ワタシの来た道
もし私が突然この世を去る事になった時…
この自伝を誰か見つけてくれるかなぁ…
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✏
小学校からの親友、由布子は、東京の専門学校を卒業後、雑誌編集のデザイナーをしていた。
その由布子の影響もあってか、雑誌編集に興味を持った。
そちら方面で職を探し始めていたところ、ちょうど自分の趣味であるスポーツの雑誌の編集アシスタントを募集していた。
これだ‼
早速面接を受けてみることにした。
最寄り駅から歩いて15分程の雑居ビルの1階にその編集部はあった。
緊張しながら入り口の引き戸をノックした。
すると30代半ばの女性が出てきた。
「面接にお伺いしたのですが…」
「こちらにどうぞ。」
その女性に雑然とした室内の中程に通された。小さなテーブルとパイプ椅子があってそこに座って待っていると、すぐに中肉中背のたぶん同い年くらいの男性がやって来た。
「どうも。よろしくお願いしますね。じゃあ早速始めさせてもらいますね。」
「よろしくお願いします。」
それが、彼との最初の出逢いだった…
✏
「あ、僕は渡辺っていいます。編集部内は2チームに別れてて、その片方のチームのまとめ役みたいなことやってます。
はい。え~と、やってもらう仕事としては、編集部員が取材して来た原稿をパソコンに入力してもらったり、あと、こっちのチームはショップに取材に行くことが主なんで、それもやってもらいますね。」
「はい。」
「締め切り間近になると、ほぼ2週間くらい休み無しで、しかも夜は終電まで仕事、なんてこともあるけど大丈夫かな⁉」
「はい、大丈夫です。」
よく見ると、ちょっと誰かに似ている…
あ、あのアナウンサーか…
そんなことを考えながら、目の前の渡辺さんを見ていた。
その後も幾つか質問をされて、面接はあっさりと終わった。
そして、後日、合格の電話をもらった。
いざ、仕事を始めるとかなりハードだった。まあある程度由布子から聞いてわかってはいたのだけど…。
ちなみに私と同時期にバイトの子が2人、入社したのだが、2人とも数ヵ月で辞めてしまった。
とにかくバイトの入れ替わりは激しかった。
それは締め切り間近の忙しさもあったが、もうひとつ原因がある。
渡辺さんのモラハラだ。
✏
「だからさぁ~💢何でもオレに聞いてたら、あんたいる意味ないでしょ~⁉
自分で調べてやってよ💢」
同じチームの女性の先輩社員、佐藤さんへの怒号。渡辺さんの怒号は佐藤さんだけにではない。もう一人の先輩社員、田上さんにも暴言とも取れる発言が日常茶飯事。
存在自体を否定されているような…
特に締め切り間近はヒドイ。
私もよく怒鳴られた。
ただでさえパソコンに疎いのに、Macintoshなんて触ったことのない私にも容赦なく、イラストレーターを駆使した作業を要求された。
まあ、仕事なんだから当たり前といえば当たり前ですが…
仕事だから当たり前だからこそ、追い詰められてしまうような気もする…
それでも初めて自分が携わった本が出来上がって来た時は、やっぱり嬉しかった。
書店で見つけると、つい立ち止まって手に取ってみたりして…
そんな感じで、締め切り間近の胃の痛みに耐ながらも月日は流れて行った。
いつからかは忘れてしまったが、私はある変化に気付いた…
あんなにパワハラ全開の渡辺さんが気になって仕方ないのだ…
もちろんいつも怒ってばかりなワケではなく、普段は冗談も言ってチーム内でみんなで爆笑することもある。
そして、またいつものように、忙しい2週間が始まった。
その忙しさで、告白なんて無かったかのように、毎日仕事に追われた。まあ、渡辺さんは告白と捉えていたかは、❓だけど…
締め切り間近になると、男性軍は編集部に寝泊まりしていた。
渡辺さんもよく持参の寝袋で編集部の床にゴロ寝していた。
朝、出勤して渡辺さんの寝顔を密かに見つめる私でした…
ようやく怒涛の日々を終えて、私は3日間のお休みを貰えることになった。
夜の11時を過ぎた頃お風呂から上がりマッタリしていると、渡辺さんからメールが来た。
「やっと、終わりそうだよ。家に帰るのめんどくせ~から今日そこで寝かせて。」
え~⁉
どうしよう、部屋メチャクチャ汚い💧
