両想いだろ?

レス185 HIT数 33636 あ+ あ-


2012/12/15 09:18(更新日時)





ねぇ。


オレのこと、好き?





オレは、大好きだよ。


だからさ~




オレのこと、好きになってよ。





No.1844572 (スレ作成日時)

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No.51

>> 50



家の中に入ると、おばさんが奥から出てきた。


オレの顔を見るなり。


「澪夏~!干潟くん、来てるわよ~」

二階の自室にいる澪夏ちゃんに、声を掛ける。

「あ…!すみません!」
オレが恐縮してると…

ニッコリ笑いながら。

「何、してるのぉ~
早く、しなさ~い。」

ってまた、澪夏ちゃんに向かって階段下から、急かすおばさん。

「あ、あの、いいっすよ!オレが、予定より早く来すぎたんで!」


そう。オレは。

気合いが入りすぎて、予定の時間よりかなり早く、着いてしまって。







「そうよ。まったく…!こっちの身にもなってよ!」

階段を降りてくる澪夏ちゃんの声が聞こえてきて。


ヤベッ!
超、機嫌悪そう!

「澪夏ね~。あなた、迎えにきてもらってんだから。早めに準備しておくのが、礼儀でしょう~」
なんて言いながら。
おばさんは、オレに申し訳なさそうに言ってくれる。……んだけど…。



ほんとにもう…、いいっすよ……おばさん…



だって。澪夏ちゃん。
怒らせると、マジこえ~し!

オレは、苦笑いするしかなくて。


おばさんに頭下げてた。
下げた頭の視線の先に、澪夏ちゃんの足先が見えたから。


顔を上げると……




「……………」

オレは。


言葉を、失った。










No.52

>> 51



ウエスト辺りで分かれたツートンカラーのワンピース。

メイクは相変わらずのナチュラルメイクだけど。


足首が見えるか見えないかぐらいの丈が。



なんつうか。



清楚な中にも、大人の色気を醸し出してる?ってゆう感じがでててさ。




「なによ。」


オレ、

澪夏ちゃんから目が離せなくなっちまってて。



澪夏ちゃんの声が入ってこねぇ。





「ちょっと…!何、じろじろ見てんの!」



小声で怒る澪夏ちゃんに。






「……!!…わ!ごめん!」

我に返ったオレ。




いつもの、ラフな格好の澪夏ちゃんももちろんいいんだけど…。




ナンなんだ!
このオーラは?
って思うぐらいの、感動モノで。




ハァ~

オレ。やっぱ。



マジ、好き。





恋してんな。






気持ち悪い!とか、言うなよ。








No.53

>> 52



我を忘れるぐらい。

澪夏ちゃんに見とれてる頃には、おばさんの姿はもう無くて。




「じゃあ…、行ってきます。」



奥にいるおやっさんやおばさんに、一声かけた澪夏ちゃんは。


まだ、完全に気を取り戻してないオレの横を。




初夏らしいサンダルを履いて、開きっぱなしの玄関をでていく。





その様子に、はっとしたオレも、
「……あ、じゃ!あのっ、行ってきます!」



同じくおやっさんやおばさんに声をかけて。






澪夏ちゃんの後を追った。






No.54

>> 53



「助手席、でいいの…?」



先に歩いてた澪夏ちゃんが、チラッとオレに目をやりながら聞いてきた。


「え!?もちろんだよ?」

何言ってんの?




ちょっとだけ、間があって。

「そう…、彼女……」

「え?彼女?」




「干潟くんの彼女に、悪いから。」

なんて。
思いもよらねぇセリフが聞こえてきて。



「は!?何言ってんの?澪夏ちゃん!オレ!彼女いねぇし!」


「そう。…」



「いやいや…。つうか、オレは澪夏ちゃんだけだから!」





澪夏ちゃんは前を向いたまま。

それ以上、オレの言葉にはなんの反応もないから。



どんな顔してんのか、わかんねぇ。





ねぇねぇ!
そこは、なんとか言ってよ~






「じゃ。…お邪魔します。」


助手席のドアを開ける前、オレに…ってゆうより。
車に向かって、話しかける澪夏ちゃん。




「あ…、はい。どうぞ。」


なんだか、オレも。




自分が車にでもなったような、変な気分で返事した。







No.55

>> 54



なんだかわかんねぇけど。


車内は、妙な空気が流れてて…。




車に乗った途端、何にも喋んなくなった澪夏ちゃん。


オレも、喉に何かが引っかかったみてぃに、
言葉が見つけだせなくて。



しばらく、お互い無言のまま。


走ってた……。







「お父さんに…、今日の事、話した?」

唐突に、話しだした澪夏ちゃん。


え…

あぁ。


「うん。だって、やっぱ。黙っておくにはいかねぇって思って。」

「………そう。」



「なに…?なんか、あった?」


横を見ると。
澪夏ちゃんは少し伏し目がちに、一点を見つめているようで。



不安になったオレは…

「もしかして…言わない方が……よかった…?」




「あ…。ううん!そんな事ないよ…!」



澪夏ちゃん…




「ほんとに?」

確かめるように、聞き直す。



「うん。いや、ただね。遠いから。気をつけて行くように。って、言われたの。」






No.56

>> 55



単純なオレは。

「そっかぁ!…あ!オレも、ちゃんと安全運転で行きますから!って、おやっさんに言っておいたから~。」



「…そう。」

「うん。だから、安心して?」

「ありがと。」


オレが澪夏ちゃんを連れて行こうとしてるとこって。

片道2時間はかかるとこで。


結構遠いから、おやっさん、心配してくれたんだろな。



あ!オレじゃなくて、澪夏ちゃんの事ね!










