からっぽの空

レス23 HIT数 5239 あ+ あ-


2013/02/01 21:22(更新日時)

いまでもたまに
壊れちゃいそうになる

だけど、きっと
私は幸せだった。

…君との思い出は
いつまでも綺麗なままで。

No.1799639 (スレ作成日時)

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No.1

キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…


授業の終わりを告げる
鐘がなる。


「授業終わったー!」

机にへたれこみ、
ざわざわしはじめる教室で
ぼーっとする。


伊吹翠香(いぶきすいか)
介護の専門学校に通う19歳。

背が低い上に童顔なので
ミニ○ニ。に入れば?
メイド喫茶で働けば?
などとよく言われる。

生まれてから一度も
染めたことがない
黒髪ロングストレート。

ズボンよりスカート派。

小6の時に両親が離婚し
母子家庭となった。
じぃちゃん、ばぁちゃんの家で
母、弟、あたしで暮らしてる。

父親がいないとか、
別に最近はめずらしいこともないし
楽しく生活してきた。
普通に友達もいた。
それなりに恋もして
付き合った人もいた。

いたって普通の19歳である。

No.2

「もうすぐあたしも先輩かぁ…」


4月、桜がもう散りはじめた。

校門には入学式を終えた
1年生の姿。


「サークルに1年生入るといいなぁ」


そんな事をつぶやきながら
窓の外を眺める。

No.3

「翠香!なに黄昏れてんのさ?」
ももこが声をかけてきた。

七瀬ももこ
専門学校に入ってから
1番最初にできた友達。

身長はあたしより20㎝も高くて
でこぼこコンビ、ってよく言われる。

肩よりちょっと長めの
セミロングにふわふわの
パーマがかかった茶髪。

すっぴんのあたしと違って
ブラウン系のメイクが似合う
大人っぽい女の子。

同じクラスに彼氏がいる。

ちょっとうらやましいぜ。

No.4

「ももこー!バレーサークルに1年生入るかなぁぁ?」


「入るっしょ!大丈夫大丈夫!」


「入るといいなぁ…。去年の先輩卒業してから、うちら2年生6人しかいないんだよ?…試合もできないしつまんないよぅ」


「そーだねぇ、6人はさすがに寂しいね…。サークル紹介とかなかったっけ?」


「1週間後にあるよ〜」
手帳を見ながら答える。


「じゃぁ頑張って部員集めだね!部長さん♪」
ももこが笑いながら言う。


「もー部長とかやりたくないよぉー!」

No.5

いまから3ヶ月前。

まだあたしが1年生で、
去年の先輩達がいた時の事。


「だれが次期部長やる奴いねーの?」
体育館に響く声で前部長の先輩が言う。


「………。」


だまり込むあたし達1年生。


「部長ってなにやるんすか?」
あたしは前部長に質問した。


「んー、みんなのまとめ役?部長っていってもサークルの部長だし、気楽だよー。それに部長なんて肩書きだけでなんもすることないし」
と笑いながら前部長は言う。


「えー、でも指示出したりしてませんでした?」


「それはやっぱ誰かがやんないとまとまらんからねぇ」


「大変じゃないすかぁ」


「じゃーここは公平にじゃんけんで決めようかな!」
先輩のなかの一人が言った。


「ええぇぇー!」
絶叫する1年生一同。


「決まらないんじゃしゃーないっしょ!ハイ!出さなきゃ負けだよ最初はグー…」
そんな1年生をお構いなしに先輩はじゃんけんの掛け声をかける。


「ちょ!先輩〜!」
そう言いながらも仕方なくじゃんけんに参加する。

…出さなきゃ負け、なんてごめんだ。

No.6

「じゃんけんぽん!」


…負けた。


…あたし、負けた。


しかし!
負けた奴がもう一人!