渡辺さんはまだ最終的なチェックがあるようで来るのは深夜になるという。
とりあえず最低限の掃除をした。
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部屋の汚さを気にする前に、自分の貞操を気にしろよ‼
と、ツッコミたい今の自分がいますが、この時私は、渡辺さんはホントに自宅に帰るのが億劫で、自宅より近い自分のアパートに寝に来るだけだ、と思っていたのです。
渡辺さんは私に恋愛感情は無いことを薄々感じていたのもあるかもしれません。
ソワソワしつつ、部屋をチョビチョビ片付けながら渡辺さんからの連絡を待っていました。
結局メールが来たのは深夜1時過ぎ。
近所の街道沿いのデニーズで待ち合わせることに。
普段、深夜に出歩くコトがないので、徒歩数分の所ですが、ちょっとドキドキ…が、何の事件に巻き込まれることもなく、無事デニーズ到着。
ポテトとコーヒーをオーダーして待ちました。
ポテトが届いて数分後、渡辺さんから近くのコンビニに着いたとの電話。渡辺さんもデニーズに入るのかと思っていたら、コンビニで買い物してすぐウチに行くという…
急いでコーヒーを飲みきり、もったいないけど、ポテトは残して、私はデニーズを出てコンビニに向かった。
コンビニの駐車場に着くとちょうど渡辺さんが店の中から出てきた。
「お疲れさまです。」
「お疲れ。ほい。」
そう言って、渡辺さんはバイク(渡辺さんはいつも通勤にバイクを使っている)の荷台からメットを取って私に渡した。
「え⁉アタシも乗って行くんですか⁉」
「当たり前‼はい、乗って‼」
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渡辺さんはわりと大きめの排気量のバイクに乗っていた。
私はそれまでバイクの後ろに乗ったことは無かったので少し怖かった。
おそるおそるバイクに跨がり、渡辺さんの腰に腕をまわそうとすると…
「肩につかまれよ💢」
ちょっと恥ずかしかった💦
だって、よくカップルが彼の腰に腕をまわして、ひっついて乗ってるのみてたからぁ~💦
「いいか、アンタは自分は荷物だと思えよ。変な動きするとバランス崩れて倒れちゃうからね」
え~⁉💦できるかなぁ…
不安な気持ちもお構い無しに渡辺さんはバイクをスタートさせた。
自分は荷物だ‼と言い聞かせながら、でも、それってどうすりゃいいの⁉
そんなことを頭でグルグルさせながらもどうにかバイクは倒れずに済んだ。
いろんなことにドキドキしながらバイクはあっと言う間にアパートに着いた。
「お邪魔しま~す」
部屋に入っての第一声はやはり…
「汚ねぇ💧」
「だって突然すぎるんだもん💦」
「普段からキレイにしとけよ💢」
そういいながら渡辺さんはさっきコンビニで買ったらしいビールを取り出して飲み始めた。
「あ~もう疲れたよ。もう何日風呂入らなかったか、わかんねぇよ。やっとさっき入って来たよ」
どうやら編集部近くの銭湯に寄って来たらしい。
…が、私はまだこの時、まだ渡辺さんの目的に気付いてはいなかった…
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「そろそろ寝るかな。」
買ってきた2本のビールを飲み終えて渡辺さんが言った。
「じゃあ、お布団引くよ。」
お布団はもちろん1組しかないので、先に渡辺さんに寝てもらって、私は隣にゴロ寝するつもりだった…
「いいよ、こっち入れよ。」
渡辺さんは私のお布団に入りながら、半ば強引に私の腕を引っ張った。
「…え⁉いいよ。渡辺さん寝たらアタシも寝るから…」
そんな事はお構い無しに私は渡辺さんにされるがままに、布団に引ずり込まれ、抱きしめられた。
頭の中はパニックになりつつも、幸せだった。
大好きな人に抱き締められてる…
私も渡辺さんをギュッと抱き締めた…
すると渡辺さんは私のの顔を覗きこみ、静かに微笑みながら唇を重ねて来た…
初めてのキスだった…
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幸せな時間はすぐに終わりだった。
ウトウトして、目が覚めた私は、まだ眠っている渡辺さんを起こさないようにシャワーを浴びた。
