ…」
最初っから最後までの…、
「オレの片想い…っすよ」
「そうかな?……ねぇ?澪夏の誕生日…、もしかして、一緒だったんじゃない?」
動揺しなかったワケじゃねぇ。
ただ、彩矢さんの口振りは、オレを責めてるようには聞こえなくて。
「あたし、何があったかなんて、聞くつもりはないよ?
でも、澪夏…。その後からかな?
何か、変わった…。」
澪夏ちゃんの誕生日……
先輩の店に連れてって……
先輩……
!!
先輩が結婚してるって知って。
澪夏ちゃん、
『結婚って、いい…ですか…?』
こんな事、聞いてた…
そんな澪夏ちゃんに先輩も、
『あぁ。…いいよ。』
って。…………
>> 165
あの日を境に。
澪夏ちゃんとは、会えなくなって……
……っ!
会えなくなった…んじゃねぇ…
澪夏ちゃん…
わざとオレに会わねえようにした…んだ…!
メールも、電話も…
「やっぱり、…なにかあったんだ…。」
オレは、敢えて否定も肯定もしなかった。
あの時、先輩と話した澪夏ちゃんは。
結婚を…
決めたんだ。
オレと。
……じゃなく。
明日、
式を挙げる、彼氏と。
>> 166
オレ…、
やっぱ…フられたんだ。
………
…………………
「はっ…、マジ、オレって…」
誰に言ってるでもなく。
ひとりごとのように、吐いた台詞。
乾いた言葉の先には、何にも潤うものがない。
「オレ…っ…」
ぎゅっとつかまれた腕。それは、彩矢さんの手で。
「……?」
少し高めのヒールを履いた彩矢さんに。
引っ張られるように。
どんどん、歩いていく。
でも、オレの頭の中は真っ白なままで。
何もねえ。
さっきまで4人で飲んでたラウンジを通り過ぎ、
フロントで一旦立ち止まった彩矢さんが、何か喋ってる。
話が終わるとまた、オレの手を握って。
エレベーターに乗る。
>> 167
カードキーを取り出した彩矢さん。
え…?
「ピッ」
という音で、彩矢さんがドアを開ける。
それと同時に、オレは思いっきり引っ張られ。
勢いで、オレと彩矢さんはベッドになだれ込むように倒れた。
気付くとオレは、彩矢さんの上に乗っかってて。
「うわっ!すい……」
謝ろうとして。
ん?……
オレ今。
キス、してる?
しかも、彩矢さんと……?
ちょ…
「ちょっと…!彩矢さん!」
慌てて、彩矢さんの唇から離れる。
「な…なに、してんすか!?」
「なにって、キス。」
「いや、キスは…分かってますよ…!だから!何で?」
「うるっさいな…」
「は…?う…」
また、キスされてる。
ったく。
なんなんだよ。
オレは、キスされたまま、彩矢さんの顔を見る。
間近で見ると、彩矢さんって綺麗な顔してんな。
角度を変えて、またキスしてくる彩矢さん。
ちょっと。
いい加減にしてくんねぇと………
>> 168
彩矢さんの肩を掴んで、ベッドに押し付けた。
「なに?」
彩矢さんが眉間にしわ寄せて、軽くオレを睨む。
「ハァ…」
軽くため息ついて、
「あの…、彩矢さん?」
「だから、何?」
「オレ、男。なんすよ。」
「分かってるわよ。しかも、イケメン。あ、それから、」
「?」
「あたしの超タイプ。」
「は?」
「だから。しよ?」
「!?…彩矢さん」
また、彩矢さんがキスしようとしてきた。
「ストップ!」
>> 169
「もう!いい加減…」
「言ったっしょ。」
「?」
「オレ、男なんすよ。」
「んっ…?」
今度は、オレからキスしてやる。
表情見たら、すんげーびっくりした顔して。
オレからしたら、大人な彩矢さんが、オレの予期せぬ行動?に驚いてる姿って。
ちょっと笑えた。
一度彩矢さんの唇から離れて、顔を見る。
「子どものくせして、余裕じゃない…。」
「…ガキだから、っすよ。」
「え?…どういう意味?」
「女の子の……、彩矢さんの反応が新鮮で……。」
じっと、オレを見上げる彩矢さん。
「あたし…で、……いいの?」
………
「それは、オレの台詞っすよ。」
「干潟くん…」
一瞬、
澪夏ちゃんのオレを呼ぶ声とダブった気がした。
「…いいんすか?オレで…」
>> 170
「……干潟くんが、……
いい。」
「!……彩矢さん。」
あの時。
澪夏ちゃんとキスした時、澪夏ちゃんは…
オレと、キスしたかったんだろうか?