「に、してもさ。」


それまで、黙り込んでた澪夏ちゃんが話しかけてきた。


「ん?」

「車、でかいよね。」

「あ?…あぁ~。」


オレの愛車。

2000ccのケンメリ。


周りからは、そんな金のかかる車なんて。って、いっつも言われる。



確かに、古いから。

メンテナンスは時間も、金もかかる。



けど。


このスタイルとエンジン音が、オレにはたまんねぇ。






それに―――。








No.57

>> 56



「オレが、軽にって。
可笑しくない?」



「え?…」


澪夏ちゃんが、オレの身体を見回しながら、

「あ、……そうね。」

納得したように返事した。


「友達にもさ、お前、軽、似合わねえな~って言われるし。」




そう。
オレのこの身長じゃ。
まるで、おもちゃに乗ってるみたいだ!って、よく言われんだ。





「デカすぎるのも。不便な事って、あるのね~」

って。
澪夏ちゃん?

また、人が傷つくような事を。


だからオレも!


「チビちゃんには、わかんねぇ悩みだろうな~」


って、横目で。
にやつきながら、応戦すると。







No.58

>> 57



「チビじゃない!」


ムキになって答えるから。


「チビじゃん。」
って。

内心ニヤニヤしながら、オレがまた言うと。


「チビじゃないもん!あたしは、普通!」

って、身体ごとオレの方向いて、本気で怒ってくるから。


「オレから見れば、チビなの。」


って言いながら。

右手はハンドル。
左手は澪夏ちゃんの頭の上に手のひら置いた。





話の流れで、澪夏ちゃんの頭を触ってしまったけど。



考えてみれば。

澪夏ちゃんの身体に触れるのって、真鍋のオヤジの件以来で。
まぁ、あの時は、なんつうか。
突発的だったって事もあったし。
正直、澪夏ちゃんの手に触れてる。なんて、意識してなかったからな。



勿体ねぇ事、しちまったけどさ。



今は。

オレの方から、触れてるワケで。







髪の毛、柔らかけぇ…



できる事なら、このまま………

「ちょっと!」


「え!?なに!?」


「ハンドル!危ないでしょ~!!」



あ……

そこ…?



澪夏ちゃんのマジ切れで。

オレのアマ~い想いは、見事に打ち消されてしまったのです……。






No.59

>> 58



笑ったり。

怒ったり。


時には、笑い過ぎて、涙流したり。


でも。
そんな時間も、オレには楽しくて。



あっという間に、目的地までの半分は過ぎてて。



夜景を観る事が目的だったから。

その頃には、だいぶ暗くなってた。



当然。
夜景が見えるとこだから、山道を走るんだけど。



それまで二人で、途切れる事なく喋ってたのにさ。





いきなり、黙ってしまった澪夏ちゃん。



しかも。
なぜだか、固まってる…





今走ってる所は、山道で…当たり前だけどさ、民家もなくて。



車のライトが当たる所以外は、真っ暗で。







No.60

>> 59



え…っ?

この、シチュエーションって。



あ、あれ?

まさかの…


キスしちゃっても、いいの…?



「れ、澪夏ちゃん…?」

運転してるから。
オレは、もちろん前を向いたまま、なんだけど…


ど…どうしよう……

どうする?



…車、止める?




「あ…あのさ!」


名前呼んでも、黙ったまま、返事しないから。
もう一度、声をかけた…。




「黙って…っ!」


「え!」



「そのまま走って…!」

あ…?


「はい……?」




こんな場所じゃ、イヤだったのか?



真っ暗な車中じゃ。

澪夏ちゃんの表情を

読みとる事はできなくて。




悶々としたままのオレは、車を走らせる事しかできなかった。






No.61

>> 60



気付くと、目的地に着いてしまってて…。



オレは、車を駐車場の枠内に入れる。

シフトレバーをパーキングに入れ、サイドブレーキを引いた。



そして、心の中で。

ふーっ…と。溜め息をつく…






「ごめん…」

澪夏ちゃんの謝る声。


「あ…えっ……と、…」
澪夏ちゃんが何に謝ってるのか。
オレの思考回路では、すぐには理解できなくて。

その先のセリフがでてこない。



「さっき…。黙ってって、言った…でしょ?」


あぁ…

「うん…」


でも、それはオレが空気読めなかった…からで。たぶん。

きっと………




「途中、電話ボックス…あったよね?」


「え…?」


それはもう、何年も使われてないんだろう。

電話機のない、ボックスだけの奇妙な物体だった。



「あぁ、うん。あったね!」



「………」


何にも、話そうとしない澪夏ちゃん。


「ん?電話ボックスがどうしたの?」








No.62

>> 61



「……あたし、…見えるんだ……」


見える?
いきなり、何言い出すんだ?澪夏ちゃん。


「見えるって、なにが?」




「あの、電話ボックス…、人が立ってた………」

身じろぎもしねぇで、一点を見つめる澪夏ちゃんの横顔。


「は?人が…?」

オレの問いに、ゆっくりと顔を上げ、こくりと頷いた。


「んなわけ、ないじゃん~!だって、電話機もない電話ボックスに、誰が?なんのために?」


「…………………………………………」


オレの顔に穴があくんじゃないかってぐらい、凝視する澪夏ちゃん。


「……!?」


え…え…えっ………


「えぇ~~~~~~!!!!!!」



瞬間…

オレの叫び声に驚いた澪夏ちゃんが、両方の耳を押さえながら。

「~~~~~!!!!」
声にならねぇ声を上げてた…。





そんなミステリー、

なんか…




いらねぇ~~~~~~!