シャワーを終えて部屋に戻ってすぐ、渡辺さんも目を覚ました。
そして私の格好をみるなり…
「ダサっ‼なんだよそれ」
「え⁉ダメっ⁉💦」
その時私はキャミみたいなワンピを着ていたのだが、それがダサかったらしい…まあ、私は全くセンス無い女なので…
「あ~、さてと帰るかな…」
「え⁉もう帰るの⁉」
「帰るよ。何の用があんだよ。」
私の中では一緒に朝ごはんを食べる気満々だったから、ちょっと寂しかった。
が、さっさと渡辺さんは身仕度を整え帰って行った…
…一体、なんだったんだろう…
でも、渡辺さんとのセックスはとても幸せだった。それは確か…
その日はずっと頭の中がボーっとしていて、気が付くと、そのコトばかりを思い出していた…
✏
2日後の誕生日は仕事になってしまった。
渡辺さんと会うのは少し気恥ずかしかったけど、お互い何も無かったかのように接した。
ちなみに誕生日だからと言って、プレゼントをもらうでも無いし、お祝いしてもらうでも無かった。
当たり前。私達は付き合っているわけではないのだから…
その後も時々渡辺さんはウチに来た。
夜にバイクで海に連れて行ってくれたこともあった。
その海で渡辺さんは自分に忘れられない女がいることを打ち明けてくれた。
…やっぱり私は単に都合よくヤレる女だった…
…それでも渡辺さんを嫌いにはならなかった…
だけど、確実に心は壊れつつあった…
それでもまた忙しい毎日は容赦なくやって来た。
日々の忙しさと渡辺さんへの気持ちをうまく消化できず、疲れ果てて行った。
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2泊程して東京に戻った。
東京を離れるということは仕事を辞めるということになる。
早めに伝えた方がいいと思い休み明けに渡辺さんに告げた。
怒られるだろうと思った、が、意外にもあっさりと承諾された。
でも、私が辞めるということは渡辺さんの負担がかなり増えるのは目に見えていた…
夏が過ぎ、秋の風が吹き始める頃、私は地元に戻ることにした。
少しずつ引越しの準備をした。
友達がお別れ会のような飲み会も開いてくれた。
正直、たくさんの友人と離れるのは寂しかった。
親友の由布子とも忙しくない週末は毎回のように遊んでいたのに、それも出来なくなる。
案の定、由布子は少しお怒りモードだった。
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「つまんな~い⤵りおんが居なくなったら遊ぶ人いないよ~💢」
「ごめんねぇ💦でも地元に帰ったらまたあそぼ。」
由布子にはいろいろ仕事の事から渡辺さんの事まで、遡れば、東京での10年間ずっとお世話になった。本当に一番の親友だ。
そして、東京を離れる日には貴子と香織が新幹線ホームまで見送りに来てくれた。
嬉しかった。
香織がくれた手作りメッセージフォトブックは秀逸の一品だ。
新幹線の中では香織からもらったフォトブックを読みながら、いろいろ思いだしながら、感傷に浸った。
これからの事も考えていた。
30代に入って収入も貯金もほとんど出来て無い、かといって結婚の予定も無い…
未来は暗かった…💧
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実家に戻って暫くニート生活をした。
30歳独身、職ナシ貯金ナシ女…悲惨だ…
この頃の両親の心配は相当だったと思う…💧
渡辺さんとは、たまにメールのやり取りをしていた。
渡辺さんの仕事量は相当増えていて、少し私も手伝うことにした。
メールでデータを送ってもらい、それを加工して送り返した。
少しでも渡辺さんと繋がっていたい気持ちがあった。まだ完全に吹っ切れてはいなかった。
さすがに遊んでばかりもいられないので、職安に行ってみた。
が、求人は少なかった。
とりあえず隣県のスキー場にリゾートバイトに行くことにした。
住み込みで4ヶ月。春まで働いた。
その後はまたニート💧
GWも普段と何ら変わらない…💧
そんなGWに渡辺さんからメールが来た。
「そっちに遊びに行くから、会おう」
…なんなんだろう…この複雑な気持ち…
嬉しいような、少し腹立たしいような…
✏