「負けたの麻生氏とあたしだけかよ〜」
あたしはため息まじりに麻生に言う。


「俺絶対やりたくないよ!俺部長とか向いてねーし!」
麻生氏も譲る気はなさそうだ。

チクショー、負けたくねぇぇ。

No.7

「じゃー麻生氏と翠香でじゃんけんな!」
先輩が言う。


「もー絶対負けたくないっ!」

「俺もやりたくないよ!」


運命の瞬間。


「じゃーいくよ?最初はグー!」
先輩の掛け声が始まる。


「じゃんけんぽん!」


あたしがチョキ。

麻生氏は…グー。


チョキ<グー


あたしの負け。


死亡フラグ起立〜〜〜。

No.8

「あっぶねー!よかったー!」
麻生が歓喜の声を上げる。


「マジかよー!あたし仕切るの苦手なんだよー」
落ち込みながらあたしは言った。

もう最悪だ。


「翠香!大丈夫だよ、うちらもフォローするし!」
早苗が言った。

「そうそう!それに翠香、責任感あるし!」
ももこまで…。


「じゃぁ次期部長は翠香で決定!解散!お疲れ様でしたー!」


…そんな流れであたしが部長になったのだった。

No.9

「サークル紹介って何言えばいいのかなー?なんかパフォーマンスとかして印象付けないと人集まらないよねぇ…」
ポッキーをかじりながらももこに相談する。


「とりあえず、ボール使ってパスでもすれば?」


「あたしとあやパンしか経験者いないし、ボール吹っ飛ばすのがオチだよー」


「そっかぁ。じゃぁ普通にしゃべればいいんじゃない?活動場所と活動日言ってさ。」


「そうだねー、無難にそうしとこーかなー。あ、ポッキーからっぽ!」
あっという間にポッキー一袋完食。ももこは二袋目を開けようとしている。


「翠香ー♪今日ひまぁ?」
誰かがあたしに抱き着きながら聞いてきた。この高い声は…早苗だ。

No.10

「今日はねー、5時からバイト!」
にっと笑って答える。


「なーんだぁ、クレープ食べに行こうと思ったのにぃ」
早苗が残念そうに言う。


東風谷早苗(こちやさなえ)
高校から一緒の専門学校に入った友達。
ももこと同じく背が高い。
ももこより高い。

170㎝近い早苗の身長より
背の高い男子がなかなかいない為、
いつも自分の好きな人は
自分より背が低いと悩んでいる。
背の高いのがコンプレックス。

茶髪に短めのショートカット。

喜怒哀楽が激しくて
声がデカくてとにかく目立つ。

ちょっと変わったおもしろい子。

No.11

「じゃーそろそろ帰るわ!バイト遅刻しちゃう」
いまは4時過ぎ。そろそろ出なくては。


「今日は大塚さんと一緒?」
ニヤニヤしながらももこが言う。


「そうなの!大塚さんと一緒〜!超嬉しい!」


「そうかそうかぁ、じゃぁ早く行かなきゃね!」
早苗もにんまりする。


「じゃーまた明日!ばいばーい!」
二人に手を振って教室を後にする。


「今日は大塚さんと一緒〜!電車何分かな?」
小走りで学校から駅に向かった。


電車に乗って、地元の駅から自転車で5分。バイト先に到着。

No.12

あたしのバイト先はマツキヨみたいなドラッグストア。

レジと品出しをしている。

高校3年から始めたバイト。
かれこれもう3年目になる。

大塚さんというのは、
1つ年上の大学生のバイトの先輩。

好きとかそうゆうんじゃなくて
憧れの人。お兄ちゃん的な存在。


いまは、好きな人もいなければ
1年以上彼氏もいない。


誰かいい人いないかなー
なんて考える今日この頃。

No.13

更衣室で着替えてエプロンをして、タイムカードをきって、今日もバイトが始まる。


「いらっしゃいませー!」
元気に声出しする。


「おはようございまーす!」
朝じゃないけど、
仕事に来たらまずパートさんと社員さんと今日のバイトの人にこうやって挨拶してまわる。


「おはようございまーす!翠香ちゃん、今日も頑張ろうねぇ!」パートのおばちゃんがにこにこして言う。


「はい!よろしくお願いしまーす!」
あたしも笑顔て挨拶し、仕事を始める。


「今日はレジからか」
さっそくレジに入り、お会計をしていく。


レジに入るとあっという間に時間は過ぎ、そのあと品出しをして、今日のバイトは終わり!