No.63

>> 62



すっかり気持ちが萎えてしまったオレは。


夜景の事なんか…


ぶっ飛んでしまい。



ハンドルに両手をかけたまま、うなだれてた。





「まぁ!気にしない!気にしない~」

そんなオレに、澪夏ちゃんは脳天気なセリフを放つ。



いやいや。
言い出しっぺは、澪夏ちゃんだし…



「ほら!夜景。」



「あ…」

そう、だった…



今日は、澪夏ちゃんと夜景観にきたんだ!




まぁ、澪夏ちゃんが言うように、気にしなきゃいいんだから。



澪夏ちゃんに見えても……。




オ、オレには…

見えねぇし…!






No.64

>> 63



「…………」



夜景の観える場所に来た途端、いきなり黙ってしまった澪夏ちゃん。


周りは、カップルだらけで。



確かに、ベラベラと喋るような雰囲気じゃないんだけどさ。




正直、オレとしては。


肩でも抱いて…なんぞ、考えてみるんだけど…



さっきの事もあるからな。




ここは、少し。



様子を見てみるか…。





しっかし。

ここの夜景は、何度来ても…



「綺麗……」


え…


突然発した澪夏ちゃんの言葉に、ちょっと驚いて。


澪夏ちゃんの横顔をチラリと、覗いた。




「凄いね…」



もしかして。


「感動とか、してくれてる?」


「うん… 」



「そっか~!」



怖い思いしてでも…!


連れてきた甲斐があったぜぇ~





テンション、上がるっつうの!









No.65

>> 64



「んっ……」



ん…?



妙な声に、辺りを見回すと。





……マジかよ!





すぐ横のカップルが、キスしてやがった…!



よくよく見ると……

男が、女の腰に手を回して…



かなり、密着してる…







オレはというと……

ただ…。


澪夏ちゃんの横に突っ立ってるだけで……





他人のキスシーンなんて。

興味ねぇけど。







こういう場合、



どう…するよ?


オレ。







No.66

>> 65



更に。




「ア…ン」


なんて、声まで聞こえてきて。





ヤベェ…






神様?


何ゆえに、このオレに。


このような試練を……?






マジで、ほんとにヤバい…です。







クソッ…


ここは、もう!



勢いで……!





学習しねぇのは、オレがバカだっつう事で……!







澪夏ちゃん……!








……………


……………







No.67

>> 66



「!!…」



澪夏ちゃん…!?








澪夏ちゃんの左手が、


オレの右手を、




しっかりと握ってて…






へ?



どういう事?




「れ…!澪夏ちゃん…!」



精いっぱいの小声で、そう叫べば。


また、更に澪夏ちゃんのオレの手を握る手に力がこもる。




いや!違う…っ!



そうじゃなくて…!





オレは、澪夏ちゃんと。

キスしてぇんだ!






今度は心の中で叫んでみる!






強行突破だ…!






オレは、身長差のある澪夏ちゃんの顔に近づくため、下から顔を覗き込んだ。







No.68

>> 67



「………澪夏ちゃん…」




澪夏ちゃんが、泣いていた。


「!……ごめん…。」




オレのさっきまでの勢いは、どこにいっちまったのか…。



「どうか、した…?」



澪夏ちゃんの思いもかけない涙に、少し動揺したオレは。
こんな単純な質問しかできなくて。




「…ううん。何でもない…!」


澪夏ちゃん…



「何でもないのに、泣いたりするのかよ。」




ペタンコのサンダルを履いた澪夏ちゃんが、横にいるオレを見上げる。





そんな澪夏ちゃんを、オレは逆に見下ろした。





オレたちはしばらく、お互いの目を見つめ。








「感動したの…。…夜景に。」


視線を夜景に戻した澪夏ちゃんが、答えた。







No.69

>> 68



オレの手は。


握ったままだった…




そういえば。


真鍋のオヤジの件の時も、オレ、澪夏ちゃんに手、握られてたな…。








感動して、流す涙か。


「…………」






わかったよ…。








オレは。



黙って、澪夏ちゃんの手を振り払って。








逆に、


ギュッと



握りしめてやった。










No.70

>> 69



いてぇくらいに。


ギュッと。






でも、澪夏ちゃんは。




何も言わず、オレに手を握りしめられたまま。


夜景を見つめていた。








「ほんと。感動もんだな。」


オレが言うと、



黙ったまま、こくりと頷いた。









澪夏ちゃん……


「マジで。………キレイだ。」





「うん……」



小さな声で、また、頷いた。








その時は、周りの雑音なんて、聞こえなくなってて。







そばに。


オレの横にいてくれるだけで。




それだけで………。



オレは。




…………。








No.71

>> 70



もうすぐ、澪夏ちゃんの誕生日。



何が欲しい?


なんて、聞くのもな。




24歳の女性が、欲しがるものって…。






あ…。

夜景を観に行った帰りは。



…なんも、なかったぜ?




澪夏ちゃんの、あんな訳ありの涙なんか見せられちゃ。



オレも、手だせねぇし…!





決して…、!





あの…





電話ボックスが、怖くて。なんて事じゃ、ねえからな!