「おう。久しぶり。」
地元の道の駅に渡辺さんがバイクでやって来た。
とりあえず、道の駅で少しお互いの近況なんかを話しながら、休んだ。
「藤原(私)の実家見てみたいんだけど。」
「え~、いいけどなんもないよ。ただの山の中だよ。」
「いいよ。案内してよ。」
私は原チャリで来ていた。
ので、私の原チャリの後から渡辺さんが付いて走って、実家へと向かった。
20分程して、実家が見える、場所に着いた。
「へえ、あれかぁ」
さすがに、実家に上げるのは、なんだかな、と言う感じなので、
あえて誘わなかったし、渡辺さんもただ単にどんな所に住んでるのか見たかったようだった。
…でも、そこがナゾでもあるが…
その後また道の駅まで戻り、渡辺さんと別れた。
?だらけの再会だった…
✏
3ヶ月程した頃、私は仕事で右手を悪くしてしまった。
しかも、どうしても仕事に慣れず、辞めることにした。
あと数日で寮を出るというある日、携帯に知らない番号から電話がかかって来た。
普段知らない番号からかかってきても私は出ないのだが、あまりに同じ番号から掛かってくるので、おそるおそる出てみた。
「…もしもし⁉…」
「藤原ちゃん⁉オレ誰かわかる⁉」
「…え💧わかんないよ…誰⁉」
「○○工場の内藤で~す🎵」
「あ~…って、なんで番号知ってんの⁉」
どうやら、工場の事務室のような部屋にある連絡表を見て調べたらしい…若干呆れた。
「藤原ちゃんホントに辞めちゃうの⁉」
「うん。そうなんだ。」
「え~、辞めないでよ~」
「いや、もう決めたことだし…」
「さみし~⤵じゃあ今度遊ぼうよ」
「いいよ。あ、でも明後日にはウチに帰っちゃうケド(笑)」
✏
そのまま内藤君とは遊ぶ事もなく、私は実家に戻った。
またニート生活が始まった。
季節はまた冬に向かっていたので、またリゾバにしようか迷いつついたある日、内藤君から電話が掛かって来た。
工場で一緒に働いていた人と飲み会をするから、私も来て欲しいと言う…。
プータローの身でありながら飲み会…迷ったが、内藤君の押しに負け行く事にした。
最寄り駅まで内藤君が迎えに来てくれて、飲み会に参加するメンバーを乗せながら居酒屋に向かった。
居酒屋で飲んだ後はカラオケへ。
みんな結構酔っ払っていた。私もまあまあ。
そんな中、内藤君が黒夢の曲を歌いだした。内藤君はかなり好きらしい。
私は黒夢の曲はあまり知らなかった。
なんというタイトルかも忘れてしまったけど、なんだか歌詞が⁉
🎵「りおんとヤリタイ‼」
…そう、歌詞を変えて歌っていた…
しかもどんな告白の仕方じゃ…💧
いや、告白じゃないか…
付き合ってもないのに、最初からヤリタイ宣言かよ💧
まあ、酔っ払いのしたコトなので軽く流した。
✏
内藤君は自分より3歳歳下だった。
まさか歳下の男性と付き合うとは思ってもみなかった。
内藤君と付き合うことになり、やっぱり仕事は隣県のリゾートバイトにすることにした。その方が近いから頻繁に会える。
昨年とは違う、旅館風なところで住み込みで配膳や布団引きなどをする仕事だ。
しかし私の仕事がかなり忙しくあまり会えなかった。
初彼と過ごすクリスマス✨…も、仕事の都合で会えなかった⤵
せめて、年越しは一緒に過ごしたかったので、内藤君にバイト先付近まで来てもらうことにした。
大晦日の仕事を終えて内藤君と会った。
「久しぶり✨」
「うん。どうする⁉」
「ん~やっぱり行くトコって行ったらぁ…ねぇ⁉🎵」
「…ま、いいけど💕」
ラブホだった。内藤君とは、ほぼラブホデートだった。
私もそんなに嫌ではなかった。
あるひとつのコトを覗いて…
✏
ラブホに行くと決めたものの、お互い地元ではないので、とりあえず近辺を流しながら探した。
内藤君がやって来た時間が遅かったので、既にその頃には年が明けていた。
ちょっと住宅地を離れた山の方に道を進むと数件のラブホがあった。その内の一軒に車を入れた。
結構部屋はうまっていた。みんなすることは同じか…💧
どうにか空いている部屋があってそこに入った。
部屋は大して新しくもなく古くもなく、まあまあキレイ…なんだけど、何だか何か違和感が…が、まあ気のせいか、と思いつつテーブルの上を見ると…なぜか200円が…⁉
「…⁉」
「なんだろね…まあ、いいじゃん。りおん~💕」