彩矢さんみてぇに、オレじゃなきゃ…って。
思ってくれてたんだろう…か……。
「彩矢さん。」
「…?」
「笙。って、呼んで下さい。」
「……笙?…」
干潟くん。じゃねぇ。
オレが今から抱く人は、
「彩矢さん…」
「いいよ。無理しなくて。」
そう言って、優しく笑ってくれた。
>> 171
「彩矢さんっ…」
夢中でキスをした。
彩矢さん…彩矢さん……
オレは、何かを払拭するかのように。
必死で彩矢さんの名前を呼び続ける。
彩矢さんの唇から、首筋、ちょっとずつ下に下がっていくオレのキス。
時折聞こえてくる彩矢さんのアマい声。
澪夏ちゃんは…
オレの腕の中で、どんなふうに鳴いてくれたんだろう……
欲しくても。
どんなに望んでも。
手に入れられなかった…
澪夏ちゃん……。
彩矢さんの体温を感じながら、
オレ…
このまま、澪夏ちゃんの事…
忘れられるのか?
>> 172
「笙…くん?」
「………っ」
彩矢さんのオレを呼ぶ声に、息を飲む。
「ごめん…」
彩矢さんをこれ以上、見る事ができなくて……。
オレは、上半身裸のままベッドサイドに腰掛けた。
「私じゃ…、駄目、だった?」
まだ、横になったままの彩矢さんが聞いてくる。
「そんな事…、ないっす…」
ゆっくり体を起こした彩矢さんは、
「やっぱり、澪夏じゃないと。駄目…?」
違う……
……
否定したくても、声にならねぇ…
「冗談よ…。」
「彩矢さん…」
オレはまだ、彩矢さんの顔見る事が出来ない。
「澪夏に…、妬けちゃうな。」
「彩矢さん…!オレは…」
彩矢さんの方を振り向こうとして。
>> 173
「見ないで…。」
彩矢さんの言葉に、オレは動揺を隠せない。
「ごめん…、笙くん。そのまま聞いて?」
………
「はい…」
身なりを整えた彩矢さんが、同じようにオレの横に座る。
少し間があって……
「ちゃんと、澪夏に気持ち、伝えてないでしょ?」
気持ち…
「オレの、?」
「そう。」
あれから、会えないまま。
今日いきなり、澪夏ちゃんの結婚の話、聞かされて…
手紙っつっても、…
澪夏ちゃんの事後報告みたいなもんで……
オレは。
オレの気持ちはまだ、…
何がなんだか分かんねぇまま、こんなとこまで来てしまって…
でも、
今さら…なんて……
オレは、下を向いたまま、必死で答え探してた。
「気持ち…、伝えないと、笙くん…いつまで経っても、澪夏の事忘れられないよ…?」
彩矢さんの言葉が、オレの心臓に突き刺さる。
>> 174
「私…、部屋、戻るね?」
そう言って、立ち上がった彩矢さん。
「え…?」
オレは、彩矢さんの方へ顔を向ける。
「この部屋、使っていいから。」
「……あ、」
彩矢さんは、オレを見ないまま、ドアの方へ向かって歩き出した。
「明日の式、10時からだから。」
ドアの前で立ち止まった彩矢さんが、背中を向けたまま言う。
「…………」
「……笙くん…?」
「っ…はい…」
「初めてだったな。」
…………
「え…!?」
「一目惚れってやつ。」
…………?
「……彩矢っ…さん!」
そう呼んだ時には、もう彩矢さんの姿はドアの向こうに消えてて。
>> 175
眠れなかった。
彩矢さんが出て行った後、
オレは、今までの事、思い出していた。
初めて澪夏ちゃんに会った時。
めっちゃ、可愛い!
って思った。
夜景を見に行った時。
泣いて、喜んでくれたっけ…
こんな事で、
喜んでくれるんなら。
何回でも連れてってやりてぇ…
誕生日プレゼントにサボテン渡したな……
サボテンがいいって言った澪夏ちゃん……。
オレへの気遣いってやつ?
益々、好きになっていった。
そして。
その翌日………
澪夏ちゃんとの初キッスか…。
なんもなかったけど…
朝まで、ひとつの布団で寝たんだよな。
おかげでオレ、完全寝不足だったけど。
……
その時も澪夏ちゃん…
泣いてた…
彩矢さん、言ってたな。
澪夏ちゃん。ずっと、悩んでたみたいだって…
夜景観た時も。……
あの時の涙も…
感動して、泣いたんじゃなく?