No.72

>> 71



オレ、バイト代は殆ど愛車に注ぎ込んでるからな。


金、マジでないんだよな。

どーすっかな。




例のごとく、バイト終わりに澪夏ちゃんちで飯食わせてもらいながら。


ぼーっと考えてた。



「何?ふられた?」

オレの真ん前で、テレビを観てた澪夏ちゃんが、予想もつかない事を口走った。


「は?ふられたって?オレの事?!」



しかも、オレの方なんて見もしないで!



「違うの?なんだか、さっきからぼーっとしちゃってるから。」


だから…


「じゃなかったら、好きな女の子でもできたとか?」



え?今さら?
確かに、オレ、澪夏ちゃんの事、好きだし。


いや。それにしたって。
その質問の仕方は、おかしくねぇか?

オレは。

「澪夏ちゃん?オレはね、澪夏ちゃんの事、考えてたの~」






No.73

>> 72



「え?ふられたばっかりなのに、もう、別の女の子の事考えてんの?」

なんて、またまた、噛み合わねえ会話を始めようとするから。



「違うでしょ!!オレは、澪夏ちゃんの誕生日に、何贈ろっかなって、悩んでたの!」


って、ついムキになって。

本年をポロリ。





「…!!!」


やっべえ…!
言っちまった…



しかも、身まで乗り出して。




おやっさんとおばさんは、風呂入ってて。

いなかったから、それ以上恥ずかしい思い、しなくて済んだんだけどさ。



なんつう事、言わせんだよ…!




半分いじけたオレは、横目でチラッと澪夏ちゃんを見る。





相変わらず、澪夏ちゃんの視線はテレビの方だ。


聞いてないのかよ~




良かったのか、悪かったのか。


オレは、妙な安堵感を覚えていた。






No.74

>> 73



「サボテン。」


ん?…

何?


「サボテンが、どうかした?」


「だから。あたしの誕生日。」


「え?……」



相変わらず、オレの方は見ねぇ澪夏ちゃん。




サボテンが……、

誕生日プレゼント…?




「ねぇ。澪夏ちゃん、それ、本気で言ってんの!?」


だってさ、サボテンって。




「サボテンの何が悪いのよ。」


そう言った後、澪夏ちゃんはキッチンの方へ消えていく。



いや…。

別に、悪くない。





「悪くは、ないです…。」


ドレッシングを手にして戻ってきた澪夏ちゃんに、返事するオレ。





「じゃあ、そういう事で。」


そう言って。

澪夏ちゃんは、サラダを食べてたオレにドレッシングを渡して、また座った。









No.75

>> 74



普段は口悪くて。


冷たい態度の澪夏ちゃんなのに。

さりげなく、ドレッシング持ってきてくれたり。





オレの事、見てないようで。

意外に見てくれてる。





サボテン。なんて言ったのも。


金がねえオレの事、気遣って。

言ってくれたんじゃねぇかって思う。






やっぱ、オレたち。



両想いだろ?







No.76

>> 75



明日は、澪夏ちゃんの誕生日。


バイトが入ってないオレは、前日の今日、例のサボテン持参だ。



正直、ほんとにサボテンでいいのか。

マジで悩んだけど。



素直に、澪夏ちゃんの思いやりに、応えるしかねえか。

って思って。




なるべく、見た目?可愛いやつで。

陶器の植木鉢に入ったサボテンに、リボン着けてもらって。






渡すまでは、愛車に乗っけて。





「ねぇ、澪夏ちゃん!ちょっと、来て!」



飯、世話になって、帰る時に澪夏ちゃんに声かけた。





No.77

>> 76



「え?なに!?」

なにって…


ここで聞く!?



「もう…!いいから。来て!」

空気が読めない澪夏ちゃんの腕握って、外に連れ出した。





「1日早いけど。
はい。これ。誕生日プレゼント。」


愛車の横で、澪夏ちゃんにサボテン渡すオレ。


「え…」

だから!
その天然な反応、今だけ止めてよ。


そりゃあね。


「…ほんとに、サボテンがいいのか迷ったよ?
でもさ、…」



「ありがとう…」



あれ?
やけに素直じゃねぇ?



「あ、いや。……ごめんね?こんな物しかやれなくて。」

頭かきながら、苦笑いするしかねぇ。



「………ううん。」


「ほんとはさ、もっといいもの、渡したかったんだけど。…ごめん。」




「そんな事ないよ。嬉しい。」


オレの顔見て、笑ってくれる。





「澪夏、ちゃん…」



…………

「オレ。」


澪夏ちゃんの肩に手を置こうとした………




「…彼女でもないのに。」







No.78

>> 77



なんで!
そんな事言うんだよ…!



「澪夏ちゃん…。
オレの事、嫌い?」



今のオレ。

めっちゃ、女々しい…



けど。


「嫌い…なんかじゃ、」

「だったら!好き?」

聞かずにはいられなくて。







いつのまにか。

オレは、澪夏ちゃんの両肩に手を置いてて。





「だから…、好き…とか、嫌い…とかじゃなくて…」









No.79

>> 78



澪夏ちゃん……


「オレは…、好きだよ?」





「干潟くん………」




オレの気持ち。



受け取ってよ。





オレ…こんなに、キュンキュンしてんのに。



なんで。


「オレのどこが、イヤ?」

「イヤなんて、」

「じゃあ!どうして!付き合ってくんないの?」




「………だから、それは…!」




………

…………………



静かな駐車場に響く、携帯の着信音。




オレのじゃねえ。



澪夏ちゃんの携帯だ。





「はい……」


澪夏ちゃんは、興奮したオレの腕をゆっくり引き離しながら。


携帯を耳に当てて、話しだした。








No.80

>> 79



ねぇ、


澪夏ちゃん…

オレじゃ、ダメなの?