ま、深く考えずイチャイチャ…
シャワーを浴びて久しぶりのエッチ。
内藤君とのエッチはぎこちなさはあるものの、渡辺さんより思いやりのあるエッチだったように思う…。
渡辺さんは、どちらかと言えば自分本位だった気がする…
少し休憩してホテルを出る事にした。そのラブホは出る際にフロントに電話して料金を支払うようだったので、内線を掛けた。
「いくらだろ⁉なんかこれ(料金表)見てもよくわかんないね。雅志お金ある⁉」
「なぁ~い。りおんオゴリでしょ⁉」
「…え~⁉またアタシ⁉💢」
✏
そう、いつも私がホテル代を出していた。
でもそんなんでケンカしたくなかったので、渋々出していた。
内線はなかなか繋がらなかった。
「何で出ないんだろ💢」
「じゃあさぁ、とりあえず外出てみる⁉そしたら車んトコまで取りにくるんじゃん⁉」
確かにこうしていても埒があかないので、とりあえず部屋を出ることにした。
車に乗って出口まで来た…が、な~んもだ~れもいない。そのまま敷地から出てしまった。
「…え~と…どこでお支払い⁉」
「なんか、払わなくていいんじゃね⁉」
「…あぁ~‼そうか、年越しで誰も従業員いないんじゃない⁉だから、あのテーブルの200円が…え゛~⁉じゃあ、あの部屋掃除してなかったって事⁉」
…気が付かなかった。にしてはキレイだったなぁ…あ~でも考えたくない‼誰かが寝た布団でなんて‼⤵
「ラッキー🎵」
(元々払う気なかったじゃん💢)
気持ち悪さに身震いする私の横で能天気に喜ぶ内藤君に少しイラついた。
✏
そんな内藤君との別れは、かなり早くやって来た。バレンタイン間近だったと思う。
バレンタインの予定を決めようと電話を掛けた。
呼び出し音がならず、すぐに留守電に切り替わる…と思っていたら、違うアナウンスが流れて来たのだ…
「この電話はお客様のご都合により、お繋ぎできません」
…着信拒否された…
何かの間違いか、今だけかもしれないと思い、メールを送ってみた。
メールは跳ね返されることなく、そのまま送信完了できた。
…が、全く返信はなかった…
あまりに突然過ぎて、しかも何の前触れもなくて、何が何だかわからなかった。
どのくらい経っていたかは忘れてしまったが、後日、内藤君と連絡が取れた。
しかし、そこではっきりと
「別れよう。」
と告げられた。
理由は言ってくれなかった。
わずか4ヶ月程の交際だった。
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内藤君との別れは辛かったが、だんだんと薄れていき、春になる頃にはさっぱりしていた。
そんなに好きじゃなかったのか⁉
そしてリゾートバイトを終えて実家へと戻った。
さすがにもう就職しないとヤバイ気がする…
就職まで行かなくても長くひとつのところで働きたい。
そう思い、実家を出て県庁所在地でもある○○市にアパートを借りることにした。
でも先に仕事を決めないとさすがにコワイので実家から、仕事とアパート同時進行で探した。
そこで見つけたのが、駅前のデパートの地下食品り場でのレジの仕事。またまた派遣ではあるが…
アパートもなかなかの部屋を見つけられた。
5月半ばに引越し。兄に手伝ってもらった。
そして6月上旬から勤務した。
職場は人間関係も良好で働き易い環境だった。
これなら腰据えて続けられそう…
そう思っていた。
✏
順調に仕事を覚えながら、季節は夏になりかけた頃だった。
母の妹、あさみオバチャンから私に見合いの話が来た。
実はあさみオバチャンからは今までも何人か紹介してもらっていた。
一人目は整体の医院を経営している三歳程年上の男性。
そんなに嫌な感じはしなかったが、初めて会った日にドライブをしたのだけど、ランチの時にビール飲んでた💦
あり得ない…と思ってる間に相手から断られた。
二人目は実家の農家で働く男性。
この人は趣味がパチンコだった⤵私は全くギャンブルはしないし、あまり彼氏にもやって欲しくは無いので、私から断った。
そんな感じの三人目なので大して期待はせず、ま、とりあえず会ってみっかなぁ~くらいの気持ちだった。
その日は梅雨の終わりかけの蒸し暑い日だった…
✏
その日私は、地元方面に向かう電車に乗って、あさみオバチャンとの待ち合わせ場所に行った。