「お疲れ様でした〜」

No.14

「お疲れ様ー」
大塚さんが笑顔で言う。


「大塚さんっ!お疲れ様ですっ」
緊張して声が裏返る。


「いま裏返ったろ?」
大塚さんは笑いながらあたしの頭をぺしっと軽くたたく。


「なにするんすかー!」


「伊吹は小さくてホビットみたいだな」
とあたしの言葉を無視して得意のあだ名攻撃をかましてくる。


「ホビットって!そうやってすぐバカにして〜」


「ホビット可愛いぞ?」


「大塚さん、巨神兵って呼びますよ?」


「ん?いまなんて言った?もう一回言ってみな?せーのっ」


「え?えっと…もー!」


「あははははっ!」
何も言えなくなったあたしを見て大塚さんは大笑いする。


そんなからかわれたり
バカにされたりする
やりとりが大好きだった。
あたしより30㎝も背が高い
大塚さんにきゅんきゅんしながら
話すのが楽しくて仕方なかった。


やっぱり大塚さんはかっこいいや。

No.15

バイトが終わって更衣室で大塚さんと話していると、社員の矢野さんが声をかけてきた。
「おーい、じゃれてないで早く帰る支度しろ。そろそろ店閉めすんぞー」


「はーい!」
矢野さんに言われ、慌てて支度をする。


夜は社員1人、バイト2人で
お店をまわしているから
けっこう忙しかったりする。

うちの店は23時閉店。
バイトは17時〜閉店までと
仕事の時間が決まっている。

23時ってドラッグストアにしては
けっこう遅くまでやってると思う。
ドラッグストアの夜遅くの
営業はこのへんでは
めずらしいから、夜遅くでも
お客さんはけっこう来る。