それとも他に、




好きなヤツでも……






「……わかった。…うん……。」



誰と話してんの?




オレには相手の声は
聞こえねぇ。



「わかったって…!」




澪夏ちゃんが急に声を荒げた。




なに?


どうしたの。





話を無理やり終わらせた澪夏ちゃんが、携帯をポケットに仕舞った。





気になるけど……



オレはさっきの事もあって、






声をかけるのをためらってた。






No.81

>> 80



片手に。

さっきオレが渡したサボテンをぶら下げたまま。


澪夏ちゃんは、オレの愛車に背を向けて、夜空を見上げた。






「この前の夜景ほどじゃないけど…。綺麗だね。」


そんな、楽しい過去の事話すもんだから。




オレも思わず、夜空を見上げた。





「……うん、」



きれいだね。



…………





でもやっぱり。


さっきのオレの質問に、ちゃんと答えてくんないから。




それ以上…

なに喋っていいのか、



わかんねぇし…





この、間。が…


なんともいえねぇな………





「ねぇ、干潟くん…」


夜空を見上げたまま、オレの名前を呼ぶ澪夏ちゃん。



「……なに…?」






「どこか、連れてって…」


「へっ?」




さっきの質問どころの話じゃねぇ…

とんでもないセリフが澪夏ちゃんの口から、聞こえたような?






No.82

>> 81



こんな時って…

なんて言えばいいんだよ…!





「えっ…と」
「明日!飲みに行こう?ね?あ、明日って、干潟くん忙しい?」



オレがあたふたしてるうちに、澪夏ちゃんがオレのスケジュールを確認する。


「あ、明日……、は、……」


明日…って……


澪夏ちゃんの誕生日じゃん!



いや…!まさか!
誕生日当日に澪夏ちゃんに誘われるなんて…!

思ってもみなかったオレは。



サークルの奴らと飲みに行く約束してたなんて事は。



どうでもよくなっちまって。








ちゃっかり、澪夏ちゃんと明日のデートのスケジュールを確認して。



「じゃ、明日」


そう言って、澪夏ちゃんは自分ちへと戻っていき。



オレも。



ウキウキ気分で、アパートへ帰った。





No.83

>> 82



ただこれがさ!

浮かれてるだけじゃ済まねぇような、話なんだよな!



オレは、昨日アパートに帰ってきてからも、ずっと悩んでて。



澪夏ちゃんに
「どこか連れてって!」
なんて言われた時は、テンパっちまって。


なんだっけ…

あの…


あっ!ロミオとジュリエット!みてぇな?


あ…
あれって、許されぬ恋ってやつだよな?


ま!オレと澪夏ちゃんには、そんなもんねぇし!



って。

それより!オレ。




やんなきゃいけねぇ事が、沢山あんだよ!







No.84

>> 83



澪夏ちゃんの誕生日。


オレは、澪夏ちゃんと話し合って決めた待ち合わせ場所に来てた。




またまたオレは、時間よりもかなり早く着いちまって…!



どんだけ、って話だよ!

いや…

てかさ、誰だってこんな状況、興奮すんだろ!




「ねぇ、干潟くん…?」
「なに?」

「干潟くんの地元で、飲みたい…」

「え?オレの?」



そう。
オレの実家は、大学があるここからは、少し離れてて。
って言っても、まぁ、車で2時間ぐらいなんだけど。


「いや。それは、全然構わないけど?……でも、そうなると…、その日は帰れなくなるけど………。!?」

「うん…、そだね…。」


れ…!澪夏ちゃん!?



それって…!



お泊まり!?………






「わ、わかった。…」


心臓、ハンパねぇ…!





て、こんな会話があったわけで。



な?

男だったら、興奮すんだろ?






No.85

>> 84



そんな妄想を膨らましてると…



オレの携帯にメールが入ってる事に気付く。

開いてみれば、
【そっち、行ってもいい?】

澪夏ちゃんからのメール。




え?来てたの!?

急いで、返事のメールを打つ。


【もちろん✌】


辺りをキョロキョロと見回してると。



助手席の窓ガラスをコンコンと叩く音が。




振り向くと。


澪夏ちゃんが
「いい?」
って口パクで聞いてる。

オレは思いっきり頷いて、手招きした。




ゆっくりとドアが開いて…

「……お邪魔します。」

「あ、あぁ、どうぞ…!」



なんだ、このハンパない緊張は…!


前にも言ったが、オレは。



童貞なんかじゃねぇからな…!





No.86

>> 85



夜景観に行った時も、澪夏ちゃん車に乗せたし。
二人っきりっていうのも、同じ状況なんだけど…


その先が。

あの時とは、大きく違ってて。



やっぱ、この差はデカい…



この緊張感をどうにかしたくて。


「ねぇ…、澪夏ちゃん。」

「……なに。」

「今日さ…、ほんとに、……泊まっても、いいの…?」

「……うん。……なんで?…」

「あっ…いや、あのさ、おやっさんやおばさん、大丈夫かな?…って思って」

「……大丈夫。今日、あたしの誕生日だから、元々、友達と泊まりで飲みに行くって、お父さん達には言ってたし。」


そっか…

じゃ!なんの問題もなく…
じゃない…よな。



「あ…なんだ~そっかぁ。…」


「……………」


って…!

なんだよ~




この沈黙……!



余計に緊張感増してんじゃん…!









