[クローバー]キンモクセイ[クローバー]

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2015/07/23 03:12(更新日時)

あの時ああすれば…。もっと違った未来があったのか…。

後悔なんてしたくない…一度きりの人生だから。



はじめての携帯小説で未熟な文章ですが時間のある時に少しづつ更新したいと思います☺読んで頂ければ幸いです。


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No.1776650 (スレ作成日時)

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No.51

私は、嬉しい言葉に戸惑いを隠しながら、たっちゃんにかける言葉を探していた。


優しいたっちゃん、みんなは知らない寂しがりやなたっちゃん…。

私は、たっちゃんの事をどう思っているんだろう?

嫌いじゃないけど、嫌いじゃないけど…。

好きなの?…もちろん、友達としては好きに決まっている。

決まっているけれど…。

私の胸の内を知ってか知らずか、たっちゃんは“俺の事をどう思っているか?”とは聞いて来なかった。

たっちゃんは私の傍に来て、顔の左側の髪の毛をかきあげて、耳とうなじに軽くキスをした。

私は少しうつむいて、「昼間だよ…。人に見られちゃうよ」と言ったが、夕べのように身を引いたりしなかった。

たっちゃんは「うん。」とだけ言った。

なんで拒否しないのだろう…。自分でも分からなかった。

たっちゃんを傷つけたくなかった。

他の人から見たら私達はどう見られているんだろう。彼氏と彼女…なんだよね、きっと。

No.52

文化祭が終わると、一気に受験ムード一色になった。

翌日も、その翌日もリエと妙子にたっちゃんとの事を話そうと思いつつ、なんとなく、ゆっくり話せないでいた。

どちらの教室の生徒達も、休み時間でも“出る単語”や参考書を写したりしている。たいていは各自、受験用マイノートを作っており、それを多いに活用していた。


今日こそは、 リエと妙子にも話さなくちゃ…。と決心して、「リエと妙子、今、ちょっといい?」

そう言って二人を廊下に連れ出した。


「実は私、今、たっちゃんと付き合ってるの」と言うとリエは「えっ?ホントにぃ?!」と少し興奮気味に目を丸くした。

妙子は「そうなんだ。」と、なぜか少し冷ややかだった。

こんな時期に…って妙子に軽蔑されちゃうかなぁ。

リエが興奮覚めやらず、興味深々に聞くので、文化祭の打ち上げの後に一緒に帰って、翌日に告白された。とだけ簡単に話した。

「へぇいずみ、良かったじゃない。ねぇ~、妙子」とリエはまだ盛り上がっている。

「うん…。ちゃんと受験勉強もしなさいよ!」

良かった、いつもの妙子だ。私の気にしすぎだったんだ。

チャイムがなって銘々の教室に帰っていった。

No.53

12月に入り、街はクリスマスムードで赤や緑、金のモールでデコレーションされていた。

この季節はいやが応でもウキウキした気分になる。

まして、今年はたっちゃんと一緒だ。


ワムの“ラストクリスマス”や山下達郎の“クリスマスイブ”があちこちで聴こえる。


バイト先でも年末特別メニューが目を引く。

石井さんとは休憩がほとんど一緒にならず、私の中で、彼の存在は“優しいお兄さん的な存在”として位置づけられていた。


たっちゃんはバイト上がりに迎えに来てくれたりして、夜道を一緒に帰った。

いつも、たっちゃんは私に「好きだよ。どこにも行くなよ。」と熱いキスをしてくれた。

寂しがりやなたっちゃん。私は、そんなたっちゃんを受け入れていた。


けれど、学校では、なんとなく距離を置いていた…。

私は、やっぱり、軽音楽部の佐藤佳奈ちゃんの事が気になり、たっちゃんと一緒にいる事を避けていた。

たっちゃんもなんとなく、リエと妙子に遠慮しているようだった。

二人だけの関係…みたいだった。

No.54

どんよりとした雲りの日曜日だった。朝から気温もほとんど上がらない。

首都圏ではそろそろ初雪が降る頃だ。朝の天気予報でも『山沿いでは所によって雪になるでしょう』と言っていた。

バイト行きたくないなぁ~。でも、バイトも年内でとりあえず終わりだ。

当たり前だ。この時期までバイトなんて…。みんなに言われたが、絶対に現役合格してみせる。アタシはやる時はやるよ。

たっちゃんともイチャイチャしている場合じゃないな。

でもクリスマスプレゼントはそろそろ決めないと。


冬用のコートを着込んでマフラーをして、バイトへ出かけた。


バイト先に着くとランチの片付けをしている所を手伝った。

珍しく石井さんがランチからいた。

「この時間、石井さんが入っているの珍しいですね」

「あぁ、笹山さんが風邪ひいて厨房の人がいないから呼び出されたんだよ」

「そうなんですか」

笹山さんは小太りなパートのおばちゃんで私とは、時間帯があまり一緒にならず、ほとんど口を聞いた事がない。

3時を過ぎると急に暇になった。

「いずみちゃん、休憩入るか?」

「ハイ、 じゃ、先に入らせていただきます。」

No.55

「俺も休憩入ろうっと」

休憩室で並んで座った。

シフト表を見ながら「24日、25日も石井さんはバイト入っているんですね」と聞いてみた。

「あぁ、用事ないしね。いずみちゃんはデートかな。」

「えっ?」

石井さんこそ恵子さんとデートじゃないの?

「だって、バイト上がりに迎えに来てるだろう?いや~、ゴミ出しに裏に行ったらちょうど見かけたから。あれ、彼氏だよね。」

「知ってたんですか?」

石井さんに知られて恥ずかしいのか…、『そうなですよ!』と自慢出来なかった。

私は、いい言葉が見つからず、ストローで氷をカチャカチャ、ぐるぐるかき回した。

「石井さんこそ、恵子さんとデートじゃないんですか?」

半分やけっぱちになって、今まで聞けなかった言葉が口をついて出てきた。

「俺が?何で恵子ちゃんと?」

「だって、石井さん、恵子さんと付き合ってるんじゃないんですか?」

「誰がそんなこと言ったのかなぁ…?いずみちゃん、誰から聞いたの?」

「いぇ、誰も…。ただ、前に石井さんが恵子さんにお金とか鍵とか渡して」

「いつの話だろう…。」石井さんは嘘をついたりしらばっくれている素振りではなく、思い出している風だ。


No.56

>> 37 「さっきは選んでくれてありがとう」男子の二番席に座っていた子にお礼を言った。 「あっ、別に。小久保さんって面白いから…。」 「ありがとう… 主です。

二番の子➡1番の席の子でしたね💦

ちょこちょこ誤字脱字があり、読みづらく申し訳ありません💧


もし、継続して読んで頂いている方がいらっしゃっいましたら、皆さんの溢れるばかりの想像力と、優れた読解力で解釈をして頂き、寛大なお心を持って、ご容赦くださいませ🙇

本文を逸れてしまいスミマセン💦

今後とも宜しくお願い致します☺✨


No.57

それって、いずみちゃん、多分、恵子ちゃんが合鍵忘れた日だな。」

合鍵!やっぱり。

私が、“合鍵”と言う言葉に敏感に反応したためか慌てて石井さんは付け加えた。

「違う違う。合鍵って、俺と恵子ちゃんのじゃないよ。秋田さんのだよ。」

「秋田さん?って、誰ですか?」

何が何だか訳が分からない。

休憩時間が終わるので、石井さんはとりあえず二人分のタイムカードを打刻した。

それを見て、私が、席を立ちあがろうとすると、石井さんは「まだ大丈夫だよ。お客さん来てないし、コップだけ片付けるから、座っていなよ」と言う。

私は、ただ座っていると悪い気がして、お店のキャンペーンチラシを折りながら石井さんと話を続けた。

石井さんは「いい?」と言って煙草に火を付けた。

「秋田さんって言うのは、恵子ちゃんの彼氏で今、俺と住んでいるんだ。俺の高校の先輩でさぁ、こっちにくるときに世話してくれたんだよ。あの日は恵子ちゃんが鍵忘れたって言うから貸したんだよ。お金はさぁ『買い物ある?』って恵子ちゃんに聞かれて、煙草とビールを頼んだよ。」