彼氏との事で、悩んでたから。
………
!…
でも、澪夏ちゃん…
誕生日に…、
オレの背中越しに言ったよな…
あの言葉。
『後悔してない』って…
あれは…!
あの言葉は…
>> 176
ドアのブザーが突然鳴る。
少し驚きながらも、オレはドアを開けた。
「おはよ!」
彩矢さんだった。
「あ…、おはようございます。」
ちょっとだけ、視線を絡ませた後、
「行くよ!」
「あ、はいっ…?」
オレは、半ば彩矢さんに引っ張られるようにして、部屋を出た。
どこに?って聞く寸前に、
「澪夏のとこ。」
「え?あ、あの!?」
「覚悟決めたんでしょ!?」
「は…?」
「一睡もしないでさ。」
「!!」
連れて来られたのは、澪夏ちゃんの控え室。
【片桐家】
名前を見て、足が止まってしまう。
「大丈夫。」
「?」
「中は、澪夏しかいないから。」
「!?」
「じゃないと、話、できないでしょう?」
「彩矢さん…」
にこっと笑った彩矢さんは、控え室のドアを開けてオレの背中を押した。
>> 177
ドアの向こうには。
…………
ウェディングドレス姿の、澪夏ちゃん。
「彩矢?」
「………」
まさか、オレが入ってくるなんて。
思っていなかったんだろ。
一瞬、オレとは分からず。
彩矢さんの名前を呼ぶ。
「……澪夏、…ちゃん。」
「………」
オレの存在に気付いて、でも。
声も出せねぇぐらい、オレの出現にびびってるのか…
「…ごめ…ん」
やっぱ、オレがここに来たのって、間違ってた……
謝った後、ドアの方へ向きを変えようとした。
「干潟くんっ……!」
オレの名前を呼ぶ。
「ごめん…。澪夏ちゃんの事、困らせようとか、…そんなつもりじゃ、ないから。」
「分かってるっ…。分かってるよ!」
「…澪夏ちゃん?」
「謝るのは、私の方だから…。干潟くん…、ごめんなさい…。」
ドレス姿の澪夏ちゃんが、頭下げてる。
!?
澪夏ちゃん…?
「泣いてんの…?」
「ごめん…。泣く資格なんて、…私には、ないのに……」
澪夏、ちゃん………
「オレ…」
「……?」
「オレも…、後悔してない。」
……………
「干潟…くんっ…」
>> 178
「ねぇ…、澪夏ちゃん?」
涙をいっぱい溜めた澪夏ちゃんが、オレを見つめる。
「……」
「オレの事、好き…?」
「………」
「オレは、大好きだよ…。」
オレ。
ちゃんと、喋れてる?
ぽろぽろと、涙の雫を流す澪夏ちゃん。
「だから…、だからさ。……」
澪夏ちゃんのウェディングドレス姿が、きらきらして見れねぇや…。
「好きになって。…とは言わないからさ…」
声も出さずに、涙する澪夏ちゃん。
「オレの気持ち……、受け取ってよ…?」
>> 179
「………干潟…くん。」
澪夏ちゃんが、オレに近づいてきた。
益々、眩しくて澪夏ちゃんの顔が見れねぇ……
「干潟くん…。」
「おめでとう。」
「え…」
立ち止まった澪夏ちゃん。
「オレの気持ち…、」
「………干潟くん?」
今度は、オレから近寄っていく。
「干潟…くん…」
「結婚…。おめでとう。」
「干潟……」
声になってねえよ?
オレ、ちゃんと。
自分の気持ち、伝えてるよな。
ベタだけどさ…、
澪夏ちゃん……
「幸せになって。」
>> 180
綺麗だよ…
澪夏ちゃん。
でも、この台詞が言えるのは…オレじゃねえ。
…………
「オレの気持ち、…受け取ってくれる?」
「…………うん。」
「うん。…良かった。」
オレは、静かにドアを開け、出て行った。
これで…
これで、オレは。
ちゃんと、忘れられる。
だって。
最後の最後に……
オレの気持ち、受け取ってくれたんだぜ?