「出よ?」

いろんな事考えてたら、澪夏ちゃんの声が聞こえてきて。


ちょっとだけ、自分を取り戻したオレは。


「あ、うん…。」


そう返事して。






そして。

愛車はオレの懐かしの地元へと、走り始めた。







No.87

>> 86



澪夏ちゃんの声に押されるように、ここまで走ってきたけど。



あれから澪夏ちゃん、ほとんど喋んねぇし…






ふっと、澪夏ちゃんを見ると………





「!!」


澪夏ちゃん!?


「スカート…!」

「え?なに?スカートが、どうかしたの…?」

「みじかっ…!」


太もも、半分は見えてんじゃん…!

しかも、ナマ足!



「なによ!そんなに見ないでよっ…」



いやいや、そうじゃなくて~


「オレの車、車高が低いから!前歩いてる人から、澪夏ちゃんのパンツ丸見えになんだよ!」


「え?」


「ほら!見てみ?横断歩道歩いてるヤツ、澪夏ちゃんの方見てるし!」



「!!」

自分で説明しながらも、見てたヤツらに完全に嫉妬したオレは。


「澪夏ちゃんのパンツ見ていいのは、オレだけ!他のヤツには見せねぇの!」



って。オレ……。

気付いたら、澪夏ちゃんの方向いたまま、とんでもねぇ事、口走ってて…



ぜってぇ、また怒られんな……



ごめん…って言おうとした時。




「じゃ…、どうすれば、いいのよ…」

思いもよらず。

か細い声で澪夏ちゃんが聞いてくるから……。



あ…


「えっと…。バッグを…足の上に置いて…。
あとは、なるべく足を立てないようにすれば…」

「…わかった。」





ねぇ…澪夏ちゃん。


そこ…否定しなくても、いいの?







No.88

>> 87



あれから。

時々、澪夏ちゃんをチラ見するけど。



特に、変わった様子もなくて…



気付くと。
車は、懐かしいオレの地元を走ってて。




大学での生活にも、それなりに慣れてきたけど。


やっぱ地元はいいな~





「この辺りって、もう、干潟くんの地元?」


「あ!うん、そう!
って言っても、実際は高校卒業するまでだったけど。」



「え?じゃあ、今は?ご両親は?」


「あぁ。今は、親父の転勤で、別のとこに住んでて。」

「そうなんだ!?」

「うん。ただ、実家はこっちにそのままあって。転勤って言っても、近い場所だったし。数年って話だったから、時々、おふくろが掃除しに来たり。
オレも、こっちの友達に会う時に、実家に泊まったりしてる。」



「そうだったんだ。」






「あ…、もうすぐ着くから。」


飲みに行くつもりで来てたから。

ちょうど、店が開くぐらいの時間に合わせて、向こうをでて。




目的の店近くの立体駐車場に、車を止めた。







No.89

>> 88



車から降りて、澪夏ちゃんと二人歩いてると。


「ねぇ。どこ、連れてってくれるの?」


楽しそうに笑いながら、澪夏ちゃんが聞いてくる。




そんな笑顔見せられたら。
つい、喋っちまいそうになるじゃん!



「内緒!」

「え?内緒?って…」


「まぁ、行ってからのお楽しみ~って事で!」



「え…」




少し戸惑ったのか、歩くペースが遅くなった澪夏ちゃんの腕をとって。


オレは、歩きだした。






「こんばんは~」


澪夏ちゃんの手を引いたまま、扉を開けると……。

店内に鐘の音が響いた。









No.90

>> 89



「笙~!久しぶり~」


中から、オレの名前を呼ぶ声が聞こえる。



「先輩!久しぶりっす!」


右手は澪夏ちゃんの手を握ってたから。
左手で手を上げながら、先輩に挨拶する。



その時だった。


澪夏ちゃんの動きが完全に止まってしまったのは。



「うん?どしたの?」

「このお店って…」

「ん?あ!オレの高校ん時の先輩の店~」

「イヤ…」

「え?なに?」


店内の音楽と他の客の話し声で、澪夏ちゃんの声が聞き取れない。







「こんばんは!」


また、先輩の声。

オレと澪夏ちゃんは、同時に先輩の方を見た。



先輩の視線は明らかに、澪夏ちゃんの方を向いてて。

その事に気づいた澪夏ちゃんは、

「あ…、こんばんは…」

小声で返事をしながら、ぺこりと軽く頭を下げた。





澪夏ちゃんが顔を上げると同時に。

「座って?」


またもや先輩の声。

そして、やっぱその声と笑顔は、澪夏ちゃんに向けられてて。





「あ…」

澪夏ちゃんが、戸惑ってる。


「先輩~!ちょっと!オレの澪夏ちゃんに気軽に声かけないで下さいよ~」


「いいから。笙、彼女、エスコートしろ。」


あ…


「わかりましたよ~」

オレはブツブツ言いながらも、澪夏ちゃんの背中に手を置いて。


「行こ?」


軽く、澪夏ちゃんの背中を押した。








No.91

>> 90



オレは、先輩に言われた通り、澪夏ちゃんをカウンター席に座らせた。


「いらっしゃいませ。」

先輩が、澪夏ちゃんの席の前に立って、にこやかに挨拶する。


「あ…、よ、よろしくお願いします…。」


澪夏ちゃん!
なんか妙に、緊張してねぇ!?
キャラ、全然違うし!