な~んだ。『そうだったんですね!』すぐに言おうとしたのに言葉が出てこない。


No.58

わざとではなかったのだか、黙っていると「な~んだ、いずみちゃん。俺と恵子ちゃんにやきもち焼いていたのかぁ?アハハ」

石井さんは、おもむろに立ち上がり、人の頭をポンポンと叩いた。

「そんなんじゃないですよ!」

子ども扱いされて、ちょっと腹がたった。

「そうだよな。いずみちゃんは、彼氏がいるんだもんな~」石井さんは意地悪っぽく言う。

煙草の火を消しながら立ち上がり、少し声のトーンを抑えぎみにこう言った。

「彼氏とは、Hまだなんだろう…?」

「も~、からかわないでください!」頬がカッと紅くなった。

冗談半分、ニヤニヤしながら厨房に向かう石井さんの背中を拳でダンダンと叩いた。

完全に馬鹿にされている。


何よ!何よ!

石井さんから見たら、どうせ私は、お子ちゃまな高校生だ。

悔しいのか、腹が立つのか、恥ずかしいのか、分からない感情が込み上げてきた。

いつもなら、たまにかます石井さんの下ネタやHなギャグにも『やだぁ~、石井さんってばエッチ』とかなんとか言ってかわせるものを…。今日は、違った。

何を真に受けてムキになっているのだろう?

恵子さんの話を聞いたから?たっちゃんの話をされたから?

多分、どちらも違う。

No.59

石井さんと恵子さんって付き合っているんじゃなかったんだ。

安心した様な気持ちの反面、ずっとそう思いこんでいた幼稚な自分、石井さんに馬鹿にされた幼い自分に腹がたった。

高校を卒業すれば、私も恵子さんの様に大人になれるのだろうか。

バイト中、いろんな事を考えていた。


たっちゃんが迎えに来てくれた。

今日は、さっさと帰ってしまいたい気分だったが、たっちゃんに思いっきり甘えたい気分もあった。

結局、いつもの様に家の近くの公園で少し話をする為に立ち寄った。

いつもの様に唇を重ねる。コートのボタンを一つ二つ、三つ…外されキスをされた。

たっちゃんの手が腰の辺りに伸びてそのままセーターとシャツの下に入りこんだ。

たっちゃんの手の冷たい感覚。

ブラジャーのホックを外された。

私は、とっさに「たっちゃん、嫌…。駄目だよ」と手を払いのけた。

「ゴメン…。でも、いずみの温もり…あったかい」

たっちゃんは、再び手を腰の辺りに置いて、私の事を抱きしめていた。


No.60

翌日、リエと妙子に石井さんと恵子さんの事は、私の勘違いだったと話をした。

リエは「良かったじゃん。やっぱり誤解だったんだぁ」と肘で私の事をつっつく。

妙子は「…で、どうするの?」と腕組をしている。

どうするの?

「どうするのって、何が?」

「だから、達也くんとどうするのよ?いずみは、石井さんが好きなんでしょ…」

妙子が言い終えるか終えないかのウチに「違う!気になっていたけど、別にもういいの。今はたっちゃんの事が好きだもん」

私がそう言うと、二つは顔を見合わせて、「いずみが決めたのなら…」と言った。


よく考えたら、石井さんが恵子さんと付き合っていようといまいと、私には関係のない事だ。

どうするの…何て私が、どうこう出来る問題ではない。

受験まで1ヶ月余りになった。

期末テストが返された。日本史と漢文は最悪だったが、数Ⅱ・生物・英文はやっと人並みの点数が取れるようになった。

特に現代文と古文ⅠⅡは学年のトップクラスになった。

私は、“下手な鉄砲、数打ちゃ当たる”方式で、受験日が重ならない限りの学費免除の看護学校を、ほぼ全て受験するような日程を組んでいた。


No.61

その翌日、たっちゃんが学校を休んだと聞いた。

家に電話をすると「あぁ、いずみか。心配してくれてサンキューな。朝起きたら、頭が痛くて二度寝したら、10時すぎだったから、今から行くのもなぁーって、休んだんだ。」

「大丈夫なの?何か差し入れしに行ってあげるね。たっちゃんのお父さんは仕事なんでしょう?何か食べたいものある?」

「食べたいもの?…いずみかな」

「馬鹿!また冗談言って!ウイルスが脳にまわってるみたいね。あっ、元々かぁ~?」

具合はそれほど悪くなさそうだが、お母さんのいないたっちゃんは、寂しい思いをしているに違いない。

林檎とバナナを自転車のかごに積んで、たっちゃんの家に向かった。

それから、途中でたこ焼きを買った。


たっちゃんの家は県営の団地だった。けっこう大きな団地で20棟位あり、はじめは迷ったが、来るのはこれで五回目なので、管理棟を目印に、団地内の公園を曲がり…とすんなり来られた。