駅に着くと、雨が降る前の重く暑苦しい感じだったのをよく覚えてる。
少し待つとあさみオバチャンがやって来て、車であさみオバチャンの知り合いの家に連れて行ってくれた。
そこはあさみオバチャンの知り合いの木下さんの家だった。
中に入ると、木下さん夫妻と見合い相手の男性が既に待っていた。
軽く挨拶を交わし、その男性を見た。
第一印象は…
「…悪くない…か…⁉」
歳は同じ32歳…そんなにオヤジ臭くなく、髪も派手過ぎない茶髪。
そんなことを考えながら、みんなでお茶を飲みつつ、お互いの話をした。
暫くして、木下さんが、
「じゃあ、せっかくだから二人で今日は夕御飯でも食べに行って。崇史君、りおんちゃんに美味しいもの食べさせてあげて。」
「あ、はい。」
木下さんにお礼の挨拶をし、私と見合い相手の崇史さんは木下さんの家を出た。
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外に出ると、雨が降り出していた。
崇史さんの車に乗り込もうとする傘の無い私に、崇史さんは傘を差してくれる、かと思いきや、すぐに運転席に行ってしまった…
やはり、そういう気遣いは無いよね💧あったら、たぶんもう結婚できてるよね。それだけが出来ない理由ではないだろうけど…
まあ、それはお互い様ってことで。
車で私の住んでる市に向かいながら、食事するお店を探しつつ行った。
車内ではそれなりに会話も弾んだ。
いろいろ話しているうちに、二人ともある漫画を好きな事がわかった。
「へえ~、あれ読んだんだ。オレもあの漫画好きで全巻持ってるよ。アニメのDVDも全部持ってるし。」
「あ、あたしは漫画は読んだことないんだ。ケーブルテレビでアニメやってて、それにハマって💦」
「じゃあ今度単行本貸すよ。まだ連載続いてるし。」
「ホントですかぁ⁉じゃあお願いします。」
なかなか順調な滑り出しだった。
✏
その日はチェーンの定食屋さんで夕食を食べて、アパートの近くまで送ってもらった。
とりあえずメルアドの交換をした。
そんなに悪い印象はなかったけど、時々、違和感はあった。
なんというか、普通ではない感触…💧
オタク臭いというか、…💧ん~うまく説明できないけど…
でもその違和感もさほど気にはならなかった。不思議なことに…。
数日後、本当に数日、たしか次の次の日位だったと思う。メールが来た。
「今日単行本持っていくね。」
はやっ、そして急だな。
そう思ったけどせっかくなので持ってきてもらうことにした。
その単行本は男性誌で連載しているもので、アニメで見ているのでストーリーはわかっているのだけど、面白くて一気によんでしまった。
メールもその漫画の話題で盛り上がった。
そんなこんなで私も崇史さんがだんだん好きになって行った。今までで一番いい感じ。
8月に入り、お盆休みにドライブに行こう、と誘われた。目的地は漫画の舞台になっている、ある温泉地の近く。
✏
朝から快晴で絶好のドライブ日和‼
気合い入れて普段は着ないワンピースなんか着ちゃったりして。
私は久々の遠出だったこともあり、かなりテンション上がっていた。
崇史さんは運転する時グラサンを掛けていて、それがなかなかカッコよくて好感度もかなり上昇していた。
目的地の温泉地に着いて、漫画のシーンに出てきた場所に行ってみたり、ロープウェイに乗ったり本当に楽しかった。
温泉にも入って大満足のドライブデートだった。
帰りの高速で、また行こうね、と盛り上がった。
「夏だし、花火とかみたいよね」
「あ、じゃあ明後日○○市で花火大会あるから、それ観に行こうよ。」
「いいねぇ。あ、でもアタシ仕事だから夕方からでもいい⁉」
「いいさあ。花火は夜なんだし。迎えに行くよ」
「わぁ~い。じゃ、きまり♪」
私の心はどんどん崇史さんに傾いていった。
✏
仕事を終えて、急いで待ち合わせの駅に向かった。
少し待つと崇史さんのステーションワゴンが駅のロータリーに入ってきた。
「お待たせ。」
「こんばんは♪」
花火大会の場所は高速で1時間位だった。
インターを降りると、既に花火は始まっていて、ところどころで花火が上がっているのが見えた。
その方向に車を走らせながら、駐車できそうな場所を探して行った。