オレが目を点にしてる間に。


「俺。笙の高校ん時の先輩で、水町猛。一応、この店のオーナー。」

「あ…あの、澪夏です…」
「澪夏ちゃん。って言うの?」

!?
「先輩!ちょっと!」
「なんだ?」
「いや、だって!澪夏ちゃん…」
「は?なんだよ。澪夏ちゃんは。笙の彼女か?」

「あっ!」
って、澪夏ちゃんが反応したと同時に。
オレも、
「い…」
なんて。アホな声だしちまって…!


「違うんだろ?」
先輩がにやけた顔で、オレを見る。


「!………そうっすけど!いつかは!……」

ムキになって、先輩に言うと。

「は…。いつかはって。」


「何すかっ!」


「そんな時間、ねぇだろ。」


「は!?どういう意味っすか!」


「あの…!」

先輩と二人、言い合いしてると、澪夏ちゃんが止めるように間に入ってきた。


「あ!ごめん…、澪夏ちゃん…」
オレが謝ると。

「澪夏ちゃん。全く気にしなくていいよ。
俺と笙のいつもの漫才だから。な?笙。」

「漫才って!もう!
先輩、いっつもオレの事、こうやってちゃかすんだから~」




「フッ…」

澪夏ちゃんが笑った。

「あ!そこ、笑うとこ~?」
オレが拗ねて言うと。


「爆笑もんだろ!」
そう言って、先輩も笑ってる。






No.92

>> 91



「ここに来て、初めて笑ったね。」



先輩が、…猛先輩が。
澪夏ちゃんを見て、優しく笑った。

「あ…」

オレは、澪夏ちゃんを見る。
澪夏ちゃんは、猛先輩を見てる。



「ちょっ!先輩!澪夏ちゃん、誘惑しないでよ~」

「誘惑って!」

澪夏ちゃんが、オレを睨んだ。

オッ?
「その顔!今日、初めて見たかも~」


「お前…、そこで嬉しそうな顔するって…Mか、お前は!」



オレを睨みつけてた澪夏ちゃんがまた、笑った。


「笑ってる顔が。一番いいね。」


猛先輩!それっ!

「オレが言おうとしたのに~」




また、笑った。




うん…


澪夏ちゃんのドSなとこも好きだけどさ。

やっば、笑ってる顔って、いいな。


誰だってさ、好きな子には笑ってて欲しいよな。






No.93

>> 92



「と。いう事で!
澪夏ちゃん、何飲む?」

先輩…。

その笑顔……!


「あ…、」

澪夏ちゃんも、心なしか頬赤くなってるみてぇな…!

「あ、じゃあ、水町さんのオススメで…」

「俺のオススメね!了解。」

「お願いします。」


「それと。猛でいいよ。」

「あ…、いえ…。」

「せ、先輩!」


「さっきから、うるせえな~。笙は。ねぇ、澪夏ちゃん?」



だから。その笑顔!

軽く苦笑いしてる澪夏ちゃん。

「だって!猛でいいよ…とか…。あと!オレには 聞いてくんないんすか~」

「あぁ。澪夏ちゃん、歳いくつ?
それと。笙はいつものでいいんだろ?」

「あ…、えっと…」

「……なんか、オレに対する扱い、軽くないっすか?あ…!澪夏ちゃん!今日、誕生日なんですよ~」


「誕生日!?いくつになったの?」


「24!」

「お前に聞いてねぇし。てか、タメじゃん!俺たち。」


「そうなんですか!?」
そう言えば、そうだった……。

「あぁ!だったら、余計、猛でいいよ。」

「あ…いえ、それは流石に。…じゃあ、猛…さんで。」


なんかもう、オレの立場が~


「了解。」

先輩!微笑むな~








No.94

>> 93



「猛さん…て、落ち着いてますよね?
ほんとに、私と同じ歳ですか?」


澪夏ちゃんが、先輩に話しかけてる。


「そう?まっ、俺、嫁さんいるからね。」

「え?結婚してるんですか?」


そうそう!
先輩は、奥さんいたんだった~


「うん。子どもも二人。」

「えっ?二人も?」

そう!しかも、子持ち~

「うん。子ども、可愛いよ。どんなに疲れてても、あいつらの顔見ると、疲れなんていっぺんに吹き飛んじゃうって感じ。」


先輩…
お父さんの顔になってる……。


「幸せ、なんですね。」

澪夏ちゃんが、ぽつりとつぶやいた。

「あぁ、もちろん。嫁さんの事、超愛してるし。」


オノロケだ…

けど。マジで、先輩と奥さん…、あ、奥さんもオレの先輩になるんだけどさ。


超、ラブラブなんだよなぁ~





No.95

>> 94



「はい。どうぞ。」

先輩が澪夏ちゃんの前に差し出したのは。

「これ…」
「ブルーハワイ。」

「え?これが先輩のオススメ?」

「オススメ、じゃないけど。」

「…?」
澪夏ちゃんがきょとんとした顔してる。


「誕生日。おめでとうって事で、ね。
ま、急だったから。ケーキの代わり?って言っても、由来は全然関係ねえけど。」


柔らかい表情で、澪夏ちゃんを見る先輩。


「…ありがとう。…猛さん。」
「うん。」


なんだ!
この…、二人の雰囲気は…!