呼び鈴をならし、「ハイ 」と声がした。

たっちゃんのお父さんかな…と思い「小久保です」と言ったが、お父さんは仕事って言っていたっけ…と思い出した。

No.62

ドアが開いた。スウェット姿のたっちゃんが立っていた。

「たっちゃんのお父さんの声かと思ったよ。いつもより低い声なんだもん。」

「いずみかな…って思っていたけど、誰か分からないのに、ウキウキした声出せないだろう。団地のオバチャンだったら恥ずかしいじゃん。散らかっているけど上がって」

「うん、お邪魔します」

いつもは玄関で立ち話をして帰ってしまっていたので、たっちゃんのウチにあがるのは初めてだった。

あんまりキョロキョロ見ては失礼だと思って、神妙なフリをした。

たっちゃんの部屋に案内された。

たっちゃんの部屋の片隅にはべースと車のエンジン。押し入れの前にヤングジャンプやサンデーなどの雑誌があった。

年頃の男の子ってこういうのに興味があるんだな。

私には弟がいたけどまだ中学生になったばかりでこういうのより、まだまだ友達との野球やサッカーに興味があるようだ。

「たっちゃん、思ったより元気そうだね。風邪じゃないみたい?」

「うん、ただの偏頭痛だったみたいだ。」

「それなら良かった。温かいうちに、たこ焼き食べちゃおうよ。」

「あぁ、サンキューな。」

二人でたこ焼きをほうばった。


No.63

たこ焼きを食べ終わり、林檎をむいた。

「たっちゃん、包丁と借りるね~。お皿も借りていい?」

男性の二人暮らしは、食器類の数も少なく、寂しい日常を連想させた。

包丁のキレ味もいま一つで、普段は台所であまり調理をしないのが容易に想像できた。

林檎を食べながらたっちゃんと雑談をした。

「いずみ、二学期の成績はどうなんだよ?」
私は、よくぞ聞いてくれました とばかりにピースをした。

「まじで?バイトとかやってるじゃん」たっちゃんは驚いてるというか、半分疑っていた。

「やっと何が分からないかが分かってきたの!」

「なんだそれ?」

「前は、分からない所が分からなかったんだけど、今は分からない所が分かるから、そこを重点的に勉強しているんだ。それでも、やっと人並みだけど…」

ピースサインは大袈裟だったかなぁ…と思って、私は、ペロッと舌をだした。


模試の結果もギリギリ合格ラインの看護学校が2校位ある と話をした。

「ふ~ん。頑張ってるんだな。最初から諦めている俺とは違うな」

「私、諦めが悪いタイプなの。あと、悪運が強いから、最後に拾ってくれる所があるかなって」

「悪運ってなんだよ。受験は運だって言うのは聞いた事あるけど、悪運って言うのは聞かないぞ~。」

そんな話をしながら、二人でゲラゲラ笑った。

No.64

笑った後は沈黙になった。

私は、沈黙に耐えられず。

「たっちゃん、お皿下げるね。」と台所へ行った。

戻ってくると、おもむろに棚のオーディオ機器のところへ行き「へ~、“ガンズ・アンド・ローゼズ”とか、名前だけは聞いた事がある。」と曲のタイトルを読み上げたりしていた。

たっちゃんは「いずみ?」と言いながら、両肩に手を置いてクルリと私を振り向かせた。

たっちゃんにキスされるんだ。と分かっていた。

キスされながら、たっちゃんは、カーディガンのボタンを外す。

私は、「駄目だよ。」といいながも服を着直さなかった。

いつも、“これ以上は”と、やめてと言ってきたが、今日は仕方ない とどこかで思っているような自分がいる。

「お父さん帰ってくるよ」

「帰ってこないよ。大丈夫。」

私は、何かを怖がっていた。

No.65

どのくらいの時間がたっただろう。そう長くはないはずだ。

私は、小さな毛布をかけられ横たわっていた。

たっちゃんは後ろを向いてゴムを外しながら、ティッシュを取り出しゴソゴソとやっていた。

二人の息で窓ガラスが曇っていた。

初めての経験というものはこんなものなのだろうか?