少し行くとスーパーがあった。
飲みものも欲しかったので、その駐車場に止めさせてもらうことにした。
お茶を買って、そのまま歩いて、花火が出来るだけよく見える場所に移動した。
少し歩くとちょうどよい場所があったので、歩道の縁石に腰を下ろした。
「お~すごい✨キレイだねぇ~」
「いいねぇ~♪」
二人とも携帯で写真を撮ったりと盛り上がった。
暫くして気が付くと、崇史さんの手が私の肩にあった…
✏
「先にお風呂入っていいよ。」
「そう⁉じゃあ…」
崇史さんがお風呂に入っている間、ちょっと不安になった。
早かったかな⁉とか、軽いって思われたかな⁉とか。
そんな不安も、私もお風呂から上がって、崇史さんにお布団の上で抱き締められるときには吹き飛んでいた。
「好きだよ。」
「アタシも…」
崇史さんは終始優しくしてくれた。
以前、彼女いない歴=年齢と聞いていたけど、凄く思いやりのあるセックスだった…
…まあ、それには訳があることが後々判明するのですが…
その後崇史さんは頻繁に私の部屋に泊まった。
初めて彼氏彼女のよくある日常を体験して、凄く幸せな毎日だった。
いろんな所に出掛けた。
お互い、両親にも紹介しあった。
やがて季節は秋の気配が漂ってきた頃、崇史さんから衝撃発言が飛び出した。
✏
いつもの様に私の仕事が終わって、最寄り駅まで車で迎えに来てくれていた。
車に乗ってアパートに戻ろうとしていたときだった。
「実はさあ、周りから早く話を進めろって、せっつかれてるんだよねぇ…」
「は?ん?何の話⁉」あまりに突然話が始まったので思考が追いつかないワタシ…
「おばさん(木下さん=見合いをセッティングしてくれた人です)のお姉さんが、オレの母親の兄の奥さんで、その人が凄いウルサイ人で、早く話進めろってウルサイんだよね。…だから、りおんちゃんさえよかったら…あの…」
「…ん…つまり…結婚…てこと⁉」
「うん…」
え~⁉早っ‼だって出会ってまだ3ヶ月も経ってないよ⁉
心の中でそう叫ぶ自分…
私としては1年くらい付き合ってみて、そこで初めて結婚について考えてみようかな、と思っていた。
「ちょ、ちょ、ちょっとその返事は考えさせて…」
「うん、わかったよ」
まさかの展開…
✏
とりあえず親友の由布子に相談してみた。
「まあ、でもタイミングってのもあるからねぇ…ま、最終的にはりおんがどうするか、、りおんの気持ちだわな。」
ごもっとも。
私は崇史さんとの結婚後を想像してみた。
なるべく冷静に。
崇史さんはギャンブルはしない。酒はあまり飲めない。タバコもやらない。
音楽の趣味は合わないけど、車やバイクが好きで、私も結構好きなので、そこは共通の話題にはなりそう。
う~ん。でも今すぐ決めなくたたっていい気が…
その私の気持ちそのまんまを崇史さんに伝えた。
「まあ、それもそうなんだけど、…でも、結婚してから(ふたりで)恋愛したっていいじゃん。」
今の私なら
「結婚したら恋愛ごっこどころじゃねぇよ💦」
と言いそうだけど、当事の私は妙にその崇史さんの言葉に納得していた。
「そうだよね…。」
「え、じゃあ話進めちゃっていい⁉」
「うん。」
こうして、私と崇史さんは結婚へと突き進むことになった。
✏
それからは結納やら、式の準備やらに忙しくなった。
そんな中で、私はあるコトに気づき始めていた…
結婚が決まって、いろいろと決めなきゃいけない事が多くあるなかで、崇史さんの発言にに気になる点があった。
そのキーワードは
「親」
だった。
まず、私には何の相談もなく、勝手に仲人をたてることになっていた。世間では、あまり仲人の「な」の字も聞かなくなりつつあったが…
どうやら「親」の意向らしい…
更には結婚式場。
普通なら2人でいろいろとまわって、料理の試食もしたりして決めるのが一般的だと思う。が、私達の場合は違った…
「式場は○○苑てとこでいいよね。今度の日曜に打ち合わせだから。」
…どうやら、その式場は毎月積み立てをしているとかなり安く使用できるシステムで、その事もあってそこに決めたらしい…
それも「親」の意向がかなり入ったものであるのは確かだった。
ま、私は式はやってもやらなくてもどっちでもイイ、という人なので、あえて反対はしなかった。