澪夏ちゃん。
オレたち、
【両想いだろ?】
完。
☆最後まで読んで下さった方へ―――
途中、仕事の関係でなかなか更新が出来ず、ちょっと焦った事もありましたが……。
とりあえず終える事ができ、今は、ほっとしてます。
ほぼ同時進行で書いていた話も、ひとまず終え、今はまた、主役たちとは違う人物の話を書いているところです。
仕事のストレスやプライベートでのストレスなど、日々の生活に追われる毎日ですが……
書く事で、気持ちを落ち着かせる事ができたり。
ストーリーを考えているうちは、嫌な事も忘れる事ができたり。
あくまで、自己満足の世界の中で、書く事がストレス解消になっているのですが……
この話に関しては、もうひとつの話とは違って、元々ハッピーエンドにするつもりはなく、もっと、つらい終わり方にしようと思っていました。
が、書いていくうちに。
まだ若い笙に、得るものがない恋愛をさせるのが、なんだか、つらくなってきて。
最後に助け舟になるような、彩矢を出す事にしました。
やっぱり、こちらも内容的におかしいと感じる部分も多々あったかと思いますが…。
書き始めの頃、気分を害された方もいらっしゃったようでしたし………
申し訳なく思ってます。
ただ、……
書けるうちは、書いていこうかなと、密かに思ってます(^_^)v
それに…
読んで下さってる方がいらっしゃるって事は、本当に、単純に、嬉しいですし。
やる気?にもつながります★
また、どこかで目に付いたら、暇つぶしにでも、目を通して下さい♪
今まで、お付き合いいただき、本当に…
ありがとうございました☆
主。
☆皆さん、おはようございます。
東北関東地方の方は、その後、どうお過ごしでしょう?
これから、益々寒くなってくる時に、本当に大変だと思います。
また余震があったりするかもしれません…。
どうか万全の体制で、避難されるよう、また、体調崩されないようにと、望んでいます。
さて。
少し、《笙》のその後を書いてみようかと思います。
長く書く予定ではなく。
ただ、このまま、このスレに書くか、別に書くか、現時点では決めていなくて。
まぁ、とにかく。
決めたら、書きます(笑)
もしも、時間に都合がある方は、暇つぶしに覗いてみてやって下さい。
(^_^)v
主。
>> 183
☆悩みましたが…
新しい登場人物も出てくるので、別スレで書く事にしました。
というか、
もう、書いていますが(^_^;)
毎回の事ではありますが…、
もう一つのお話同様、完全マイペースで書いていく事になりますので(^。^;)
暇な方は宜しければお付き合いください♪
主より。
新しいレスの受付は終了しました
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
名無しさんが紹介する星新一の『夜の迷路』 1レス 155HIT 読者さん -
「時をかける少女」の真琴が嫌いです。 1レス 100HIT 小説好きさん -
一夜の夢と私の自由 0レス 145HIT 通りすがりさん -
【意味怖】産まなきゃよかった 4レス 261HIT 初心者さん -
猫と雪ダルマ 2レス 101HIT たかさき (60代 ♂)
-
ユアマイエブリシング こちらももしも時間があと1カ月ぐらいあればこちらも再構築が必要なスレで…(流行作家さん0)
437レス 2237HIT 流行作家さん -
ニコニコワイン 457レス 18595HIT 旅人さん (20代 ♀) -
20世紀少年 ミクル様 今まで ありがとうございました。(コラムニストさん0)
387レス 7842HIT コラムニストさん -
音楽図鑑 ミクル様 今まで ありがとうございました。(コラムニストさん0)
103レス 1823HIT コラムニストさん -
喜🌸怒💔哀🌧️楽🎵 🦆〜🩷 (匿名さん0)
91レス 3849HIT 匿名さん 名必
-
-
-
閲覧専用
鯨の唄 3 87レス 601HIT 旅人さん -
閲覧専用
アニポケ没映画3の答えってもしかしてこれじゃ…? 1レス 85HIT 小説好きさん -
閲覧専用
生きていたいと願うのは 1レス 118HIT 小説家さん -
閲覧専用
ドアーズを聞いた日々 500レス 1268HIT 流行作家さん -
閲覧専用
真夏の海のアバンチュール〜ひと夏の経験 500レス 2282HIT 流行作家さん
-
閲覧専用
鯨の唄 3 まだまだ未完成ですが… この稚拙で誤字脱字だらけの小説を読んでく…(旅人さん0)
87レス 601HIT 旅人さん -
閲覧専用
一雫。 今は離婚して(随分前だけど) 息子も独立 娘とは暫く会えてませ…(蜻蛉玉°)
96レス 3212HIT 蜻蛉玉゜ -
閲覧専用
アニポケ没映画3の答えってもしかしてこれじゃ…? 書いていて気付いたのですが、これって結構BWのゲノセクトと被る部分があ…(小説好きさん0)
1レス 85HIT 小説好きさん -
閲覧専用
神社仏閣珍道中・改 241レス 13650HIT 旅人さん -
閲覧専用
仮名 轟新吾へ(これは小説です) 〔学んだ事〕 人に情けをかけると 後で物凄く、不快な気持になる…(匿名さん339)
500レス 9105HIT 恋愛博士さん (50代 ♀)
-
閲覧専用