過度な期待を持っていたわけでも、空想を抱いていたわけでもなかったが、身体を重ねれば、もっといとおしさが増し、二人の距離が縮まるものだと思っていた。

たっちゃんと身体が密接した余韻は残っていたけれど、気持は虚無なものだった。

心と身体が解離していた。

私は、下着をつけ直して服を着た。


No.66

服を着ている私に向かい、たっちゃんは、「何か飲むか」と聞いた。

「お水、一杯もらえる?」とコップに一杯だけ水をもらった。

たっちゃんはこの後どうしようか…といった風だったので、私から、「そろそろ 暗くならないうちに帰るね。」と言った。

「そうか、それなら送って行くよ」

「大丈夫。学校休んだのにフラフラしていちゃ駄目だよ。」ともっともらしい事を言ったが、ホントは一人で帰りたかった。


靴を履き、ドアを閉める。
「じゃあな」
「うん。じゃあ」

外はまだ西日が残っていた。まだ昼間の暖かさのおこぼれで思ったほど寒くはない。

日が落ちたらとたんに寒くなるんだろうな…と思いながら自転車を足早にこいだ。



『や~きいも~、石や~きいも』焼き芋屋さんのトラックの横を通り過ぎる時に足を止めた。

「スミマセン、1000円分ください。オマケしてくださいね。」

「あいよ、お姉ちゃん。オマケしておくよ。熱いからね」真っ黒でシワシワなおじさんの手から焼き芋の入った茶色い紙袋を受け取った。

ホントに熱くて、手では持てずにマフラーの上に置いてもらった。

商店街で育った私は、こういうやりとりが好きだった。

特に焼き芋を買いたい訳ではなかったが、今日の出来事からまったく関係のない日常に近づきたかったのかもしれない。

No.67

家につく頃には焼き芋の紙袋も荒熱が取れていた。

予想外のお土産に、妹と弟は
「姉ちゃんありがとう。やったラッキー」と言った具合に無邪気に騒いでいた。

母は「あら、アンタ珍しいじゃない」と騒ぎを聞きつけて、横からチャチャをいれた。

「うん。バイト代入ったし、たまにはね」と言い、私は、二階へ上がっていった。

狭い家だ。
もちろん、自分の部屋もない。それでも、もし受験に合格したら寮生活が始まるんだなぁと思ったら、愛着を感じずには、いられなかった。

私は受験校を全て女子寮完備のところを選んだ。

多分、缶詰にでもされない限り、看護学校に受かったところで、ちゃんと勉強しないのではないかという自分の性格を理解しての事だった。

夜にたっちゃんから電話があったが、何を話したか、あまり覚えていない。

テレビではフライドチキンの予約のCMで『クリスマスのご予約はお早めに』と言っていた。

No.68

クリスマスまであと一週間あまりだった。

自分の中では、きっと答えは出ている。

それを最終的に認めたくない私がいた。

『たっちゃんの事が好きだ』という気持ちは、何らかの手段で“確認”しなければ分からないほどの不確かなものだった。

自分の気持ちが偽善であることの確証を得ることが嫌で答えを先伸ばししていた。

ずるい。私は、ずるい。

たっちゃんの優しさに甘えて、楽な方を選んだくせに、こうやって自分が心を痛めている…フリをしている。

人の優しさに答えないのは、罪だか、中途半端な優しさはそれ以上に罪かもしれない。


たっちゃんから電話があった。

「いずみ、クリスマスどうする?何か食いたいものとかある?」

「ごめんね、たっちゃん。急にバイトが入っちゃたの」

私は、嘘をついた。クリスマスはたっちゃんとは過ごせない。

この時に私のなかで、たっちゃんとの関係が終わった。

それは、一冊の本を読み終えてパタンと閉じるように。


No.69

たっちゃんは案の定、クリスマスイヴに、なんで急にバイトが入ったのかと私を責めた。

私は、謝る他なかった。

夕方、バイト先に電話をかけ『24日と25日、人出が足りない様なら、私、出られます』と言うと店長に『それは助かる。頼む』と言われた。

バイトの予定を今になって入れたのは、辻褄合わせではなく、たっちゃんへの自責の念にかられたからだ。


その翌日、たっちゃんから、『一緒に帰れるか?』と聞かれて小さく頷いた。

お互いに黙って自転車をこいだ。

「どうしたの?何か言いたい事あるんだろう?この間、俺んちでした事を後悔しているのか?イヤだったなら無理しなくて良かったのに。それとも…。」

そう言われて、涙が溢れてきた。駄目だ。泣いたらたっちゃんを責める事になってしまう。

「そういうんじゃないの…。ごめんね」

「前に言っていた、“気になる奴”が関係しているのか?」

たっちゃんは付き合ってから一度もその事には触れなかったが、ずっと気にしていた…という素振りだった。

石井さんの事なんて今はどうでもよかった。私は、泣くのをこらえたが、たっちゃんの気持ちを考えるとずっと裏切ってきたようで自分が許せなく、余計に涙が溢れてきた。

No.70

思っきり罵倒されたら、どんなにか楽だったろう。

たっちゃんは大好きだ。それは嘘ではない。

でもそれは愛情ではない。友情なのか同情なのか、今更、判明させるつもりもない。

私が泣いているのを見て、たっちゃんは「いずみは、俺とは友達の方が良かったと思っているんだろう?…もういいよ。」と諦めにも近いように言った。

私は、頷かなかった。ただ黙ってうつむいて聞いていた。

「たっちゃん。あのね…」私が涙声で口を開くと、
「もういいよっていってるだろう!」荒々しい口調でたっちゃんはいい放った。

私は、一瞬、ビクッとしたが、「ごめんなさい」とボソリと言うと、たっちゃんは無言で
伏し目がちに頷いた…様な気がした。

そして、どちらともなく、
「じゃあ」
「じゃあね」と言って私達は別れた。これがピリオドだった。


No.71

失恋したんだ。そうだ私は、失恋したんだ。

誰が自分に『貴方は昨日、彼と別れたんですよ。貴方が選んだ事なんですよ』と言われているような感じで目が覚めた。

🎵雨音に気づいて…遅く起きた朝は、まだベッドの中で…半分眠りたい。🎵

ユーミンの唄の歌詞を思い出した。確か“12月の雨”と言う唄だ。

雨は降っていなかった。遅く起きてもいない。ベッドでなく布団だ。

共通点は“12月”と“半分眠りたい”だけだった。

泣き腫らして瞼が重い。少し頭痛もする。

元来、私は丈夫な質なので多分、気持ちの問題も大きいのだろう…と言い聞かせて支度をする。

曲はこう続く
🎵もうすぐ来るクリスマス、思い出の日には、『また会おう』と言った。もう会えないクセに…。🎵


あぁ。人は自分の心情と同調を求めて音楽を選ぶ事がある。

自分の気持ちの代弁者を探しているのだろう。

いつの世にも恋愛ソングが流行るのは、自分の気持ちを誰かが代わりに唄ってくれるからなんだ。

「いってきます」

気持ちに外して、冬晴れの空だ。凜とした空気が襟をただしてくれた。

リエと妙子に話そう…と思いながら自転車で学校へ向かった。

No.72

教室に着くとクラスの子に「いずみ、目、赤いよ。大丈夫?」と泣き腫らした顔つきを心配された。

“受験の事で親ともめた”と言うとみんな納得していた。

実際にはウチの親は、勉強の事に一度も口を出した事はない。

それは、私の出来が良いという事ではなく。ウチの親は“なるようにしかならない”と思っているらしいからだ。

部活動においても、ウチの親より商店街のおじいちゃんやおばちゃんの方が私の事を熱心に応援してくれていた。

『いずみちゃん、新聞の隅に載ってわよね。おばちゃん、読んだわよ。お母さん達も自慢の娘よねぇ』とこんな具合だ。

両親はそういう事を自慢に思わないようだ。

それよりも、近所のおばちゃんが腰を痛めて、家まで送り届けてあげた時の方が、格段に誉められた。



短縮授業となり、四時限目を終えると、下校となった。

1、2年生は部活動で残っている生徒も多いが、3年は早々と帰宅する。


リエと妙子を捕まえて、たっちゃんとの事を話をした。

リエは「なんでぇ~?」と少しびっくりした様子だったけれど、妙子は「そっかぁ…。」と言った反応だった。

二人とも予想どおりのリアクションで、私は、少しだけ安心した。

No.73

それから毎晩、10時になると家の電話が鳴った。

私が出ると、少しして無言で切れてしまう。

よくたっちゃんから電話がかかってきていた時間帯だった。


多分、たっちゃんかもしれないと、思ったが、受話器に向かっては「もしもし。どちら様ですか」としか聞かなかった。

『たっちゃんなの?』と聞きたい気持ちはもちろんあったが、違ったら相手にも、疑ったたっちゃんにも失礼だと思った。

それに何よりも、まだ未練があると誤解させるのが酷だと思った。


二学期の終業式が終わると、三学期は受験体制となり自由登校日が増えるから、次にクラス全員が集まるのは事実上は卒業式になる。

私は、たっちゃんと別れた後は“受験一筋”と言う様に自分に渇を入れていた。

リエは年が開ければ短大の受験日程が詰まっており、時期を重なる様ににして、妙子のセンター試験。私の看護学校の受験日程の幕開けだった。


No.74

クリスマスに浮かれている余裕はなかったが、リエと妙子が私のバイトの日を避けてくれて、三人で1日早めのクリスマス会をした。

プレゼント交換を行い、リエからはテディベアの小さなぬいぐるみ、妙子からはサザビーの革のコインケースをもらった。

私は、二人にカボティーヌの小さな香水とハンドタオルをプレゼントした。

私らしくないプレゼントに、妙子が「いずみも男と付き合った経験があると、選ぶものが違うね~」とからかった。

「いらないなら、私がこの香水をつけるけど…」とチクリと言い、プレゼントをしまおうとすると、「冗談よ~」と妙子がプレゼントにすがりついて、「いずみ様~」と猫なで声を出したので、三人で大笑いした。

香水のプレゼントなんて、私の趣味じゃないのは自分でも知っている。

以前に恵子さんがつけているオード・トワレを誉めると『高校生がつけるならグレのカボティーーヌなんていいわよ。みずみずしい香りはいずみちゃんにぴったり!』と言われたのを思い出して、先日購入したのだ。

『香水はその場の香りでで選んではダメ。香りにはファーストノート、セカンドノート、…ラストノートと言って、つけたての匂いが揮発されて段々と変化するのよ。はじめの匂いと、終わり頃の匂いはまるで違うんだから。』と恵子さんは教えてくれた。

No.75

恵子さんはとは、ほとんど会えずにいた。

連絡を取り合うほど、親しい間柄ではないが、私は、明らかに恵子さんに好意を抱いていた。

高校生の私にとっては身近に接するはじめての“女性”だったかもしれない。

近所のおばちゃんや学校の先生とも違う。

手に届きそうな距離にいて、なかなか届かない…そんな存在だ。

女性に対しても男性に対しても、ムキにならず、張り合ったりせず…私もいつか、そんな女性になれるだろうか…。


精神的には未熟なくせに、身体だけ大人になっていくようで、自分が嫌だった。


No.76

赤いサンタの衣装やトナカイの着ぐるみを着た売り子達が、駅前やコンビニエンスストアの店先でチキンやクリスマスケーキを売っていた。

陽気なクリスマスソングもあちこちから聞こえてくる。

私もバイト先へ急いだ。

「おはようございます」

「おはよう」

ホールには、店長の他、三人とキッチンには石井さんともう一人男性スタッフがいた。

まだ混んでいない。祝祭日は大抵、混雑のピークがどっとやってくる。

石井さんともあんまり口を聞いていなかった。

いつもの様に混雑する前に交代で休憩となった。

「よう、受験生。クリスマス、手伝いに来てくれたんだって?店長が言ってたよ」石井さんが悪意なく話しかけてきた。

「お疲れさまです。これから混んでくるのですかね?24、25って暇になっちゃったから」

たっちゃんと別れた事をわざわざ告白したみたいで、言ったあとに後悔した。

「そうか」
とだけ、石井さん言った。

「いずみちゃんは、バイトは今月までだったろう?」

「はい。いろいろとありがとうございました。29日が最後です。ちゃんと勉強しないと、マジに浪人ですから。最後に、恵子さんにも会いたかったなぁ。」私は、ジンジャーエールを飲みながら、そう言った。