「ちょっ!ちょっと!先輩!澪夏ちゃん!」


「なんだ。笙も飲みたかったのか?」

「え?…いや…、違いますよ!!」


「はい。お前には、これ。」


そう言って、オレに差し出されたカクテルは、酒に弱いオレには、ぴったりの。

カンパリソーダ。







No.96

>> 95



ブルーハワイのストローに、口をつけて、少しだけ飲んだ後。



「また少し、おばさんに近づいちゃった…。」

そう言いながら、小さく溜め息をつく澪夏ちゃん。


「おばさんだなんて…!オレ、思ってねぇから!」

オレは、赤く染まったカンパリソーダをグイッと飲む。


「おい…笙、お前、飲み過ぎんな!」



猛先輩が、オレを軽く窘めるけど。





澪夏ちゃんには、何にも言わねぇ。


ただ黙って、見てるだけ?
いや…、


まるで、二人にしかわからねぇ事でもあるような。


そんな感じ…で、




「猛さん…」

「うん。」



「結婚…て、」

「うん…」

「いいですか……?」

「あぁ。…いいよ。」






オレは……。



口を挟む事ができないでいた。








No.97

>> 96



………結婚。




澪夏ちゃんは、



オレとの結婚。

考えてんのかな…?




それとも……





結婚はいい。って、そう言った猛先輩の言葉に、嘘はねぇ。


だって、先輩見てると。
ほんと、結婚って。
いいなって素直に思えるから。




でも、澪夏ちゃんは…


どんなふうに、思ってんだろ…





いつの間にか、ブルーハワイを飲み終わった澪夏ちゃんは、次のカクテルを先輩に注文してる。

「今度は、オススメね?」

先輩は、軽く笑いながら、言う。


「あ、はい。」


そんな二人のやり取りをぼんやりと、見ていると。


「笙。お前、どうする?」

先輩の問いに、空になったグラスに気付いた。


「あ…!えっと…」


意味もなく慌てる。


「今日は、それでやめとくか?」


そんな先輩の言葉に、妙にムキになったオレは…

「いえ!もう一杯…!」


「…わかった。」

そう返事した先輩は。



澪夏ちゃんに、ラズール・モヒート。
オレには、マリブコーラを作ってくれた。






No.98

>> 97



「美味しい…」

ラズール・モヒートを飲みながら。



先輩を見る澪夏ちゃん。

「そう?良かった。」



顔を見合わせて、笑ってる。





オレは…


グラスを握った手に、ぎゅっと力を入れた。




それから、


一気にマリブコーラを飲み干した。





でも、先輩は…

今度は、何も言わねぇ…


それが何故だか、オレには虚しくて。





そして、

タバコを吸わねぇ澪夏ちゃんの前じゃ、絶対吸わないオレは。



気付くと、タバコに火をつけて、思いっきり吹かしてた。







「…ちょっと、お手洗い。行ってくるね…。」


「あ…」

そんな、バカなオレの行動に嫌気がさしたのか…澪夏ちゃんは、ゆっくりと席を立って、店の奥にあるトイレへと消えていった。










No.99

>> 98



「笙、お前…。」


澪夏ちゃんがいなくなったカウンターで、先輩がオレになにか言いたそうにしてる。

「……なんっすか…」

完全に拗ねてしまったオレは、覇気のない声で返事する。




「彼女…澪夏ちゃんの事、本気なのか?…」


今、こんな状態のオレに聞くような事っすか…!?




「先輩…」

「なんだ。」

それでも、やっぱり。




「オレ、マジっす。」

言わずにはいられなくて。

一気飲みしたせいで、グダグダになりながらも。先輩に、オレの本気、伝えてぇ…

いくら、先輩でも。


澪夏ちゃんは、渡せねぇ。



「だったら、大事にしてやれ。」

「…え」

「ただし。お前には、あんま時間ねえけどな…」

「え?」


「それと。」

「はい…?」

「さっきのマリブコーラな。」

「はい……」

「酒、入れてねえから。」


「…!?」


「お前が酔っ払って、どうすんだ。彼女…、澪夏ちゃんの事、マジなんだろ。」


「……あ…!」




それって……


い、今までの事って……

全部、オレの…ため?






先輩の優しさが…


胸に染みるっす…









No.100

>> 99



先輩…



「それから…」

「?…」

言いかけて。



澪夏ちゃんの姿を確認すると、

「いや。いい…」


小声で呟けば、

「澪夏ちゃん。おかわりは?」


先輩は、今度は、さりげなく澪夏ちゃんに気を配った。






先輩、なんか、大人だな~


ちょっとの事で、すぐ勘違いして…

拗ねるようなオレとは、大違いだ…。



もっと。


大人なオレになんなきゃ、な。




今のまんまじゃ、オレ、澪夏ちゃんの事…


大事になんか、できやしねぇ!





「干潟くんは、…もう、飲まない…?」

先輩の質問に答える前に、オレに聞いてくる。



「…あ、あぁ…。いや。オレはもういい。」

「そう…?じゃ、あたしも、もう。」

「いや、澪夏ちゃんはもう少し、飲んだら?」

「ううん…」

「あ、オレの事だったら、気遣わなくていいから。」


「う…ん」

「先輩のお酒、美味しかったっしょ?」

「あ…、うん…。」


「だったら。ね?
それに、今日は、澪夏ちゃんの誕生日なんだからさ!」


「…いいの?」


澪夏ちゃんにも、オレ。
気遣わせちまってたんだな…

「もちろん!」


だって、澪夏ちゃんが楽しいって思える事が、オレの楽しみでもあるワケで。






  • << 101 でも… 先輩が言いかけた事と、 澪夏ちゃんと先輩のやり取りには、 もっと、深い意味があった事にその時のオレは気付くはずもなく……。 オレの横で。 最後は、澪夏ちゃんが自分で選んだ、アプリコットオレンジを美味しそうに飲む姿を。 無意識に目に焼き付けるように、 見つめていた。
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