…まぁ、繁盛してるってことだ。

No.16

「今日も忙しかったな。俺ぁ疲れたよ、伊吹ちゃん」
矢野さんがオヤジ臭く言う。


「…矢野さん、オヤジ臭いっすよ。」


「え?俺なんか臭う?いやね、新発売の洗剤さっそく使ってきたんだけど良くなかったかなぁ」
わざとらしくギャグをかます矢野さん。寒い、寒すぎる。


「そーゆう意味じゃなくて」
冷静に答えるあたし。


「わかてるよー、もぅ俺も25歳、おじさんだよ。伊吹ちゃんは若いねぇ。あー腹減った。さー早く帰ろうぜ」


「そうですね。俺も腹減りました」
大塚さんは笑いながらかばんを背負う。


矢野さんのマイペースに
振り回されながら
休憩室を出てバックヤードを通り
シャッターを開けて店の外に出る。


「あー今日も働いたっ」
外はまだちょっと肌寒い。


「よーし、オッケー。じゃーお前ら気をつけて帰れよ、お疲れ様!」
店の戸締まりをした矢野さんが手を挙げて帰っていった。

No.17

「はーい!お疲れ様でした」
矢野さんに挨拶して大塚さんが言った。


「俺らも帰るか」


「そうですね」


「夜道は気をつけるんだぞ。ホビットは小さいから車から見えづらくて危ないからな」


「またバカにして〜。ホビットってなんなんですかぁ」


「ホビットってゆうのはロード・オブ・ザ・リングに出てくるキャラクターだよ。ホビット族もあるんだぞ」


「へぇー。って、あたしはホビットじゃないっすよ」


「まぁまぁ、ホビット可愛いからいいじゃんか。冗談はさておき、ほんとに危ないから気をつけて帰れよ」
あたしの頭をぽんぽんとしながら優しく大塚さんは言った。


「はーい!じゃ、お疲れ様です」
恥ずかしくて大塚さんの顔を見れずに自転車に乗った。


「おー、お疲れ様〜」


…あれは反則だぜ、大塚さん。
キュン死にするっての。

一人で夜道を自転車でかっ飛ばしながら
「やっぱ大塚さんはかっこいいなぁ」
とつぶやいた。

No.18

家に着くと家は真っ暗。


「みんな寝ちゃったかぁ。ただいまー」
家に入り、戸締まりをする。


「あー疲れたぁ。ご飯食べて風呂入って寝よ。今日のご飯は…ハンバーグかぁ、おいしそー」


ばぁちゃんが用意してくれた
ご飯を食べて、お風呂に入って、
自分の部屋にきた時は
時間は0時30分。


「もうこんな時間かぁ。明日は1限からだからもう寝なきゃ」


ベッドに潜り込み、目を閉じた。

No.19

次の日。

あたしは朝の電車の中にいた。


『次は〜、××駅〜、××駅〜、お出口は左側です』


今日も学校。

介護福祉士になるため
専門学校に通い、
卒業と同時に資格を取って
老人ホームに就職する予定。

あと何年かは専門学校を
卒業と同時に介護福祉士の
資格がもらえることになっている。

いつか専門学校を卒業しても
資格がもらえなくなってしまったら
ただでさえ少ない介護士の人材が
さらに減ってしまうんだろうな。


『××駅〜、××駅〜』


「あ、降りなきゃ」
あたしはウォークマンで
音楽を聴きながら
電車を下りて駅の改札を出た。


すると後ろから、
「翠香ぁー」
と誰かに呼ばれた。

No.20

このデカい声は…早苗だ。


「早苗、おはよぉ」
イヤホンを外し、へらっと笑って挨拶する。


「おはぁ♪ねぇねぇ、一緒に学校行っていー?」


「当たり前じゃーん。一緒に行こ!」


「てか同じ電車だったんだね!全然気付かなかった〜」


「ね!あたしも気付かんかったよ」


そして早苗とたわいもない話しをしながら歩いているとあっという間に学校に着く。


「翠香、早苗、おはよー」


教室に入るなりクラスの友達から挨拶が飛び交う。


「おはよーぅ!」
早苗と一緒に挨拶を返す。
授業が始まるまであと20分。
朝から友達とバカな話しをして盛り上がる。


キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…


「あ、やべ、もう授業始まるね!」
みんなバタバタと席に着く。


そして先生が入ってきた。

No.21

「さぁ授業始めるよ」
先生が教卓の前に立つと
みんなガタガタと自分の席に戻る。


「今日はねー、クラスの係を決めるよ」
担任のあきちゃんこと西澤あきが言った。


一気にクラスがざわついた。


「何にしようか」
「めんどくさいのはやだな」
「一緒にやろうよ」

などの声が飛び交う。


「コラ!静かにっ!順番に決めてくからね。じゃぁまずクラス幹事だね」


とたんに、しーんと静まり返る教室。


「誰かいないのー?」
あきちゃんの声だけが響く。


「じゃー俺やります」
静寂を破り、誰かが挙手した。


「おーありがとう!」
あきちゃんが笑顔で
黒板にクラス幹事と
白いチョークで書かれた下に
名前を書いた。


『佐藤つばさ』

No.22

「つばさ頑張れよー!」
「お前偉いなー」

などという声が飛び交う。


「あとは女子!誰かいない?」

あきちゃんがそう言うと、
また教室がシーンと静まり返る。


クラス幹事なんてやったら
集まりやら行事の運営やらを
やらなくてはならないので、
めんどくさい事この上ない。

自ら手を挙げるなんて奴は
きっといないだろう。
(佐藤つばさは例外として)


さっきから視線を感じる…
あたりを見回すと…

つばさがこっちをじっと見ている。

No.23

「翠香、一緒にやらない?」
つばさが声をかけてきた。

「え!?あたし?無理無理!」
私は全身全霊で拒否した。

「翠香やればぁ?サークルの部長もやってるし向いてそー」
前の席に座っている早苗も便乗して言う。

「確かに!翠香やっちゃいなよ♪」
右隣に座っているももこまで…

「なにー?翠香やってくれんのー?」
あきちゃんが言ったとたん、クラス全員の視線が私に集中した。

「えっ!ちょっ!」
私は焦って弁解しようとしたが断りにくい雰囲気に押され、仕方なく承諾した。

「…わかったよぅ。やりますよぉ」

「ありがとー!」
「頑張ってねー!」
クラスから拍手が起きた。

「翠香、頑張ろうね」
つばさがニヤりとして言った。

あーぁ、なんでこんな事に…。

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