No.77

「恵子ちゃん、秋田さんと地元に帰るみたいだ。二人で店をやるんだって。
俺も年が明けたら、本腰を入れて、就職活動だな。」

石井さんは、年は私より四歳上だが、一年浪人して、大学に入っているので、現大学三年生に当たる。

「へぇ、そうなんですか?」それしか言いようがなかった。

お店を持つとか就職活動とか、みんな社会へ出て行くんだな…。

私も春になれば…。看護学生として…。いやいや、まずは合格、合格!

石井さんの話の後半を話半分で頷いていると、「いずみちゃん、お正月のうち1日くらいは大丈夫だろう?。」と突然、スピーカーのボリュームが上がったみたいにその言葉が耳に飛び込んできた。

「はい?」

「だから、お前、話聞いていた?初詣っていうか、気分転換だ。1日くらいいいだろう?」

石井さんが初詣に誘ってくれた。

「えっ?いつですか?どこに行くんですか?」

「お前、試験官か?俺、尋問されてるみたいだな。アハハ。無理しなくっていいんだ。」

「いえ、ぜんぜん無理じゃないです。お願いします。」

「『お願いします』って…。お前、ホントに変な奴。アハハ。じゃあ日にち決めような…。」

頭をポンポンとされた。

No.78

もっとマシな受け答えは出来なかったのか。あまりの幼稚な返答の仕方に我ながらに恥ずかしかった。

それにしても、この頭をポンポンとかるく叩かれる感触。

そうだったんだ。これを、この感触を、待っていたんだ。

石井さんには、そういうつもりはなくても、“大丈夫だよ。全て上手くいく”そんな感じをいつも受けていた。

石井さんがいい。

憧れなのか、恋なのかは、分からなかったが、あの石井さんへの不快な思いも全て、感情の裏返しだったのだ。

いつから私は、こんな気持ちを抱いていたんだろう?

妙子は気がついていたんだ。

けれど、今はこの気持ちは、妙子にもリエにも黙っておこう。

石井さんからみたら私は、ただのバイト先の後輩でしかない。

きっとリエや妙子に話したら、私は、自分の感情が抑えきれなくなり、石井さんにも気持ちを打ち明けてしまうだろう。

今のままがいい。
頭を軽く叩いてもらえるような、気のおけない関係でいたい。

私が、いつかもっと素敵な女性になれるまで…。


休憩が終わり間もなく、予想どおりにお店は混雑してきた。

私は、迅速にまた愛想よく、ホールの仕事をこなして、バイトを終えた。


No.79

自分の気持ちのベクトルにようやく気がついて、なんとなく心のモヤが晴れた気がした。

石井さんがどういう気持ちであろうと、初詣に誘ってくれた事に、改めて感謝した。

と同時に今更ながらウキウキした気持ちになってきた。

これって、石井さんとデートっていうのかな…二人で出かけるんだ…。

結局のところ、私も、理屈ではなくて“好き”だの“恋”だのに浮かれているただの高校三生の女子だった。

バイトからの帰り道に初詣の日にちや行き先を考えていると、ベコリッ…。ガクンガクン…。

なんだろう?