そして式場に初めて打ち合わせに行くという時、私にはかなりショッキングな出来事が待っていた…
✏
「え⁉二人で⁉」
崇史さんの車で式場に行く途中、崇史さんの両親も打ち合わせに同席する事を聞いた。
「うん。いろいろあるしね。」
かなりビックリ…でも、情けない話ではあるけど、崇史さんも私も親に金銭面で頼らなければならない事実は否めない。
また崇史さんは一人っ子の為、親戚関係の手前、披露宴をやらないわけにもいかない、というのも理解できる(今まで呼ばれているので)。
だけど、今になってみると両親が同席したのも頷ける…
徐々にわかったのだが、さすが独りっ子の箱入り息子‼世間知らずだった⤵
かといって、崇史さんに冷めたわけではなく、私は崇史さんの中では、世界の中心は両親(比重としては母親が上)であることを肝に命じたのでした。
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36レス 948HIT コラムニストさん -
こちら続きです(;^ω^) フーリーヘイド
キマッたっ!!!!!!!!!(;^ω^) いやぁ~~~~!!我な…(saizou_2nd)
347レス 4102HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
フーリーヘイド 本編
もの凄く簡単にカナの守護を例えるならば、 あなたの心臓を体外へ出…(saizou_2nd)
25レス 222HIT saizou_2nd (40代 ♂)
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20世紀少年
2レス 116HIT コラムニストさん -
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フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
500レス 5778HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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おとといきやがれ
9レス 289HIT 関柚衣 -
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ウーマンニーズラブ
500レス 3251HIT 作家さん -
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やさしい木漏れ日
84レス 3706HIT 苺レモンミルク
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20世紀少年
1961 生まれは 東京葛飾 駅でいうと金町 親父が働いて…(コラムニストさん0)
2レス 116HIT コラムニストさん -
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ウーマンニーズラブ
聖子の旦那が有能な家政婦さんを雇ったおかげで聖子不在だった機能不全の家…(作家さん0)
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フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
やはり女性は私に気が付いている様である。 とりあえず今は、 …(saizou_2nd)
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今日もくもり
たまにふと思う。 俺が生きていたら何をしていたんだろうって。 …(旅人さん0)
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おとといきやがれ
次から老人が書いてる小説の内容です。(関柚衣)
9レス 289HIT 関柚衣
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