自転車のタイヤがパンクした。
あーあ…。残りの距離を手で押しながら家まで帰った。

明日、バイト先へはバスで行くしかないかな。

バイト先は国道沿いで、駅からも離れていた。


家に帰って来ると私の分のケーキとチキンが用意されていた。

妹と弟は「お姉ちゃん、おかえり。先に食べちゃったよ」と言いながら、冬休みなので、夜更かししながら映画を観ていた。

テレビを見ると、毎年この季節に再放送している“ホームアローン”がやっていた。私も食べながら、続きを一緒に観た。

No.80

単語帳をめくりながら眠ってしまった。

翌日は、寝坊せずに7時すぎには目が覚めた。

毎年のことだが、今日が、クリスマス当日なのに、クリスマスイブが過ぎると、一気に年越しへの準備が急ぎ足となる商業主義がいやらしくも思えた。

一方で、そういう日本人の商売に対する熱心さや勤勉さが好きだった。

バイトは昼過ぎからなので、数学と生物の模試問題集をやった。数学は相変わらず、よろしくない。

パンクの事はすっかり忘れていた。

いつもの様に自転車でバイトに行こうとした時に、気がついて慌ててた。

どうしよう…。

私の慌てぶりを見て、母が「松屋さんに頼んであげるわよ」と言った。

ちょうど隣のお肉屋さんの“松屋”のおじさんが国道沿いを通ってお得意さんのところへ肉を卸しにいくというので、母が車に乗せてもらうように頼んでくれた。

私は「スミマセン、おじさん。お願いします。助かります」と言って、ペコリと頭を下げた。

「いいよ。いずみちゃん。ついでだから気にするなって」松屋のおじさんはしゃがれ声でそう言ってくれた。

「帰りは歩いて帰っていらっしゃいよ。」母がピシャリと言った。

「うん。いってきます」なんとかバイトに遅刻せずにすんだ。



No.81

そこそこの混雑でバイトの上がりの時間を迎えた。

珍しく、石井さんも上がりが早かった。

「昨日、自転車パンクしちゃったんですよ~。バスはこの時間もうないですよね…。」

石井さんがおもむろに「バイク、乗って行くか?ちょっと寒いぞ。」と言った。

私は「えっ、いいんですか?」

「お前、いつも『いいんですか?』って聞くよな、それ、やめておけ。いいから聞いているんだろう」

そう言われて、ハッとした。

「スミマセン。石井さん、ありがとう。嬉しいです。」

「嬉しいです。ってなんだよ。嬉しいのか?アハハ」

社交辞令かと思われたみたいで、私は、ちょっとムッとして「本当です!」と言い返してしまった。

石井さんはクスクス笑っていた。

あーぁ。また子ども扱いされた。


中型オートバイの後ろに乗るのははじめてだった。

「ちゃんと捕まっておけよ」と石井さんに言われて、石井さんの腰に手を当てると、「もっとギュッとだ」と言われて、ギュッと抱きついた。

ブルン、ブルルン…。

バイクのエンジンの音とともに胸がドキドキする。

石井さんに更にぴったりしがみついた。

No.82

冬の夜風がホントに冷たかった。手袋を持っていて良かった。

ぴったりとくっついていたが、風が冷たすぎて温もりなんて伝わって来なかったが、心の中はホカホカしていた。

10分と経たないうちに家のそばに着いた。

石井さんは近くのコンビニの駐車場にバイクを止める。

ここで、さようならかな…と思ったら、石井さんは「何か飲むか?」とコンビニの中へ入って行った。

コンビニから出てきた手に持っていた袋には、タバコと飲み物が入っていた。

自分には缶コーヒー。私にはミルクティー。

「ほら、飲めよ」

「ありがとうございます」

ミルクティーって…やっぱりお子様ってことか…。

ちょっとでも、大人に見られたくて、短い髪をかきあげる仕草をした。

石井さんはチラッとこちらを見て、私の耳元に顔を近づけた。

キスされる…。そう思っうと、ドキドキした。


が…キスされたわけではなく、耳元で、こう囁かれた。

「お前……」


No.83

「お前、胸ないな…。」

「えっ?」

耳たぶが、カァとあつくなる気がした。

なんで、こんなタイミングで、またいつもの様に意地悪を言うのだろう。

手に持っていたミルクティーの缶を投げつけてやりたい衝動にかられた。

石井さんの言った言葉よりも、甘い雰囲気を期待していた自分に腹がたったからだ。

茶化されている悔しさと、上手い返答が出来ない自分がもどかしく、唇をとんがらせてうつむいていた。

石井さんは余裕寂々たる顔でヘルメットを被り、「冗談だよ。コートが厚くて分かるハズないだろう…?アハハ。
そうそう、三日の10時に駅の改札でいいよな?ダメなら電話して。じゃあな」

そう言いながら、オートバイのアクセスをブルルンとふかし、帰って行った。


私も、ありがとう、と手を振った。


石井さんの手札には、いつでもジョーカーが入っている。

私の手札はカスばかりだ。切札もなければ、ポーカーフェイスも使えない…。

浮かれているのは、いつも私だけなんだ…。
初詣もバイトの後輩として誘ってくれたに違いない。

好きだとしても、私なんて端から相手になんてしてもらえない。

そう思うと、“石井さんを好きだと言う気持ち”が根底からぐらつく。

さぁ、浮かれていないで、勉強、勉強!と思いながら、家までの短い道のりを帰った。

No.84

石井さんの冗談に対しては『きゃ~、やだー』とでも言えば良かったのか。

いやいや、『そうですか』と大人の対応で?

シャープペンシルをクルクル右手で回しながら天井のαβの公式を見つめる。

要するに、石井さんは女の子慣れしているんだな。

自分の対応のお粗末さはさておき、石井さんのいつもの“おちょくり方”を分析した。

私もいちいち、ムキになることはない。

“なめられっ放しじゃいけない”という負けず嫌いな一面と“私なんてまだまだ子どもだ”というネガティブな気持ちが、 ごちゃ混ぜになって頭の中が混沌としていた。

全ては石井さんに好意を抱き、気に入られたい、との思いが発端となっている事を私自身、知っていた。

雑念を振り切る様に勉強に集中した。

石井さん、三日の10時っていってたなぁ…。もちろん、何の予定もなかった。

29日のバイトの時にきちんと返事をしよう…っと。

電話が鳴った。
いつもの無言電話だった。

どこの誰かは分からないが、もしも、たっちゃんだとしたら…勝ち気で可愛げのない、こんな私と付き合ってくれてありがとうね…。

心底そう思った。

たっちゃんに年賀状書いた。『良い年になりますように』と…。

No.85

29日がバイトの最後日だった。みんなに挨拶をして、石井さんとは、1月3日に会う約束をした。

クリスマスが終わるとあっというまに、年が明ける。

25日以降、無言電話はピタリとやんだ。

年末から元旦の初詣はリエと妙子と同じ高校の男友達3人の計6人で明治神宮へ行った。

たくさんの屋台や出店もあり、人出も多く混雑していた。

テレビ局も来ていたり、干支の着ぐるみの格好や仮装の人もいたりして楽しかった。

本殿に辿りつくまでは、そうとう時間がかかった。

今年はじめてのおみくじは“中吉”だった。

まぁまぁ…かな。欲張りはいけない。

おみくじの内容はこう続く。
学問…安心して勉学せよ
待ち人…いずれ来る。慌てるな


良いお告げやお年寄りの話は素直に聞くものだ。

だけれど、“安心して…?”と言う一文が余計に私を油断ならなくさせる。

母からは相変わらず、『勉学しなさい』『勉学しているの?』という台詞は一切聞かれない。

本当にケ・セラ・セラな考えの持ち主だと思う。



No.86

1月3日。
待ち合わせ場所に着くと、石井さんが先にきていた。

石井さんは「おう。」と右手を挙げた。

「ごめんなさい。だいぶ待った?あっ、明けましておめでとうございます」

「いや。待ってないよ。うん、明けましておめでとう」

石井さんは切符を二枚買ってくれていた。

「今日、何処に行くんです?」

「あぁ、湯島天神にでも行こうと思ってさ。合格祈願だよ。帰りにアメ横にでも寄るか?」

「ホントに?いいですね!」石井さんが決めてくれたプランに私は、首を縦に振った。


改札をくぐり抜けて階段を降りながら、ホームで上りの電車を二人で待った。

彼氏と彼女でもないのにぴったり寄り添うのも変だと思い立ち位置がぎこちなかった。

電車が来ると石井さんは私を先に乗る様に誘導し、後から自分が乗ってきた。

やっぱり、女の人に慣れてるんだなぁ。

「石井さんは彼女とかいないんですか?」いきなり本題に入ってしまった。

「俺?今はいない…かな」

「ふーん」

「なんだよ。ふーんって。聞いておいて」

「“ふーん”は“ふーん”ですよ」

「いずみちゃんは?彼氏とはどうなの?」

「…言ってなかったでしたっけ?別れちゃったんですよ」

「ふーん」と今度は石井さんが言った。

「ふーんって何ですか?」

「“ふーん”は“ふーん”だよ」

なんとなく、二人で顔を見合わせて笑った。

No.87

湯島天神で、合格祈願の絵馬を買おうとすると、石井さんが「それから、これも」と言って、うす紅色の御守りを買ってくれた。

石井さんの優しさが嬉しかった。

お参りをした後、上野公園の不忍池に行く事になった。

ボードに二人きりで乗るんだ。…と思うと、ちょっとドキドキした。

石井さんと、こんなに長い時間を共有したことがない。ボートの上でたくさんの話をした。

石井さんは3人兄弟の長男なこと。

コロッケが好物なこと。

車の免許をとってから、最近バイクの免許をとった事。

知らなかった事ばかりだ。

それから、ずっと、聞いてみたい事があった。

「何で、石井さんはいつも私の頭をポンポンと叩くんですか?」

「うん、それはな…頭がそこにあるからだ。」

「はぁ…。」

ニコニコしながら、石井さんは続けた「お前の頭がちょうど叩きたい位置にあるんだよ」

ウソでも、“可愛いから”とかなんとか言って欲しかった…。

石井さんは完全に私を恋愛対象としてみていない…そう確信した。

石井さんの気持ちはまるで分からない。分からないけど…一緒にいて楽しい。

楽しいんだ…。片想いでいい…というより、この関係が壊れるのが怖かった。


No.88

二人でベンチに腰掛けた。

石井さんとの楽しい時間ですっかり忘れていたが、私は、バックの中をごそごそやって、可愛いビニール袋に入っている小さなタッパを出した。

「食べます?栗きんとんのあまりのさつまいもで作ったの」
と私はスイートポテトをタッパから取り出した。

「おう、うまそうだ」

良かった。甘いものキライじゃなくて。

出店がたくさんの出ていた。
「お好み焼き、食うか?」と石井さんは聞いてくれた。

「おごってもらってばっかりだから、私が、出します」

そういうと、「このポテト、美味いな。いいよ、いずみちゃん。俺が出すよ。」

と、お財布をお尻のポケットから取り出した。

「じゃあ、私が、買ってくる。石井さんは、食べていてね」

「サンキュー。じゃ、俺、紅しょうがたっぷりな」

お札じゃなく、お財布ごと、私に渡してくれた。

石井さんのお財布を持って屋台のとこへ行った。

他人のお財布って…プライベートゾーンだ。日記を覗くようなドキドキ感。中身をあんまりのぞいちゃいけないよね…。

「あいよ、二つ1000円ね。お姉ちゃん。紅しょうがは、そこにあるから、好きなだけかけていきな」

屋台のお兄ちゃんは気っ風の良い声で、お好み焼きを渡してくれた。


No.89

お財布からお札を取り出す。

屋台のお兄ちゃんからみたら、私に不似合いなこのお財布は、明らかに男ものだよね。

“彼氏のもの”って思われているかな。そう思うだけで幸せだった。

千円札がなく一万円札で支払うと、お釣りをお財布にしまう時に、カードいれの奥がちょっと分厚かった。

あっ……、じっくり見るつもりはなかったのだけど……コンドームだった。

うんうん、そりゃ、そうだよね。

そりゃ、きっと、そういう事はしょちゅうありますよ。

変な焦りと、それを抑えようとする変に落ち着き払った自分がいた。

コンドームを石井さんが取り出している姿が一瞬浮かんでしまった。

慌てて、お好み焼きに神経を集中した。

No.90

お財布のなかには、コンドームの他にも、ぐちゃぐちゃなレシートも入っていて、それが急に石井さんを近い存在だと思わせてくれた。

石井さんはベンチに座り水鳥を眺めていた。

私は、石井さんみたいな顔だちは好みタイプだった。さっぱりとした顔立ちで、背丈は高くないが低くもない。

痩せてもいないけど太ってもいない。

バイトの時に見ていた、厨房での姿の引き締まった腕は、きっと何かスポーツをやっていたんだろうと連想させた。

ぱっと見た感じは、凄くスポーツも勉強も出来そうな感じだった。

中学、高校時代はきっとモテたに違いない。

私は、こうやって遠くから人を見つめるのが好きだ。

多分、どの人にも、近くに行くとお節介をやいたり、余計な事を言ってしまうので、この距離がよいのかもしれない。

「お待たせしちゃった。二つ、買ってきたよ。」

お好み焼きとお財布を渡した。

「ありがとうな」

「うんん。こちらこそ、ご馳走様」にっこりと微笑みかえした。

お財布の中身を見た罪悪感からか、石井さんにお礼を言われて、一瞬ドキッとしたが、冷静さを取り戻すように、わざと穏やかに返答した。

No.91

それから、二人でアメ横に行き、腕を組んだり、肩を抱かれたりする事はなかったけれど、私にとっては楽しいデートだった。

🎵やっぱり、そうだ!貴方だったんだ。うれしい!たのしい!大好き!何でも出来る強いパワーがどんどん湧いてくるよ…🎵



帰りは駅でサヨウナラをするはずが、駅から、家の近くまで石井さんが、バイクで送ってくれる事になった。


別れ際に石井さんが、頭をポンポンとやりながら、
「受験、頑張れよ。受かったら連絡しろよ。」と言った。

私は、頷きながら。
「うん、今日は、ありがとう。連絡します。受かったら、またデートしてくれます?」

「あぁ。もちろん、いいよ。合格したら、菅原道真公に感謝だな。」

「うん。じゃあね。」

「おう、じゃあな。」


バイクのエンジン音が遠ざかり、石井さんの姿が小さくなる。
角を曲がるまでずっと手を振り続けた。

No.92

「で、次はいつ会うの?」リエが、にやけた顔で私の腕をぎゅうぎゅう組みながら、聞いてくる。

明日から三学期だ。月末には入試が控えていて、リエと朝からずっと図書館にこもり、少し遅めのランチ休憩をとっている。

妙子は体調を崩して家にいた。

「だから、次は多分、受験が終わったらだってば…。」

「え~、寂しいじゃん。それまで、いずみは平気なわけ?」

「だって付き合っている訳じゃないし…。」

「そっかぁ」


実に女子高校生にありがちな会話が繰り広げられていた。

いやいや、恋愛事にかまけて、これで入試に落ちたんじゃ、女が廃(すた)る!

恋話もほどほどに…。


私は、月末に、第一の山の3校立て続けての入試へ挑むこととなった。


No.93

妙子は体調も戻り、センター試験の結果はまずまずの出来で、希望校をほぼ視中におさめていた。

私は、3校たて続けに一次試験で落ち、二次試験の面接、小論文まで進めなかった。

3校とも合格圏外のレベルの高い学校だったので、“チャレンジ受験”であり、それほどショックではなかった。

しかしながら、いよいよ、“後がない”という感じは否めずにいた。

2月に入ると、受験日程はつまっていた。ほぼ2日に一度は一次試験や合格発表、二次試験の予定が入っていた。

残りの4校は奇跡的に筆記試験をパス出来た。

石井さんの御守りのおかげかもしれない。


そのうちに2校は面接日が重なり、どちらかを蹴らなければいけなかった。

最終的には2次試験まで合格できたのは、7校中、2校だけだった。

それでも私にとっては上出来の結果だ。


妙子は第一本命の大学に合格した。

リエは大学受験は不合格で、そのかわりに、短大に合格した。

それぞれの進路が、決まり、それぞれの春に向けてのスタートだった。

私は、約束どおり合格の報告を胸に、石井さんに連絡をとった。


No.94

「石井さんのお宅ですか?小久保ですけど…。」

「はい」

「いずみですけど…。」

「あっ、いずみちゃん?なんだ、いずみちゃんって小久保っていうんだったっけ。久しぶりだな。」

「うん、お久しぶりです。石井さんの御守りのおかげで、無事合格できました。」

「そっかぁ、良かったなぁ。じゃあ、お祝いに飯でも食いに行くか?」

久しぶりに大好きな石井さんの声を聞いて、少しばかり緊張した。

来週、会う約束をした。

私は、明後日に卒業式を控え、高校生活への名残惜しさと、新しい生活への憧れとの間で気持ちは揺れていた。

卒業したら、少しは石井さんに近づけるのかなぁ…。


No.95

石井さんは、昼間は予定がいっぱいだとの事で、夕飯を食べる約束をした。

「よう、久しぶり」3ヶ月ぶりに会う石井さんは髪が短くなり、真面目な印象だった。

「髪、切ったんですね」

「あぁ、就職活動でスーツ着ているからな」

「そうなんだ。あっ…これ」私は、手に持っていた袋を渡した。

「なに?」

「バレンタインに渡したかったけど…。渡せなかったから」


「おお、ありがとうな。義理チョコか?」

違います!石井さんの事が好きだから…。と思いっきり言いたかったが、 気まずくなりそうで言えなかなった。

「違いますよ。石井さんにはたくさんお世話になっているから」そういうと、

石井さんは、いつもの様に「そうか」とだけ言った。

余計に義理チョコみたいに思え、言った後に後悔した。


それから、二人で食事をして、私も、石井さんと一緒にビールや梅酒を少し飲んだ。

お店を出る間際に、石井さんはこう言った。「いずみちゃん、俺、今月末で、引っ越すんだ。」

「えっ?」

「引っ越すって言っても遠くにじゃないんだ。秋田さんが実家に帰ってから、今の家は、一人じゃ広すぎるんだ。家賃も高いしね」

そういう事ね。

「そうなんですね、じゃあ、引越しが落ち着いたら、また連絡ください」

「うん。分かった」

そう言って別れた。

春風がまだひんやり冷たく、ほろ酔いの私を覚ましてくれた。


No.96

あれから、石井さんからの連絡はない。

私は、4月からの看護学校での寮生活を始めるために荷物をまとめていた。

やっぱり、石井さんからみたら、私は、タダのバイト先の後輩だったんだ…。

それ以上のものを何処かで少しだけ期待していた為に寂しさと、諦めにも近い気持ちがあった。


荷造りをしていると
父が声をかけてくれた「まぁ、身体には気をつけなさい」
父は余計な事はあまり言わない。

ポジティブな人なので、娘が実家を出て寮生活を始めるということにも、あまり抵抗がなく、“決めた道を進む”という事で、むしろ歓迎しているようだ。

「うん。分かったよ。週末は多分、帰って来ると思うから」

「うむ。」

母は相変わらず、「寮って言っても電車で一時間半足らずなんだから、大袈裟にする事ないのよ。住めば都っていうでしょ」


リエや妙子も「週末は会おうね」と言ってくれて、不安が和らいだ。



No.97

《 拝啓
   桜の花も葉桜となり、風が心地よい季節となりました。

みなさんお変わりなくお過ごしでしょうか?

私は、4月から、看護学校での寮生活を始めました。
お近くにお立ち寄りの際はご連絡をくださいね。

      小久保いずみ 》


実家を出てから二週間、親しかった友達30人位の人にハガキを出した。

リエと妙子は電話をくれたが、可愛いレターセットで手紙をくれた。



それから一通のハガキが来た。

《 お元気そうで何よりです。自分は4月から大学生活を始め、いろいろと勉強させてもらっています。
今度、機会があれば飲みに行きたいですね  
       武田 宏之 》

ミスター旭校の武さん(武田くん)だった。

No.98

武田くんは相変わらず、律義なこと…。

文字からして優等生といった感じを受ける。

背が高く、スラリとした足。優しそうな顔立ちで、大学でもモテているんだろうな。

サークルとかできっと、大忙しなのに、ちゃんと返事をくれるなんて…。

連絡をとってみようかな。高校の同級生の何人かで飲み会でもしようかなぁ。



「もしもし、武田さんのお宅ですか?小久保です。」

「えっ、いずみちゃん?久しぶり。ハガキありがとう」

「武ちゃん?こちらこそ、返事ありがとう。元気にしている?」

「うん。元気だよ。いずみちゃん、看護学校の寮に入ったんだね。親元離れて偉いなぁ。」

「武ちゃんこそ、推薦でそうそうに大学決まって、親孝行だよ。武ちゃんなら大学でもモテているでしょう?サークルとか忙しいの?」

「いやいや、モテているなんて、そうでもないよ。俺なんて目立たない方だよ。推薦で決まったから、一般受験組に馬鹿にされない様に頑張ってるんだ。
いずみちゃんはいつも明るくていいなぁ。」

「そうなんだ。いろいろと大変なんだね。ねぇ、今度、飲み会しない?」

「いいけど、連絡とか…どうする。誰呼ぶ?」

あぁ、優等生は段取りがきちんとしないと済まないのかなぁ…めんどくさいなぁ。

「分かった!武ちゃん煮詰まっているみたいだから、とりあえず私が、愚痴聞いてあげるよ。今週末に実家に帰るけど一緒に飲みに行かない?」

「今週は無理だけど…来週はどう?」

「じゃあ、来週の土曜日でオッケー。」

そんな具合で、武ちゃんと会うことが決まった。

No.99

親のお金で大学に行かせてもらって、おそらく、お坊ちゃんの甘えだろう。

武ちゃんはキライじゃないけど、特別に好きな訳ではなかった。

外見のいいモテる奴というのは、えてして調子に乗っている奴が多い。

もしくは、見かけ倒しか。

武ちゃんはどっちだろう…。

武ちゃんはいい奴だが、恋愛の対象としては思えない。

まぁ、元クラスメイトが大学生活を謳歌していない…って言うんだから、愚痴の一つも聞いてあげてもいいじゃないの。

私も寮生活をはじめて、嫌な事も山ほどあった。

一年生は二年生の先輩と同室なのだが、同室の先輩が…ある意味で“当たり”だった。

『小久保さん、スリッパの音がうるさい』

『勉強しなくて大丈夫なの?』などなど。

有難いアドバイスが多いのだ。

武ちゃんも新しい環境で対人関係などで悩んでいるのだろうか。


武ちゃんとの飲みに、リエと妙子も飲みに誘ったが、それぞれサークルの飲み会だの、出かけるだので予定があった。

武ちゃんと共通の男友達にも声をかけたがアルバイトで無理だそうだ。

結局、二人か…。

No.100

「おう、久しぶり。」

「ホント、久しぶり。」

武ちゃんはラルフローレンの白いポロシャツ。ノー紺のジーンズにモカシンを履いていて、長い足に似合っていた。

きっとナンパしたらついて行く女の子は沢山いるんだろうな。

二人で居酒屋に行き、ビールで乾杯をした。

「武ちゃん、相変わらずかっこいいね。」

「俺、そういうの苦手なんだよね。男からみたら俺よりかっこいい奴いくらでもいるし…。」

「そう?武ちゃん、そう言われれば、女の子にキャーキャー言われるの好きじゃないって言ってたっけ。“コイツ、俺の何を知っているんだ?”みたいな事」

「いずみちゃん、よく覚えてるね」

「うん。あの時は、武ちゃんの事を変な奴って思ったから。」

「俺、変な奴って思われているの。アハハ。」

「今は、努力家で偉いなって思ってるよ」

「そう?俺より、兄貴の方が努力家で何でも出来るよ」

「お兄ちゃんいたんだっけ?」

「うん、妹も」

「そうなんだ。ウチと同じ三人兄弟だね」

「もしかして、武ちゃん、お兄ちゃんと比べられて自信がないの?」

「そういうじゃないけどさ…。自信はあるよ。だけどさ、外見じゃ無くて、俺の中身を見て欲しいんだよね。」

アルコールのせいか、武ちゃんはいつもよりも、おしゃべりだった。

言いたい内容も、私にはよく分かった。

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